JP2006001322A - アルミホイールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明のアルミホイールの製造方法では、アルミホイール素材を鋳造する工程と、鋳造したアルミホイール素材のリムを加熱してリムの内部まで再溶融する工程と、リムを熱間で所定形状にまで圧延する工程を実施する。このことによって、リムを構成するアルミ合金の組織が流動し、リムに存在していた鋳造欠陥が大幅に減少する。さらに、再溶融する結果、アルミ合金の結晶粒が微細化され、緻密で均等な組織に変質する。
【選択図】 図1
Description
鋳造方法を利用すると、アルミホイールを簡単に製造することができる。その一方において、鋳造品には鋳巣(ミクロシリンケージ)をはじめとする鋳造欠陥が存在するため、製品の強度特性を確保しづらい。特に、鋳造品は疲労強度を確保しづらいという問題を持っている。
また特許文献2には、鋳造アルミ製品の表面に硬質材を分散して混入し、焼入れ・焼き戻しを施し、ショットピーニング加工等を施して残留圧縮応力を付与することによって、鋳造アルミ製品の疲労強度を向上する技術が開示されている。特許文献2によると、鋳造アルミ製品の表面層に硬質材を混入することによって、その表面層に大きな加工硬化現象と残留圧縮応力が発生し、鋳造アルミ製品の疲労強度を大きく向上させることができると説明されている。
しかしながら、従来技術によって強化される表面層は通常数μm程度の深さであり、その深さよりも内部には鋳造欠陥が残留する。従来の技術で表面層の組織を改善しても、鋳造アルミの内部に存在する鋳造欠陥を起点とする疲労破壊に対策することができない。
さらに、ショットピーニング加工等によって表面層へ圧縮残留応力を付与しても、その表面層に切削や研磨などの機械加工を施こすと、効果が薄れたり、効果がなくなってしまうという問題がある。
本発明では上記課題を解決する。本発明では、基本的には鋳造方法を利用しながら、疲労強度が向上したアルミホイールを製造することができる方法を提供する。
本発明の製造方法では、鋳造欠陥が発生しやすいリムを、その表面だけでなく内部まで再溶融する工程を実施する。このことによって、リムを構成するアルミニウム合金の組織
が再溶融、再凝固によって鋳物母材中の鋳造欠陥が表面に押出され、再凝固相に欠陥が存在しない状態になる。又再凝固時の冷却凝固速度を早くすることで、合金の結晶粒が微細化され緻密で均等な組織になる。
再溶融したリムを熱間で圧延することによって、僅かに残留している鋳造欠陥はさらに除去され、リムの疲労強度特性はさらに向上する。
本発明では、リムの表面だけでなく、リムの内部まで再溶融させ、熱間圧延する。その結果、リムの内部に存在していた鋳造欠陥が除去され、従来の製造方法による場合と比べると、アルミホイールの疲労強度を大幅に向上することが可能となる。
リムを圧延したアルミホイールに対して、溶体化処理を施し、さらに人工時効硬化処理を施すと(いわゆるT6処理を施すことに相当する)、アルミホイールの疲労強度特性はさらに改善される。ショットピーニング等のようにアルミホイールの表面層を強化した場合とは異なり、後工程で機械加工を実施しても、疲労強度を向上させた効果が低減することはない。
(形態1)アルミホイールは、車軸が装着されるディスクと、ディスクから外周側に張出すスポークと、スポークの外周に沿って一巡するリムを有する。
(形態2)鋳造したアルミホイール素材のリムを540℃〜610℃の温度に加熱して内部まで再溶融する工程と、リムを200℃〜400℃の温度で所定形状まで圧延する工程を実施する。
(形態3)圧延したアルミホイール素材に熱処理を加える。
(形態4)熱処理したアルミホイール素材を切削して仕上げる。
本実施例のアルミホイールの製造方法は、鋳造工程、再溶融工程、圧延工程、熱処理工程、切削工程、塗装工程からなる。
図1に示すように、鋳造されたアルミホイール素材4のディスク2のボルト取付け穴5を利用して、ボルト7によってアルミホイール素材4を治具10に固定する。治具10は回転可能であり、治具10が回転することによって、アルミホイール素材4も回転する。
アルミホイール素材4を治具10に固定した状態で、アルミホイール素材4のリム6の外側にトーチ8を配設する。トーチ8は、アーク加熱に用いるTIGアーク電極であり、直径3mm程度のタングステン製の電極棒を備え、シールド用にアルゴンガスを流量25リットル/minで噴射する。トーチ8の電極棒とアルミホイール素材4のリム6との間に高電圧が印加され、両者間にアークが発生し、アーク熱によってリム6が加熱される。
リム6の加熱継続時間は、リム6の熱容量と、トーチ8のアーク電流量から設定する。設定した加熱継続時間が経過し、リム6の表面だけでなく内部まで再溶融されると、トーチ8からのアーク加熱を停止する。リム6の内部のアルミ組織は、再溶融されたことによって結晶粒が微細化され、緻密で均等な組織に変質する。また鋳造欠陥の大部分が消失する。
リム6を再溶融されたアルミホイール素材4は、200℃〜400℃の温度まで冷却され、次の圧延工程を実施する。
図2に示すように、再溶融処理されたアルミホイール素材4のディスク2のボルト取付け穴5を利用して、ボルト17によってアルミホイール素材4を治具18と型20の間に固定する。アルミホイール素材4の内側に挿入される型20は、アルミホイール素材4の圧延後の内側の面形状を規定する。型20がボルト16によって治具28に固定されることによって、治具18、アルミホイール素材4、治具28が一体に固定される。上記の固定した状態で、治具28は治具18と同軸で回転可能であり、治具18と治具28を回転することによって、アルミホイール素材4も回転する。
押圧具14は、回転中心位置が制御可能なローラーであり、アルミホイール素材4のリム6を型20に押圧し、リム6が所定の形状となるように熱間圧延する。
治具18、アルミホイール素材4、治具28が回転している状態で、押圧具14がリム6を型20に向けて押圧することによって、アルミホイール素材4のリム6は所定の形状に圧延される。上記の圧延加工によって、アルミホイール素材4は、内面を型20によって規定され、外面を押圧具14の移動軌跡によって規定される形状に成形される。押圧具14の移動軌跡は、アルミホイールのリム6の製品形状に合わせて設定されている。
200℃〜400℃の温度で熱間圧延されることで、アルミホイール素材4のリム6は塑性流動による変形を生じ、加工硬化を生じることなく所定の形状に成形される。リム6の内部ではアルミの塑性流動によって僅かに残留していた鋳造欠陥が除去され、リム6の疲労強度は向上する。
熱間圧延されたアルミホイール素材4には、熱処理工程が施される。
本実施例の方法で製造されたアルミホイールと、従来の方法で製造されたアルミホイールのリムからテストピースを切り出し、それぞれについての強度評価を実施した。表1に強度評価結果を示す。
本実施例のアルミホイールは、引張り強度、耐力、伸び、疲労強度、硬さのいずれの項目についても、従来例のアルミホイールと同等以上の性質を備えている。特に、伸びと疲労強度については、従来例のアルミホイールから大きく改善されていることが分かる。
本実施例のアルミホイールを参考例と比較すると、耐力、伸び、硬さは参考例にくらべやや劣るものの、引張り強度、疲労強度については参考例の鍛造アルミホイールとほぼ同程度の水準にあることが分かる。
半径方向負荷耐久試験の結果、本実施例のアルミホイールでは200万回転させても亀裂は発生しなかった。従来例1のアルミホイールでは80万回転で亀裂が発生し、従来例2のアルミホイールでは120万回転で亀裂が発生している。本実施例のアルミホイールでは、半径方向負荷に対する耐久性が、従来例1および従来例2のアルミホイールにくらべ優れていることが判明した。
回転曲げ疲労試験の結果、本実施例のアルミホイールでは50万回転させても亀裂は発生しなかった。従来例1のアルミホイールでは10万回転で亀裂が発生し、従来例2のアルミホイールでは15万回転で亀裂が発生した。本実施例のアルミホイールは、回転曲げに対する耐久性が、従来例1および従来例2のアルミホイールにくらべ優れていることが判明した。
例えばリムとの間にアークを発生させるトーチを、リムの内側と外側の両方に配設して、リムの内外から加熱してもよい。この場合、リムの加熱量が増加し、リムを再溶融するための時間を短縮することが可能となる。さらに、リムの板厚方向の温度勾配を低減することができ、精度良くリムの温度を管理することができる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
4・・・アルミホイール素材
5・・・ボルト取付け穴
6・・・リム
7・・・ボルト
8・・・トーチ
10・・・治具
14・・・押圧具
16・・・ボルト
17・・・ボルト
18・・・治具
20・・・型
28・・・治具
32・・・ドラム
34・・・タイヤ
36・・・アルミホイール
38・・・スポーク
40・・・回転円板
42・・・締め具
44・・・フランジ
46・・・ディスク
48・・・フランジ
50・・・軸
52・・・ピボットポイント
54・・・おもり
Claims (2)
- アルミホイール素材を鋳造する工程と、
鋳造したアルミホイール素材のリムを加熱してリムの内部まで再溶融する工程と、
リムを熱間で所定形状にまで圧延する工程と、
を備えることを特徴とするアルミホイールの製造方法。 - リムを圧延したアルミホイールに溶体化処理を施す工程と、人工時効硬化処理を施す工程をさらに備えることを特徴とする請求項1のアルミホイールの製造方法。
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