JP4822324B2 - アルミニウム合金製鍛造ロードホイール及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金製鍛造ロードホイール及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、ハブ部と、ディスク部と、このディスク部に一体で形成したリム部を備えたアルミニウム合金製鍛造ロードホイール及びその製造方法に関するものである。
従来、アルミニウム合金製のロードホイールを製造する場合、低圧鋳造法や、重力鋳造法や、高圧鋳造法や、溶湯鍛造法や、熱間鍛造法が用いられ、これらの製造方法のなかでも、熱間鍛造法が最も優れた機械的性質を得ることができる。
社団法人日本機械学会「機械工学便覧」、昭和63年5月15日、p.B2−100 社団法人自動車技術会「自動車技術ハンドブック」1992年6月15日、p.515
ところが、従来において、上記した熱間鍛造法で製造した鍛造品の機械的性質を前提としてアルミニウム合金製ロードホイールを設計する場合には、現状得られる機械的性質が部品軽量化の妨げとなっており、車両の運動性の観点から見れば、好ましくないという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、優れた機械的性質を有していてしかも軽量のアルミニウム合金製鍛造ロードホイール及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、車軸が装着されるハブ部と、ハブ部の周囲に位置するデザイン面を有するディスク部と、このディスク部の周縁に一体で形成されたリム部を備えたロードホイールにおいて、質量比でSi0.95〜1.35%、Mg0.8〜1.2%、Cu0.2〜0.5%、Mn0.4〜0.7%、Fe0.3%以下及びCr0.05〜0.25%を含んで残部をアルミニウムとしたアルミニウム合金を鍛造して成り、ディスク部のデザイン面及びリム部の結晶粒が、粒径50μm以下の金属組織を有している構成としたことを特徴としており、このアルミニウム合金製鍛造ロードホイールの構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
本発明のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールによれば、上記した構成としているので、優れた機械的性質を有していながら軽量化をも実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のアルミニウム合金製鍛造ロードホイール1は、車軸孔2aを有するハブ部2と、このハブ部2の周囲に位置するデザイン面3を有するディスク部4と、このディスク部4の周縁に一体で形成されたリム部5を備えている。
このアルミニウム合金製鍛造ロードホイール1において、リム部5を鍛造後における室温スピニング加工により成形されたものとしてもよく、この構成を採用すると、リム部5をスピニングによりファイバー組織とすることで、リム部5の高い機械的性質を確保し得ることとなる。
上記アルミニウム合金製鍛造ロードホイール1に用いるアルミニウム合金は、質量比でSi0.95〜1.35%、Mg0.8〜1.2%、Cu0.2〜0.5%、Mn0.4〜0.7%、Fe0.3%以下及びCr0.05〜0.25%を含んで残部をアルミニウムとしている。
上記アルミニウム合金に含有するSiは、固溶強化により強度を向上させると共に、Mgとの化合物であるMgSiの析出物として強度を向上させる元素であり、含有量が質量比で0.95%未満の場合は、過剰Siによる析出形態微細化が得られずに、狙いとする強度を得ることができず、一方、含有量が質量比で1.35%を超える場合は、靭性及び耐食性が低下するので、Siの含有量を質量比で0.95〜1.35%としている。
上記アルミニウム合金に含有するMgは、Siと同じく強度を向上させる元素であり、含有量が質量比で0.8%未満の場合は、狙いとするMgSiの析出量が減少し、一方、含有量が質量比で1.2%を超える場合は、過剰Siによる 強度の確保が困難になるので、Mgの含有量を質量比で0.8〜1.2%としている。
上記アルミニウム合金に添加するCuは、固溶強化により強度を向上させる元素であり、添加量が質量比で0.2%未満の場合は、狙いとする強度を得ることができず、一方、添加量が質量比で0.5%を超える場合は、耐食性が低下するので、Cuの添加量を質量比で0.2〜0.5%としている。
上記アルミニウム合金に添加するMnは、鍛造時における結晶粒粗大化を抑制して亜結晶組織をもたらす元素であり、添加量が質量比で0.4%未満の場合は、結晶粒が粗大化してしまい、一方、添加量が質量比で0.7%を超える場合は、Mn化合物が晶出して靭性が低下するので、Mnの添加量を質量比で0.4〜0.7%としている。
上記アルミニウム合金に添加するFeは、針状晶出物として靭性を低下させるので、添加量が質量比で0.3%を超える場合は、狙いの靭性確保が難しくなることから、Feの添加量を質量比で0.3%以下としている。
上記アルミニウム合金に添加するCrは、鍛造素材である鋳造組織を微細化する機能を有する元素であり、添加量が質量比で0.05%未満の場合は、粗大な鍛造組織となって靭性が低下し、一方、添加量が質量比で0.25%を超える場合は、鍛造素材を鋳造により製造する際に粗大な晶出物が生成されて靭性の低下を招くので、Crの添加量を質量比で0.05〜0.25%としている。
本発明のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールにおいて、アルミニウム合金が、鍛造素材である鋳造組織を微細化する機能を有する元素であるTiを含んでいる構成とすることができ、この場合、添加量が質量比で0.1%を超える場合は、微細化が進まないので、Tiの添加量を質量比で0.1%以下とすることが望ましい。
上記した室温スピニング加工により成形されたリム部5を有するアルミニウム合金製鍛造ロードホイール1を製造するに際しては、まず、ディスク部4の結晶粒を微細化するために、鋳造で製造したアルミニウム合金製の丸棒を切断して得たビレットに対して、大気炉を用いて温度500〜560℃の均質化熱処理を2〜10時間施すと共に加熱温度500〜560℃で加熱する。
次に、上記材料加熱と同様にディスク部4の結晶粒を微細化するのを目的として、油圧式鍛造プレス装置を用いて熱間鍛造を行う。この際、鍛造プレス装置の金型温度が300℃未満では、鍛造歪が増加して結晶の粗大化を招くことから、金型温度300℃以上の条件で熱間鍛造を行う。
次いで、この鍛造で得たホイール素材に対して室温スピニング加工を行って、高い機械的性質を確保したリム部5を成形する。
続いて、上記した固溶強化及び析出強化を促進する強化元素をアルミニウム中に固溶させて、ディスク部4及びリム部5の機械的性質を確保することを目的として、急速加熱炉を用いて溶体化熱処理を行う。このとき、急速加熱炉の雰囲気温度が540℃に満たない場合には、狙いとする機械的性質を得ることができず、一方、雰囲気温度が560℃を超えている場合には、材料に局部溶解が生じることから、温度540〜560℃で5〜180分の溶体化熱処理を行う。
そして、実体温度60℃以下の水焼き入れ及び温度180〜200℃で1.5〜8時間の時効熱処理を順次施した後、機械加工工程及び塗装工程を経てアルミニウム合金製鍛造ロードホイールを得る。
上記水焼き入れにおいて、60℃を超えた温度で焼入れを行うと、固溶強化元素が十分に固溶しないので、後工程の時効熱処理で所定の機械的性質が得難くなることから、実体温度を60℃以下とする。
ここで、水焼き入れが終了して時効熱処理を開始するまでの間、室温で30分以上放置すると、強化元素であるMg,Si元素が単体でクラスターを形成して、後工程の時効熱処理で十分な析出が促進されずに所定の強度が得られなくなる可能性があることから、実体温度60℃以下の水焼き入れを行った後、室温放置時間が30分を超えないうちに、大気炉を用いて温度180〜200℃で1.5〜8時間の時効熱処理を施すことが望ましい。
以下、本発明のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールの実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
質量比でSi0.95〜1.35%、Mg0.8〜1.2%、Cu0.2〜0.5%、Mn0.4〜0.7%、Fe0.3%以下及びCr0.05〜0.25%を含んで残部をアルミニウムとしたアルミニウム合金製の丸棒を切断して得たビレットに対して、温度530℃の均質化熱処理を2時間施すと共に加熱温度530℃で加熱した後、鍛造プレス装置を用いて金型温度300℃の条件で熱間鍛造を行い、次いで、40℃雰囲気で冷却後鍛造で得たホイール素材に室温スピニング加工を行ってリム部を成形し、続いて、温度550℃で5分の溶体化熱処理、実体温度60℃以下の水焼き入れ、20分の室温放置及び温度190℃で5時間の時効熱処理を順次施した後、機械加工工程及び塗装工程を経て実施例1のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールを得た。この際、ディスク部のデザイン面及びリム部が、結晶粒径10μmの金属組織を有していた。
[実施例2]
質量比でSi0.95〜1.35%、Mg0.8〜1.2%、Cu0.2〜0.5%、Mn0.4〜0.7%、Fe0.3%以下及びCr0.05〜0.25%を含んで残部をアルミニウムとしたアルミニウム合金製の丸棒を切断して得たビレットに対して、温度500℃の均質化熱処理を2時間施すと共に加熱温度500℃で加熱した後、鍛造プレス装置を用いて金型温度300℃の条件で熱間鍛造を行い、次いで、40℃雰囲気で冷却後鍛造で得たホイール素材に室温スピニング加工を行ってリム部を成形し、続いて、温度550℃で5分の溶体化熱処理、実体温度60℃以下の水焼き入れ、6時間の室温放置及び温度190℃で5時間の時効熱処理を順次施した後、機械加工工程及び塗装工程を経て実施例2のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールを得た。この際、ディスク部のデザイン面及びリム部が、結晶粒径45μmの金属組織を有していた。
[比較例]
アルミニウム(A6061−T6)の丸棒を切断して得たビレットに対して、温度500℃の均質化熱処理を2時間施すと共に加熱温度500℃で加熱した後、鍛造プレス装置を用いて金型温度230℃の条件で熱間鍛造を行い、次いで、40℃雰囲気で冷却後鍛造で得たホイール素材に室温スピニング加工を行ってリム部を成形し、続いて、温度540℃で5分の溶体化熱処理、実体温度60℃以下の水焼き入れ、6時間の室温放置及び温度190℃で5時間の時効熱処理を順次施した後、機械加工工程及び塗装工程を経て比較例のアルミニウム製鍛造ロードホイールを得た。この際、ディスク部のデザイン面及びリム部が、結晶粒径300μmの金属組織を有していた。
実施例1,2及び比較例の各製造条件を表1に示す。
Figure 0004822324
そこで、実施例1,2のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールと、比較例のアルミニウム製鍛造ロードホイールとについて、結晶粒径と機械的性質の関係を調べたところ、図2に示すように、結晶粒径50μm以下の金属組織を有している実施例1,2のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールの引張り強さがいずれも400MPa以上であるのに対して、結晶粒径300μmの金属組織を有している比較例のアルミニウム製鍛造ロードホイールの引張り強さが300MPaであることが判った。
また、図3にも示すように、結晶粒径50μm以下の金属組織を有している実施例1,2のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールの伸びがいずれも6%以上であるのに対して、結晶粒径300μmの金属組織を有している比較例のアルミニウム製鍛造ロードホイールの伸びが5%であることが判った。
図2及び図3の結果から、結晶粒径50μm以下の金属組織を有している実施例1,2のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールが、結晶粒径300μmの金属組織を有している比較例のアルミニウム製鍛造ロードホイールと比べて優れた強度及び靭性を有していることが立証できた。
本発明のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールの一実施例を示す断面説明図である。(実施例1) 実施例のアルミニウム合金製鍛造ロードホイール及び比較例のアルミニウム製鍛造ロードホイールの各結晶粒径と機械的性質の関係を示すグラフである。 実施例のアルミニウム合金製鍛造ロードホイール及び比較例のアルミニウム製鍛造ロードホイールの各機械的性質を示すグラフである。
符号の説明
1 アルミニウム合金製鍛造ロードホイール
2 ハブ部
3 デザイン面
4 ディスク部
5 リム部

Claims (5)

  1. 車軸が装着されるハブ部と、ハブ部の周囲に位置するデザイン面を有するディスク部と、このディスク部の周縁に一体で形成されたリム部を備えたロードホイールにおいて、質量比でSi0.95〜1.35%、Mg0.8〜1.2%、Cu0.2〜0.5%、Mn0.4〜0.7%、Fe0.3%以下及びCr0.05〜0.25%を含んで残部をアルミニウムとしたアルミニウム合金を鍛造して成り、ディスク部のデザイン面及びリム部の結晶粒が、粒径50μm以下の金属組織を有していることを特徴とするアルミニウム合金製鍛造ロードホイール。
  2. アルミニウム合金が質量比でTi0.1%以下を含んでいる請求項1に記載のアルミニウム合金製鍛造ロードホイール。
  3. リム部を鍛造後における室温スピニング加工により成形されたものとした請求項1又は2に記載のアルミニウム合金製鍛造ロードホイール。
  4. 請求項3に記載のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールを製造するに際して、鋳造で製造したアルミニウム合金製の丸棒を切断して得たビレットに対して、温度500〜560℃の均質化熱処理を2〜10時間施すと共に加熱温度500〜560℃で加熱した後、鍛造プレス装置を用いて金型温度300℃以上の条件で熱間鍛造を行い、次いで、この鍛造で得たホイール素材に室温スピニング加工を行ってリム部を成形し、続いて、温度540〜560℃で5〜180分の溶体化熱処理、実体温度60℃以下の水焼き入れ及び温度180〜200℃で1.5〜8時間の時効熱処理を順次施した後、機械加工工程及び塗装工程を経てアルミニウム合金製鍛造ロードホイールを得ることを特徴とするアルミニウム合金製鍛造ロードホイールの製造方法。
  5. 実体温度60℃以下の水焼き入れを行った後、室温放置時間が30分を超えないうちに温度180〜200℃で1.5〜8時間の時効熱処理を施す請求項4に記載のアルミニウム合金製鍛造ロードホイールの製造方法。
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