JP2006001019A - インクジェット記録用光沢シートの製造方法及びインクジェット記録用光沢シート - Google Patents

インクジェット記録用光沢シートの製造方法及びインクジェット記録用光沢シート Download PDF

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康敬 幸形
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一雄 池田
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Abstract

【課題】新規のインクジェット記録用光沢シートの製造方法を提案するものである。
【解決手段】透気性支持体上に、温度変化により親水性と疎水性を可逆的に示し、親水性を示す温度領域では塗液が増粘又はゲル化する感温性高分子化合物を含有する塗液を、該感温性高分子化合物が疎水性を示す温度領域で塗工し、該感温性高分子化合物が親水性を示す温度領域まで温度変化させて増粘又はゲル化させて塗被層を形成し、該塗被層を乾燥した後に湿潤液を付与した後、加熱鏡面に圧接し乾燥してインク受容層を形成することを特徴とするインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用光沢シートの製造方法及びインクジェット記録用光沢シートに関する。
キャスト塗工法は、光沢性を有する印刷用紙の製造方法として知られている方法で、透気性支持体の表面に対し、層状に、顔料等を含有する塗工液を塗工した後、湿潤状態あるいは再湿潤状態の該塗工液層を、鏡面を有する加熱ドラム面に圧着、乾燥することにより、その鏡面を写し取る方法である。キャスト塗工法により得られる印刷用紙(キャスト塗工紙)は、他の塗工紙に比較して高い表面光沢と優れた表面平滑性を有し、優れた印刷効果が得られることから、高級印刷物等の用途に専ら利用されている。
従来のキャスト塗工法は、(1)原紙に塗液を塗布した後、塗工液が湿潤状態のまま直ちにキャストドラムに圧接するウエットキャスト法、(2)キャストドラムに直接塗液を塗布・乾燥させた後、乾燥塗被層を原紙に圧接・転移させるプレキャスト法、(3)原紙に塗液を塗布した後、塗液を、酸の添加、塩の添加又は加熱によりゲル状に凝固させてから、キャストドラムに圧接するゲル化キャスト法(詳細には酸ゲル化法、塩ゲル化法及び熱ゲル化法ともいう)、(4)原紙に塗液を塗布・乾燥して乾燥塗被層を得、その後、塗被層を水または適当なリウエット液で再湿潤可塑化させ、キャストドラムに圧接して仕上げるリウエットキャスト法、(5)リウエットキャスト法とは異なり、塗被乾燥後、再湿潤せず乾燥状態のまま高温のキャストドラムに圧接して仕上げるドライキャスト法がある(たとえば、非特許文献1参照。)。
一方、インクジェットプリンタによる記録は、騒音が少なく、高速記録が可能であり、かつ、多色化が容易なために多方面で利用されている。インクジェット記録用紙には、インクジェット記録の高速化、多色化に対応するため、高いインク吸収性が求められる。そのため、現在、インクジェット記録用紙としては、主に、インク吸収性に富むように工夫された上質紙や、表面に多孔性顔料を塗工した塗工紙等が適用されている。
しかし、これら従来のインクジェット記録用紙は、表面光沢の低い、いわゆるマット調のものが主体であり、外観が良くない。そのため、表面光沢の高い、優れた外観を有するインクジェット記録用紙が要望されており、キャスト塗工したインクジェット記録用紙が提案されている。
例えば、顔料及び接着剤を主成分とする記録層を設けた原紙上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる40℃以上のガラス転移点を有する共重合体を主成分とする塗工液を塗工してキャスト用塗工液層を形成せしめ、該キャスト用塗工液層を、湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げることにより、優れた光沢とインク吸収性とを兼ね備える、ウエットキャスト法を用いた、インクジェット記録用キャスト紙が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、支持体の片面に、顔料と接着剤を含有する塗工液を塗布し、該接着剤と凝固し得る凝固剤を更に塗布し、湿潤状態でキャストドラムに圧着する凝固型キャスト法(ゲル化キャストともいう。)によるインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
更に、光沢感を有したインクジェット記録用紙の製造方法として、支持体の片面に、顔料と接着剤を含有する塗液を塗布し、塗被層を乾燥させた後、湿潤液にて該塗被層を再湿潤させた後、キャストドラムに圧着する再湿潤キャスト法(リウエットキャスト法ともいう。)によるインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、記録用紙に光沢を付与する方法としては、キャスト法の他に、スーパーカレンダーやグロスカレンダー等のカレンダー装置を用い、圧力や温度をかけたロール間に通紙することで塗工液層表面を平滑化する方法が知られている。
紙パルプ製造技術シリーズ8 コーティング(第269頁〜第282頁) 特開平7−89220号公報 特開2002−166644号公報 特公平7−96331号公報
しかしながら、インクジェット記録用シートにおいて、光沢性の向上とともに、インクジェット適性(印刷適性)の向上が望まれている。
すなわち、特許文献1に記載のようなウエットキャスト法を用いたインクジェット記録用紙は、インク吸収性は充分であるものの、印画紙基材を用いたインクジェット記録媒体と比較すると、表面の平滑性が充分でないため光沢性が不足しており、またインクドットの真円性等の印字適性も劣る傾向にある。
また、特許文献2に記載のようなゲル化キャスト法を採用すると、ゲル化のために塗布する液の固形分濃度が5質量%以下であることから、塗工液層の水分量が多くなり、乾燥効率の低下や、塗工液層のひび割れの原因となったり、ゲル化のコントロールが不十分となることから、ベタ印字した際のムラの発生などの問題が発生する。また、ゲル化キャスト法では、顔料と接着剤の塗工液と、凝固剤の塗工液を二度塗る必要があり、また、凝固剤の塗布量のバラツキにより均一な塗工液層が得られないという問題もある。そのため、ゲル化法による、品質の安定したインクジェット記録用キャスト塗工紙を得るのは難しいのが現状である。
更に、特許文献3に記載のようなリウエットキャスト法を採用すると、塗被層が一旦乾燥されているため、塗被層の可塑化の度合いが他のキャスト法(ウエットキャスト法やゲル化キャスト法)に比較して著しく低く、また、可塑化が均一とならないことがあり、このため均一で良好な塗工面を得るのが難しい。そのためリウエットキャスト法による写真画質に近い印字品位の高いインクジェット記録用紙を得るのは、難しいのが現状である。
また、スーパーカレンダーやグロスカレンダー等のカレンダー装置を用い、圧力や温度をかけたロール間に通紙することで塗工液層表面を平滑化する方法では、インクジェット記録シートの場合は、光沢を付与する目的で、高線圧下でカレンダー処理を行うと、光沢は向上するが、塗工液層中の空隙が減少し、インクの吸収が遅くなるとともに、吸収容量も低下する。そのため、印字後、インク受容層に吸収されずにインクがあふれ、印字のにじみやベタ部均一性の低下などの印字適性の低下が生じてしまう。このことから、カレンダー処理では、インクジェット記録用として必要なインク吸収性を確保できる低線圧条件を選択せざるを得ず、したがって、インクジェット記録用として必要な印字適性と光沢性とをともに有するインクジェット記録用紙を得ることは困難である。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、新規のインクジェット記録用光沢シートの製造方法を提案するものである。
(1)本発明は、透気性支持体上に、温度変化により親水性と疎水性を可逆的に示し、親水性を示す温度領域では塗液が増粘又はゲル化する感温性高分子化合物を含有する塗液を、該感温性高分子化合物が疎水性を示す温度領域で塗工し、該感温性高分子化合物が親水性を示す温度領域まで温度変化させて増粘又はゲル化させて塗被層を形成し、該塗被層を乾燥した後に湿潤液を付与した後、加熱鏡面に圧接し乾燥してインク受容層を形成することを特徴とするインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
(2)塗被層の乾燥が、塗被層の水分量が12〜40質量%となるように乾燥する(1)記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
(3)湿潤液が、0.05〜20質量%の離型剤を含有する、(1)又は(2)記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
(4)感感温性高分子化合物を含有する塗液を塗工するより前に、該感温性高分子化合物が親水性を示す温度領域の処理液を塗布する(1)〜(3)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
(5)前記感温性高分子化合物の感温点が0〜30℃であり、感温点以上では疎水性を示し、感温点未満では親水性を有する(1)〜(4)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれか一項に記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法によって得られたインクジェット記録用光沢シート。
(8)透気性支持体と、該透気性支持体の少なくとも一方の面に塗工された少なくとも1層の下塗り層と、該下塗り層上に塗工されたインク受容層とを有し、前記インク受容層は、顔料と、感温点以下の温度領域では親水性を示し、感温点より高い温度領域では疎水性を示す感温性高分子化合物とを含有し、塗工後、湿潤液を付与した状態で、加熱された鏡面仕上げの金属面に圧接・乾燥することにより光沢性が付与されてることを特徴とするインクジェット記録用光沢シート。
(9)前記下塗り層が、顔料と、接着剤とを含有する(8)記載のインクジェット記録用光沢シート。
(10)前記下塗り層が、コロイダルシリカと、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂とを含有するか、又は前記コロイダルシリカと前記エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂との複合体を含有する(8)又は(9)記載のインクジェット記録用光沢シート。
(11)王研式透気度が60〜500秒/100ccである(8)〜(11)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用光沢シート。
(12)前記感温性高分子化合物の感温点が5〜30℃である(8)〜(12)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用光沢シート。
(13)前記透気性支持体の王研式透気度が10〜350秒/100ccである(8)〜(12)のいずれか一つに記載のインクジェット記録用光沢シート。
本発明のインクジェット記録用光沢シートの製造方法で製造されたインクジェット記録用光沢シートは、高い光沢性を有するとともに、印画濃度や印字にじみ、インクドット真円性等に優れるため高精細な画像を印字可能な、極めて実用性の高いものである。
「透気性支持体」
透気性支持体は、透気性を備えたものであれば特に限定されるものではなく、一般の塗工紙等に使用される酸性紙、あるいは中性紙等の透気性原紙、透気性樹脂シート等が挙げられる。
支持体の透気性は特に制限はないが、光沢層のキャスト仕上げ時(塗被層の加熱鏡面への圧接時)の操業性(蒸気の抜けやすさ)と、塗工液の支持体への浸透抑制を考慮すれば、王研式透気度が10〜350秒/cc、さらには10〜200秒/100cc、特に20〜100秒/100ccであることが好ましい。
透気性原紙としては、木材パルプを主成分として構成され、必要に応じて填料、各種助剤等の添加剤を含有するものが挙げられる。
木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS P 8121)程度である。平滑性を高めるためには叩解度を進めるほうが望ましいが、用紙に記録した場合にインク中の水分によって起こる用紙のボコツキや記録画像のにじみは、叩解を進めないほうが良好な結果を得る場合が多い。従ってフリーネスは300〜500ml程度が好ましい。
填料としては、透気性原紙の不透明性等を付与したり、インク吸収性を調整するなどの目的で、炭酸カルシウム、焼成カオリン、シリカ、酸化チタン等が配合できる。特に炭酸カルシウムは、白色度が高い支持体となり、インクジェット記録用光沢シートの光沢感が高まるので好ましい。透気性原紙中の填料の含有率(灰分)は1〜20質量%程度が好ましく、多すぎると紙力が低下するおそれがある。少ないと紙基材の透気性が悪くなるので、好ましい填料の含有率は7〜20質量%である。この範囲にすると、平滑度、透気度、紙力のバランスがとれているので、結果として光沢度、像鮮明度が優れたインクジェット記録用光沢シートが得られ易くなる。
助剤としては、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。特に、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、N−ビニルホルムアミド・ビニルアミン共重合体等の紙力増強剤を内添あるいは塗布もしくは含浸して用いると、塗工液を塗布した際の強度や寸法安定性に優れるので好ましい。特にポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂は塗被層を塗布する際や湿潤液を塗布する際の紙の寸法安定性に優れるので好適である。
透気性原紙には、さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調整できる。
紙基材のステキヒトサイズ度(100g/mの紙として)は1〜200秒程度が好ましい。サイズ度が低いと、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる場合があり、高いとインク吸収性が低下したり、印字後のカールやコックリングが著しくなる場合がある。より好ましいサイズ度の範囲は4〜120秒である。紙基材の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m程度である。
「下塗り層」
透気性支持体上には、必要に応じて単層又は複数層の下塗り層を形成することができる。下塗り層を介してインク受容層を形成することで、光沢性を向上させることができる。これは、支持体よりも柔軟な下塗り層の存在によって、加熱鏡面(例えばキャストドラム)への密着性が向上するためと推定される。また、下塗り層によって、インクの吸収性を好適に調整することができ、印字濃度や印字にじみ、ベタ均一性等の記録適性を改善することができる。
下塗り層の組成は特に限定するものではないが、インク吸収を担う顔料、及びこれを支持体に固定する接着剤を含むことが好ましい。必要により、さらにカチオン性化合物を含有することもできる。
下塗り層に用いる顔料としては、特に制限はなく、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料を1種もしくはそれ以上、併用することができる。これらの中で、酸化亜鉛、酸化チタン、プラスチックピグメント類は、白紙部の黄変を防ぐことができるので配合することが好ましい。また、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライトはインク吸収性が高いので主成分として含有させることが好ましい。
顔料の平均粒子径(凝集顔料の場合は凝集粒子径)は、特に制限はないが、インク吸収性や、後から形成するインク受容層の表面平滑性や光沢性の観点から、1〜12μm程度、更には2〜10μm、特に2〜7μmが好ましく、かかる範囲内の異なる平均粒子径の顔料を複数併用することもできる。
また、インク吸収性を調整したり、下塗り層上に塗工するインク受容層用塗工液の浸透を制御する目的で、副成分として、平均粒子径の小さい、例えば平均粒子径が1μm未満の顔料を配合することができる。この様な顔料としてはコロイダルシリカ、アルミナゾルが挙げられ、特にコロイダルシリカが好ましい。
副成分として配合されるコロイダルシリカ(S)は、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂(P)と組み合わせて配合されることが好ましい。
すなわち、下塗り層中には、コロイダルシリカ(S)と、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂(P)とを含有させるか、あるいは、これらの複合体を含有させることが好ましい。
かかる構成により、光沢性がより向上する。理由は必ずしも明らかではないが、コロイダルシリカ(S)及び重合体樹脂(P)、あるいはこれらの複合体の存在が、下塗り層のインク吸収性を維持したまま、塗被層を形成するための塗工液が下塗り層へ浸透するのを抑制するためと推定される。さらに、理由は不明であるが、光沢層のキャスト仕上げ時の加熱鏡面からの離型性も向上する傾向がある。
コロイダルシリカ(S)はアルカリ性タイプと酸性タイプがあり、下塗り層用塗工液のpH等の物性に合わせて適宜選定する。コロイダルシリカ(S)としては、球状、非球状のいずれも使用可能である。光沢の出やすさは、どちらかといえば球状コロイダルシリカの方が優れ、インク吸収性については非球状コロイダルシリカの方が優れているので、かかる特性を考慮し、いずれかを選定もしくは両者を混合して用いる。
コロイダルシリカ(S)の平均粒子径は特に制限はないが、4〜200nm、特に10〜60nmが好ましい。
コロイダルシリカ(S)の配合量は特に制限はないが、それ以外の顔料100質量部に対し、1〜30質量部、特に1〜10質量部が好ましい。
重合体(P)のエチレン性モノマーとしては特に制限はないが、各種(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン等が挙げられる。
重合体(P)は単独重合体でも共重合体でも良く、さらには、これら重合体の置換誘導体でも良い。置換誘導体としては、例えば、カルボキシ基を導入したものや、導入したカルボキシ基をアルカリ反応性に変性したもの等が挙げられる。
重合体(P)の配合量は特に制限はないが、コロイダルシリカ(S)以外の顔料100質量部に対し、1〜20質量部、特に1〜5質量部が好ましい。
コロイダルシリカ(S)と重合体(P)の複合体は、例えば、
(1)重合体(P)の原料である上記エチレン性モノマーをシランカップリング剤等とコロイダルシリカ(S)の存在下で重合させることで、Si−O−P結合(P:重合体成分)を生成させ、重合体(P)の生成と同時に複合化する、
(2)必要に応じてシラノール基等で変性した重合体(P)とコロイダルシリカ(S)とを反応させて、Si−O−P結合(P:重合体成分)を生成させ、複合化する等の方法で得られる。
下塗り層に配合される接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等の、一般に塗工紙用として用いられている従来公知の接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。
なお、水性ポリウレタン樹脂は、ウレタンエマルジョン、ウレタンラテックス、ポリウレタンラテックス等とも通称されている。また、ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応から得られるものである。比較的多数のウレタン結合及び尿素結合を含む高分子化合物である。
顔料と接着剤の配合割合は、その種類にもよるが、一般に、顔料100質量部に対し接着剤1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で調節される。
下塗り層には必要に応じて、各種カチオン性化合物等のインク定着剤を配合することができる。但し、光沢層にのみインク定着剤を配合し、下塗り層には該成分が実質的に存在しない方が、印刷濃度が高くなる傾向にあり、好ましい。但し、助剤的に、カチオン性界面活性剤等を微量添加することは構わない。
下塗り層には、さらに、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。また、下塗り層中に、蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
また、下塗り層中には、後述する感温性高分子化合物を配合してもよい。感温性高分子化合物を配合することにより、インクジェットプリンターで印字した際の印画画質がより鮮明なものとなる傾向がある。感温性高分子化合物を配合した下塗り層は、その製造時に感温性高分子化合物の感温点以下まで冷却して増粘又はゲル化させた後に例えば熱風乾燥等により乾燥させると、乾燥の際の風圧による微小なぼこつきが抑制されるためであると考えられる。
しかし、感温性高分子化合物を配合すると、材料自体のコストがかかり、また、必要により形成される下塗り層形成用の塗工液の温度管理が必要となるため、温度管理コストが必要となるため、コストの観点からは配合しないことが好ましい。
したがって、下塗り層への感温性高分子化合物の配合は、目的の品質とコストの関係から適宜選択するのがよい。
下塗り層は、上記材料をもって構成される下塗り層用塗工液を支持体上に塗工し、乾燥することにより形成できる。
下塗り層用塗工液は、一般に固形分濃度5〜50質量%程度に調整される。
下塗り層用塗工液の塗工量は、乾燥質量で、好ましくは2〜60g/m、より好ましくは2〜30g/m程度、更に好ましくは4〜10g/m程度である。塗工量を2g/m以上とすることにより、インク吸収性改良効果が充分に得られ、光沢層を設けた際に優れた光沢性が得られ、60g/m以下とすることにより、印字濃度が高くなったり、塗被層の強度が向上し、粉落ちや傷が付きにくくなる傾向がある。
必要により形成される下塗り層用塗工液の塗工には、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知公用の塗工装置が使用できる。
また、下塗り層の形成後、さらに、必要に応じてスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。なお、下塗り層は、2層以上形成しても構わない。
「インク受容層」
本発明は、インク受容層の形成方法が特徴的なものとなっている。
すなわち、透気性支持体上に、或いは透気性支持体上に形成された少なくとも1層の下塗り層上に、温度変化により親水性と疎水性を可逆的に示し、親水性を示す温度領域では塗液が増粘又はゲル化する感温性高分子化合物を含有する塗液を、該感温性高分子化合物が疎水性を示す温度領域で塗工し、該感温性高分子化合物が親水性を示す温度領域まで温度変化させて増粘又はゲル化させ、増粘又はゲル化した該塗被層を乾燥した後に湿潤液を付与した後、加熱鏡面に圧接し乾燥してインク受容層を形成する。
インク受容層中に、感温性高分子化合物を用いることで、感温性高分子化合物が疎水性を呈する温度域で、インク受容層用塗工液を塗工して塗被層を形成した後(この際には増粘やゲル化等せず容易に塗工できる)、感温性高分子化合物が親水性を呈する温度域に温度変化させることで、該層を増粘又はゲル化させることができる。感温性高分子化合物は、インク受容層の接着剤としての機能を有する。
更に、かかる感温性高分子化合物を有する塗液を塗布後、増粘又はゲル化させ、次いで乾燥するため、得られたインク受容層に記録を行うとドット真円性が優れたものとなる。これは、増粘又はゲル化することによりインク受容層の骨格が形成され、その後に乾燥するので、通常乾燥時に発生し易いインク受容層のヒビ割れを制御しているためと考えられる。更に、表面に湿潤液を付与した上で、加熱鏡面に圧接し、乾燥するため、その表面が湿潤液で可塑化された後に鏡面を写しとるため、光沢性が更に向上する。
このような製造方法を採用することにより、インクジェット記録を行った際のドット真円性に優れ、且つ、表面光沢の優れたインクジェット記録用シートが提供することができる。
次に、インク受容層の構成成分などについて説明する。インク受容層の成分としては、感温性高分子化合物を必須成分とし、更に、インク吸収を担う顔料、必要に応じて接着剤やインク定着剤等を用いることができる。
感温性高分子化合物としては、(1)感温点(親疎水性が変化する温度)未満の温度域では親水性、感温点以上の温度で疎水性を呈するもの、逆に(2)感温点以下の温度域で疎水性、感温点より高い温度域で親水性を呈するものが挙げられる。
(1)のタイプでは、感温点以上の温度に調整した塗工液を塗工後、感温点未満に冷却することで、塗被層を増粘又はゲル化することができる。(2)のタイプでは、逆に、感温点以下の温度に調整した塗工液を塗工後、感温点より高い温度に加熱することで、塗被層を増粘又はゲル化することができる。
(2)のタイプでは、温度を上げて増粘又はゲル化する際に、水分が蒸発するので、湿潤液付与時の塗被層の水分量を制御することが相対的に難しい。したがって、本発明では、塗工後、温度を下げることで、塗被層を増粘又はゲル化できる(1)のタイプが特に好適である。以下、このタイプについて言及する。
感温性高分子化合物における親疎水性の変化は、例えば、感温性高分子化合物と水とが共存する系において、温度変化に伴う、粘度や透明性、感温性高分子化合物の水に対する溶解性等の急激な変化として現れる。
したがって、感温点未満の温度域では親水性、感温点以上の温度で疎水性を呈するタイプでは、感温性高分子化合物と水とが共存する系の温度を、感温性高分子化合物が疎水性を示す温度域(感温点以上の温度)から徐々に降下させたときの温度−粘度曲線において、粘度が急激に変化(増粘)する転移点を感温点として測定することができる。
その他、感温性高分子化合物が疎水性を示す温度域(感温点以上の温度)において得られる感温性高分子化合物の水分散液を徐々に冷却したときに、該分散液が透明化あるいはゲル化し始める温度を、感温点として測定することもできる。
感温性高分子化合物の感温点は特に限定しないが、0〜30℃、特に10〜25℃が好ましい。感温点が0℃以上であれば、塗被層を比較的容易に感温点未満とすることができ、増粘又はゲル化の効率が良好となる。なお、感温点未満とするのに長時間を要すると、その間に塗工液が下塗り層や透気性支持体に浸透し、良好な光沢層が形成されず、光沢性が低下する恐れがある。また、感温点が30℃以上では、塗工時の温度管理が困難となり、塗工と同時に増粘又はゲル化するなど、均一塗工や、増粘又はゲル化の制御等が困難となる。
用いて好適な感温性高分子化合物としては、特開2003−40916号公報に開示されている、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下に重合して得られる感温性高分子化合物が挙げられる。
具体的には、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で、単独重合によって温度応答性(親疎水性の変化)を呈する高分子化合物が得られるモノマー(主モノマー(M))、及び必要に応じてこれと共重合可能で、単独重合によっては温度応答性を呈する高分子化合物が得られないモノマー(副モノマー(N))を重合して得られる高分子化合物が挙げられる。
ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体、主モノマー(M)、副モノマー(N)は、各々1種あるいは2種以上用いることができる。
ポリビニルアルコールとしては、ケン化度96〜100%のポリビニルアルコール(完全ケン化型ポリビニルアルコール)、ケン化度76〜95%のポリビニルアルコール(部分ケン化型ポリビニルアルコール)等が挙げられる。ポリビニルアルコール誘導体としては、シラノール変性やカチオン変性等の変性ポリビニルアルコール、メルカプト基やケト基を導入したポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの重合度は特に限定されないが、300〜4000のものが好ましく用いられる。
感温性高分子化合物中のポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の含有率は特に制限はないが、光沢層の耐水性の観点から、0.1〜50質量%、特に0.5〜20質量%が好ましい。
主モノマー(M)としては、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルメチルエーテル等が挙げられる。
具体的には、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
副モノマー(N)としては、親油性ビニル化合物、親水性ビニル化合物、イオン性ビニル化合物等が挙げられる。
ここで、親油性ビニル化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
親水性ビニル化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−メチル−5−ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルピロリジン等が挙げられる。
イオン性ビニル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマー、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
主モノマー(M)と必要に応じて用いられる副モノマー(N)の共重合割合は特に制限はないが、副モノマー(N)の割合が多すぎれば、温度応答性を示さなくなるので、感温性高分子化合物中における副モノマー(N)の割合は50質量%以下、特に30質量%以下が好ましい。
感温性高分子化合物は、高分子エマルジョンの形態で光沢層用塗工液に配合することが好ましい。かかる高分子エマルジョンは、例えば旭化成(株)社から、ALB−221、ALB−213等の商品名で市販されている。また、調製して用いることもできる。上記高分子エマルジョンは、特開2003−040916号公報に記載の方法にて調製できる。すなわち、感温性高分子化合物の感温点以上の温度下で、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、上述したモノマーを用いて重合反応を行うことで調製できる。より具体的には、水に乳化剤を溶解し、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体と主モノマー(M)、必要に応じて副モノマー(N)、ラジカル重合開始剤を加えて乳化重合する方法等が挙げられる。モノマーやラジカル重合開始剤は、一括添加、連続添加、あるいは分割添加することができる。
この高分子エマルジョンと、顔料等の他の成分を混合することで、インク受容層用の塗工液が調製できる。
塗工液の溶媒としては水が好適に用いられるが、感温性高分子化合物の感温点の調整や、キャスト仕上げ時の乾燥を遅くして、印刷適性の良好なインク受容層を得る等の理由から、水の代わりに有機溶媒を用いたり、水と有機溶媒を併用することもできる。
塗被層用塗工液は、調製後塗工するまでの間、感温点以上の温度に保持されていることが好ましい。
インク受容層を構成する顔料としては、特に制限はないが、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカ)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
顔料の平均粒子径は特に制限はないが、平均粒子径10〜1000nmの微細顔料が好ましく用いられる。かかる平均粒子径の顔料を用いることで、良好なインク吸収性を発現させつつ、光沢層の透明性の低下や、これに起因する印刷時の発色性の低下(すなわち印刷濃度の低下)を抑制できる。
微細顔料としては、気相法シリカ、メソポーラスシリカ、活性ケイ酸を縮合させて製造された湿式法シリカのコロイド状物、アルミナ酸化物、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種、特に気相法シリカ及び/又はアルミナ酸化物が好ましく用いられる。
なお、本明細書において、顔料の「平均粒子径」は、顔料の形態(粉体やスラリー状)に関係なく、3%の顔料水分散液を200g調整し、これを市販のホモミキサーで攪拌分散した後(分散条件は1000rpm、30分間とする。)、直ちに電子顕微鏡(SEM及び/又はTEM)にて観察し、1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮像し、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し、これを平均して求めるものとする(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年参照)。
インク受容層には、上記感温性高分子化合物が接着剤の作用を有するが、層強度やインク吸収性などを調節するために、公知の接着剤を適宜配合できる。例えば、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。なお、水性ポリウレタン樹脂は、ポリウレタンエマルジョン、ポリウレタンラテックス等の形態で好適に用いられる。
顔料と接着剤(感温性高分子化合物を含めた量)の配合比はこれらの組み合わせに応じて設定され、特に制限はないが、顔料100質量部に対し、接着剤を1〜100質量部、特に2〜50質量部とすることが好ましい。
インク定着剤は、インク中の着色剤(染料及び/又は着色顔料)成分を定着する成分で、印刷の発色性や保存性を向上するために必要に応じて用いられる、
インク定着剤としては、各種カチオン性化合物等が好ましく用いられ、その具体例としては、(1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(2)第2級又は第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体や、それらのアクリルアミドの共重合体、(3)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、(4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、(7)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(8)ジアリルアミン塩・SO重縮合体、(9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、(11)アリルアミン塩の共重合体、(12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、(14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂、(15)ジメチルアミノプロピルアクリルアミド重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
中でも、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体、及び5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが、発色性に優れ、にじみが少なく、発色ムラのない優れた印刷が得られるので好ましい。
インク定着剤の配合量は特に制限はないが、顔料100質量部に対して1〜30質量部、特に3〜20質量部が好ましい。インク定着剤の配合量が1質量部未満では、印刷濃度向上等のインク定着剤の配合効果が充分に発現せず、30質量部超では、過剰なインク定着剤の存在によって空隙率が低下し、これによって、インク吸収性が低下する恐れがある。
なお、顔料として好適に用いられるシリカは一般にアニオン性を呈するため、カチオン性のインク定着剤と凝集体を生成する場合がある。これは特に微細シリカで顕著である。この場合、一般に市販されている非晶質シリカ(数μmの比較的大きな二次粒子径を有する)にインク定着剤の少なくとも一部を添加し分散させてから、粉砕微細化する、あるいは微細化したシリカ二次粒子分散体にインク定着剤を添加混合し、一旦凝集させた後、再度粉砕する等の手順を採ることが好ましい。これによって、粒径の大きい凝集体の生成を抑制し、顔料を所望の粒径に調整することができる。
このようにして処理した顔料は、インク定着剤が一部結合した構造を呈することで安定化しているのか、更にインク定着剤を追添しても凝集し難いという特性を有する。以下、かかる顔料を、カチオン性微細顔料と称す。
カチオン性微細顔料に用いられる顔料としては、シリカの他、アルミノシリケート等があるが、シリカ、特に気相法シリカが好ましい。
カチオン性微細顔料中における顔料とカチオン性化合物との質量比は特に制限はないが、顔料100質量部に対して、カチオン性化合物を1〜30質量部、特に3〜20質量部とすることが好ましい。また、インク受容層を構成する全顔料中に占めるカチオン性微細顔料の比率を50質量%以上とすることが、インク受容層の透明性が優れるので好ましい。
インク受容層用塗工液には、一般の塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、保存性改良剤、蛍光増白剤、着色剤等の各種添加剤を添加することができる。
透気性支持体上、又は必要に応じて設けられる下塗り層上に、上記塗工液を塗工する方法としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター、スプレー等の各種公知公用の塗工装置が使用できる。この中でもエアーナイフコーター、リップコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スロットダイコーターが好適に用いられる。これらの塗工装置を用いると、透気性支持体や下塗り層の微少な凹凸の影響を受けにくく均一な厚さで塗被層を形成できるためか、光沢感がより良好になる傾向にある。
塗工量は特に制限はないが、絶乾質量で、2〜15g/m、さらには2〜10g/m、特に3〜8g/mが好ましい。塗工量を2g/m以上とすることで、優れた光沢性とインク吸収性が得られ、15g/m以下とすることで、光沢層のひび割れが抑制され、インクジェット印刷時のドット真円性等が良好なものとなる。
塗工された塗液層は、未乾燥の状態、あるいは若干乾燥された状態で感温点以下の温度に冷却する。冷却する方法としては特に制限はないが、冷風機、クーリングロール、低温ガスなどを用いて冷却することができる。冷却によって、塗液層が増粘又はゲル化する。
過度の冷却はゲル化の度合いが強固になりすぎ、かえって光沢性を損なう場合があるので、感温点より10℃低い温度〜感温点の範囲内で、冷却することが好ましい。
また、塗被層を形成する下地面(透気性支持体あるいは下塗り層の表面)は、冷風や感温点未満の温度の処理液等にて、あらかじめ感温点未満、特に感温点より10℃以上低い温度に冷却しておくことが好ましい。これによって、塗工後の冷却効率を高めることができる。特に、感温点未満の温度の処理液を下地面に直接塗布する方法が、下地面を速やかに冷却することができ、好ましい。また、塗被層の冷却効率の観点から、処理液が未乾燥のうちに光沢層用塗工液を塗工することが好ましい。
かかる手順を採用することで、塗工後、塗被層を速やかに増粘又はゲル化させることができ、その結果、インクジェット記録用等としての印刷適性に優れ、顔料インクに対しても良好な印刷適性を呈する光沢層が形成できる。
特に、塗液を塗工する前のシートに、感温点よりも低い処理液(例えば、冷水等)をシートに塗布する方法が、シートの温度を速やかに変化させることができ、最も好ましい。処理液を塗布する際の液の温度は、感温点より10℃以上低いと、光沢層塗液の温度変化が迅速に行われ、好ましい。この場合、インクジェット記録用紙としては、均一な記録が行え、顔料インクに対しても優れた記録適性を得ることができる。
処理液としては、水や有機溶媒等が用いられ、使用の簡便性の点で水が好ましく用いられる。処理液に、カチオン性化合物や保存性改良剤を添加すると、該成分が支持体や下塗り層に浸透し、耐水性の向上や耐熱湿にじみの向上効果が見られ、好ましい。その他、硼素化合物やジルコニウム化合物等の架橋剤、pH調製剤、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等の助剤を添加することもできる。また、感温性高分子化合物の感温点の調整や、キャスト加工時の乾燥を遅くして、印刷適性の良好な光沢層を得るために、有機溶媒を配合又は併用することもできる。
増粘又はゲル化した塗被層は、次いで乾燥され、湿潤液を付与した後、加熱鏡面に圧接し、乾燥される。湿潤液付与時の塗被層の水分量は、特に制限はしないが、12質量%以上とすることが好ましく、12質量%以上、40質量%以下となるように乾燥することがより好ましい。湿潤液付与時の塗被層の水分量が12質量%未満では、高光沢なインク受容層が安定して製造し難くなる傾向にある。これは、乾燥による塗被層内の骨格形成が進みすぎ、湿潤液による可塑化のレベルが不充分となるためと推察される。また、湿潤液付与時の塗被層の水分量が著しく高いと、加熱鏡面に圧接する際の水分蒸発量が多くなり、塗被層表面にピンホール等の欠陥が生じ、これによって光沢性が低下する傾向にある。湿潤液付与時の塗被層の水分量を14〜35質量%とすることがより好ましく、18〜32質量%とすること更に好ましい。
本明細書において、「塗被層の水分量」は、赤外線水分計KJT−100((株)ケット科学研究所製)を使用し測定するものとする。なお、測定面の反対側にペーパーロール等が接していると、その影響で測定値に誤差が生じることがあるので、測定面の反対側に他の部材が接していない箇所で測定を実施するものとする。
赤外線水分計では、近赤外線域にある水の吸収波長(具体的には1.2μm、1.45μm、1.94μm)の光を塗被層に照射すると、層の水分量に応じて光が吸収されるので、これを利用し、その減衰量から水分量を測定するものである。厳密には、吸収波長のみの計測では、層の表面状態や色等の影響を受け、安定した測定が難しいため、水の影響を受けにくい近赤外線(参照波長)を別に設定し、吸収波長と参照波長の光を交互に照射し、反射してくる両波長光のエネルギーの比から、水分量を算出する。
湿潤液としては塗被層の表面を湿潤し得るものであれば特に制限はないが、水等が好ましく用いられる。また、キャスト仕上げ時の加熱鏡面からの離型性を考慮すれば、離型剤を含む水が好ましく用いられる。
なお、離型剤は、湿潤液に含ませる他、光沢層用塗工液中に含ませたり、加熱鏡面に塗布することも可能であり、さらにはこれらを組み合わせることも可能であるが、より少ない使用量で良好な離型性が発現しやすいことから、湿潤液に含ませることが特に好ましい。
離型剤としては特に制限はないが、ステアリルリン酸カリウム等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモミウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、離型性向上効果に優れ、且つ印刷にじみを抑制する効果をも有することから、高級脂肪酸アミドが好ましく用いられる。特に、光沢層及び/又は湿潤液にカチオン性化合物が含まれる場合、その効果は顕著である。
離型剤の使用量は特に制限はないが、湿潤液に含有させる場合は0.05〜20質量%、さらには0.1〜10質量%、特に0.1〜5質量%が好ましい。光沢層に含有させる場合は、顔料100質量部に対し0.1〜50質量部、さらには0.3〜30質量部、特に0.5〜20質量部が好ましい。配合量が少ないと、離型性向上効果が充分に発現せず、多いと光沢性の低下、インクのハジキや印刷濃度の低下等を招く場合がある。
湿潤液はさらに、カチオン性化合物や保存性改良剤等を含むものであっても良い。これらは各々1種又は2種以上を用いることができる。
湿潤液にカチオン性化合物を添加することで、印刷の耐水性や印刷濃度を向上することができる。カチオン性化合物としては、光沢層のインク定着剤で例示したものが用いられる。
湿潤液に保存性改良剤を添加することで、印刷の保存性を改良することができる。その具体例としては、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物や、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物等の水溶性多価金属塩や、ビス[2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル]スルホン、2−(フェニルチオ)エタノール等の含イオウ化合物、ベンゾトリアゾール、酸化セリウム等の紫外線吸収剤、アスコルビン酸、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ルチン等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤等が挙げられる。中でも、ビス[2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル]スルホンは、インクジェット印刷の耐ガス性が向上するため、好ましい。
湿潤液には、その他必要に応じて、スチレン−ブタジエンラテックス、メチルメタクリレート─ブタジエン共重合体ラテックス等の合成樹脂ラテックス、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体類、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、アクリルエマルジョン、ポリアマイド、ポリエステル、アルカリ増粘型や非イオン界面活性剤等の各種増粘剤や流動変性剤、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、第一燐酸ナトリウム、燐酸アンモニウム、燐酸カルシルム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、モノクロル酢酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、クエン酸カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等の無機酸や有機酸のアンモニウム塩や金属塩類、更には、メチルアミン、ジエチレントリアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンエーテルリン酸エステル塩、アルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩等のリン酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン、アンモニア水、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル等の多官能性エポキシ化合物、尿素─ホルムアルデヒド系、ポリアミド─エピクロロヒドリン系、グリオキザール等の各種耐水化剤や印刷適正向上剤等の各種添加剤を、1種又は2種以上添加することができる。
これらの添加量は特に制限はないが、湿潤液中、0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%が好ましい。
湿潤液にはさらに必要に応じて、分散剤、消泡剤、着色剤、蛍光染料、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤を添加することができる。また、助剤として、アルミナ、シリカ、クレー、炭酸カルシウム等の顔料を添加することもできる。
湿潤液は一度で全量を付与しても、複数回に分けて付与しても構わない。複数回に分けることで、例えば混合すると凝集してしまうような複数の添加物の組み合わせでも、湿潤液として塗布することができる。
湿潤液の付与量は、特に制限はないが、5〜50ml/m程度が好ましい。湿潤液の付与量が少なすぎると、塗被層の可塑化が不十分となり、良好な光沢性が発現しなくなる恐れがある。湿潤液の付着量が多すぎると、過熱鏡面上での水分蒸発量が多くなりすぎて、良好な光沢性が発現しなくなる恐れがある。
湿潤液の付与方法については特に制限はなく、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター、スプレー等の各種公知公用の塗工装置が使用できるが、より高度の光沢性がえられることから、キャスト仕上げ時、すなわち加熱鏡面ロールとこれに対向配置されるプレスロールの間(ニップ)を通過する際に湿潤液を同時に付与することが好ましい。
本発明では、いずれも塗被層の表面に湿潤液を付与した後、塗被層を加熱鏡面(通常はキャストドラム)に圧接し、キャスト仕上げを行う。塗被層は、加熱鏡面への圧接により表面に光沢性が付与されると同時に乾燥される。
加熱鏡面の温度は特に制限はないが、80〜120℃が好ましい。加熱鏡面の温度が80℃未満では、乾燥効果が悪く、生産性が低下する恐れがあり、120℃を超えると、塗工液が加熱鏡面上で突沸し、光沢性や印刷適性が低下する恐れがある。
また、光沢層に感温性高分子化合物を用いる場合、加熱鏡面の温度は、感温性高分子化合物のガラス転移温度の±20℃以内の温度に設定することが好ましい。感温性高分子化合物のガラス転移温度が、加熱鏡面の温度より20℃を超えて低い場合、乾燥時に光沢層の成膜が進み過ぎて表面の空隙が低下し、インク吸収性の低下を招く恐れがある。逆に、感温性高分子化合物のガラス転移温度が、加熱鏡面の温度より20℃を超えて高い場合、成膜が不充分となり、空隙の残量が多くなり、光沢性が不充分となる恐れがある。
なお、加熱鏡面に圧接するだけでは充分な乾燥が実施できないような場合には、キャスト仕上げ前に、例えば塗被層の水分量が12質量%未満とならないように、予備乾燥を実施しても良い。また、近赤外線乾燥機等の補助乾燥手段による補助乾燥をキャスト仕上げ中又は仕上げ後に実施しても構わない。
インクジェット記録用光沢シートには、必要に応じて上記以外の層を設けることができる。例えば、裏面側にカール等の防止や、摩擦性の調整、手触り・風合いの調整等を目的として、樹脂、及び必要に応じて顔料や染料を含む裏面層を設けることができる。樹脂としては、インクジェット印刷時のカールを防止効果、及びプリンタ搬送性の向上効果に優れ、印刷の質感を写真用印画紙に近づけることができることから、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
本発明の製造方法によれば、光沢性とインクジェット印刷適性の双方に優れた、インクジェット記録用光沢シートを安定的に提供することができる。本発明で得られるインクジェット記録用光沢シートは、用いるインク(染料系、顔料系)の種類等に関係なく、写真調等の美麗なインクジェット印刷を施すことができるものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記例によって何ら限定されるものではない。例中、「部」及び「%」は特に断らない限り、質量基準とする。
(透気性支持体の調整)
はじめに、木材パルプ(LBKP:ろ水度440mlCSF)100部、填料(炭酸カルシウム3:タルク1の比率)15部、市販サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー(株)製)0.05部、硫酸バンド0.45部、澱粉0.45部、紙力増強剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂0.4部、歩留向上剤少々よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて抄紙した。坪量は174g/mとした。この紙に対して、100kg/cmの線圧でスーパーカレンダー処理を施した。透気性支持体(原紙)を得た。この支持体の厚さは205μm、王研式透気度は30秒/100ccであった。
(下塗り層用塗工液の調整)
顔料として合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−30、(株)トクヤマ製、平均二次粒子径3.2μm)100部、接着剤としてシリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、クラレ(株)製)25部、蛍光染料(商品名:WhitexBPS(H)、住友化学(株)製)2部。および水を混合し、下塗り層用塗工液を調整した。固形分濃度は16%とした。
(カチオン性微細顔料の調整)
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均一次粒子径9nm、比表面積300m/g、(株)トクヤマ製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均二次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。
該分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績(株)製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均二次粒子径300nmからなる12%分散液を調製し、カチオン性微細顔料を得た。
(インク受容層用塗工液の調整)
・インク受容層用塗工液A
40℃下で、上記カチオン性微細顔料100部、感温性高分子化合物(ALB−221、旭化成(株)製、感温点24℃)25部、消泡剤0.1部、及び水を混合し、インク受容層用塗工液Aを得た。固形分濃度は10%とした。
・インク受容層用塗工液B
50℃下で、上記カチオン性微細顔料100部、感温性高分子化合物(ALB−213、旭化成(株)製、感温点32℃)25部、消泡剤0.1部、及び水を混合し、インク受容層用塗工液Bを得た。固形分濃度は10%とした。
・インク受容層用塗工液C
上記カチオン性微細顔料100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA145、クラレ(株)製)25部、消泡剤0.1部、及び水を混合し、インク受容層用塗工液Cを得た。固形分濃度は10%とした。
(湿潤液の調整)
湿潤液として、ステアリン酸アミド系離型剤を1質量%含有する水溶液を調整した。
(実施例、比較例)
いずれの例においても、上記透気性支持体上に、上記下塗り層用塗工液を、乾燥質量が7g/mとなるように、エアーナイフコーターで塗工し塗被層を形成し、該層を120℃で1分乾燥して、下塗り層を形成した。この上に、条件を変えてインク受容層を形成した。以下、各例におけるインク受容層の形成手順について説明する。
<実施例1>
下塗り層の表面温度を23℃に調整した後、上記インク受容層用塗工液A(35℃に調整)を、絶乾質量で5g/mスロットダイコーターで塗工し、塗被層を形成した。続いて、冷風機を用いて温度20℃まで冷却し、塗被層をゲル化させた。この時点での塗被層の水分量は21%であった。その後、湿潤液を付与後直ちに、塗被層面を表面温度100℃のキャストドラムに圧接して、光沢性の付与と乾燥を実施し、本発明のインクジェット記録用光沢シートを得た。
<実施例2>
実施例1において、塗被層をゲル化させた後に、続いて熱風乾燥機により、塗被層の水分量が14%になるまで乾燥し、続いて湿潤液を付与した以外は、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用光沢シートを得た。
<実施例3>
下塗り層の表面温度を23℃に調整した後、下塗り層上に、10℃の冷水30cc/mを塗布した。続いて上記インク受容層用塗工液A(35℃に調整)で、絶乾質量で5g/mスロットダイコーターで塗工し、塗被層を形成した。続いて、冷風機を用いて温度が20℃まで冷却し、塗被層をゲル化させた。この時点での塗被層の水分量は31%であった。その後、湿潤液を付与後直ちに、塗被層面を表面温度100℃のキャストドラムに圧接して、光沢性の付与と乾燥を実施し、本発明のインクジェット記録用光沢シートを得た。
<実施例4>
実施例3において、冷水80g/mを塗布し、湿潤液付与前の水分量が41%であった以外は実施例3と同様にして、本発明のインクジェット記録用光沢シートを得た。
<実施例5>
実施例1において、塗被層をゲル化させた後に、続いて熱風乾燥機により、塗被層の水分量が10%になるまで乾燥し、続いて湿潤液を付与した以外は、実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用光沢シートを得た。
<比較例1>
湿潤液を付与しなかった以外は実験例1と同様にして、インクジェット記録用光沢シートを得た。キャストドラムに圧接前の塗被層の水分量は21%であった。
<比較例2>
下塗り層の表面温度を23℃に調整した後、2.0%硼砂水溶液(23℃に調整)を乾燥質量で0.15g/mとなるように塗工し、乾燥することなく上記インク受容層用塗工液C(23℃に調整)を、絶乾質量で5g/mスロットダイコーターで塗工し、塗被層を形成した後、塗被層の水分量は23%となるまで乾燥した。その後、湿潤液を付与後直ちに、塗被層面を表面温度100℃のキャストドラムに圧接して、光沢性の付与と乾燥を実施し、インクジェット記録用光沢シートを得た。
<比較例3>
塗被層の水分量が10%になるまで乾燥を行なった以外は、比較例2と同様にしてインクジェット記録用光沢シートを得た。
<実施例6>
下塗り層の表面温度を23℃に調整した後、上記インク受容層用塗工液B(45℃に調整)を、絶乾質量で5g/mスロットダイコーターで塗工し、塗工層を形成した。続いて、冷風機を用いて温度28℃まで冷却し、塗被層をゲル化させた。この時点での塗被層の水分量は22%であった。その後、湿潤液を付与後直ちに、塗被層面を表面温度100℃のキャストドラムに圧接して、光沢性の付与と乾燥を実施し、本発明のインクジェット記録用光沢シートを得た。
<実施例7>
再湿潤液を水とした以外は実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用光沢シートを得た。再湿潤液塗布前の塗被層の水分量は21%であった。
<実施例8>
インク受容層用塗工液Aの塗工にバーコーターを用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のインクジェット記録用光沢シートを得た。湿潤液塗布前の塗被層の水分量は21%であった。
(評価方法、及び評価基準)
「水分量の測定」
光沢層の水分量の測定は、赤外線水分計KJT−100((株)ケット科学研究所製)を用いて行った。
「光沢性」
光沢シート表面に対し横方向より、光沢感、平滑感を目視により評価した。
◎:極めて高い光沢感がある。
○:高い光沢感がある。
△:光沢感がある。
×:光沢感がやや劣る。
××:光沢が無くマット調。
「インクドット真円性」
市販の染料インクタイプのインクジェットプリンター(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて、各インク滴が重ならないような、インク密度の低いハーフトーンの印字を行ない、ハーフトーン(10%階調)印字部分を光学顕微鏡にて200倍に拡大して観察し、それぞれのインクドットの形状が真円を示しているかどうかを目視にて評価した。
◎:インクドットの形状が真円であり、非常に良好なレベル。
○:インクドットの形状がほぼ円形であり、良好なレベル。
△:インクドットの形状はほぼ円形であるものの一部に形状の乱れが見られ、やや不良なレベル。
×:インクドットの形状が不安定であり、不良なレベル。
「印字濃度」
市販の染料インクタイプのインクジェットプリンター(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて黒のベタ印字を行ない、その印字濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth RD−914)で測定した。
「印字にじみ」
市販の染料インクタイプのインクジェットプリンター(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの各色ベタを、互いに境界を接するようにマス目状に配置した印字を行ない、各色間の境界部でのインクのにじみを目視にて評価した。
◎:印字のにじみは全く認められず、優れたレベル。
○:印字のにじみがわずかに認められるが実用上問題の無いレベル。
△:印字のにじみがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字のにじみが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
「ベタ印字部の均一性(ベタ均一性)」
市販の染料インクタイプのインクジェットプリンター(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)を用いて、印字を行ない、グリーンベタ印字部の印字ムラ(濃淡ムラ)を目視にて評価した。
◎:印字ムラは全く認められず、優れたレベル。
○:印字ムラがわずかに認められるが実用上問題の無いレベル。
△:印字ムラがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字ムラがあり、実用上問題となるレベル。
結果を表1に示す。同表には、光沢層の主な形成条件についても記載する。
Figure 2006001019
実施例1〜2のインクジェット記録用光沢シートは、全ての評価項目で優れていた。またインク受容層塗工前に14℃の処理液で処理した実施例3のインクジェット記録用光沢シートは、全ての評価項目で優れており、実施例1のインクジェット記録用光沢シートよりもさらに光沢性と印字にじみに優れていた。
湿潤液塗布を行わなかった比較例1のインクジェット記録用光沢シートと比較するとその効果は顕著である。また、感温性高分子化合物を用いない比較例2、3のインクジェット記録用光沢シートと比較しても、光沢性、インクドット真円性の効果がわかる。
また、湿潤液塗布前の水分量が40質量%を越える実施例4のインクジェット記録用光沢シートは、実施例1よりも光沢性とインクドット真円性がやや劣る傾向があり、湿潤液塗布前のインク受容層の水分量が12質量%未満である実施例5のインクジェット記録用光沢シートも、実施例1に比べ光沢性とインクドット真円性にやや劣る。このことから、好ましい湿潤液塗布前のインク受容層の水分量が12%以上、40%以下であることがわかる。
感温性高分子化合物の感温点を30℃より高くした実施例6のインクジェット記録用光沢シートは、実施例1に比べ光沢性が劣る傾向にあるが、インクドット真円性は同等に優れるものであった。
湿潤液に離型剤を用いなかった実施例7のインクジェット記録用光沢シートは、実施例1に比べ光沢性が劣る傾向にあるが、インクドット真円性は同等に優れるものであった。
インク受容層用塗工液の塗工にバーコーターを用いた実施例8のインクジェット記録用光沢シートは、実施例1と比べインクドット真円性がわずかに劣る傾向にある。
本発明のインクジェット記録用光沢シートの製造方法で得れたインクジェット記録用光沢シートは、高い光沢性を有するとともに、印画濃度や印字にじみ、インクドット真円性等に優れるため高精細な画像を印字可能な、極めて実用性の高いものである。

Claims (6)

  1. 透気性支持体上に、温度変化により親水性と疎水性を可逆的に示し、親水性を示す温度領域では塗液が増粘又はゲル化する感温性高分子化合物を含有する塗液を、該感温性高分子化合物が疎水性を示す温度領域で塗工し、該感温性高分子化合物が親水性を示す温度領域まで温度変化させて増粘又はゲル化させて塗被層を形成し、該塗被層を乾燥した後に湿潤液を付与した後、加熱鏡面に圧接し乾燥してインク受容層を形成することを特徴とするインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
  2. 塗被層の乾燥が、塗被層の水分量が12〜40質量%となるように乾燥する請求項1記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
  3. 湿潤液が、0.05〜20質量%の離型剤を含有する、請求項1又は2記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
  4. 感温性高分子化合物を含有する塗液を塗工するより前に、該感温性高分子化合物が親水性を示す温度領域の処理液を塗布する請求項1〜3のいずれか一項記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
  5. 前記感温性高分子化合物の感温点が0〜30℃であり、感温点以上では疎水性を示し、感温点未満では親水性を有する請求項1〜4のいずれか一項記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録用光沢シートの製造方法によって得られたインクジェット記録用光沢シート。

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