JP2005504086A - 17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−aag)および他のアンサマイシン類を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
高い収率,純度,および種々の多型の17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−AAG)および他のアンサマイシンを製造する効率的な化学プロセスが記載され特許請求される。
Description
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は,Zhangら(米国特許仮出願60/331,893,2001年9月21日出願)およびZhangら(米国特許仮出願60/326,639,2001年9月24日出願)(いずれも,“PROCESS FOR PREPARING 17−ALLYL AMINO GELDANAMYCIN(17−AAG) AND OTHER ANSAMYCINS”と題する)に基づく優先権を主張する。これらの出願は,図面を含めその全体を本明細書の一部としてここに引用する。
【0002】
発明の分野
本発明は,例えば,抗生物質として,および癌等の種々の増殖性疾患の治療において有用な化合物であるアンサマイシンに適用される製造化学に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は,本発明を理解するのに有用であろう情報を含む。本明細書に記載される情報のいずれかが本発明に対する先行技術であるかまたは関連性があると認めるものではなく,また,本明細書において特定してまたは暗示的に引用されるいずれかの刊行物が本発明に対する先行技術であると認めるものではない。
【0004】
17−アリルアミノ−ゲルダナマイシン(17−AAG)はゲルダナマイシン(GDM)の合成類似体である。いずれの分子も,アンサマイシンとして知られる抗生物質分子の広義の群に属する。GDMは,最初に微生物Streptomyces hygroscopicusから単離され,元々はある種のキナーゼの強力な阻害剤として同定された。後にこれは,キナーゼ分解を刺激することにより,特に“分子シャペロン”,例えば熱ショック蛋白質90(HSP90)を標的とすることにより,作用することが示された。その後,種々の他のアンサマイシン類が多かれ少なかれそのような活性を有することが示され,このうち,17−AAGが最も有望であり,これは,現在National Cancer Institute(NCI)により行われている集中的な臨床試験の主題である(例えば,Federal Register,66(129):35443−35444;Erlichman et al.,Proc.AACR(2001),42,abstract 4474を参照)。
【0005】
HSP90は,シグナル伝達,細胞サイクルの制御および転写制御に関与する鍵となる蛋白質を含む,広範な範囲の蛋白質のフォールディング,活性化およびアセンブリに関与する,偏在性のシャペロン蛋白質である。研究者達は,HSP90シャペロン蛋白質が,重要なシグナリング蛋白質,例えばステロイドホルモンレセプターおよび蛋白質キナーゼ,例えば,Raf−1,EGFR,v−Srcファミリーキナーゼ,Cdk4,およびErbB−2と関連していることを報告している(Buchner J.,1999,TIBS,24:136−141;Stepanova,L.et al.,1996,GenesDev.10:1491−502;Dai,K.et al.,1996,J.Biol.Chem.271:22030−4)。さらに,研究により,ある種のコシャペロン,例えば,Hsp70,p60/Hop/Sti1,Hip,Bag1,HSP40/Hdj2/Hsj1,イムノフィリン,p23,およびp50が,その機能においてHSP90を助けることが示された(例えば,Caplan,A.,1999,Trends in Cell Biol.,9:262−68を参照)。
【0006】
アンサマイシン抗生物質,例えば,へルビマイシンA(HA),ゲルダナマイシン(GM),および17−AAGは,HSP90のN末端ポケットに強く結合することにより,その抗癌性の効果を発揮すると考えられている(Stebbins,C.et al.,1997,Cell,89:239−250)。このポケットは高度に保存され,DNAジャイレースのATP結合部位に対して弱いホモロジーを有する(Stebbins,C.et al.(上掲);Grenert,J.P.et al.,1997,J.Biol.Chem.,272:23843−50)。さらに,ATPおよびADPは両方とも,低い親和性でこのポケットに結合し,弱いATPase活性を有することが示されている(Proromou,C.et al.,1997,Cell,90:65−75;Panaretou,B.et al.,1998,EMBO J.,17:4829−36)。インビトロおよびインビボ研究は,このN末端ポケットがアンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤で占められると,HSP90機能が変化し,蛋白質フォールディングが阻害されることを示した。アンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤は,高濃度で蛋白質基質のHSP90への結合を妨害することが示されている(Scheibel,T.,H.et al.,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:1297−302;Schulte,T.W.et al.,1995,J.Biol.Chem.270:24585−8;Whitesell,L.,et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8324−8328)。アンサマイシンはまた,シャペロンに会合した蛋白質基質のATP依存性放出を阻害することが示されている(Schneider,C.,L.et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:14536−41;Sepp−Lorenzino et al.,1995,J.Biol.Chem.270:16580−16587).いずれの場合も,基質はプロテオソーム中でユビキチン依存性のプロセスにより分解される(Schneider,C.,L.(上掲);Sepp−Lorenzino,L.,et al.,1995,J.Biol.Chem.,270:16580−16587;Whitesell,L.et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:8324−8328)。
【0007】
この基質の不安定化は,腫瘍およびトランスフォームしていない細胞において同様に生じ,シグナリングレギュレータ,例えば,Raf(Schulte,T.W.et al.,1997,Biochem.Biophys.Res.Commun.239:655−9;Schulte,T.W.,et al.,1995,J.Biol.Chem.270:24585−8),核ステロイドレセプター(Segnitz,B.,andU.Gehring.1997,J.Biol.Chem.272:18694−18701;Smith,D.F.et al.,1995,Mol.Cell.Biol.15:6804−12),v−src(Whitesell,L.,et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8324−8328)およびある種の貫膜チロシンキナーゼ(Sepp−Lorenzino,L.et al.,1995,J.Biol.Chem.270:16580−16587),例えばEGFレセプター(EGFR)およびHer2/Neu(Hartmann,F.,et al.,1997,Int.J.Cancer 70:221−9;Miller,P.et al.,1994,Cancer Res.54:2724−2730;Mimnaugh,E.G.,et al.,1996,J.Biol.Chem.271:22796−801;Schnur,R.et al.,1995,J.Med.Chem.38:3806−3812),CDK4,および変異体p53のサブセットに特に有効であることが示されている(Erlichman et al.,Proc.AACR(2001),42,abstract 4474)。アンサマイシンに誘導されるこれらの蛋白質の欠失は,ある種の制御経路の選択的破壊につながり,その結果,細胞サイクルの特定の期における成長の静止(Muise−Heimericks,R.C.et al.,1998,J.Biol.Chem.273:29864−72),およびアポトーシス,および/またはそのように処理された細胞の分化が生ずる(Vasilevskaya,A.et al.,1999,Cancer Res.,59:3935−40)。
【0008】
したがって,アンサマイシンは,多くのタイプの癌および増殖性疾患の治療および/または予防に非常に有望である。しかし,現在のところ,アンサマイシンを製造する種々の既知の方法は,以下の1またはそれ以上の性質を有する:収率が低い,純度が低い,不安定である,ハロゲン化有機溶媒の使用のため環境に毒性である,および時間,費用,廃棄物処理,およびそのようにして製造された薬剤を投与された者の健康リスクについての追加の付随コストを要する。既知の方法の例には,Sasakiら(米国特許4,261,989,出願人Kaken Chemical Co,Ltd.,種々の有機溶媒および単調で退屈な抽出手法を用いる,17−AAG等の種々のアンサマイシン誘導体の合成を報告する),およびSchnurら(米国特許5,932,566およびPCT/IB94/00160(WO95/01342),出願人Pfizer Inc.,同様のプロセスを記載する)が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は,従来技術の欠点の1またはそれ以上を改良すること,すなわち,低収率,低純度,不安定性,ハロゲン化有機溶媒の使用に伴う環境毒性,時間,費用,廃棄物処理,および健康リスクについての追加の付随コストの1またはそれ以上を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
発明性のある観点がいくつか存在する。第1の観点においては,本発明は,揮発性非プロトン性および揮発性プロトン性溶媒の両方を使用する,アンサマイシンを製造する効率的な化学プロセスを特徴とする。このプロセスは,ベンゾキノンゲルダナマイシン(GDM)からベンゾキノンゲルダナマイシン誘導体,例えば,17−AAGまたはその4,5−ジヒドロ類似体を製造するのにとりわけ有用である。後者の観点の態様は,例えば,4,5−ジヒドロゲルダナマイシンまたはゲルダナマイシン(またはベンゾキノン部分に反応性成分,例えばメトキシを有する他のベンゾキノンゲルダナマイシン)と,求核基とを,揮発性非プロトン性溶媒,例えば,表1に示されるものから選択される溶媒中で混合して粗生成物を生成し,次にこれを蒸発を用いて濃縮し,得られた生成物に,洗浄としてまたはアンサマイシン生成物を溶液から結晶化または沈殿させるのに適した条件下で,揮発性プロトン性溶媒を加える。いずれの場合も,両方のタイプの溶媒は慣用的に,例えば,濾過,遠心分離,デカントおよび/または蒸発により除去する。特定の態様に依存して,利点には,限定されないが,精製後処理の減少,収率および/または純度の増加,および臨床上許容しうる試薬の使用が含まれる。
【0011】
以下は,本発明の1つの観点および態様の例示的反応スキームである:
【化1】
[式中,R1およびR2は,両方とも水素であるか(この場合,C4とC5との間の結合は単結合である),またはR1およびR2は両方とも存在しない(この場合,C4とC5との間には二重結合が存在する)。C4とC5との間の点線は両方の可能性があることを示す。Nu−Hは,反応の間に17位のR3O−基を置き換える求核基を表す。R3は,好ましくは1−4個の炭素を有するアルコキシであり,好ましくはメトキシである。反応は,揮発性非プロトン性溶媒,例えば,THF,エチルエーテル,MTBE,THP,ジオキサン,エチルsec−ブチルエーテル,メチルブチルエーテル,酢酸エチル,または酢酸メチルから選択される溶媒を用いて行い,粗置換生成物を得る。非ハロゲン化溶媒が好ましい。ある態様においては,主として一置換生成物が生成されるように,置換されるべきベンゾキノンゲルダナマイシン誘導体に求核基をゆっくり加える。この工程は,例えば,TLC,HPLC等のクロマトグラフィー手法,または当該技術分野において一般に知られる他の方法,例えば分光測定,NMR等によりモニターして,反応の完了を判断してもよい。そのような手法はまた,プロセスの後の工程において用いてもよく,これは以下に記載される。好ましい態様においては,実質的にすべてのベンゾキノンアンサマイシン反応体がその対応する誘導体に変換されるよう,完了するまで反応を続ける。
【0012】
揮発性非プロトン性溶媒中で粗置換生成物を製造した後,蒸発を用いて生成物を濃縮し,次に揮発性プロトン性溶媒,例えば,イソプロパノール,エタノール,および/または水でスラリー化するかまたは溶解する。本明細書において用いる場合,“スラリー化する”との用語は,固体,例えばアンサマイシンが認めうるほどに溶解しない条件下における,液体中の固体の懸濁物を表す。このようにして,特にそのような条件下で不純物が固体より高い溶解性を示す場合には,“洗浄”を行うことができる。以下の実施例1はその例示である。洗浄の代わりにまたはこれと組み合わせて,結晶化法を行うことができ,これは以下の実施例2に具体的に記載される。
【0013】
それぞれの揮発性非プロトン性およびプロトン性溶媒は,慣用的に,例えば蒸発により除去することができ,蒸発と,遠心分離,加熱および/または真空とを組み合わせてもよい。当業者には理解されるように,調和して圧力を低くすれば(高い真空),より低い温度を用いることもできる。ある態様においては,熱または標準的な室温乾燥を単独で用いることができる。1またはそれ以上の濾過工程もまた用いることができ,フィルターを通して揮発性プロトン性溶媒を用いる慣用的な洗浄を用いて不純物を減少させることができる。
【0014】
ある態様においては,求核基が用いられ,これはアミン,チオール,チオレート,チオエーテル,アルコール,およびアルコキシドからなる群より選択される。これらはそれぞれ,後に追加の化学成分を結合させて,例えば,得られるベンゾキノンアンサマイシン誘導体を別の構造につなげることができる1またはそれ以上の官能基を構成してもよく,有してもよく,有するよう修飾してもよい。ある好ましい態様においては,求核基は,構造:
【化2】
[式中,R4およびR5は,独立して,水素,(C1−C12)アルキル,またはアリル,プロパルギル,ヒドロキシ,アミノ,メルカプト,カルボキシラトまたはハロゲン官能基で任意に置換されていてもよい(C1−C12)アルキルを表す]
を有する第1または第2アミンである。用いることができる一般のアミンの非網羅的リストとしては,Sasakiの米国特許4,261,989の表Iに見いだされるものが挙げられる。また,他の官能基,例えばオレフィンも結合させることができることが理解されるであろう。ある態様においては,例えば,17−AAGまたは4,5ジヒドロ類似体の製造においては,求核基はアリルアミンである。用いることができる他の有用な求核基には,限定されないが,発明の詳細な説明に記載されるものが含まれる。
【0015】
ある態様においては,生成物および/または反応物の光分解を防止または最小限にするために,プロセスの1またはそれ以上の工程において弱い光を用いることも有用であろう。この目的のため,最終生成物を光耐性容器に保存して,生成物を保存しその安定性および貯蔵寿命を助けることができる。
【0016】
上述の本発明のプロセスの観点は,示される態様の互いに矛盾しない任意の組み合わせを特徴とすることができる。より広いプロセスの観点においては,本発明は,アンサマイシンを濃縮および/または精製する方法を特徴とする。この方法は,揮発性非プロトン性溶媒,好ましくはハロゲン化されていない溶媒を用い,次に蒸発させ,揮発性プロトン性溶媒,例えば以下の実施例1および2において用いた溶媒を用いて,洗浄または結晶化を行う。本発明の別の観点は,そのようなプロセスにより製造された生成物を特徴とし,それぞれの生成物は上述した態様のプロセスのいずれにしたがって製造してもよい。
【0017】
別の観点においては,本発明は,17−AAGを製造する方法を特徴とする。該方法は,プロトン性溶媒溶液に溶解した17−AAGを用意し,そして前記17−AAGを前記プロトン性溶媒溶液から結晶化し,前記プロトン性溶媒溶液は実質的に水を含まず,そして次に前記プロトン性溶媒溶液を除去することを含む。“製造する”との用語は,例えば,濃縮し,精製し,または17−AAGの現在の多型を別の形の17−AAGに変換することを意味する。この用語の前に移行句“・・・を含む”がある場合,これは溶液に溶解する,製剤を作製する等の追加の後の工程を含んでいてもよい。“除去する”との用語は,必ずしも完全な除去を意味する必要はないが,好ましくはその工程の後に主として固体17−AAGが残るように実質的に除去されることを意味し,少量の溶媒が任意に存在していてもよい。1つの態様においては,プロトン性溶媒はイソプロパノールであり,17−AAGは,イソプロパノールから結晶化しイソプロパノールを除去した後に,約146℃−153℃,または約155℃またはそれ以下の融点を示す。関連するが異なる観点は,より高い融点の多型の17−AAG,好ましくは約200℃またはそれ以上の範囲の融点を示すものの形成を含む。いくつかの好ましい態様においては,融点は約206−212℃である。これは,プロトン性溶媒溶液,例えば,エタノール中での結晶化により行うことができ,これは水を含んでいても含んでいなくてもよい。本出願人は,溶媒中における水の存在は,通常は,得られる17−AAG多型の最終的な融点を高めることを見いだした。上述の方法により製造した化合物もまた本発明の範囲内であり,1またはそれ以上の他の試薬が最終的に混合されていてもされていなくてもよい。任意に,そのような組成物は,光耐性容器中に包装して,分解を防止するか,最小にするか,または遅らせる。他の親油性化合物も同様に異なる融点の多型を与えるであろうことが理解される。これらの多型は異なる有用性を特徴とするかまたはおそらく特徴とし,例えば,より低い融点の形は,より容易に溶解し製剤することができ,より高い融点の形は,より長時間の安定性を示すことが予測される。
【0018】
別の観点においては,本発明は,アンサマイシンの第1の多型をアンサマイシンの第2の多型に変換する方法を特徴とする。この方法は,第1の多型のアンサマイシンを,第2の多型のアンサマイシンを得るのに十分な条件下で,プロトン性溶媒溶液に溶解することを含む。高融点タイプを低融点型に変換することも,その逆も可能である。アンサマイシンは,好ましくは17−AAGであるが,この手法は他の親油性化合物についても有用性があると予期され,その証拠は実施例1−5に示される。この観点についての可能な態様は,上述の観点および態様の特徴にしたがうことができる。
【0019】
本発明により実現される利点は,精密な観点および態様に依存して,高収率,高純度,安定性,環境および患者の毒性の減少,および追加の付随する時間,費用の低下,製剤および廃棄物の保存および廃棄の容易性の1またはそれ以上を含む。他の利点,観点,および態様は,以下の図面,詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図面の簡単な説明
図1は,Zorbax 300 SB−C8(250cm×4.6mm,5μ)カラム,移動相:アセトニトリル(0.05%TFA):水(0.05%TFA);30:70;流速:1mL/min,検出254nmを用いて得られた17−アリルアミノゲルダナマイシンのHPLCクロマトグラムを示す;示されるピークの保持時間は16.49分で現れる。
【0021】
図2は,1H NMR(400MHz,CDCl3)スペクトルを示す。化学シフトおよび多重度は所望の生成物の形成と一致する。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は,アンサマイシン,例えば,ベンゾキノンアンサマイシンおよびその誘導体,例えば,17−AGGおよびその4,5ジヒドロ類似体を製造するための改良されたプロセスに関する。このプロセスは,優れた純度および収率を与えながら,抽出および調製用クロマトグラフィー分離に伴う,時間を消費し費用のかかる後処理を回避する。
【0023】
ある観点および態様においては,この手法は,1またはそれ以上の揮発性非プロトン性溶媒,例えば,エーテルまたはアセテート,好ましくはハロゲン化されていない溶媒中で,反応物および生成物の両方を溶解するのに適した条件下で,求核攻撃を行うことを含む。次に得られた生成物を蒸発により濃縮し,濃縮した生成物に,揮発性プロトン性溶媒,例えば揮発性アルコールおよび/または水を,揮発性プロトン性溶媒が洗浄または(再)結晶化媒質の目的のいすれかとして働く条件下で加える。いずれの方法も,濾過,遠心分離,デカント,および/または蒸発を用いて助けることができる。得られる生成物は,直接的にまたは間接的に,アンサマイシンに付随する用途,例えば,抗生物質としてまたは抗癌剤として,用いることができる。間接的な有用性に関しては,生成物は,例えば,さらに別のアンサマイシン誘導体,例えば,米国特許5,932,566およびPCT/IB94/00160(WO95/01342)(Schnuret alに対して発行,Pfizer Inc.に譲渡)に記載されるものの合成の中間体として有用である。
【0024】
本発明の前には,アンサマイシンの製造,これに対する置換および求核付加のためには,DMF,DMSO,CH2Cl2,およびCHCl3が選択すべき媒質であった。これらの試薬およびプロセスは,面倒な後処理および多数回の水洗浄およびEtOAc抽出を必要とする。特に,現在の規制の風潮では塩素化溶媒は使用しないほうがよい。塩素化溶媒は環境にやさしくなく,残留物に曝露されることは潜在的な健康上のリスクを提起する。さらに,本出願人は,そのような溶媒が分解生成物を促進し,純度および収率を低下させることを見いだした。本発明のプロセスははるかに直接的であり,生成物は典型的にはより高い収率およびより高い純度で形成され,環境および健康問題は回避されるかまたは最小限となり,このことにより,よりよい商業的用途につながる。
【0025】
特許請求の範囲において用いる場合,“任意に”との用語は,この用語の直後の工程を実施することが,特許請求の範囲の要件を満たすのに必要ではないことを示す。
【0026】
“除去する”および“濃縮する”との用語は,必ずしも溶媒の100%の排除を意味しなくてもよく,より低いパーセントの除去または濃縮を意味してもよい。
【0027】
“ハロゲン化されていない”との用語は,1またはそれ以上のハロゲン原子,例えば,F,Cl,Br,およびIを含まないことを意味する。ハロゲン化されている溶媒の例には,CHCl3(クロロホルム)が含まれる。
【0028】
“洗浄する”とは,用いられる条件下でプロトン性溶媒がアンサマイシンを認めうるほど溶解しないことを意味する。洗浄はスラリーの形成を含んでいてもよく,いずれにしても,不純物を除去する効果を有する。
【0029】
“揮発性非プロトン性溶媒”とは,約35−102℃の沸点を有する溶媒を意味する。好ましいものは,以下の表Iに示される非プロトン性溶媒である。非プロトン性溶媒は,“構造化されていない”,すなわち,純粋な液体状態で水素結合の広範囲なネットワークを有しないと考えられる。しかし,ある種の非プロトン性溶媒は,それ自体プロトン性である化合物または溶質,例えば,アルコールまたは水それ自体を溶解し安定化させる能力を有する。例えば,水とTHFとは混和性である。一般に,非プロトン性溶媒は,通常の状況下では自己解離してイオンとなる能力を有しない。
【0030】
“揮発性プロトン性溶媒”には,例えば,イソプロパノール,エタノール,水,およびこれらの混合物が含まれる。水は伝統的なプロトン性溶媒である。液相の水は,水素結合の広範囲のネットワークにより特徴づけられる。液相においては,それぞれの水分子は近接した水分子と4つの水素結合を形成する。この広範囲な水素結合ネットワークの破壊には多大なエネルギーの投入が必要であり,このエネルギーのコストは低分子化合物としては比較的高い沸点(100℃)に反映される。アルコール,特に低分子アルコール(12個より少ない炭素原子を有するもの)は水と同様の特性を示す。液体状態において,水素結合したネットワークが確立されている。しかし,アルコールは,確立された水素結合の数において異なる。アルコール溶媒分子間には3つの水素結合しか生じないが,液体の水中には典型的には4つの水素結合が存在する。この結果,アルコール溶媒分子間にはより多くの“ゆるみ(looseness)”が存在し,これは水より低い沸点および凝固温度として現れる。水/アルコール混合物の1つの物理学的特性は共沸混合物の形成である。アルコールを水に加えると,水の沸点が低下する。下記の表は,10%エタノールを水に加えると,水それ自体よりも揮発性である溶媒が生ずることを示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表Iはさらに,主としてエタノールを含む混合物,例えば約95%エタノール,5%水,は,純粋なエタノールと同じ温度で沸騰することを示す。この理由のため,水/エタノール混合物を蒸留することにより純粋なエタノールを得ることは実際には不可能である。この事実は,アルコールの蒸留の分野ではよく知られている。プロトン性溶媒の別の特徴は,これらがある程度自己イオン化する傾向にあることである。例えば,水は以下の式にしたがって,反対に荷電したイオンに解離する:
2H2O ←→ H3O++-OH
純粋な水はそれ自体,小さいが測定可能な程度に解離し,このことにより,純粋な水は25℃においてよく知られる値[H3O+]=10-7(またはpH7)を示す。
【0033】
“非酸化的環境”とは,酸化が可能ではないかまたは実際に生じないことを意味するものではなく,単にそのような可能性が低いことを意味する。例には,限定されないが,減少した光および/または減少した気体状酸素を用いることが含まれる。後者は,例えば,空気または酸素を窒素および/またはアルゴンガスで置き換えたときに生ずる。
【0034】
アンサマイシンおよびベンゾキノンアンサマイシン
“アンサマイシン”との用語は当該技術分野においてよく知られており,芳香族環構造の反対側の端を架橋する種々の長さおよび組成の脂肪族環およびその還元同等物により特徴づけられる広範な種類の構造を表す。この広い群に包含されるものが,ベンゾキノンアンサマイシン亜群である。例示的な種には以下のものが含まれる:
【化3】
【0035】
本明細書において用いる場合,“ベンゾキノンアンサマイシン”は,ベンゾキノン成分を有し,当該技術分野において知られるいずれのベンゾキノンアンサマイシンをも含む。求核基付加を特徴とする本発明のいくつかの観点においては,これらは好ましくは,分子のベンゾキノン部分に,求核基により置換されることができるアルコキシ成分,好ましくはメトキシを,好ましくは17位に含む。反応の結果,“ベンゾキノンアンサマイシン誘導体”が形成される。本発明にしたがうアンサマイシンおよびベンゾキノンアンサマイシンは,合成のものであってもよく,天然に生ずるものであってもよく,またはこれらの組み合わせ,すなわち“半合成”のものであってもよい。これらはまた,単量体であっても二量体であってもよい。二量体アンサマイシンの例には,限定されないが,Rosenら(国際出願PCT/US00/09512(WO00/61578),2000年4月7日出願,2000年10月19日公開)に見いだされるものが含まれる。本発明のプロセスにおいて有用な他の例示的ベンゾキノンアンサマイシンおよびその製造方法には,限定されないが,例えば,米国特許3,595,955(ゲルダナマイシンの製造を記載),4,261,989,5,387,584,および5,932,566に記載されるものが含まれる。ゲルダナマイシンはまた,例えばCN Biosciences(Merck KGaA,Darmstadt,Germanyの系列会社,本社San Diego,California,USA(カタログ番号345805))から市販されている。Streptomyces hygroscopicus(ATCC55256)培養物からの4,5−ジヒドロゲルダナマイシンおよびそのハイドロキノンの生化学的精製は,国際出願PCT/US92/10189(Pfizer Inc.,WO93/14215,1993年7月22日公開,発明者Cullen et al.)に記載されている。ゲルダナマイシンの触媒的水素化による4,5−ジヒドロゲルダナマイシンの合成の別の方法も知られている。例えば,Progress in the Chemistry of Organic Natural Products,Chemistry of the Ansamycin Antibiotics,33 1976,p.278を参照。
【0036】
求核基
本明細書に記載される本発明のプロセスにおいて用いることができる多くの種類の求核基が存在する。好ましいものは,チオール,チオレート,チオエーテル,アルコール,およびアルコキシドからなる群より選択されるものであり,これらはそれぞれ,後にこれに抗体等の追加の化学成分を結合させることができる1またはそれ以上の官能基を構成するか,有するか,有するよう修飾することができる。いくつかの好ましい態様においては,求核基は構造:
【化4】
[式中,R4およびR5は,独立して,水素,(C1−C12)アルキル,またはアリル,プロパルギル,ヒドロキシ,アミノ,メルカプト,カルボキキラトまたはハロゲン官能基で置換されていてもよい(C1−C12)アルキルを表す]
を有する第1または第2アミンである。一般に用いることができるアミンの非網羅的リストは,米国特許4,261,989(Sasaki)の表Iに見いだされるものが含まれる。他の官能基,例えばオレフィンが付加していてもよいことが理解されるであろう。ある態様,例えば,17−AAGまたは4,5ジヒドロ類似体の製造においては,求核基はアリルアミンである。本明細書に記載されるアリルアミンおよび他の求核基は,例えば,Sigma−Aldrichから市販されている。以下の表は,本発明の種々の態様において用いることができるいくつかの好ましい求核基を図解する。
【0037】
【表2】
【0038】
揮発性非プロトン性溶媒
本発明の種々の態様において有用な例示的揮発性非プロトン性溶媒には,表IIIに示されるものが含まれる。
【0039】
【表3】
【0040】
このリストは例示のためのみであり,当業者は,用いることができる他の揮発性非プロトン性溶媒も存在することを理解するであろう。エーテルおよびアセテートは,極性の非プロトン性媒質である点において特に有用である。これらは,種々の有機化合物を溶解し,水と炭化水素の両方の特性を有し,かつアルキル“部分”および孤立電子対を有する酸素原子を有する。
【0041】
反応容器
本発明のための適当な反応容器は,すりガラスの接合部を備えた市販のガラスの反応フラスコである。典型的には,そのような容器は,テフロンまたは他の不活性物質,例えばPTFEまたは他の不活性コーティングでコーティングした磁気スターラーバーとともに用いる。大規模な工業的合成においては,多くの金属反応容器は密封可能であり,したがって,本来光耐性である。反応容器中に挿入した撹拌シャフトおよび/またはパドルを用いる機械的撹拌を用いてもよい。光を排除するためには,単に室内灯を暗くすれば充分である。あるいは,反応フラスコおよび光感受性物質を有する反応物の部分をアルミニウムホイルで包むか,または当該技術分野において知られる別のタイプの光耐性容器に詰めるか封入してもよい。
【0042】
添加速度の制御を必要とする反応は,滴加漏斗(滴下漏斗)を備えた多口の丸底フラスコで行うことができる。単純な滴加漏斗はオス型の標準的な先細継手を出口に有する分液漏斗と類似しており,液体反応物または溶液の滴加を可能とし,コックが滴下速度を調節する手段として働く。有機溶媒中に浸出して所望の生成物に混入する可能性のあるコックグリースの使用を回避することができるよう,滴加漏斗用にはテフロンのコックが好ましい。
【0043】
多くの小規模反応においては,単位時間あたりに加えられる試薬の容量の精密な調節を可能とするシリンジを用いて液体の添加を行うことがしばしば便利である。液体試薬を加えるさらに別の方法はシリンジポンプを用いる方法であり,これは当該技術分野において一般に知られている。また,流速調節可能なポンプおよび装置を用いてもよい。
【0044】
反応モニタリング
特許請求の範囲に記載される用語“クロマトグラフィー手法を用いてモニターする”は,所望の生成物の存在および/または量,あるいは,試薬または望ましくない生成物の非存在および/または量を決定することを意味する。いくつかの方法が当該技術分野において知られており,そのうちいくつかを以下に説明する。
【0045】
TLC
薄層クロマトグラフィー(TLC)は,平坦な表面上に支持された吸着剤の薄層を固定相として用いる形式の吸着クロマトグラフィーである。TLCにおいて用いられる最も一般的な吸着剤はシリカゲルおよびアルミナである。カイゼルグール(Keiselguhr)およびセルロースはあまり用いられない。TLCクロマトグラムの溶出または発色は,溶媒が吸着剤の薄層を上に毛管移動することにより行うことができる。
【0046】
TLCに用いられる溶出液は,吸着剤の種類および分析すべき化合物の吸着剤に対する親和性によって異なるであろう。TLCは,反応の進行をモニターし,反応における中間体を検出し,粗生成物または未知の混合物を分析して成分の数を決定し,そして精製プロセスの効率を調べるために非常に有用である。無色有機化合物については,当該技術分野において知られる多くの手法を用いて,吸着剤上の化合物の可視化を行うことができる。しかし,本発明においては,出発物質および生成物の両方がそれぞれ黄色および紫色を有しており,目で見ることができる。
【0047】
HPLC
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)においては,圧力により液相に定常状態を越える力をかけ,このことにより吸着剤を含むカラムを通る溶出液の流れを増加させる。最新の市販の装置を用いて溶媒混合物および溶媒勾配を用いることができる。典型的には,出発物質および生成物の光学的検出には可変波長UV検出器が用いられ,シグナルを適切に較正することにより,検出される物質の量を市販のソフトウエアを用いて定量することができる。
【0048】
溶媒除去
反応混合物,抽出物,クロマトグラフィー画分,または(再)結晶化の母液から所望の生成物を得るためには,溶液を濃縮するか溶媒を完全に除去することがしばしば必要である。これは,大気圧または減圧下で,単純蒸留または分別蒸留手法により行うことができる。場合によっては,大気圧蒸留を用いて大量の溶媒を除去し,次に残留した痕跡量を減圧で除去する。いずれの場合も,所望の生成物の安定性および揮発性を考慮しなければならない。すなわち,過熱による生成物の分解を回避するよう注意しなければならない。
【0049】
溶媒除去および凍結乾燥を行うための市販の回転蒸発装置が存在する。他の単純な装置も当業者に知られている。低温で対応する高真空下で溶媒を除去する方法もまた当業者に知られている。
【0050】
濾過
濾過とは,フィルターとして知られる多孔質障壁を用いて不溶性固体を液体から分離することである。液体はフィルターを通過するが,固体はフィルター上に保持される。液体は,重力の力により(重力濾過)および/または吸引の使用により(吸引濾過),フィルターを通過することができる。濾過のプロセスを用いて,溶液から不純物を除去し,および/または固体を回収する。有機化学において最も頻繁に用いられるフィルターは,フィルター紙および焼結ガラスフリットであり,これらは両方とも種々の会社から市販されており,当業者にはよく知られている。吸引濾過には,典型的にはブフナー,ハーシュまたは焼結ガラスフリットが用いられる。吸引濾過においては,吸引器によりまたは他の真空手段により,フィルターの下の圧力を減少させる。次に,大気圧の力により液体はフィルターを通過する。
【0051】
(再)結晶化
結晶化は,所定の物質の溶液または溶融物からの結晶の析出である。同じ構造の分子の結晶格子には他の分子の結晶格子よりよく適合するため,結晶形成のプロセスの間,似た分子は結合して同じタイプの分子から構成される成長する結晶となる傾向にある。近平衡条件下で結晶化プロセスを生じさせると,分子は似た分子から構成される表面に優先的に析出し,このことにより結晶物質の純度が高まる。すなわち,結晶化のプロセスは精製の重要な方法である。結晶化は,“沈殿”とのより広い用語に包摂される。この用語は,“結晶化”するか否かにかかわらず,溶解した化合物が溶解状態をやめて溶液の外で効率的に固体形をとることを表す。沈殿または結晶化は,長い期間をかけて,例えば,数秒から数時間または数日かけて生ずる場合もある。また,これらのプロセスは,以下の実施例2に示されるように温度にも依存し,さらに,用いられる特定の溶媒および溶質の特性にも依存し,溶解度は暖かい温度か冷たい温度かによって異なる。“再結晶化”との用語は,化合物の1またはそれ以上の先の結晶化がすでに行われていることを表し,同じ溶媒および条件を用いる場合も用いない場合もあり,かつ同じまたは異なる融点の多型に達するのに十分である場合もない場合もある。
【0052】
実際,本発明の1つの観点は,種々の多型構造を形成し利用することができる点である。本出願人は,17−AAGの多数の比較的純粋な形(多型)の可能性を同定した。いくつかは,例えば,実質的に純粋なイソプロパノールから結晶化したときに約147−153℃の比較的低い融点を有し,いくつかは,例えば,少量の水を混合したエタノールから結晶化したときに約200−212℃のより高い融点を特徴とする。水は予めエタノールと混合してもよく,既に17−AAGが溶解しているエタノール溶液に後で加えてもよい。より低い融点形の17−AAGは,より高い融点形の17−AAGよりも容易に室温で種々の溶媒および油に溶解し,17−AAGを薬剤または医薬組成物として製剤するのに潜在的な利点を与える。より高い融点形は,種々の条件下においてより高い化学的安定性の利点を与え,すなわち,種々の保存条件下でより長い製品寿命を示すであろう。最終目標にしたがって,単に適当な溶媒中で溶解し結晶化することにより,1つの形を別の形に容易に変換することができる。同様の現象は17−アミノゲルダナマイシン(“17−AG”;実施例5,6を参照)を用いたときも認められ,このことは,他のアンサマイシンについても,また同様に他の無関係の化合物についても,さまざまな多型を達成しうることを示唆する。
【実施例1】
【0053】
17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−AAG)の合成
乾燥2Lフラスコ中の1.45Lの乾燥THF中の45.0g(80.4mmol)のゲルダナマイシンに,50mLの乾燥THF中の36.0mL(470mmol)のアリルアミンを30分間かけて滴加した。反応混合物を室温で窒素下で4時間撹拌し,このときTLC分析は反応が完了したことを示した[(GDM:明るい黄色:Rf=0.40;(5%MeOH−95%CHCl3);17−AAG:紫色:Rf=0.42(5%MeOH−95%CHCl3)]。溶媒を回転蒸発により除去し,粗生成物を420mLのH2O:EtOH(90:10)中で25℃でスラリー化し,濾過し,45℃で24時間乾燥して,40.9g(66.4mmol)の17−AAGを紫色結晶(82.6%収率,254nmでモニターしたHPLCで>98%の純度)として得た。MP206−212℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例2】
【0054】
17−AAGのイソプロパノール中での結晶化
精製の別の方法では,エタノール中で結晶化する代わりに,実施例1からの粗17−AAGを800mLの2−プロピルアルコール(イソプロパノール)に80℃または還流温度(約82.2℃)で溶解し,次に室温に冷却する。濾過し,次に45℃で24時間乾燥して,44.6g(72.36mmol)の17−AAGを紫色結晶(90%収率,HPLCで254nmでモニターして>99%の純度)として得る。MP147−153℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例3】
【0055】
多型の変換:エタノール中での17−AAGの再結晶
精製の別の方法においては,実施例2からの17−AAG生成物を400mLのH2O:EtOH(90:10)中で25℃でスラリー化し,濾過し,45℃で24時間乾燥して,42.4g(68.6mmol)の17−AAGを紫色結晶(95%収率,254nmでモニターしたHPLCにより>99%の純度)として得る。MP147−153℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例4】
【0056】
多型の変換:エタノール中での17−AAGの再結晶
精製の別の方法においては,実施例2からの17−AAG生成物を300mLのEtOHに還流温度(約80℃)で溶解し,次に1,200mLのH2Oを加え,室温に冷却する。固体を濾過により回収し,45℃で24時間乾燥して,41.0g(67mmol)の17−AAGを紫色結晶(93%収率,254nmでモニターしたHPLCにより>99%の純度)として得る。MP206−212℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例5】
【0057】
17−アミノゲルダナマイシン(17−AG)の合成
火炎乾燥フラスコ中の40mlの乾燥THF中の2.0g(3.57mmol)のゲルダナマイシンに,2.55ml(17.8mmol,メタノール中溶液,約7N)のアンモニアを窒素下で加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌し,このとき,TLC分析は反応が完了したことを示した。溶媒を回転蒸発により除去し,粗生成物を30mLのEtOHに溶解し,120mLの水を加えることにより結晶化させて,1.8g(3.30mmol)の17−AGを赤色結晶(HPLCにより99%の純度)として得た。MP284−286℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例6】
【0058】
イソプロパノール中の17−AGの再結晶
実施例5からの17−AGの精製の別の方法においては,最終的な17−AG生成物を30mLの実質的に純粋な2−プロピルアルコール(イソプロパノール)に80℃または還流温度(約82.2℃)で溶解し,次に室温に冷却する。濾過し,次に45℃で24時間乾燥して,1.5g(2.7mmol)の17−AAGを紫色結晶(76%収率,254nmでモニターしたHPLCにより>99%の純度)として得る。MP267−271℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【0059】
上述の実施例は限定的なものではなく,単に本発明の種々の観点および態様の代表例にすぎない。本明細書において言及されるすべての特許および刊行物は,本発明の属する技術分野の技術者のレベルを示す。各書類の開示は,それぞれの全体が個々に本明細書の一部としてここに引用されることと同じ程度に,本明細書の一部として引用されるが,これらの書類のいずれも本発明に対する先行技術であると認めるものではない。
【0060】
当業者は,本発明は,その目的を実施し,記載される結果および利点,ならびに本明細書に固有のものを得るのによく適合していることを容易に理解するであろう。記載される方法および組成物は,好ましい態様の説明であり,例示的なものであって,本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は,特許請求の範囲において定義される本発明の精神の中に包含される変更および他の用途をなすであろう。
【0061】
当業者は,本発明の範囲および精神から逸脱することなく,本明細書に開示される本発明に対して置換および改変をなすことができることを容易に理解するであろう。すなわち,そのような追加の態様も本発明および特許請求の範囲の範囲内である。
【0062】
本明細書に例示的に記載されている発明は,本明細書に特定的に開示されていない任意の要素または限定なしでも適切に実施することができる。すなわち,例えば,"・・・を含む","・・・から本質的になる"および"・・・からなる"との用語は,それぞれ移行節として異なる意味を有しており,そのような節のそれぞれは,他方の代わりに本発明の異なる観点または態様を示すよう用いることができる。本明細書において用いた用語および表現は,説明の用語として用いるものであり,限定ではない。そのような用語および表現の使用においては,示されかつ記載されている特徴またはその一部の等価物を排除することを意図するものではない。特許請求の範囲に記載される本発明の範囲中で種々の変更が可能であることが理解される。すなわち,好ましい態様および任意の特徴により本発明を特定的に開示してきたが,当業者には本明細書に開示される概念の変更および変種が可能であり,そのような変更および変種も発明の説明および特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0063】
さらに,発明の特徴および観点がマーカッシュグループまたは代替物の他のグループ化の用語で記載されている場合,当業者は,本発明が,マーカッシュグループまたは他のグループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもまた記載されていることを認識するであろう。
【0064】
他の態様は特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は,17−アリルアミノゲルダナマイシンのHPLCクロマトグラムを示す。
【図2】図2は,1H NMRスペクトルを示す。
【0001】
関連出願
本出願は,Zhangら(米国特許仮出願60/331,893,2001年9月21日出願)およびZhangら(米国特許仮出願60/326,639,2001年9月24日出願)(いずれも,“PROCESS FOR PREPARING 17−ALLYL AMINO GELDANAMYCIN(17−AAG) AND OTHER ANSAMYCINS”と題する)に基づく優先権を主張する。これらの出願は,図面を含めその全体を本明細書の一部としてここに引用する。
【0002】
発明の分野
本発明は,例えば,抗生物質として,および癌等の種々の増殖性疾患の治療において有用な化合物であるアンサマイシンに適用される製造化学に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は,本発明を理解するのに有用であろう情報を含む。本明細書に記載される情報のいずれかが本発明に対する先行技術であるかまたは関連性があると認めるものではなく,また,本明細書において特定してまたは暗示的に引用されるいずれかの刊行物が本発明に対する先行技術であると認めるものではない。
【0004】
17−アリルアミノ−ゲルダナマイシン(17−AAG)はゲルダナマイシン(GDM)の合成類似体である。いずれの分子も,アンサマイシンとして知られる抗生物質分子の広義の群に属する。GDMは,最初に微生物Streptomyces hygroscopicusから単離され,元々はある種のキナーゼの強力な阻害剤として同定された。後にこれは,キナーゼ分解を刺激することにより,特に“分子シャペロン”,例えば熱ショック蛋白質90(HSP90)を標的とすることにより,作用することが示された。その後,種々の他のアンサマイシン類が多かれ少なかれそのような活性を有することが示され,このうち,17−AAGが最も有望であり,これは,現在National Cancer Institute(NCI)により行われている集中的な臨床試験の主題である(例えば,Federal Register,66(129):35443−35444;Erlichman et al.,Proc.AACR(2001),42,abstract 4474を参照)。
【0005】
HSP90は,シグナル伝達,細胞サイクルの制御および転写制御に関与する鍵となる蛋白質を含む,広範な範囲の蛋白質のフォールディング,活性化およびアセンブリに関与する,偏在性のシャペロン蛋白質である。研究者達は,HSP90シャペロン蛋白質が,重要なシグナリング蛋白質,例えばステロイドホルモンレセプターおよび蛋白質キナーゼ,例えば,Raf−1,EGFR,v−Srcファミリーキナーゼ,Cdk4,およびErbB−2と関連していることを報告している(Buchner J.,1999,TIBS,24:136−141;Stepanova,L.et al.,1996,GenesDev.10:1491−502;Dai,K.et al.,1996,J.Biol.Chem.271:22030−4)。さらに,研究により,ある種のコシャペロン,例えば,Hsp70,p60/Hop/Sti1,Hip,Bag1,HSP40/Hdj2/Hsj1,イムノフィリン,p23,およびp50が,その機能においてHSP90を助けることが示された(例えば,Caplan,A.,1999,Trends in Cell Biol.,9:262−68を参照)。
【0006】
アンサマイシン抗生物質,例えば,へルビマイシンA(HA),ゲルダナマイシン(GM),および17−AAGは,HSP90のN末端ポケットに強く結合することにより,その抗癌性の効果を発揮すると考えられている(Stebbins,C.et al.,1997,Cell,89:239−250)。このポケットは高度に保存され,DNAジャイレースのATP結合部位に対して弱いホモロジーを有する(Stebbins,C.et al.(上掲);Grenert,J.P.et al.,1997,J.Biol.Chem.,272:23843−50)。さらに,ATPおよびADPは両方とも,低い親和性でこのポケットに結合し,弱いATPase活性を有することが示されている(Proromou,C.et al.,1997,Cell,90:65−75;Panaretou,B.et al.,1998,EMBO J.,17:4829−36)。インビトロおよびインビボ研究は,このN末端ポケットがアンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤で占められると,HSP90機能が変化し,蛋白質フォールディングが阻害されることを示した。アンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤は,高濃度で蛋白質基質のHSP90への結合を妨害することが示されている(Scheibel,T.,H.et al.,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:1297−302;Schulte,T.W.et al.,1995,J.Biol.Chem.270:24585−8;Whitesell,L.,et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8324−8328)。アンサマイシンはまた,シャペロンに会合した蛋白質基質のATP依存性放出を阻害することが示されている(Schneider,C.,L.et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:14536−41;Sepp−Lorenzino et al.,1995,J.Biol.Chem.270:16580−16587).いずれの場合も,基質はプロテオソーム中でユビキチン依存性のプロセスにより分解される(Schneider,C.,L.(上掲);Sepp−Lorenzino,L.,et al.,1995,J.Biol.Chem.,270:16580−16587;Whitesell,L.et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:8324−8328)。
【0007】
この基質の不安定化は,腫瘍およびトランスフォームしていない細胞において同様に生じ,シグナリングレギュレータ,例えば,Raf(Schulte,T.W.et al.,1997,Biochem.Biophys.Res.Commun.239:655−9;Schulte,T.W.,et al.,1995,J.Biol.Chem.270:24585−8),核ステロイドレセプター(Segnitz,B.,andU.Gehring.1997,J.Biol.Chem.272:18694−18701;Smith,D.F.et al.,1995,Mol.Cell.Biol.15:6804−12),v−src(Whitesell,L.,et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8324−8328)およびある種の貫膜チロシンキナーゼ(Sepp−Lorenzino,L.et al.,1995,J.Biol.Chem.270:16580−16587),例えばEGFレセプター(EGFR)およびHer2/Neu(Hartmann,F.,et al.,1997,Int.J.Cancer 70:221−9;Miller,P.et al.,1994,Cancer Res.54:2724−2730;Mimnaugh,E.G.,et al.,1996,J.Biol.Chem.271:22796−801;Schnur,R.et al.,1995,J.Med.Chem.38:3806−3812),CDK4,および変異体p53のサブセットに特に有効であることが示されている(Erlichman et al.,Proc.AACR(2001),42,abstract 4474)。アンサマイシンに誘導されるこれらの蛋白質の欠失は,ある種の制御経路の選択的破壊につながり,その結果,細胞サイクルの特定の期における成長の静止(Muise−Heimericks,R.C.et al.,1998,J.Biol.Chem.273:29864−72),およびアポトーシス,および/またはそのように処理された細胞の分化が生ずる(Vasilevskaya,A.et al.,1999,Cancer Res.,59:3935−40)。
【0008】
したがって,アンサマイシンは,多くのタイプの癌および増殖性疾患の治療および/または予防に非常に有望である。しかし,現在のところ,アンサマイシンを製造する種々の既知の方法は,以下の1またはそれ以上の性質を有する:収率が低い,純度が低い,不安定である,ハロゲン化有機溶媒の使用のため環境に毒性である,および時間,費用,廃棄物処理,およびそのようにして製造された薬剤を投与された者の健康リスクについての追加の付随コストを要する。既知の方法の例には,Sasakiら(米国特許4,261,989,出願人Kaken Chemical Co,Ltd.,種々の有機溶媒および単調で退屈な抽出手法を用いる,17−AAG等の種々のアンサマイシン誘導体の合成を報告する),およびSchnurら(米国特許5,932,566およびPCT/IB94/00160(WO95/01342),出願人Pfizer Inc.,同様のプロセスを記載する)が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は,従来技術の欠点の1またはそれ以上を改良すること,すなわち,低収率,低純度,不安定性,ハロゲン化有機溶媒の使用に伴う環境毒性,時間,費用,廃棄物処理,および健康リスクについての追加の付随コストの1またはそれ以上を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
発明性のある観点がいくつか存在する。第1の観点においては,本発明は,揮発性非プロトン性および揮発性プロトン性溶媒の両方を使用する,アンサマイシンを製造する効率的な化学プロセスを特徴とする。このプロセスは,ベンゾキノンゲルダナマイシン(GDM)からベンゾキノンゲルダナマイシン誘導体,例えば,17−AAGまたはその4,5−ジヒドロ類似体を製造するのにとりわけ有用である。後者の観点の態様は,例えば,4,5−ジヒドロゲルダナマイシンまたはゲルダナマイシン(またはベンゾキノン部分に反応性成分,例えばメトキシを有する他のベンゾキノンゲルダナマイシン)と,求核基とを,揮発性非プロトン性溶媒,例えば,表1に示されるものから選択される溶媒中で混合して粗生成物を生成し,次にこれを蒸発を用いて濃縮し,得られた生成物に,洗浄としてまたはアンサマイシン生成物を溶液から結晶化または沈殿させるのに適した条件下で,揮発性プロトン性溶媒を加える。いずれの場合も,両方のタイプの溶媒は慣用的に,例えば,濾過,遠心分離,デカントおよび/または蒸発により除去する。特定の態様に依存して,利点には,限定されないが,精製後処理の減少,収率および/または純度の増加,および臨床上許容しうる試薬の使用が含まれる。
【0011】
以下は,本発明の1つの観点および態様の例示的反応スキームである:
【化1】
[式中,R1およびR2は,両方とも水素であるか(この場合,C4とC5との間の結合は単結合である),またはR1およびR2は両方とも存在しない(この場合,C4とC5との間には二重結合が存在する)。C4とC5との間の点線は両方の可能性があることを示す。Nu−Hは,反応の間に17位のR3O−基を置き換える求核基を表す。R3は,好ましくは1−4個の炭素を有するアルコキシであり,好ましくはメトキシである。反応は,揮発性非プロトン性溶媒,例えば,THF,エチルエーテル,MTBE,THP,ジオキサン,エチルsec−ブチルエーテル,メチルブチルエーテル,酢酸エチル,または酢酸メチルから選択される溶媒を用いて行い,粗置換生成物を得る。非ハロゲン化溶媒が好ましい。ある態様においては,主として一置換生成物が生成されるように,置換されるべきベンゾキノンゲルダナマイシン誘導体に求核基をゆっくり加える。この工程は,例えば,TLC,HPLC等のクロマトグラフィー手法,または当該技術分野において一般に知られる他の方法,例えば分光測定,NMR等によりモニターして,反応の完了を判断してもよい。そのような手法はまた,プロセスの後の工程において用いてもよく,これは以下に記載される。好ましい態様においては,実質的にすべてのベンゾキノンアンサマイシン反応体がその対応する誘導体に変換されるよう,完了するまで反応を続ける。
【0012】
揮発性非プロトン性溶媒中で粗置換生成物を製造した後,蒸発を用いて生成物を濃縮し,次に揮発性プロトン性溶媒,例えば,イソプロパノール,エタノール,および/または水でスラリー化するかまたは溶解する。本明細書において用いる場合,“スラリー化する”との用語は,固体,例えばアンサマイシンが認めうるほどに溶解しない条件下における,液体中の固体の懸濁物を表す。このようにして,特にそのような条件下で不純物が固体より高い溶解性を示す場合には,“洗浄”を行うことができる。以下の実施例1はその例示である。洗浄の代わりにまたはこれと組み合わせて,結晶化法を行うことができ,これは以下の実施例2に具体的に記載される。
【0013】
それぞれの揮発性非プロトン性およびプロトン性溶媒は,慣用的に,例えば蒸発により除去することができ,蒸発と,遠心分離,加熱および/または真空とを組み合わせてもよい。当業者には理解されるように,調和して圧力を低くすれば(高い真空),より低い温度を用いることもできる。ある態様においては,熱または標準的な室温乾燥を単独で用いることができる。1またはそれ以上の濾過工程もまた用いることができ,フィルターを通して揮発性プロトン性溶媒を用いる慣用的な洗浄を用いて不純物を減少させることができる。
【0014】
ある態様においては,求核基が用いられ,これはアミン,チオール,チオレート,チオエーテル,アルコール,およびアルコキシドからなる群より選択される。これらはそれぞれ,後に追加の化学成分を結合させて,例えば,得られるベンゾキノンアンサマイシン誘導体を別の構造につなげることができる1またはそれ以上の官能基を構成してもよく,有してもよく,有するよう修飾してもよい。ある好ましい態様においては,求核基は,構造:
【化2】
[式中,R4およびR5は,独立して,水素,(C1−C12)アルキル,またはアリル,プロパルギル,ヒドロキシ,アミノ,メルカプト,カルボキシラトまたはハロゲン官能基で任意に置換されていてもよい(C1−C12)アルキルを表す]
を有する第1または第2アミンである。用いることができる一般のアミンの非網羅的リストとしては,Sasakiの米国特許4,261,989の表Iに見いだされるものが挙げられる。また,他の官能基,例えばオレフィンも結合させることができることが理解されるであろう。ある態様においては,例えば,17−AAGまたは4,5ジヒドロ類似体の製造においては,求核基はアリルアミンである。用いることができる他の有用な求核基には,限定されないが,発明の詳細な説明に記載されるものが含まれる。
【0015】
ある態様においては,生成物および/または反応物の光分解を防止または最小限にするために,プロセスの1またはそれ以上の工程において弱い光を用いることも有用であろう。この目的のため,最終生成物を光耐性容器に保存して,生成物を保存しその安定性および貯蔵寿命を助けることができる。
【0016】
上述の本発明のプロセスの観点は,示される態様の互いに矛盾しない任意の組み合わせを特徴とすることができる。より広いプロセスの観点においては,本発明は,アンサマイシンを濃縮および/または精製する方法を特徴とする。この方法は,揮発性非プロトン性溶媒,好ましくはハロゲン化されていない溶媒を用い,次に蒸発させ,揮発性プロトン性溶媒,例えば以下の実施例1および2において用いた溶媒を用いて,洗浄または結晶化を行う。本発明の別の観点は,そのようなプロセスにより製造された生成物を特徴とし,それぞれの生成物は上述した態様のプロセスのいずれにしたがって製造してもよい。
【0017】
別の観点においては,本発明は,17−AAGを製造する方法を特徴とする。該方法は,プロトン性溶媒溶液に溶解した17−AAGを用意し,そして前記17−AAGを前記プロトン性溶媒溶液から結晶化し,前記プロトン性溶媒溶液は実質的に水を含まず,そして次に前記プロトン性溶媒溶液を除去することを含む。“製造する”との用語は,例えば,濃縮し,精製し,または17−AAGの現在の多型を別の形の17−AAGに変換することを意味する。この用語の前に移行句“・・・を含む”がある場合,これは溶液に溶解する,製剤を作製する等の追加の後の工程を含んでいてもよい。“除去する”との用語は,必ずしも完全な除去を意味する必要はないが,好ましくはその工程の後に主として固体17−AAGが残るように実質的に除去されることを意味し,少量の溶媒が任意に存在していてもよい。1つの態様においては,プロトン性溶媒はイソプロパノールであり,17−AAGは,イソプロパノールから結晶化しイソプロパノールを除去した後に,約146℃−153℃,または約155℃またはそれ以下の融点を示す。関連するが異なる観点は,より高い融点の多型の17−AAG,好ましくは約200℃またはそれ以上の範囲の融点を示すものの形成を含む。いくつかの好ましい態様においては,融点は約206−212℃である。これは,プロトン性溶媒溶液,例えば,エタノール中での結晶化により行うことができ,これは水を含んでいても含んでいなくてもよい。本出願人は,溶媒中における水の存在は,通常は,得られる17−AAG多型の最終的な融点を高めることを見いだした。上述の方法により製造した化合物もまた本発明の範囲内であり,1またはそれ以上の他の試薬が最終的に混合されていてもされていなくてもよい。任意に,そのような組成物は,光耐性容器中に包装して,分解を防止するか,最小にするか,または遅らせる。他の親油性化合物も同様に異なる融点の多型を与えるであろうことが理解される。これらの多型は異なる有用性を特徴とするかまたはおそらく特徴とし,例えば,より低い融点の形は,より容易に溶解し製剤することができ,より高い融点の形は,より長時間の安定性を示すことが予測される。
【0018】
別の観点においては,本発明は,アンサマイシンの第1の多型をアンサマイシンの第2の多型に変換する方法を特徴とする。この方法は,第1の多型のアンサマイシンを,第2の多型のアンサマイシンを得るのに十分な条件下で,プロトン性溶媒溶液に溶解することを含む。高融点タイプを低融点型に変換することも,その逆も可能である。アンサマイシンは,好ましくは17−AAGであるが,この手法は他の親油性化合物についても有用性があると予期され,その証拠は実施例1−5に示される。この観点についての可能な態様は,上述の観点および態様の特徴にしたがうことができる。
【0019】
本発明により実現される利点は,精密な観点および態様に依存して,高収率,高純度,安定性,環境および患者の毒性の減少,および追加の付随する時間,費用の低下,製剤および廃棄物の保存および廃棄の容易性の1またはそれ以上を含む。他の利点,観点,および態様は,以下の図面,詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図面の簡単な説明
図1は,Zorbax 300 SB−C8(250cm×4.6mm,5μ)カラム,移動相:アセトニトリル(0.05%TFA):水(0.05%TFA);30:70;流速:1mL/min,検出254nmを用いて得られた17−アリルアミノゲルダナマイシンのHPLCクロマトグラムを示す;示されるピークの保持時間は16.49分で現れる。
【0021】
図2は,1H NMR(400MHz,CDCl3)スペクトルを示す。化学シフトおよび多重度は所望の生成物の形成と一致する。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は,アンサマイシン,例えば,ベンゾキノンアンサマイシンおよびその誘導体,例えば,17−AGGおよびその4,5ジヒドロ類似体を製造するための改良されたプロセスに関する。このプロセスは,優れた純度および収率を与えながら,抽出および調製用クロマトグラフィー分離に伴う,時間を消費し費用のかかる後処理を回避する。
【0023】
ある観点および態様においては,この手法は,1またはそれ以上の揮発性非プロトン性溶媒,例えば,エーテルまたはアセテート,好ましくはハロゲン化されていない溶媒中で,反応物および生成物の両方を溶解するのに適した条件下で,求核攻撃を行うことを含む。次に得られた生成物を蒸発により濃縮し,濃縮した生成物に,揮発性プロトン性溶媒,例えば揮発性アルコールおよび/または水を,揮発性プロトン性溶媒が洗浄または(再)結晶化媒質の目的のいすれかとして働く条件下で加える。いずれの方法も,濾過,遠心分離,デカント,および/または蒸発を用いて助けることができる。得られる生成物は,直接的にまたは間接的に,アンサマイシンに付随する用途,例えば,抗生物質としてまたは抗癌剤として,用いることができる。間接的な有用性に関しては,生成物は,例えば,さらに別のアンサマイシン誘導体,例えば,米国特許5,932,566およびPCT/IB94/00160(WO95/01342)(Schnuret alに対して発行,Pfizer Inc.に譲渡)に記載されるものの合成の中間体として有用である。
【0024】
本発明の前には,アンサマイシンの製造,これに対する置換および求核付加のためには,DMF,DMSO,CH2Cl2,およびCHCl3が選択すべき媒質であった。これらの試薬およびプロセスは,面倒な後処理および多数回の水洗浄およびEtOAc抽出を必要とする。特に,現在の規制の風潮では塩素化溶媒は使用しないほうがよい。塩素化溶媒は環境にやさしくなく,残留物に曝露されることは潜在的な健康上のリスクを提起する。さらに,本出願人は,そのような溶媒が分解生成物を促進し,純度および収率を低下させることを見いだした。本発明のプロセスははるかに直接的であり,生成物は典型的にはより高い収率およびより高い純度で形成され,環境および健康問題は回避されるかまたは最小限となり,このことにより,よりよい商業的用途につながる。
【0025】
特許請求の範囲において用いる場合,“任意に”との用語は,この用語の直後の工程を実施することが,特許請求の範囲の要件を満たすのに必要ではないことを示す。
【0026】
“除去する”および“濃縮する”との用語は,必ずしも溶媒の100%の排除を意味しなくてもよく,より低いパーセントの除去または濃縮を意味してもよい。
【0027】
“ハロゲン化されていない”との用語は,1またはそれ以上のハロゲン原子,例えば,F,Cl,Br,およびIを含まないことを意味する。ハロゲン化されている溶媒の例には,CHCl3(クロロホルム)が含まれる。
【0028】
“洗浄する”とは,用いられる条件下でプロトン性溶媒がアンサマイシンを認めうるほど溶解しないことを意味する。洗浄はスラリーの形成を含んでいてもよく,いずれにしても,不純物を除去する効果を有する。
【0029】
“揮発性非プロトン性溶媒”とは,約35−102℃の沸点を有する溶媒を意味する。好ましいものは,以下の表Iに示される非プロトン性溶媒である。非プロトン性溶媒は,“構造化されていない”,すなわち,純粋な液体状態で水素結合の広範囲なネットワークを有しないと考えられる。しかし,ある種の非プロトン性溶媒は,それ自体プロトン性である化合物または溶質,例えば,アルコールまたは水それ自体を溶解し安定化させる能力を有する。例えば,水とTHFとは混和性である。一般に,非プロトン性溶媒は,通常の状況下では自己解離してイオンとなる能力を有しない。
【0030】
“揮発性プロトン性溶媒”には,例えば,イソプロパノール,エタノール,水,およびこれらの混合物が含まれる。水は伝統的なプロトン性溶媒である。液相の水は,水素結合の広範囲のネットワークにより特徴づけられる。液相においては,それぞれの水分子は近接した水分子と4つの水素結合を形成する。この広範囲な水素結合ネットワークの破壊には多大なエネルギーの投入が必要であり,このエネルギーのコストは低分子化合物としては比較的高い沸点(100℃)に反映される。アルコール,特に低分子アルコール(12個より少ない炭素原子を有するもの)は水と同様の特性を示す。液体状態において,水素結合したネットワークが確立されている。しかし,アルコールは,確立された水素結合の数において異なる。アルコール溶媒分子間には3つの水素結合しか生じないが,液体の水中には典型的には4つの水素結合が存在する。この結果,アルコール溶媒分子間にはより多くの“ゆるみ(looseness)”が存在し,これは水より低い沸点および凝固温度として現れる。水/アルコール混合物の1つの物理学的特性は共沸混合物の形成である。アルコールを水に加えると,水の沸点が低下する。下記の表は,10%エタノールを水に加えると,水それ自体よりも揮発性である溶媒が生ずることを示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表Iはさらに,主としてエタノールを含む混合物,例えば約95%エタノール,5%水,は,純粋なエタノールと同じ温度で沸騰することを示す。この理由のため,水/エタノール混合物を蒸留することにより純粋なエタノールを得ることは実際には不可能である。この事実は,アルコールの蒸留の分野ではよく知られている。プロトン性溶媒の別の特徴は,これらがある程度自己イオン化する傾向にあることである。例えば,水は以下の式にしたがって,反対に荷電したイオンに解離する:
2H2O ←→ H3O++-OH
純粋な水はそれ自体,小さいが測定可能な程度に解離し,このことにより,純粋な水は25℃においてよく知られる値[H3O+]=10-7(またはpH7)を示す。
【0033】
“非酸化的環境”とは,酸化が可能ではないかまたは実際に生じないことを意味するものではなく,単にそのような可能性が低いことを意味する。例には,限定されないが,減少した光および/または減少した気体状酸素を用いることが含まれる。後者は,例えば,空気または酸素を窒素および/またはアルゴンガスで置き換えたときに生ずる。
【0034】
アンサマイシンおよびベンゾキノンアンサマイシン
“アンサマイシン”との用語は当該技術分野においてよく知られており,芳香族環構造の反対側の端を架橋する種々の長さおよび組成の脂肪族環およびその還元同等物により特徴づけられる広範な種類の構造を表す。この広い群に包含されるものが,ベンゾキノンアンサマイシン亜群である。例示的な種には以下のものが含まれる:
【化3】
【0035】
本明細書において用いる場合,“ベンゾキノンアンサマイシン”は,ベンゾキノン成分を有し,当該技術分野において知られるいずれのベンゾキノンアンサマイシンをも含む。求核基付加を特徴とする本発明のいくつかの観点においては,これらは好ましくは,分子のベンゾキノン部分に,求核基により置換されることができるアルコキシ成分,好ましくはメトキシを,好ましくは17位に含む。反応の結果,“ベンゾキノンアンサマイシン誘導体”が形成される。本発明にしたがうアンサマイシンおよびベンゾキノンアンサマイシンは,合成のものであってもよく,天然に生ずるものであってもよく,またはこれらの組み合わせ,すなわち“半合成”のものであってもよい。これらはまた,単量体であっても二量体であってもよい。二量体アンサマイシンの例には,限定されないが,Rosenら(国際出願PCT/US00/09512(WO00/61578),2000年4月7日出願,2000年10月19日公開)に見いだされるものが含まれる。本発明のプロセスにおいて有用な他の例示的ベンゾキノンアンサマイシンおよびその製造方法には,限定されないが,例えば,米国特許3,595,955(ゲルダナマイシンの製造を記載),4,261,989,5,387,584,および5,932,566に記載されるものが含まれる。ゲルダナマイシンはまた,例えばCN Biosciences(Merck KGaA,Darmstadt,Germanyの系列会社,本社San Diego,California,USA(カタログ番号345805))から市販されている。Streptomyces hygroscopicus(ATCC55256)培養物からの4,5−ジヒドロゲルダナマイシンおよびそのハイドロキノンの生化学的精製は,国際出願PCT/US92/10189(Pfizer Inc.,WO93/14215,1993年7月22日公開,発明者Cullen et al.)に記載されている。ゲルダナマイシンの触媒的水素化による4,5−ジヒドロゲルダナマイシンの合成の別の方法も知られている。例えば,Progress in the Chemistry of Organic Natural Products,Chemistry of the Ansamycin Antibiotics,33 1976,p.278を参照。
【0036】
求核基
本明細書に記載される本発明のプロセスにおいて用いることができる多くの種類の求核基が存在する。好ましいものは,チオール,チオレート,チオエーテル,アルコール,およびアルコキシドからなる群より選択されるものであり,これらはそれぞれ,後にこれに抗体等の追加の化学成分を結合させることができる1またはそれ以上の官能基を構成するか,有するか,有するよう修飾することができる。いくつかの好ましい態様においては,求核基は構造:
【化4】
[式中,R4およびR5は,独立して,水素,(C1−C12)アルキル,またはアリル,プロパルギル,ヒドロキシ,アミノ,メルカプト,カルボキキラトまたはハロゲン官能基で置換されていてもよい(C1−C12)アルキルを表す]
を有する第1または第2アミンである。一般に用いることができるアミンの非網羅的リストは,米国特許4,261,989(Sasaki)の表Iに見いだされるものが含まれる。他の官能基,例えばオレフィンが付加していてもよいことが理解されるであろう。ある態様,例えば,17−AAGまたは4,5ジヒドロ類似体の製造においては,求核基はアリルアミンである。本明細書に記載されるアリルアミンおよび他の求核基は,例えば,Sigma−Aldrichから市販されている。以下の表は,本発明の種々の態様において用いることができるいくつかの好ましい求核基を図解する。
【0037】
【表2】
【0038】
揮発性非プロトン性溶媒
本発明の種々の態様において有用な例示的揮発性非プロトン性溶媒には,表IIIに示されるものが含まれる。
【0039】
【表3】
【0040】
このリストは例示のためのみであり,当業者は,用いることができる他の揮発性非プロトン性溶媒も存在することを理解するであろう。エーテルおよびアセテートは,極性の非プロトン性媒質である点において特に有用である。これらは,種々の有機化合物を溶解し,水と炭化水素の両方の特性を有し,かつアルキル“部分”および孤立電子対を有する酸素原子を有する。
【0041】
反応容器
本発明のための適当な反応容器は,すりガラスの接合部を備えた市販のガラスの反応フラスコである。典型的には,そのような容器は,テフロンまたは他の不活性物質,例えばPTFEまたは他の不活性コーティングでコーティングした磁気スターラーバーとともに用いる。大規模な工業的合成においては,多くの金属反応容器は密封可能であり,したがって,本来光耐性である。反応容器中に挿入した撹拌シャフトおよび/またはパドルを用いる機械的撹拌を用いてもよい。光を排除するためには,単に室内灯を暗くすれば充分である。あるいは,反応フラスコおよび光感受性物質を有する反応物の部分をアルミニウムホイルで包むか,または当該技術分野において知られる別のタイプの光耐性容器に詰めるか封入してもよい。
【0042】
添加速度の制御を必要とする反応は,滴加漏斗(滴下漏斗)を備えた多口の丸底フラスコで行うことができる。単純な滴加漏斗はオス型の標準的な先細継手を出口に有する分液漏斗と類似しており,液体反応物または溶液の滴加を可能とし,コックが滴下速度を調節する手段として働く。有機溶媒中に浸出して所望の生成物に混入する可能性のあるコックグリースの使用を回避することができるよう,滴加漏斗用にはテフロンのコックが好ましい。
【0043】
多くの小規模反応においては,単位時間あたりに加えられる試薬の容量の精密な調節を可能とするシリンジを用いて液体の添加を行うことがしばしば便利である。液体試薬を加えるさらに別の方法はシリンジポンプを用いる方法であり,これは当該技術分野において一般に知られている。また,流速調節可能なポンプおよび装置を用いてもよい。
【0044】
反応モニタリング
特許請求の範囲に記載される用語“クロマトグラフィー手法を用いてモニターする”は,所望の生成物の存在および/または量,あるいは,試薬または望ましくない生成物の非存在および/または量を決定することを意味する。いくつかの方法が当該技術分野において知られており,そのうちいくつかを以下に説明する。
【0045】
TLC
薄層クロマトグラフィー(TLC)は,平坦な表面上に支持された吸着剤の薄層を固定相として用いる形式の吸着クロマトグラフィーである。TLCにおいて用いられる最も一般的な吸着剤はシリカゲルおよびアルミナである。カイゼルグール(Keiselguhr)およびセルロースはあまり用いられない。TLCクロマトグラムの溶出または発色は,溶媒が吸着剤の薄層を上に毛管移動することにより行うことができる。
【0046】
TLCに用いられる溶出液は,吸着剤の種類および分析すべき化合物の吸着剤に対する親和性によって異なるであろう。TLCは,反応の進行をモニターし,反応における中間体を検出し,粗生成物または未知の混合物を分析して成分の数を決定し,そして精製プロセスの効率を調べるために非常に有用である。無色有機化合物については,当該技術分野において知られる多くの手法を用いて,吸着剤上の化合物の可視化を行うことができる。しかし,本発明においては,出発物質および生成物の両方がそれぞれ黄色および紫色を有しており,目で見ることができる。
【0047】
HPLC
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)においては,圧力により液相に定常状態を越える力をかけ,このことにより吸着剤を含むカラムを通る溶出液の流れを増加させる。最新の市販の装置を用いて溶媒混合物および溶媒勾配を用いることができる。典型的には,出発物質および生成物の光学的検出には可変波長UV検出器が用いられ,シグナルを適切に較正することにより,検出される物質の量を市販のソフトウエアを用いて定量することができる。
【0048】
溶媒除去
反応混合物,抽出物,クロマトグラフィー画分,または(再)結晶化の母液から所望の生成物を得るためには,溶液を濃縮するか溶媒を完全に除去することがしばしば必要である。これは,大気圧または減圧下で,単純蒸留または分別蒸留手法により行うことができる。場合によっては,大気圧蒸留を用いて大量の溶媒を除去し,次に残留した痕跡量を減圧で除去する。いずれの場合も,所望の生成物の安定性および揮発性を考慮しなければならない。すなわち,過熱による生成物の分解を回避するよう注意しなければならない。
【0049】
溶媒除去および凍結乾燥を行うための市販の回転蒸発装置が存在する。他の単純な装置も当業者に知られている。低温で対応する高真空下で溶媒を除去する方法もまた当業者に知られている。
【0050】
濾過
濾過とは,フィルターとして知られる多孔質障壁を用いて不溶性固体を液体から分離することである。液体はフィルターを通過するが,固体はフィルター上に保持される。液体は,重力の力により(重力濾過)および/または吸引の使用により(吸引濾過),フィルターを通過することができる。濾過のプロセスを用いて,溶液から不純物を除去し,および/または固体を回収する。有機化学において最も頻繁に用いられるフィルターは,フィルター紙および焼結ガラスフリットであり,これらは両方とも種々の会社から市販されており,当業者にはよく知られている。吸引濾過には,典型的にはブフナー,ハーシュまたは焼結ガラスフリットが用いられる。吸引濾過においては,吸引器によりまたは他の真空手段により,フィルターの下の圧力を減少させる。次に,大気圧の力により液体はフィルターを通過する。
【0051】
(再)結晶化
結晶化は,所定の物質の溶液または溶融物からの結晶の析出である。同じ構造の分子の結晶格子には他の分子の結晶格子よりよく適合するため,結晶形成のプロセスの間,似た分子は結合して同じタイプの分子から構成される成長する結晶となる傾向にある。近平衡条件下で結晶化プロセスを生じさせると,分子は似た分子から構成される表面に優先的に析出し,このことにより結晶物質の純度が高まる。すなわち,結晶化のプロセスは精製の重要な方法である。結晶化は,“沈殿”とのより広い用語に包摂される。この用語は,“結晶化”するか否かにかかわらず,溶解した化合物が溶解状態をやめて溶液の外で効率的に固体形をとることを表す。沈殿または結晶化は,長い期間をかけて,例えば,数秒から数時間または数日かけて生ずる場合もある。また,これらのプロセスは,以下の実施例2に示されるように温度にも依存し,さらに,用いられる特定の溶媒および溶質の特性にも依存し,溶解度は暖かい温度か冷たい温度かによって異なる。“再結晶化”との用語は,化合物の1またはそれ以上の先の結晶化がすでに行われていることを表し,同じ溶媒および条件を用いる場合も用いない場合もあり,かつ同じまたは異なる融点の多型に達するのに十分である場合もない場合もある。
【0052】
実際,本発明の1つの観点は,種々の多型構造を形成し利用することができる点である。本出願人は,17−AAGの多数の比較的純粋な形(多型)の可能性を同定した。いくつかは,例えば,実質的に純粋なイソプロパノールから結晶化したときに約147−153℃の比較的低い融点を有し,いくつかは,例えば,少量の水を混合したエタノールから結晶化したときに約200−212℃のより高い融点を特徴とする。水は予めエタノールと混合してもよく,既に17−AAGが溶解しているエタノール溶液に後で加えてもよい。より低い融点形の17−AAGは,より高い融点形の17−AAGよりも容易に室温で種々の溶媒および油に溶解し,17−AAGを薬剤または医薬組成物として製剤するのに潜在的な利点を与える。より高い融点形は,種々の条件下においてより高い化学的安定性の利点を与え,すなわち,種々の保存条件下でより長い製品寿命を示すであろう。最終目標にしたがって,単に適当な溶媒中で溶解し結晶化することにより,1つの形を別の形に容易に変換することができる。同様の現象は17−アミノゲルダナマイシン(“17−AG”;実施例5,6を参照)を用いたときも認められ,このことは,他のアンサマイシンについても,また同様に他の無関係の化合物についても,さまざまな多型を達成しうることを示唆する。
【実施例1】
【0053】
17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−AAG)の合成
乾燥2Lフラスコ中の1.45Lの乾燥THF中の45.0g(80.4mmol)のゲルダナマイシンに,50mLの乾燥THF中の36.0mL(470mmol)のアリルアミンを30分間かけて滴加した。反応混合物を室温で窒素下で4時間撹拌し,このときTLC分析は反応が完了したことを示した[(GDM:明るい黄色:Rf=0.40;(5%MeOH−95%CHCl3);17−AAG:紫色:Rf=0.42(5%MeOH−95%CHCl3)]。溶媒を回転蒸発により除去し,粗生成物を420mLのH2O:EtOH(90:10)中で25℃でスラリー化し,濾過し,45℃で24時間乾燥して,40.9g(66.4mmol)の17−AAGを紫色結晶(82.6%収率,254nmでモニターしたHPLCで>98%の純度)として得た。MP206−212℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例2】
【0054】
17−AAGのイソプロパノール中での結晶化
精製の別の方法では,エタノール中で結晶化する代わりに,実施例1からの粗17−AAGを800mLの2−プロピルアルコール(イソプロパノール)に80℃または還流温度(約82.2℃)で溶解し,次に室温に冷却する。濾過し,次に45℃で24時間乾燥して,44.6g(72.36mmol)の17−AAGを紫色結晶(90%収率,HPLCで254nmでモニターして>99%の純度)として得る。MP147−153℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例3】
【0055】
多型の変換:エタノール中での17−AAGの再結晶
精製の別の方法においては,実施例2からの17−AAG生成物を400mLのH2O:EtOH(90:10)中で25℃でスラリー化し,濾過し,45℃で24時間乾燥して,42.4g(68.6mmol)の17−AAGを紫色結晶(95%収率,254nmでモニターしたHPLCにより>99%の純度)として得る。MP147−153℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例4】
【0056】
多型の変換:エタノール中での17−AAGの再結晶
精製の別の方法においては,実施例2からの17−AAG生成物を300mLのEtOHに還流温度(約80℃)で溶解し,次に1,200mLのH2Oを加え,室温に冷却する。固体を濾過により回収し,45℃で24時間乾燥して,41.0g(67mmol)の17−AAGを紫色結晶(93%収率,254nmでモニターしたHPLCにより>99%の純度)として得る。MP206−212℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例5】
【0057】
17−アミノゲルダナマイシン(17−AG)の合成
火炎乾燥フラスコ中の40mlの乾燥THF中の2.0g(3.57mmol)のゲルダナマイシンに,2.55ml(17.8mmol,メタノール中溶液,約7N)のアンモニアを窒素下で加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌し,このとき,TLC分析は反応が完了したことを示した。溶媒を回転蒸発により除去し,粗生成物を30mLのEtOHに溶解し,120mLの水を加えることにより結晶化させて,1.8g(3.30mmol)の17−AGを赤色結晶(HPLCにより99%の純度)として得た。MP284−286℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【実施例6】
【0058】
イソプロパノール中の17−AGの再結晶
実施例5からの17−AGの精製の別の方法においては,最終的な17−AG生成物を30mLの実質的に純粋な2−プロピルアルコール(イソプロパノール)に80℃または還流温度(約82.2℃)で溶解し,次に室温に冷却する。濾過し,次に45℃で24時間乾燥して,1.5g(2.7mmol)の17−AAGを紫色結晶(76%収率,254nmでモニターしたHPLCにより>99%の純度)として得る。MP267−271℃。1H NMRおよびHPLCは所望の生成物と一致する。
【0059】
上述の実施例は限定的なものではなく,単に本発明の種々の観点および態様の代表例にすぎない。本明細書において言及されるすべての特許および刊行物は,本発明の属する技術分野の技術者のレベルを示す。各書類の開示は,それぞれの全体が個々に本明細書の一部としてここに引用されることと同じ程度に,本明細書の一部として引用されるが,これらの書類のいずれも本発明に対する先行技術であると認めるものではない。
【0060】
当業者は,本発明は,その目的を実施し,記載される結果および利点,ならびに本明細書に固有のものを得るのによく適合していることを容易に理解するであろう。記載される方法および組成物は,好ましい態様の説明であり,例示的なものであって,本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は,特許請求の範囲において定義される本発明の精神の中に包含される変更および他の用途をなすであろう。
【0061】
当業者は,本発明の範囲および精神から逸脱することなく,本明細書に開示される本発明に対して置換および改変をなすことができることを容易に理解するであろう。すなわち,そのような追加の態様も本発明および特許請求の範囲の範囲内である。
【0062】
本明細書に例示的に記載されている発明は,本明細書に特定的に開示されていない任意の要素または限定なしでも適切に実施することができる。すなわち,例えば,"・・・を含む","・・・から本質的になる"および"・・・からなる"との用語は,それぞれ移行節として異なる意味を有しており,そのような節のそれぞれは,他方の代わりに本発明の異なる観点または態様を示すよう用いることができる。本明細書において用いた用語および表現は,説明の用語として用いるものであり,限定ではない。そのような用語および表現の使用においては,示されかつ記載されている特徴またはその一部の等価物を排除することを意図するものではない。特許請求の範囲に記載される本発明の範囲中で種々の変更が可能であることが理解される。すなわち,好ましい態様および任意の特徴により本発明を特定的に開示してきたが,当業者には本明細書に開示される概念の変更および変種が可能であり,そのような変更および変種も発明の説明および特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0063】
さらに,発明の特徴および観点がマーカッシュグループまたは代替物の他のグループ化の用語で記載されている場合,当業者は,本発明が,マーカッシュグループまたは他のグループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもまた記載されていることを認識するであろう。
【0064】
他の態様は特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は,17−アリルアミノゲルダナマイシンのHPLCクロマトグラムを示す。
【図2】図2は,1H NMRスペクトルを示す。
Claims (45)
- 17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−AAG)またはその4,5ジヒドロ17−AAG類似体を製造する方法であって,
(a)アリルアミンおよびゲルダナマイシンまたはその4,5ゲルダナマイシンジヒドロ類似体を揮発性非プロトン性溶媒中で混合して,粗17−AAGまたは4,5ジヒドロ17−AAGを形成し;
(b)蒸発により前記粗17−AAGまたは4,5ジヒドロ17−AAGを濃縮し;
(c)前記濃縮した17−AAGまたは4,5ジヒドロ17−AAGに揮発性プロトン性溶媒を加え;そして
(d)前記粗17−AAGまたは4,5ジヒドロ17−AAGを精製するのに適した条件下で前記揮発性プロトン性溶媒を除去し,前記除去は任意に濾過工程を用いて行われる,
の各工程を含む方法。 - 前記揮発性非プロトン性溶媒は,THF,エチルエーテル,MTBE,THP,ジオキサン,エチルsec−ブチルエーテル,メチルブチルエーテル,酢酸エチル,および酢酸メチルからなる群の1またはそれ以上の溶媒から選択され,および前記揮発性プロトン性溶媒は,揮発性アルコール,水,およびそれらの混合物からなる群より選択される1またはそれ以上の溶媒を含む,請求項1記載の方法。
- 前記揮発性非プロトン性溶媒がTHFを含む,請求項2記載の方法。
- クロマトグラフィー手法を用いて反応完了および/または純度をモニターすることをさらに含む,請求項1記載の方法。
- 工程(b)および(d)のいずれかまたは両方が,熱,遠心分離,デカント,および/または真空を適用することを含む,請求項1記載の方法。
- 前記揮発性プロトン性溶媒が,前記17−AAGまたは4,5ジヒドロ17−AAGを溶液から結晶化するために用いられる,請求項1記載の方法。
- 前記揮発性プロトン性溶媒が,前記17−AAGまたは4,5ジヒドロ17−AAGを洗浄するために用いられる,請求項1記載の方法。
- 工程(a)−(d)の1またはそれ以上を非酸化的環境中で行うことをさらに含む,請求項1記載の方法。
- アンサマイシンを製造する方法であって:
(a)揮発性非プロトン性溶媒中のアンサマイシンを用意し;
(b)蒸発により前記アンサマイシンを濃縮し;
(c)揮発性プロトン性溶媒を工程(b)の生成物に加え;そして
(d)前記アンサマイシンを精製するのに適した条件下で前記揮発性プロトン性溶媒を除去し,前記除去は任意に濾過工程を用いて行われる,
の各工程を含む方法。 - 前記揮発性非プロトン性溶媒は,THF,エチルエーテル,MTBE,THP,ジオキサン,エチルsec−ブチルエーテル,メチルブチルエーテル,酢酸エチル,および酢酸メチルからなる群の1またはそれ以上の溶媒から選択され,および前記揮発性プロトン性溶媒は,揮発性アルコール,水,およびこれらの混合物からなる群より選択される1またはそれ以上の溶媒を含む,請求項9記載の方法。
- 前記揮発性プロトン性溶媒が,前記アンサマイシンを溶液から結晶化するために用いられる,請求項9記載の方法。
- 前記揮発性プロトン性溶媒が,前記アンサマイシンを洗浄するために用いられる,請求項9記載の方法。
- 前記揮発性非プロトン性溶媒がTHFを含む,請求項9記載の方法。
- クロマトグラフィー手法を用いて反応完了および/または純度をモニターすることをさらに含む,請求項9記載の方法。
- 工程(b)および(d)のいずれかまたは両方が,熱,遠心分離,デカント,および/または真空を適用することを含む,請求項9記載の方法。
- 工程(a)−(d)の1またはそれ以上を非酸化的環境中で行うことをさらに含む,請求項9記載の方法。
- 前記アンサマイシンが,17−AAGおよび4,5ジヒドロ17−AAGからなる群より選択される,請求項9記載の方法。
- 任意に光耐性容器中に封入されていてもよい,請求項1−16のいずれかに記載の生成物。
- 17−AAGを製造する方法であって,
プロトン性溶媒溶液中に溶解した17−AAGを用意し,前記プロトン性溶媒溶液は実質的に水を含まず;
前記17−AAGを前記プロトン性溶媒溶液から結晶化し;そして
前記プロトン性溶媒溶液を除去する,
の各工程を含む方法。 - 前記プロトン性溶媒がイソプロパノールであり,前記17−AAGが,前記イソプロパノールから結晶化し,これを除去した後に,146℃−153℃の融点を示す,請求項19記載の方法。
- 前記プロトン性溶媒がイソプロパノールであり,前記17−AAGが,前記イソプロパノールから結晶化し,これを除去した後に,約155℃またはそれ以下の融点を示す,請求項19記載の方法。
- 請求項20または21記載の方法により形成される17−AAGを含む組成物。
- 請求項19記載の方法により形成される17−AAGを含む組成物。
- 任意に光耐性容器中に封入されている,請求項22記載の組成物。
- 任意に光耐性容器中に封入されている,請求項23記載の組成物。
- 17−AAGを製造する方法であって,
プロトン性溶媒溶液中に溶解した17−AAGを用意し,前記プロトン性溶媒溶液は少量の水を含み;
前記17−AAGを前記プロトン性溶媒溶液から結晶化し;そして
前記プロトン性溶媒溶液を除去する,
の各工程を含む方法。 - 前記プロトン性溶媒溶液から結晶化しこれを除去した後の前記17−AAGが,200℃より高い融点を示す,請求項26記載の方法。
- 前記プロトン性溶媒溶液から結晶化しこれを除去した後の前記17−AAGが,206℃−212℃の融点を示す,請求項26記載の方法。
- 前記プロトン性溶媒溶液がエタノールをさらに含む,請求項27または28記載の方法。
- 請求項29記載の方法により形成される17−AAGを含む組成物であって,任意に光耐性容器中に封入されている組成物。
- アンサマイシンの第1の多型をアンサマイシンの第2の多型に変換する方法であって,第2の多型のアンサマイシンを得るのに十分な条件下で第1の多型のアンサマイシンをプロトン性溶媒溶液に溶解することを含む方法。
- 前記第1の多型が前記第2の多型より高い融点を示す,請求項31記載の方法。
- 前記第1の多型が前記第2の多型より低い融点を示す,請求項31記載の方法。
- 前記アンサマイシンが17−AAGである,請求項31−33のいずれかに記載の方法。
- 前記アンサマイシンが17−AAGであり,前記第2の多型が,実質的に水を含まないイソプロパノール溶液から結晶化することにより形成される,請求項32記載の方法。
- 前記アンサマイシンが17−AAGであり,前記第2の多型が,水を含むエタノール溶液から結晶化することにより形成される,請求項33記載の方法。
- 147−153℃の融点を有する形の17−AAGを含む組成物。
- 前記17−AAGが結晶の形である,請求項37記載の組成物。
- 267−271℃の融点を有する形の17−AGを含む組成物。
- 前記17−AGが結晶の形である,請求項39記載の組成物。
- 結晶化合物の1つの多型を別の多型に変換する方法であって,
(a)第1の結晶形の化合物を用意し,前記第1の結晶形は第1の融点を有し,および第1の溶媒中における結晶化により生成し;
(b)前記化合物を第2の溶媒中で再結晶させて第2の結晶形を得,前記第2の結晶形は前記第1の融点と異なる第2の融点を有する,
の各工程を含む方法。 - 前記第1の結晶形が前記第2の結晶形より高い融点を有する,請求項41記載の方法。
- 前記第1の結晶形が前記第2の結晶形より低い融点を有する,請求項42記載の方法。
- 前記化合物がアンサマイシンである,請求項40−43のいずれかに記載の方法。
- 前記アンサマイシンが,17−AAGおよび17−AGからなる群より選択される,請求項44記載の方法。
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