本発明の画像形成方法は、(1)導電性基材上に感光層を配置した層構成を有する感光体の表面を帯電させる帯電工程1;(2)帯電した感光体表面に像露光を行うことにより、静電潜像を形成する露光工程2;(3)トナーにより感光体表面の静電潜像を現像して、トナー像を形成する現像工程3;(4)感光体表面のトナー像を転写材上に転写する転写工程4;(5)転写材上に転写したトナー像を定着する定着工程5;及び(6)転写工程後に感光体表面に残留するトナーを、感光体表面に接触させたクリーニングブレードにより除去するクリーニング工程6を含んでいる。これらの工程に加えて、除電工程などの他の工程が付加的に配置されていてもよい。
本発明で採用している画像形成方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明で採用している画像形成方法を適用することができる画像形成装置の一例を示す説明図である。図2に示すように、画像形成装置には、感光体としての感光ドラム21を矢印A方向に回転自在に装着してある。感光体は、導電性基材の上に感光層を形成したものである。感光ドラム21は、導電性ドラム基材上に感光層を設けたものである。感光層は、例えば、有機感光体、セレン感光体、酸化亜鉛感光体、アモルファスシリコン感光体などで構成される。これらの中でも、有機感光体(organic photoconductor; OPC)が代表的なものである。本発明においても、有機感光体で構成した感光層を有する感光体が好適に用いられる。
感光層を導電性ドラム基材などの導電性基材に結着させる樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂が挙げられるが、これらの中でも、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
感光ドラム21の周囲には、その周方向に沿って、帯電部材としての帯電ロール22、露光装置としてのレーザー光照射装置23、現像装置29、転写ロール210、クリーニングブレード212が配置されている。帯電工程は、帯電部材により、感光ドラム21の表面を、プラスまたはマイナスに一様に帯電する工程である。帯電部材での帯電方式としては、図2で示した帯電ロール22の他に、ファーブラシ、磁気ブラシ、ブレード等で帯電させる接触帯電方式と、コロナ放電による非接触帯電方式とがあり、帯電ロール22をこれらに置き換えることも可能である。
露光工程は、図2に示すようなレーザー光照射装置23により、画像信号に対応した光を感光ドラム21の表面に照射して像露光を行い、一様に帯電された感光ドラム21の表面に静電潜像を形成する工程である。レーザー光照射装置23は、例えば、レーザー照射装置と光学系レンズとで構成されている。レーザー光照射装置の他に、露光装置として、例えば、LED照射装置がある。
現像工程は、露光工程により感光ドラム21の表面に形成された静電潜像に、現像装置29により、トナー(現像剤)を付着させる工程である。反転現像においては、光照射部にのみトナーを付着させ、正規現像においては、光非照射部にのみトナーを付着させるように、現像ロール24と感光ドラム21との間にバイアス電圧が印加される。
図2に示す現像装置29は、一成分現像剤(トナー)を用いた一成分接触現像方式に用いられる現像装置である。トナー28を収容したケーシング27内に、現像ロール24と供給ロール26とが配置されている。現像ロール24は、感光ドラム21に一部接触するように配置され、感光ドラム21と反対方向Bに回転するようになっている。供給ロール26は、現像ロール24に接触して現像ロール24と同じ方向Cに回転し、現像ロール24の外周にトナー28を供給するようになっている。この他の現像方式としては、一成分非接触現像方式、二成分接触現像方式、二成分非接触現像方式がある。
現像ロール24の周囲において、供給ロール26との接触点から感光ドラム21との接触点との間の位置には、トナー層厚規制部材としての現像ロール用ブレード25が配置されている。このブレード25は、例えば、導電性ゴム弾性体または金属で構成されている。
転写工程は、現像工程で形成された感光ドラム21表面のトナー像を、紙などの転写材211上に転写する工程である。転写工程では、通常、図2に示すような転写ロール210を用いて転写が行なわれているが、その他にもベルト転写、コロナ転写がある。クリーニング工程は、転写工程後に感光ドラム21の表面に残留したトナーをクリーニングする工程である。クリーニング工程では、一般的に、図2に示すようなクリーニングブレード212が使用されているが、その他にもファーブラシや磁気ブラシによるクリーニングも提案されている。本発明においては、クリーニングブレードを使用してクリーニングを行う。転写工程後、トナー像を有する転写材は、定着工程に移送される。定着工程では、例えば、定着ロール213と加圧ロール214との間を転写材を通過させ、加熱加圧することにより、トナー像を転写材上に定着させている。
図2に示す画像形成装置では、感光ドラム21は、帯電ロール22により表面が負極性に全面均一に帯電された後、レーザー光照射装置23により静電潜像が形成され、さらに、現像装置29により現像されトナー像が形成される。感光ドラム21上のトナー像は、転写ロール210により、紙などの転写材上に転写され、感光ドラム21表面に残留するトナー(転写残トナー)は、クリーニングブレード212によりクリーニングされる。クリーニング工程後、次の画像形成サイクルに入る。
図2に示す画像形成装置は、モノクロ用のものであるが、カラー画像を形成する複写機やプリンター等のカラー画像形成装置にも、本発明の画像形成方法を適用することができる。カラー画像形成装置としては、感光体上で多色のトナー像を現像させ、それを転写材に一括転写させる多重現像方式;感光体上には単色のトナー像のみを現像させた後、転写材に転写させる工程を、カラートナーの色の数だけ繰り返し行う多重転写方式がある。多重転写方式には、転写ドラムに転写材を巻きつけ、各色ごとに転写を行う転写ドラム方式;中間転写体上に各色毎に一次転写を行い、中間転写体上に多色の画像を形成させた後、一括して二次転写を行う中間転写方式;各色毎の感光体廻りをタンデムに配置させ、転写材を転写搬送ベルトで吸着搬送させて、順次各色を転写材に転写を行うタンデム方式がある。これらの転写方式の中でも、画像形成速度を大きくすることができる点からタンデム方式が好ましい。
本発明の画像形成方法の第一の特徴点は、前記の如き電子写真方式の画像形成方法において、感光体として、15〜50°のすべり摩擦角度を有するものを使用する点にある。
感光体表面の残留トナーを弾性を有するエラストマー製クリーニングブレード(以下、「弾性ブレード」と呼ぶことがある)を用いてクリーニングする場合、トナーと感光体との関係では、感光体の摩擦抵抗(摩擦係数)が小さい方が、トナーが感光体表面を滑ってクリーニングが良好となるように思われる。しかし、弾性ブレードと感光体表面との間の摩擦抵抗は、弾性ブレードが感光体を密着してクリーニングを行うので、大きい方がよいとも考えられる。本発明者らは、感光体表面の摩擦抵抗と弾性ブレードによるクリーニング性との関連性について検討した結果、球形かつ小粒径トナーの好適なクリーニングの領域が、感光体表面の摩擦抵抗がむしろ大きい側にあることを実験的に見出した。
感光体は、少なくとも表面に感光層を有している。感光層は、例えば、ポリカーボネート等の結着樹脂と電荷移動剤とで構成されている。感光体表面の摩擦係数が異なる感光体を、ポリカーボネート樹脂の種類を変えることで各種製作し、後述する方法により、感光体のすべり摩擦角度を測定したところ、感光体と球形かつ小粒径トナーの弾性ブレードによるクリーニング性との関係では、感光体のすべり摩擦角度が15〜50°の範囲内にあるときに、クリーニング性に優れることを見出した。
感光体のすべり摩擦角度は、図1に示す測定装置と測定方法により測定される値である。すなわち、図1は、感光体のすべり摩擦角度の測定装置と測定方法を示す略図である。(I)先ず、傾斜台1の傾斜面に台紙2(電子写真方式の画像形成で用いられるコピー用紙:具体的には、Xerox製 J紙)を敷き、その上に感光ドラム3を置く。(II)測定装置を作動させて、傾斜台1を方向6に引き上げて傾ける。傾斜台1の傾斜面が傾くことにより、感光ドラム3が方向5に動き出す。感光ドラム3が方向5に動いて、光センサ4を遮ると、測定装置が停止する。(III)測定装置が停止したときの角度θを計測し、感光体のすべり摩擦角度とする。
すべり摩擦角度θから、摩擦係数を算出することもできる。摩擦係数μ0=F/Pであるが、F=Wsinθ、P=Wcosθであるから、摩擦係数μ0=tanθとなる。ここで、Wは、傾斜台上での感光ドラムのすべり開始時における垂直方向の荷重である。
感光体のすべり摩擦角度が大きすぎるときは、すべり性が悪いので、感光体とクリーニングブレードとの密着性は良好となる。しかし、密着性がよすぎると、クリーニングブレードがめくれる現象が発生することがある。他方、感光体のすべり摩擦角度が小さすぎるときは、すべり性が良すぎるので感光体とクリーニングブレードとの密着性が悪くなり、クリーニングブレード先端が感光体から浮き易くなる。
一方、トナーと感光体との密着性の観点からは、感光体のすべり性が悪いときはトナーの感光体への密着性が大きくなり、クリーニング性の面からは不利になる。感光体のすべり性がよすぎると、トナーの感光体への密着性が小さくなり、クリーニング性の面からは有利になる。したがって、トナーとクリーニングブレードの感光体への密着性は、トナーの面からはできる限り小さく、クリーニングブレードの面からは、めくれの上限があるが、できるだけ大きいほうがよいことになり、相反する事象となっている。本発明者らは、研究を積み重ねた結果、すべり摩擦角度が15〜50°、好ましくは20〜45°の感光体を使用することが、球形かつ小粒径トナーのクリーニング性に優れることを見出した。感光体のすべり摩擦角度が小さすぎても、大きすぎても、クリーニング性が低下し、カブリも発生し易くなる。
本発明で使用する感光体は、例えば、導電性基材の上に、少なくとも電荷発生剤を含有する電荷発生層が形成され、その上に、少なくとも電荷移動剤を含有する電荷移動層が形成された機能分離型感光体である。この場合、電荷発生層と電荷移動層とにより感光層が形成される。また、感光体として、電荷発生剤と電荷移動剤が同一の層に含有される単層型感光体や、電荷移動層と電荷発生層とがこの順に積層された逆積層型感光体なども使用することができる。
本発明で使用する導電性基材としては、例えば、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、銅、錫、白金、モリブデン、インジウム等の金属単体またはこれらの合金の加工体;上記金属や炭素等の導電性物質を蒸着、メッキ等の方法で処理し、導電性を持たせたプラスチック板及びフィルム;酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆した導電性ガラス;などがあり、種類や形状に制限されることはない。導電性を有する種々の材料を使用して導電性基材を構成することができる。また、導電性基材の形状については、ドラム状、シート状、ベルト状など各種形状のものを使用することができる。
導電性基材の中でも、JIS3000系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金を用いて、EI法(押出成形後しごき加工)、ED法(押出加工後引抜加工)、DI法(深絞り加工後しごき加工)、II法(衝撃押出加工後しごき加工)などの一般的な方法により成形を行い、そして、ダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨等の表面処理を行っていない無切削管が、価格や下層形成処理の観点から好ましい。無切削管の直径は、通常Φ20〜60mmであり、好ましくはΦ16〜40mmであり、厚みは、通常0.5〜2.5mm程度である。
導電性基材上に、陽極酸化処理を施したアルマイト層や樹脂材料を用いた下引き層からなる下層を設けることが好ましい。これらの下層を形成することにより、導電性基材表面の欠陥による悪影響を抑制し、新たな機能を付与することもできる。アルミニウム基材表面の陽極酸化処理により形成したアルマイト層は、接着性の付与、電荷注入阻止性、整流性などの役割を果たす。アルマイト層の厚みは、通常5〜50μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは5〜10μmである。
下引き層(Under Coat Layer;UCL)に用いる樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、ポリイミド樹脂が好ましく、部分的にイミド化されたポリイミド樹脂がより好ましい。
部分的にイミド化されたポリイミド樹脂とは、ポリアミド酸の一部分で脱水反応が起こり、イミド化された樹脂のことである。この部分的にイミド化されたポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を、110℃〜170℃の間の温度で乾燥させることにより得ることができる。部分的なイミド化の割合は、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜50重量%である。このポリアミド酸は、通常、有機溶媒に溶解して塗布液とし、前記導電性基材上に塗布する。使用する有機溶媒は、ポリアミド酸を溶解できるものであれば特に限定されない。
樹脂材料を用いた下引き層の膜厚は、通常5〜50μm、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜30μmである。
半導体レーザー露光時の光干渉を抑制する目的で、下引き層に無機顔料を含有させることが好ましい。下引き層に含有させる無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、酸化チタンが好ましい。これら無機顔料の粒径は、通常0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μmである。酸化チタンは、体積抵抗値を低下させない限り、酸化チタン粒子表面に種々の処理を施したものでもよい。例えば、アルミニウム等を処理剤として、酸化チタン粒子表面に酸化膜の被覆を行うことができる。その他、必要に応じてカップリング剤等により、撥水性を付与することも可能である。
アルマイト層や下引き層などの下層の厚さを5μm以上とすることにより、感光体の誘電層の厚さを従来よりも厚くすることが可能となる。トナーの感光体への静電吸着力は、誘電層の厚さに反比例するので、静電吸着力を低下させるには感光層の厚さが大きいほどよい。静電潜像を従来より高精細に形成するには、感光層の厚さを薄くすればよいが、この場合、感光層を薄くした分以上に下層を厚くすれば、トナーの感光体への静電吸着力を低下させることができる。
電荷発生層に含有させる電荷発生剤としては、特に限定されず、セレン、セレン−テルル、セレン−砒素、アモルファスシリコン、オキシチタニウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、他の金属フタロシアニン顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ポリアゾ顔料、インジゴ顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、多環キノン顔料、ピリリウム塩等を用いることができる。これらの中でも、ジスアゾ顔料やオキシチタニウムフタロシアニンが感度の点で好ましく、オキシチタニウムフタロシアニンは比較的高感度であるため特に好ましい。
電荷発生層の膜厚は、通常0.01〜5.0μm、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.5μmである。電荷発生剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、適切な光感度波長や増感作用を得るために2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷移動層に含有させる電荷移動剤としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタロシアニン等の高分子電荷移動剤、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、キノン、ジフェノキノン、アントラキノン、イソオキサゾリリデン及びこれらの誘導体等;アントラセン、ピレン等の多環芳香族化合物;インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物;ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、スチルベン、ブタジエン化合物;等の低分子電荷移動剤が挙げられる。
電荷移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて添加することができる。電荷移動層の膜厚は、通常5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。
感光層である電荷発生層と電荷移動層を形成するために使用する結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、エチレン・酢酸ビニル・共重合体(EVA)樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、エポキシアリレートなどの光硬化樹脂等が挙げられる。
これらの結着樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。結着樹脂として、分子量の異なった2種以上の樹脂を混合して用いれば、硬度や耐摩耗性を改善することができるのでより好ましい。中でも、ポリカーボネート樹脂が好ましく、シロキサン骨格含有ポリカーボネート共重合体樹脂、パーフロロ基を末端基として設けたポリカーボネート共重合体樹脂などがより好ましい。
本発明で使用する電子写真感光体は、光導電材料や結着樹脂の酸化劣化による特性変化、クラックの防止、機械的強度の向上の目的で、その感光層中に酸化防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤と紫外線吸収剤とを同時に添加することもできる。これらの添加剤は、感光層中であれば何れの層に添加してもよいが、最表面の層、特に電荷移動層に添加することが好ましい。
酸化防止剤は、結着樹脂に対して3〜20重量%の割合で添加することが好ましい。紫外線吸収剤は、結着樹脂に対して3〜30重量%の割合で添加することが好ましい。酸化防止剤と紫外線吸収剤との両者を添加する場合には、両成分の添加量を結着樹脂に対して5〜40重量%の範囲内とすることが好ましい。
前記の酸化防止剤や紫外線吸収剤以外に、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物等の光安定剤、ジフェニルアミン化合物等の老化防止剤、界面活性剤等を感光層に添加することもできる。
感光層上に、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等からなる有機薄膜や、シランカップリング剤の加水分解物で形成されるシロキサン構造体からなる薄膜を形成して、表面保護層としてもよい。
感光層の形成方法としては、所定の感光材料と結着樹脂とを溶媒に分散または溶解して塗工液を調製し、この塗工液を所定の導電性基材上に塗工する方法が一般的である。塗工方法としては、例えば、浸漬塗工、カーテンフロー、バーコート、ロールコート、リングコート、スピンコート、スプレーコート等があり、下地の形状や塗工液の状態に合わせて選択することができる。電荷発生層は、真空蒸着法により形成することもできる。
塗工液に使用する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
感光体のすべり摩擦角度を調整する方法としては、例えば、(1)感光層の結着樹脂として、パーフルオロアルキル基もしくは置換パーフルオロアルキル基のようなフッ素原子を含有する基を導入した樹脂(重合体)を使用する方法、(2)特開平11−279274号公報に記載されているような、感光層の結着樹脂として、シロキサンを共重合した樹脂(重合体)を使用する方法、(3)感光層の表面付近にフッ素有樹脂粒子を均一に分散させたオーバーコート層を形成する方法、(4)感光層またはオーバーコート層にシリコーンオイルを含有させる方法が挙げられるが、このような方法に限定されるものではない。
感光層の結着樹脂として、フッ素原子を含有する基を導入した樹脂(重合体)を使用する方法では、例えば、末端基としてフッ素原子を含有する基を導入したポリカーボネート樹脂を使用する方法が挙げられる。フッ素原子を含有する基としては、直鎖状、分岐状、環状のパーフルオロアルキル基または置換パーフルオロアルキル基が挙げられる。
感光層の結着樹脂として、シロキサンを共重合した樹脂(重合体)を使用する方法では、例えば、シロキサンを共重合したポリカーボネート樹脂を使用する方法を挙げることができる。シロキサンの共重合割合を調整することにより、感光層のすべり摩擦角度を制御することができる。このタイプの結着樹脂の好ましい具体例としては、ポリカーボネートとポリジメチルシロキサンを共重合させた架橋型ポリカーボネート−シロキサン共重合樹脂を挙げることができる。
感光層にオーバーコートを行う方法では、フッ素樹脂粒子と結着樹脂とを含有する溶液を感光層の上に塗布する方法が好ましい。フッ素樹脂粒子の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフロオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキビニルエーテル共重合体などのフッ素樹脂粒子が挙げられる。これらのフッ素樹脂粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フッ素樹脂粒子の粒径は、通常0.01〜10μm、好ましくは0.05〜2.0μmである。
フッ素樹脂粒子を分散する結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ブチラール樹脂などが挙げられる。
感光層またはオーバーコート層にシリコーンオイルを含有させる方法では、ジメチルシリコーンオイル、メチル−フェニルシリコーンオイル、ジメチルジフェニル共重合シリコーンオイルなどのシリコーンオイルを、感光層またはオーバーコート層の結着樹脂に対して、通常0.05〜5%の重量比、好ましくは0.1〜2%の重量比で含有させる方法が好ましい。
本発明の画像形成方法の第二の特徴点は、前記の如き電子写真方式の画像形成方法において、感光体として、15〜50°のすべり摩擦角度を有するものを使用し、さらに、特定のトナーを使用し、かつトナーの感光体表面での帯電量の絶対値を特定の範囲に制御する点にある。
本発明の画像形成方法で使用するトナーは、着色樹脂粒子と外添剤とを含有する現像剤である。本発明で使用するトナーは、一成分現像剤であることが好ましく、非磁性一成分現像剤であることがより好ましい。
トナーの主成分である着色樹脂粒子の体積平均粒径dvは、4〜10μm、好ましくは4〜9μm、より好ましくは5〜8μmである。体積平均粒径は、実施例に記載の方法により測定した値である。着色樹脂粒子の体積平均粒径が上記範囲内にあることによって、高解像度で高精細な画像を形成することができる。着色樹脂粒子の体積平均粒径dvが上記範囲にあると、流動性が高く、転写性が良好で、カスレの発生がなく、印字濃度が高く、画像の解像度が高いトナーを得ることができる。
着色樹脂粒子の粒径分布において、粒径3μm以下の着色樹脂粒子の割合は、好ましくは20個数%以下、より好ましくは10個数%以下、特に好ましくは5個数%以下である。粒径3μm以下の着色樹脂粒子の占める割合が、上記範囲にあると、クリーニング性が向上するので好ましい。
着色樹脂粒子は、体積平均粒径dvと個数平均粒径dpとの比dv/dpで表わされる粒径分布が、好ましくは1.0〜1.3であり、より好ましくは1.0〜1.2である。着色樹脂粒子の粒径分布dv/dpが上記範囲にあると、カスレの発生がなく、転写性が良好で、印字濃度及び解像度の高いトナーを得ることができる。 着色樹脂粒子の体積平均粒径及び個数平均粒径は、例えば、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)を用いて測定することができる。
着色樹脂粒子の平均円形度は、0.950〜0.995、好ましくは0.960〜0.995、より好ましくは0.970〜0.990である。着色樹脂粒子の平均円形度が上記範囲内にあると、細線再現性を良好にすることができる。
着色樹脂粒子の円形度は、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長と、粒子の投影像の周囲長との比として定義される。平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する一つの方法であり、着色樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標である。平均円形度は、着色樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、着色樹脂粒子の表面形状が凹凸になるほど小さな値となる。平均円形度(Ca)は、次式(1)により求めた値である。
上記式(1)において、nは、円形度Ciを求めた粒子の個数である。円形度Ciは、0.6〜400μmの円相当径の粒子群の各粒子について測定した円周長を元に、次式(2)により算出された各粒子の円形度である。
Ci=粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子投影像の周囲長 (2)
上記式(1)において、fiは、円形度Ciの粒子の頻度である。円形度及び平均円形度は、例えば、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」や「FPIA−2000」を用いて測定することができる。
本発明の画像形成方法において、感光体上に現像されたトナーの帯電量は、その絶対値(プラスまたはマイナスの帯電量の絶対値)で、10〜80μC/g、好ましくは15〜70μC/g、より好ましくは20〜60μC/gである。トナーの感光体表面での帯電量の絶対値が上記範囲内にあることによって、クリーニング性と画質を高度にバランスさせることができる。トナーの感光体表面での帯電量の絶対値が大きすぎると、クリーニング性が低下し、印字汚れも発生し易くなる。トナーの感光体表面での帯電量の絶対値が小さすぎると、クリーニング性は良好であるものの、低温低湿や高温高湿の環境下での印字濃度が低下し、カブリも発生し易くなる。
トナーの感光体表面での帯電量の絶対値|Q|(μC/g)は、温度23℃及び湿度50%の常温常湿(N/N)環境下でベタ印字を行い、そして、感光体上に現像されたトナーを吸引式帯電量測定装置(トレックジャパン社製、機種名「210HS−2A」)により吸引し、トナーの吸引量(g)と測定値(μC)に基づいて、トナーの単位重量当りの帯電量Q(μC/g)を算出する方法により測定した。トナーには正帯電性トナーと負帯電性トナーとがあるため、トナーの単位重量当りの帯電量は、プラスまたはマイナスの帯電量の絶対値|Q|で表わした。 帯電量の絶対値の測定法の詳細は、実施例に記載したとおりである。
感光体表面でのトナーの帯電量の絶対値は、後述する着色樹脂粒子に含有される帯電制御剤の種類及び量、外添剤の種類及び量、感光体の構成、現像ロールの構成、感光体と現像ロール間のバイアス電圧等を調整することによって上記範囲内にすることができる。
トナーの感光体表面での現像量M/A(現像後の感光体上でのトナー量)は、0.3〜0.8mg/cm2の範囲内にあることが好ましい。この現像量は、実施例に記載の測定法により測定した値である。すなわち、感光体上に現像されたトナーを吸引式帯電量測定装置により吸引する。この測定装置のファラデーゲージに予め重量を正確に測定したフィルターを取り付け、吸引後に吸引した部分のフィルター面積A(cm2)を測定し、この測定値Aとファラデーゲージの重量増加分〔すなわち、吸引量M(mg)〕とから現像量M/A(mg/cm2)を算出する。現像後の感光体上でのトナー量(現像量)が少なすぎると、印字濃度が低下傾向を示す。現像量が上記範囲にあることによって、印字濃度を適正な範囲とすることができる。
本発明で使用するトナーを構成する着色樹脂粒子は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子である。着色剤に加えて、離型剤及び帯電制御剤を含有していることが好ましい。結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の従来からトナーの技術分野において広く用いられている結着樹脂を挙げることができる。
着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、磁性粉、オイルブラック、チタンホワイトの他、あらゆる着色剤および染料を用いることができる。黒色のカーボンブラックは、一次粒子の個数平均粒径が20〜40nmであるものが好適に用いられる。粒径がこの範囲にあることにより、カーボンブラックをトナー中に均一に分散でき、カブリも少なくなるので好ましい。フルカラートナーを得る場合は、通常、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を使用する。
イエロー着色剤としては、例えば、アゾ系着色剤、縮合多環系着色剤等の化合物が用いられる。イエロー着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、90、93、97、120、138、155、180、181、185、186等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、アゾ系着色剤、縮合多環系着色剤等の化合物が用いられる。マゼンタ着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントレッド31、48、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、251;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物とその誘導体、アントラキノン化合物などが挙げられる。シアン着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60等が挙げられる。 着色剤の使用割合は、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部である。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタムなどの石油系ワックスとその変性ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステートなどの多官能エステル化合物;などが挙げられる。
離型剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。離型剤の中でも、合成ワックス及び多官能エステル化合物が好ましい。また、離型剤の中でも、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が好ましくは30〜150℃、より好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは50〜80℃の範囲にある多官能エステル化合物が、定着時の定着−剥離性バランスに優れるトナーが得られるので好ましい。分子量が1000以上であり、25℃でスチレン100重量部に対し5重量部以上溶解し、酸価が10mgKOH/g以下である離型剤は、定着温度の低下に顕著な効果を示すので特に好ましい。このような多官能エステル化合物としては、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート及びペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましい。吸熱ピーク温度とは、ASTM D3418−82によって測定される値を意味する。離型剤の配合割合は、結着樹脂100重量部に対して、通常3〜20重量部、好ましくは5〜15重量部である。
本発明のトナーは、帯電制御剤を含有していることが好ましい。帯電制御剤としては、従来からトナーの技術分野において使用されているものであればよく、特に制限されない。帯電制御剤の中でも、帯電制御樹脂を含有させることが好ましい。その理由は、帯電制御樹脂は、結着樹脂との相溶性が高く、無色であり、高速でのカラー連続印刷においても帯電性が安定したトナーを得ることができるからである。帯電制御樹脂は、正帯電制御樹脂として特開昭63−60458号公報、特開平3−175456号公報、特開平3−243954号公報、特開平11−15192号公報などの記載に従って製造される4級アンモニウム(塩)基含有共重合体などの正帯電制御樹脂;特開平1−217464号公報、特開平3−15858号公報などの記載に従って製造されるスルホン酸(塩)基含有共重合体などの負帯電制御樹脂が挙げられる。
これらの共重合体に含有される4級アンモニウム(塩)基またはスルホン酸(塩)基等の官能基を有する単量体単位の割合は、帯電制御樹脂の重量基準で、好ましくは0.5〜12重量%、より好ましくは1〜8重量%である。官能基を含有する単量体単位の割合が上記範囲にあると、トナーの帯電量を制御し易く、カブリの発生を少なくすることができる。
帯電制御樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2000〜50000、より好ましくは4000〜40000、特に好ましくは6000〜35000である。帯電制御樹脂の重量平均分子量が上記範囲にあると、オフセットの発生や定着性の低下を抑制することができる。
帯電制御樹脂のガラス転移温度は、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜75℃、特に好ましくは45〜70℃である。帯電制御樹脂のガラス転移温度が上記範囲にあると、トナーの保存性と定着性とをバランス良く向上させることができる。帯電制御剤の配合割合は、結着樹脂100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは1〜6重量部である。
着色樹脂粒子は、粒子の内部(コア層)と外部(シェル層)に異なる二つの重合体を組み合わせて得られるコア・シェル型(「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。コア・シェル型着色樹脂粒子では、内部(コア層)の低軟化点物質をそれより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができるので好ましい。コア・シェル型着色樹脂粒子のコア層は、前記結着樹脂及び着色剤で構成され、必要に応じて、帯電制御剤や離型剤などの各種添加剤が含有され、シェル層は、結着樹脂のみで構成される。
コア・シェル型着色樹脂粒子のコア層とシェル層との重量比率は、特に限定されないが、通常80/20〜99.9/0.1の範囲から選択される。シェル層の割合を上記割合にすることにより、トナーの保存性と低温での定着性を兼備することができる。
コア・シェル型着色樹脂粒子のシェル層の平均厚みは、通常0.001〜0.1μm、好ましくは0.003〜0.08μm、より好ましくは0.005〜0.05μmである。シェル層の厚みが大きくなりすぎると定着性が低下し、小さくなりすぎると保存性が低下する。コア・シェル型着色樹脂粒子を形成するコア粒子は、すべての表面がシェル層で覆われている必要はなく、コア粒子の表面の一部がシェル層で覆われていればよい。
コア・シェル型着色樹脂粒子のコア粒子径及びシェル層の厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさとシェル厚みを直接測ることにより得ることができる。電子顕微鏡による観察では、コアとシェルとを明瞭に観察することが困難な場合は、コア粒子の粒径とトナー製造時に用いたシェルを形成する単量体の量に基づいて、シェル層の厚みを算出することができる。
本発明で使用する着色樹脂粒子は、所定の特性を有するものを得ることができる方法であれば、その製造方法に特に制限はないが、重合法によって製造することが好ましい。そこで、以下、重合法によりトナーを構成する着色樹脂粒子を製造する方法について説明する。
重合法により着色樹脂粒子を製造するには、先ず、結着樹脂の原料である重合性単量体に、着色剤、帯電制御剤、及びその他の添加剤を溶解あるいは分散させて重合性単量体組成物を調製する。この重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に微細な液滴として分散させ、重合開始剤を用いて重合反応を行う。重合後、濾過、洗浄、脱水、及び乾燥することにより、着色樹脂粒子を回収する。
重合性単量体としては、例えば、モノビニル単量体、架橋性単量体、マクロモノマー等を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、結着樹脂成分となる。
モノビニル単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル等の(メタ)アクリル系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;等が挙げられる。モノビニル単量体は、単独で用いても、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらモノビニル単量体の中でも、芳香族ビニル単量体単独、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル系単量体との組み合わせなどが好適に用いられる。
モノビニル単量体と共に、架橋性単量体を用いると、ホットオフセットが有効に改善される。架橋性単量体は、2個以上のビニル基を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋性単量体の使用割合は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは0.1〜2重量部である。
モノビニル単量体と共に、マクロモノマーを用いると、トナーの保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するものであり、数平均分子量が通常1000〜30000のオリゴマーまたはポリマーである。
マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーの使用割合は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、より好ましくは0.05〜1重量部である。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4′−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類等が挙げられる。上記重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を用いてもよい。
重合開始剤の使用割合は、重合性単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜15重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加しておいてもよいが、好ましくない早期重合を抑制するために、重合性単量体組成物の液滴形成中または形成後の水系分散媒体中に添加してもよい。
水性分散媒体には、分散安定化剤を含有させる。分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の無機水酸化物;などの無機化合物が挙げられる。分散安定化剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることもできる。分散安定化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の無機水酸化物のコロイドを含有する分散安定化剤は、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、分散安定化剤の洗浄後の残存量が少なく、かつ、画像を鮮明に再現することができるトナーが得られ易いので好ましい。
分散安定化剤の使用割合は、重合性単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部である。分散安定化剤の使用量が上記範囲にあると、十分な重合安定性を得られ、重合凝集物の生成が抑制されるので好ましい。
重合に際して、分子量調整剤を使用することが好ましい。分子量調整剤としては、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類等が挙げられる。分子量調整剤は、重合開始前または重合途中に重合性単量体組成物に添加することができる。分子量調整剤の使用割合は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
コア・シェル型着色樹脂粒子を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、スプレイドライ法、界面反応法、in situ重合法、相分離法などの方法が挙げられる。より具体的には、粉砕法、重合法、会合法または転相乳化法により得られた着色樹脂粒子をコア粒子とし、該コア粒子にシェル層を被覆することにより、コア・シェル型着色樹脂粒子を得ることができる。この製造方法の中でも、in situ重合法や相分離法が製造効率の点から好ましい。
以下、in situ重合法によるコア・シェル構造を有する着色樹脂粒子の製造方法について説明する。コア粒子(着色樹脂粒子)を分散させた水系分散媒体中に、シェルを形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することにより、コア・シェル型構造を有する着色樹脂粒子を得ることができる。
シェルを形成する具体的な方法としては、コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用重合性単量体を添加して継続的に重合する方法;別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用重合性単量体を添加して重合する方法などを挙げることができる。シェル用重合性単量体は、反応系内に一括して添加しても、あるいはプランジャポンプなどのポンプを使用して、連続的もしくは断続的に添加してもよい。
シェル用重合性単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が80℃を超える重合体を形成する単量体を、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シェル用重合性単量体を添加する際に、水溶性の重合開始剤を添加すると、コア・シェル型構造を有する着色樹脂粒子が得られ易くなるので好ましい。シェル用重合性単量体の添加の際に水溶性重合開始剤を添加すると、シェル用重合性単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性重合開始剤が移動し、コア粒子表面に重合体層(シェル)を形成し易くなると考えられる。
水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド]等のアゾ系開始剤などを挙げることができる。水溶性重合開始剤の使用割合は、シェル用重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部である。
重合温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60〜95℃である。反応時間は、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。重合終了後には、常法に従って、濾過、洗浄、脱水、及び乾燥の操作を行うが、この操作は、数回繰り返すことが好ましい。
重合によって得られる着色樹脂粒子(着色重合体粒子)を含有する水系分散液は、分散安定化剤として無機水酸化物等の無機化合物を使用した場合は、酸またはアルカリを添加して、分散安定化剤を水に溶解して、濾過、洗浄により除去することが好ましい。分散安定化剤として、難水溶性無機水酸化物のコロイドを使用した場合には、酸を添加して、水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、蟻酸、酢酸などの有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
水系分散媒中から着色樹脂粒子を濾過・脱水する方法は、特に制限されない。例えば、遠心濾過法、真空濾過法、加圧濾過法などを挙げることができる。これらの中でも、遠心濾過法が好適である。
本発明で使用するトナーは、着色樹脂粒子と外添剤を含有する現像剤である。必要に応じて、その他の微粒子を添加してもよい。重合法などにより調製した着色樹脂粒子(コア・シェル型着色樹脂粒子を含む)は、各種現像剤の主成分として使用することができるが、一成分現像剤として使用することが好ましく、非磁性一成分現像剤として使用することがより好ましい。外添剤としては、流動化剤や研磨剤などとして作用する無機微粒子や有機樹脂微粒子が挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられる。有機樹脂微粒子としては、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル共重合体で形成されたコア−シェル型粒子などが挙げられる。
これらの中でも、無機酸化物の微粒子が好ましく、シリカ微粒子が特に好ましい。無機微粒子表面を疎水化処理することができ、疎水化処理されたシリカ粒子が特に好適である。外添剤は、2種以上を組み合わせて用いてもよく、外添剤を組み合わせて用いる場合には、平均粒子径の異なる無機微粒子同士または無機微粒子と有機樹脂微粒子とを組み合わせる方法が好適である。
シリカなどの無機微粒子は、疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理された無機微粒子は、一般にも市販されているが、その他、シランカップリング剤やシリコーンオイル等で疎水化処理して得ることもできる。疎水化処理の方法としては、上記微粒子を高速で撹拌しながら、処理剤であるシリコーンオイル等を滴下または噴霧する方法、処理剤を溶解して撹拌している有機溶媒中に微粒子を添加混合した後、熱処理する方法等が挙げられる。前者の場合、処理剤は有機溶媒等で希釈して用いてもよい。
疎水化の程度は、メタノール法で測定される疎水化度が20〜90%であることが好ましく、40〜80%であることがより好ましい。疎水化度がこの範囲にあると、高温高湿下で吸湿し難く、十分な研磨性を得ることができる。
外添剤の使用割合(単独または合計の使用割合)は、特に限定されないが、着色樹脂粒子100重量部に対して、通常0.1〜6重量部である。外添剤を着色樹脂粒子に付着させるには、通常、着色樹脂粒子と外添剤とをヘンシェルミキサーなどの混合機に入れて攪拌する。
外添剤としては、一次粒子の個数平均粒径5〜20nm、好ましくは7〜15nmのシリカ微粒子(A)と体積平均粒径0.1〜0.5μmの球形シリカ微粒子(B)とを組み合わせて使用することが好ましく、更に一次粒子の個数平均粒径が25〜80nm、好ましくは30〜60nmのシリカ微粒子(C)を組み合わせることがより好ましい。これらの微粒子を併用することにより、感光体表面へのトナーフィルミングの形成や画像のカスレを抑制することができる。
球形シリカ微粒子(B)は、後述する方法で測定する球形度が1〜1.5、好ましくは1〜1.3、更に好ましくは1〜1.2である。球形度を上記の範囲にすることで環境安定性を良好にすることができる。
球形シリカ微粒子(B)は、その粒径分布において、小粒径側から起算した体積粒径が10%に該当する粒径をDv10とし、同じく50%に該当する粒径をDv50とした場合、Dv50とDv10との比(Dv50/Dv10)が1.8以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。Dv50/Dv10が1.8より大きい球形シリカ微粒子を用いると、トナーのブロッキングや感光体へのトナーのフィルミングを効果的に抑制することができる。
球形シリカ微粒子(B)の嵩密度は、50〜250g/lであることが好ましく、80〜200g/lであることがより好ましい。嵩密度をこの範囲にすることにより、感光体へのトナーのフィルミングやカブリの発生、及びクリーニング性の低下を抑制することができる。
シリカ微粒子(A)の配合割合は、着色樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。シリカ微粒子(A)の配合割合を上記範囲とすることにより、クリーニング性の低下や、低温低湿下での印字汚れや定着不良の発生を効果的に抑制することができる。
球形シリカ微粒子(B)の配合割合は、着色樹脂粒子100重量部に対して、通常0.3〜3重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。球形シリカ微粒子(B)の配合割合を上記範囲にすることにより、クリーニング性の低下やカスレの発生を抑制することができる。
シリカ微粒子(C)の配合割合は、着色樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。シリカ微粒子(C)の配合割合を上記範囲にすることにより、クリーニング性の低下や、低温低湿下での印字汚れや定着不良の発生を効果的に抑制することができる。
着色樹脂粒子と外添剤とを含有するトナーは、pH7のイオン交換水により煮沸処理して得られる抽出液のpHが3〜8を示すものであることが好ましい。pHは、実施例に記載の方法により測定した値である。このpHは、好ましくは4〜8、特に好ましくは5〜7である。pHを上記範囲に制御することにより、各種環境下での印字濃度に優れたトナーを得ることができる。
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、いずれも重量基準である。本発明における特性及び物性の評価方法は、次のとおりである。
(1)着色樹脂粒子の体積粒径及び粒径分布:
着色樹脂粒子の体積平均粒径dv、並びに体積平均粒径dvと個数平均粒径dpとの比dv/dpで表わされる粒径分布は、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径100μm、媒体イソトン、サンプル濃度10%、測定粒子個数100000個の条件で行った。
(2)平均円形度:
容器中に、予めイオン交換水10mlを入れ、その中に分散剤としての界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸)0.02gを加え、さらに、着色樹脂粒子0.02gを加え、超音波分散機で60W、3分間分散処理を行った。測定時の着色樹脂粒子濃度を3000〜10000個/μLとなるように調整し、1μm以上の円相当径の着色樹脂粒子1000〜10000個についてシスメックス社製フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」を用いて測定した。測定値から平均円形度を求めた。
(3)球形シリカ微粒子の体積平均粒径及び粒径分布(Dv50/Dv10):
シリカ微粒子0.5gを100ml容量のビーカーに入れ、界面活性剤を数滴滴下し、イオン交換水50mlを加え、超音波ホモジナイザーUS−150Tを用いて5分間分散させた後、マイクロトラックUPA150(日機装社製)を用いて体積平均粒径及び粒径分布を測定した。
(4)シリカ微粒子の個数平均粒径:
シリカ微粒子の個数平均粒径は、各粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、その写真を画像処理解析装置ルーゼックスIID〔(株)ニレコ製〕により、フレーム面積に対する粒子の面積率:最大2%、トータル処理粒子数:100個の条件で円相当径を算出し、その平均値を求めた。
(5)球形度:
球形シリカ微粒子の絶対最大長を長径とした円の面積Scを粒子の実質投影面積Srで割った値の球形度Sc/Srは、各粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、その写真を画像処理解析装置ルーゼックスIID〔(株)ニレコ製〕により、フレーム面積に対する粒子の面積率=最大2%、トータル処理粒子数=100個の条件で測定し、計算した100個についての平均値を球形度とした。
(6)疎水化度:
球形シリカ微粒子の疎水化度は、メタノール法により求めた。シリカ微粒子0.2gを500mlのビーカーに入れ、純水50mlを加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら、液面下ヘメタノールを加えた。液面上に微粒子が認められなくなった点を終点とし、下記式により疎水化度を算出した。
疎水化度(%)=〔X/(50+X)〕×100
上記式において、Xは、メタノールの使用量(ml)である。
(7)嵩密度:
予め秤量してある100mlのメスシリンダーに、測定する球形シリカ微粒子に振動を加えないようにして徐々に添加した。100mlに達したときにメスシリンターごと重量を測定し、シリカ微粒子を加える前と後の重量の差を計算し、その値を10倍して球形シリカ微粒子(B)の嵩密度(g/l)とした。
(8)pH:
トナー6gを、陽イオン交換処理と陰イオン交換処理によってpHが7となったイオン交換水100g中に分散し、これを加熱して、煮沸させる。煮沸状態を10分間保持(10分間煮沸)後、引き続き、別途10分間煮沸しておいた陽イオン交換処理と陰イオン交換処理によってpHが7となったイオン交換水を追加して煮沸前の容量に戻し、室温(約25℃)に冷却した。このようにして得られた抽出液について、pH計を用いてpHを測定した。
(9)感光体上での帯電量:
市販の非磁性一成分カラープリンター(沖データ社製、機種名「マイクロライン 5300」)の感光ドラムを後述の感光ドラムに取り替えて改造したプリンターを用いた。
改造したプリンターの黒トナーカートリッジの位置に、製造例で調製したトナーを充填したカートリッジを装着した。温度23℃及び湿度50%の常温常湿(N/N)環境下で一昼夜放置後、ベタ印字を行い、次いで、2枚目のベタ印字を途中で停止させた後、感光体上に現像されたトナーを、吸引式帯電量測定装置(トレックジャパン社製、機種名「210HS−2A」)を用いて吸引し、帯電量の測定を行った。トナーの吸引量(g)と測定値(μC)に基づいて、トナーの単位重量当りの帯電量Q(μC/g)を算出した。帯電量Q は、絶対値|Q|で表わす 。
(10)感光体上のトナー量(現像量)M/A(mg/cm2):
前記(9)と同様にして、ベタ印字を行い、次に2枚目のベタ印字を途中で停止させた後、感光体上に現像されたトナーを、前記(9)で用いた吸引式帯電量測定装置を用いて吸引した。この測定装置のファラデーゲージに予め重量を正確に測定したフィルターを取り付け、吸引後に吸引した部分のフィルター面積A(cm2)を測定し、この測定値Aとファラデーゲージの重量増加分〔すなわち、吸引量M(mg)〕とから現像量M/A(mg/cm2)を算出した。
(11)印字濃度:
前記(9)で使用した改造プリンターを用い、黒トナーカートリッジの位置にマゼンタトナーを充填したカートリッジを装着して、温度10℃及び湿度20%のL/L環境下及び温度35℃及び湿度80%のH/H環境下で一昼夜放置後、5%印字濃度で印字を行い、500枚目と5000枚時にベタ印字を行い、マクベス式反射型画像濃度測定機を用いて、印字濃度を測定した。ただし、後述のクリーニングやカブリの評価で問題が発生したものについては、評価しなかった。
(12)クリーニング性:
前記(9)で用いた改造プリンターを用いて、温度10℃、湿度20%のL/L環境下及び温度23℃、湿度50%のN/N環境下で一昼夜放置後、それぞれ5%濃度で連続印字を行い、500枚目毎に、クリーニングブレードをすり抜けて、帯電ロールにトナーが付着しているかを目視にて評価した。評価は、10000枚まで行った。表中に10000≦とあるのは、10000枚連続で印字しても、帯電ロールにトナーが付着しなかったことを示す。
(13)耐久性:
前記(9)で使用した改造プリンターを用いて、温度23℃、湿度50%のN/N環境下及び温度35℃及び湿度80%のH/H環境下で一昼夜放置後、5%濃度で連続印字を行い、500枚印字毎に白ベタ印字を行い、現像後の感光体上にあるトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、スコッチメンディングテープ8 1 0−3−1 8)で剥ぎ取り、それを新しい印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の色調Bを、分光色差計(日本電色工業社製、機種名「SE2000」)で測定し、同様にして、粘着テープだけを貼り付けた新しい印字用紙の色調Aを測定し、それぞれの色調をL*a*b*空間の座標として表し、その2つの色調から色差ΔE*を算出して、カブリ値とし、この値が1%未満を維持できる枚数を10000枚まで調べた。表中に10000≦とあるのは、10000枚連続で印字しても、カブリが1%を超えなかったことを示す。
[製造例1]感光体1の製造例
直径30mmの無切削アルミニウム合金からなる円筒ドラム(無切削管)上に、アルミナ被覆した酸化チタン粒子とポリアミド酸(株式会社アイ・エス・ティ製、商品名「パイヤーML」)とを重量比1:1の割合でジメチルホルムアミドに溶解した塗布液を塗布し、140℃で30分間乾燥し、膜厚20.0μmの下引き層を形成した。次いで、結着樹脂としてポリビニルブチラールと電荷発生剤としてオキシチタニウムフタロシアニンを重量比1:1の割合でメチルエチルケトンに溶解した分散液を、浸漬塗工により、厚さ0.1μmとなるように塗布し、電荷発生層を形成した。
結着樹脂としてシロキサン骨格含有ポリカーボネート共重合体樹脂(粘度平均分子量40000、出光興産株式会社製)と、電荷移動剤としてブタジエン化合物と、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールとを、1.0/0.8/0.18の重量比でテトラヒドロフランに溶解して塗工液を調製した。浸漬塗工により、この塗工液を電荷発生層の上に塗布した後、100℃で1時間乾燥し、20μmの膜厚の電荷移動層を形成した。このようにして作製した感光体(感光ドラム)1のすべり摩擦角度は、38°であった。
[製造例2]感光体2の製造例
製造例1において、電荷移動層の結着樹脂として、パーフルオロ基を末端基として設けたポリカーボネート共重合体樹脂(粘度平均分子量30000、出光興産株式会社製)を用いた他は、製造例1と同様の方法で感光体2を作製した。この感光体2のすべり摩擦角度は、25°であった。
[製造例3]感光体3の製造例
製造例1において、電荷移動層の結着樹脂として、シロキサン骨格含有ポリカーボネート共重合体樹脂(粘度平均分子量50000、出光興産株式会社製)を用いた他は、製造例1と同様の方法で感光体3を作製した。この感光体3のすべり摩擦角度は、18°であった。
[製造例4]感光体4の製造例
製造例1において、電荷移動層の結着樹脂として、シロキサン骨格含有ポリカーボネート共重合体樹脂(粘度平均分子量25000、出光興産株式会社製)を用いた他は、製造例1と同様の方法で感光体4を作製した。この感光体4のすべり摩擦角度は、47°であった。
[製造例5]感光体5の製造例
製造例1において、電荷移動層の結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量20000、三菱ガス化学株式会社製)に、フッ素樹脂粉末としてポリテトラフルオロエチレン微粉末(平均粒径0.18μm)を分散させた樹脂組成物を用いた他は、製造例1と同様の方法で、電荷発生層及び電荷移動層を形成し、感光体5を作製した。この感光体5のすべり摩擦角度は、10°であった。
[製造例6]感光体6の製造例
製造例1において、電荷移動層の結着樹脂をビスフェノールAポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量25000、三菱ガス化学株式会社製)とした他は、製造例1と同様の方法で感光体6を作製した。この感光体6のすべり摩擦角度は、55°であった。
[製造例7]球形シリカ微粒子の製造例
シリカ粉末(平均粒子径2μm、最大粒子径60μm)のSiO2分1.0モルと、金属シリコン粉末(平均粒子径10μm、最大粒子径100μm)0.8モルからなる混合粉末100部と純水50部とを混合し、薄型容器内に入れ、2000℃の電気炉へバッチ連続供給した。混合原料の送入と同じ方向から水素ガスを導入し、水素ガス及び発生したガスを反対方向上部に設けた排気ブロワーで吸引し、さらに空気400Nm3/hrと接触させ、冷却しながらバグフィルターでシリカ微粒子を捕集した。このシリカ微粒子を風力分級機で分級した。得られたシリカ微粒子は、Dv50/Dv10=2.54であり、一次粒子の体積平均粒径が0.2μmであり、球形度が1.12であった。
このシリカ微粒子に、アルコールで希釈したヘキサメチルジシラザンを、シリカ微粒子に対してヘキサメチルジシラザンが1%となるように滴下し、強く撹拌しながら70℃、30分間加熱し、次いで、140℃で溶剤を除去し、さらに210℃で4時間、強く撹拌しながら加熱処理を行い、疎水化処理した球形シリカ微粒子1を得た。得られた球形シリカ微粒子1の疎水化度は70%であり、嵩密度は110g/lであった。
[製造例8]トナー1の製造例
スチレン1600部、アクリル酸ブチル200部、マゼンタ顔料としてPR31を56部及びPR150を44部添加し、次いで、アルミニウム系カップリング剤(アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート;味の素ファインテクノ社製、商品名「AL−M」)5部を室温下、メディア型湿式粉砕機(浅田鉄工社製、商品名「ピコグレンミル」)を用いて分散させ、均一な混合液を得た。
次に、マゼンタ顔料が微細に分散した重合性単量体混合液95.25部に、スチレン10部、負帯電制御剤としてスルホン酸官能基含有単量体単位量が2%のスチレン−アクリル樹脂(藤倉化成株式会社製、商品名「FCA748N」)3部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業株式会社製、商品名「AA6」0.25部、及びジペンタエリスリトールヘキサミリステート10部を添加し、撹拌溶解して、コア用重合性単量体組成物を調製した。
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム13.4部を溶解した塩化マグネシウム水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム8.2部を溶解した水酸化ナトリウム水溶液を撹拌しつつ徐々に添加し、水酸化マグネシウムコロイド分散液を調製した。
一方、メチルメタクリレート2部及び水65部を混合して、シェル用重合性単量体の水分散液を得た。
上述のようにして得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記コア用重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで撹拌を行った。次いで、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.75部、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼン0.25部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)5部をさらに投入し、インライン型乳化分散機(株式会社荏原製作所製、商品名「マイルダー」)を用いて、15000rpmの回転数で10分間高剪断撹拌して、コア用重合性単量体組成物の液滴を形成した。
コア用重合性単量体組成物の液滴が分散した水酸化マグネシウムコロイド分散液に、四ホウ酸ナトリウム十水和物を1部添加し、撹拌翼を装着した反応器に入れ、昇温を開始して、85℃で温度が一定になるように制御した。重合転化率がほぼ100%に達した後、上記シェル用重合性単量体の水分散液に、水溶性開始剤[和光純薬工業(株)製、商品名「VA−086」;2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕]0.2部を溶解し、それを反応器に添加した。さらに昇温して、90℃で温度が一定となるように制御して4時間継続した後、反応器を冷却して反応を停止し、コア・シェル型の着色樹脂粒子を含有する水分散液を得た。
上述のようにして得られた着色樹脂粒子の水分散液を撹拌しながら硫酸を加えて、水分散液のpHを4に調整して酸洗浄(25℃、10分間)を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化して水洗浄を行った。次いで、再度、脱水及び水洗浄を数回繰り返して行い、固形分を濾過分離した後、乾燥機にて40℃で2昼夜乾燥を行い、体積平均粒径dvが6.0μm、粒径分布dv/dpが1.21、平均円形度が0.983、3μm以下の個数%が13%の着色樹脂粒子を得た。
得られた着色樹脂粒子に分級処理を施した後、着色樹脂粒子100部に、外添剤として、製造例7で得られた体積平均粒径0.2μmの球形シリカ微粒子1(球形度=1.12、疎水化度=70%)1部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて5分間、回転数1200rpm(周速=34.5m/s)で攪拌し、 さらに、攪拌機のジャケットを水冷しながら一次粒子の個数平均粒径12nmのシリカ(日本アエロジル社製、商品名「R−104」、疎水化度=45%)0.5部、一次粒子の個数平均粒径50nmのシリカ微粒子(クラリアント社製、商品名「HDK−H05TX」、疎水化度=80%)1部を添加し、回転数1400rpmで10分間攪拌し、静電荷像現像用トナー(マゼンタトナー)Aを調製した。最終的に、体積平均粒径dvが6.1μm、粒径分布dv/dpが1.12、平均円形度が0.985、3μm以下の粒径の粒子が3個数%の着色樹脂粒子を含有するトナー1を得た。このトナー1について、熱水処理して抽出した液のpHは、6.8であった。
[製造例9]トナー2の製造例
製造例8において、スルホン酸官能基を7%含有する負帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名「FCA626N」)7部を使用して着色樹脂粒子を製造し、得られた着色樹脂粒子を分級しないで、着色樹脂粒子100部に対して、一次粒子の体積平均粒径が12nmのシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「RX200」)0.5部、一次粒子の体積平均粒径が40nmのシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「RX50」)2.0部をそれぞれ混合し、ヘンシェルミキサーで10分間、回転数1400rpmで混合し、トナー2を調製した。最終的に、体積平均粒径dvが6.2μm、粒径分布dv/dpが1.23、平均円形度が0.983、3μm以下の粒径の粒子が14個数%の着色樹脂粒子を含有するトナー2を得た。このトナー2について、熱水処理により抽出した液のpHは、6.7であった。
[製造例10]トナー3の製造例
製造例8において、負帯電制御樹脂量を0.5部に変更した以外は、製造例8と同様にして、体積平均粒径dvが6.1μm、粒径分布dv/dpが1.22、平均円形度が0.982、3μm以下の粒子の個数%が15%の着色樹脂粒子を得た。得られた着色樹脂粒子に分級処理を施した後、製造例8と同様に外添処理を行い、トナー3を調製した。最終的に、体積平均粒径dvが6.2μm、粒径分布dv/dpが1.14、平均円形度が0.984、3μm以下の粒径の粒子が5個数%の着色樹脂粒子を含有するトナー3を得た。このトナー3について、熱水処理により抽出した液のpHは、6.9であった。
[実施例1]
表1に示すように、感光体1とトナー1を用いて、トナー特性及び画像等の評価を前述のようにして行った。その結果を表1に示す。
[実施例2〜4及び比較例1〜4]
表1に示すように、感光体1〜6とトナー1〜3とを組み合わせて、トナー特性及び画像等の評価を前述のようにして行った。その結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、本発明の画像形成方法(実施例1〜4)によれば、低温低湿(L/L)及び高温高湿(H/H)の環境下で印字濃度に優れた画像を形成することができ、L/L環境下及び常温常湿(N/N)環境下でのクリーニング性を顕著に改善し、かつ、N/N環境下及びH/H環境下での耐久性を改善することができる。
これに対して、すべり摩擦角度が本発明で規定する範囲外の感光体を用いると(比較例1〜2)、クリーニング性が悪く、カブリの抑制も不満足である。すべり摩擦角度が本発明で規定する範囲内の感光体を用いた場合であっても、トナーの感光体表面での帯電量の絶対値が本発明の範囲外であると(比較例3〜4)、クリーニング性に劣り、耐久性が悪くなるか(比較例3)、クリーニング性に優れるものの、印字濃度が低く、耐久性が悪くなる(比較例4)。