JP2005344135A - ピストンリング用線材及びその製造方法並びにピストンリング - Google Patents

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Abstract

【課題】 十分な強度および硬度を有するとともに、イオンプレーティング処理時の耐熱へたり性を大幅に改善したピストンリング用線材を提供すること。
【解決手段】 Cが0.10重量%以下、Siが0.50重量%以下、Mnが5.00〜7.00重量%、Pが0.045重量%以下、Sが0.010重量%以下、Niが9.00〜11.00重量%、Crが21.00〜25.00重量%、Nが0.40〜0.55重量%、Moが1.75〜2.25重量%、Cuが0.75重量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、内燃機関や圧縮機等に使用されるピストンリング用線材及びその製造方法並びにピストンリングに関し、特に耐摩耗性等の摺動特性向上のためにイオンプレーティング処理が施される場合に適した、耐熱へたり性に優れたピストンリング用線材及びピストンリングに関するものである。
内燃機関等に使用されるピストンリング用材料は、以前は鋳鉄が主流であったが、内燃機関の高出力化、高回転化のために鋳鉄に比べ高強度が得られるSi−Cr鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼などが用いられるようになった。しかし、それらのピストンリング用材料は、耐摩耗性や耐焼付性などが十分ではないため、外周面に表面処理を施して用いられている。通常、Si−Cr鋼には硬質Crメッキ、マルテンサイト系ステンレス鋼には窒化処理が施されており、さらに摺動特性の要求される内燃機関には、外周面にイオンプレーティングによる硬質セラミックコーティング(窒化クロム等)を施したピストンリングが用いられるようになった。
イオンプレーティング処理中においては、素材が200〜600℃に加熱される。そして、高温でコーティングするほど密着性や生産性がよいため、できるだけ高温でコーティングするのが好ましい。ところが、高温強度や焼き戻し軟化抵抗の低い鋼材はイオンプレーティング処理により軟化が生じて熱へたりを起こすため、所定の張力を有するピストンリングが得られないという問題がある。
そこで、イオンプレーティング処理をした際に問題となる熱へたりを改善するためのピストンリングが特許文献1に提案されている。特許文献1は、ピストンリングの組成として、耐熱性向上に効果があるMoやCrを適量添加し、炭化物生成によってMoとCrの耐熱性向上効果が小さくなることを防ぐため、Cの添加量を従来のピストンリング用マルテンサイト系ステンレス鋼に比べて低減し、0.35〜0.45%としたことを特徴としている。
また、特許文献2には、上記熱へたり性を改善する鋼として、C−Si−Mn−Cr−Mo−V系の組成を有するピストンリング用鋼が提案されている。
特開平11−294584号公報 特開2002−348639号公報
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、熱へたり性を改善するために、耐熱性向上元素であるMoとCrの炭化物の生成を抑えるために、C量を他のピストンリング用マルテンサイト系ステンレス鋼に比べて低減している。そのため当然の結果として、鋼中の炭化物が少なく、窒化処理後の耐摩耗性が十分とは言えないという問題がある。
また、一般に、イオンプレーティング処理すると、処理中に温度が最高600℃程度まで上昇し、素材の軟化が進行するので、それが熱へたりとなって現れる。そこで、熱へたり性の評価は、イオンプレーティング処理時に上昇する最高温度に匹敵する600℃の温度に1時間保持することによって素材の硬さがどの程度変化するかを測定することにより行われている。加熱に伴う硬度の変化量が少ないほど、耐熱へたり性に優れていると言える。通常は加熱により硬度は低下することが多いので、600℃に加熱した後の硬度が大きいほど耐熱へたり性は優れていると判断することができる。ところが、特許文献2に開示された鋼で製造されたピストンリングは、600℃×1時間熱処理後の硬さ(HV)が401〜439程度であって、十分な硬さを有しているとは言えず、耐熱へたり性に関して満足できるレベルではない。というのは、内燃機関用ピストンリングが充分に実用に耐えるには、ビッカース硬さで約500以上であることが好ましいので、特許文献2に開示された鋼からなるピストンリングの硬さレベルは充分に実用的とは言えない。
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、十分な強度および硬度を有するとともに、イオンプレーティング処理時の耐熱へたり性を大幅に改善したピストンリング用線材を提供することにある。また、本発明の目的は、そのようなピストンリング用線材の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、そのような線材を用いたピストンリング及びそのような方法を用いて製造したピストンリングを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のピストンリング用線材は、Cが0.10重量%以下、Siが0.50重量%以下、Mnが5.00〜7.00重量%、Pが0.045重量%以下、Sが0.010重量%以下、Niが9.00〜11.00重量%、Crが21.00〜25.00重量%、Nが0.40〜0.55重量%、Moが1.75〜2.25重量%、Cuが0.75重量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴としている。
本発明では通常より多量の窒素が添加されているので、窒化物(例えば、Crの窒化物など)による析出硬化や固溶窒素による歪み時効などにより強度が向上する。
すなわち、この組成の材料を固溶化熱処理すると、Feマトリックス中の溶質元素が過飽和に固溶した状態になる。次ぎに、冷間加工後に適当な温度で析出硬化熱処理を行うと、析出物が生成する。析出物はマトリックス中に微細に分散するほど、強度は向上する。析出物を微細に分散させる方法は析出サイトを増やすことであるが、冷間加工により格子欠陥を増やすと、この欠陥は析出サイトになりうる。本発明では通常より多量の窒素が添加されているので、冷間加工を行った後、析出硬化熱処理を施すことにより、結晶粒界と粒内に微細な窒化物(例えば、Nと結合力の強いCrの窒化物など)が多数析出するものと考えられる。この窒化物による析出硬化と固溶窒素による歪み時効などにより、大幅に強度が向上する。その結果、耐熱へたり性が格段に向上するのである。
本発明のピストンリング用線材及びピストンリングは上記のようにして大幅に強度が向上するので、イオンプレーティング処理時に高温に曝されても、硬度が低下することはなく、耐熱へたり性は大幅に改善される。
本発明のピストンリング用線材を構成する各元素の数値限定理由は下記のとおりである。
(1) Cは、0.10重量%以下とする。
Cは、侵入型の固溶元素であり、強度の向上に寄与するとともに、後述のCrやMoと結合して炭化物を生成し、耐熱性を向上させる作用がある。このような効果を得ようとする場合、0.001重量%以上の添加が好ましい。さらに好ましくは、0.005重量%以上とする。他方、多量に添加するとNの固溶量を低下させるばかりでなく、粗大な一次炭化物を生成し、固溶化熱処理後の冷間加工性を低下させるとともに、冷間加工および析出硬化熱処理後の疲労強度を低下させる。従って、その上限値は0.10重量%とし、好ましくは0.05重量%以下とする。
(2) Siは、0.50重量%以下とする。
Siは、鋼の溶製時において脱酸剤として添加される元素である。このような効果を得ようとする場合、0.01重量%以上の添加が好ましい。さらに好ましくは、0.05重量%以上とする。他方、多量に添加すると冷間加工性を低下させるばかりでなく、靱延性を著しく低下させてしまうとともに、熱間加工性に有害となる。従って、その上限値は0.50重量%とし、好ましくは、0.40重量%以下とする。
(3) Mnは、5.00〜7.00重量%とする。
Mnは、オーステナイト生成元素であり、且つ窒素の固溶量を著しく増加させる元素であるため、強度向上に寄与する重要な元素である。さらに、鋼の溶製時の脱酸および脱硫元素としても有効である。このような効果を得ようとする場合、5.00重量%以上の添加が必要である。好ましくは5.50重量%以上とする。他方、多量に添加すると熱間加工性を低下させるばかりでなく、耐食性を劣化させる。従って、その上限値は7.00重量%とし、好ましくは、6.50重量%以下とする。
(4) Pは、0.045重量%以下とする。
Pは、耐衝撃性を低下させるので低いほど好ましく、その上限値は0.045重量%とする。なお、必要以上の低減はコストの上昇を招く。
(5) Sは、0.010重量%以下とする。
Sは、耐食性や冷間加工性や熱間加工性を低下させるので、低いほど好ましく、その上限値は0.010重量%とする。なお、必要以上の低減はコストの上昇を招く。
(6) Niは、9.00〜11.00重量%とする。
Niは、オーステナイト相の安定化に寄与するとともに、高温強度の向上に寄与する。このような効果を得るためには、9.00重量%以上の添加が必要である。好ましくは、9.20重量%以上とする。他方、多量に添加するとコストの上昇を招くばかりでなく、固溶窒素量を低下させ、これと同時にCr窒化物の固溶温度を上昇させるために固溶化処理時の未固溶Cr窒化物を増大させるので、高温強度や冷間加工性や靱性を著しく低下させる。従って、その上限値は11.00重量%とし、好ましくは、10.80重量%以下とする。
(7) Crは、21.00〜25.00重量%とする。
Crは、N固溶量を著しく増大させ、強度の向上に寄与する。また、耐食性や耐酸化性の向上に寄与するとともに、冷間加工後の析出硬化熱処理によりCおよびNと結合して高温強度の向上や疲労強度の向上に大きく寄与する。このような効果を得るには、21.00重量%以上の添加が必要である。好ましくは、22.00重量%以上する。他方、多量に添加すると、フェライト生成元素であるため、オーステナイト相が不安定となるばかりでなく、靱延性の低下を招くσ相の析出を促進させる。従って、その上限値は25.00重量%とし、好ましくは、24.00重量%以下とする。
(8) Nは、0.40〜0.55重量%とする。
Nは、侵入型の固溶元素であり、強度の向上やオーステナイト相の安定化や耐食性の向上や、さらには冷間加工後の析出硬化熱処理による高温強度の向上に有効な重要な元素である。このような効果を得るためには、0.40重量%以上の添加が必要である。好ましくは0.42重量%以上とする。他方、多量に添加すると窒素ブローの生成を誘発する。また、固溶化処理時に未固溶Cr窒化物の鋼中への残存により、冷間加工性や靭延性を著しく低下させる。従って、その上限値は0.55重量%とする。
(9) Moは、1.75〜2.25重量%とする。
Moは、窒素の固溶量を増加させるとともに耐食性の向上に寄与する元素であり、さらに固溶強化元素として、高温強度を向上させる。また、Crと同様にCと結合して炭化物を形成し、耐熱性を向上させる。このような効果を得るためには、1.75重量%以上の添加が必要である。好ましくは、1.85重量%以上とする。他方、多量に添加すると粗大な一次炭化物の生成により、冷間加工性や靭延性を著しく低下させる。また、耐酸化性を劣化させ、熱間加工時に有害となる。従って、その上限値は2.25重量%とし、好ましくは、2.15重量%以下とする。
(10) Cuは、0.75重量%以下とする。
Cuは、オーステナイト生成元素であり、オーステナイト相の安定化に寄与するとともに耐食性の向上に寄与する。また、冷間加工時の靭性の向上にも寄与する。このような効果を得るためには、0.01重量%以上の添加が好ましい。さらに好ましくは0.02重量%以上とする。他方、多量に添加すると固溶窒素量を低下させるばかりでなく、熱間加工性を劣化させる。また、Cr窒化物の固溶温度を上昇させるため、固溶化処理時に未固溶Cr窒化物が鋼中に残存し、高温強度や冷間加工性や靱延性を著しく低下させる。従って、その上限値は0.75重量とし、好ましくは、0.65重量%以下とする。
その他、Alは脱酸元素として有効であるが、Nの最大固溶を特徴としているため、過添加はAlNの生成により高温強度と靱延性を著しく低下させるので、0.03重量%以下とするのが好ましい。
また、固溶強化元素として、Wを1.0重量%以下、Coを1.0重量%以下含有することもできる。
また、CやNと結合して高温強度の向上あるいは結晶粒微細化のため、TiやNbやVを0.50重量%以下含有することもできる。
また、高温強度の向上あるいは粒界強度の向上のため、Bを0.010重量%以下、Zrを0.10重量%以下含有することもできる。
さらに、熱間加工性を向上させるため、MgやCaを0.010重量%以下含有することもできる。
本発明では通常より多量の窒素が添加されているので、以下に説明するように、窒化物(Crの窒化物など)による析出硬化や固溶窒素による歪み時効などにより強度が向上する。
すなわち、上記組成の材料を固溶化熱処理すると、Feマトリックス中の溶質元素が過飽和に固溶した状態になる。この固溶化熱処理温度は溶解度曲線以上の温度で完全に固溶させる温度であればよく、特に限定されないが、1000〜1200℃の温度で所定時間(約30分程度)保持し、次いで、水冷することができる。
次ぎに、冷間加工後に適当な温度で析出硬化熱処理を行うと、析出物が生成する。析出物はマトリックス中に微細に分散するほど、強度は向上する。析出物を微細に分散させる方法は析出サイトを増やすことであるが、冷間加工により格子欠陥を増やすと、この欠陥は析出サイトになりうる。本発明では通常より多量の窒素が添加されているので、冷間加工を行った後、析出硬化熱処理を施すことにより、結晶粒界と粒内に微細な窒化物(例えば、Nと結合力の強いCrの窒化物など)が多数析出するものと考えられる。この窒化物による析出硬化と固溶窒素による歪み時効などにより、強度が大幅に向上するので、耐熱へたり性が格段に向上する。析出硬化熱処理としては、500〜675℃で10〜30分間保持する熱処理プロセスが好ましい。500℃未満および/または10分未満の熱処理では析出硬化不足であり、675℃超および/または30分を超える熱処理を行うと強度が低下するので好ましくない。
以下に本発明の実施例を製造工程順に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更と修正が可能である。
(1)溶解と固溶化熱処理
以下の表1に示すような組成(重量%)の材料を溶解し、熱間鍛造後、熱間圧延を行い、線径5.2mmに圧延した。
Figure 2005344135
次ぎに、上記材料を1050℃で10分保持後(水素ガス雰囲気)水冷し、次いで、線径2.0mmの線材に伸線した。
(2)矩形断面の圧延
上記線材を、幅が2.3mmで高さが1.0mmの矩形断面に圧延した(断面減少率73%)。
(3)熱処理条件と機械的特性値
上記の矩形断面圧延材を以下の各熱処理に供した。
(a) 矩形断面圧延材を550〜800℃の範囲の温度に昇温して、各温度で10分間保持し、その後室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。
このときの熱処理温度と引張強さの関係を図1に示し、熱処理温度と表層硬度(HV10)の関係を図2に示し、熱処理温度と断面硬度(HV0.5)の関係を図3に示す。
また、図1〜図3に示した各点の実際の引張強さと表層硬度と断面硬度の数値を表2に示す。なお、表層硬度とは、矩形断面材料の長手方向の5箇所において、表面(図4の符号×参照、隣接する×印の長手方向の間隔は2cm)での硬度を測定した平均値をいい、断面硬度とは、矩形断面材料の長手方向の5箇所において、表面および中心部(5箇所、図5の符号×参照)での硬度を測定した平均値をいう。
Figure 2005344135
図1〜図3および表2に明らかなとおり、500〜675℃で10分間保持する熱処理を行うことにより、ビッカース硬さ(HV0.5およびHV10)として500HV以上、引張強さとして1800MPa以上の超高硬度且つ超高強度の材料が得られることが分かる。
(b) 矩形断面圧延材を次に説明する各種温度に昇温保持し、その後室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。
熱処理A=550℃に昇温して10分間保持後に675℃に昇温して10分間保持
熱処理B=550℃に昇温して5分間保持後に675℃に昇温して5分間保持
熱処理C=650℃に昇温して20分間保持
熱処理D=675℃に昇温して10分間保持後に550℃に降温して10分間保持
熱処理E=675℃に昇温して5分間保持後に550℃に降温して5分間保持
熱処理F=550℃に昇温して10分間保持後に800℃に昇温して5分間保持
熱処理G=550℃に昇温して10分間保持後に800℃に昇温して10分間保持
以上の各熱処理後の引張強さと表層硬度と断面硬度の数値を表3に示す。
Figure 2005344135
表3に明らかなとおり、熱処理A、B、C、DまたはEを行うことにより、ビッカース硬さとして500HV以上、引張強さとして1800MPa以上の超高硬度且つ超高強度の材料が得られることが分かる。
(c) 600℃×1時間加熱前後の硬度変化
上記矩形断面圧延材を表5に示すような条件で熱処理した後に外径70mmとなるようにコイリングし、コイリング後、図6に示すようなピストンリング1の形状に切断し、次いで、600℃に昇温して1時間保持後に室温まで冷却したときの(大気中雰囲気)、600℃×1時間熱処理前後の断面硬度変化を表5に示す。
なお、比較のために、表4に示す組成(重量%)の材料についても、同上工程で矩形断面圧延材を得、表5に示すような条件で熱処理した後に外径70mmとなるようにコイリングし、コイリング後、図6に示すようなピストンリング1の形状に切断し、次いで、600℃に昇温して1時間保持後に室温まで冷却したときの(大気中雰囲気)、600℃×1時間熱処理前後の断面硬度変化も表5に示す。
Figure 2005344135
Figure 2005344135
表5に明らかなように、本発明のピストンリングは、600℃に昇温して1時間保持しても、加熱前に比べてほとんど硬度が変化せず、600℃の加熱による硬度変化量が無視しうる程度に小さいことが分かる。また、600℃×1時間熱処理後の硬度の最低値が、ビッカース硬さHV(0.5) として495HVであって、極めて高い硬度を備えていることが分かる。なお、イオンプレーティング処理中に素材の温度は最高600℃程度まで上昇することがあるので、熱へたり性の簡易的な評価は、600℃の温度に1時間保持することによって素材の硬さがどの程度変化するかを測定することにより行われているが、実際のイオンプレーティング処理中の加熱条件は、550℃で4時間という、さらに過酷な条件で行われることが多い。そこで、表5の実施例1、2、3において、600℃×1時間の熱処理の後にさらに550℃×4時間の熱処理を行うと、実施例1、実施例2、実施例3のそれぞれの断面硬度(HV0.5)は514HV、497HV、496HVであって、550℃×4時間の熱処理を行っても硬度変化量は無視しうる程度であることが分かった。
しかし、Cを主たる強度向上寄与元素とする比較例1〜3のピストンリングは、600℃×1時間の熱処理により大幅に硬度が低下しており、600℃に加熱する前の硬度も十分に高いとは言えない。
熱処理温度と引張強さの関係を示す図である。 熱処理温度と表層硬度の関係を示す図である。 熱処理温度と断面硬度の関係を示す図である。 表層硬度の測定位置を説明する図である。 断面硬度の測定位置を説明する図である。 ピストンリングの斜視図である。
符号の説明
1 ピストンリング

Claims (6)

  1. Cが0.10重量%以下、Siが0.50重量%以下、Mnが5.00〜7.00重量%、Pが0.045重量%以下、Sが0.010重量%以下、Niが9.00〜11.00重量%、Crが21.00〜25.00重量%、Nが0.40〜0.55重量%、Moが1.75〜2.25重量%、Cuが0.75重量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とするピストンリング用線材。
  2. Cが0.10重量%以下、Siが0.50重量%以下、Mnが5.00〜7.00重量%、Pが0.045重量%以下、Sが0.010重量%以下、Niが9.00〜11.00重量%、Crが21.00〜25.00重量%、Nが0.40〜0.55重量%、Moが1.75〜2.25重量%、Cuが0.75重量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の材料を1000〜1200℃で固溶化熱処理し、次いで、冷間加工を行った後、500〜675℃で10〜30分間析出硬化熱処理を施すことによって得たピストンリング用線材。
  3. 請求項1または2記載のいずれかの線材を用いてなるピストンリング。
  4. Cが0.10重量%以下、Siが0.50重量%以下、Mnが5.00〜7.00重量%、Pが0.045重量%以下、Sが0.010重量%以下、Niが9.00〜11.00重量%、Crが21.00〜25.00重量%、Nが0.40〜0.55重量%、Moが1.75〜2.25重量%、Cuが0.75重量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の材料を固溶化熱処理し、次いで、冷間加工を行った後、析出硬化熱処理を施すことを特徴とするピストンリング用線材の製造方法。
  5. 固溶化熱処理温度が1000〜1200℃で、析出硬化熱処理が500〜675℃の温度で10〜30分間熱処理するプロセスであることを特徴とする請求項4記載のピストンリング用線材の製造方法。
  6. 請求項4または5記載のいずれかの方法を用いて製造してなるピストンリング。
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