JP4307328B2 - ピストンリング用線材及びピストンリング - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関や圧縮機等に使用されるピストンリング用線材及びピストンリングに関する。
本発明はピストンリング用線材およびピストンリングに関するものであり、本発明の理解を深めるために現在のピストンリングの製造工程について説明する。
所定の組成の材料(例えば、高炭素鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼組成)を溶解し、造塊後、圧延を行い、所定の温度で熱処理を施した後、冷間伸線により所定の線径の線材を得る。次ぎに、その線材は矩形断面形状に圧延された後、所定の条件で焼き入れと焼き戻しを行って線材の真直性と硬度を確保する。そして、この矩形断面の線材は、ピストンリングの外径に合致するようにコイリングされるが、コイリングに伴って歪みが生じるので、歪み取りのための熱処理が行われる。
従来、内燃機関や圧縮機等に使用される、このピストンリング用材料としては、高炭素鋼に硬質クロムメッキを外周面に施したものが広く使用されていたが、近年、耐摩耗性の優れた素材として、マルテンサイト系ステンレス鋼母材にガス窒化処理を行ったものが実用に供されている。ガス窒化処理ピストンリングは、母材の材質を選択することにより、ビッカース硬さ1000HV以上の硬さを持った窒素拡散層をリングの全周に厚く形成できるので耐摩耗性に優れ、且つ耐久性に優れたピストンリングを提供することができる。
さらに、近年、ピストンリングの寿命を延ばすことを目的として、上記窒化処理を施したピストンリングの外周面にさらに物理蒸着処理(PVD)、特にイオンプレーティング法により窒化クロム、窒化チタン等の硬質セラミックコーティングが施されることにより、耐摩耗性と耐久性が一層優れたピストンリングが提供されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特開平5−172248号公報 特開2002−61746号公報
ところで、上記したピストンリングの製造工程において、高炭素鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼のような素材は、コイリング後の歪み取りのための熱処理によって内部に蓄積された残留応力が開放されるために、歪み取り熱処理後のリング径は小さくなる方向に変形しやすい。そのため、コイリング後の歪み取り熱処理に伴うリング径の変化を考慮してコイリング時の(矩形断面形状の材料が巻き取られる)リングの曲率設計をしなければならないという煩わしい点があった。
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、コイリング後に歪み取りのための熱処理をしても、リング径の寸法変化が起こりにくいピストンリング用線材を提供することにある。また、本発明の目的は、そのような線材を用いたピストンリングを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のピストンリング用線材は、Cが0.09重量%以下、Siが1.00重量%以下、Mnが1.00重量%以下、Pが0.040重量%以下、Sが0.030重量%以下、Niが6.50〜8.50重量%、Crが16.00〜18.00重量%、Alが0.75〜1.50重量%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する析出硬化型のセミオーステナイト系組成を採用したことを特徴としている。
すなわち、この組成の材料を固溶化熱処理してMS 点を常温付近にすることにより準安 定オーステナイトとして、冷間加工を行うことによって応力誘起マルテンサイト変態を生成することができる。
次ぎに、この材料を冷間加工後に析出硬化熱処理を施すことによって硬化させることができる。MS 点が常温付近になるとマルテンサイト変態が起こりにくいことがあるが、冷 間加工によって応力誘起マルテンサイトが増加する。一方、オーステナイト相は加工硬化性の大きな金属組織であり、冷間加工によってオーステナイト相の引張強さが著しく増大する。また、本発明は、冷間加工後に析出硬化熱処理を行うので、化合物(NiAl)を析出させることができる。
以上のように、本発明のピストンリング用線材は、オーステナイト相とマルテンサイト相を有する二相組織から形成され、それぞれの金属組織が熱処理時に互いに異なる変形態様を呈するので、次ぎに説明するように、コイリング後に歪み取りのための熱処理をしてもリング径の寸法変化が起こりにくくなることが期待できる。
すなわち、オーステナイト相は(冷間で行われる)コイリング後に歪み取りのための熱処理を行うと、コイリングと反対方向に変化しようとする。すなわち、オーステナイト相はコイル径が拡大する方向に変化しようとする。
一方、マルテンサイト相は(冷間で行われる)コイリング後に歪み取りのための熱処理を行うと、コイリングと同じ方向に変化しようとする。すなわち、マルテンサイト相はコイル径が縮小する方向に変化しようとする。
本発明のピストンリング用線材は熱処理時の変形態様の異なるオーステナイト相とマルテンサイト相の二相組織から形成され、コイリング後に歪み取りのための熱処理を行うと、拡径方向に変化しようとするオーステナイト相と縮径方向に変化しようとするマルテンサイト相の巧みなバランスにより、リング径の寸法変化が起こりにくくなるのである。
本発明は上記のように構成されているので、次のような効果を奏する。
(1)請求項1〜3記載の発明によれば、コイリング後に歪み取りのための熱処理をしてもリング径の寸法変化が起こりにくいピストンリング用線材を提供することができる。
特に、請求項4記載の発明によれば、ビッカース硬さが500HV以上である超高硬度のピストンリング用線材を提供することができる。さらに、従来の素材(SUS440Cおよび同等品)を使用した場合に比べて、硬度のバラツキが小さくなる。
(2)さらに、請求項5記載の発明によれば、コイリング後の歪み取り熱処理に伴うリング径の変化を考慮した複雑なリング曲率の設計作業を省略することができる。
本発明のピストンリング用線材の組成の各元素の限定理由は下記のとおりである。
(1) Cは、0.09重量%以下とする。
Cは、侵入型の固溶元素であり、強度の向上に寄与するとともに、オーステナイト相を著しく安定させる元素であることから、Ms点を制御する重要な元素である。このような効果を得ようとする場合、0.01重量%以上の添加が好ましい。他方、多量に添加すると、粗大な一次炭化物が生成して冷間加工性を低下させるばかりでなく、Ms点の過度な低下を招き、加工誘起マルテンサイト相の生成が困難となる。また、後述のCrと結合して炭化物を生成することにより耐食性を劣化させる。従って、その上限値は0.09重量%とし、好ましくは0.08重量%以下とする。
(2) Siは、1.00重量%以下とする。
Siは、鋼の溶製時において脱酸剤として添加される元素である。このような効果を得ようとする場合、0.05重量%以上の添加が好ましい。他方、多量に添加すると冷間加工性を低下させるばかりでなく、靱延性を著しく低下させてしまうとともに、熱間加工性に有害となる。また、フェライト相を安定化させる元素であるので、Ms点を制御する観点からも、その上限値は1.00重量%とする。好ましくは、0.70重量%以下とし、さらに好ましくは、0.50重量%以下とする。
(3) Mnは、1.00重量%以下とする。
Mnは、鋼の溶製時の脱酸および鋼中のSの固定のために添加される元素である。このような効果を得ようとする場合、0.05重量%以上の添加が好ましい。他方、多量に添加すると熱間加工性を低下させるばかりでなく、耐食性を劣化させる。また、オーステナイト相を安定化させる元素であることから、Ms点の過度な低下を招き、加工誘起マルテンサイト相の生成が困難となる。従って、その上限値は1.00重量%とする。
(4) Pは、0.040重量%以下とする。
Pは、耐衝撃性を低下させるので低いほど好ましく、その上限値は0.040重量%とする。なお、必要以上の低減はコストの上昇を招く。
(5) Sは、0.030重量%以下とする。
Sは、耐食性や冷間加工性や熱間加工性を低下させるので、低いほど好ましく、その上限値は0.030重量%とし、好ましくは、0.020重量%以下とする。なお、必要以上の低減はコストの上昇を招く。
(6) Niは、6.50〜8.50重量%とする。
Niは、強力なオーステナイト相の生成元素であることから、Ms点を制御する重要な元素であるばかりでなく、高温強度の向上に寄与するとともに、析出硬化熱処理の後に後述するAlと結合して金属間化合物を生成し、硬さと耐摩耗性を向上させる。このような効果を得るためには、6.50重量%以上の添加が必要である。好ましくは.7.00重量%以上とする。他方、多量に添加するとMs点の過度な低下を招き、加工誘起マルテンサイト相の生成が困難となるばかりか、コストの上昇を招く。従って、その上限値は8.50重量%とする。
(7) Crは、16.00〜18.00重量%とする。
Crは、耐食性と耐酸化性の向上に寄与するとともに、Ms点を制御する重要な元素である。このような効果を得るためには、16.00重量%以上の添加が必要である。好ましくは、16.30重量%以上する。他方、多量に添加するとフェライト相が安定化し、加工誘起マルテンサイト相の生成が困難となるため、その上限値は18.00重量%とし、好ましくは、17.50重量%以下とする。
(8) Alは、0.75〜1.50重量%とする。
Alは、鋼の溶製時の脱酸剤として添加されるとともに、析出硬化熱処理の後にNiと結合して金属間化合物を生成し、硬さと耐摩耗性を向上させる重要な元素である。このような効果を得るためには、0.75重量%以上の添加が必要である。好ましくは、0.90重量%以上とする。他方、多量に添加すると、鋼中に硬質のアルミナ介在物として存在して冷間加工性を低下させるため、その上限値は1.50重量%とし、好ましくは、1.40重量%以下とする。
上記組成のピストンリング用材料を溶解し、造塊後、圧延を行った後、次のような熱処理を施し、さらに、冷間加工後に析出硬化熱処理を施すことにより、マルテンサイトとオーステナイトの2相組織を有することで、強度と延性のバランスの優れた材料が得られる。
すなわち、この組成の材料を固溶化熱処理してMS 点を常温付近にすることにより準安 定オーステナイトとする。この固溶化熱処理温度は溶解度曲線以上の温度で完全に固溶させる温度であればよく、特に限定されないが、1000〜1100℃の温度で所定時間(約90分程度)保持し、次いで、空冷することができる。
この溶体化処理後の鋼に冷間加工(例えば、約60%以上の加工率)を施すことによって応力誘起マルテンサイト変態が生成される。
次ぎに、この材料を冷間加工後に析出硬化熱処理を施すことによって、硬化させることができる。すなわち、冷間加工によって応力誘起マルテンサイトを増加させるとともに、加工硬化性のオーステナイト相の引張強さが著しく増大することが期待でき、冷間加工後に析出硬化熱処理を行うので、化合物(NiAl)を析出させる。
以上のように、本発明のピストンリング用線材は、オーステナイト相とマルテンサイト相を有する二相組織から形成され、それぞれの金属組織が熱処理時に互いに異なる変形態様を呈するので、次ぎに説明するように、コイリング後に歪み取りのための熱処理をしてもリング径の寸法変化が起こりにくくなることが期待できる。
すなわち、オーステナイト相は(冷間で行われる)コイリング後に歪み取りのための熱処理を行うと、コイリングと反対方向に変化しようとする。すなわち、オーステナイト相はコイル径が拡大する方向に変化しようとする。
一方、マルテンサイト相は(冷間で行われる)コイリング後に歪み取りのための熱処理を行うと、コイリングと同じ方向に変化しようとする。すなわち、マルテンサイト相はコイル径が縮小する方向に変化しようとする。
本発明のピストンリング用線材は熱処理時の変形態様の異なるオーステナイト相とマルテンサイト相の二相組織から形成され、コイリング後に歪み取りのための熱処理を行うと、拡径方向に変化しようとするオーステナイト相と縮径方向に変化しようとするマルテンサイト相の巧みなバランスにより、リング径の寸法変化が起こりにくくなるのである。
析出硬化熱処理としては、550±40℃で約10〜30分程度保持し、次いで空冷するプロセスが好ましい。510℃未満および/または10分未満の熱処理では析出硬化不足であり、590℃超および/または30分を超える熱処理を行うと強靱性が低下するので好ましくない。
製品中のオーステナイト相とマルテンサイト相の比率は、体積率が65〜90%のマルテンサイト相と、残部が実質的にオーステナイト相からなることが好ましく、さらに、体積率が70〜85%のマルテンサイト相と、残部が実質的にオーステナイト相からなることがより好ましい。
以下に本発明の実施例を製造工程順に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更と修正が可能である。
(1)溶解と固溶化熱処理と冷間伸線
以下の表1に示すような組成(重量%)の材料を溶解し、造塊後、圧延し、1050℃で60分程度固溶化熱処理した後、線径5.5mmの線材に圧延した。
次ぎに、上記材料を固溶化熱処理後室温まで冷却し(水素ガス雰囲気)、線径2.0〜2.5mmの線材に伸線した。
(2)矩形断面の圧延
上記線材を、幅が2.0〜2.3mmで高さが1.0〜1.2mmの矩形断面に圧延した(伸線加工と矩形断面の圧延の合計冷間加工率=60〜70%)。
(3)析出硬化熱処理
上記の矩形断面圧延材を以下の3種類の熱処理に供した。
(a) 矩形断面圧延材料を500℃に昇温して10分間保持後に650℃に昇温して10分間保持し、その後室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。
(b) 矩形断面圧延材料を550℃に昇温して20分間保持し、その後室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。
(c) 矩形断面圧延材料を650℃に昇温して10分間保持後に500℃に降温して10分間保持し、その後室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。
(4)コイリング後、歪み取り熱処理後およびイオンプレーティング処理後のリング内径の変化量
次ぎに、上記熱処理材を外径70mmとなるようにコイリング後、図1に示すようなピストンリング1の形状に切断し、歪み取りのために、600℃に昇温して1時間保持後に室温まで冷却した(大気中)。さらに、イオンプレーティング(以下、IPともいう)処理の熱履歴を模した熱処理として、550℃に昇温して4時間保持後に室温まで冷却した(大気中)。そして、コイリング後のリング外径と歪み取り熱処理後のリング外径とIP模擬熱処理後のリング外径をノギスで測定することにより、次式1(歪み取り熱処理によるリング寸法変化量)と次式2(IP模擬熱処理によるリング寸法変化量)に示すように、ピストンリングの寸法変化量を求めた。なお、リング外径の測定は、図2に示すようにd1、d2、d3 の3箇所で行い、10個のピストンリングについて測定した。
10個のピストンリングの3箇所で測定した合計30の数値から得られた寸法変化量の平均値を求めると、次ぎに示すような結果が得られた。
イ.歪み取り熱処理によるリング寸法変化量
(a) 析出硬化熱処理=500℃で10分間保持後に650℃で10分間保持したもののリング外径は、平均的に3.24%拡径したことが認められた。
(b) 析出硬化熱処理=550℃で20分間保持したもののリング外径には、平均的に0.05%の拡径しか認められなかった。
(c) 析出硬化熱処理=650℃で10分間保持後に500℃で10分間保持したもののリング外径は、平均的に3.34%拡径したことが認められた。
上記リング外径変化量の数値から明らかなように、析出硬化熱処理を550℃で20分間保持するという条件で行うことにより、コイリング後に歪み取り熱処理を行っても、リング外径は殆ど変化しないことが分かる。
ロ.IP模擬熱処理によるリング寸法変化量
(a) 析出硬化熱処理=500℃で10分間保持後に650℃で10分間保持したもののリング外径には、平均的に0.11%の縮径しか認められなかった。
(b) 析出硬化熱処理=550℃で20分間保持したもののリング外径には、平均的に0.09%の拡径しか認められなかった。
(c) 析出硬化熱処理=650℃で10分間保持後に500℃で10分間保持したもののリング外径には、平均的に0.09%の縮径しか認められなかった。
上記リング外径変化量の数値から明らかなように、歪み取り熱処理後にイオンプレーティング模擬熱処理を行った場合、析出硬化熱処理条件に関わらず、リング外径は殆ど変化しないことが分かる。
(5)ネジレ、キャンバーおよび巻反りの測定
次ぎに、同上組成の材料を溶解し、造塊後、圧延し、同上条件で固溶化熱処理した後、線径5.5mmの線材に圧延した。さらに、その線材を焼鈍後室温まで冷却し(水素ガス雰囲気)、線径2.0〜2.5mmの線材に伸線した後、幅が2.0〜2.3mmで高さが1.0〜1.2mmの矩形断面に圧延した(伸線加工と矩形断面の圧延の合計冷間加工率=60〜70%)。
その矩形断面の材料を450℃、500℃、550℃、600℃、650℃の各温度で10分間熱処理を行った後に室温まで冷却し(水素ガス雰囲気)、直線性(真直度)を表す指標となるネジレ、キャンバーおよび巻反りを測定した。
ネジレの測定は、図3に示すように、長さが100mmの熱処理後の矩形断面試料2を直角に折り曲げたときの試片2aの鉛直方向に対する振れ角度θ1(゜)またはθ2(゜)を求めることによって行った。
キャンバーの測定は、図4に示すように、長さ20mmの熱処理後の矩形断面試料3を水平な箇所に載置したとき、Lmmに対する反りの最大値d(mm)を求めることによって行った。
巻反りの測定は、図5に示すように、長さ1000mmの熱処理後の矩形断面試料4の上端部4aをつかんで鉛直方向に垂らしたときの垂線5からの反り量c1またはc2(mm)を求めることによって行った。
熱処理温度とネジレの関係については図6に示し、熱処理温度とキャンバーの関係については図7に示し、熱処理温度と巻反りの関係については図8に示す。
図6と図8に示すように、ネジレおよび巻反りは550℃で熱処理を行ったものの数値が最も低く、図7より、キャンバーについては、500℃以上の熱処理で大きな変化が見られないことが分かる。
そこで、次ぎに、上記のようにして得た矩形断面圧延材料を、500℃で10分間保持後に650℃×10分間保持するという析出硬化熱処理(熱処理A)と、500℃で5分間保持後に650℃で5分間保持するという析出硬化熱処理(熱処理B)と、550℃で20分間保持するという析出硬化熱処理(熱処理C)と、650℃で10分間保持後に500℃で10分間保持するという析出硬化熱処理(熱処理D)を行ったものについて、ネジレ、キャンバーおよび巻反りを測定した結果を表2に示す。
表2に明らかなにように、熱処理C(550℃で20分間保持)を行うことにより、ネジレ、キャンバーおよび巻反りの数値が最も小さくなることが分かる、ネジレについては5゜以下であることが好ましく、キャンバーについては3mm以下であることが好ましく、巻反りについては50mm以下であることが好ましいが、熱処理Cを行ったものはこれらの数値範囲をすべて満足していることが分かる。
(6)熱処理条件と硬度と強度
さらに、上記のようにして得た矩形断面圧延材料を、熱処理A、熱処理B、熱処理Cまたは熱処理Dに供することによって、表層硬度と断面硬度を測定した結果を表3に示し、引張強さを測定した結果を表4に示す。表層硬度とは、矩形断面材料の長手方向の5箇所において、表面(図9の符号×参照、隣接する×印の長手方向の間隔は2cm程度)での硬度を測定した平均値をいい、断面硬度とは、矩形断面材料の長手方向の5箇所において、表面および中心部(5箇所、図10の符号×参照)での硬度を測定した平均値をいう。
表3と表4に明らかなように、熱処理Cを行ったものは、表層硬度および断面硬度ならびに引張強さが最も大きく、表層硬度が533HV0.5、断面硬度が521HV10という極めて大きな硬度を確保することができる。
(7)熱処理と金属組織
上記のようにして得た矩形断面圧延材料に以下の8種類の熱処理((a)〜(h):コイリング加工を含む)を施した後X線回折にてマルテンサイト量(体積%)を測定したので、それらの各熱処理条件におけるマルテンサイト量について表5に示す。
(a) 矩形断面圧延材料を600℃に昇温して10分間保持後、室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。
(b) 熱処理(a) において、加熱温度を650℃とした。
(c) 矩形断面圧延材料を650℃に昇温して10分間保持後に500℃に降温して10分間保持し、その後室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。さらに、その熱処理材を外径70mmとなるようにコイリング後、図1に示すようなピストンリング1の形状に切断した。
(d) 熱処理(c) において、ピストンリングの形状に切断したものを600℃に昇温して1時間保持後に室温まで冷却した(大気中)。
(e) 矩形断面圧延材料を550℃に昇温して20分間保持し、その後室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。さらに、その熱処理材を外径70mmとなるようにコイリング後、図1に示すようなピストンリング1の形状に切断した。
(f) 熱処理(e) において、ピストンリングの形状に切断したものを600℃に昇温して1時間保持後に室温まで冷却した(大気中)。
(g) 矩形断面圧延材料を500℃に昇温して10分間保持後に650℃に昇温して10分間保持し、その後室温まで冷却した(水素ガス雰囲気)。さらに、その熱処理材を外径70mmとなるようにコイリング後、図1に示すようなピストンリング1の形状に切断した。
(h) 熱処理(g) において、ピストンリングの形状に切断したものを600℃に昇温して1時間保持後に室温まで冷却した(大気中)。
表5に示すように、本発明の実施例である熱処理(e) はマルテンサイト相が74%と高く、伸張しようとするオーステナイト相と収縮しようとするマルテンサイト相が巧みにバランスし、両相の熱処理に伴う変形態様が互いに補完するように作用するので、上記したように、外径70mmにコイリング後に歪み取りのための熱処理をしてもリング径の寸法変化が抑制されるのである。
ピストンリングの斜視図である。 ピストンリングの外径測定位置を説明する図である。 ネジレの測定方法を説明する図である。 キャンバーの測定方法を説明する図である。 巻き反りの測定方法を説明する図である。 熱処理温度とネジレの関係を示す図である。 熱処理温度とキャンバーの関係を示す図である。 熱処理温度と巻反りの関係を示す図である。 表層硬度の測定位置を示す図である。 断面硬度の測定位置を示す図である。
符号の説明
1 ピストンリング
2 矩形断面圧延試料
3 矩形断面圧延試料
4 矩形断面圧延試料

Claims (5)

  1. Cが0.09重量%以下、Siが1.00重量%以下、Mnが1.00重量%以下、Pが0.040重量%以下、Sが0.030重量%以下、Niが6.50〜8.50重量%、Crが16.00〜18.00重量%、Alが0.75〜1.50重量%、残部がFeおよび不可避的不純物である組成からなり、マルテンサイト相の体積率が65〜90%で、残部がオーステナイト相の母相からなることを特徴とするピストンリング用線材。
  2. Cが0.09重量%以下、Siが1.00重量%以下、Mnが1.00重量%以下、Pが0.040重量%以下、Sが0.030重量%以下、Niが6.50〜8.50重量%、Crが16.00〜18.00重量%、Alが0.75〜1.50重量%、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる材料を1000〜1100℃で固溶化熱処理し、次いで、冷間加工を行った後、510〜590℃で10〜30分間析出硬化熱処理を施すことによって得たピストンリング用線材。
  3. マルテンサイト相の体積率が65〜90%で、残部がオーステナイト相の母相からなることを特徴とする請求項2記載のピストンリング用線材。
  4. 表層または断面の少なくとも一方のビッカース硬さが500HV以上であることを特徴とする請求項1、2または3記載のピストンリング用線材。
  5. 請求項1〜4記載のいずれかの線材を用いてなるピストンリング。
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