JP6327360B2 - 窒化部品の製造方法及び窒化用鋼材 - Google Patents

窒化部品の製造方法及び窒化用鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、窒化用鋼材を用いた窒化部品の製造方法、及び、窒化処理される窒化用鋼材に関する。
クランクシャフトやコネクティングロッド等に代表される機械構造用部品は、自動車、産業機械及び建設機械等に用いられる。機械構造用部品には、高い疲労強度が要求される。
窒化処理は、機械構造用部品の疲労強度を高めるために有効である。たとえば、機械構造用炭素鋼鋼材又は機械構造用合金鋼鋼材を熱間鍛造して、所望の形状の中間品を製造する。必要に応じて中間品に対して焼ならし処理を実施する。熱間鍛造後の中間品又は焼ならし処理後の中間品に対して、窒化処理を実施して機械構造用部品である窒化部品を製造する。窒化処理により、窒化部品の表層近傍に、窒素による強化層が形成される。そのため、窒化部品の疲労強度が高まる。
ところで、窒化処理により、窒化部品には曲がり等の変形が発生する場合がある。変形した窒化部品に対して、通常、冷間矯正が実施される。冷間矯正工程を省略及び簡略化できれば、製造コストの削減及びサイクルタイムの短縮を実現できる。窒化処理後の窒化部品の変形を抑えることができれば、冷間矯正を省略又は簡略化できる。
窒化部品の疲労強度及び曲げ矯正性を向上する技術については、特開平9−291339号公報(特許文献1)、特開平10−46287号公報(特許文献2)、特開2010−13729号公報(特許文献3)、特開2009−270160号公報(特許文献4)、及び、に提案されている。
特許文献1に開示された窒化鋼は、必須元素として、質量%で、C:0.15〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.05〜0.50%を含有し、任意元素として、Ni、Mo、N、V、Nb、Ti、Zr、Ta、S、Pb、Ca、Bi、Teのうち1種又は2種以上を含有できる。特許文献1には次の事項が記載されている。鋼中のC含有量、Mn含有量及びCr含有量を適正化することにより、フェライト面積率を高め、さらにフェライトとパーライトとを微細化する。これにより、優れた疲れ特性及び曲げ特性が得られる。
特許文献2に開示された窒化用鋼は、重量%で、C:0.30〜0.43%、Si:0.05〜0.40%、Mn:0.20〜0.60%、P:0.08%以下、S:0.10%以下、sol.Al:0.010%以下、Ti:0.013%以下、Ca:0.0030%以下、Pb:0.20%以下及びN:0.010〜0.030%を含有し、残部がFe及び不純物からなる。この窒化用鋼ではさらに、不純物中のCr含有量が0.10%以下であり、V含有量が0.01%以下である。特許文献2には次の事項が記載されている。鋼中のAl含有量及びTi含有量を抑制することにより、疲労強度が高まる。V含有量、Cr含有量及びAl含有量を抑制することにより、窒化後の表面硬さが抑えられ、曲げ矯正性が高まる。Pを含有することにより、疲労強度が高まる。窒化用鋼を上記の化学組成とすることにより、調質処理を実施しなくても優れた疲労強度及び曲げ矯正性が得られる。
特許文献3に開示された軟窒化用鋼は、C:0.45%を超えて0.60%以下、Si:0.50%未満、Mn:1.30%を超えて1.70%以下、P:0.05%以下、S:0.02〜0.10%、Cr:0.30%以下及びN:0.007%を超えて0.030%以下を含有し、Al:0.010%を超えて0.10%以下及びTi:0.005%を超えて0.035%以下のうちの1種以上を総含有量で0.015%以上を含有し、残部はFe及び不純物からなる。不純物中のV含有量は0.010%以下である。この軟窒化用鋼はさらに、fn1=1.25C+Mn−0.1Crが1.90以上であり、fn2=N−0.45Al−(1/22)Tiが0を超える。特許文献3には次の事項が記載されている。fn1が1.90以上であれば、フェライトの割合が10%以下になる。さらに、fn2が0を超えれば、Ti及びAlの窒化物によりピンニング効果が得られ、結晶粒が微細化する。そのため、焼入れ及び焼戻しに替えて焼きならしを実施しても、優れた疲労強度及び曲げ矯正性が得られる。
特許文献4に開示された軟窒化用鋼材の製造方法は、質量%で、C:0.25〜0.50%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.05%以下、S:0.1%以下、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.40%以下、Al:0.05%以下およびN:0.005〜0.030%を含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼を、1100〜1300℃に加熱し、仕上げ温度を900℃以上として熱間鍛造した後、570℃以上で、かつ、A=723−10.7(Mn%)+29.1(Si%)−16.9(Ni%)+16.9(Cr%)で表されるA℃以下の温度で焼なましする。特許文献4では次の事項が記載されている。上記式で表されるA℃以下で焼なましを実施すれば、Crを固定するセメンタイトがマトリックス中に残存する。そのため、フェライト中のCr濃度が低下し、曲げ矯正性が高まる。
上述のとおり、特許文献1では、結晶粒が微細化される。しかしながら、それだけでは疲労強度が改善されない場合がある。特許文献2では、曲げ矯正性を高めるために、窒素と親和力の高いCr含有量を低くする。そのため、窒化後の窒化層の硬さが低くなりやすく、疲労強度が低くなる場合がある。特許文献3では、窒化層を強化する元素の含有量が十分でない。そのため、疲労強度が十分に高くならない場合がある。
さらに、特許文献1〜特許文献4では、窒化処理により曲がり等の変形が発生した後の鋼材の曲げ矯正性を向上する技術については開示されているものの、窒化処理後の変形そのものを抑制する点については開示及び示唆がない。
本発明の目的は、窒化処理後の疲労強度を高め、かつ、窒化処理後の変形を抑制できる、窒化部品の製造方法を提供することである。
本実施形態による窒化部品の製造方法は、質量%で、C:0.25〜0.65%、Si:0.03〜0.5%、Mn:1.3〜2.7%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.10%、Cr:0.05〜0.60%、N:0.003〜0.025%、Al:0.05%以下、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%、Mo:0〜0.50%、V:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、及び、Ca:0〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する素材を準備する工程と、素材を熱間加工する工程と、熱間加工された素材に対して、600℃以上であって(3)で定義されるA点以下の温度で20分以上均熱した後冷却する残留応力解放熱処理を実施して、窒化用鋼材を製造する工程と、残留応力解放熱処理後の窒化用鋼材に対して切削加工を実施する工程と、切削加工後の窒化用鋼材に対して窒化処理を実施する工程とを備える。
0.55≦C+0.15Si+0.2(Mn−1.71S)+0.1Cr≦1.10 (1)
0.55≦Cr+0.5Si+0.35(Mn−1.71S)−0.3C≦1.30 (2)
=723−10.7Mn+29.1Si−16.9Ni+16.9Cr (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態による窒化用鋼材は、質量%で、C:0.25〜0.65%、Si:0.03〜0.5%、Mn:1.3〜2.7%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.10%、Cr:0.05〜0.60%、N:0.003〜0.025%、Al:0.05%以下、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%、Mo:0〜0.50%、V:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、及び、Ca:0〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する。窒化用鋼材の組織におけるパーライトの面積分率は50.0%よりも高く、窒化用鋼材の組織において、パーライトコロニーのうちパーライトコロニー内のセメンタイトの総長さに対する4.0μm未満の長さのセメンタイトの総長さの比率が50%以上である特定パーライトコロニーの総面積の、パーライトコロニーの総面積に対する比率が40%以上である。
0.55≦C+0.15Si+0.2(Mn−1.71S)+0.1Cr≦1.10 (1)
0.55≦Cr+0.5Si+0.35(Mn−1.71S)−0.3C≦1.30 (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態の窒化用鋼材は、窒化処理後の疲労強度を高め、かつ、窒化処理後の曲げの発生を抑制できる。
図1は、パーライトコロニーの境界が描画されたSEM画像の一例である。 図2は、パーライトコロニーの模式図である。 図3は、図2と異なる他のパーライトコロニーの模式図である。 図4は、通常パーライトコロニーと特定パーライトコロニー(黒部分)とを示す図である。 図5は、小野式回転曲げ疲労試験片の側面図である。 図6Aは、変形量測定試験片の側面図である。 図6Bは、図6Aに示す変形量測定試験片の正面図である。 図7は、実施例2で製造されるクランク軸粗形材の正面図である。 図8は、図7のクランク軸粗形材の変形量の測定試験の模式図である。
本発明者らは、鋼の窒化処理後の疲労強度及び曲がり等の変形について、種々の検討を行った。その結果、本発明者らは次の知見を得た。
窒化処理後に鋼材に曲がり等の変形が生じるのは、窒化前の鋼材に導入された残留応力が窒化処理時に解放されるためである。
残留応力は、熱間鍛造後の冷却中に、鋼材内に温度差が生じることにより発生する。最終の鋼材(窒化部品)のサイズが大きくなったり、鋼材の形状が複雑になる程、冷却中の鋼材の場所ごとの温度差が大きくなりやすく、残留応力が大きくなりやすい。
窒化処理前の鋼材の残留応力を低減できれば、窒化処理後の鋼材の変形を抑制できる。そこで、窒化処理前の鋼材の残留応力を低減するために、窒化処理前に、「残留応力解放熱処理」を実施する。具体的には、窒化処理前に、鋼材を600℃〜A点以下のフェライト域温度で、20分以上均熱する。均熱後、2℃/秒以下で室温(25℃)まで冷却する。
残留応力解放熱処理を実施すれば、熱間鍛造により発生した残留応力が、窒化処理前に解放される。そのため、窒化処理時に残留応力が解放されて変形が発生するのを抑制できる。しかしながら、残留応力解放熱処理で鋼材の残留応力が解放されるため、残留応力解放熱処理後の鋼材に変形が発生する。
ところで、通常の熱間鍛造で製造される窒化部品では、熱間鍛造により鋼材表層に形成されたスケールを除去するため、窒化処理前に切削加工が実施される。熱間鍛造時に導入された残留応力が解放されることにより生じる変形は、切削加工により鋼材から除去される切削代よりも小さい。したがって、残留応力による変形量は、切削加工により除去することができる。
そこで、本実施形態では、残留応力解放熱処理を実施した後、切削加工を実施する。そして、切削加工後に窒化処理を実施する。この場合、残留応力解放熱処理により、熱間鍛造時に導入された残留応力が解放され、変形が発生する。しかしながら、この変形は、次工程の切削加工により除去される。切削加工により発生する残留応力は、熱間鍛造により発生する残留応力よりもはるかに小さい。そのため、窒化処理を実施しても、鋼材に変形が発生しにくい。
窒化処理前に残留応力解放熱処理を実施した場合、鋼材全体の硬さが低くなり得る。鋼材全体の硬さが低ければ、高い疲労強度が得られない。そこで、鋼材の芯部及び表層の硬さを全体的に高めるために、鋼材の化学組成は式(1)及び式(2)を満たす。
0.55≦C+0.15Si+0.2(Mn−1.71S)+0.1Cr≦1.10 (1)
0.55≦Cr+0.5Si+0.35(Mn−1.71S)−0.3C≦1.30 (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
鋼材の化学組成が式(1)を満たせば、鋼材の芯部の硬さが高まる。具体的には、Mn、Cr及びSiにより鋼材芯部が固溶強化され、硬さが高まる。
さらに、鋼材の化学組成が式(2)を満たせば、窒化処理後の鋼材の表層の硬さが高まる。Mn、Cr及びSiは親窒素元素であり、窒素と結合して窒化物及び/又はZ.P.ゾーンを形成する。そのため、これらの元素は窒化層(表層)を硬化する。一方、S及びCは窒化層の硬さを低下する。
以上より、鋼材の化学組成が式(1)及び式(2)を満たせば、残留応力解放熱処理が実施された鋼材であっても、組織全体(表層及び芯部)の硬さを高めることができる。そのため、疲労強度が高まる。
このように、鋼材の化学組成が式(1)及び式(2)を満たし、残留応力解放熱処理が実施された鋼材の組織を観察したところ、パーライトを構成しているセメンタイトが分断され、パーライトのラメラ構造が崩れていた。したがって、本実施形態の窒化用鋼材は、組織内のパーライトのラメラ構造で特定できる。
以上の知見に基づいて完成された窒化部品の製造方法及び窒化用鋼材は次のとおりである。
本実施形態による窒化部品の製造方法は、質量%で、C:0.25〜0.65%、Si:0.03〜0.5%、Mn:1.3〜2.7%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.10%、Cr:0.05〜0.60%、N:0.003〜0.025%、Al:0.05%以下、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%、Mo:0〜0.50%、V:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、及び、Ca:0〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する素材を準備する工程と、素材を熱間加工する工程と、熱間加工された素材に対して、600℃以上であって(3)で定義されるA点以下の温度で20分以上均熱した後冷却する残留応力解放熱処理を実施して、窒化用鋼材を製造する工程と、残留応力解放熱処理後の窒化用鋼材に対して切削加工を実施する工程と、切削加工後の窒化用鋼材に対して窒化処理を実施する工程とを備える。
0.55≦C+0.15Si+0.2(Mn−1.71S)+0.1Cr≦1.10 (1)
0.55≦Cr+0.5Si+0.35(Mn−1.71S)−0.3C≦1.30 (2)
=723−10.7Mn+29.1Si−16.9Ni+16.9Cr (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記素材の化学組成はさらに、Ti:0.001〜0.05%、及び、Nb:0.003〜0.05%からなる群から選択される1種又は2種を含有してもよい。また、上記素材の化学組成は、さらに、Mo:0.03〜0.50%、V:0.03〜0.50%、Cu:0.05〜0.50%、及び、Ni:0.05〜0.50%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。また、素材の化学組成は、さらに、Ca:0.0001〜0.005%を含有してもよい。
本実施形態による窒化用鋼材は、質量%で、C:0.25〜0.65%、Si:0.03〜0.5%、Mn:1.3〜2.7%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.10%、Cr:0.05〜0.60%、N:0.003〜0.025%、Al:0.05%以下、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%、Mo:0〜0.50%、V:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、及び、Ca:0〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する。窒化用鋼材の組織におけるパーライトの面積分率は50.0%よりも高く、窒化用鋼材の組織において、パーライトコロニーのうちパーライトコロニー内のセメンタイトの総長さに対する4.0μm未満の長さのセメンタイトの総長さの比率が50%以上である特定パーライトコロニーの総面積の、パーライトコロニーの総面積に対する比率が40%以上である。
以下、上述の窒化部品の製造方法及び窒化用鋼材について詳しく説明する。各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
[化学組成]
本発明による窒化用鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.25〜0.65%
炭素(C)は、窒化処理された鋼材の強度を高め、疲労強度を高める。Cはさらに、鋼材の耐摩耗性を高める。C含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、鋼材中のセメンタイトの面積分率が高くなりすぎ、被削性が低下する。したがって、C含有量は0.25〜0.65%である。C含有量の好ましい下限は0.25%よりも高く、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.35%である。C含有量の好ましい上限は0.65%未満であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.58%である。
Si:0.03〜0.5%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Siはさらに、フェライトに固溶して鋼材を強化する(固溶強化)。Si含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、窒化処理時において表層の硬さが過剰に高くなる。Si含有量が高すぎればさらに、窒化処理時における窒素の拡散が阻害され、硬化層深さが浅くなり、疲労強度が低下する。したがって、Si含有量は0.03〜0.5%である。Si含有量の好ましい下限は、0.03%よりも高く、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Si含有量の好ましい上限は0.5%未満であり、さらに好ましくは0.4%であり、さらに好ましくは0.35%である。
Mn:1.3〜2.7%
マンガン(Mn)は、鋼材に固溶して窒化処理後の鋼材を強化する(固溶強化)。Mnはさらに、窒化処理により鋼材内に導入されたNと結合して窒化物を形成し、表層の硬さを高め、疲労強度を高める。Mnはさらに、鋼材中でMnSを形成して鋼材の被削性を高める。Mn含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼材の焼入れ性が高くなりすぎる。この場合、鋼材中にマルテンサイトが形成され、被削性が低下する。したがって、Mn含有量は1.3〜2.7%である。Mn含有量の好ましい下限は1.3%よりも高く、さらに好ましくは1.4%であり、さらに好ましくは1.5%であり、さらに好ましくは1.55%である。Mn含有量の好ましい上限は2.7%未満であり、さらに好ましくは2.4%であり、さらに好ましくは2.1%である。
P:0.05%以下
燐(P)は、不純物である。Pは結晶粒界に偏析し、粒界脆化割れを引き起こす。したがって、P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量は0.05%以下である。好ましいP含有量は0.04%以下である。
S:0.005〜0.10%
硫黄(S)は、鋼材中でMnと結合してMnSを形成し、鋼材の被削性を高める。S含有量が低すぎれば上記効果が得られない。一方、S含有量が高すぎれば、粗大なMnSが形成され、鋼材の疲労強度が低下する。したがって、S含有量は0.005〜0.10%である。S含有量の好ましい下限は0.005%よりも高く、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。S含有量の好ましい上限は0.10%未満であり、さらに好ましくは0.09%であり、さらに好ましくは0.08%である。
Cr:0.05〜0.60%
クロム(Cr)は、窒化処理により鋼材内に導入されたNと結合して窒化層中にCrNを形成し、窒化層を強化する。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、窒化処理時における窒素の拡散が阻害され、硬化層深さが浅くなり、疲労強度が低下する。したがって、Cr含有量は0.05〜0.60%である。Cr含有量の好ましい下限は0.05%よりも高く、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Cr含有量の好ましい上限は0.60%未満であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.40%である。
N:0.003〜0.025%
窒素(N)は、鋼材に固溶して鋼材の強度を高める。N含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、N含有量が高すぎれば、鋼材中に気泡が生成される。気泡が欠陥となるため気泡の発生は抑制される方が好ましい。したがって、N含有量は0.003〜0.025%である。N含有量の好ましい下限は0.003%よりも高く、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.007%である。N含有量の好ましい上限は0.025%未満であり、さらに好ましくは0.022%であり、さらに好ましくは0.020%である。
Al:0.05%以下
アルミニウム(Al)は不可避的に含有される。Al含有量が高すぎれば、粗大な酸化物が形成され、鋼材の疲労強度が低下する。したがって、Al含有量は0.05%以下である。Al含有量の好ましい上限は0.05%未満であり、さらに好ましくは0.045%であり、さらに好ましくは0.040%である。
一方、Alは鋼を脱酸する。そのため、脱酸を目的としてAlが含有される場合がある。この場合、Al含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。本明細書におけるAl含有量は、全Al(Total Al)の含有量である。
本発明による窒化用鋼材の残部は、Feおよび不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本発明の窒化用鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
本発明による窒化用鋼材はさらに、Tiを含有してもよい。
Ti:0〜0.05%
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Tiは母材中のNと結合してTiNを形成し、熱間鍛造時の結晶粒の粗大化を抑制する。しかしながらTi含有量が高すぎれば、TiCが生成して鋼材の硬さのばらつきが大きくなる。したがって、Ti含有量は0〜0.05%である。Ti含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Ti含有量の好ましい上限は0.05%未満であり、さらに好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。
Nb:0〜0.05%
ニオブ(Nb)は、任意元素であり,含有されなくてもよい。含有される場合,Nbは母材中のNと結合してNbNを形成し、熱間鍛造時の結晶粒の粗大化を抑制する。Nbはさらに、熱間鍛造時の再結晶を遅らせ、結晶粒の粗大化を抑制する。しかしながらNb含有量が高すぎれば,NbCが生成して鋼材の硬さのバラつきが大きくなる。したがって、Nb含有量は0〜0.05%である。Nb含有量の好ましい下限は0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Nb含有量の好ましい上限は0.05%未満であり、さらに好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。
本発明による窒化用鋼材はさらに、Mo、V、Cu及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。Mo、V、Cu及びNiはいずれも、鋼材の強度を高める。
Mo:0〜0.50%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moは鋼の焼入れ性を高めて鋼材の強度を高める。そのため、鋼材の疲労強度が高まる。しかしながら、Mo含有量が高すぎれば、マルテンサイトが生成し、被削性が低下する。したがって、Mo含有量は0〜0.50%である。Mo含有量の好ましい下限は0.03%である。Mo含有量の好ましい上限は0.50%未満であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。
V:0〜0.50%
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは熱間鍛造後の冷却中、及び、窒化処理中にVCを形成し、鋼材の芯部の強度を高める。Vはさらに、窒素と結合して窒化物を形成し、窒化層を強化する。そのため、疲労強度が高まる。しかしながら、V含有量が高すぎれば、靭性が大きく低下する。したがって、V含有量は0〜0.50%である。V含有量の好ましい下限は0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。V含有量の好ましい上限は0.50%未満であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。
Cu:0〜0.50%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuはフェライトに固溶して鋼材の強度を高める。そのため、鋼材の疲労強度が高まる。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、熱間鍛造時に鋼の粒界に偏析して熱間割れを誘起する。したがって、Cu含有量は0〜0.50%である。Cu含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cu含有量の好ましい上限は0.50%未満であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。
Ni:0〜0.50%
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niはフェライトに固溶して鋼材の強度を高める。そのため、鋼材の疲労強度が高まる。Niはさらに、鋼材がCuを含有する場合に、Cuに起因する熱間割れを抑制する。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、その効果が飽和し、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は0〜0.50%である。Ni含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Ni含有量の好ましい上限は0.50%未満であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。
本発明による窒化用鋼はさらに、Caを含有してもよい。
Ca:0〜0.005%
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは鋼材の被削性を高める。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、粗大なCa酸化物が生成し、鋼材の疲労強度が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.005%である。上記効果を安定して得るためのCa含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。Ca含有量の好ましい上限は0.005%未満であり、さらに好ましくは0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
[式(1)及び式(2)について]
上記化学組成はさらに、式(1)及び式(2)を満たす。
0.55≦C+0.15Si+0.2(Mn−1.71S)+0.1Cr≦1.10 (1)
0.55≦Cr+0.5Si+0.35(Mn−1.71S)−0.3C≦1.30 (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
[式(1)について]
F1=C+0.15Si+0.2(Mn−1.71S)+0.1Crと定義する。F1は鋼材の芯部の硬さの指標である。鋼材内部の強化には、C、Si、Mn、Crが有効であり、Sが強化を阻害する。F1が0.55未満であれば、鋼材内部の硬度が低すぎるため、疲労強度が低くなる。一方、F1が1.10よりも高ければ、鋼材内部の硬度が過剰に高くなるため、被削性が低下する。F1が0.55〜1.10であれば、鋼材内部は、適切な硬度を有する。F1の好ましい下限は0.60であり、さらに好ましくは0.65である。F1の好ましい上限は1.00であり、さらに好ましくは0.95である。
[式(2)について]
F2=Cr+0.5Si+0.35(Mn−1.71S)−0.3Cと定義する。F2は、ラメラが崩れたパーライト組織である鋼材に対して窒化処理を実施した後の、鋼材の表層(窒化層)の硬さの指標である。上述のとおり、Cr、Si、Mnは窒化物を形成して窒化層を硬化する。一方、S及びCは窒化層の硬化を阻害する。F2が0.55未満であれば、窒化層の硬度が低すぎて、疲労強度が低くなる。一方、F2の値が大きくなりすぎると、表面近傍のみの硬度が過剰に高くなり、表面近傍よりも深い位置では硬度が高くなりにくくなり、さらに靭性が低下する。そのため、F2の値が1.30を超えると、疲労強度が低下する。F2が0.55〜1.30であれば、窒化層は適切な硬度を有するため、優れた疲労強度が得られる。F2の好ましい下限は0.60であり、さらに好ましくは0.65である。F2の好ましい上限は1.10であり、さらに好ましくは0.95である。
[鋼材の微細組織(Microstructure)]
[パーライト面積分率]
本発明による窒化用鋼材は、パーライトが主体の組織を有する。より具体的には、窒化用鋼材の微細組織におけるパーライトの面積分率は50.0%を超える。ここで、パーライトの面積分率は次の方法により定義される。
窒化用鋼材の中心と表面とを結ぶ最短距離を2等分する位置から組織観察用のサンプルを採取する。鋼材が丸棒の場合、サンプルの採取位置は、丸棒の中心軸と垂直な断面において、丸棒の中心点と外周との間の距離、すなわち半径Rを2等分する点(以下、R/2位置と称する)とする。
採取されたサンプルについて、鋼材の圧延方向に垂直な断面を鏡面研磨する。鏡面研磨された表面を観察面としてナイタル腐食液で腐食する。腐食後、500倍の光学顕微鏡を用いて、任意の4視野のミクロ組織を観察して、パーライトを特定する。特定は画像処理により行ってもよいし、写真画像を利用して作業者が行ってもよい。各視野は406μm×540μmとする。各視野のパーライトの面積率(各視野でのパーライトの総面積/各視野の総面積×100(%))を求める。求められた4視野分のパーライトの面積率の平均値を、パーライトの面積分率(%)と定義する。
本発明の窒化用鋼材はパーライト主体の組織を有するため、フェライト主体の組織と比較して高い強度を有する。そのため、疲労強度が高くなる。好ましいパーライト面積分率は55.0%以上である。
[セメンタイト分断率]
本発明の窒化用鋼材は、後述の残留応力解放熱処理が実施されることにより、パーライト内のセメンタイトが分断され、ラメラ構造が崩れた組織を有する。組織内のパーライトは、複数のパーライトコロニーを含む。各パーライトコロニーは、複数のセメンタイトを含む。複数のセメンタイトのうち、鋼材の圧延方向に垂直な断面にて4.0μm未満の長さを有するセメンタイトを、「短セメンタイト」と称する。
各パーライトコロニー内の各セメンタイトの長さを測定する。そして、パーライトコロニー内の全セメンタイトの長さの合計(総長さ)に対する短セメンタイトの長さの合計(総長さ)の比(以下、短セメンタイト比率と称する)が50%以上となる場合、そのパーライトコロニーではセメンタイトが十分に分断されていると判断する。このようなパーライトコロニーを「特定パーライトコロニー」と称する。短セメンタイト比率が50%未満のパーライトコロニーを、「通常パーライトコロニー」と称する。
組織内のパーライトコロニー(つまり、通常パーライトコロニー及び特定パーライトコロニー)の総面積に対する、特定パーライトコロニーの総面積の比率を「セメンタイト分断率」(%)と定義する。
本発明による窒化用鋼のセメンタイト分断率は40%以上である。この場合、残留応力解放熱処理において残留応力が十分に解放されているため、窒化処理後の窒化部品の変形が抑制される。好ましいセメンタイト分断率は50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。
セメンタイト分断率は、次の方法で測定される。鋼材の中心と表面とを結ぶ最短距離を2等分する位置から組織観察用のサンプルを採取する。例えば鋼材が丸棒である場合、丸棒の中心軸に垂直な断面において、R/2位置がサンプル採取位置となる。
採取されたサンプルについて、鋼材の圧延方向に垂直な断面を鏡面研磨する。鏡面研磨された表面を観察面としてナイタル腐食液で腐食する。その後、観察面のうち、任意の3視野を3000倍の倍率のSEMで観察し、画像データを保存する。各視野の面積は1376μmであり、総面積は4128μmである。
各視野の画像データにおいて、画像処理を用いて、又は、作業者の目視により、パーライトコロニーの境界を特定する。図1は、パーライトコロニーの境界が描画されたSEM画像の一例である。
続いて、各パーライトコロニーにおいて、内部に含まれる各セメンタイトの長さを次の方法により測定する。
図2は、パーライトコロニー10の模式図である。パーライトコロニー10は、複数のセメンタイト20を含む。セメンタイト20の端部であって、セメンタイト20の幅の中心点P1を特定する。図2では、セメンタイト20の端部は、パーライトコロニー10の境界に位置する。
点P1を始点として、セメンタイト20の反対側の端に向かって直線を引く。直線の方向は、セメンタイト20の延材方向(セメンタイトの成長方向)とする。直線とセメンタイト20の反対側の端との交点を点P2とする。点P1と点P2とを結ぶ線分LS1の長さを、セメンタイト20の長さと定義する。
図3は、図2と異なる他のパーライトコロニー30の模式図である。パーライトコロニー30は、湾曲した複数のセメンタイト40を含む。
湾曲したセメンタイト40の長さは、次の方法で測定する。複数のセメンタイト40のうち、セメンタイト40Aに注目する。セメンタイト40Aの両端は、パーライトコロニー30の境界に位置する。この場合、上述のセメンタイト20の場合と同様の方法で、端部の幅の中心点P3を特定する。さらに、点P3を始点として、セメンタイト40Aの反対側の端に向かって線分を引く。セメンタイト40Aでは、線分の先端が、セメンタイト40Aの反対側の端に到達する前に、セメンタイト40Aとフェライトとの界面(以下、セメンタイト界面という)を横切る。この場合、始点P3から伸びる線分がセメンタイト40Aのセメンタイト界面を横切るまでの直線距離が最大となるように、線分LS2を引く。そして、線分LS2とセメンタイト界面との交点を、中間点P4とする。続いて、中間点P4を始点として、セメンタイト40Aの反対側の端に向かって線分を引く。このとき、中間点P4から伸びる線分は、セメンタイト界面を横切ることなく、セメンタイト40Aの反対側の端に到達して、点P5で交差する。この場合、中間点P4と点P5との間の直線距離が(セメンタイト界面を横切ることなく)最大となるように、線分LS3を引く。この場合、セメンタイト40Aの長さは、LS2の長さ+LS3の長さとする。
仮に、中間点P4からセメンタイト40Aの反対側の端に向かって線分を引いた場合に、線分の先端が再度セメンタイト界面を横切る場合、上述の方法により新たな中間点を決定し、決定された中間点を始点として、セメンタイト40Aの反対側の端に向かって線分を引く。中間点から伸びた線分の先端が、セメンタイト40Aの反対側の端と交差するまで、上記作業を繰り返す。そして、セメンタイト40A内に引かれた各線分の長さの合計を、セメンタイト40Aの長さと定義する。
セメンタイト40の端がパーライトコロニー30の界面と接触していない場合(たとえば、図中のセメンタイト40B)も、上記方法と同じ方法により、セメンタイトの長さを測定できる。
以上の方法により、パーライトコロニー内の各セメンタイトの長さを求める。そして、各パーライトコロニーごとに、短セメンタイト比率(%)を求め、各パーライトコロニーが「通常パーライトコロニー」であるか、「特定パーライトコロニー」であるかを特定する。そして、通常パーライトコロニーの面積と、特定パーライトコロニーの面積とを求める。面積はたとえば、周知の画像解析により求めることができる。
全ての視野(総面積4128μm)における、通常パーライトコロニーの総面積NCと、特定パーライトコロニーDCの総面積とを求める。そして、次の式により、セメンタイト分断率(%)を求める。
セメンタイト分断率=DC/(NC+DC)×100(%)
なお、各視野内のパーライトコロニーのうち、10μm未満の面積のパーライトコロニーについては、解析の対象外とする。つまり、そのようなパーライトコロニーは、通常パーライトコロニー及び特定パーライトコロニーとして認定しない。そのため、総面積DC及びNCには含まれない。
図4は、図1のSEM画像中において、上記特定方法により決定された通常パーライトコロニーと特定パーライトコロニーとを示す図である。図中、黒い部分は、特定パーライトコロニーを意味する。白い部分は、解析の対象外となったパーライトコロニー又はフェライトを意味する。黒色及び白色以外の部分は、通常パーライトコロニーを意味する。
上述の化学組成、式(1)及び式(2)を満たし、セメンタイト分断率が40%以上のパーライトのラメラ構造が十分に崩れた窒化用鋼材に対して窒化処理を行うと、残留応力解放熱処理を実施しているにもかかわらず、高い疲労強度が得られる。
[製造方法]
本発明による窒化用鋼材及び窒化部品の製造方法の一例を説明する。
本発明による窒化部品の製造方法は、素材準備工程と、熱間加工工程と、残留応力解放熱処理工程と、切削工程と、窒化処理工程とを含む。以下、それぞれの工程を説明する。
[素材準備工程]
上述の化学組成と、式(1)及び式(2)とを満たす溶鋼を製造する。製造された溶鋼を用いて、鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム)にする。又は、溶鋼を用いて、造塊法によりインゴットにする。鋳片又はインゴットを熱間加工して、ビレットを製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造でもよい。次工程で使用される素材(鋼材)は、上記の鋳片又はインゴットでもよいし、ビレットでもよい。
[熱間加工工程]
製造された上記素材を加熱する。加熱温度が低すぎれば、熱間加工装置に過度の負荷が掛かる。一方、加熱温度が高すぎれば、スケールロスが大きい。したがって、好ましい加熱温度は1000〜1300℃である。上記加熱温度での好ましい保持時間は、30〜1000分である。
加熱後の素材に対して、熱間加工を実施する。熱間加工はたとえば、熱間鍛造である。以下、本工程での熱間加工を熱間鍛造として説明を続ける。
熱間鍛造の好ましい仕上げ温度は900℃以上である。仕上げ温度が低すぎれば、熱間鍛造装置の金型への負担が大きくなるためである。一方、仕上げ温度の好ましい上限は、1250℃である。
熱間鍛造後の素材を冷却する。素材の表面温度が300℃になるまでの好ましい平均冷却速度は、5℃/秒以下である。平均冷却速度が5℃/秒を超えると、素材に生じる残留応力が大きくなりすぎ、残留応力解放熱処理によっても残留応力が十分に解放されにくくなる。この場合、窒化処理後の窒化部品に発生する変形(曲がり)が大きくなりやすい。したがって、好ましい平均冷却速度は5℃/秒以下である。さらに好ましい平均冷却速度は3℃/秒以下であり、さらに好ましくは、1℃/秒以下である。素材の表面温度が300℃まで下がった後、室温までの冷却方法は特に限定されない。なお、熱間鍛造でクランクシャフトを製造した場合、放冷すれば、平均冷却速度は5℃/秒以下となる。
[残留応力解放熱処理]
熱間鍛造後の素材に対して、残留応力解放熱処理を実施する。このとき、熱処理温度は、600℃以上であり、かつ、式(3)で定義されるA点以下である。
=723−10.7Mn+29.1Si−16.9Ni+16.9Cr (3)
熱処理温度が600℃未満であれば、残留応力が十分に解放されない。この場合、窒化処理時に残留応力が解放され、曲がり等の変形が発生しやすくなる。
一方、熱処理温度がA点を超え、二相域温度になると、フェライトとセメンタイトとの混合組織の一部が、熱処理中にオーステナイトになる。生成したオーステナイトは冷却時にフェライトとセメンタイトとに再度変態する。これらの変態過程において、素材は収縮と膨張を繰り返すため、残留応力が発生してしまう。残留応力解放熱処理はフェライト域温度で行う必要がある。そのため、熱処理温度は600℃〜A点以下である。
残留応力解放熱処理の熱処理温度の好ましい下限は610℃であり、さらに好ましくは620℃である。熱処理温度の好ましい上限はA点−5℃であり、さらに好ましくはA 点−10℃である。
残留応力解放熱処理の600℃以上であり、かつ、式(3)で定義されるA点以下の温度での均熱時間は20分以上である。均熱時間が20分未満であれば、残留応力が十分に解放されない。この場合、窒化処理時に残留応力が解放され、曲がり等の変形が発生しやすくなる。一方、均熱時間が24時間を越えると、熱処理の効果が飽和する上、熱処理コストが増大する。そのため、均熱時間は24時間以内である。
上記熱処理で均熱した後、素材を常温(25℃)まで冷却する。上記熱処理後の冷却速度によって、金属組織は変わらない。よって、常温までの平均冷却速度は特に規定する必要はない。但し、新たな残留応力が発生する可能性があるので、冷却速度は遅い方が好ましい。好ましい平均冷却速度は2℃/秒以下であり、さらに好ましくは1℃/秒以下である。
以上の工程により、本発明の窒化用鋼材が製造される。
[切削加工]
上述の窒化用鋼材に対して切削加工を実施して所定の形状にする。上記残留応力解放熱処理での残留応力の解放により、窒化用鋼材には曲がり等の変形が発生している。切削加工では、鋼材を所定形状にするとともに、変形を除去する。切削加工の種類は、窒化用鋼材を所定の形状にできれば、特に限定されない。
[窒化処理]
切削加工された窒化用鋼材に対して、窒化処理を実施する。本実施形態では、周知の窒化処理が採用される。窒化処理はたとえば、ガス窒化、塩浴窒化、イオン窒化等である。窒化中の炉内雰囲気は、NHのみであってもよいし、NHと、N及び/又はHとを含有する混合気であってもよい。また、これらのガスに、浸炭性のガスを含有して、軟窒化処理を実施してもよい。したがって、本明細書にいう「窒化」とは「軟窒化」も含む。
ガス軟窒化処理を実施する場合、たとえば、吸熱型変成ガス(RXガス)とアンモニアガスとを1:1に混合した雰囲気中で、均熱温度を550〜620℃にして1〜4時間均熱すればよい。
以上の製造工程により製造された窒化部品は、優れた疲労強度を有する。さらに、残留応力解放熱処理により、窒化処理前に残留応力が解放されているため、窒化処理において変形が発生しにくい。そのため、窒化処理後の冷間矯正工程を省略、又は簡略化できる。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜Cの150kgの溶鋼を、真空溶解炉を用いて製造した。鋼D〜Uの50kgの溶鋼を、真空溶解炉を用いて製造した。各溶鋼を用いてインゴットを製造した。
表1中の「F1」欄には、上述のF1の計算値が記載されている。「F2」欄には、上述のF2の計算値が記載されている。「A」欄には、式(3)で定義されるA点(℃)が記載されている。
各鋼種のインゴットを1250℃に加熱した。加熱されたインゴットに対して熱間鍛造を実施して、55mmの直径を有する丸棒を製造した。熱間鍛造での仕上げ温度は1000℃であった。熱間鍛造後、丸棒を常温まで放冷した。丸棒が300℃になるまでの平均冷却速度は、いずれの試験番号においても、0.23℃/秒であった。
各試験番号の丸棒に対して、表2に示す条件で、残留応力解放熱処理を実施した。
表2中の「鋼種」欄には、対応する試験番号で用いたインゴットの鋼種を示す。「残留応力解放熱処理」欄の「温度及び均熱時間」欄には、残留応力解放熱処理での熱処理温度(℃)と均熱時間(h)とを示す。平均冷却速度は、いずれの試験番号においても、0.17℃/秒であった。「窒化条件」欄には、窒化処理における処理温度(℃)と均熱時間(h)とを示す。
[評価試験]
各試験番号の丸棒を用いて、次の試験を実施した。
[パーライト面積分率及びセメンタイト分断率測定試験]
各試験番号の丸棒のR/2位置から、鍛軸方向に平行な断面を被検面とするサンプルを採取した。採取されたサンプルを用いて、上述の方法により、各試験番号のパーライト面積分率を求めた。各試験番号のパーライト面積率(%)を表2中の「P分率」欄に示す。
さらに、上記サンプルを5000倍のSEMで観察して、上記方法に基づいてセメンタイト分断率を求めた。各試験番号のセメンタイト分断率(%)を表2中の「θ分断率(%)」に示す。
[小野式回転曲げ疲労試験片及び変形量測定試験片の作成]
各試験番号の丸棒から、図5に示す小野式回転曲げ疲労試験片を複数採取した。図中の長さL1は106mmであり、直径D1は15mmであった。試験片中央部の切り欠き部の曲率半径R1は3mmであり、切り欠き底での試験片横断面の直径は8mmであった。試験片の平行部の長さは18mmであり、平行部での直径は10mmであった。
さらに、各試験番号の丸棒から、図6A及び図6Bに示す変形量測定試験片を採取した。変形量測定試験片の直径D2は50mmであり、厚さL2は50mmであった。厚さ方向の全長にわたって切り欠きを設けた。切り下記の幅W2は10.000mmを狙い値とした。切り欠き加工後の切り欠きの幅W2の実測値をマイクロメータで測定した。測定箇所は、図6A及び図6Bの地点Mとした。地点Mは、図6Bに示す左側端面を原点としたときに、原点から幅方向に10mm、20mm、30mm及び40mmの地点とした。これら4点の地点Mで測定された幅W2の平均を、切り欠き幅(mm)と定義した。
採取された小野式回転曲げ疲労試験片及び変形量測定試験片に対して、表2に示す条件(熱処理温度及び均熱時間)で窒化処理を実施した。具体的には、試験片を熱処理炉に挿入した。挿入後、炉内を表2の「窒化条件」欄の熱処理温度(℃)まで昇温しながら,アンモニアガスとRXガスを流量が1:1になるようにして炉内に導入した。そして、表2の「窒化条件」欄に示す熱処理温度(℃)及び保持時間(h)で窒化処理を実施した。保持時間が経過した後、試験片を熱処理炉から取り出し、100℃の油で急冷した。
[小野式回転曲げ疲労試験]
上述の窒化処理がされた小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、小野式回転曲げ疲労試験を実施した。JIS Z2274(1978)に準拠した回転曲げ疲労試験を室温(25℃)の大気雰囲気中において実施した。試験は、回転数3400rpmの両振り条件で実施した。繰り返し数1.0×10回まで破断しなかった試験片のうち、最も高い応力を、その試験番号の疲労強度(MPa)と定義した。疲労強度が510MPa以上である場合、疲労強度に優れると判断した。
[ビッカース硬さ試験]
小野式回転曲げ疲労試験の中心軸部分に対して、JIS Z2244(2009)に準拠したビッカース硬さ試験を実施した。試験力は10kgf=98.07Nとした。
[変形量測定試験]
変形量測定試験片の切り欠き幅W2を、窒化処理前に測定した。測定後、変形量測定試験片に対して、上記の窒化処理を実施した。窒化処理後の変形量測定試験片の切り欠き幅W2を再度測定した。窒化処理後の切り欠き幅W2から窒化処理前の切り欠き幅W2を差し引いた値を、変形量(μm)と定義した。変形量の絶対値が35μm以下である場合、変形量が少ないと判断した。
[試験結果]
表2に試験結果を示す。「疲労強度」は小野式回転曲げ試験で得られた疲労強度(MPa)を意味し、「変形量」は変形量測定試験で得られた変形量(μm)を意味する。
表2を参照して、試験番号A1〜試験番号A19では、化学組成が本発明の範囲内であって、式(1)及び式(2)も満たした。さらに、残留応力解放熱処理における熱処理温度は、600℃〜A点(℃)であった。そのため、試験番号A1〜A19のパーライト面積分率はいずれも50%を超え、セメンタイト分断率は40%以上であった。そのため、試験番号A1〜A19の疲労強度はいずれも510MPa以上であった。さらに、変形量の絶対値は35μm以下であった。
試験番号A20では、化学組成は本発明の範囲内であったものの、F1値が式(1)の下限未満であった。そのため、疲労強度が510MPa未満であった。
試験番号A21では、化学組成は本発明の範囲内であったものの、F1値が式(1)の上限を超えた。そのため、芯部硬さが270HVを超え、被削性の低下が懸念された。
試験番号A22では、化学組成は本発明の範囲内であったものの、F2値が式(2)の下限未満であった。そのため、硬化層の表面に近い領域の硬さが低くなり、疲労強度が510MPa未満であった。
試験番号A23では、化学組成は本発明の範囲内であったものの、F2値が式(2)の上限を超えた。そのため、硬化層の深さが浅くなり、疲労強度が510MPa未満であった。
試験番号A24,A25では、Mn量が低く、F2値も式(2)の下限未満であった。そのため、疲労強度が510MPa未満であった。
試験番号A26では、残留応力解放熱処理での熱処理温度がA点を超えた。そのため、セメンタイト分断率が40%未満であり、変形量の絶対値が35μmを超えた。残留応力解放熱処理がオーステナイト単相域で実施されたため、残留応力解放熱処理の冷却時に変態による残留応力が発生したためと考えられる。試験番号A26ではさらに、疲労強度が510MPa未満であった。
試験番号A27,A30では、残留応力解放熱処理を行わなかった。そのため、セメンタイト分断率が40%未満であり、変形量の絶対値が35μmを超えた。
試験番号A28、A29では、残留応力解放熱処理での熱処理温度が600℃未満であった。そのため、セメンタイト分断率が40%未満であり、変形量の絶対値が35μmを超えた。
試験番号A31では、残留応力解放熱処理での熱処理時間が20分未満であった。そのため、セメンタイト分断率が40%未満であり、変形量の絶対値が35μmを超えた。
表1中の鋼種Gの化学組成を有する丸ビレットを準備した。丸ビレットを1250℃に加熱した。加熱された丸ビレットに対して熱間鍛造を実施して、図7に示す直列4気筒用のクランク軸粗形材50(以下、粗形材という)を複数製造した。熱間鍛造での仕上げ温度は1100℃であった。熱間鍛造後の粗形材50を放冷した。このときの冷却速度は5℃/秒以下であった。
製造された複数の粗形材50に対して、表3に示す試験条件で窒化部品(クランク軸)を製造した。
[試験番号B1及びB4]
試験番号B1及びB4では、表3に示す条件(熱処理温度及び均熱時間)で残留応力解放熱処理を実施し、均熱後の粗形材50を放冷した。放冷時の平均冷却速度は、いずれも2℃/秒以下であった。
残留応力解放熱処理後の粗形材に対して、切削加工を実施した。具体的には、図7に示す粗形材のジャーナル部51の円周を切削加工した。切削加工では、切削後の全てのジャーナル部51の外周が同一線上に揃うように加工した。さらに、取り扱いを簡便にするために、ジャーナル部51の両端から先の部分を切断した。ジャーナル部51の全長は470mm、直径は76mmとした。
切削後の粗形材50に対して、実施例1と同じ条件で窒化処理を実施した。窒化処理後の粗形材50の変形量を次の方法で測定した。図8に示すとおり、粗形材50のジャーナル部51の両端2点を回転可能に支持した。粗形材50を、その中心軸周りに1回転した。このとき、ジャーナル部51の中央の外周面にダイヤルゲージ52を接触させ、高さ位置の変位を測定した。1回転して得られた高さ位置のうち、最大値と最小値との差分を変形量(μm)と定義した。
[試験番号B2]
試験番号B2では、熱間鍛造後の粗形材50に対して上述の切削加工を実施した。切削加工後の粗形材50に対して、残留応力解放熱処理を実施せずに、上述の窒化処理を実施した。窒化処理後の粗形材50の変形量を、試験番号B1と同じ方法で求めた。
[試験番号B3]
試験番号B3では、熱間鍛造後の粗形材50に対して上述の切削加工を実施した。切削加工後の粗形材50に対して、表3に示す条件で残留応力解放熱処理を実施した。均熱後の粗形材50を放冷した。このときの平均冷却速度は2℃/秒以下であった。残留応力解放熱処理後の粗形材50に対して、試験番号B1と同じ条件で窒化処理を実施した。窒化処理後の粗形材50の変形量を、試験番号B1と同じ方法で求めた。
[試験結果]
試験結果を表3に示す。表3を参照して、試験番号B1の化学組成は本発明の範囲内であり、F1及びF2値も式(1)及び式(2)の範囲内であった。さらに、製造条件も適切であった。そのため、変形量が35μm以下であり、曲がりの発生が抑制された。
一方、試験番号B2では、残留応力解放熱処理を実施しなかった。そのため、変形量が35μmを超えた。
試験番号B3では、切削加工後に残留応力解放熱処理を実施した。残留応力解放熱処理において曲がりが発生し、切削加工でその曲がりが除去されなかったため、変形量が35μmを超えた。
試験番号B4では、残留応力解放熱処理の熱処理温度がA点を超えた。そのため、変形量が35μmを超えた。残留応力解放熱処理が二相域温度で実施されたため、残留応力解放熱処理の冷却時に変態による残留応力が発生したためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
10,30 パーライトコロニー
20,40,40A,40B セメンタイト

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.25〜0.65%、Si:0.03〜0.5%、Mn:1.3〜2.7%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.10%、Cr:0.05〜0.60%、N:0.003〜0.025%、Al:0.05%以下、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%、Mo:0〜0.50%、V:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、及び、Ca:0〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する素材を準備する工程と、
    前記素材を熱間加工する工程と、
    熱間加工された前記素材に対して、600℃以上であって式(3)で定義されるA点以下の温度で20分以上均熱した後、冷却する残留応力解放熱処理を実施して、組織におけるパーライトの面積分率が50.0%よりも高く、組織において、パーライトコロニーのうち前記パーライトコロニー内のセメンタイトの総長さに対する4.0μm未満の長さのセメンタイトの総長さの比率が50%以上である特定パーライトコロニーの総面積の、前記パーライトコロニーの総面積に対する比率が40%以上である、窒化用鋼材を製造する工程と、
    前記残留応力解放熱処理後の前記窒化用鋼材に対して切削加工を実施する工程と、
    前記切削加工後の前記窒化用鋼材に対して窒化処理を実施する工程とを備える、窒化部品の製造方法。
    0.55≦C+0.15Si+0.2(Mn−1.71S)+0.1Cr≦1.10 (1)
    0.55≦Cr+0.5Si+0.35(Mn−1.71S)−0.3C≦1.30 (2)
    =723−10.7Mn+29.1Si−16.9Ni+16.9Cr (3)
    ここで、式(1)〜式(3)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載の製造方法であって、
    前記素材の化学組成は、
    Ti:0.001〜0.05%、及び、
    Nb:0.003〜0.05%からなる群から選択される1種又は2種を含有する、窒化部品の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の製造方法であって、
    前記素材の化学組成は、
    Mo:0.03〜0.50%、
    V:0.03〜0.50%、
    Cu:0.05〜0.50%、及び、
    Ni:0.05〜0.50%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、窒化部品の製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の製造方法であって、
    前記素材の化学組成は、
    Ca:0.0001〜0.005%を含有する、窒化部品の製造方法。
  5. 窒化用鋼材であって、
    質量%で、
    C:0.25〜0.65%、
    Si:0.03〜0.5%、
    Mn:1.3〜2.7%、
    P:0.05%以下、
    S:0.005〜0.10%、
    Cr:0.05〜0.60%、
    N:0.003〜0.025%、
    Al:0.05%以下、
    Ti:0〜0.05%、
    Nb:0〜0.05%、
    Mo:0〜0.50%、
    V:0〜0.50%、
    Cu:0〜0.50%、
    Ni:0〜0.50%、及び、
    Ca:0〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有し、
    前記窒化用鋼材の組織におけるパーライトの面積分率は50.0%よりも高く、
    前記窒化用鋼材の組織において、パーライトコロニーのうち前記パーライトコロニー内のセメンタイトの総長さに対する4.0μm未満の長さのセメンタイトの総長さの比率が50%以上である特定パーライトコロニーの総面積の、前記パーライトコロニーの総面積に対する比率が40%以上である、窒化用鋼材。
    0.55≦C+0.15Si+0.2(Mn−1.71S)+0.1Cr≦1.10 (1)
    0.55≦Cr+0.5Si+0.35(Mn−1.71S)−0.3C≦1.30 (2)
    ここで、式(1)及び式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  6. 請求項5に記載の窒化用鋼材であって、
    前記窒化用鋼材の化学組成は、
    Ti:0.001〜0.05%、及び、
    Nb:0.003〜0.05%からなる群から選択される1種又は2種を含有する、窒化用鋼材。
  7. 請求項5又は請求項6に記載の窒化用鋼材であって、
    前記窒化用鋼材の化学組成は、
    Mo:0.03〜0.50%、
    V:0.03〜0.50%、
    Cu:0.05〜0.50%、及び、
    Ni:0.05〜0.50%
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、窒化用鋼材。
  8. 請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の窒化用鋼材であって、
    前記窒化用鋼材の化学組成は、
    Ca:0.0001〜0.005%を含有する、窒化用鋼材。
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