JP2011094203A - クランクシャフトの製造方法及びクランクシャフト - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度鋼材を用いながら、加工精度を向上させた高強度クランクシャフトの製造方法を提供する。また、高強度鋼材を用いながら、鍛造荷重を低減することにより生産コストの増加を抑えた高強度クランクシャフトを提供する。
【解決手段】少なくともMo及びVを含み、Mo+V≧0.2wt%以上を含有する高強度鋼材を用いた高強度クランクシャフトの製造方法において、高強度鋼材を鍛造する鍛造工程と、鍛造工程の後、高強度鋼材を加工し、第1の温度においてN2ガスまたは大気中で高強度鋼材の加工歪を開放する歪開放処理工程と、歪開放処理工程後、第2の温度においてNH3ガス中で窒化処理を行い炭窒化物を析出させる窒化処理工程とを行う。
【選択図】なし
【解決手段】少なくともMo及びVを含み、Mo+V≧0.2wt%以上を含有する高強度鋼材を用いた高強度クランクシャフトの製造方法において、高強度鋼材を鍛造する鍛造工程と、鍛造工程の後、高強度鋼材を加工し、第1の温度においてN2ガスまたは大気中で高強度鋼材の加工歪を開放する歪開放処理工程と、歪開放処理工程後、第2の温度においてNH3ガス中で窒化処理を行い炭窒化物を析出させる窒化処理工程とを行う。
【選択図】なし
Description
本発明は、クランクシャフトの製造方法およびクランクシャフトに係り、特に、高強度鋼材を用いたクランクシャフトにおいて加工精度を向上させる技術に関する。
自動車用のクランクシャフトは、高い耐摩耗性と疲労強度が要求される。このため、特にディーゼルエンジン等に用いられるクランクシャフトは、高周波焼入れによって強化されることが多い。例えば、特許文献1に記載の方法では、高周波焼入れ後に冷間成形加工を行い、さらに窒化処理を施すことにより、疲労強度や寸法精度を向上させている。しかしながら、少量多品種生産などの場合には多種類の専用の高周波焼入れコイルが必要となるため、高周波焼入れを行わずに、窒化処理のみで強度を向上させることがある。この場合、同等排気量のガソリンエンジンに比較して高出力であるディーゼルエンジンに軟窒化処理を行ったクランクシャフトを適用するには、従来のガソリンエンジン用クランクシャフトの材料では所望の特性が得られないため、高強度及び高摺動特性を兼ね備える高強度鋼材を用いる必要がある。
また、ディーゼルエンジン等に用いられるクランクシャフトのエンジンの高出力化に対応する場合は、通常その軸径やカウンターウェイト等を拡大する必要があり、エンジンの寸法を拡大させることになる。クランクシャフトの軸径やカウンターウェイトが拡大すると、鍛造時に打ち抜き形状と金型形状の剛性バランスの変化による金型の開き等が起こりやすく、鍛造性が低下する。このため、クランクシャフトの軸径やカウンターウェイトおよびエンジンの寸法等を拡大する代わりに、クランクシャフトに高強度鋼材を用いて対応することがある。
一般に、高周波焼入れを用いた場合は焼入れ時の変形を研磨等により修正することができるが、窒化処理を用いた場合は、窒化による変形を冷間プレス等の冷間加工により矯正し、表面をラッピングペーパーや砥石等で加工して面粗度を所定の精度に仕上げる(特許文献2参照)。しかしながら、上記のように高強度鋼材を適用したクランクシャフトでは、窒化処理後の冷間加工による矯正が困難なため、加工精度が低下するという問題がある。さらに、高強度鋼材を適用したクランクシャフトでは、高強度鋼材が鍛造性を低下させる合金を含有するため、鍛造時の荷重が増加するという問題がある。鍛造荷重が増加すると、鍛造荷重の増加に対応した専用の設備を設けることや鍛造金型の寿命低下により生産コストが増加する。
したがって、本発明は、高強度鋼材を用いながら、加工精度を向上させた高強度クランクシャフトの製造方法を提供することを目的としている。また、本発明は、高強度鋼材を用いながら、鍛造荷重を低減することにより生産コストの増加を抑えた高強度クランクシャフトを提供することを目的としている。
本発明は、少なくともMo及びVを含み、Mo+V≧0.2wt%以上を含有する高強度鋼材を用いた高強度クランクシャフトの製造方法であり、高強度鋼材を鍛造する鍛造工程と、鍛造工程の後、高強度鋼材を加工し、第1の温度においてN2ガスまたは大気中で高強度鋼材の加工歪を開放する歪開放処理工程と、歪開放処理工程後、第2の温度においてNH3ガス中で窒化処理を行い炭窒化物を析出させる窒化処理工程とを有することを特徴とする。
具体的には、歪開放熱処理は300〜650℃において10〜180分間行うことが好ましい。歪開放熱処理の温度が300℃未満であると加工歪を開放し難い。また、歪開放熱処理を650℃付近において行えば加工歪の開放とともに炭化物を析出させることができ、析出硬化の効果が得られる。一方、熱処理温度が650℃を超えるとMoやVの析出物が過時効となり、強度が低下し易い。なお、熱処理時間は、加工歪の開放や炭化物の析出が十分に行われるように設定すればよい。
窒化処理は500〜650℃において30分以上行うことが好ましい。窒化処理の温度が500℃未満であると鋼材への窒素の固溶反応が進み難く、650℃を超えると鋼材の寸法変化が大きくなり易い。なお、窒化処理を500℃付近で行えば窒素の固溶反応のみが進み、650℃付近において行えば、窒素の固溶とともに炭窒化物を析出させることができ、析出硬化の効果が得られる。窒化処理時間は、窒素の鋼材への固溶反応や炭窒化物の析出が十分に行われるように設定すればよい。また、析出硬化は歪開放処理工程と窒化処理工程のどちらにおいて行ってもよい。
本発明の高強度クランクシャフトの製造方法において、高強度鋼材として、特願2009−034278号等に記載の鋼材を用いてもよい。具体的には、重量比で、C:0.1%以上0.4%以下、Si:0.3%以上1.0%以下、Mn:1.0%以上2.4%以下、Cr:0.1%以上1.0%以下、Mo:0.1%以上1.0%以下、V:0.05%以上0.5%以下、S:0.01%以上0.1%以下、P:0.02%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、C含有量を[C%]、Si含有量を[Si%]、Mn含有量を[Mn%]、Cr含有量を[Cr%]、Mo含有量を[Mo%]、V含有量を[V%]としたときに、下記数1〜数3において、Kf>3.80、Hf<19.5、Hg>18.8を満たし、鍛造工程後の金属組織においてベイナイトの面積率が70%以上となる鋼材であることが好ましい。
[数1]
Kf=5[C%]−0.168[Si%]+1.8[Mn%]+0.4[Cr%]+2.5[Mo%]+1.5[V%]−1
[数2]
Hf=24.96×([C%]−(1/18)[Si%]+(1/12)[Mn%]+(1/6)[Cr%]+0.01+(1/7)[Mo%]+(4/5)[V%])
[数3]
Hg=32.16×([C%]+(3/13)[Si%]+(1/22)[Mn%]+(1/18)[Cr%]+(3/10)[Mo%]+(5/7)[V%])
[数1]
Kf=5[C%]−0.168[Si%]+1.8[Mn%]+0.4[Cr%]+2.5[Mo%]+1.5[V%]−1
[数2]
Hf=24.96×([C%]−(1/18)[Si%]+(1/12)[Mn%]+(1/6)[Cr%]+0.01+(1/7)[Mo%]+(4/5)[V%])
[数3]
Hg=32.16×([C%]+(3/13)[Si%]+(1/22)[Mn%]+(1/18)[Cr%]+(3/10)[Mo%]+(5/7)[V%])
以下、上記鋼材の数値限定の根拠を本発明の作用とともに説明する。なお、以下の説明において「%」は「重量%」を意味するものとする。
C:0.1〜0.4%
Cは、強度を確保すると共に、窒化処理中に炭化物を析出して析出強化に寄与する元素である。しかしながら、C含有量が0.1%未満ではこれらの効果が小さい。一方、C含有量が0.4%を超えると、熱間鍛造後の硬度が過剰となり、機械加工性が低下し易い。よって、Cの含有量は0.1〜0.4%とした。
Cは、強度を確保すると共に、窒化処理中に炭化物を析出して析出強化に寄与する元素である。しかしながら、C含有量が0.1%未満ではこれらの効果が小さい。一方、C含有量が0.4%を超えると、熱間鍛造後の硬度が過剰となり、機械加工性が低下し易い。よって、Cの含有量は0.1〜0.4%とした。
Si:0.3%〜1.0%
Siは、鋼精錬時には脱酸剤として作用し、また、鋼材の焼入れ性向上に寄与すると共に、焼戻し軟化抵抗を高めて窒化処理後の強度を向上させる効果がある。しかしながら、Si含有量が0.3%未満の場合、その効果を十分に得難い。一方、Si含有量が1.0%を超えると、鍛造工程後の熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Siの添加量は0.3%〜1.0%とした。
Siは、鋼精錬時には脱酸剤として作用し、また、鋼材の焼入れ性向上に寄与すると共に、焼戻し軟化抵抗を高めて窒化処理後の強度を向上させる効果がある。しかしながら、Si含有量が0.3%未満の場合、その効果を十分に得難い。一方、Si含有量が1.0%を超えると、鍛造工程後の熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Siの添加量は0.3%〜1.0%とした。
Mn:1.0〜2.4%
Mnは、鋼材の焼入れ性向上効果が高いにもかかわらずMo、Vのように熱間鍛造成形性および機械加工性を大きく劣化させない元素である。本発明者等は、鋼材の化学成分中に、Mnを1.0%以上添加することにより、熱間鍛造成形性および機械加工性を工業的生産可能に維持したまま、熱間鍛造品のミクロ組織をベイナイト主体(70%以上)にすることができることを見出した。Mn含有量が1.0%未満の場合、これらの効果を十分に得難い。一方、Mn含有量が2.4%を超えると、鍛造工程後の熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Mnの添加量は1.0〜2.4%とした。
Mnは、鋼材の焼入れ性向上効果が高いにもかかわらずMo、Vのように熱間鍛造成形性および機械加工性を大きく劣化させない元素である。本発明者等は、鋼材の化学成分中に、Mnを1.0%以上添加することにより、熱間鍛造成形性および機械加工性を工業的生産可能に維持したまま、熱間鍛造品のミクロ組織をベイナイト主体(70%以上)にすることができることを見出した。Mn含有量が1.0%未満の場合、これらの効果を十分に得難い。一方、Mn含有量が2.4%を超えると、鍛造工程後の熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Mnの添加量は1.0〜2.4%とした。
Cr:0.1〜1.0%
Crは、鋼材の焼入れ性向上及び窒化性を高めることで表面硬度を増加し、疲労強度向上に寄与する元素である。しかしながら、Cr含有量が0.1%未満の場合、これらの効果を十分に得難い。一方、Cr含有量が1.0%を超えると、鍛造工程後の熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Crの添加量は0.1〜1.0%とした。
Crは、鋼材の焼入れ性向上及び窒化性を高めることで表面硬度を増加し、疲労強度向上に寄与する元素である。しかしながら、Cr含有量が0.1%未満の場合、これらの効果を十分に得難い。一方、Cr含有量が1.0%を超えると、鍛造工程後の熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Crの添加量は0.1〜1.0%とした。
Mo:0.1〜1.0%
Moは、鋼材の焼入れ性の向上及び熱間鍛造品のミクロ金属組織のベイナイト化に寄与するとともに、析出強化により窒化処理後の疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Mo含有量が0.1%未満の場合、これらの効果を十分に得難い。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、熱間鍛造成形性かつ熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Moの添加量は0.1〜1.0%とした。
Moは、鋼材の焼入れ性の向上及び熱間鍛造品のミクロ金属組織のベイナイト化に寄与するとともに、析出強化により窒化処理後の疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Mo含有量が0.1%未満の場合、これらの効果を十分に得難い。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、熱間鍛造成形性かつ熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Moの添加量は0.1〜1.0%とした。
V:0.05〜0.5%
VもMoと同様の効果を持つ元素である。V含有量が0.05%未満では、上記の効果を十分に得難い。一方、V含有量が0.5%を超えると、鍛造工程後の熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Vの添加量は0.05〜0.5%とした。
VもMoと同様の効果を持つ元素である。V含有量が0.05%未満では、上記の効果を十分に得難い。一方、V含有量が0.5%を超えると、鍛造工程後の熱間鍛造品の機械加工性が低下し易い。よって、Vの添加量は0.05〜0.5%とした。
S:0.01〜0.1%
Sは、鋼材中で硫化物を形成し、切削加工性を向上させる効果がある。しかしながら、S含有量が0.01%未満の場合、その効果を十分に得難い。一方、S含有量が0.1%を超えると、疲労強度が向上し難くなる。よって、Sの含有量は0.01〜0.1%とした。
Sは、鋼材中で硫化物を形成し、切削加工性を向上させる効果がある。しかしながら、S含有量が0.01%未満の場合、その効果を十分に得難い。一方、S含有量が0.1%を超えると、疲労強度が向上し難くなる。よって、Sの含有量は0.01〜0.1%とした。
P:0.02%以下
Pは鋼材中に含まれる不可避的不純物であり、P含有量が0.02%を超えると疲労強度が低下し易くなる。よって、Pの含有量は0.02%以下とした。
Pは鋼材中に含まれる不可避的不純物であり、P含有量が0.02%を超えると疲労強度が低下し易くなる。よって、Pの含有量は0.02%以下とした。
Kf>3.80
本発明者等の検討によれば、上記Kfは、ベイナイト生成安定化(フェライトが生成しない)の指標となることが判明している。図1は、Kf値の異なる鋼材からなるクランクシャフトを1000℃以上の温度で鍛造して、0.25℃/秒(大気放冷でとりうる冷却速度のうち比較的遅い冷却速度)で冷却したときのKf値とベイナイト率の関係を示すグラフである。図1から分かるように、Kf値が3.80を超えるとベイナイト率は70%以上となる。したがって、Kfの値を3.80より大きくすれば、ミクロ組織がベイナイト主体(70%以上)である熱間鍛造品を得やすい。
本発明者等の検討によれば、上記Kfは、ベイナイト生成安定化(フェライトが生成しない)の指標となることが判明している。図1は、Kf値の異なる鋼材からなるクランクシャフトを1000℃以上の温度で鍛造して、0.25℃/秒(大気放冷でとりうる冷却速度のうち比較的遅い冷却速度)で冷却したときのKf値とベイナイト率の関係を示すグラフである。図1から分かるように、Kf値が3.80を超えるとベイナイト率は70%以上となる。したがって、Kfの値を3.80より大きくすれば、ミクロ組織がベイナイト主体(70%以上)である熱間鍛造品を得やすい。
Hf<19.5
また、本発明者等は、上記Hfが熱間鍛造品硬度の指標であることに着目し、Hfの値を19.5未満にすることで、調質及び焼きならし等の熱処理が施されていない熱間鍛造品に対する切削等の機械加工が工業的に可能になることを見出した。ベイナイト主体の組織においては、Hfが19.5以上であると、合金元素の過剰添加となり、熱間鍛造品の硬度が300Hv以上に高硬度化して機械加工性が著しく低下し易い。よって、Hf<19.5とした。
また、本発明者等は、上記Hfが熱間鍛造品硬度の指標であることに着目し、Hfの値を19.5未満にすることで、調質及び焼きならし等の熱処理が施されていない熱間鍛造品に対する切削等の機械加工が工業的に可能になることを見出した。ベイナイト主体の組織においては、Hfが19.5以上であると、合金元素の過剰添加となり、熱間鍛造品の硬度が300Hv以上に高硬度化して機械加工性が著しく低下し易い。よって、Hf<19.5とした。
Hg>18.8
さらに、本発明者等は、窒化処理工程において窒素の固溶と同時に析出硬化によって内部硬度を高め、更なる高強度化を図ることを検討した。そこで、本発明者等は、上記Hgが窒化処理後の内部硬度の指標となることに着目し、Hgの値を18.8を超えて設定することによって、従来のクランクシャフトより高い強度が得られることを見出した。ベイナイト主体の組織においては、Hgが18.8以下では時効硬化後の内部硬度が280Hv以下となり、十分な疲労強度が得難い。よって、Hg>18.8とした。
さらに、本発明者等は、窒化処理工程において窒素の固溶と同時に析出硬化によって内部硬度を高め、更なる高強度化を図ることを検討した。そこで、本発明者等は、上記Hgが窒化処理後の内部硬度の指標となることに着目し、Hgの値を18.8を超えて設定することによって、従来のクランクシャフトより高い強度が得られることを見出した。ベイナイト主体の組織においては、Hgが18.8以下では時効硬化後の内部硬度が280Hv以下となり、十分な疲労強度が得難い。よって、Hg>18.8とした。
一般に、クランクシャフトの第1ウエイトと第2ウエイトの第1間隔と、第2ウエイトと第3ウエイトの第2間隔はほぼ同じに作製される。これに対し、高強度鋼材を用いたクランクシャフトの構造について本発明者らが検討したところ、クランクシャフトの第1ウエイトと第2ウエイトの第1間隔と、第2ウエイトと第3ウエイトの第2間隔において、第2間隔が第1間隔の約5〜10%小さくなるように設定することにより、鍛造荷重を低減できることが判明した。
したがって、本発明の高強度クランクシャフトは、少なくともMo及びVを含み、Mo+V≧0.2wt%以上を含有する高強度鋼材を用いて上記製造方法により得られるクランクシャフトであり、クランクシャフトの第1ウエイトと第2ウエイトの第1間隔と、第2ウエイトと第3ウエイトの第2間隔において、第2間隔が第1間隔の約5〜10%小さくなるように設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、鍛造後の加工による加工歪を歪開放熱処理を用いて開放させた後、窒化処理工程を行うため、高強度クランクシャフトの加工精度を向上させる効果が得られる。このため、窒化処理工程後に冷間加工等による寸法矯正が必要なくなり、工程数を削減できる。さらに、本発明によれば、高強度鋼材を用いながらも、クランクシャフトの第1ウエイトと第2ウエイトの第1間隔と、第2ウエイトと第3ウエイトの第2間隔において、第2間隔が第1間隔の約5〜10%小さくなるように設定することにより、鍛造荷重を低減することができる。これにより、鍛造性の低下や生産コストの増加を抑える効果が得られる。
本発明の高強度クランクシャフトの製造方法の一例を以下に説明する。まず、高強度鋼材を溶体化処理後、1000℃以上の温度において鍛造を行う(鍛造工程)。なお、溶体化処理および鍛造は、従来と同様の方法を用いればよい。得られた鍛造品を機械加工により成形し、機械加工による加工歪を歪開放熱処理を行うことにより開放する(歪開放処理工程)。このとき、歪開放熱処理後の変形が大きい場合は、窒化処理前に研磨等により修正を行う。歪開放熱処理後、窒化処理を行い、窒素を固溶させて炭窒化物を析出させ(窒化処理工程)、最終的な仕上げ加工を施す。
(歪開放処理工程)
鍛造品を機械加工により成形し、歪開放熱処理を行う。歪開放熱処理は、N2ガスまたは大気中、300〜650℃において10〜180分間行い、機械加工による加工歪を開放させる。このとき、歪開放熱処理を300℃付近において行えば加工歪を開放することができ、650℃付近において行えば加工歪の開放とともに炭化物を析出させることができ、析出硬化の効果が得られる。なお、熱処理温度が300℃未満であると、加工歪の開放が不十分となり易く、650℃を超えると、析出した炭化物が粗大化し、窒化処理後に過時効となり強度が低下し易い。熱処理時間は、加工歪の開放や析出硬化が十分に行われるように設定すればよい。
鍛造品を機械加工により成形し、歪開放熱処理を行う。歪開放熱処理は、N2ガスまたは大気中、300〜650℃において10〜180分間行い、機械加工による加工歪を開放させる。このとき、歪開放熱処理を300℃付近において行えば加工歪を開放することができ、650℃付近において行えば加工歪の開放とともに炭化物を析出させることができ、析出硬化の効果が得られる。なお、熱処理温度が300℃未満であると、加工歪の開放が不十分となり易く、650℃を超えると、析出した炭化物が粗大化し、窒化処理後に過時効となり強度が低下し易い。熱処理時間は、加工歪の開放や析出硬化が十分に行われるように設定すればよい。
(窒化処理工程)
歪開放処理工程後、変形が大きい場合は窒化処理前に研磨等により修正を行う。そして、NH3ガス中、500〜650℃において30分以上窒化処理を行う。この窒化処理において、窒素を鋼材に固溶させて炭窒化物を析出させることにより、表面の耐摩耗性や耐疲労強度を向上させる。なお、窒化処理温度が500℃未満であると窒素の固溶反応が進み難く、650℃を超えると、鋼材の変形量が著しく増加するため好ましくない。窒化処理時間は、窒素が鋼材に固溶し、炭窒化物が十分に析出するように設定すればよい。
歪開放処理工程後、変形が大きい場合は窒化処理前に研磨等により修正を行う。そして、NH3ガス中、500〜650℃において30分以上窒化処理を行う。この窒化処理において、窒素を鋼材に固溶させて炭窒化物を析出させることにより、表面の耐摩耗性や耐疲労強度を向上させる。なお、窒化処理温度が500℃未満であると窒素の固溶反応が進み難く、650℃を超えると、鋼材の変形量が著しく増加するため好ましくない。窒化処理時間は、窒素が鋼材に固溶し、炭窒化物が十分に析出するように設定すればよい。
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
重量比で、C:0.32%、Si:0.66%、Mn:1.03%、P:0.008%、S:0.068%、Cr:0.11%、Mo:0.64%、V:0.08%、および残部が鉄及び不可避的不純物からなる高強度鋼材を用意し、この高強度鋼材からなるクランクシャフトを1100℃において鍛造後、切削加工により成形を行った。次に、歪開放熱処理をN2ガス中、625℃において2時間行った。歪開放熱処理後、NH3ガス中、600℃において2時間、窒化処理を行った。そして、クランクシャフトの2箇所のジャーナル部(2J,3J)において曲がり方向および曲がり量の測定を行い、窒化処理工程後の寸法を調べた。この測定結果を図2に示す。また、窒化処理後のジャーナル部の曲がり方向および曲がり量について平均値および平均値+3σを求め、表1にまとめた。ここで、σは標準偏差であり、平均値+3σの範囲に全体の99.7%のデータが含まれている。
重量比で、C:0.32%、Si:0.66%、Mn:1.03%、P:0.008%、S:0.068%、Cr:0.11%、Mo:0.64%、V:0.08%、および残部が鉄及び不可避的不純物からなる高強度鋼材を用意し、この高強度鋼材からなるクランクシャフトを1100℃において鍛造後、切削加工により成形を行った。次に、歪開放熱処理をN2ガス中、625℃において2時間行った。歪開放熱処理後、NH3ガス中、600℃において2時間、窒化処理を行った。そして、クランクシャフトの2箇所のジャーナル部(2J,3J)において曲がり方向および曲がり量の測定を行い、窒化処理工程後の寸法を調べた。この測定結果を図2に示す。また、窒化処理後のジャーナル部の曲がり方向および曲がり量について平均値および平均値+3σを求め、表1にまとめた。ここで、σは標準偏差であり、平均値+3σの範囲に全体の99.7%のデータが含まれている。
図2は、ジャーナル部の曲がり方向と曲がり量との関係を示すグラフであり、窒化処理後の測定結果である。グラフ中、縦軸の上側を12時、下側を6時、横軸の右側を3時、左側を9時の方向として曲がり方向および曲がり量が示されている。図2および表1より、窒化処理後のジャーナル部の曲がり方向のばらつきは小さく、曲がり量も非常に小さい。このことから、切削加工時の加工歪を歪開放熱処理によって開放し、その後窒化処理を行うことによって、変形量が非常に小さく、加工精度の向上したクランクシャフトを得ることができるとわかる。
図3に、一例としてクランクシャフトの部分側面を示す。図3に示すように、クランクシャフト1には、第1ウエイト11と第2ウエイト12の間に第1間隔S1と、第2ウエイト12と第3ウエイト13の間に第2間隔S2が設けられている。本実施例において、上記のクランクシャフトを作製する際、第1間隔S1を18.3mm、第2間隔S2を16.9mmと第1間隔S1の約8%小さくなるように設定したところ、従来材(重量比で、C:0.48%、Si:0.33%、Mn:1.55%、P:0.011%、S:0.048%、Cr:0.09%、および残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼材)を用いた場合と同程度の荷重において鍛造を行うことができた。このことから、第2間隔を第1間隔よりも小さく設定する効果を確認できた。
1 クランクシャフト
11 第1ウエイト
12 第2ウエイト
13 第3ウエイト
S1 第1間隔
S2 第2間隔
11 第1ウエイト
12 第2ウエイト
13 第3ウエイト
S1 第1間隔
S2 第2間隔
Claims (5)
- 少なくともMo及びVを含み、Mo+V≧0.2wt%以上を含有する高強度鋼材を用いた高強度クランクシャフトの製造方法において、
前記高強度鋼材を鍛造する鍛造工程と、
前記鍛造工程の後、前記高強度鋼材を加工し、第1の温度においてN2ガスまたは大気中で前記高強度鋼材の加工歪を開放する歪開放処理工程と、
前記歪開放処理工程後、第2の温度においてNH3ガス中で窒化処理を行い炭窒化物を析出させる窒化処理工程と
を有することを特徴とする高強度クランクシャフトの製造方法。 - 前記歪開放処理工程は、300〜650℃において10〜180分間実施されることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法。
- 前記窒化処理工程は、500〜650℃において30分以上実施されることを特徴とする請求項1または2に記載のクランクシャフトの製造方法。
- 前記高強度鋼材は、重量比で、C:0.1%以上0.4%以下、Si:0.3%以上1.0%以下、Mn:1.0%以上2.4%以下、Cr:0.1%以上1.0%以下、Mo:0.1%以上1.0%以下、V:0.05%以上0.5%以下、S:0.01%以上0.1%以下、P:0.02%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、C含有量を[C%]、Si含有量を[Si%]、Mn含有量を[Mn%]、Cr含有量を[Cr%]、Mo含有量を[Mo%]、V含有量を[V%]としたときに、下記数1〜数3において、Kf>3.80、Hf<19.5、Hg>18.8を満たし、前記鍛造工程後の金属組織において、ベイナイトの面積率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法。
[数1]
Kf=5[C%]−0.168[Si%]+1.8[Mn%]+0.4[Cr%]+2.5[Mo%]+1.5[V%]−1
[数2]
Hf=24.96×([C%]−(1/18)[Si%]+(1/12)[Mn%]+(1/6)[Cr%]+0.01+(1/7)[Mo%]+(4/5)[V%])
[数3]
Hg=32.16×([C%]+(3/13)[Si%]+(1/22)[Mn%]+(1/18)[Cr%]+(3/10)[Mo%]+(5/7)[V%]) - 少なくともMo及びVを含み、Mo+V≧0.2wt%以上を含有する高強度鋼材を用いて請求項1に記載の方法により得られるクランクシャフトであり、クランクシャフトの第1ウエイトと第2ウエイトの第1間隔と、第2ウエイトと第3ウエイトの第2間隔において、第2間隔が第1間隔の約5〜10%小さくなるように設定されていることを特徴とする高強度クランクシャフト。
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