JP2005343329A - 衝突エネルギーの吸収性に優れた自動車パネル構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 パネル構造体の軽量化と強度、剛性、衝突エネルギーの吸収性などの特性を両立させた自動車パネル構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】 互いに接合されたアウタパネル2 とインナパネル3 とで構成される中空構造を有して、車体側面側に設置される自動車パネル構造体1aであって、アウタパネル2 が590MPa以上の引張強度を有する厚みが2mm 以下の高張力鋼板からなるとともに、インナパネル3 が180MPa以上の0.2%耐力を有する厚みが2mm 以下のアルミニウム合金板からなることである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車体側面側に設置される衝突エネルギーの吸収性に優れた自動車パネル構造体に関するものである。
周知の通り、自動車の車体を構成する構造材の多くに、基本的な特性である剛性や強度とともに、近年、車体の衝突に対する、衝突エネルギー吸収性を有していることが求められるようになっている。
これら自動車の車体構造材の内、ドア、センターピラーなどのピラー、ルーフサイドレール、サイドシルなど、車体側面側に設置される比較的大型のパネル構造体 (中空構造部材) は、基本的に、鋼やアルミニウム合金、あるいは樹脂などの板をプレス成形されたアウタパネルとインナパネルとを互いに接合し、中空構造乃至袋構造とした成形パネルにより構成される。図9 に自動車ドアの正面図を模式的に示す。図9 において、ドア1 は、プレス成形されたアウタパネル2 と、プレス成形されたインナパネル3 とを互いに接合し、中空構造乃至袋構造としたパネル構造体により構成される。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。この自動車の車体軽量化指向に伴い、これら成形パネルの板厚は、アウタパネルやインナパネルとも、薄肉化されている。これに伴い、成形パネルに用いられる鋼板やアルミニウム合金板は、高強度化されている。しかし、成形パネルの薄肉化は、パネル構造体としての強度、剛性の低下や、衝突エネルギー吸収性の低下を必然的に伴う。このため、高強度化、薄肉化による軽量化には大きな限界がある。
このため、前記車体側面側に設置される比較的大型のパネル構造体には、軽量化を図って薄肉化した場合にも、車室内の乗員を保護できる機能が要求されている。即ち、この中空構造部材が、衝突 (側突) による荷重を受けても、あまり屈曲せず、車室内側へ屈曲乃至変形する量を低減するような車体構造が要求されている。
これに対しては、従来から、上記車体側面側に設置される比較的大型の、鋼製パネル構造体の中空構造内 (内部) に補強部材などを設置して補強することが代表的である。
この例として、成形パネルにより構成されたセンターピラー、ドア、サイドシルなどの鋼製パネル構造体内部に、側面衝突方向に向かって中空形材の一部が張り出す湾曲形状をした、補強用アルミニウム合金中空形材を別途延在させることが提案されている (特許文献1参照) 。
また、鋼製センターピラーのパネル構造体内部に、別途、荷重伝達部を設けて、衝突時の荷重を吸収させる技術が提案されている(特許文献2参照)。
更に、車両の側面衝突時などに、座屈変形を防ぐために、鋼製センターピラー内に、鋼製あるいはアルミニウム合金製のリインフォースメントを設けた技術も提案されている(特許文献3参照)。
特開2004-51065号公報 (請求項、図1 、1〜2頁) 特開2003-2234 号公報 (請求項、図1 、1〜2頁) 特開2003-276639 号公報(請求項、図1 、1〜2頁)
しかしながら、座屈変形を抑えるために、パネル構造体内部に補強部材などを設ける手段は、これら部材により重量が増加することや、センターピラー自体の形状に影響を与えるという問題がある。また、車両のデザイン上、センターピラー内に設ける荷重伝達部やリインフォースメントの形状にも限界がある。
また、乗員保護の高まりから、さらに、衝突時の座屈変形抑制の要求レベルはより高くなっている。これに対して、これらパネル構造体内部に補強部材などを設ける手段では、座屈変形抑制に限界があるのが実状である。
因みに、自動車パネル構造体におけるアウタパネルとインナパネルの板厚を上げれば、座屈変形を抑制できるが、パネル構造体の軽量化ができず、軽量化と強度、剛性、衝突エネルギーの吸収性などの特性を両立させることができない。
したがって、本発明の目的は、自動車パネル構造体の軽量化と強度、剛性、エネルギーの吸収性などの特性を両立させた、自動車パネル構造体を提供しようとするものである。
この目的を達成するために、本発明衝突エネルギーの吸収性に優れた自動車パネル構造体の要旨は、互いに接合されたアウタパネルとインナパネルとで構成される中空構造を有して、車体側面側に設置される自動車パネル構造体であって、アウタパネルが900MPa以上の引張強度を有する厚みが2mm 以下の高張力鋼板からなるとともに、インナパネルが250MPa以上の0.2%耐力を有する厚みが2mm 以下のアルミニウム合金板からなることである。
車体側面側に設置される自動車パネル構造体は、アウタパネル側から衝突荷重が負荷された際に、アウタパネル側に圧縮応力が負荷されるとともに、インナパネル側に引張応力が負荷される。これに対して、本発明では、上記要旨のように、アウタパネルが高張力鋼板からなるとともに、インナパネルが高耐力ではあるが、高張力鋼板に比べれば低強度であるアルミニウム合金板からなる、ハイブリット構造を有している。
このため、例えば自動車の側突など、アウタパネル側から衝突荷重が負荷された際に、アウタパネル側に圧縮応力が負荷されても、高張力鋼板の座屈強度が高く、アウタパネルは容易に座屈しない。一方、アルミニウム合金板からなるインナパネル側は、高張力鋼板に比べれば低強度であるが、引張力を負担する部材となる。このため、座屈による荷重低下は生じず、負荷される引張力がアルミニウム合金板の引張強さに達して破断するまでは変形して、衝突エネルギーを吸収する。即ち、引張力を負担するインナパネル側のアルミニウム合金板は、引張力に対する引張強さと板厚さえあれば、衝突エネルギーを吸収できる。
このように、アウタパネル側から衝突荷重が負荷された際に、アウタパネルが容易に座屈しない場合、比較的容易に変形する傾向のあるアルミニウム合金板をインナパネルに用いれば、衝突エネルギー吸収量を大きくすることができる。この結果、例えばセンターピラーなどの前記車体側面側に設置される比較的大型のパネル構造体が、衝突 (側突) による荷重を受けた場合でも、パネル構造体が屈曲して車室内側へ変形する量を低減できる。
これに対して、従来のように、アウタパネルもインナパネルも高張力鋼板からなる場合にも、上記高張力鋼板とアルミニウム合金板との組み合わせと同様な衝突エネルギー吸収を得ることができる。しかし、上記アルミニウム合金板を用いた場合に比して、質量低減効果 (軽量化効果) が低くなる。一方、上記高張力鋼板とアルミニウム合金板との組み合わせと同等以下の質量に軽量化するためには、高張力鋼板を薄肉化せざるを得ない。そして、この場合、前記した通り、衝突エネルギー吸収能が、上記高張力鋼板とアルミニウム合金板との組み合わせに比して、低下する。
この現象は、アウタパネルがアルミニウム合金板、インナパネルが高張力鋼板からなる場合も同様である。この場合には、衝突荷重が負荷された際に、アルミニウム合金アウタパネルは極めて容易に (早期に) 座屈してしまい、荷重が一気に低下して、高張力鋼板インナパネルの引張強度が高い特性を活かせない。このため、アルミニウム合金アウタパネルによる衝突エネルギー吸収量は著しく小さくなり、高張力鋼板インナパネルの屈曲量 (パネル構造体の屈曲量) が増し、車室内側へ変形する量が却って大きくなる。
また、アウタパネルもインナパネルも、両方ともアルミニウム合金板からなる場合、材料や板厚の選択により、十分な衝突エネルギー吸収能と、変形量の抑制効果を得ることができる。しかし、アルミニウム合金板は鋼板に比べれば成形性が劣る。このため、特に形状が複雑なアウタパネルへの成形が難しく、場合によっては成形できないような場合も生じ、成形コストが、高張力鋼板を用いた場合に比して高くなる難点がある。
したがって、本発明自動車パネル構造体によれば、パネル構造体の軽量化と強度、剛性、衝突エネルギー吸収性などの特性を両立させることができる。
以下に、本発明の実施態様について、図面を用いて具体的に説明する。図1 、2 は、各々発明例を示し、センターピラーなどを模擬した自動車パネル構造体の軸線に直交する方向の横方向断面図である (自動車パネル構造体1aは図に向かって手前方向に立設) 。また、図1 は衝突荷重負荷前、図2 は衝突荷重負荷後の自動車パネル構造体の状態を各々示している。
また、図3 、4 は、各々比較例を示し、センターピラーなどを模擬した自動車パネル構造体の軸線に平行する方向の縦方向断面図である (自動車パネル構造体1b、1cは図の上下方向に立設) 。図3 、4 は、各々衝突荷重負荷後の自動車パネル構造体の状態を示し、図3 は自動車パネル構造体が屈曲している状態、図4 は自動車パネル構造体が座屈している状態を各々示している。
(自動車パネル構造体の構成)
先ず、図1 の発明例における自動車パネル構造体1aの構成から説明する。発明例における、自動車パネル構造体1aの構成自体は、前提として、従来のパネル構造体と基本的には同じである。即ち、車室外側に配置されたアウタパネル2 と、車室内側に配置されたインナパネル3 とから基本的に構成される。
アウタパネル2 とインナパネル3 とは、例えばHAT(帽子) 状など各々任意の形状に、予めプレス成形されている。これによって、アウタパネル2 は、平坦な頂部2aと、この頂部2aを囲む壁部2b、また、アウタパネル2 の外方へ延びるとともに壁部2bを囲む平坦なフランジ2cを有する。また、インナパネル3 も、平坦な頂部3aと、この頂部3aを囲む壁部3b、インナパネル3 の外方へ延びるとともに壁部3bを囲む平坦なフランジ3cを有する。
このようなアウタパネル2 とインナパネル3 とは、互いのフランジ2cとフランジ3c同士にて接合されて、中空部4 を有する中空構造乃至袋構造、あるいは閉断面構造として構成される。
5 はこのような自動車パネル構造体1aの接合手段乃至接合部を示す。即ち、アウタパネル2 のフランジ2cと、インナパネル3 のフランジ3cとが、パネル構造体1aの外周に亙って、接合手段乃至接合部5 によって一体に接合されている。この場合の接合手段5 は、ボルト・ナットなどの周知の機械的な接合手段、スポット溶接などの周知の溶接手段、更に、フランジ2c先端部の折り曲げによるフランジ3c先端部のかしめ手段などが、適宜あるいは組み合わせて選択される。
このような構成からなる自動車パネル構造体1aとしては、センターピラー以外のピラー、ルーフサイドレール、ドア、サイドシルなど、自動車車体の側面側に設置される比較的大型のパネル構造体が例示される。
なお、アウタパネルが高張力鋼板からなり、インナパネルが比較的大きな特別の凹凸を表面に有するアルミニウム合金板からなる、ハイブリット構造は、自動車のフードなどでは、既に採用されている。しかし、自動車のフードにおける、このハイブリット構造は、軽量化と歩行者衝突時の歩行者頭部保護などのためである。即ち、本発明のような、車室内の乗員を保護するために、車同士の衝突や、あるいは対物との車体衝突時など、大きな衝突荷重負荷時における、パネル構造体の座屈や屈曲を抑制する目的では無い。
また、本発明のハイブリット構造は、上記フードのアルミニウム合金インナパネルのような、比較的大きな特別の凹凸を表面に有してはおらず、歩行者衝突などの比較的小さな衝突荷重負荷時における、歩行者の頭部保護効果は無い。
自動車のフードでは、側突にせよ、前面衝突にせよ、車体の衝突時には、衝突荷重は、略水平配置されたフードに対して、基本的に、フード端部から略水平方向に負荷される。即ち、アウタパネル、インナパネルともに、略水平方向の圧縮荷重が同時に負荷される。したがって、本発明の車体側面側に設置された自動車パネル構造体の衝突時のように、アウタパネル側に圧縮応力が負荷されるとともに、インナパネル側に引張応力が負荷されることはない。このため、本発明のハイブリット構造は、車同士の衝突や、あるいは対物との車体衝突時など、自動車のフードへの大きな衝突荷重負荷時における、フードの座屈や屈曲防止とは、対象が異なる。
以上のような自動車パネル構造体1aの構成を前提として、本発明の特徴点について以下に説明する。本発明の特徴は、アウタパネルが900MPa以上の引張強度を有する厚みが2mm 以下の高張力鋼板からなるとともに、インナパネルが250MPa以上の0.2%耐力を有する厚みが2mm 以下のアルミニウム合金板からなることである。
(パネル板厚)
本発明自動車パネル構造体は、前提として、自動車パネル構造体の軽量化目的から、アウタパネルとインナパネルの板厚を、ともに2mm 以下とする。これら板厚を2mm を超えて厚くした場合、自動車パネル構造体の座屈変形を抑制できるが、前記したように、パネル構造体の軽量化ができず、軽量化と強度、剛性、衝突エネルギー吸収性などの特性を両立させることができない。
(ハイブリット構造)
本発明自動車パネル構造体は、また、アウタパネルが高張力鋼板からなるとともに、インナパネルが高耐力ではあるが、高張力鋼板に比べれば低強度であるアルミニウム合金板からなる、ハイブリット構造を有している。
図3 を用いて、このハイブリット構造の効果を説明する。図3 は、センターピラー中央部に対する側突など、アウタパネル2 側の中央部に衝突荷重 (図中右向きの矢印で示す) が負荷され、自動車パネル構造体1bが、元の点線で示す直線的な配置状態から、車室内方向に、全体が屈曲変形 (湾曲変形) している状態を示している。
ここにおいて、自動車パネル構造体1bの屈曲による、元の状態からの変形代 (変位量)dが小さいほど車内乗員に対する保護性が高いこととなる。
また、図3 のような衝突荷重の負荷の際には、アウタパネル2 側に、図中に向かい合う矢印で示す圧縮応力が負荷される一方、インナパネル3 側には、図中に離れ合う矢印で示す引張応力が負荷される。
これに対して、前記ハイブリット構造では、図2 に示す通り、センターピラーに対する側突など、アウタパネル2 側から衝突荷重 (図中右向きの矢印で示す) が負荷された場合に、アウタパネル2 側に圧縮応力が負荷されても、高張力鋼板の座屈強度が高く、アウタパネルは容易に座屈しない。より具体的には、アウタパネル2 の、平坦な頂部2a、壁部2b、またフランジ2cには、各々座屈が生じず、前記図3 のようなアウタパネル2 全体の屈曲変形 (湾曲変形) のみが生じる。
一方、アルミニウム合金板からなるインナパネル側は、高張力鋼板に比べれば低強度である。この結果、インナパネル側に衝突による引張応力が負荷されると、比較的容易に変形して、衝突エネルギーを吸収する。より具体的には、特に、衝突荷重方向に平行なインナパネル壁部3bが、図2 に示すように蛇腹状に変形して、衝突エネルギーを大きく吸収する。インナパネルによる衝突エネルギー吸収は他の部位の変形によっても生じるが、インナパネルによる衝突エネルギー吸収性は、このインナパネル壁部3bの蛇腹状の変形に依るところが大きい。
(パネル強度)
但し、このようなハイブリット構造の効果を発揮するためには、板厚2mm 以下を前提に、以下に説明するように、アウタパネルが900MPa以上の引張強度を有する高張力鋼板からなるとともに、インナパネルが250MPa以上の0.2%耐力を有するアルミニウム合金板からなることが必要である。
アウタパネルの高張力鋼板の引張強度が900MPa未満では、アウタパネルの強度が低過ぎ、前記した、アウタパネルもインナパネルもアルミニウム合金板からなる場合と大差なくなる。即ち、アウタパネル側から衝突荷重が負荷された際には、アウタパネルもインナパネルも座屈強度が低くなり、容易に座屈する。この結果、衝突荷重に応じて、パネル構造体が座屈し、破損あるいは破壊されて、車室内側へ飛散する可能性が高くなる。
これを、図4 を用いて、更に説明する。図4 は、前記図3 と同様、センターピラーに対する側突など、アウタパネル2 側から衝突荷重が負荷され、自動車パネル構造体1bが、元の点線で示す直線的な配置状態から、車室内方向に屈曲 (湾曲) している状態を示している。しかし、図4 では、屈曲だけではなく、自動車パネル構造体1bの中央部に座屈(断面の潰れ)が生じた状態を示している。前記アウタパネルの高張力鋼板の引張強度が900MPa未満では、このようなパネル構造体の座屈が生じ、パネル構造体が、この座屈部分 (中央部) から破損あるいは破壊されて、車室内側へ飛散する可能性が高くなる。
アウタパネルもインナパネルもアルミニウム合金板からなる場合も、この図4 に示す現象が生じる可能性が高くなる。
一方、インナパネルのアルミニウム合金板の0.2%耐力が250MPa未満では、アウタパネル側から衝突荷重が負荷された際に、アウタパネルが容易に座屈しない場合でも、インナパネルが容易に座屈し、衝突エネルギー吸収量を大きくできない。即ち、アウタパネル側からのインナパネルへの衝突荷重が、その伝達時間の遅れも含めて、比較的徐々に負荷された場合でも、インナパネルが容易に座屈し、衝突エネルギー吸収量を大きくできない。この結果、前記図3 に示した、自動車パネル構造体1bの屈曲による、元の状態からの変形代 (変位量)dが大きくなってしまう。
従来のように、アウタパネルもインナパネルも高張力鋼板からなる場合も、また、アウタパネルがアルミニウム合金板、インナパネルが高張力鋼板からなる場合も、同様に、前記図3 に示した現象が生じる可能性が高くなる。
したがって、以上説明したように、本発明自動車パネル構造体によれば、パネル構造体の軽量化と強度、剛性、衝突エネルギー吸収性などの特性を両立させることができる。
なお、本発明自動車パネル構造体では、軽量化を阻害しない範囲で、強度、剛性、衝突時のエネルギー吸収性などの特性をより向上させるために、必要に応じて、パネル構造体の中空構造内に、補強部材、荷重伝達部、リインフォースメントなどを設けること (併用すること) を許容する。
(高張力鋼板)
本発明で用いるアウタパネル用の高張力鋼板は、調質処理後に、900MPa以上の引張強度を有し、厚みが2mm 以下であれば、通常の高張力冷延鋼板が適用できる。ただ、本発明は、アウタパネルへのプレス成形を前提として、高張力冷延鋼板の中でも、プレス成形性 (張出成形性) や曲げ成形性、耐食性などに優れる、組成、組織のものが好ましい。
(アルミニウム合金板)
本発明で用いるインナパネル用のアルミニウム合金板は、調質処理後に、250MPa以上の0.2%耐力を有し、厚みが2mm 以下であれば、通常のアルミニウム合金冷延板が適用できる。ただ、前記鋼板と同様に、インナパネルへのプレス成形を前提として、アルミニウム合金板の中でも、プレス成形性 (絞り成形性) などに優れる、組成、組織のものが好ましい。この点、AA乃至JIS 規格に規定された、あるいは規定に類似の 3000 系、5000系、6000系等のアルミニウム合金が好適に用いられる。
これらの中でも、6000系アルミニウム合金板は、パネルへのプレス成形時には低耐力化により成形性を確保し、プレス成形後のパネルの塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できるBH性を有する。また、合金元素量が少ないために、廃材の元の6000系Al合金へのリサイクル性にも優れるなどの利点を有する。
以下に、本発明の実施例を説明する。
ドアの形状を前記図1 に示すようにモデル化し、アウタパネル2 とインナパネル3 との条件を、表1 に示すように材料と強度とを種々変えた場合の、荷重(kN)−変位(mm)関係、エネルギー吸収量(J) −変位(mm)関係、を各々FEM 解析により求めた。これらの結果を図5 〜8 に示す。
図5 は表1 の発明例A から比較例F までの荷重−変位関係を示す説明図、図6 は表1 の比較例G から比較例J までの荷重−変位関係を示す説明図、図7 は表1 の発明例A から比較例F までのエネルギー吸収量−変位関係を示す説明図、図8 は表1 の比較例G から比較例J までのエネルギー吸収量−変位関係を示す説明図、である。
また、表1 において、ハイテンとは高張力鋼板であり、記載強度は引張強度(MPa) である。また、アルミとは6000系(Al-Si-Mg 系) アルミニウム合金板であり、記載強度は0.2%耐力(MPa) である。
FEM 解析条件として、解析は 3点曲げの解析モデルを用い、汎用の動的陽解法ソフトLS-DYNA3D を用いて行った。
表1 および図5 、7 から明らかな通り、発明例A 、B は、アウタパネルが590MPa以上の、900MPaの引張強度を有する厚みが2mm 以下の高張力鋼板からなるとともに、インナパネルが180MPa以上の250MPaの0.2%耐力を有する厚みが2mm 以下のアルミニウム合金板からなっている。このため、発明例A 、B は、これら要件を満たさない、C からJ の比較例に比して、エネルギー吸収量が大きく、かつ、変位量が小さくなっている。
特に、図5 の荷重−変位関係において、アウタパネルの引張強度が高い発明例A の方が、引張強度が低い発明例B よりも、変位量が小さくなっている。また、比較例C は、アウタパネルの引張強度が低過ぎ、発明例B よりも、変位量が大きくなっている。したがって、変位量を小さくするための、アウタパネルの引張強度の臨界的な意義が分かる。
本発明とは逆に、アウタパネル側をアルミニウム合金板とした比較例D 、E 、F は、衝突荷重が負荷された際に、極めて容易に (早期に) 座屈してしまい、荷重が一気に低下して、高張力鋼板インナパネルの引張強度が高い特性を活かせていない。このため、衝突エネルギー吸収量は著しく小さくなり、高張力鋼板インナパネルの屈曲量が増し、変位量 (車室内側へ変形する量) が却って大きくなっている。
また、アウタパネルもインナパネルも高張力鋼板からなる比較例G 、H 、I 、J では、衝突エネルギー吸収量は、上記高張力鋼板とアルミニウム合金板との組み合わせの発明例A 、B と同様な衝突エネルギー吸収を得ることができている。ただ、比較例G 、H 、I 、J は、発明例A 、B と同等の質量に軽量化するために、高張力鋼板を薄肉化している。この結果、発明例A 、B に比して、変位量が却って大きくなっている。
Figure 2005343329
本発明によれば、パネル構造体の軽量化と強度、剛性、衝突エネルギーの吸収性などの特性を両立させた自動車パネル構造体を提供できる。このため、ドア、センターピラーなどのピラー、ルーフサイドレール、サイドシルなど、車体側面側に設置される比較的大型のパネル構造体に適用されて、自動車の軽量化と、乗員保護などの安全性の向上との両立に寄与するものである。
本発明に係る自動車パネル構造体の軸線に直交する方向の横方向断面図である。 図1のパネル構造体の衝突時の変形状態を示す、パネル構造体の軸線に直交する方向の横方向断面図である。 自動車パネル構造体の衝突時の荷重負荷と変形状態を示す、パネル構造体の軸線に平行する方向の縦方向断面図である。 自動車パネル構造体の衝突時の座屈状態を示す、パネル構造体の軸線に平行する方向の縦方向断面図である。 表1 の発明例A から比較例F までの荷重−変位関係を示す説明図である。 表1 の比較例G から比較例J までの荷重−変位関係を示す説明図である。 表1 の発明例A から比較例F までのエネルギー吸収量−変位関係を示す説明図である。 表1 の比較例G から比較例J までのエネルギー吸収量−変位関係を示す説明図である。 自動車ドアを示す模式図である。
符号の説明
1:自動車パネル構造体、2:アウタパネル、2a: 平坦な頂部、2b: 壁部、
2c: フランジ、3:インナパネル、3a: 平坦な頂部、3b: 壁部、3c: フランジ、
4:中空部、5:接合部、

Claims (3)

  1. 互いに接合されたアウタパネルとインナパネルとで構成される中空構造を有して、車体側面側に設置される自動車パネル構造体であって、アウタパネルが590MPa以上の引張強度を有する厚みが2mm 以下の高張力鋼板からなるとともに、インナパネルが180MPa以上の0.2%耐力を有する厚みが2mm 以下のアルミニウム合金板からなることを特徴とする衝突エネルギーの吸収性に優れた自動車パネル構造体。
  2. 前記用途が、ピラー、ルーフサイドレール、ドア、サイドシルから選択されるものである請求項1に記載の衝突エネルギーの吸収性に優れた自動車パネル構造体。
  3. 前記アルミニウム合金板が6000系アルミニウム合金である請求項1または2に記載の衝突エネルギーの吸収性に優れた自動車パネル構造体。
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