上記の凹部12とピン7との間に設けたベアリング13がニードルベアリングである場合は、コンロッド4の大端部5が大型になり、コンロッド4の重量増を招くから、前述の組立式のクランクシャフト1及び大端部一体式のコンロッド4による軽量化の効果が小さくなる。
以上のように、内燃機関の軽量化を図る場合、例えば、内燃機関の高回転化、高出力化、耐久性向上を進めるためには、主運動系部品の軽量化が重要であり、主運動系各部の軽量化を総合的に行わなければ相乗的な大きな効果が得られない。
また、主運動系部品の組み合わせにより、軽量化のみならず、他の効果、例えば、強度、組付性等の効果も期待されている。
本発明の課題は、内燃機関において、主運動系各部の総合的な軽量化により、高回転化、高出力化、耐久性向上を図るとともに、主運動系各部品の効果的な組み合わせにより、例えば、強度、組付性等を向上させることにある。
請求項1に係る発明は、主運動系部品としてのピストン及びこのピストンに連結するコンロッドを含み、ピストンに、球面継手を形成するために冠部の裏面に設けたピストン側継手部と、このピストン側継手部から冠部の縁に筒状に形成した周壁へ延ばした放射状リブとを備え、コンロッドに、ピストン側継手部とで球面継手を形成する球状小端部を備える、ことを特徴とする。
ピストンのピストン側継手部とコンロッドの球状小端部とで球面継手を形成することにより、従来のようにピストンに一対のピンボスを設け、このピンボスとコンロッド小端部とをピストンピンを介して連結する構造に比べて、本発明では、ピストンピンが不要になるとともに、ピストンのピストン側継手部に凹状の球面を形成し、この凹状の球面にコンロッドの球状小端部を嵌合させる構造にすれば、ピストン及びコンロッドの形状が簡素になる。
また、ピストンに放射状リブを備えることにより、ピストンに燃焼圧力又は慣性力が作用したときに、冠部及びピストン側継手部に発生する応力を放射状リブで分散させることができ、例えば、冠部の肉厚を大きくすることで応力集中を防ぐのに比べて、本発明では放射状リブを形成することで冠部の肉厚を小さくすることができる。
更に、球面継手と放射状リブとを組み合わせることにより、ピストン冠部の裏面の形状をより一様な形状とすることができて、冠部に発生する応力分布をほぼ均一にすることができる。
例えば、上記した従来のピンボス・ピンでの連結構造に放射状リブを組み合わせても、冠部の裏面の形状は一様な形状ではないため、例えば、ピンボスの付け根部分の応力が局部的に大きくなるというような不都合が発生し、冠部の応力分布を均一にすることはできない。
請求項2に係る発明は、主運動系部品としてのコンロッド、このコンロッドの大端部に連結するクランクピンを備えたクランクシャフト、大端部とクランクピンとの間に介在させたフロート軸受を含み、コンロッドを、環状の大端部を一体に備える一体型とし、クランクシャフトを、複数の構成部材からなる組立式であって、クランクピンの半径r2をクランクシャフト18の軸線141とクランクピン17の軸線142との距離Lより大きいか又は等しくして大径とし、且つクランクピン17を中空とし、フロート軸受31を、クランクピン17との間に、内周側油膜127を形成する内周側空間を設けるとともに、大端部との間に、外周側油膜を形成する外周側空間を設けたものとした、ことを特徴とする。
大端部一体型コンロッドにより、例えば、大端部を、ロッド部とコンロッドキャップとをボルト・ナットで結合する2分割構造としたものに比べて、本発明では、構造を単純にするとともに部品数を減らし、軽量化を図ることができる。
また、クランクシャフトを組立式とすることで、内部に中空部を容易に形成することができる。特に、クランクピンを中空にすれば、重量及び慣性モーメントを小さくすることができる。更に、クランクピンを大径とすることで、クランクシャフトを高剛性とすることができる。
また更に、組立式クランクシャフトのクランクピンと、大端部一体型コンロッドと、これらの間に介在させたフロート軸受によって、クランクピンが大径であっても、クランクピンとフロート軸受との間及びフロート軸受と大端部との間の摩擦損失を低減することができる。
例えば、大端部一体型コンロッドと、このコンロッドの大端部に圧入したブッシュと、組立式クランクシャフトとの組み合わせや、前述の大端部分割式コンロッドと、フロート軸受と、組立式クランクシャフトとの組み合わせは、組付性の点で、本発明の大端部一体型コンロッドと、フロート軸受と、組立式クランクシャフトとの組み合わせに対して劣る。
請求項3に係る発明は、主運動系部品としてのピストン、このピストンに連結するコンロッド、このコンロッドの大端部に連結するクランクピンを備えたクランクシャフト、大端部とクランクピンとの間に介在させたフロート軸受を含み、ピストンに、球面継手を形成するために冠部の裏面に設けたピストン側継手部と、このピストン側継手部から冠部の縁に筒状に形成した周壁へ延ばした放射状リブとを備え、コンロッドを、ピストン側継手部とで球面継手を形成する球状小端部と、環状の大端部とを一体に備える一体型とし、クランクシャフトを、複数の構成部材からなる組立式であって、クランクピンの半径をクランクシャフトの軸線とクランクピンの軸線との距離より大きいか又は等しくして大径とし、且つクランクピンを中空とし、フロート軸受を、クランクピンとの間に、内周側油膜を形成する内周側空間を設けるとともに、大端部との間に、外周側油膜を形成する外周側空間を設けたものとした、ことを特徴とする。
ピストンのピストン側継手部とコンロッドの球状小端部とで球面継手を形成することにより、従来のようにピストンに一対のピンボスを設け、このピンボスとコンロッド小端部とをピストンピンを介して連結する構造に比べて、本発明では、ピストンピンが不要になるとともに、ピストンのピストン側継手部に凹状の球面を形成し、この凹状の球面にコンロッドの球状小端部を嵌合させる構造にすれば、ピストン及びコンロッドの形状が簡素になる。
また、ピストンに放射状リブを備えることにより、ピストンに燃焼圧力又は慣性力が作用したときに、冠部及びピストン側継手部に発生する応力を放射状リブで分散させることができ、例えば、冠部の肉厚を大きくすることで応力集中を防ぐのに比べて、本発明では放射状リブを形成することで冠部の肉厚を小さくすることができる。
更に、球面継手と放射状リブとを組み合わせることにより、ピストン冠部の裏面の形状をより一様な形状とすることができて、冠部に発生する応力分布をほぼ均一にすることができる。
例えば、上記した従来のピンボス・ピンでの連結構造に放射状リブを組み合わせても、冠部の裏面の形状は一様な形状ではないため、例えば、ピンボスの付け根部分の応力が局部的に大きくなるというような不都合が発生し、冠部の応力分布を均一にすることはできない。
また更に、大端部一体型コンロッドにより、例えば、大端部を、ロッド部とコンロッドキャップとをボルト・ナットで結合する2分割構造としたものに比べて、本発明では、構造を単純にするとともに部品数を減らし、軽量化を図ることができる。
更に、クランクシャフトを組立式とすることで、内部に中空部を容易に形成することができる。特に、クランクピンを中空にすれば、重量及び慣性モーメントを小さくすることができる。また、クランクピンを大径とすることで、クランクシャフトを高剛性とすることができる。
更に、組立式クランクシャフトのクランクピンと、大端部一体型コンロッドと、これらの間に介在させたフロート軸受によって、クランクピンが大径であっても、クランクピンとフロート軸受との間及びフロート軸受と大端部との間の摩擦損失を低減することができる。
例えば、大端部一体型コンロッドと、このコンロッドの大端部に圧入したブッシュと、組立式クランクシャフトとの組み合わせや、前述の大端部分割式コンロッドと、フロート軸受と、組立式クランクシャフトとの組み合わせは、組付性の点で、本発明の大端部一体型コンロッドと、フロート軸受と、組立式クランクシャフトとの組み合わせに対して劣る。
請求項1に係る発明では、ピストンのピストン側継手部とコンロッドの球状小端部とで球面継手を形成することにより、従来のようにピストンに一対のピンボスを設け、このピンボスとコンロッド小端部とをピストンピンを介して連結する構造に比べて、本発明では、ピストンピンが不要になるとともに、ピストンのピストン側継手部に凹状の球面を形成し、この凹状の球面にコンロッドの球状小端部を嵌合させる構造にすれば、ピストン及びコンロッドの形状が簡素になり、ピストン自体と、ピストン及びコンロッドのそれぞれの連結構造とを軽量にすることができる。
また、ピストンに放射状リブを備えることにより、ピストンに燃焼圧力又は慣性力が作用したときに、冠部及びピストン側継手部に発生する応力を放射状リブで分散させることができ、例えば、冠部の肉厚を大きくすることで応力集中を防ぐのに比べて、本発明では放射状リブを形成することで冠部の肉厚を小さくすることができ、ピストンをより軽量にすることができる。
更に、球面継手と放射状リブとを組み合わせることにより、ピストン冠部の裏面の形状をより一様な形状とすることができて、冠部に発生する応力分布をほぼ均一にすることができ、最大応力を低減することができるから、単に、球面継手だけの効果と、放射状リブだけの効果とを合わせた以上の相乗効果を生むことが可能になる。
請求項2に係る発明では、大端部一体型コンロッドにより、例えば、大端部を、ロッド部とコンロッドキャップとをボルト・ナットで結合する2分割構造としたものに比べて、本発明では、構造を単純にするとともに部品数を減らすことができ、コンロッドを、製造を容易にしつつ軽量にすることができる。
また、クランクシャフトを組立式とすることで、内部に中空部を容易に形成することができ、しかもクランクシャフトを軽量にすることができる。特に、クランクピンを中空にすることで、重量及び慣性モーメントを小さくすることができ、内燃機関の高回転化、高出力化を図ることができる。
更に、クランクピンを大径とすることで、クランクシャフトを高剛性とすることができ、クランクシャフトの共振周波数を高めることができて、クランクシャフトの高回転化及び耐久性向上を図ることができる。
また更に、組立式クランクシャフトのクランクピンと、大端部一体型コンロッドと、これらの間に介在させたフロート軸受との組み合わせにより、軸受構造を小型にすることができ、軽量化を図ることができるとともにクランクシャフトへのコンロッドの組付性を向上させることができる。また、フロート軸受によって、クランクピンが大径であっても、クランクピンとフロート軸受との間及びフロート軸受と大端部との間の摩擦損失を低減することができ、内燃機関の耐久性向上と高回転化とを図ることができるから、単に、組立式クランクシャフトだけの効果と、大端部一体型コンロッドだけの効果と、フロート軸受だけの効果とを合わせた以上の相乗効果を生むことが可能になる。
請求項3に係る発明では、ピストンのピストン側継手部とコンロッドの球状小端部とで球面継手を形成することにより、従来のようにピストンに一対のピンボスを設け、このピンボスとコンロッド小端部とをピストンピンを介して連結する構造に比べて、本発明では、ピストンピンが不要になるとともに、ピストンのピストン側継手部に凹状の球面を形成し、この凹状の球面にコンロッドの球状小端部を嵌合させる構造にすれば、ピストン及びコンロッドの形状が簡素になり、ピストン自体と、ピストン及びコンロッドのそれぞれの連結構造とを軽量にすることができる。
また、ピストンに放射状リブを備えることにより、ピストンに燃焼圧力又は慣性力が作用したときに、冠部及びピストン側継手部に発生する応力を放射状リブで分散させることができ、例えば、冠部の肉厚を大きくすることで応力集中を防ぐのに比べて、本発明では放射状リブを形成することで冠部の肉厚を小さくすることができ、ピストンをより軽量にすることができる。
更に、球面継手と放射状リブとを組み合わせることにより、ピストン冠部の裏面の形状を点対称な形状にすることができ、より一様な形状とすることができて、冠部に発生する応力分布をほぼ均一にすることができ、最大応力を低減することができるから、単に、球面継手だけの効果と、放射状リブだけの効果とを合わせた以上の相乗効果を生むことが可能になる。
また更に、大端部一体型コンロッドにより、例えば、大端部を、ロッド部とコンロッドキャップとをボルト・ナットで結合する2分割構造としたものに比べて、本発明では、構造を単純にするとともに部品数を減らすことができ、コンロッドを、製造を容易にしつつ軽量にすることができる。
更に、クランクシャフトを組立式とすることで、内部に中空部を容易に形成することができ、しかもクランクシャフトを軽量にすることができる。特に、クランクピンを中空にすることで、慣性モーメントを小さくすることができ、内燃機関の高回転化、高出力化を図ることができる。
更に、クランクピンを大径とすることで、クランクシャフトを高剛性とすることができ、クランクシャフトの共振周波数を高めることができて、クランクシャフトの高回転化及び耐久性向上を図ることができる。
更に、組立式クランクシャフトのクランクピンと、大端部一体型コンロッドと、これらの間に介在させたフロート軸受との組み合わせにより、軸受構造を小型にすることができ、軽量化を図ることができるとともにクランクシャフトへのコンロッドの組付性を向上させることができる。また、フロート軸受によって、クランクピンが大径であっても、クランクピンとフロート軸受との間及びフロート軸受と大端部との間の摩擦損失を低減することができ、内燃機関の耐久性向上と高回転化とを図ることができるから、単に、組立式クランクシャフトだけの効果と、大端部一体型コンロッドだけの効果と、フロート軸受だけの効果とを合わせた以上の相乗効果を生むことが可能になる。
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る内燃機関の断面図であり、内燃機関10は、シリンダブロック11と、このシリンダブロック11に設けたシリンダボア12に移動自在に挿入したピストン13と、このピストン13に球面継手14を介して連結したコンロッド16と、シリンダブロック11の下部に回転自在に取付けるとともに中空のクランクピン17でコンロッド16をスイング自在に支持するクランクシャフト18とを備える。
シリンダブロック11は、上部に設けたシリンダ部21と、このシリンダ部21の内側に嵌合させるとともにシリンダボア12を形成した筒状のスリーブ22と、シリンダ部21の下部に取付けたアッパークランクケース23とからなる。
ここで、31はコンロッド16の大端部25とクランクピン17との間に介在させた一体成形で継ぎ目の無いフロート軸受、32はクランクシャフト18に設けたカウンタウエイト、33はシリンダブロック11の上部にヘッドガスケット(不図示)を介して取付けたシリンダヘッド、34は吸気バルブ、36は排気バルブ、37は燃焼室、38はアッパークランクケース23とでクランクケースを形成するためにアッパークランクケース23の下部にボルト41・・・(・・・は複数個を示す。以下同じ。)で取付けたロワークランクケース、42はロワークランクケース38の下部にボルト44・・・で取付けたオイルパンである。
図2は本発明に係る内燃機関のコンロッドとクランクシャフトとの連結構造を示す断面図であり、クランクシャフト18は、端部に設けた第1シャフト51と、この第1シャフト51にボルト52・・・で取付けた第2シャフト53とを備える組立式のものである。なお、54は第2シャフト53に取付けた第3シャフトである。
第1シャフト51は、シリンダブロック11(図1参照)の下部及びロワークランクケース38(図1参照)でフロート軸受56を介して支持したジャーナル軸57と、このジャーナル軸57の端部に設けたアーム部58と、このアーム部58から径方向に延ばしたカウンタウエイト32とからなり、ジャーナル軸57の内部に中空部59を設けたものである。
第2シャフト53は、アーム部61と、このアーム部61から側方に延ばした中空のクランクピン17と、アーム部61から径外方に延ばしたカウンタウエイト32とからなり、クランクピン17の内部に中空部62を設け、クランクピン17の端部を第1シャフト51のアーム部58に設けた凹部63に嵌合させるとともにクランクピン17の端部から内側に突出させたフランジ部53aを第1シャフト51のアーム部58に取付けたものである。なお、31a,31aはフロート軸受31に設けたオイル小穴、64は第3シャフト54のジャーナル軸57に設けた中空部である。
コンロッド16のクランクシャフト18への組付けは以下の手順で行う。
(1)クランクピン17にフロート軸受31を嵌める。
(2)フロート軸受31にコンロッド16の大端部25(詳しくは、大端部25に開けた大端部穴25a)を嵌める。
(3)フランジ部53aに第1シャフト51をボルト52で取付ける。
これで、コンロッド16のクランクシャフト18への組付けが完了する。
図3は本発明に係る内燃機関のピストン、コンロッド及びクランクシャフトの組立状態を示す斜視図であり、ピストン13にコンロッド16をスイング自在に取付け、クランクシャフト18にコンロッド16をスイング自在に取付けたことを示す。
ピストン16は、例えば、材質AC8A[JIS H 5202]の素材を鋳造にて製造し、熱処理としてT6処理を施した後に機械加工を施した部材である。
コンロッド16としては、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、又はチタン合金製が好適である。
図4は本発明に係る内燃機関のコンロッドとピストンとの連結構造を示す分解斜視図であり、ピストン13の冠部65の裏面側(詳細は後述する。)にコンロッド16の球状とした小端部66の上部を当て、この小端部66の下部を凹状の球面67,67(一方の符号67のみ示す。)を備える2つ割りのホルダ68で保持し、このホルダ68をナット部材71でピストン13の冠部65の裏面側に取付ける構造を示す。69は小端部66の球面である。
コンロッド16は、上記した小端部66と、環状とした大端部25と、これらの小端部66及び大端部25のそれぞれを一体に連結するロッド部73とからなる。
ホルダ68は、2つのホルダ半体68a,68aからなる。なお、68b、68bは2つのホルダ半体68a,68aを合わせる合わせ面である。
ホルダ68及びナット部材71は、球面継手14の一部を構成する部材である。
図5は本発明に係る内燃機関のコンロッド及びピストンの断面図であり、ピストン13は、円板状とした冠部65と、この冠部65の縁から下方に延ばした筒状で厚肉としたランド部74と、このランド部74から更に下方に延ばした筒状でランド部74よりも薄肉としたスカート部75,75と、コンロッド16の小端部66と滑り自在に嵌合する凹状半球面76を形成するために冠部65の裏面77に形成したカップ状支持部78と、これらのランド部74及びカップ状支持部78のそれぞれに渡すとともに冠部65の裏面77から下方に延ばしたリブ81・・・とを一体成形した部材である。
冠部65は、燃焼室37(図1参照)の一部を形成する冠面83を備える。
ランド部74は、冠部65の縁に、冠面83側から順に、トップランド74a、トップリング溝74b、セカンドランド74c、セカンドリング溝74d、サードランド74e及びオイルリング溝74fを設けた部分であり、トップリング溝74bにトップリングを嵌め、セカンドリング溝74dにセカンドリングを嵌め、オイルリング溝74fにオイルリングを嵌める。
カップ状支持部78は、下向きに開口する下向き凹部91と、この下向き凹部91の底面92に形成した前述の凹状半球面76と、下向き凹部91の内周面93に形成しためねじ94とを備え、凹状半球面76に当てたコンロッド16の小端部66を、下向き凹部91内に挿入したホルダ68の球面67,67で保持した後に、ナット部材71に設けたおねじ95をカップ状支持部78のめねじ94にねじ込むことで、ピストン13にコンロッド16をスイング自在に取付ける。
上記したカップ状支持部78、ホルダ68、ナット部材71及び小端部66は、前述の球面継手14を構成するものである。
ホルダ68は、回り止め用ピン(不図示)でカップ状支持部78に対して回転しないようにするとともに、ロッド73に当てる案内面(不図示)を設けることでピストン13をコンロッド16に対して回転しないようにする部材である。
ホルダ半体68aは、段部68cを備え、この段部68cにナット部材71の先端を当てることでホルダ半体68aを固定する。
ナット部材71は、前述のおねじ95と、端部外周面に工具を掛けて回すための係合凹部71a・・・とを備える。
コンロッド16は、大端部25及びロッド部73の内部に軽量化のために中空部96,97,98,99,100・・・を設け、小端部66の内部に軽量のための中空部101を設けた部材であり、大端部25に設けた取付穴102側から球面継手14の滑り面にオイルを供給するためにオイル穴103,104,105を設けたものである。
図6は本発明に係る内燃機関のピストンの斜視図であり、ピストン13における冠部65(図5参照)の裏面77にランド部74とカップ状支持部78とを繋ぐ複数のリブ81・・・を形成したことを示す。
このようなリブ81・・・を設けることで、ランド部74とカップ状支持部78とを強固に連結することができ、ピストン13の上部の剛性を高めることができ、また、冠部65の肉厚を薄くすることができて、ピストン13を軽量にすることができる。
図7は本発明に係る内燃機関のピストンの裏面を示す底面図であり、ピストン13におけるランド部74の内面74gとカップ状支持部78の外面78aとの間にリブ81A・・・,81B・・・(ここでは、リブ81をリブ81A,81Bとした。)を放射状に設けるとともに、ピストン13に対してコンロッド16がスイングする方向、即ち、図の左右方向と直交する方向にピストン中心線13aを引いたときに、このピストン中心線13aよりも左側であるピストン13のスラスト側と、ピストン中心線13aよりも右側であるピストン13の反スラスト側とで、リブ81A・・・とリブ81B・・・とを非対称に配置したことを示す。即ち、スラスト側のリブ81A・・・を密に配置し、反スラスト側のリブ81B・・・をリブ81A・・・よりも疎に配置した。
例えば、スラスト側では、隣り合う五つのリブ81Aのそれぞれのなす角度はθ1であり、反スラスト側では、隣り合う四つのリブ81Bのそれぞれのなす角度はθ2で、θ1<θ2となる。
このように、冠部65の裏面77に放射状のリブ81(即ち、リブ81A,81Bである。)を設けることで、ピストン13の冠部65に燃焼圧力が作用したときに、冠部65で発生する応力を複数のリブ81A・・・,81B・・・によって分散させることができ、冠部65の一部あるいはカップ状支持部78の一部(例えば、カップ状支持部78の付根)に応力が集中しない。従って、冠部65の肉厚を小さくしても応力が大きくならず、ピストン13の重量を軽減することができる。
また、リブ81A,81Bは、冠部65の裏面77にほぼ一様に設けたものであるから、冠部65に発生する応力を各リブ81A,81Bへ均等に分散することができ、応力の最大値を低くすることができる。
更に、放射状リブ81A,81Bを、スラスト側よりも反スラスト側の方が間隔が疎になるようにしたことで、間隔が疎な反スラスト側の放射状リブ81B・・・の全体の重量を軽減することができる。従って、ピストン13の更なる軽量化を図ることができる。
図8は本発明に係る内燃機関のフロート軸受の嵌合状態を示す断面図であり、クランクピン17の外周面17aと、コンロッド16の大端部25の大端部穴25aとの間にフロート軸受31を介在させたことを示す。
フロート軸受31は、複数のオイル小穴31aを周方向に等間隔に開けたものであり、クランクピン17の中空部62側からこれらのオイル小穴31aへオイルを導き、このオイルをフロート軸受31の摺動面に潤沢に供給する。
図9は本発明に係る内燃機関のフロート軸受の嵌合状態を示す要部拡大断面図であり、クランクピン17の外周面17aとフロート軸受31の内周面31bとの間の空間126に油膜127を介在させ、フロート軸受31の外周面31cとコンロッド16の大端部穴25aとの間の空間131に油膜132を介在させ、クランクピン17と大端部25との間にフロート軸受31を浮かせて配置したことを示す。
これにより、大端部25に対してクランクピン17が回転したときに、クランクピン17の摺動速度に対してフロート軸受31の摺動速度はほぼ半分になり、例えば、大端部側に滑り軸受を固定してこの滑り軸受とクランクピンとの間で摺動させるのに比べて、フリクションを低減することができ、摩擦損失を低減することができる。
図10(a),(b)は組立クランクシャフトの形状を示す説明図である。
(a)は実施例(本実施形態)のクランクシャフト18の形状を示す。
クランクシャフト18の軸線、即ち、ジャーナル軸57の軸線を141とし、クランクピン17の軸線を142とし、軸線141と軸線142との距離をL(この距離Lは、ピストン13(図1参照)のストローク量の半分に等しい。)とすると、ジャーナル軸57の半径r1は、距離Lよりも大きく(即ち、r1>L)、クランクピン17の半径r2は距離Lに等しい(即ち、r2=L)。この半径r2は距離Lより大きくてもよい(即ち、r2>L)。
(b)は比較例の組立式のクランクシャフト200の形状を示す。
クランクシャフト200の軸線、即ち、ジャーナル部201の軸線を221とし、クランクピン204の軸線を222とし、軸線221と軸線222との距離をJLとすると、ジャーナル部201の半径Jr1は、距離JLよりも小さく(即ち、Jr1<JL)、クランクピン204の半径Jr2は、距離JLよりも小さい(即ち、Jr2<JL)。
上記の(a),(b)から、実施例では、半径r1及び半径r2の少なくとも一方を距離Lよりも大きくすることで、ジャーナル軸57、クランクピン17の大径化を図ることができ、また、ジャーナル軸57とクランクピン17との径方向のオーバーラップ量を大きくすることができる。これにより、比較例に対して、第1シャフト51、第2シャフト53、第3シャフト54のそれぞれの接合部の断面積を大きくすることができ、これらを複数のボルトで結合するときに都合がよい。
以上の図1、図2、図5、図9及び図10で説明したように、本発明は、主運動系部品としてのピストン13、このピストン13に連結するコンロッド16、このコンロッド16の大端部25に連結するクランクピン17を備えたクランクシャフト18、大端部25とクランクピン17との間に介在させたフロート軸受31を含み、ピストン13に、球面継手14を形成するために冠部65の裏面77に設けたピストン側継手部としてのカップ状支持部78と、このカップ状支持部78から冠部65の縁に筒状に形成した周壁としてのランド部74へ延ばした放射状のリブ81(即ち、リブ81A,81B(図7参照)である。)とを備え、コンロッド16を、カップ状支持部78とで球面継手14を形成する球状の小端部66と、環状の大端部25とを一体に備える一体型とし、クランクシャフト18を、複数の構成部材としての第1シャフト51、第2シャフト53、第3シャフト54からなる組立式であって、クランクピン17の半径r2をクランクシャフト18の軸線141とクランクピン17の軸線142との距離Lより大きいか又は等しくして大径とし、且つクランクピン17を中空とし、フロート軸受31を、クランクピン17との間に、内周側油膜127を形成する内周側空間126を設けるとともに、大端部25との間に、外周側油膜132を形成する外周側空間131を設けたものとした、ことを特徴とする。
ピストン13のカップ状支持部78とコンロッド16の球状の小端部66とで球面継手14を形成することにより、従来のようにピストンに一対のピンボスを設け、このピンボスとコンロッド小端部とをピストンピンを介して連結する構造に比べて、本発明では、ピストンピンが不要になるとともに、ピストン13のカップ状支持部78に凹状半球面76を形成し、この凹状半球面76にコンロッド16の球状の小端部66を嵌合させる構造にすれば、ピストン13及びコンロッド16の形状が簡素になり、ピストン13自体と、ピストン13及びコンロッド16のそれぞれの連結構造とを軽量にすることができる。
また、ピストン13に放射状のリブ81を備えることにより、ピストン13に燃焼圧力又は慣性力が作用したときに、冠部65及びカップ状支持部78に発生する応力を放射状のリブ81で分散させることができ、例えば、冠部の肉厚を大きくすることで応力集中を防ぐのに比べて、本発明では放射状のリブ81を形成することで冠部65の肉厚を小さくすることができ、ピストン13をより軽量にすることができる。
更に、球面継手14と放射状のリブ81とを組み合わせることにより、ピストン13の冠部65の裏面77の形状をより一様な形状とすることができて、冠部65に発生する応力分布をほぼ均一にすることができ、最大応力を低減することができるから、単に、球面継手14だけの効果と、放射状のリブ81だけの効果とを合わせた以上の相乗効果を生むことが可能になる。
また更に、大端部一体型コンロッド16により、例えば、大端部を、ロッド部とコンロッドキャップとをボルト・ナットで結合する2分割構造としたものに比べて、本発明では、構造を単純にするとともに部品数を減らすことができ、コンロッド16を、製造を容易にしつつ軽量にすることができる。
更に、クランクシャフト18を組立式とすることで、内部に中空部62を容易に形成することができ、しかもクランクシャフト18を軽量にすることができる。特に、クランクピン17を中空にすることで、重量及び慣性モーメントを小さくすることができ、内燃機関10の高回転化、高出力化を図ることができる。
更に、クランクピン17を大径とすることで、クランクシャフト18を高剛性とすることができ、クランクシャフト18の共振周波数を高めることができて、クランクシャフト18の高回転化及び耐久性向上を図ることができる。
更に、組立式クランクシャフト18のクランクピン17と、大端部一体型コンロッド16と、これらの間に介在させたフロート軸受31によって、クランクピン17が大径であっても、クランクピン17とフロート軸受31との間及びフロート軸受31と大端部25との間の摩擦損失を低減することができ、内燃機関10の耐久性向上と高回転化とを図ることができるから、単に、組立式クランクシャフト18だけの効果と、大端部一体型コンロッド16だけの効果と、フロート軸受31だけの効果とを合わせた以上の相乗効果を生むことが可能になる。
10…内燃機関、13…ピストン、14…球面継手、16…コンロッド、17…クランクピン、18…クランクシャフト、25…大端部、31…フロート軸受、51,53,54…構成部材(第1シャフト、第2シャフト、第3シャフト)、65…冠部、66…球状小端部(小端部)、74,75…周壁(ランド部、スカート部)、77…裏面、78…ピストン側継手部(カップ状支持部)、81,81A,81B…放射状リブ(リブ)、126…内周側空間(空間)、127…内周側油膜(油膜)、131…外周側空間(空間)、132…外周側油膜(油膜)、141…クランクシャフトの軸線、142…クランクピンの軸線、L…距離。