JP2005336663A - 撥水剤用下塗り塗工液、その塗工層を有する撥水紙及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 スチレン系モノマーと3級アミノ基を有するビニル系モノマーを必須モノマー成分として合成されるカチオン性共重合体の4級化物と、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂とを混合し、この混合物を撥水剤用下塗り塗工液とする。
【選択図】 なし
Description
板紙の表面特性は、填料や微細繊維の含有量が多い古紙の配合率が高くなるに従って変化し、この種の板紙に撥水剤を塗工しても、それだけでは十分な撥水効果が得られなくなって来ている。ちなみに、段ボールの製造において、撥水剤を塗工した板紙(ライナー)に中芯原紙を貼合する際、コルゲーターの熱により撥水剤が溶融し、これがパルプ繊維間の空隙に浸透する事により撥水度が低下する現象を一般的に「撥水剤の沈み」と呼ぶが、古紙の配合量の多い板紙では撥水剤の沈みが起こりやすく、これが起こると十分な撥水効果が得られないのが通例である。
この撥水剤の沈みは、現在汎用されているアニオン系内添サイズ゛剤やアニオン系紙力剤、さらにはポリビニルアルコール等の使用量を増加させても抑制することができない。
さらに、塗工紙に耐水性を付与し、インキ受理性を向上させる上で有効な塗工液の製造方法として、ポリアルキレンポリアミン及び/又はポリアルキレンポリ尿素と二塩基性カルボン酸とを脱水素縮合させて第1反応生成物を得、この第1反応生成物と尿素との間で脱アンモニア反応を生起させて第2反応生成物を得、次いで第2反応生成物を例えばエピハロヒドリンと反応させて第3反応生成物を得た後、第3反応生成物を例えばホルムアルデヒドと反応させる処方が提案されている(特許文献3参照)。
(A)スチレン系モノマーと3級アミノ基を有するビニル系モノマーを必須モノマー成分として合成されるカチオン性共重合体の4級化物、
(B)ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、
上記の(A)成分及び(B)成分は、後述するとおり、水分散液又は有機溶媒分散液の状態で取得されるのが通例である。従って、この両成分を混合して本発明の撥水剤用下塗り塗工液を得る場合には、両成分の固形分比率を(A):(B)=4:96〜99:1の範囲とすることが好ましい。
本発明の撥水紙は、原紙に上記の下塗り塗工液の塗工層が設けられ、その塗工層上に撥水剤層を設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る撥水紙の製造方法は、原紙の少なくとも片面に上記下塗り塗工液を、固形分換算で0.01〜0.5g/m2の範囲の塗工量で塗工して乾燥し、然る後にその下塗り塗工層の表面に撥水剤を塗工して乾燥する工程を含むことを特徴とする。
すなわち、所望のモノマー比にあるスチレン系モノマーと3級アミノ基を有するビニルモノマーとを、所望によりこれらと共重合可能な他のビニルモノマーをこれに加えてラジカル重合触媒の存在下に、水中又は有機溶媒中60〜120℃で1〜10時間重合させてカチオン性共重合体を形成させる。次にカチオン性重合体を含有する反応混合物から所望により有機溶媒を留去させた後、これにエピハロヒドリンのような4級化剤を添加して40℃〜80℃で1〜5時間反応させることによって、水又は有機溶媒に分散した(A)成分を得ることができる。
使用可能な有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の油性有機溶媒が例示可能で低級アルコール系有機溶媒と水との混合溶媒も、上記した反応の反応溶媒として使用可能である。
スチレン系モノマー以外の疎水性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸、及びフマル酸のジアルキルジエステル類、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N−アルキル(メタ)アクリルアミド類、並びにメチルビニルエーテル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が任意モノマー成分として使用可能である。
ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、アリルアルコール、メタリルアルコール等の(メタ)アリルアルコール;アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、メタリルメチルエーテル、メタリルエチルエーテル等の、炭素数1〜18個のアルキル基をエーテル結合した(メタ)アリルエーテル;、アリルホルメート、アリルアセテート、アリルプロピオネート、メタリルホルメート、メタリルアセテート等の1〜18個の炭素原子を有する飽和カルボン酸の(メタ)アリルエステルなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上が任意モノマー成分として使用できる。
(A)成分を調製する際の共重合反応は、任意モノマー成分を使用した場合を含めて、反応の場に仕込んだモノマーは実質的に100%反応してカチオン性共重合体を形成している。
前記4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、エピクロロヒドリン、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−クロル−2−ヒドロキシアンモニウムクロライド等の有機ハロゲン化物、並びにジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のジアルキル硫酸が何れも使用可能である。
上に説明した合成例によって得られる本発明の(A)成分は、カチオン性共重合体の4級化物が水又は有機溶媒に分散した分散液の形態で取得される。
ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の典型的な合成例を例示すると、次のとおりである。
反応に供する脂肪族二塩基性カルボン酸及び/又はその誘導体とポリアルキレンポリアミンのモル比は前者1モルに対し、後者0.8〜1.05モルの範囲で選ばれる。
また、エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンがいずれも使用可能であるが実際上はエピクロロヒドリンの使用が好ましい。
念のため付言すると(A)成分及び/又は(B)成分を撥水剤に配合すると凝集を起こすことが有るので(A)成分及び/又は(B)成分と撥水剤との混合は避けることが好ましい。また、後述するCobb吸水度に悪影響を及ぼさない限り、本発明の下塗り塗工液には、その液性を改変する目的で上記2成分以外の成分を添加することができる。
下塗り塗工液の塗工量は、固形分換算で0.01〜0.5g/m2の範囲で選ばれる。塗工量が0.01g/m2未満である場合は本発明が企図している下塗り効果を十分発現させることができないことがある。下塗り塗工層の乾燥にはオンマシン、オフマシンを問わず、ドラムドライヤー、温風乾燥機、赤外線乾燥機等が使用できる。
ちなみに、ワックス系撥水剤の塗工量は、通常、固形分換算で0.1〜2g/m2の範囲で選択する。
本発明の効果により、古紙パルプ配合量の増加によって表面性が変化して起こる撥水剤の沈みが殆どない。本発明の撥水紙は、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー等の板紙が挙げられるが、特に古紙の含有量の50質量%以上、とりわけ80質量%以上を含有しているライナーを対象にした場合に効果が大きい。
濃度3.0%パルプスラリー(段ボール古紙 100% CSF;380、500℃灰分11.5%)に硫酸アルミニウムを絶乾パルプに対して固形分換算で1.5%、ロジンエマルジョンサイズ剤(商品名:コロパールEV−310、星光PMC(株)製)を絶乾パルプに対して固形分換算で0.3%添加し、白水にて1.0%スラリーに薄め、次いで濾水剤(商品名:デハイドラ―CQ−41B、星光PMC(株)製)を絶乾パルプに対して固形分換算で50ppm添加して、常法に従いTAPPIスタンダードシートマシンにより抄紙した。この時、パルプスラリーのpHは6.8であった。湿紙は3.5kg/cm2の圧力下で5分間脱水後、ドラムドライヤーにて所定の乾燥を行った。その後、温度23℃、湿度55%において24時間調湿後、坪量80g/m2、2分Cobb吸水度76g/m2の紙を得た。
濃度3.0%パルプスラリー(NUKP 100% CSF;380、500℃灰分2.0%)に硫酸アルミニウムを絶乾パルプに対して固形分換算で1.5%、ロジンエマルジョンサイズ剤(商品名:コロパールEV−310、星光PMC(株)製)を絶乾パルプに対して固形分換算で0.15%添加し、白水にて1.0%スラリーに薄め、次いで濾水剤(商品名:デハイドラ―CQ−41B、星光PMC(株)製)を絶乾パルプに対して固形分換算で50ppm添加して、常法に従いTAPPIスタンダードシートマシンにより抄紙した。この時、パルプスラリーのpHは6.8であった。湿紙は3.5kg/cm2の圧力下で5分間脱水後、ドラムドライヤーにて所定の乾燥を行った。その後、温度23℃、湿度55%において24時間調湿後、坪量80g/m2、2分Cobb吸水度28g/m2の紙を得た。
(A)成分:スチレン系モノマーと3級アミノ基を有するビニル系モノマーを必須モノマー成分として合成されるカチオン性共重合体の4級化物に該当するカチオンサイズ剤(商品名BLS−720、星光PMC(株)製)
(B)成分:ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂に該当する撥水加工適性向上剤(商品名OC、星光PMC(株)製)
上記の(A)成分と(B)成分を混合して混合比が異なる3種の下塗り塗工液を製造した。
下塗り塗工液 混合比(固形分)
A (A)/(B)=80/20
B (A)/(B)=50/50
C (A)/(B)=20/80
下塗り塗工液D:上記の(A)成分100部
下塗り塗工液E:上記の(B)成分100部
下塗り塗工液F:アニオン化ポリビニルアルコール100部
(商品名:ゴーセサイズP−7300、日本合成化学工業(株)製)
下塗り塗工液G:アニオン性表面サイズ剤100部
(商品名:コロパールM−150−38、星光PMC(株)製)
原紙(a)に下塗り塗工液A〜Gそれぞれを、No.3バーコーターにて表1に記載の塗工量で塗工した後、ドラムドライヤーにて70℃、20秒間乾燥を行った。得られた塗工紙を温度23℃、湿度55%において24時間調湿後、JISP8140;コブ吸水法により吸水度を測定した。測定結果を表1に記載した。
次に、原紙(a)上の各下塗り塗工層の上に、撥水剤(商品名:パラテックスNS−6,星光PMC(株)製)を塗工量が0.15g/m2及び0.3g/m2になるようにNo.3バーコーターで塗工し、しかる後、ドラムドライヤーにて70℃、20秒間乾燥を行って撥水紙を得た。また、同じ撥水剤を、下塗り塗工を全く施していない原紙(b)に、上と同じ条件で塗工して乾燥し、撥水紙を得た(比較例6参照)。
得られた各撥水紙を温度23℃、湿度55%において24時間調湿後、それぞれの撥水度を測定した。また、撥水加工適性を試験するため、140℃に設定した電気乾燥機に各撥水紙を入れて3分間及び6分間加熱処理をした後取り出し、しかる後、温度23℃、湿度55%において24時間調湿後、撥水度を測定した。結果を表1に示す。
Claims (6)
- 下記の2成分を含有する撥水剤用下塗り塗工液。
(A)スチレン系モノマーと3級アミノ基を有するビニル系モノマーを必須モノマー成分として合成されるカチオン性共重合体の4級化物
(B)ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂 - (A)成分及び(B)成分を(A):(B)=4:96〜99:1の固形分比率で含有する請求項1記載の撥水剤用下塗り塗工液
- 原紙に下記の2成分を含有する下塗り塗工層と撥水剤層からなる撥水紙。
(A)スチレン系モノマーと3級アミノ基を有するビニル系モノマーを必須モノマー成分として合成されるカチオン性共重合体の4級化物
(B)ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂 - 下塗り塗工液の塗布量が固形分換算で0.01〜0.5g/m2の範囲である請求項3記載の撥水紙。
- 原紙が古紙パルプを80質量%以上含有する請求項3記載の撥水紙。
- 下記の2成分を含有する撥水剤用下塗り塗工液を原紙に塗工、乾燥した後、下塗り塗工層上に撥水剤を塗工、乾燥する工程を含む下塗り塗工層と撥水剤層を併有する撥水紙の製造方法。
(A)スチレン系モノマーと3級アミノ基を有するビニル系モノマーを必須モノマー成分として合成されるカチオン性共重合体の4級化物
(B)ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂
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