JP2005336640A - 耐油紙及びその製造法 - Google Patents

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恒博 巽
Hitoshi Kamo
仁己 加茂
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Abstract

【課題】優れた耐油性を示し、特に折り曲げた場合の該折り曲げ部においても耐油性の低下が少ない、多層構造の安全性に優れた耐油紙及びその製造法を提供すること。
【解決手段】本発明の耐油紙は、紙基材表面上に、フッ素系耐油性層と耐水性を有するアクリル系樹脂層とをこの順で備える多層構造を設けたことを特徴とし、本発明の製造法は、紙基材表面上に、フッ素系耐油性剤を1回の塗工量が乾燥質量換算で0.01g/m2以上となるように少なくとも1回塗工した後、耐水性を有するアクリル系樹脂エマルジョンを1回の塗工量が乾燥質量換算で1.0g/m2以上となるように少なくとも1回塗工することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐油紙及びその製造法に関し、更に詳しくは、チョコレート、スナック菓子等の台紙、包装紙、フライドポテト、フライドチキン、ドーナツ、クラッカー、ケーキ等の紙箱や紙袋、ハンバーガー、天プラ等の惣菜類の包装紙等に好適に使用しうる食品用等に使用可能な耐油紙及びその製造法に関する。
油の浸透を抑制する機能を有する耐油紙は、各種揚げ物食品や油脂含有食品等の油を含む食品の包装用又は容器用等として広く用いられている。
このような耐油紙においては、高い耐油性及び安全性が望まれており、多数提案がなされている。しかし、最近、有機フッ素樹脂を内添した耐油紙の安全性が問題視されており、これに代わる紙基材表面に多層構造の耐油剤層を設けたものが提案されるようになっている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかし、安全性を確保するために、紙基材の表面に耐油剤層を設けた耐油紙においては、有機フッ素樹脂を内添した耐油紙に比較して十分な耐油性が得られ難い場合があり、特に、耐油紙を折り曲げて容器や台座紙等に用いる場合には、該折り曲げ部における耐油性の低下が大きいという問題が生じている。
特開平8−209590号公報 特開平9−87994号公報
従って本発明の目的は、優れた耐油性を示し、特に折り曲げた場合の該折り曲げ部においても耐油性の低下が少ない、多層構造の安全性に優れた耐油紙及びその製造法を提供することにある。
本発明によれば、紙基材表面上に、フッ素系耐油性層と耐水性を有するアクリル系樹脂層とをこの順で備える多層構造を設けたことを特徴とする耐油紙が提供される。
また本発明によれば、紙基材表面上に、フッ素系耐油性剤を1回の塗工量が乾燥質量換算で0.01g/m2以上となるように少なくとも1回塗工した後、耐水性を有するアクリル系樹脂エマルジョンを1回の塗工量が乾燥質量換算で1.0g/m2以上となるように少なくとも1回塗工することを特徴とする耐油紙の製造法が提供される。
本発明の耐油紙は、フッ素系耐油性層と耐水性を有するアクリル系樹脂層とをこの順で備える特定の多層構造を有するので、耐油性に優れ、しかも、折り曲げた際の折り曲げ部における耐油性の低下が十分に抑制される。
従って、チョコレート、スナック菓子等の台紙、包装紙、フライドポテト、フライドチキン、ドーナツ、クラッカー、ケーキ等の紙箱や紙袋、ハンバーガー、天プラ等の惣菜類の包装紙等に好適に使用することができる。
本発明の製造方法では、紙基材表面上に、特定量でフッ素系耐油性剤及びアクリル系樹脂エマルジョンを塗工するので、容易に本発明における優れた耐油性を示す耐油紙を得ることができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の耐油紙は、紙基材表面上に、フッ素系耐油性層と耐水性を有するアクリル系樹脂層とをこの順で備える特定の多層構造を有する。
本発明に用いる紙基材としては特に限定されず、少なくとも一方の表面に後述する特定の多層構造を設けることができるものであれば良く、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー、グラシン紙、パーチメント紙等が挙げられる。
前記フッ素系耐油性層は、耐油性又は耐水耐油性を有するフッ素系化合物を含み、毒性が少ない水系のものであれば良く、市販の製紙用フッ素系耐油剤を用いて形成することができる。
フッ素系耐油性層の塗布量は、使用する紙基材の種類や用途に応じて適宜選択することができるが、優れた耐油性を確保し、且つ紙の柔軟性等を保持するために、乾燥質量換算で0.05〜2.0g/m2の範囲にすることが好ましい。
フッ素系耐油性層には、紙基材への浸透性を良好にするために公知の浸透剤や、また、フッ素系耐油性層の平滑性等を良好にするために消泡剤等を配合することもできる。
前記耐水性を有するアクリル系樹脂層としては、耐水性を有し、好ましくは耐油性をも有するアクリル系樹脂層が好ましい。
このようなアクリル系樹脂層は、例えば、市販の紙基材用の食品安全基準を充足するアクリル系合成樹脂エマルジョンを用いることができ、他の合成樹脂エマルジョンとの混合物であっても良い。アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、アクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸等が挙げられる。
前記耐水性を有するアクリル系樹脂層には、無機顔料等を含有させることもできる。該無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、焼成クレー、無定形シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土等が挙げられる。
前記耐水性を有するアクリル系樹脂層の塗布量は、使用する紙基材の種類や用途に応じて適宜選択することができるが、優れた耐油性を確保し、且つ紙の柔軟性等を保持するために、乾燥質量換算で1.5〜20g/m2の範囲にすることが好ましい。
本発明の耐油紙は、好ましくは23℃、湿度50%の条件で測定した、平面部の耐油度(TAPPI UM−557によるキット値)が9以上であり、且つ折り曲げた際の該折り曲げ部の耐油度(TAPPI UM−557によるキット値)が8以上を示す。
本発明の耐油紙は、紙基材表面上に、フッ素系耐油性剤を1回の塗工量が乾燥質量換算で0.01g/m2以上、好ましくは0.05〜2.0g/m2となるように少なくとも1回塗工した後、耐水性を有するアクリル系樹脂エマルジョンを1回の塗工量が乾燥質量換算で1.0g/m2以上、好ましくは1.5〜20g/m2となるように少なくとも1回塗工する方法等により得ることができる。
各塗工は、例えば、キャレンダーロール、サイズプレスロール、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等の塗工機を用いて常法に従い行なうことができる。塗工回数は、1回の塗工量と目的とする塗工量を勘案して適宜選択することができる。
各塗工後においては、常法により乾燥等を行なった後に次の塗工を行なうことが好ましい。
尚、紙基材表面上に、前記フッ素系耐油剤を塗工する前に、前記アクリル系樹脂エマルジョンを塗工すると、即ち、塗工の順序を逆にすると、最初に形成されるアクリル系樹脂層上にフッ素系耐油性層を形成することができない。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
原紙として、染料を含まないピュアホワイト(大興製紙社製、坪量310g/m2)を用いた。フッ素系耐油性剤としては、チバスペシャリティケミカルズ社製の製紙用フッ素耐油剤(ローダイン2000(登録商標))25質量部、ポリビニルアルコールバインダー173質量部、浸透剤6.0質量部、消泡剤0.6質量部及び水150.4質量部の混合物を用いた。また、アクリル系樹脂エマルジョンとしては、(株)第一塗料製造所製のアクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名「ハービル B-5」)を用いた。
まず、前記原紙の一方の表面上に、キャレンダーロールを用いて前記フッ素系耐油剤を乾燥質量換算で0.1g/m2となるように塗工した後乾燥してフッ素系耐油性層を形成した。次いで、得られたフッ素系耐油性層上に、ロールコーターを用いて前記アクリル経樹脂エマルジョンを乾燥質量換算で4.4g/m2となるように2回塗工した後乾燥してアクリル系樹脂層を形成することで耐油紙を製造した。
得られた耐油紙、並びに比較として原紙自体、及び上記と同様にフッ素系耐油性層のみを形成し、アクリル系樹脂層を形成しなかった比較用耐油紙、フッ素系耐油性層を形成せずに、アクリル系樹脂層のみを形成した比較用耐油紙について、以下の方法に従って耐油度を測定した。結果を表1に示す。
平面部の耐油度:TAPPI UM−557法(キット法)によって塗工面を測定した。
折り曲げ部の耐油度:塗工面が外面となるようにして紙試料を2つに折り曲げ、その折り曲げ部分上を幅0.9mm、深さ0.5mm、圧力2.0kgf/cm2・secの条件で完全に折り目を付け、その後、折り目を広げ、折り目部分の耐油度をTAPPI.UM−557法によって測定した。各測定は写真撮影による目視により行なった。
実施例2
原紙及びアクリル系樹脂エマルジョンは実施例1と同一のものを用いた。フッ素系耐油性剤としては、チバスペシャリティケミカルズ社製の製紙用フッ素耐油剤(ローダイン2000(登録商標))50質量部、ポリビニルアルコールバインダー173質量部、浸透剤6.0質量部、消泡剤0.6質量部及び水150.4質量部の混合物を用いた。
まず、前記原紙の一方の表面上に、キャレンダーロールを用いて前記フッ素系耐油剤を乾燥質量換算で0.24g/m2となるように2回塗工した後乾燥してフッ素系耐油性層を形成した。次いで、得られたフッ素系耐油性層上に、ロールコーターを用いて前記アクリル経樹脂エマルジョンを乾燥質量換算で3.26g/m2となるように2回塗工した後乾燥してアクリル系樹脂層を形成することで耐油紙を製造した。
得られた耐油紙、並びに比較として原紙自体、及び上記と同様にフッ素系耐油性層のみを形成し、アクリル系樹脂層を形成しなかった比較用耐油紙、フッ素系耐油性層を形成せずに、アクリル系樹脂層のみを形成した比較用耐油紙について、実施例1と同様に耐油度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2005336640
表1より、本発明にかかる耐油紙は、優れた耐油度を示し、かつ折り曲げ部においても平面部に比べて耐油度の低下が十分に抑制されていることがわかった。

Claims (3)

  1. 紙基材表面上に、フッ素系耐油性層と耐水性を有するアクリル系樹脂層とをこの順で備える多層構造を設けたことを特徴とする耐油紙。
  2. 23℃、湿度50%の条件で測定した、平面部の耐油度(TAPPI UM−557によるキット値)が9以上であり、折り曲げた際の該折り曲げ部の耐油度(TAPPI UM−557によるキット値)が8以上であることを特徴とする請求項1記載の耐油紙。
  3. 紙基材表面上に、フッ素系耐油性剤を1回の塗工量が乾燥質量換算で0.01g/m2以上となるように少なくとも1回塗工した後、耐水性を有するアクリル系樹脂エマルジョンを1回の塗工量が乾燥質量換算で1.0g/m2以上となるように少なくとも1回塗工することを特徴とする耐油紙の製造法。
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