JP2004003050A - 耐油紙およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤を紙基材に外添し浸透させ、外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上となるようにする。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品包装用途等において使用される耐油紙及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐油紙としては、フッ素系耐油剤を紙に内添したものが広く利用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近になって、フッ素系耐油剤は加熱時に自然分解しにくい成分が発生するということが判明し、代替品の開発が望まれている。
【0004】
したがって、本発明の主たる課題は、フッ素系耐油剤と同等レベルの耐油性能を有する代替品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤を紙基材に外添し浸透させてなり、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴とする耐油紙。
【0006】
(作用効果)
本発明者らは、フッ素系耐油剤を用いた耐油紙の代替品に関して、アクリル系樹脂等を紙に塗布等により外添し、油脂成分に対するバリアー性を発揮するバリアー層を紙基材に形成する技術について鋭意研究していた。しかし、かかる油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤(以下、層形成耐油剤ともいう)は、これを紙に単に外添しても紙中には殆ど浸透せず、表面に膜を張るだけであった。その結果、これを用途に応じて折り曲げ加工したときに、当該折り目部分の表面膜にひび割れ等の破損が発生し、バリアー性が低下するという問題点が残されていた。すなわち、この問題点は層形成耐油剤を紙基材に外添することにより耐油性を付与する場合にのみ発生するものであり、従来のフッ素系耐油剤を内添し疎油性を付与した耐油紙では発生しないものである。
【0007】
この問題点を解決するために、耐油剤の外添量を増やすことも考えられたが、大幅なコストアップになることや、紙本来の柔軟性等の特性が損なわれることもあり、好ましい解決策ではなかった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴としたものである。かかる折り曲げ部におけるはつ油度を確保するためには、例えば親和性を考慮した紙基材及び耐油剤の組み合わせの選定、浸透性改善剤の使用、外添量・外添方法の選定・改良等によって、紙基材に対する耐油剤の浸透度合いを適切化することで達成できる。
【0009】
<請求項2記載の発明>
油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤に、紙基材に対する浸透性を改善する浸透剤を添加したものを、紙基材に外添し浸透させてなり、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴とする耐油紙。
【0010】
(作用効果)
バリアー層を形成する耐油剤は、一般に紙基材に対する浸透性が良好ではない。したがって単にこれを不特定の紙基材に外添しただけでは、本発明の折り目部分のはつ油度を満足するものを確実に得ることはできない。したがって、かかる場合には適切な浸透性改善剤を利用することで、折り目部分のはつ油度が3級以上である耐油紙を容易・確実に得ることができる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
ノーサイズ紙からなる紙基材または、耐油剤の紙基材に対する浸透性を改善する浸透剤を含有させた紙基材に、油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤を外添し浸透させてなり、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴とする耐油紙。
【0012】
(作用効果)
ノーサイズ紙はサイズ紙と比べて層形成耐油剤の浸透性が良好である。よって、かかるノーサイズ紙と層形成耐油剤とを組み合わせることで折り目部分のはつ油度が3級以上の耐油紙を得ることができる。また、前述の浸透剤は耐油剤の外添に先立って紙基材中に含有させておいても、耐油剤の浸透性改善効果を発揮させることができる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤であって、その製造時に紙基材に対する浸透性を改善したものを、紙基材に外添し浸透させてなり、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴とする耐油紙。
【0014】
(作用効果)
浸透剤を用いずに、層形成耐油剤自体の浸透性を改善したものを使用することでも、本発明の耐油紙を得ることができる。
【0015】
<請求項5記載の発明>
油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤を紙基材に外添し浸透させ、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上である耐油紙を得る、
ことを特徴とする耐油紙の製造方法。
【0016】
(作用効果)
請求項1記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳説する。
本発明の紙基材としては、パルプを主原料とするものであり、原料パルプとしてはLBKP、あるいはこれとNBKPとを混合したものが使用でき、必要に応じて化学合成繊維等を混合することができる。また、ノーサイズ紙、サイズ紙のいずれも用いることができる。もちろん、この種の技術分野で使用される各種の添加剤を使用できる。また、抄紙方法も公知の手法を採用できる。代表的な例としては、ヤンキー紙、クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー、新聞紙、グラシン紙、パーチメント紙などを挙げることができる。さらに、本発明における「紙基材」には、乾燥等を経て製造が完了した紙のほか、紙の構造を有しているものであれば乾燥前の状態のものも含まれる。よって、本発明における「外添」には、乾燥前における耐油剤の付与も含まれる。
【0018】
本発明の層形成耐油剤としては、油脂成分をバリアー(遮断)する層を形成するものであれば、特に限定されるものではない。代表的な例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル系官能基樹脂のほか、アクリルニトリル、ジメチルアミノエチルメタクリルレート、スチレン、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、澱粉、カルボキシメチルセルロース、アクリルニトリル−ブタジエンラバー、スチレン−ブタジエンラバー、塩化ビニリデンなどの単体、これらの共重合物、またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0019】
耐油剤の外添量は、紙基材・耐油剤の種類及び、製品に要求されるはつ油度レベルに応じて定まるものであり、一概にいえるものではないが、2.0〜20.0g/m2であるのが好ましい。特に、後述するように、耐油剤に浸透性を改善する浸透剤を添加する場合、浸透剤を紙基材中に含有させておく場合、紙基材としてノーサイズ紙を使用する場合、あるいは層形成耐油剤自体の浸透性を改善したものを使用する場合には、それを行わずに折り目部分のはつ油度を3級以上にするのに必要となる外添量と比べて、10wt%以上少ない外添量であることが経済的な観点から好適である。このことは、換言すればそれら浸透剤の添加等を行うことで、より少ない耐油剤使用量で効果的に折り目部分の耐油性が向上することを意味する。なお、本発明において紙基材の両面に耐油剤を外添することもできる。この場合には両面全体の外添量が上記量となるようにするのが好ましい。
【0020】
耐油剤の外添方法としては、上述のような層形成耐油剤を紙基材に対して外添できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、コンマコーター、サイズプレスコーター、ロッドコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ディップコーター等のほか、スプレー装置を用いることもできる。
【0021】
ただし、前述のとおり、単に耐油剤を不特定の紙基材に外添するだけでは、折り目部分のはつ油度を本発明の範囲まで向上させることはできない。このため本発明では、親和性を考慮した紙基材及び耐油剤の組み合わせの選定、浸透性改善剤の使用、外添量・外添方法の選定等によって、紙基材に対する耐油剤の浸透度合いを適切化する。特に好適な手法を以下に列挙するが、これらは必要に応じて組み合わせることもできる。
【0022】
(イ)紙基材に対する(耐油剤の)浸透性を改善する浸透剤を添加した耐油剤を紙基材に外添することにより、耐油剤自体の紙基材に対する浸透性が良好でなくても、折り目部分のはつ油度が3級以上である耐油紙を得ることができる。浸透剤としては、層形成耐油剤の表面張力を下げる効果のある薬品であれば、界面活性剤、濡れ性向上剤、浸透剤、レベリング剤、有機溶剤など種類を問わず使用できる。代表的な例としては、ポリエーテル、ポリオキシアルキレン、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレン、アセチレンジオール、アルキルエーテル、変成シリコーン、アルコール類などの単体、これらの変性物、またはこれらの混合物などを挙げることができる。などを挙げることができる。浸透剤の添加量は耐油剤の種類・量に応じて定まるものであるため、一概にはいえるものではないが、例えば外添量に対して0.5wt%以上であるのが好ましい。
【0023】
(ロ)前述の浸透剤は耐油剤の外添に先立って紙基材中に含有させておくことで、耐油剤に浸透剤を添加せずとも、耐油剤の外添時において浸透性が良好となるため、折り目部分のはつ油度が3級以上である耐油紙を得ることができる。
【0024】
(ハ)ノーサイズ紙はサイズ紙と比べて層形成耐油剤の浸透性が良好である。よって、かかるノーサイズ紙と層形成耐油剤とを組み合わせることでも折り目部分のはつ油度が3級以上の耐油紙を得ることができる。
【0025】
(ニ)浸透剤を用いずに、層形成耐油剤自体の浸透性を改善したものを使用することでも、本発明の耐油紙を得ることができる。
【0026】
(ホ)ブレードコーター、ロールコーター、サイズプレスコーター、ディップコーター等は、外添液の紙への浸透が促進される(外添液が紙中に押し込まれる力が大きい)ため、耐油剤の浸透性がある程度まで良好な場合には、敢えてこれらを組み合わせて使用することにより、本発明の耐油紙を得ることができる。
【0027】
かくして得られる耐油紙においては、紙基材の少なくとも表層を含む厚さ範囲に油脂成分バリアー層が形成される。よって、本発明では耐油剤の浸透性等によって、紙基材の表層のみにバリアー層が形成されたり(この場合バリアー層が他の部位に対する皮膜と見ることもできる)、紙基材の表面上までを含むバリアー層が形成されたり、紙基材の厚さ方向全体にバリアー層が形成されたりする場合もある。よって、これを折り曲げたとしても、紙表面上の層部分(皮膜部分)にひび割れが生ずるおそれはあるが、紙基材中の層部分については紙繊維による補強作用によりひび割れが発生し難い。その結果、折曲げ部におけるJ−TAPPINo.41によるはつ油度が3級以上である耐油紙を得ることができるのである。なお、かかる折曲げ部のはつ油度は5級以上であるのがより好ましい。またバリアー層は、紙中全体に形成されているほうが、耐油性の点で好ましいことはいうまでもない。
【0028】
他方、本発明の耐油紙は、その用途によって限定されるものではないが、例えば、フライドポテトやコロッケなどの揚げ物の包装または紙器用途、バター、マーガリン、クッキー、ハンバーガーなどの包装または紙器用途、パン、ケーキなどの包装または紙器用途、金属機械部品などの包装用途、ペットフード袋用途、油瓶用ラベル用途、化粧品包装用途、その他、紙への油の浸透を防止する必要のある包装、紙器用途に用いることができる。本発明の耐油紙は、特に、折り曲げ加工を施す必要のある用途に適していることはいうまでもない。
【0029】
【実施例】
下記の条件で、紙基材に薬品を外添し、はつ油度を測定した。
(条件等)
▲1▼ 紙基材として、名古屋パルプ(株)の純白ロール紙、金鯱(坪量:30g/m2)を使用した。
▲2▼ バリアー層形成耐油剤として、ジョンソンポリマー(株)のアクリル樹脂PDX−7326を使用した。
▲3▼ 浸透剤として、サンノプコ(株)のSNウエット970を▲1▼の樹脂に0.5、1.0、1.5%それぞれ添加した。
▲4▼ メイヤーバーを用いて▲3▼の外添液を原紙の紙面に外添した。所定の外添量となるようにバーNo.を選択した。
▲5▼ 平面部のはつ油度は、J−TAPPINo.41に記載のキット法で外添面を測定した。
【0030】
(折り目部分のはつ油度測定法)
a.外添面が外になるようにして2つに折り曲げる。この際、次述のb.段階で行う折目付けよりも強い力で折り目を付けてしまわないようする。
b.主要部分の大きさが巾178mm、直径100mmの円筒形で、円筒の同軸上に取っ手部が付いた、重さ12.5kgのローラーで、a.段階で折り曲げた試験紙の上に1往復転がして、完全に折り目を付ける。
c.試験紙の折り目を広げ、折り目部分のはつ油度を▲5▼に記載の方法に従って測定する。
【0031】
(従来例)
従来例として、製袋加工や形成加工時に折り目が付けられても、折り目部分のはつ油度が低下しない、フッ素系耐油剤を内添することで耐油効果を持たせた、名古屋パルプ(株)の中耐油紙45g/m2についてもはつ油度を測定した。
【0032】
(結果及び考察)
実験結果を実験条件とともに表1に示す。
【表1】
【0033】
製袋加工や形成加工時に折り目が付けられても、耐油性が問題にならない折り目部分のはつ油度レベルは、名古屋パルプ(株)の中耐油紙45g/m2の使用実績から判断して、はつ油度7級である。折り目部分のはつ油度7級を得るためには、浸透剤を添加せずにジョンソンポリマーのPDX−7326だけを外添した場合は5.6g/m2の外添量が必要である。
【0034】
これに対して、ジョンソンポリマーのPDX−7326にSNウエット970を添加した場合は、添加率1.0%の場合は外添量4.7g/m2で折り目部のはつ油度10級、添加率1.5%の場合は外添量5.1g/m2で折り目部のはつ油度12級以上であり、SNウエット970を添加しない場合より高い折り目部のはつ油度を得ることができる。
【0035】
また、折り目部のはつ油度7級を得るためには、添加率1.0%の場合は外添量3.5g/m2、添加率1.5%の場合は外添量2.8g/m2の外添量があれば良く、SNウエット970を添加しない場合より少ない外添量で折り目部のはつ油度7級を得ることができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によればフッ素系耐油剤と同等レベルの耐油性能を有し、折り曲げ加工したときの折り目部分の耐油性も十分にある耐油紙となる。
Claims (5)
- 油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤を紙基材に外添し浸透させてなり、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴とする耐油紙。 - 油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤に、紙基材に対する浸透性を改善する浸透剤を添加したものを、紙基材に外添し浸透させてなり、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴とする耐油紙。 - ノーサイズ紙からなる紙基材または、耐油剤の紙基材に対する浸透性を改善する浸透剤を含有させた紙基材に、油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤を外添し浸透させてなり、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴とする耐油紙。 - 油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤であって、その製造時に紙基材に対する浸透性を改善したものを、紙基材に外添し浸透させてなり、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上であることを特徴とする耐油紙。 - 油脂成分に対するバリアー層を形成する耐油剤を紙基材に外添し浸透させ、
外添面が外になるように2つに折り曲げ、幅178mm、直径100mm、重さ12.5kgのローラで折り目を付けたときの当該折り目部分の外添面における、J−TAPPINo.41に記載のキット法によるはつ油度が3級以上である耐油紙を得る、
ことを特徴とする耐油紙の製造方法。
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