JP2005330534A - 導電性および耐食性に優れたステンレス鋼およびそのステンレス鋼により形成された高分子電解質燃料電池セパレータ - Google Patents

導電性および耐食性に優れたステンレス鋼およびそのステンレス鋼により形成された高分子電解質燃料電池セパレータ Download PDF

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Abstract

【課題】 高分子電解質燃料電池セパレータの素材として好適な優れた導電性と耐食性を兼備したステンレス鋼を提供する。
【解決手段】 本発明のステンレス鋼は、mass%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.040%以下、S:0.003%以下、Ni:2.0〜8.0%、Cr:20〜30%、Mo:1.0〜8.0%、Cu:1.0〜8.0%、Ti:0.50〜2.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる。前記ステンレス鋼のNiを8.0超〜30%、Crを20〜35%としてもよい。さらにAl:1.0%以下、あるいはさらにN:0.40%以下を複合添加することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高分子電解質燃料電池用セパレータなどの導電性、耐食性が要求される電気部品の素材として好適に用いられるステンレス鋼に関する。
水素と酸素を電気化学的に反応させることにより電気を取り出す燃料電池は、CO2 の排出を大きく低減することが可能な技術であると共に、従来の内燃機関に比べて効率が高く、静粛性に優れる他、大気汚染の原因となるNOX 、SOX 、PM等の排出量が少ないという特徴を有している。このため、クリーンなエネルギー変換装置として国際的にも研究開発が精力的に進められており、これまでりん酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池などが開発されてきているが、近年、自動車用や家庭用など小型の発電に向いたものとして、高分子電解質燃料電池が注目を集めている。高分子電解質燃料電池が注目されるようになったのは、一段と性能が向上した固体高分子電解質膜を用いることによって電池の出力密度が飛躍的に向上し、高効率という従来からの燃料電池の特性に加え、小型化、低温作動が可能となったからである。
前記高分子電解質燃料電池の基本構造は、図1に示すように、電子を通さず水素イオンのみを通す固体高分子電解質膜1と、前記固体高分子電解質膜1に接触するようにその両側面に付設された、アノード(負極または燃料極と呼ばれることがある。)側ガス拡散電極2およびカソード(正極または空気極と呼ばれることがある。)側ガス拡散電極3と、前記アノード側、カソード側ガス拡散電極2,3の外側面に接触するように設けられたアノード側、カソード側セパレータ4,5とを備えている。
前記アノード側ガス拡散電極2およびカソード側ガス拡散電極3は、ガス透過性および導電性を有する多孔体で形成されており、前記固体高分子電解質膜1側にはPtまたはPt−Ru合金触媒が担持されている。また、前記固体高分子電解質膜1の外周部と前記セパレータ4,5の外周部とはガスケット6,7を介して気密に連結されている。前記アノード側セパレータ4の内面には、水素(燃料)ガスの供給口8、排出口9に連通し、水素をアノード側ガス拡散電極2に供給するためのガス供給溝10が、一方カソード側セパレータ5の内面には空気(あるいは酸素ガス)の供給口11、排出口12に連通し、空気(酸素ガス)をカソード側ガス拡散電極3に供給するためのガス供給溝13が形成されている。なお、前記貴金属触媒は、ガス拡散電極側に限らず、固体高分子電解質膜側に担持させるようにしてもよい。
水素ガスがアノード側セパレータ4を通してアノード側ガス拡散電極2に供給されると、水素は触媒の助けを借りて電子と水素イオンに分離され、水素イオンのみが固体高分子電解質膜1を通過する。このとき、電子はアノード側ガス拡散電極2、アノード側セパレータ4、負荷(図示省略)、カソード側セパレータ5、カソード側ガス拡散電極3を通って再び触媒の助けを借りて、カソード側セパレータ5から供給された酸素を含む空気と水素イオンと反応し水になる。前記高分子電解質燃料電池の構造は1つの構成単位、すなわち単位電池(セル)となっており、この単位電池を数十〜数百枚直列につなぐことにより所要電力を得ている。
このように前記アノード側、カソード側セパレータ(特にアノード側、カソード側の区別を要しない場合は、両者を併せて単に「セパレータ」と呼ぶ。)は隣り合う単位電池間を電気的に接続するという集電体としての役目だけでなく、セルの外壁構造部材として、また水素や空気を供給する通路の役目も果たしており、機械的強度のほか、導電性、高分子電解質燃料電池のおかれる腐食環境に対する耐食性が要求される。従来、セパレータは、黒鉛材にフェノール樹脂を含浸させた材料が用いられていたが、製造コストが高く、水素不透過性に劣り、特に機械的強度が不十分であるという問題がある。
そこで、近年、前記セパレータを導電性を備えたステンレス鋼で形成することが試みられている。例えば、特開2000−256808号公報(特許文献1)には、Cr:30%以下を含有し、さらに必要に応じてMo:10%以下とNi:25%以下との1種以上を含有し、かつこれらの成分が10−0.3×([Cr%]+3×[Mo%]+0.05×[Ni%]≦5の範囲に規制されたステンレス鋼が、また特開2001−214286号公報(特許文献2)には、ステンレス鋼表面に、導電性を有するM236型、M4C型、M2C型、MC型炭化物系金属介在物およびM2B 型硼化物系金属介在物のうち1種以上を露出させたステンレス鋼が、また特開2003−223904号公報には、C:0.03%以下、N:0.03%以下、C+N:0.03%以下、Cr:16〜45%、Mo:0.5〜3.0%を含有し、さらに必要によりAgを0.001〜0.1%含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼が提案されている。また、特開2004−2960号公報(特許文献4)には、Cr:16.0〜40.0%、Ni:5.0〜26.0%、Cu:0.2〜6.0%、残部が実質的にFeからなり、Cuリッチ相が0.2体積%以上の割合でマトリックスに分散析出したステンレス鋼が提案されている。
特開2000−256808号公報 特開2001−214286号公報 特開2003−223904号公報 特開2004−2960号公報
しかしながら、前記特許文献1、3のステンレス鋼は、高分子電解質燃料電池のおかれる酸化性酸の腐食環境では、強固な不働態被膜が形成され、セパレータの接触抵抗の低減が不十分となっている。さらに特許文献3のステンレス鋼においてAgを添加した場合、熱間加工時に鋼材に割れが発生し易く、生産性の低下が著しい。一方、特許文献2のステンレス鋼は、比較的良好な導電性、耐食性が得られるものの、導電性金属介在物を析出させるため、加工時に割れが発生し易く、やはり生産性に問題がある。また、導電性金属介在物を投射することによって、鋼表面に露出させた場合、その後の加工で当該介在物の脱落が著しく、導電性の低下が著しい。また、特許文献4のオーステナイト系ステンレス鋼も高分子電解質燃料電池の腐食環境では耐食性が十分とは言えない。
本発明は、かかる問題に鑑みなされたもので、加工性を損なうことなく、優れた導電性と耐食性を兼備したステンレス鋼および高分子電解質燃料電池セパレータを提供することを目的とする。
本発明者は、高分子電解質燃料電池のセパレータがおかれている腐食環境を模擬した酸化性酸による腐食試験を実施した結果、1.0〜8.0%のCuを含有するステンレス鋼組成において、Tiを0.50〜2.0%複合添加することによって、あるいはさらに適量のAl、Nを複合添加することで、ステンレス鋼の表面に形成される不働態化被膜が優れた耐食性と導電性とを兼備するように改質されることを知見した。本発明はかかる知見を基に完成されたものである。
すなわち、本発明の第1のステンレス鋼は、二相ステンレス鋼組成を提供するものであり、mass%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.040%以下、S:0.003%以下、Ni:2.0〜8.0%、Cr:20〜30%、Mo:1.0〜8.0%、Cu:1.0〜8.0%、Ti:0.50〜2.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるものである。
また、本発明の第2のステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼組成を提供するものであり、mass%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.040%以下、S:0.003%以下、Ni:8.0超〜30%、Cr:20〜35%、Mo:1.0〜8.0%、Cu:1.0〜8.0%、Ti:0.50〜2.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるものである。
前記第1、第2のステンレス鋼において、耐食性をさらに向上させるため、さらにAl:1.0%以下、あるいはさらにN:0.40%以下を複合添加することができる。
また、本発明の高分子電解質燃料電池セパレータは、前記ステンレス鋼によって形成されたものであり、電池の外壁材として十分な強度を有することは勿論、高分子電解質燃料電池内で生じる腐食雰囲気に対して優れた耐食性と導電性とを兼備する。
本発明のステンレス鋼によれば、所定量のCuおよびTiの複合添加、あるいはさらに適量のAlおよびNを添加することにより、導電性金属介在物を析出させることなく、高分子電解質燃料電池のおかれる腐食環境に対して優れた耐食性と導電性とを備える。しかも、加工性も良好である。このため、本発明のステンレス鋼は高分子電解質燃料電池のセパレータ、その他の導電性、耐食性が要求される電気部品の素材として好適に利用することができる。
本発明のステンレス鋼は、所定量のCuとTiを複合添加し、あるいはさらに適量のAl、Nを添加した二相あるいはオーステナイト系ステンレス鋼であり、まず二相ステンレス鋼の成分限定理由について説明する。以下、単位は全て質量(mass)%である。
C:0.05%以下
Cはオーステナイト生成元素であり、かつ強度の向上に効果があるが、含有量が多すぎるとCr炭化物の形成に伴いCr欠乏領域を生じて耐食性を劣化させる。このため、C量の上限を0.05%、好ましくは0.03%とする。
Si:2.0%以下
Siは溶鋼の脱酸および鋳造性確保並びに耐食性に有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるには、0.10%以上添加することが好ましいが、多量の含有は靭性を悪化させるので、その上限を2.0%、好ましくは1.5%とする。
Mn:2.0%以下
Mnは脱酸、脱硫を目的として添加され、またオーステナイト相安定化元素として作用する。このような作用効果を有効に発揮させるには、0.10%以上添加することが好ましいが、2.0%を超えて添加すると耐食性が劣化するようになるので、Mn量の上限を2.0%、好ましくは1.5%とする。
P:0.040%以下
Pは鋼中へ不可避的に混入する不純物元素であり、少ない程好ましい。0.040%を超えると靭性の劣化が著しくなるので、本発明では0.040%以下に止める。
S:0.003%以下
Sも鋼中へ不可避的に混入する不純物元素であり、少ない程好ましい。0.003%を超えると熱間加工性の劣化が著しくなるので、本発明では0.003%以下に止める。
Ni:2.0〜8.0%
Niは耐食性を向上させると共に、組織を二相(フェライトおよびオーステナイト)に制御するために添加される。2.0%未満では耐食性が不足するようになり、またオーステナイトの生成が困難になる。一方、8.0%超ではフェライト相が生成し難く、オーステナイト単相組織になり易い。このため、Ni量の下限を2.0%、好ましくは3.0%とし、その上限を8.0%、好ましくは7.5%とする。
Cr:20〜30%
Crは耐食性を支配する重要な成分であり、Cr量が20%未満ではセパレータとして要求される耐食性の向上効果が緩慢である。耐食性向上効果は20%を境として高効果が維持されるようになる。一方、30%を超えて添加するとオーステナイト相を不安定にし、また靭性を低下させる。このため、Cr量の下限を20%、好ましくは21%とし、その上限を30%、好ましくは28%とする。
Mo:1.0〜8.0%
Moは少量の添加で耐食性の改善に極めて有効な元素であるが、その含有量が1.0%未満では所望の効果が得られない。Moの増加に伴い耐食性は改善されるが、8.0%を超すとその改善効果が飽和し、経済的でなく、また靭性が劣化するようになる。このため、Mo量の下限を1.0%、好ましくは1.5%とし、その上限を8.0%、好ましくは6.5%とする。
Cu:1.0〜8.0%
CuはNi、Cr、Mo添加の下、Tiと協働して酸化性酸の腐食環境において優れた耐食性改善効果を有し、また導電性を向上させる作用を有する。1.0%未満ではこれらの作用効果が過少である。耐食性改善効果は1.0%を臨界点として高い効果が維持されるようになるが、8.0%を超えて添加すると熱間加工性が劣化するようになる。このため、Cu量の下限を1.0%、好ましくは1.5%とし、その上限を8.0%、好ましくは7.0%とする。
Ti:0.50〜2.0%
TiはNi、Cr、Mo添加の下、Cuと協働して酸化性酸の腐食環境において優れた耐食性改善効果を有し、また導電性を向上させる作用を有する。0.50%未満ではこれらの作用効果が過少である。耐食性改善効果は0.50%を臨界点として非常に高い効果が維持されるようになるが、2.0%を超えて添加すると熱間加工性が劣化するようになる。このため、Ti量の下限を0.50%、好ましくは0.60%とし、その上限を2.0%、好ましくは1.8%とする。
二相ステンレス鋼は、上記基本成分のほか、残部Feおよび不可避的不純物により形成されるが、オーステナイト系ステンレス鋼の場合、上記基本成分とはNi量、Cr量において相違するので、この点について説明する。
Ni:8.0超〜30%
Niは耐食性を向上させると共に、組織をオーステナイト単相に制御するために添加される。8.0%以下ではフェライトが生成するようになり、オーステナイト単相に形成することが困難になる。一方、30%を超えて添加しても耐食性向上効果は飽和し、材料コスト高を招来する。このため、Ni量を8.0%超、好ましくは10%以上とし、その上限を30%、好ましくは28%とする。
Cr:20〜35%
Crは耐食性を支配する重要な成分であり、Cr量が20%未満ではセパレータとして要求される耐食性の向上効果が緩慢である。耐食性向上効果は20%を境として高効果が維持されるようになる。一方、35%を超えて添加すると、前記Ni含有範囲においてもオーステナイト相が不安定になり、オーステナイト単相組織を得ることが困難になる。このため、Cr量の下限を20%、好ましくは21%とし、その上限を35%、好ましくは30%とする。
前記二相、オーステナイト系ステンレス鋼の基本成分は上記のとおりであるが、酸化性酸に対する耐食性をより向上させるために、下記の範囲でAl、Nの一種または二種をさらに複合添加することができる。
Al:1.0%以下
AlはNi、Cr、Mo添加の下、Cu、Tiと協働して酸化性酸に対する耐食性を向上させる。このような作用効果を有効に発揮させるには、0.1%以上、好ましくは0.2%以上添加することが望ましいが、1.0%を超えると耐食性向上効果は飽和し、かつ熱間加工性が劣化するようになる。このため、Al量の上限を1.0%、好ましくは0.8%とする。
N:0.40%以下
Nも酸化性酸に対する耐食性を向上させる作用を有する。このような作用効果を有効に発揮させるには、0.04%以上添加することが望ましいが、0.40%を超えると熱間加工性が著しく劣化するようになる。このためN量の上限を0.40%、好ましくは0.30%とする。
さらに、上述の基本成分、耐食性向上成分の他、(1) 耐食性の改善を目的として、Wを5.0%以下、Nbを2.0%以下、Vを2.0%以下、Zrを1.0%以下、(2) 熱間加工性の改善を目的としてMg、Ca、Bをそれぞれ0.010%以下、(3) 熱間加工性改善および不働態化被膜の安定性向上を目的として希土類元素を合計で0.010%以下、の各群から単独で、あるいは複合して一種又は二種以上の元素を添加してもよい。
本発明の高分子電解質燃料電池のセパレータは、上記ステンレス鋼を機械加工して製作される。ステンレス鋼は、通常、板材にて供給される。ステンレス鋼板は、常法に従って上記成分を溶製し、鋳造した鋼塊を熱間鍛造し、得られた鋼片を適宜表面切削した後、加熱して熱間圧延を施して製造される。本発明鋼の場合、導電性金属介在物は析出せず、熱間加工性を阻害する可能性のある元素はその量が加工性を害さない範囲に規制されているので、良好な加工性を備える。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
高周波真空誘導溶解炉を用いて表1,2に示す二相ステンレス鋼を溶製し、10kg鋼塊に鋳込んだ後、熱間鍛造を行い、鍛造片の表面を切削加工した後、熱間圧延して板材に加工した。この際、板割れの発生は皆無であり、円滑に圧延操業を行うことができた。得られた圧延板にショットブラストを施して脱スケールし、表面を研削して厚さ4mmの試料板材を得た。この板材から直径20mm、厚さ4mmの板片を作製し、当該板片の両表面を#400番の砥石にて研磨し、腐食試験片とし、腐食試験に供した。
腐食試験は、試験片を1mol/Lの硫酸溶液中に浸漬し、80℃で500時間保持後の質量変化を測定し、質量減耗率((試験前試料質量−試験後試料質量)/試験前試料質量×100%)を求め、耐食性を評価した。
また、上述の腐食試験後の試験片21を用いて、図2に示すように、両面から同じ大きさのカーボンペーパー22、23で挟み、さらに電極24,25を接触させて15kgf/cm2の圧力をかけ、4端子法により抵抗を測定し、接触抵抗を算出した。接触抵抗は加圧力により変化するが、10kgf/cm2以上では加圧力によらずほぼ一定値が得られることを確認している。高分子電解質燃料電池セパレータの場合、接触抵抗が低いほど望ましいが、実用上、10mΩ・cm2以下であれば問題はない。
各試料の接触抵抗及び質量減耗率を表1,2に併せて示す。また、Cr,Cu,Ti添加量が質量減耗率に及ぼす影響を図3〜5に示す。
図3は試料No. 1〜6(比較例)を用いてCr量と質量減耗率との関係を示したグラフであるが、質量減耗率は20%のCr量を境としてそれ以上で著しく低減している。また、図4は試料No. 7〜11(比較例)を用いてCu量と質量減耗率との関係を示したグラフであるが、Cu量が1.0%を境として、優れた耐食性向上効果が維持されている。一方、Cr量が同等の試料No. 7,8と比較して、Cuを1.0%以上添加することにより導電性が大きく改善されている。また、図5はCu添加を前提とし、Tiを複合添加した試料No. 12,13(比較例)およびNo. 14〜16(発明例)を用いてTi量と質量減耗率との関係を示したグラフであるが、Ti量が0.5%を境として、質量減耗率が0.1%以下に維持され、非常に優れた耐食性向上効果が維持されていることが分かる。また、導電性についても、発明例のNo. 14〜16から0.5%以上の添加により10mΩ・cm2以下となっており、優れた導電性が得られている。他の発明例(試料No. 17〜36)についても、優れた耐食性と導電性が得られている。特に、Al、Nを添加したものは、耐食性がより改善されている。
Figure 2005330534
Figure 2005330534
上記実施例1と同様にして、表3,4に示す組成のオーステナイト系ステンレス鋼板を製作し、腐食試験片を作製し、腐食試験を行い、質量減耗率を求めると共に、腐食試験後の試験片を用いて接触抵抗を測定した。これらの結果を表3,4に併せて示す。また、Cr,Cu,Tiの耐食性に及ぼす影響を調べるため、実施例1と同様、表3の試料No. 1〜6,7〜11,No. 12〜16を用いて図6〜7を作成した。
実施例1の場合と同様、Ni量が8%を超えて増えても、図6からCr濃度が20%以上になると質量減耗率が著しく低減され、図7からCrにCuを複合添加した場合、Cu濃度が1.0%以上になると質量減耗率が著しく低減され、さらに図8からCr、CuにさらにTiを複合添加した場合、Ti濃度が0.50%以上になると質量減耗率が著しく低減されることが分かる。また、表3,4より発明例のステンレス鋼はいずれも優れた耐食性と導電性を兼備している。
Figure 2005330534
Figure 2005330534
高分子電解質燃料電池の構造を示す断面模式図である。 接触抵抗測定要領を示す断面模式図である。 実施例1におけるCr量と耐食性(質量減耗率)との関係を示すグラフである。 実施例1におけるCu量と耐食性(質量減耗率)との関係を示すグラフである。 実施例1におけるTi量と耐食性(質量減耗率)との関係を示すグラフである。 実施例2におけるCr量と耐食性(質量減耗率)との関係を示すグラフである。 実施例2におけるCu量と耐食性(質量減耗率)との関係を示すグラフである。 実施例2におけるTi量と耐食性(質量減耗率)との関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.05%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:2.0%以下、
    P:0.040%以下、
    S:0.003%以下、
    Ni:2.0〜8.0%、
    Cr:20〜30%、
    Mo:1.0〜8.0%、
    Cu:1.0〜8.0%、
    Ti:0.50〜2.0%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる導電性および耐食性に優れたステンレス鋼。
  2. 質量%で、
    C:0.05%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:2.0%以下、
    P:0.040%以下、
    S:0.003%以下、
    Ni:8.0超〜30%、
    Cr:20〜35%、
    Mo:1.0〜8.0%、
    Cu:1.0〜8.0%、
    Ti:0.50〜2.0%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる導電性および耐食性に優れたステンレス鋼。
  3. さらに、Al:1.0%以下を含む請求項1または2に記載したステンレス鋼。
  4. さらに、N:0.40%以下を含む請求項1から3のいずれか1項に記載したステンレス鋼。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載したステンレス鋼によって形成された高分子電解質燃料電池セパレータ。


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