JP2005330225A - カルボン酸及び/又はその塩の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルコール類を分子状酸素を用いて酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造するに際し、耐久性の高い触媒を用いた工業的に実施可能な製造方法を提供する。
【解決手段】アルコール類を分子状酸素を用いて酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造するに際し、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒の存在下に水媒体中にて分子状酸素で酸化することを特徴とするカルボン酸及び/又はその塩の高性能かつ触媒耐久性に優れた製造方法を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】アルコール類を分子状酸素を用いて酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造するに際し、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒の存在下に水媒体中にて分子状酸素で酸化することを特徴とするカルボン酸及び/又はその塩の高性能かつ触媒耐久性に優れた製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、アルコール類を分子状酸素で酸化して対応するカルボン酸及び/又はその塩を製造する方法に関するものである。特に、高分子化合物の原料や医農薬中間体として有用な各種のカルボン酸及び/又はその塩の製造方法に関する。
金を含む触媒を用いたアルコール類の酸化に関しては特許及び論文としてすでに提案されている。例えば、活性炭に担持された金触媒による1、2―ジオール類を原料にしてα―ヒドロキシカルボン酸塩への酸化について報告されているが、PdやPt触媒に比して、選択性が高く、pH>13では活性劣化も起こりにくいことが示されている(例えば、非特許文献1)。
また、やはり活性炭にnmサイズの金微粒子を担持した触媒を用いた同様の反応での触媒耐久性に関して、4回から6回ほどの触媒の繰返し使用において、使用回数が増えるごとに活性が劣下することが示されている(例えば、非特許文献2)。さらに、反応時のpHがpH7>pH8>pH9.5の順に劣下が起こりやすく、それは金粒子が触媒担体から脱離する(剥離)、もしくは、金粒子の粒子径が使用するに従い大きく成長すること(シンタリング)に起因することが示されている。
また、金を活性炭またはグラファイトに担持した触媒の存在下に分子状酸素でグリセリンを酸化してグリセリン酸塩を製造する方法についても報告されている(例えば、非特許文献3)。
また、アミノエタノール類を酸化してアミノカルボン酸塩を製造するに際し金を担体上に担持した触媒の存在下に分子状酸素で酸化することを特徴とする方法が提案されているが、ここでも活性炭が担体として好適との記載がある。いずれも触媒性能としては高選択性であり他の触媒に比して優位であることが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
上記のように従来技術には金を含む触媒を用いた方法が種々提案されており、いずれも高い選択性を示すことが他の金属を用いる場合に比べれ優れた特徴と考えられる。また、金を含む触媒を使用する従来技術ではいずれもが活性炭等の炭素系担体に金を担持した触媒が好適との記載がある。ただし、実用性という点では、例えば触媒寿命については数回の繰り返し使用で大きな活性劣化が認められないとの記載のあるものもあるが、工業的製造法という観点では、通常、何十回何百回以上という繰り返し回数や数千時間以上の連続運転可能といった耐久性が望まれるのが普通であり、従来技術にはそれら工業的製造法として十分な耐久性を裏付けるような記載がほとんどない。
特に活性炭を担体に使用し金をその担体上に担持して使用する場合には、通常は少量で性能面に効果が期待できるナノメーターサイズの金微粒子として担持するのが一般的かつ経済的な処方であるが、活性炭等の炭素系担体と金との相互作用は弱いとされており、使用上、金粒子の熱的なシンタリングや担体からの物理的な脱離や剥離などが課題または問題となることが十分予想される。
それにより触媒活性の経時的低下や金回収のための付加的コスト発生などの製造法としてはマイナスの要因が引き起こされてくる。特に、本発明のように大きな発熱を伴う酸化反応においてはシンタリングによる活性劣下は通常回避が困難と考えられる。
本願発明者らは、かかる従来技術の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルコール類を酸化してカルボン酸塩を製造するに際し、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒と水の存在下において分子状酸素を用いて酸化することを特徴とするカルボン酸塩の製造方法を見出し本発明を完成するに至った。
チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒を使用する本発明の製造方法によれば、金を含む粒子と担体とが強固に結合することにより、金を含む粒子のシンタリングや物理的剥離が大幅に低減され工業的に実施可能な耐久性の極めて高い触媒を得ることができ、結果的に原料アルコール類の酸化によるカルボン酸及び/又はその塩の工業的に優れた製造方法を提供できるのである。
また、本発明では、金を含む粒子が金及び金以外の元素を含む粒子(いわゆる合金や金属間化合物)として担体上に担持されることにより、さらに担体との結合が強化されシンタリングや剥離に対してより強い抑制を可能とすることができ、カルボン酸及び/又はその塩の工業的に優れた製造方法を提供できることを併せて見出した。
項1. アルコール類を酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造するに際し、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒と水の存在下において分子状酸素を用いて酸化することを特徴とするカルボン酸及び/又はその塩の製造方法。
項2. 水をアルコール類に対してモル比で3倍以上使用することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
項3. アルコール類がエチレングリコール類またはエタノールアミン類であることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
項1. アルコール類を酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造するに際し、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒と水の存在下において分子状酸素を用いて酸化することを特徴とするカルボン酸及び/又はその塩の製造方法。
項2. 水をアルコール類に対してモル比で3倍以上使用することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
項3. アルコール類がエチレングリコール類またはエタノールアミン類であることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
本発明はアルコール類を分子状酸素を用いて酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造するに際し、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒と水の存在下において分子状酸素を用いて酸化することを特徴とするカルボン酸及び/又はその塩の製造方法に関する。
チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒を使用する本発明の製造方法によれば、高性能の反応成績とともに、金を含む粒子と担体とが強固に結合することにより、金を含む粒子のシンタリングや物理的剥離が大幅に低減され工業的に実施可能な耐久性の極めて高い触媒を得ることができ、結果的に原料アルコール類の酸化によるカルボン酸及び/又はその塩の工業的に優れた製造方法を提供できるのである。
また、本発明では、金を含む粒子が金及び金以外の元素を含む粒子(いわゆる合金や金属間化合物)として担体上に担持されることにより、さらに担体との結合が強化されシンタリングや剥離に対してより強い抑制を可能とすることができ、カルボン酸及び/又はその塩の工業的に優れた製造方法を提供できることを併せて見出した。
本発明は、改良された触媒を用いてアルコール類を酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造する方法に関するものである。より詳しくはチタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒と水の存在下において分子状酸素を用いてアルコール類を酸化することを特徴とするカルボン酸及び/又はその塩の製造方法に関するものである。
金を含む粒子は、平均粒子径6nm以下の超微粒子であることが望ましく、特に5nm以下であることがより望ましい。一般に金を含む粒子はその粒子径が小さいほど触媒単位重量当りの活性が増加するためこのような超微粒子の形態で使用することが好ましいと考えられるが、一方、粒子径が小さければ小さいほど一般的にシンタリングや担体からの剥離が起りやすくなる。
従い、高い活性を維持すべく超微粒子として触媒を調製して使用に供することが好まししいものの、使用中その粒子径増大や担体からの脱離や剥離を抑制することがその結果より強く望まれることになるのである。金を含む粒子の平均粒子径の好ましい下限は特に制限されないが、物理的安定性の見地より約1nm程度とすればよい。これ以上小さいと粒子径を保った状態で安定的に担体上に維持することは容易でないからである。
なお、金属粒子の平均粒子径は、担体上の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察により任意に選んだ120個の粒子のうち1)大きい順に上から10個及び2)小さい順に下から10個の合計20個を除いた100個の粒子径の算術平均値を示す。また、金属粒子の粒子径分布の極大値が1〜6nm、特に1〜5nmの範囲にあることが好ましい。粒子径の分布は狭い方が好ましく、上記120個の粒子の粒子径の標準偏差(Standard Deviation)が2以下、特に1.5以下であることが好ましい。
金を含む粒子とは、金を含んでいる粒子である限り特に限定されないが、活性の主たる成分である金は、触媒担体に担持されている全粒子中に、原子比で0.5以上(金以外の元素が0.5未満)、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上含んでいることが望ましい。
金以外の元素も、本発明の効果を妨げない範囲、及び、使用に際しての目的とする触媒性能を阻害しない範囲で含まれていてもよい。使用可能な元素を例示すれば、周期表(「化学分析便覧改訂5版」丸善(2001年))の第4周期から第6周期の1B族、2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び8族の少なくとも1種を好適に用いることができる。具体的には、1B族としてCu、Ag、2B族としてZn、Cd、Hg、3B族としてGa、In、Tl、4B族としてGe、Sn、Pb、5B族としてAs、Sb、Bi、6B族としてSe、Te、Po、8族としてFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptが例示できる。
これらの元素は、触媒性能としての活性や選択性を改善するだけでなくシンタリングや剥離を抑制する場合がある。これらの元素のうち、1B族と8族がより好ましく、その中でもCu、Ag、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir及びPtがより好ましい元素として例示できる。
触媒中における金の担持量は特に限定されないが、通常、担体に対して0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%が使用できる。
本発明では、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体が使用される。チタン及び/又はジルコニウムを含む担体であれば特に限定はない。好ましい担体としては、酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの各々の単味の酸化物及びそれらの混合物、チタニア・シリカ、チタニア・アルミナ、チタニア・マグネシア、チタニア・ジルコニア、ジルコニア・シリカ、ジルコニア・アルミナ、ジルコニア・マグネシアなどの各種の複合酸化物、また、ゼオライト(ZSM−5等)、メソポーラスシリケート(MCM−41等)、天然鉱物(粘土、珪藻土、軽石等)などの結晶性酸化物にチタンやジルコニウムを含有させたもの(例えば、チタノシリケートやジルコノシリケートなど)、などの各種の酸化物担体を挙げることができる。
単味の酸化物である酸化チタンや酸化ジルコニウムが好適に用いられる。酸化チタンとしては、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトなどの各種結晶性のものや非結晶性のもの(アモルファス)が使用できる。さらにはそれら種々の酸化チタンの混合物が使用できる。酸化ジルコニムとしては、単斜晶、正方晶、立方晶などの各種結晶性のものや非結晶性のもの(アモルファス)が使用できる。さらにはそれら種々の酸化ジルコニウムの混合物が使用できる。また、酸化チタンと酸化ジルコニウムとが物理的に混合された担体も使用することができる。
本発明に使用される触媒の比表面積(BET法)は通常1m2/g以上、特に10m2/g以上であることがより好ましく、10〜300m2/g程度のものが特に好ましい。比表面積が1m2/g以上では金微粒子を担体に担持することが容易となりそのその結果活性が高くなるので好ましい。比表面積が300m2/g以下では副反応が起りにくくなるため好ましい。また、触媒自体の形状・大きさは限定的でなく、最終製品の用途等に応じて適宜設定すればよい。
また、本発明に使用される触媒には、本発明の効果を妨げない限り、他の成分が含まれていてもよい。例えば、アルカリ金属(Na、Ka等)、アルカリ土類(Mg、Ca、Ba等)、希土類(La、Ce等)が含まれていてもよい。
本発明に使用される触媒の製造方法については、特に限定的でなく、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体上に金を含む粒子を所定通り担持できれば公知の方法を適用できる。担持方法自体は、例えば共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の公知の方法を利用できる。これらの方法の内で、共沈法、析出沈殿法等が好ましく、特に析出沈殿法が好ましい。
金と金以外の元素を担体に担持する方法についても、特に限定的ではなく、公知の方法を適用できる。その方法としては、両者を同時に担持させてもよく(同時担持)、或いは、いずれか一方を担持させた後、他方を担持させてもよい(交互担持)。特に、両者を同時に担持させる方法が各粒子中に金と金以外の元素とを共に存在させることが容易となるのでより好ましい。
触媒の調製する際に使用する原料としては、以下が例示できる。
まず、金の原料としては、テトラクロロ金酸HAuCl4、テトラクロロ金酸ナトリウムNaAuCl4、ジシアノ金酸カリウムKAu(CN)2、ジエチルアミン金三塩化物(C2H5)2NH・AuCl3、シアン化金AuCN等が例示できる。これらの化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。金以外の元素については、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、アルコキシド、有機錯体等が例示できる。
まず、金の原料としては、テトラクロロ金酸HAuCl4、テトラクロロ金酸ナトリウムNaAuCl4、ジシアノ金酸カリウムKAu(CN)2、ジエチルアミン金三塩化物(C2H5)2NH・AuCl3、シアン化金AuCN等が例示できる。これらの化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。金以外の元素については、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、アルコキシド、有機錯体等が例示できる。
また、担体のチタン原料としては、オキシ硝酸チタニウム、硝酸チタニウム、オキシ硫酸チタニウム、オキシ炭酸チタニウム、酸化チタニウム、オキシ塩化チタニウム、四塩化チタニウム、水酸化チタニウム、オキシ酢酸チタニウム、酢酸チタニウム、シュウ酸チタニウム等、また、ジルコニウム原料としては、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム等が例示できる。
本発明の製造方法では、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体上に金を含む粒子を担持した触媒の存在下に分子状酸素を酸化剤に用いてアルコール類を酸化させることで、対応するカルボン酸及び/又はその塩を製造する。
溶媒として水を用い、固体である触媒と溶液状態である水に溶解したアルコールとを分子状酸素の存在下で接触させることで反応させる。反応温度は、通常、0〜200℃、好ましくは、50〜150℃で行われる。圧力は、常圧〜5MPa、より好ましくは、常圧〜2MPaである。分子状酸素は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。また、酸素は、空気等の酸素含有ガスを用いることもできる。溶媒である水の使用量は、アルコール類に対してモル比で3〜500倍程度、好ましくは5〜100倍程度を用いればよい。3倍以上では反応が効率よく進行するので好ましく、500倍以下では生産性が高く保てるため好ましい。
上記反応の形態としては、連続式、回分式、半回分式等の何れであってもよく、特に限定されるものではない。触媒は、反応形態として回分式を採用する場合には、反応装置に原料とともに一括して仕込めばよい。また、反応形態として連続式を採用する場合には、反応装置に予め上記触媒を充填しておくか、或いは反応装置に原料とともに触媒を連続的に仕込めばよい。触媒は、流動床、懸濁床、固定床等の何れの形態であってもよいが、液相中に懸濁させて使用するのが好ましい。
触媒の使用量は、流動床又は懸濁床の場合には、反応器内の全体液量に対して0.1〜30重量%、好ましくは、1〜20重量%を使用すればよく、固定床の場合には、触媒層への単位時間当りの液流量と触媒重量との比で0.1〜10(液流量/触媒重量)程度となるよう製品生産量に応じて触媒量を決めればよい。
本発明で用いるアルコール類としては炭素数1〜10の1級アルコール類が好ましく使用できる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1―ブタノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコール、ブタンジオール等のジオール類;アリルアルコール、メタリルアルコール等の脂肪族不飽和アルコール類;p-ヒドロキシベンジルアルコール等の芳香族アルコール類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のエタノールアミン類、等が挙げられる。これらのうちで、特に、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレングリコール類、または、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類が好ましく使用できる。これらアルコールは1種又は2種以上で用いることができる。
本発明の製造方法では、目的とするカルボン酸及び/又はその塩の種類等によって原料アルコールを適宜選択すればよい。例えば、グリコール酸塩を製造する場合には、エチレングリコールを、グリシン酸塩を製造する場合には2−アミノエタノールを、また、メタクリル酸を製造する場合にはメタリルアルコールをそれぞれ用いればよい。基本的には本製造法では用いる原料アルコールから炭素数の変化なしに対応するカルボン酸及び/又はその塩に変換される。
また、カルボン酸かカルボン酸塩のどちらを主に製造するかについては、反応する際に塩基を存在させるかさせないかにより選択することができる。例えば、カルボン酸ナトリウム塩を製造する場合には、反応中に塩基として水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムをアルコールと等モル以上添加して反応させればよい。この塩基としては、通常、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩を用いることができる。使用する塩基の量は酸化されるアルコールの水酸基(OH基)量より1.01〜1.5倍程度過剰に用いればよい。この塩基の添加方法は、反応仕込み時に一括して仕込んでもよいし、反応しながら逐次添加してもよい。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1
〔触媒調製〕 Au−Pd/TiO2の例
濃度18mM(mmol/L)塩化金酸水溶液500mLを65〜70℃に保持しながら、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調節する。この水溶液にテトラアンミンパラジウム水酸塩水溶液(NH4)4Pd(OH)2(Pd含有量20g/L、徳力本店(株)製)10mLを加えた後、上記のチタン含有シリカ担体20gを投入し、温度65〜70℃に保ちながら1時間攪拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去して残った固形物に、イオン交換水400mLを加えて室温5分間攪拌した後上澄液を除去するという洗浄操作を3回繰返した。
〔触媒調製〕 Au−Pd/TiO2の例
濃度18mM(mmol/L)塩化金酸水溶液500mLを65〜70℃に保持しながら、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に調節する。この水溶液にテトラアンミンパラジウム水酸塩水溶液(NH4)4Pd(OH)2(Pd含有量20g/L、徳力本店(株)製)10mLを加えた後、上記のチタン含有シリカ担体20gを投入し、温度65〜70℃に保ちながら1時間攪拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去して残った固形物に、イオン交換水400mLを加えて室温5分間攪拌した後上澄液を除去するという洗浄操作を3回繰返した。
ろ過により得られた固形物を次に110℃10時間乾燥し、さらに空気中で400℃3時間焼成することにより、チタニア担体に金及びパラジウムが担持された触媒(Au−Pd/TiO2)を得た。該触媒における金及びパラジウムの担持量は蛍光X線分析から各々7.8wt%及び1.0wt%であった。また、透過型電子顕微鏡にて金を含む粒子を観察したところ、粒子の平均粒子径は3.5nmであった。また、EPMA(X線分析)にてほとんどの粒子で金とパラジウムとが同一粒子内に存在していることがわかった。
〔カルボン酸塩の製造〕1−プロパノール原料プロピオン酸の製造例
1−プロパノール20g、水200g、上で得られた触媒(Au−Pd/TiO2)2gを内容積500ccの攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素で3回内部置換した後、内部温度を120℃に加温し、窒素ガスを0.5MPaと酸素ガスを0.5MPa、圧力1MPaになるよう各々仕込み3時間反応を行った。途中圧力が低下するので酸素ガスを追加して1MPaに維持した。その後、冷却、内部の液取出し、触媒のろ別を経て得られた水溶液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、反応成績は、1−プロパノールの転化率95%、プロピオン酸の選択率91%であった。
1−プロパノール20g、水200g、上で得られた触媒(Au−Pd/TiO2)2gを内容積500ccの攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素で3回内部置換した後、内部温度を120℃に加温し、窒素ガスを0.5MPaと酸素ガスを0.5MPa、圧力1MPaになるよう各々仕込み3時間反応を行った。途中圧力が低下するので酸素ガスを追加して1MPaに維持した。その後、冷却、内部の液取出し、触媒のろ別を経て得られた水溶液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、反応成績は、1−プロパノールの転化率95%、プロピオン酸の選択率91%であった。
さらに、ろ別して回収した触媒を用いて原料のみ追加仕込みした同じ反応を10回繰り返したところ、10回目繰り返した際の反応成績は、1−プロパノールの転化率94%、プロピオン酸の選択率92%であり活性劣下は認められなかった。計11回の反応液中への金の溶出を計測すべく原子吸光分析を行ったところ、初期3回目までは数ppb〜数十ppbの金の存在が認められたがその後は検出されず、金の溶出や剥離は実質的に問題にならないことがわかった。
また、10回目繰り返して使用した触媒について、透過型電子顕微鏡にて金を含む粒子を観察したところ、粒子の平均粒子径が3.6nmであり、シンタリングはほとんど起っていないことがわかった。
実施例2
〔触媒調製〕 Au/ZrO2の例
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物32.6gと塩化金酸水溶液(金30.5%含有)2.95gとを含む水溶液400cc、炭酸ナトリウム20.2gを含有する水溶液500ccに撹拌下70℃にて約3分間かけて投入した後、温度65〜70℃に保ちながら1時間攪拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去して残った固形物に、イオン交換水400mLを加えて室温5分間攪拌した後上澄液を除去するという洗浄操作を5回繰返した。ろ過により得られた固形物を次に110℃10時間乾燥し、さらに空気中で400℃3時間焼成した。これら操作により金が酸化ジルコニウムに担持された触媒(Au/ZrO2)を得た。該触媒における金の担持量は蛍光X線分析から4.8wt%であった。また、透過型電子顕微鏡にて金を含む粒子を観察したところ、粒子の平均粒子径は4.4nmであった。
〔触媒調製〕 Au/ZrO2の例
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物32.6gと塩化金酸水溶液(金30.5%含有)2.95gとを含む水溶液400cc、炭酸ナトリウム20.2gを含有する水溶液500ccに撹拌下70℃にて約3分間かけて投入した後、温度65〜70℃に保ちながら1時間攪拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去して残った固形物に、イオン交換水400mLを加えて室温5分間攪拌した後上澄液を除去するという洗浄操作を5回繰返した。ろ過により得られた固形物を次に110℃10時間乾燥し、さらに空気中で400℃3時間焼成した。これら操作により金が酸化ジルコニウムに担持された触媒(Au/ZrO2)を得た。該触媒における金の担持量は蛍光X線分析から4.8wt%であった。また、透過型電子顕微鏡にて金を含む粒子を観察したところ、粒子の平均粒子径は4.4nmであった。
〔カルボン酸塩の製造〕エチレングリコール原料グリコール酸ナトリウム製造
エチレングリコール31g、水酸化ナトリウム21g、水150g、上で得られた触媒(Au/ZrO2)2gを内容積500ccの攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素で3回内部置換した後、内部温度を110℃に加温し、窒素ガスを0.5MPaと酸素ガスを0.5MPa、圧力1MPaになるよう各々仕込み3時間反応を行った。途中圧力が低下するので酸素ガスを追加して1MPaに維持した。その後、冷却、内部の液取出し、触媒のろ別を経て得られた水溶液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、反応成績は、エチレングリコールの転化率94%、グリコール酸ナトリウムの選択率96%であった。
エチレングリコール31g、水酸化ナトリウム21g、水150g、上で得られた触媒(Au/ZrO2)2gを内容積500ccの攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素で3回内部置換した後、内部温度を110℃に加温し、窒素ガスを0.5MPaと酸素ガスを0.5MPa、圧力1MPaになるよう各々仕込み3時間反応を行った。途中圧力が低下するので酸素ガスを追加して1MPaに維持した。その後、冷却、内部の液取出し、触媒のろ別を経て得られた水溶液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、反応成績は、エチレングリコールの転化率94%、グリコール酸ナトリウムの選択率96%であった。
さらに、ろ別して回収した触媒を用いて原料のみ追加仕込みした同じ反応を10回繰り返したところ、10回目繰り返した際の反応成績は、1−プロパノールの転化率94%、プロピオン酸の選択率97%であり活性劣下は認められなかった。計11回の反応液中への金の溶出を計測すべく原子吸光分析を行ったところ、初期3回目までは数ppb〜数十ppbの金の存在が認められたがその後は検出されず、金の溶出や剥離は実質的に問題にならないことがわかった。
また、10回目繰り返して使用した触媒について、透過型電子顕微鏡にて金を含む粒子を観察したところ、粒子の平均粒子径が4.5nmであり、シンタリングはほとんど起っていないことがわかった。
実施例3
〔触媒調製〕 Au−Ir/ZrO2の例
塩化金酸水溶液(金30.5%含有)13.3gと塩化イリジウムヘキサアンミン錯2.6gとを含む水溶液1Lを70℃に加温した後、水酸化ナトリウムを用いてpH11に設定した。そこへ、撹拌下、市販のジルコニア担体(ノートン社製)50gを一度に投入し、pHを6.5〜7に維持しながら同温度で1時間攪拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去して残った固形物に、イオン交換水400mLを加えて室温5分間攪拌した後上澄液を除去するという洗浄操作を3回繰返した。
実施例3
〔触媒調製〕 Au−Ir/ZrO2の例
塩化金酸水溶液(金30.5%含有)13.3gと塩化イリジウムヘキサアンミン錯2.6gとを含む水溶液1Lを70℃に加温した後、水酸化ナトリウムを用いてpH11に設定した。そこへ、撹拌下、市販のジルコニア担体(ノートン社製)50gを一度に投入し、pHを6.5〜7に維持しながら同温度で1時間攪拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去して残った固形物に、イオン交換水400mLを加えて室温5分間攪拌した後上澄液を除去するという洗浄操作を3回繰返した。
ろ過により得られた固形物を次に110℃10時間乾燥し、さらに空気中で400℃4時間焼成した。これら操作により金とイリジウムとが酸化ジルコニウムに担持された触媒(Au−Ir/ZrO2)を得た。該触媒における金及びイリジウムの担持量は蛍光X線分析から各々6.5wt%及び2.3wt%であった。また、透過型電子顕微鏡にて金を含む粒子を観察したところ、粒子の平均粒子径は3.8nmであった。また、EPMA(X線分析)にてほとんどの粒子で金とパラジウムとが同一粒子内に存在していることがわかった。
〔カルボン酸塩の製造〕モノエタノールアミン原料グリシン酸ナトリウム製造
モノエタノールアミン30.5g、水酸化ナトリウム21g、水150g、上で得られた触媒(Au−Ir/ZrO2)2gを内容積500ccの攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素で3回内部置換した後、内部温度を110℃に加温し、窒素ガスを0.5MPaと酸素ガスを0.5MPa、圧力1MPaになるよう各々仕込み3時間反応を行った。途中圧力が低下するので酸素ガスを追加して1MPaに維持した。その後、冷却、内部の液取出し、触媒のろ別を経て得られた水溶液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、反応成績は、モノエタノールアミンの転化率92%、グリシン酸ナトリウムの選択率93%であった。
モノエタノールアミン30.5g、水酸化ナトリウム21g、水150g、上で得られた触媒(Au−Ir/ZrO2)2gを内容積500ccの攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素で3回内部置換した後、内部温度を110℃に加温し、窒素ガスを0.5MPaと酸素ガスを0.5MPa、圧力1MPaになるよう各々仕込み3時間反応を行った。途中圧力が低下するので酸素ガスを追加して1MPaに維持した。その後、冷却、内部の液取出し、触媒のろ別を経て得られた水溶液をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、反応成績は、モノエタノールアミンの転化率92%、グリシン酸ナトリウムの選択率93%であった。
さらに、ろ別して回収した触媒を用いて原料のみ追加仕込みした同じ反応を10回繰り返したところ、10回目繰り返した際の反応成績は、モノエタノールアミンの転化率92%、グリシン酸ナトリウムの選択率95%であり活性劣下は認められなかった。計11回の反応液中への金の溶出を計測すべく原子吸光分析を行ったところ、初期3回目までは数ppb〜数十ppbの金の存在が認められたがその後は検出されず、金の溶出や剥離は実質的に問題にならないことがわかった。
また、10回目繰り返して使用した触媒について、透過型電子顕微鏡にて金を含む粒子を観察したところ、粒子の平均粒子径が3.9nmであり、シンタリングはほとんど起っていないことがわかった。
本発明はアルコール類を分子状酸素を用いて酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造するに際し、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒と水の存在下において分子状酸素を用いて酸化することを特徴とするカルボン酸及び/又はその塩の製造方法に関するものである。本発明の製造法によれば、高性能かつ耐久性に優れた触媒を用いるので、炭素数1〜10の1級アルコール類を原料として分子状酸素を用いて対応するカルボン酸及び/又はその塩を従来技術に比べて工業的に有利に製造することができる。特に、エチレングリコール類(モノエチレングリコール、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール等)やエタノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンやトリエタノールアミン等)を原料に用いる、対応するヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩やアミノカルボン酸及び/又はその塩の優れた製造法を提供する。
Claims (3)
- アルコール類を酸化してカルボン酸及び/又はその塩を製造するに際し、チタン及び/又はジルコニウムを含む担体に金を含む粒子を担持した触媒と水の存在下において分子状酸素を用いて酸化することを特徴とするカルボン酸及び/又はその塩の製造方法。
- 水をアルコール類に対してモル比で3倍以上使用することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- アルコール類がエチレングリコール類またはエタノールアミン類であることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
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