以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明における感光性樹脂印刷版原版は、支持体上に感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)、感熱マスク層(C)をこの順に積層した構成を有する。
本発明における感光性樹脂層(A)は、水に溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーを含有する。また、層(A)は紫外光、好ましくは300〜400nmの光を照射することにより、光硬化する。感光性樹脂層(A)の素材としては、感光性樹脂組成物が用いられ、好ましくは厚さ0.1〜10mmのシート状に形成したものである。
上記した感光性樹脂組成物には、水に溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーが含有される。さらに、光重合開始剤が好ましくは含有される。
本発明における水に溶解または分散可能な樹脂は、感光性樹脂組成物を固体状態にして形態を保持するための担体樹脂としての機能を有するとともに、感光性樹脂層(A)の水現像性を付与するために使用される。このような樹脂として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリ酢酸ビニル(部分鹸化ポリビニルアルコール)、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキサイドの如き親水性基を導入したポリアミド樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体など、およびこれら樹脂の変性体が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、親水性基を導入したポリアミド樹脂、およびこれら樹脂の変性体が好ましく用いられる。
紫外光により硬化可能なモノマーとは、一般的に、ラジカル重合により架橋可能な物質である。ラジカル重合により架橋可能な物質であれば、特に限定されるものではないが、例えば次のようなものを挙げることができる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド類、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、などのエチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物、などの2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。
本発明に好ましく使用される光重合開始剤とは、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば特に限定されない。なかでも、自己開裂や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などある。
感光性樹脂組成物には、その他の成分として、相溶性、柔軟性を高める等の目的で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類を添加することが可能であり、熱安定性を上げる為に、従来公知の重合禁止剤を添加することもできる。好ましい重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類などが挙げられる。また、染料、顔料、界面活性剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤などを添加することもできる。
感光性樹脂組成物から感光性樹脂層(A)を得る方法としては特に限定されないが、例えば、水に溶解または分散可能な樹脂を溶剤に溶解した後に、紫外光により硬化可能なモノマー、光重合開始剤および必要に応じてその他添加剤を添加して充分攪拌し、感光性樹脂組成物溶液を得て、この溶液から溶剤を除去した後に、好ましくは接着剤を塗布した支持体上に溶融押し出しすることにより得ることができる。あるいは一部溶媒が残存している溶液を、接着剤を塗布した支持体上に溶融押し出しし、一部残存している溶媒を経時によって自然乾燥させることによっても得ることができる。
本発明における支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定なものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属板やポリエステルなどのプラスチックシート、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシートが挙げられる。
本発明における感熱マスク層(C)は、(1)赤外レーザーを効率よく吸収して、その熱によって瞬間的に該層の一部または全部が蒸発または融除し、レーザーの照射部分と未照射部分の光学濃度に差が生じる、すなわち照射部分の光学濃度の低下が起こる働きと、(2)紫外光を実用上遮断する働きを有するものである。
感熱マスク層(C)は、赤外線吸収物質を含有する水不溶性の感熱層である。層(C)は、赤外レーザーを吸収し熱に変換する機能を有する赤外線吸収物質の他に、好ましくは、熱によって蒸発、融除する機能を有する熱分解性化合物と紫外光を遮断する機能を有する紫外線吸収物質を含有する。
ここで、紫外光を遮断する機能を有するとは、感熱マスク層(C)の光学濃度(optical density)が2.5以上のことを指し、3.0以上であることがより好ましい。光学濃度は一般にDで表され、以下の式で定義される。
D=log10(100/T)=log10(I0/I)
(ここで、Tは透過率(単位は%)、I0は透過率測定の際の入射光強度、Iは透過光強度である)。
光学濃度の測定には、入射光強度を一定にして透過光強度の測定値から算出する方法と、ある透過光強度に達するまでに必要な入射光強度の測定値から算出する方法が知られているが、本発明における光学濃度は前者の透過光強度から算出した値をいう。
光学濃度は、オルソクロマチックフィルターを用いて、マクベス透過濃度計「TR−927」(コルモルゲンインスツルメンツ(Kollmorgen Instruments Corp.)社製)を用いることで測定することができる。
赤外線吸収物質としては、赤外光を吸収して熱に変換し得る物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック等の黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、ローダミン色素、ナフトキノン系色素、ポリメチン系染料、ジイモニウム塩、アゾイモニウム系色素、カルコゲン系色素、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、アリールアルミニウム金属塩類、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物や、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステン等の金属酸化物、これらの金属の水酸化物、硫酸塩、さらにビスマス、スズ、テルル、鉄、アルミの金属粉などが挙げられる。
これらのなかでも、光熱変換率および、経済性、取扱い性、および後述する紫外線吸収機能の面から、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックは、その製造方法からファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等に分類されるが、ファーネスブラックは粒径その他の面で様々なタイプのものが市販されており、商業的にも安価であるため、好ましく使用される。
赤外線吸収物質の使用量は、感熱マスク層(C)の全組成物に対して2〜75重量%が好ましく、5〜70重量%がより好ましい。2重量%以上であれば光熱変換が効率良く行われ、75重量%以下であれば他の成分が不足して、感熱マスク層(C)に傷がつきやすいという問題が生じない。
層(C)に好ましく使用される熱分解性化合物としては、例えば、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ニトロセルロース等のニトロ化合物や有機過酸化物、ポリビニルピロリドン、アゾ化合物、ジアゾ化合物あるいはヒドラジン誘導体、および赤外線吸収物質の項で列挙した金属あるいは金属酸化物が挙げられるが、溶液の塗工性の面などから高分子化合物であるポリビニルピロリドンやニトロセルロースが好ましい。
ニトロセルロースを用いる場合、ニトロセルロースの粘度はASTM D301―72に規定された測定方法で1/16秒〜1秒であることが好ましく、1/8秒〜1/2秒がより好ましい。ここで、粘度はニトロセルロースの重合度に対応しており、粘度が低いことはすなわち重合度が低いことを意味する。この粘度が1/16秒以上であれば、ニトロセルロースの重合度が十分高いために感熱マスク層(C)表面に傷がつきにくく、1秒以下であれば粘度が高くなることによる取扱いの不便さが生じない。
ニトロセルロースは熱分解する際に、有害なNOxガスを発生しやすい。感熱マスク層(C)がニトロセルロースを含有する場合、赤外線レーザーによるマスク描画を行うプレートセッターには、発生したNOxを吸い込む集気設備、およびNOxを無害な化合物に分解する設備を直結させる必要があり、プレートセッターが大型に、かつ高価になるという問題がある。
この課題は、ニトロ基のようなNOx発生源を含有しない熱分解性化合物を用いることで解決できる。
アクリル樹脂は比較的熱分解しやすく、窒素原子を全く含まずNOxを発生する懸念がないため、ニトロセルロースに変わる熱分解性化合物として特に好ましく用いられる。一般的なアクリル樹脂の熱分解温度は190℃〜250℃である。NOxの発生を抑制することを主目的とする場合、ニトロセルロースを実質含有しないことが好ましい。ニトロセルロースを実質含有しないとは、感熱マスク層(C)の全組成物に対して2重量%以下であることをいう。ニトロセルロースの含有量が2重量%以下であれば、NOxの発生量が環境衛生的に問題ないレベルに抑制しうるからである。
アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる1つ以上のモノマーの重合体あるいは共重合体のことをいう。
アクリル樹脂の中でも、水やアルコールに溶解しないグレードを選択することによって、下層の感光性樹脂層(A)への物質移動を抑制する事ができるので、水/アルコール不溶型のアクリル樹脂がさらに好ましく用いられる。
熱分解性化合物の使用量は、感熱マスク層(C)の全組成物に対して80重量%以下が好ましく、15〜60重量%がより好ましい。使用量が80重量%以下であれば、後述する光熱変換物質量の低下に伴い熱分解性化合物の分解がうまくできないという問題が発生しない。
層(C)に好ましく使用される紫外線吸収物質としては特に限定されないが、好ましくは、300nm〜400nmの領域に吸収を有する化合物である。例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、カーボンブラック、および赤外線吸収物質で列挙した金属あるいは金属酸化物などを挙げることができる。なかでもカーボンブラックは、紫外光領域だけでなく赤外光領域にも吸収特性があり、光熱変換物質としても機能するので、特に好ましく用いられる。
紫外線吸収物質の使用量は、感熱マスク層(C)の全組成物に対して0.1重量%〜75重量%が好ましく、1〜50重量%がより好ましい。使用量が0.1重量%以上であれば必要な光学濃度が得られ、75重量%以下であれば他の成分が不足して感熱マスク層(C)に傷がつきやすいという問題が生じない。
感熱マスク層(C)は感光性樹脂層(A)の上に接着調整層(B)を介して積層される。感光性樹脂層(A)は、水に溶解または分散可能な樹脂を含有している、いわゆる親水性の組成である。後述する接着調整層(B)も鹸化度60モル%以上の部分鹸化ポリ酢酸ビニルを含有する、すなわち親水性の組成であるため、感熱マスク層(C)が親水性の組成であると、各層間で物質移動が起こり、各層固有の機能を低下させる。例えば感熱マスク層(C)に感光性樹脂層(A)のモノマーなどが移動すると、感熱マスク層(C)のレーザー融除性が損なわれることになるし、感光性樹脂層(A)中に紫外線吸収物質が混入すると紫外光による硬化が阻害される。
よって本発明に使用する感熱マスク層(C)は水不溶性である必要がある。すなわち、該層単体では水現像が不可能な性質を具備する。金属あるいは金属酸化物を用いる場合はそれ自体水不溶性であるが、カーボンブラックのような有機物を用いる場合は対策を講じる必要がある。水不溶性を付与する方法は特に限定されないが、例えば、感熱マスク層(C)の全組成物を水不溶性成分で構成する方法、硬化性の樹脂をバインダーとして用い層を架橋させる方法によって達成できる。後者の方法は、組成物成分の高分子化により層間物質移動をさらに起こりにくくする効果や、感熱マスク層(C)表面の耐傷性を付与する効果も得られるので好ましい。具体的には、JIS規格L0823に記載の染色堅牢度試験用摩擦試験機II型により、水に濡らした白綿布に500gの荷重(そのうち摩擦子の自重が200g、追加の重りが300g)をかけて、感熱マスク層(C)の表面を擦る試験方法で、5回往復擦り後も貫通性の傷が付かないことが好ましく、10回往復擦り後も貫通性の傷が付かないことがさらに好ましい。
硬化性の樹脂をバインダーとして用いた場合、樹脂の硬化方法は特に限定されないが、感熱マスク層(C)が紫外光を吸収する機能を有するので光硬化は困難あるいは不効率であるため、熱硬化が好ましい。バインダーとして用いる熱硬化樹脂としては、例えば、多官能イソシアネートおよび多官能エポキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、尿素系樹脂、アミン系化合物、アミド系化合物、水酸基含有化合物、カルボン酸化合物、チオール系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との組み合わせが挙げられる。
多官能イソシアネート系化合物を用いた場合、反応が短時間で完結しないので、高温でキュアする必要があるが、熱分解性化合物としてニトロセルロースを用いる場合、その分解温度が180℃であるため、それ以上の温度でキュアすることができないという制約がある。従って、架橋方法としては、多官能エポキシ化合物と、尿素系樹脂、アミン系化合物、アミド系化合物、水酸基含有化合物、カルボン酸化合物、チオール系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との組み合わせが好ましく使用される。
ここで、多官能エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。
また、尿素系樹脂としては、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化尿素メラミン共縮合樹脂、アミノアルキッド樹脂、iso−ブチル化メラミン樹脂、メチル化メミニン樹脂、ヘキサメトキシメチロールメラミン、メチル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。
また、アミン系化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、メタキシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
また、アミド系化合物としては、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるポリアミド系硬化剤やジシアンジアミドなどがあり、水酸基含有化合物としてはフェノール樹脂、多価アルコールなどがあり、チオール系化合物としては、多価チオールなどがある。
また、カルボン酸としては、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ドデシニルコハク酸、ピロメリット酸、クロレン酸、マレイン酸、フマル酸やこれらの無水物が好ましく使用される。
複数成分による硬化性の樹脂を用いる方法とは別に、単独成分で用いても硬化性のある樹脂を用いても良い。単体で用いても硬化性のある樹脂としては、エポキシ樹脂の他、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、架橋性ポリエステル樹脂、架橋性ポリアミド樹脂などが挙げられる。これら樹脂は組み合わせて使用することも可能である。
これら熱硬化性樹脂の使用量は感熱マスク層(C)の全組成物に対して10重量%〜75重量%以下が好ましく、30重量%〜60重量%がより好ましい。10重量%以上であれば水不溶性を付与するに十分な架橋構造が得られ、75重量%以下であれば感熱マスク層(C)のレーザー融除が効率よく行われる。
また、赤外線吸収物質としてカーボンブラックのような顔料を用いる場合は、その分散を行いやすくするため、可塑剤、界面活性剤や分散助剤を添加しても良い。
感熱マスク層(C)を形成する方法は特に限定されないが、金属酸化物を用いる場合には、例えば、蒸着やスパッタリングにより得られ、カーボンブラックなどの有機物を用いる場合には、感熱マスク層組成物をそのまま、あるいは適当な溶媒に溶解させてコーティングし、熱キュアさせることによって得ることができる。
コーティングにより得られる感熱マスク層(C)の厚さは0.5μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜3μmがより好ましい。0.5μm以上であれば、表面傷が発生しにくく、また光の漏れが生じにくく、一定の高光学濃度を得ることができ、また高い塗工技術を必要としない。また、10μm以下であれば感熱マスク層(C)を融除するのに高いエネルギーが必要とされないので、コスト的に有利である。
金属あるいは金属酸化物の蒸着あるいはスパッタリングにより得られる感熱マスク層(C)は、高光学濃度が得られれば、薄膜であるのが好ましい。薄膜の膜厚は感度に大きな影響を与える。すなわち、膜厚が厚すぎると、薄膜を蒸発、融解させるために要するエネルギーが余分に必要となるために、感熱マスク層(C)の融除感度が低下してしまうのである。それ故、薄膜の膜厚としては100nm以下が好ましく、2〜100nmがより好ましく、4〜20nmが特に好ましい。膜厚が2nmよりも薄くても感度が低下してしまうことがある。
蒸着法を用いる場合、真空蒸着が好ましく使用され、具体的には、10-4〜10-7mmHgの減圧容器中で、金属と炭素を加熱蒸発させ、基板の表面に薄膜を形成させる方法等が使用される。
スパッタリング法を用いた場合は、例えば、10-1〜10-3mmHgの減圧容器中で1対の電極に直流あるいは交流電圧を加え、グロー放電を起こさせ、陰極の、交流の場合はアース極のスパッタリング現象を利用して基板上に薄膜を形成することができる。
本発明で必要とされる高光学濃度を与える薄膜層として、炭素の薄膜層を第一に挙げることが出来る。ここでいう炭素薄膜は、いわゆるダイヤモンド薄膜やグラファイト薄膜ではなく非晶質炭素薄膜である。非晶質炭素薄膜はイオンビーム蒸着、イオン化蒸着等の通常の真空蒸着や、イオンビームスパッタリング等のスパッタリングを行えば、選択的に得ることが出来る。
炭素薄膜形成方法としては、真空蒸着、スパッタリングの何れかの方法で行うことが好ましい。
炭素薄膜形成のための真空蒸着条件としては、例えば、10-4〜10-7mmHgの減圧容器中で、炭素を加熱蒸発させ、基板の表面に薄膜を形成させる方法が好ましく使用される。炭素は融点が3923Kと高いために、蒸着するためには、炭素の加熱温度及び蒸着時間を長くすることが好ましい。
炭素薄膜形成のためのスパッタリング条件としては、10-1〜10-3mmHgの減圧容器中で1対の電極に直流あるいは交流電圧を加えて、グロー放電を起こさせ、陰極のスパッタリング現象を利用して基板上に薄膜を形成する方法が好ましく使用される。この方法では、融点が高い炭素でも比較的容易に薄膜を形成することができる。
感熱マスク層(C)を与える薄膜層としては、炭素の薄膜層の他に、金属の薄膜層を挙げることができる。金属の具体例としては、以下のようなものを挙げることが出来るがこれらに限定されるものではない。テルル、スズ、アンチモン、ガリウム、マグネシウム、ポロニウム、セレン、タリウム、亜鉛、アルミニウム、シリコン、ゲルマニウム、錫、銅、鉄、モリブデン、ニクロム、インジウム、イリジウム、マンガン、鉛、リン、ビスマス、ニッケル、チタン、コバルト、ロジウム、オスニウム、水銀、バリウム、パラジウムや特公昭41−14510号公報に記載されているような化合物、例えば、炭化珪素、窒化ホウ素、燐化ホウ素、燐化アルミ、アンチモンとアルミニウムの合金、ガリウムと燐の合金、ガリウムとアンチモンの合金などである。好ましくは、テルル、スズ、アンチモン、ガリウム、マグネシウム、ポロニウム、セレン、タリウム、亜鉛、ビスマス、アルムニウムが挙げられる。
層(C)に好ましく使用される金属としては、金属光沢が大きくなると、表面でのレーザーの反射が大きくなるため、感度的な面から金属としては、金属光沢の小さい材料が好ましい。
また、層(C)に使用する金属としては、瞬間的に一部または全部が蒸発、または融解する金属であって融点が2000K以下であれば、どのようなものでも好ましく使用できる。融点が2000Kよりも大きいと、レーザーを照射しても、蒸発または融解するのに時間がかかるため、結果的に層(C)の融除感度が低下してしまうためである。融点に関して、より好ましくは1000K以下のものである。具体的には、テルル、スズ、アンチモン、ガリウム、マグネシウム、ポロニウム、セレン、タリウム、亜鉛、ビスマス、アルミニウムが好ましく使用され、より好ましくはテルル(融点449.8℃)、スズ(融点232℃)、亜鉛(融点419.5℃)、アルミニウム(融点660.4℃)を挙げることが出来る。これらの金属は、薄膜にレーザーが照射された時に、熱によって容易に蒸発、または融解するため特に好ましい。
層(C)に好ましく使用される金属としては、上記した金属の2種類あるいは3種類以上のアロイとすることによって、より融点が低下しやすくなり感度も向上するため、特に好ましいと言える。具体的には、テルルとスズ、テルルとアンチモン、テルルとガリウム、テルルとビスマス、テルルと亜鉛のアロイが好ましく、より好ましくは、テルルと亜鉛、テルルとスズのアロイである。3種類のアロイでは、テルルとスズと亜鉛、テルルとガリウムと亜鉛、スズとアンチモンと亜鉛、スズとビスマスと亜鉛、のアロイが好ましく、より好ましくは、テルルとスズと亜鉛、スズとビスマスと亜鉛のアロイである。
このような金属の薄膜の形成方法としては特に限定されないが、真空蒸着、スパッタリングの何れかの方法で行うことが好ましい。
感熱マスク層(C)を与える薄膜層として、炭素と金属を含む薄膜層も使用可能である。炭素と金属を、同時に蒸着またはスパッタリングすることによって、薄膜の光学濃度が向上し、より赤外レーザーを吸収しやすくなるというメリットがある。この場合、多くの金属が使用できる。この時用いる金属あるいはアロイは、蒸着や、スパッタリングができるものであれば特に限定されないが、融点が2000K以下の金属が好ましく、1000K以下がより好ましい。融点が2000Kよりも高いと、炭素を同時に蒸着あるいはスパッタリングしても、画像が形成されにくい。
金属と炭素を同時に蒸着、またはスパッタリングする場合、形成された薄膜での炭素の重量%は、10重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。炭素が10重量%以上であれば、赤外レーザーの吸収率が高まり、感度向上の効果が得られる。
水に溶解または分散可能な樹脂を含有する、すなわち親水性の感光性樹脂層(A)と水不溶性の感熱マスク層(C)とを接するように積層した場合、その極性の違いから層間の密着性が不十分である為に、層(C)が剥がれやすくなったり傷やシワが入るなどの問題が発生することがある。本発明の接着力調整層(B)を層(A)/(C)間に設けることによりこれらの問題は回避される。
本発明の接着力調整層(B)は、鹸化度60モル%以上の部分鹸化ポリ酢酸ビニルを含有することを特徴とする。より好ましくは、鹸化度70モル%以上99モル%以下である。鹸化度60モル%未満であると、接着力が不十分となるとともに、水現像性の低下を招く可能性がある。鹸化度60モル%以上の部分鹸化ポリ酢酸ビニルであれば特に重合度などは限定されず、また酸などで変性を施したものを使用することもできる。
接着力調整層(B)には、鹸化度60モル%以上の部分鹸化ポリ酢酸ビニルの他に、適当な接着力を調整するための樹脂類やモノマー類、塗工性や安定性を調整するための界面活性剤や可塑剤などの添加剤を含有させることも任意である。接着力調整層(B)は積層後、感光性樹脂層(A)に拡散移動させ、層(A)と同化させても良い。
鹸化度60モル%以上の部分鹸化ポリ酢酸ビニルの使用量は、接着力調整層(B)の全組成物に対して50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上である。50重量%以上であれば、均一な皮膜の形成が可能となり感熱マスク層との接着力が十分得られる。
接着力調整層(B)の形成方法は特に限定されないが、薄膜形成の簡便さから、接着力調整層成分を溶媒に溶解した状態で、感熱マスク層上にコーティングしてから溶媒を除去する方法が好ましく行われる。溶媒の除去方法には例えば熱風乾燥、遠赤外線乾燥、あるいは自然乾燥などが行われるが、溶媒除去時または除去後さらに160℃以上に加熱することで、層(B)/(C)間の接着力はさらに増大するため好ましく、またより好ましくは180℃以上である。
また、感熱マスク層(C)の表面にコロナ放電処理を施した後に接着力調整層(B)を層(C)に接する様に積層すると、層(B)/(C)間の接着力を増大させることができる。この場合、必ずしも高温乾燥は必要としない。
接着力調整層(B)をコーティングするために使用する溶媒は特に限定されないが、水やアルコール、または水とアルコールの混合物が主に使用される。水やアルコールを使用した場合、感熱マスク層(C)が水不溶性である為、層(C)上にコーティングしても層(C)が侵食を受けることがないため好ましい。
接着力調整層(B)の膜厚は15μm以下が好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。15μm以下であれば、紫外光を露光した際の該層による光の屈曲や散乱が抑えられ、シャープなレリーフ画像が得られる。また、0.1μm以上であれば、接着力調整層(B)の形成が容易となる。
こうして感熱マスク層(C)上に接着力調整層(B)を積層した後、層(B)に接するようにさらに感光性樹脂層(A)を積層することにより、層(A)/(B)/(C)の順に十分な接着力で積層された積層体が得られる。
ここで、十分な接着力とは、感熱マスク層(C)を単独で接着力調整層(B)から剥離するのに必要な力もしくは感熱マスク層(C)と接着力調整層(B)を感光性樹脂層(A)から剥離するのに必要な力が20mN/cm以上であることをいう。この接着力が20mN/cm以上であれば、得られる感光性樹脂印刷版原版から保護層(E)のみを剥離する際に感熱マスク層(C)が感光性樹脂層(A)もしくは接着力調整層(B)から剥がれてしまったり、感光性樹脂印刷版原版をインカールさせたときに感熱マスク層(C)にシワが生じたり、感熱マスク層(C)に赤外線を像様照射して形成される画像マスク(C’)が外部刺激によって感光性樹脂印刷版原版上で容易にずれるなどの問題が発生しない。
この接着力は、積層体の感熱マスク層(C)表面に幅1cmのセロテープ(登録商標、ニチバン(株)社製)を貼りつけて、積層体から感熱マスク層(C)を剥離するのに必要な力もしくは感熱マスク層(C)と接着力調整層(B)を感光性樹脂層(A)から剥離するのに必要な力を、テンシロン万能型引張試験機「UTM−4−100」((株)東洋ボールドウィン社製)を用いることで測定することができる。
感熱マスク層(C)上に、接着力調整層(B)と接している面の反対側に、保護層(E)を設けても良い。層(E)は、感熱マスク層(C)を外傷から保護する目的等に使用することができる。保護層(E)には、感熱マスク層(C)から剥離可能なポリマーフィルムが好ましく使用される。このような保護層(E)として、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムが挙げられる。あるいはシリコーンなどが塗布された剥離紙も層(E)として使用できる。
保護層(E)の膜厚は25μm〜200μmが好ましく、50μm〜150μmがより好ましい。25μm以上であれば取り扱いが容易であり、かつ感熱マスク層(C)を外傷から保護する機能が発現し、200μm以下であれば安価で経済的に有利であり、かつ剥離しやすいという利点を有する。
感熱マスク層(C)の上に、接着力調整層(B)と接している面の反対側に剥離補助層(D)を設けても良い。層(D)は好ましくは層(C)と層(E)の間に設けられる。剥離補助層(D)は、感光性樹脂印刷版原版から剥離補助層(D)のみまたは保護層(E)のみまたは保護層(E)および剥離補助層(D)両方を容易に剥離せしめる機能を有することが好ましい。保護層(E)と感熱マスク層(C)が直接積層されており両層間の接着力が強いと、保護層(E)を剥離できなかったり、感熱マスク層(C)ごと剥離してしまう可能性がある。
したがって、剥離補助層(D)は、感熱マスク層(C)との接着力が強く、保護層(E)との接着力が剥離可能な程度に弱い物質、あるいは感熱マスク層(C)との接着力が剥離可能な程度に弱く、保護層(E)との接着力が強い物質から構成されことが好ましい。なお、保護層(E)を剥離した後、剥離補助層(D)は感熱マスク層側に残留し最外層になる場合があるので、取り扱いの面から粘着質でないことや、該層を通して紫外光露光されるため実質透明であることが好ましい。
剥離補助層(D)に使用される材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂などであり、水に溶解または分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、鹸化度60〜99モル%の部分鹸化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースが特に好ましく用いられる。
これら樹脂類の使用量は、剥離補助層(D)の全組成物に対して70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。使用量が70重量%以上であれば、均一な皮膜を形成することができ、感熱マスク層(C)/保護層(E)を無理なく剥離することが可能となる。
層(D)は、さらに、赤外線で融除しやすくするために赤外線吸収物質および/または熱分解性物質を含有してもよい。赤外線吸収物質や熱分解性物質としては、前述したものを使用することができる。また、塗工性や濡れ性向上のために界面活性剤を添加しても良い。
剥離補助層(D)の膜厚は6μm以下が好ましく、0.1μm以上3μm以下がより好ましい。6μm以下であれば、下層の感熱マスク層(C)のレーザー融除性を損なうことがない。また、0.1μm以上であれば、層(D)の形成が容易である。
感光性樹脂印刷版原版から保護層(E)を早さ200mm/分のスピードで剥離する時、1cm当たりの剥離力が4.5〜200mN/cmであることが好ましく、9〜150mN/cmがさらに好ましい。4.5mN/cm以上であれば、作業中に保護層(E)が剥離してくることなく作業できるので好ましく、200mN/cm以下であれば無理なく保護層(E)を剥離することができるので好ましい。
次に本発明の感光性樹脂印刷版原版の好ましい製造方法を記載する。
第1の例は、基板上に感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)、感熱マスク層(C)、剥離補助層(D)および保護層(E)を順次積層した構造を有する原版である。保護層(E)上に順次コーティング法で、層(D)、層(C)および層(B)を積層した感熱マスクシートと、基板上に層(A)を積層した感光性樹脂シートとをラミネートすることによって得ることができる。ラミネート方法としては特に限定されず、例えば、層(A)あるいは層(B)の表面を水および/またはアルコールで膨潤させ、感熱マスクシートを貼り合わせる方法、層(A)と同じ、あるいは類似組成の高粘度の液体を、感光性樹脂シートと感熱マスクシートの間に流し込んで両者を貼り合わせる方法、常温下であるいは加熱しながらプレス機でプレスする方法などがある。
第2の例は、基板上に感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)および感熱マスク層(C)を順次積層した構造を有する原版である。まず、基板上に感光性樹脂層(A)を積層した感光性樹脂シートに、層(B)の成分が溶解している液をコーティング、乾燥させて、次いで、感熱マスク層(C)の成分が溶解あるいは分散している液をコーティング、加熱して硬化させる事によって得ることができる。
別の方法として、剥離紙に同様のコーティング法で層(C)および層(B)を順次積層した感熱マスクシートを用意し、次いで、基板上に層(A)を積層した感光性樹脂シートと感熱マスクシートとを、層(A)が層(B)と接するようにラミネートした後、剥離紙を剥離することによって得ることもできる。剥離した剥離紙は、同目的で再利用できるという利点がある。
第3の例は、基板上に感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)、感熱マスク層(C)、剥離補助層(D)を順次積層した構造を有する原版である。この原版は、第1の例で得られた原版から保護層(E)を剥離することによって得ることができる。この例では、保護層(E)を再利用できるという利点がある。
第4の例は、基板上に感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)、感熱マスク層(C)、保護層(E)を順次積層した構造を有する原版である。保護層(E)上に順次コーティング法で層(C)および層(B)を積層した感熱マスクシートと、基板上に層(A)を積層した感光性樹脂シートとをラミネートすることによって得ることができる。
以上のようにして得られた感光性樹脂印刷版原版は、下記する工程を経て、樹脂凸版印刷版を製造することができる。
本発明における樹脂凸版印刷版の製造方法は、(1)上述の感光性樹脂印刷版原版を用い、(2)赤外レーザーで感熱マスク層(C)に像様照射することによって画像マスク(C’)を形成する工程、(3)形成された画像マスク(C’)側から紫外光を用いて露光し、感光性樹脂層(A)に潜像を形成する工程、(4)水を主成分とする液により現像処理し、画像マスク(C’)および紫外光未露光部の感光性樹脂層(A)を除去する工程からなる。
層(D)および/または層(E)が存在する場合には、少なくとも層(E)を剥離した後、感熱マスク層(C)に赤外レーザーを画像状に像様照射して、画像マスク(C’)を形成することが好ましい。より好ましくは、層(D)と層(E)が存在し、層(E)のみを剥離した後、感熱マスク層(C)に赤外レーザーを画像状に像様照射して、画像マスク(C’)を形成することである。
(2)赤外レーザーで感熱マスク層(C)に像様照射して画像マスク(C’)を形成する工程とは、赤外レーザーを画像データに基づきON/OFFさせて、感熱マスク層(C)に対して走査照射する工程のことである。感熱マスク層(C)は、赤外レーザーが照射されると赤外線吸収物質の作用で熱が発生し、その熱の作用で熱分解性化合物が分解して感熱マスク層(C)が除去、すなわちレーザー融除される。レーザー融除された部分は、光学濃度が大きく低下し、紫外光に対して実質透明になる。画像データに基づき、感熱マスク層(C)を選択的にレーザー融除する事によって、感光性樹脂層(A)に潜像を形成しうる画像マスク(C’)が得られる。
赤外レーザー照射には、発振波長が750nm〜3000nmの範囲にあるものが用いられる。このようなレーザーとしては、例えば、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ペロブスカイトレーザー、Nd−YAGレーザーやエメラルドガラスレーザーなどの固体レーザー、InGaAsP、InGaAsやGaAsAlなどの半導体レーザー、ローダミン色素のような色素レーザーなどが挙げられる。またこれらの光源をファイバーにより増幅させるファーバーレーザーも用いることができる。なかでも、半導体レーザーは近年の技術的進歩により、小型化し、経済的にも他のレーザー光源よりも有利であるので好ましい。また、Nd−YAGレーザーも高出力であり、歯科用や医療用に多く利用されており、経済的にも安価であるので好ましい。
(3)画像マスク(C’)側から紫外光を用いて露光し、感光性樹脂層(A)に潜像を形成する工程とは、上記の方法でレーザー照射された感光性樹脂印刷版材に、紫外光を、好ましくは300〜400nmの波長の紫外光を、レーザーにより画像が形成された画像マスク(C’)を通して全面に露光し、画像マスク(C’)におけるレーザー融除部の下部の感光性樹脂層(A)を選択的に光硬化する工程である。
露光の際、感光性樹脂印刷版材のサイド面からも紫外光が入り込むので、紫外光が透過しないカバーでサイド面を覆うようにしておくのが良い。300〜400nmの波長を露光できる光源として、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などが使用できる。紫外光で露光された部分の感光性樹脂層(A)は、現像液により溶出分散できない物質に変化する。
(4)水を主成分とする液により現像処理し、画像マスク(C’)および紫外光未露光部の感光性樹脂層(A)を除去する工程は、例えば、感光性樹脂層(A)を溶解分散可能な水を主成分とする現像液を持つブラシ式洗い出し機やスプレー式洗い出し機を用いて現像することで達成される。この工程を経て、紫外光で露光された部分が残存し、レリーフ像を有する樹脂凸版印刷版が得られる。
剥離補助層(D)が残存している場合は、(4)の現像工程で除去されることが好ましい。
水を主成分とする現像液には、水道水、蒸留水、水のいずれかを主成分とし、炭素数1〜6のアルコールを含有してもよい。ここで、主成分とは、70重量%以上であることを言う。また、これらの液に感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)、感熱マスク層(C)や剥離補助層(D)の成分が混入したものも使用できる。
画像マスク(C’)は耐傷性向上の目的で水不溶性にしており、水やアルコールからなる現像液には溶解しない。しかし、コスト的に優位な薄膜状であるため、コシの強い、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシで擦ることで、物理的に除去することができる。この際、30℃から70℃の比較的高温の現像水を用いることによって、画像マスク(C’)の除去を効率的に行うことができる。
その後、必要に応じ、版面に付着している現像液を乾燥する処理、感光性樹脂印刷版材の後露光や粘着性除去処理等を行うこともできる。
本発明の製造方法で製造された樹脂凸版印刷版は、印刷機に装着できる樹脂凸版印刷版として好ましく使用される。
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
<水溶性ポリアミド樹脂1の合成>
ε−カプロラクタム 10重量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩 90重量部および水 100重量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、次いで水分を除去して水溶性ポリアミド樹脂1を得た。
<変性ポリビニルアルコール1の合成>
冷却管をつけたフラスコ中に、部分鹸化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”KL−05(鹸化度 78.5%〜82.0%、日本合成化学工業(株)製)50重量部、無水コハク酸 2重量部およびアセトン 10重量部を入れ、60℃で6時間加熱した後、冷却管を外してアセトンを揮発させた。その後、100重量部のアセトンで未反応の無水コハク酸を溶出させる精製工程を2回行った後、60℃で減圧乾燥を5時間行い、水酸基にコハク酸がエステル結合した、変性ポリビニルアルコール1を得た。
<感光性樹脂層(A1)用の塗工液組成物1の調製>
撹拌ヘラおよび冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、水溶性ポリアミド樹脂1を7.5重量部、変性ポリビニルアルコール1を47.5重量部、ジエチレングリコール 11重量部、水 38重量部およびエタノール 44重量部を入れ、撹拌しながら110℃で30分間、次いで70℃で90分間加熱しポリマーを溶解させた。ついで、“ブレンマー”G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)3重量部を添加し、70℃で30分間撹拌した。さらに“ブレンマー”GMR(グリシジルメタクリレートのメタクリル酸付加物、日本油脂(株)製)12重量部、“ライトエステル”G201P(グリシジルメタクリレートのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)5重量部、“エポキシエステル”70PA(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)6重量部、“NKエステル”A−200(平均分子量200のポリエチレングリコールのジアクリレート、新中村化学工業(株)製)5重量部、“イルガキュア”651(ベンジルジメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)0.1重量部、“イルガキュア”184(α−ヒドロキシケトン、チバ・ガイギー(株)製)1.5重量部、“Suminol Fast Cyanine Green G conc.”(酸性染料、カラーインデックス C. I. Acid Green 25、住友化学工業(株)製)0.01重量部、“ダイレクトスカイブルー6B”(浜本染料(株)製)0.01重量部、“フォーマスタ”(消泡剤、サンノプコ(株)製)0.05重量部、“チヌビン”327(紫外線吸収剤、チバ・ガイギー(株)製)0.015重量部、“TTP−44”(ビス−{2−(2−エトキシエトキシカルボニル)エチルチオ}オクチルチオ ホスフィン、淀化学(株)製)0.2重量部および“Q−1300”(アンモニウム N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、和光純薬工業(株)製)0.005重量部を添加して30分間撹拌し、流動性のある感光性樹脂層(A1)の塗工液組成物1を得た。
<接着剤塗布基板1の作製>
“バイロン31SS”(不飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡績(株)製)260重量部および“PS−8A”(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2重量部の混合物を70℃で2時間加熱後30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート 7重量部を加えて2時間混合した。さらに、“コロネート”3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業(株)製)25重量部および“EC−1368”(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14重量部を添加し、接着剤組成物1を得た。
“ゴーセノール”KH−17(鹸化度78.5%〜81.5%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)50重量部を“ソルミックス”H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)200重量部および水 200重量部の混合溶媒で70℃で2時間溶解させた後、“ブレンマー”G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)1.5重量部を添加して1時間混合し、さらにジメチルアミノエチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=2/1(重量比)の共重合体3重量部、“イルガキュア”651(ベンジルジメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)5重量部、“エポキシエステル”70PA(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)21重量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート 20重量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却後“フロラード”TM FC−430(住友スリーエム(株)製)0.1重量部添加して30分間混合して接着剤組成物2を得た。
厚さ250μmの“ルミラー”T60(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に、接着層組成物1を乾燥後膜厚が40μmとなるようバーコーターで塗布し、180℃のオーブンに3分間入れて溶媒を除去後、その上に接着層組成物2を乾燥膜厚が30μmとなるようバーコーター塗布し、160℃のオーブンで3分間乾燥させ、接着剤塗布基板1を得た。
<感光性樹脂シート1の製造>
接着剤塗布基板1を接着剤塗工側から超高圧水銀灯で1000mJ/cm2露光した後、感光性樹脂層(A1)用の塗工液組成物1を接着剤塗布基板1の接着剤塗布面に流延し、60℃のオーブン中で5時間乾燥させて、基板を含めておよそ厚さ900μmの感光性樹脂シート1を得た。感光性樹脂シート1の厚さは、基板上に所定厚のスペサーを設置し、スぺーサーからはみ出ている部分の塗工液組成物1を、水平な金尺で掻き出すことによって制御した。
<剥離補助層(D1)用の塗工液組成物2の調製>
“ゴーセノール”AL−06(鹸化度91%〜94%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)11重量部を水 55重量部、メタノール 14重量部、n−プロパノール 10重量部およびn−ブタノール 10重量部に溶解させ、剥離補助層(D1)用の塗工液組成物2を得た。
<感熱マスク層(C1)用の塗工液組成物3の調製>
“MA100”(カーボンブラック、三菱化学(株)製)23重量部、“ダイヤナール”BR−95(アルコール不溶性のアクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製)15重量部、可塑剤ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、(株)ジェイ・プラス製)6重量部およびメチルイソブチルケトン 30重量部をあらかじめ混合させたものを、3本ロールミルを用いて混練分散させ、カーボンブラック分散液1を調製した。分散液1に“アラルダイト”6071(エポキシ樹脂、旭チバ(株)製)20重量部、“ユーバン”2061(メラミン樹脂、三井化学(株)製)27重量部、“ライトエステル”P−1M(リン酸モノマー、共栄社化学(株)製)0.7重量部およびメチルイソブチルケトン 140重量部を添加し30分間撹拌した。その後、固形分濃度が33重量%になるようにさらにメチルイソブチルケトンを添加し、感熱マスク層(C1)用の塗工液組成物3を得た。
<感熱マスク層(C2)用の塗工液組成物4の調製>
“MA100”(カーボンブラック、三菱化学(株)製)23重量部、“ダイヤナール”BR−95(アルコール不溶性のアクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製)15重量部、可塑剤ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、(株)ジェイ・プラス製)6重量部およびジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート 30重量部をあらかじめ混合させたものを、3本ロールミルを用いて混練分散させ、カーボンブラック分散液2を調製した。分散液2に“アラルダイト”6071(エポキシ樹脂、旭チバ(株)製)20重量部、“ユーバン”2061(メラミン樹脂、三井化学(株)製)27重量部、“ライトエステル”P−1M(リン酸モノマー、共栄社化学(株)製)0.7重量部およびメチルイソブチルケトン 140重量部を添加し、30分間撹拌した。その後、固形分濃度が33重量%になるようにジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテートを添加し、感熱マスク層(C2)用の塗工液組成物4を得た。
<接着力調整層(B1)用の塗工液組成物5の調製>
“ゴーセノール”KL−05(鹸化度78%〜82%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)10重量部を水 40重量部、メタノール 20重量部、n−プロパノール 20重量部およびn−ブタノール 10重量部に溶解させ、接着力調整層(B1)用の塗工液組成物5を得た。
<接着力調整層(B2)用の塗工液組成物6の調製>
“エピコート”1004(エポキシ樹脂、ジャパン・エポキシ・レジン(株)製)10重量部をシクロヘキサノン 90重量部に溶解させ、接着力調整層(B2)用の塗工液組成物6を得た。
<感熱マスク要素1の製造>
厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”S10(東レ(株)製)上に、塗工液組成物2をバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.25μmになるように塗布、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の剥離補助層(D1)側に、塗工液組成物3をバーコーターを用いて乾燥膜厚が2μmになるように塗布、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の感熱マスク層(C1)側に、塗工液組成物5をバーコーターを用いて乾燥膜厚が1μmになるように塗布、180℃で30秒間乾燥し、接着調整層(B1)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体である感熱マスク要素1を得た。この感熱マスク要素1の光学濃度(オルソクロマチックフィルター、透過モード)は3.6であった。
<感熱マスク要素2の製造>
厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”S10(東レ(株)製)上に、塗工液組成物2をバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.25μmになるように塗布、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の剥離補助層(D1)側に、塗工液組成物4をバーコーターを用いて乾燥膜厚が2μmになるように塗布、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(C2)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の感熱マスク層(C2)側に、塗工液組成物5をバーコーターを用いて乾燥膜厚が1μmになるように塗布、180℃で30秒間乾燥し、接着力調整層(B1)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体である感熱マスク要素2を得た。この感熱マスク要素2の光学濃度(オルソクロマチックフィルター、透過モード)は3.6であった。
(実施例1)
感光性樹脂シート1の感光性樹脂層(A1)上に塗工液組成物1を展開し、その上に、感熱マスク要素1を接着力調整層(B1)が塗工液組成物1が展開された感光性樹脂層(A1)に接するようにかぶせて、80℃に加熱したカレンダーロールでラミネートを行い、接着剤塗布基板1/感光性樹脂層(A1)/接着力調整層(B1)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の順に積層された感光性樹脂印刷版原版1を得た。カレンダーロールのクリアランスは、原版1から保護層(E)を剥離した後における積層体の厚みが950μmになるように調整した。展開された塗工液組成物1は、ラミネート後1週間静置させることによって、残存溶媒が自然乾燥し、追加の感光性樹脂層(A1)を形成する。
感光性樹脂印刷版原版1から保護膜(E)を剥離した後、赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、基板側がドラムに接するように装着し、解像度156線のテストパターン(ベタ部、1%〜99%網点、1〜8ポイントの細線、1〜8ポイントの白抜き部分を有する)を描画し、感熱マスク層(C1)から画像マスク(C1’)を形成した。レーザー出力9W、ドラム回転数700rpmの条件で、ベタ部の感熱マスク層(C1)が実質上レーザー融除され、下層の感光性樹脂層(A1)表面へのレーザー掘削や描画パターンの歪みなどのレーザー出力過多による弊害は発生しなかった。
感熱マスク層(C1)は架橋されているため外傷に強く、プレートセッターへの装着などの取り扱いが容易であった。感光性樹脂印刷版原版1から保護層(E)を剥離する際にも感熱マスク層(C1)の不良な剥離は起きず、保護層(E)剥離後も取扱い中に感熱マスク層(C1)にシワが入るなどの問題は発生しなかった。感熱マスク層(C1)の接着性を測定したところ、100mN/cm以上であることがわかった。
続いて、画像マスク(C1’)側から、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光した(露光量:1000mJ/cm2)。
次いで、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを備えたブラシ式現像機FTW500II(東レ(株)製)を用いて、35℃の水道水で1.5分間現像を行ったところ、剥離補助層(D1)、画像マスク(C1’)および画像マスクに遮断され紫外線に露光されていない部分の感光性樹脂層(A1)が選択的に現像され、画像マスク(C1’)に対してネガティブなレリーフを忠実に再現していた。感熱マスク層(C1)自体は架橋されており水不溶性であるが、層(C1)の膜厚を2μm以下と薄くし、かつコシの強いブラシで現像する事によって、感熱マスク層(C1)が機械的に削りとられ、結果として層(C1)は現像された。
得られたレリーフには黒色の画像マスク(C1’)が混入しておらず、感光性樹脂層(A1)のみで形成されており、シャープな形状を示していた。これは感熱マスク層(C1)が架橋されて水不溶性の性質を有しているため、親水性の感光性樹脂層(A1)と混合することが無く、各層が独立して存在していたためである。
(実施例2)
感光性樹脂シート1の感光性樹脂層(A1)上に塗工液組成物1を展開し、その上に、感熱マスク要素2を接着力調整層(B1)が塗工液組成物1が展開された感光性樹脂層(A1)に接するようにかぶせて、80℃に加熱したカレンダーロールでラミネートを行い、接着剤塗布基板1/感光性樹脂層(A1)/接着力調整層(B1)/感熱マスク層(C2)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の順に積層された感光性樹脂印刷版原版2を得た。カレンダーロールのクリアランスは、原版2から保護層(E)を剥離した後における積層体の厚みが950μmになるように調整した。展開された塗工液組成物1は、ラミネート後1週間静置させることによって、残存溶媒が自然乾燥し、追加の感光性樹脂層(A1)を形成する。
感光性樹脂印刷版原版2から保護膜(E)を剥離した後、赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、基板側がドラムに接するように装着し、解像度156線のテストパターン(ベタ部、1%〜99%網点、1〜8ポイントの細線、1〜8ポイントの白抜き部分を有する)を描画し、感熱マスク層(C2)から画像マスク(C2’)を形成した。レーザー出力9W、ドラム回転数700rpmの条件で、ベタ部の感熱マスク層(C2)が実質上レーザー融除され、下層の感光性樹脂層(A1)表面へのレーザー掘削や描画パターンの歪みなどのレーザー出力過多による弊害は発生しなかった。
また、感熱マスク層(C2)は架橋されているため外傷に強く、プレートセッターへの装着などの取り扱いが容易であった。感光性樹脂印刷版原版2から保護層(E)を剥離する際にも感熱マスク層(C2)の不良な剥離は起きず、保護層(E)剥離後も取扱い中に感熱マスク層(C2)にシワが入るなどの問題は発生しなかった。感熱マスク層(C2)の接着性を測定したところ、100mN/cm以上であることがわかった。
続いて、画像マスク(C2’)側から、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光した(露光量:1000mJ/cm2)。
次いで、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを備えたブラシ式現像機FTW500II(東レ(株)製)を用いて、35℃の水道水で1.5分間現像を行ったところ、剥離補助層(D1)、画像マスク(C2’)および画像マスクに遮断され紫外線に露光されていない部分の感光性樹脂層(A1)が選択的に現像され、画像マスク(C2’)に対してネガティブなレリーフを忠実に再現していた。感熱マスク層(C2)自体は架橋されており水不溶性であるが、層(C2)の膜厚を2μm以下と薄くし、かつコシの強いブラシで現像する事によって、感熱マスク層(C2)が機械的に削りとられ、結果として層(C2)は現像された。
得られたレリーフには黒色の画像マスク(C2’)が混入しておらず、感光性樹脂層(A1)のみで形成されており、シャープな形状を示していた。これは感熱マスク層(C2)が架橋されて水不溶性の性質を有しているため、親水性の感光性樹脂層(A1)と混合することが無く、各層が独立して存在していたためである。
<感熱マスク要素3の製造>
厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”S10(東レ(株)製)上に、塗工液組成物2をバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.25μmになるように塗布、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の剥離補助層(D1)側に、塗工液組成物3をバーコーターを用いて乾燥膜厚が2μmになるように塗布、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体である感熱マスク要素3を得た。この感熱マスク要素3の光学濃度(オルソクロマチックフィルター、透過モード)は3.6であった。
<感熱マスク要素4の製造>
厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”S10(東レ(株)製)上に、塗工液組成物2をバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.25μmになるように塗布、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の剥離補助層(D1)側に、塗工液組成物3をバーコーターを用いて乾燥膜厚が2μmになるように塗布、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の感熱マスク層(C1)側に、塗工液組成物6をバーコーターを用いて乾燥膜厚が1μmになるように塗布、180℃で30秒間乾燥し、接着力調整層(B2)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体である感熱マスク要素4を得た。この感熱マスク要素4の光学濃度(オルソクロマチックフィルター、透過モード)は3.6であった。
(比較例1)
感光性樹脂シート1の感光性樹脂層(A1)上に塗工液組成物1を展開し、その上に、感熱マスク要素3を感熱マスク層(C1)が塗工液組成物1が展開された感光性樹脂層(A1)に接するようにかぶせて、80℃に加熱したカレンダーロールでラミネートを行い、接着剤塗布基板1/感光性樹脂層(A1)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の順に積層された感光性樹脂印刷版原版3を得た。カレンダーロールのクリアランスは、原版3から保護層(E)を剥離した後における積層体の厚みが950μmになるように調整した。展開された塗工液組成物1は、ラミネート後1週間静置させることによって、残存溶媒が自然乾燥し、追加の感光性樹脂層(A1)を形成する。
感光性樹脂印刷版原版3から保護膜(E)を剥離したところ、原版3端部で感熱マスク層(C1)が一部感光性樹脂層(A1)から剥がれる問題が発生した。保護層(E)を完全に剥離した後、赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、基板側がドラムに接するように装着し、解像度156線のテストパターン(ベタ部、1%〜99%網点、1〜8ポイントの細線、1〜8ポイントの白抜き部分を有する)を描画し、感熱マスク層(C1)から画像マスク(C1’)を形成した。レーザー出力9W、ドラム回転数700rpmの条件で、ベタ部の感熱マスク層(C1)が実質上レーザー融除され、下層の感光性樹脂層(A1)表面へのレーザー掘削や描画パターンの歪みなどのレーザー出力過多による弊害は発生しなかった。
感熱マスク層(C1)は架橋されているため外傷に強かったが、保護層(E)剥離後の感光性樹脂印刷版原版3は取り扱い時に感熱マスク層にシワが入りやすかった。また赤外線照射後得られた画像マスク(C1’)は、外部刺激に対して容易に感光性樹脂層(A1)上でずれる等の問題が発生し、細線画像など大きく歪んだ。感熱マスク層(C1)の接着性を測定したところ、8.0mN/cmであった。
続いて、画像マスク(C1’)側から、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光した(露光量:1000mJ/cm2)。
次いで、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを備えたブラシ式現像機FTW500II(東レ(株)製)を用いて、35℃の水道水で1.5分間現像を行ったところ、剥離補助層(D1)、画像マスク(C1’)および画像マスクに遮断され紫外線に露光されていない部分の感光性樹脂層(A1)が選択的に現像されたが、画像マスク(C1’)が歪んでいたために赤外線を照射した通りのレリーフは得られなかった。
(比較例2)
感光性樹脂シート1の感光性樹脂層(A1)上に塗工液組成物1を展開し、その上に、感熱マスク要素4を接着力調整層(B2)が塗工液組成物1が展開された感光性樹脂層(A1)に接するようにかぶせて、80℃に加熱したカレンダーロールでラミネートを行い、接着剤塗布基板1/感光性樹脂層(A1)/接着力調整層(B2)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の順に積層された感光性樹脂印刷版原版4を得た。カレンダーロールのクリアランスは、原版4から保護層(E)を剥離した後における積層体の厚みが950μmになるように調整した。展開された塗工液組成物1は、ラミネート後1週間静置させることによって、残存溶媒が自然乾燥し、追加の感光性樹脂層(A1)を形成する。
感光性樹脂印刷版原版4から保護膜(E)を剥離した後、赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、基板側がドラムに接するように装着し、解像度156線のテストパターン(ベタ部、1%〜99%網点、1〜8ポイントの細線、1〜8ポイントの白抜き部分を有する)を描画し、感熱マスク層(C1)から画像マスク(C1’)を形成した。レーザー出力9W、ドラム回転数700rpmの条件で、ベタ部の感熱マスク層(C1)が実質上レーザー融除され、下層の感光性樹脂層(A1)表面へのレーザー掘削や描画パターンの歪みなどのレーザー出力過多による弊害は発生しなかった。
また、感熱マスク層(C1)は架橋されているため外傷に強かったが、保護層(E)剥離後の感光性樹脂印刷版原版4は取り扱い時に感熱マスク層にシワが極めて入りやすかった。また赤外線照射後得られた画像マスク(C1’)は、外部刺激に対して容易に感光性樹脂層(A1)上でずれる等の問題が発生し、細線画像など大きく歪んだ。感熱マスク層(C1)の接着性を測定したところ、11.6mN/cmであることがわかった。
続いて、画像マスク(C1’)側から、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光した(露光量:1000mJ/cm2)。
次いで、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを備えたブラシ式現像機FTW500II(東レ(株)製)を用いて、35℃の水道水で現像を行ったところ、剥離補助層(D1)、画像マスク(C1’)および画像マスクに遮断され紫外線に露光されていない部分の感光性樹脂層(A1)が選択的に現像されたが、画像マスク(C1’)の現像に要した時間が実施例1、実施例2および比較例1に比べてやや長く、現像終了までに2.5分要した。これは、水に溶解し難い接着力調整層(B2)が感光性樹脂層(A1)と感熱マスク層(C1)との間に積層され接着しており、水現像を妨げたためである。
<感熱マスク要素5の製造>
厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”S10(東レ(株)製)上に、塗工液組成物2をバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.25μmになるように塗布、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の剥離補助層(D1)側に、塗工液組成物3をバーコーターを用いて乾燥膜厚が2μmになるように塗布、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の感熱マスク層(C1)側の表面にコロナ放電処理(260V)を施した後、処理された感熱マスク層(C1)上に塗工液組成物5をバーコーターを用いて乾燥膜厚が1μmになるように塗布、150℃で30秒間乾燥し、接着調整層(B1)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の積層体である感熱マスク要素5を得た。この感熱マスク要素5の光学濃度(オルソクロマチックフィルター、透過モード)は3.6であった。
(実施例3)
感光性樹脂シート1の感光性樹脂層(A1)上に塗工液組成物1を展開し、その上に、感熱マスク要素5を接着力調整層(B1)が塗工液組成物1が展開された感光性樹脂層(A1)に接するようにかぶせて、80℃に加熱したカレンダーロールでラミネートを行い、接着剤塗布基板1/感光性樹脂層(A1)/接着力調整層(B1)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/保護層(E)の順に積層された感光性樹脂印刷版原版5を得た。カレンダーロールのクリアランスは、原版5から保護層(E)を剥離した後における積層体の厚みが950μmになるように調整した。展開された塗工液組成物1は、ラミネート後1週間静置させることによって、残存溶媒が自然乾燥し、追加の感光性樹脂層(A1)を形成する。
感光性樹脂印刷版原版5から保護膜(E)を剥離した後、赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、基板側がドラムに接するように装着し、解像度156線のテストパターン(ベタ部、1%〜99%網点、1〜8ポイントの細線、1〜8ポイントの白抜き部分を有する)を描画し、感熱マスク層(C1)から画像マスク(C1’)を形成した。レーザー出力9W、ドラム回転数700rpmの条件で、ベタ部の感熱マスク層(C1)が実質上レーザー融除され、下層の感光性樹脂層(A1)表面へのレーザー掘削や描画パターンの歪みなどのレーザー出力過多による弊害は発生しなかった。
また、感熱マスク層(C1)は架橋されているため外傷に強く、プレートセッターへの装着などの取り扱いが容易であった。感光性樹脂印刷版原版5から保護層(E)を剥離する際にも感熱マスク層(C1)の不良な剥離は起きず、保護層(E)剥離後も取扱い中に感熱マスク層(C1)にシワが入るなどの問題は発生しなかった。感熱マスク層(C1)の接着性を測定したところ、100mN/cm以上であることがわかった。
続いて、画像マスク(C1’)側から、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光した(露光量:1000mJ/cm2)。
次いで、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを備えたブラシ式現像機FTW500II(東レ(株)製)を用いて、35℃の水道水で1.5分間現像を行ったところ、剥離補助層(D1)、画像マスク(C1’)および画像マスクに遮断され紫外線に露光されていない部分の感光性樹脂層(A1)が選択的に現像され、画像マスク(C1’)に対してネガティブなレリーフを忠実に再現していた。感熱マスク層(C1)自体は架橋されており水不溶性であるが、層(C1)の膜厚を2μm以下と薄くし、かつコシの強いブラシで現像する事によって、感熱マスク層(C1)が機械的に削りとられ、結果として層(C1)は現像された。
得られたレリーフには黒色の画像マスク(C1’)が混入しておらず、感光性樹脂層(A1)のみで形成されており、シャープな形状を示していた。これは感熱マスク層(C1)が架橋されて水不溶性の性質を有しているため、親水性の感光性樹脂層(A1)と混合することが無く、各層が独立して存在していたためである。
<感熱マスク要素6の製造>
厚さ100μmのポリエステルフィルム“ルミラー”S10(東レ(株)製)上に、塗工液組成物3をバーコーターを用いて乾燥膜厚が2μmになるように塗布、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(C1)/保護層(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の感熱マスク層(C1)側に、塗工液組成物5をバーコーターを用いて乾燥膜厚が1μmになるように塗布、180℃で30秒間乾燥し、接着調整層(B1)/感熱マスク層(C1)/保護層(E)の積層体である感熱マスク要素6を得た。この感熱マスク要素6の光学濃度(オルソクロマチックフィルター、透過モード)は3.6であった。
(実施例4)
感光性樹脂シート1の感光性樹脂層(A1)上に塗工液組成物1を展開し、その上に、感熱マスク要素6を接着力調整層(B1)が塗工液組成物1が展開された感光性樹脂層(A1)に接するようにかぶせて、80℃に加熱したカレンダーロールでラミネートを行い、接着剤塗布基板1/感光性樹脂層(A1)/接着力調整層(B1)/感熱マスク層(C1)/保護層(E)の順に積層された感光性樹脂印刷版原版6を得た。カレンダーロールのクリアランスは、原版6から保護層(E)を剥離した後における積層体の厚みが950μmになるように調整した。展開された塗工液組成物6は、ラミネート後1週間静置させることによって、残存溶媒が自然乾燥し、追加の感光性樹脂層(A1)を形成する。
感光性樹脂印刷版原版16から保護膜(E)を剥離した後、赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、基板側がドラムに接するように装着し、解像度156線のテストパターン(ベタ部、1%〜99%網点、1〜8ポイントの細線、1〜8ポイントの白抜き部分を有する)を描画し、感熱マスク層(C1)から画像マスク(C1’)を形成した。レーザー出力9W、ドラム回転数700rpmの条件で、ベタ部の感熱マスク層(C1)が実質上レーザー融除され、下層の感光性樹脂層(A1)表面へのレーザー掘削や描画パターンの歪みなどのレーザー出力過多による弊害は発生しなかった。
感熱マスク層(C1)は架橋されているため外傷に強く、プレートセッターへの装着などの取り扱いが容易であった。感光性樹脂印刷版原版6から保護層(E)を剥離する際に剥離力が大きく労力を要したものの、感熱マスク層(C1)の不良な剥離は起きず、保護層(E)剥離後も取扱い中に感熱マスク層(C1)にシワが入るなどの問題は発生しなかった。感熱マスク層(C1)の接着性を測定したところ、100mN/cm以上であることがわかった。
続いて、画像マスク(C1’)側から、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光した(露光量:1000mJ/cm2)。
次いで、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを備えたブラシ式現像機FTW500II(東レ(株)製)を用いて、35℃の水道水で1.5分間現像を行ったところ、画像マスク(C1’)および画像マスクに遮断され紫外線に露光されていない部分の感光性樹脂層(A1)が選択的に現像され、画像マスク(C1’)に対してネガティブなレリーフを忠実に再現していた。感熱マスク層(C1)自体は架橋されており水不溶性であるが、層(C1)の膜厚を2μm以下と薄くし、かつコシの強いブラシで現像する事によって、感熱マスク層(C1)が機械的に削りとられ、結果として層(C1)は現像された。
得られたレリーフには黒色の画像マスク(C1’)が混入しておらず、感光性樹脂層(A1)のみで形成されており、シャープな形状を示していた。これは感熱マスク層(C1)が架橋されて水不溶性の性質を有しているため、親水性の感光性樹脂層(A1)と混合することが無く、各層が独立して存在していたためである。