JP2009244314A - 感光性樹脂印刷版原版 - Google Patents

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Abstract

【課題】経時変化により現像不良が発生せず原画フィルムを必要としないで、凸状のレリーフ像を形成することが可能な感光性樹脂印刷版原版を提供すること。
【解決手段】支持体上に、少なくとも水に溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーを含有する感光性樹脂層(A)、および赤外線吸収物質を含有する感熱マスク層(C)、カバーフィルム(E)を有する感光性樹脂印刷版原板において、感熱マスク層(C)が、水不溶性で重量平均分子量が100000〜500000のアクリル樹脂を含有することを特徴とする感光性樹脂印刷版原版。
【選択図】なし

Description

本発明は感光性樹脂印刷版原版に関し、さらに詳しくはコンピューター製版技術で樹脂凸版印刷版を作製する際に使用する感光性樹脂印刷版原版に関する。
近年、各種印刷の分野において、デジタル画像形成技術として知られているコンピューター製版技術(コンピューター・トゥ・プレート(CTP)技術)は、一般的なものとなってきている。感光性樹脂凸版やフレキソなどの凸版印刷版の分野におけるCTP技術としては、従来から使用されている写真マスク(フォトマスクやネガフィルムともいう)を使用せず、コンピューター上で処理された情報を印刷版原版上に直接出力し、デジタルデータより画像マスクを‘その場で’感光性樹脂層上に形成し、その後、活性光線、多くの場合では紫外線を画像マスク側から全面露光することによって、画像マスクの非被覆部のみ選択的に感光性樹脂層を硬化させ、印刷版を得る方式が積極的に提案されている。この方式の利点は、(1)ネガフィルムの製造工程が不要となること、(2)ネガフィルムの現像廃液の処理が不要で環境衛生的に好ましいこと、(3)ネガフィルムを密着させる際の異物混入がなくなること加えて、(4)シャープな構造のレリーフが得られることなどが挙げられる。
上述のデジタルデータより画像マスクを‘その場で’感光性樹脂層上に形成し、印刷版を得る方式の具体的な方法としては、現在、2つの技術が存在する。1つはインキジェットプリンターまたは電子写真プリンターを用いて感光性樹脂層上に画像マスク被膜を形成する方法で(例えば、特許文献1参照)、もう1つは、感光性樹脂層上に紫外光に対して不透明な感熱マスク層をあらかじめ設けており、感赤外線層に赤外レーザーを照射し、感熱マスク層を融除し、画像マスクを形成する方法である。
ところで、上記感熱マスク層(C)を有する感光性樹脂印刷版原版において、感熱マスク層(C)には、高分子バインダーにカーボンブラックを含有させた組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、感熱マスク層(C)を水不溶性とすることで感光性樹脂層(A)と感熱マスク層(C)の極性の違いから、両層間での物質移動を防ぐことができる(例えば、特許文献3)。しかしながら、一方で水不溶性の感熱マスク層(C)を用いた場合、水現像によりレリーフを作製する感光性樹脂印刷版原版では現像不良の原因となり、特に反応性のメラミン樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート等の架橋剤を用いるような感熱マスク層(C)では経時により反応が進行し、ブラシを用いる水現像でも感熱マスク層(C)が除去できないためにレリーフを作製できないという不具合が発生していた。
独国特許第4117127号明細書(第1頁) 特許第3429634号公報(第3−7頁) 特開2004−163925号(第2−12頁)
本発明の目的は、上記問題を鑑みて、経時変化により現像不良を発生せず、原画フィルムを必要としないで、凸状のレリーフ像を形成することが可能な感光性樹脂印刷版原版を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明によれば、主として以下の構成を有する感光性樹脂印刷版原版が提供される。すなわち、
「支持体上に、少なくとも水に溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーを含有する感光性樹脂層(A)、および赤外線吸収物質を含有する感熱マスク層(C)、カバーフィルム(E)を有する感光性樹脂印刷版原板において、感熱マスク層(C)が、水不溶性で重量平均分子量が100000〜500000のアクリル樹脂を含有することを特徴とする感光性樹脂印刷版原版」である。
本発明によれば、原画フィルムを必要としないで凸状のレリーフ像を形成することが可能な感光性樹脂印刷版原版を容易に提供することができる。本発明の感光性樹脂印刷版原版を用いると、経時変化により現像不良を発生せず、レリーフ像を形成することが可能である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明における感光性樹脂印刷版原版は、支持体上に、少なくとも水に溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーを含有する感光性樹脂層(A)、および赤外線吸収物質を含有する感熱マスク層(C)、カバーフィルム(E)をこの順に有する。
本発明における感光性樹脂層(A)は、水またはアルコールに溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーを含有する。また、感光性樹脂層(A)は紫外光、好ましくは300〜400nmの光を照射することにより、光硬化する。感光性樹脂層(A)の素材としては、感光性樹脂組成物が用いられ、好ましくは厚さ0.1〜10mmのシート状に形成したものである。
上記した感光性樹脂組成物には、水またはアルコールに溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーが含有される。さらに、光重合開始剤が好ましくは含有される。
本発明における水またはアルコールに溶解または分散可能な樹脂は、感光性樹脂組成物を固体状態にして形態を保持するための担体樹脂としての機能を有するとともに、感光性樹脂層(A)の水またはアルコールによる現像性を付与するために使用される。このような樹脂として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリ酢酸ビニル(部分鹸化ポリビニルアルコール)、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンオキサイドの如き親水性基を導入したポリアミド樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体など、およびこれら樹脂の変性体が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、親水性基を導入したポリアミド樹脂、およびこれら樹脂の変性体が好ましく用いられる。
紫外光により硬化可能なモノマーとは、一般的に、ラジカル重合により架橋可能な物質である。ラジカル重合により架橋可能な物質であれば、特に限定されるものではないが、例えば次のようなものを挙げることができる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド類、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、などのエチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物、などの2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。
本発明に好ましく使用される光重合開始剤とは、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば特に限定されない。なかでも、自己開裂や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などある。
感光性樹脂組成物には、その他の成分として、相溶性、柔軟性を高める等の目的で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類を含有することが可能であり、熱安定性を上げる為に、従来公知の重合禁止剤を含有することもできる。好ましい重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類などが挙げられる。また、染料、顔料、界面活性剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤などを含有することもできる。
感光性樹脂組成物から感光性樹脂層(A)を得る方法としては特に限定されないが、例えば、水またはアルコールに溶解または分散可能な樹脂を溶剤に溶解した後に、紫外光により硬化可能なモノマー、光重合開始剤および必要に応じてその他添加剤を添加して充分攪拌し、感光性樹脂組成物溶液を得て、この溶液から溶剤を除去した後に、好ましくは接着剤を塗布した支持体上に溶融押し出しすることにより得ることができる。あるいは一部溶媒が残存している溶液を、接着剤を塗布した支持体上に溶融押し出しし、一部残存している溶媒を経時によって自然乾燥させることによっても得ることができる。
本発明における支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定なものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属板やポリエステルなどのプラスチックシート、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシートが挙げられる。
本発明における感熱マスク層(C)は、(1)赤外レーザーを効率よく吸収して、その熱によって瞬間的に該層の一部または全部が蒸発または融除し、レーザーの照射部分と未照射部分の光学濃度に差が生じる、すなわち照射部分の光学濃度の低下が起こる働きと、(2)紫外光を実用上遮断する働きを有するものである。
また、本発明における感熱マスク層(C)は、赤外レーザーを吸収し熱に変換する機能を有する赤外線吸収物質と水不溶性であるアクリル樹脂を含有する。
赤外線吸収物質としては、赤外光を吸収して熱に変換し得る物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック等の黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、ローダミン色素、ナフトキノン系色素、ポリメチン系染料、ジイモニウム塩、アゾイモニウム系色素、カルコゲン系色素、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、アリールアルミニウム金属塩類、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物や、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステン等の金属酸化物、これらの金属の水酸化物、硫酸塩、さらにビスマス、スズ、テルル、鉄、アルミの金属粉などが挙げられる。
これらのなかでも、光熱変換率および、経済性、取扱い性、および後述する紫外線吸収機能の面から、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックは、その製造方法からファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等に分類されるが、ファーネスブラックは粒径その他の面で様々なタイプのものが市販されており、商業的にも安価であるため、好ましく使用される。
感熱マスク層(C)に含有するアクリル樹脂は水不溶性であり、水と混合可能なアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)にも溶解しないことが好ましい。それにより下層の感光性樹脂層(A)からの物質移動を抑制することできる。一般的にアクリル樹脂は、熱分解温度が190℃〜250℃であるため、赤外線吸収物質が赤外レーザーを吸収して発生した熱により分解しやすいので感熱マスク層(C)に好ましく用いられる。なお、本発明でいうアクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる1つ以上のモノマーの重合体あるいは共重合体のことをいう。
また、アクリル樹脂は感熱マスク層(C)を形成するために重量平均分子量が100000〜500000であることが必要であり、150000〜400000であることが好ましい。重量平均分子量が100000より下である場合は、感熱マスク層(C)の成膜性が悪くなり、カーボンブラックを分散させた感熱マスク層(C)が柔らかく、べとつき、感光性樹脂印刷版原板とした場合、カバーフィルム(E)の剥離時に感熱マスク層(C)が破れるなどの不具合を発生する。また、重量平均分子量が500000より大きい場合は感熱マスク層(C)を形成するための、アクリル樹脂にカーボンブラックを分散させた塗剤の粘度が高すぎて、適当な感熱マスク層(C)を形成することができない。なお、アクリル樹脂の重量平均分子量測定はGPC法により測定する。
さて、本発明で用いるアクリル樹脂は水酸基を含有することが好ましい。アクリル樹脂に水酸基を導入することによって、感熱マスク層(C)と感光層の層間の密着不良が改善され、カバーフィルム(E)剥離時に感熱マスク層(C)が感光性樹脂層(A)から剥離するなどの不具合を回避できる。アクリル樹脂に水酸基を導入する方法としては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはプラクセルFAおよびFM(ダイセル化学工業(株)の商品名)として知られる2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート/カプロラクトン付加体のようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート/ラクトン付加体と、他のエチレン性不飽和モノマーを常法により共重合することによって得ることができるが、この限りではない。また、共重合して得るモノマーの例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のアルキルエステル(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルへキシルなと)、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどがある。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート/ラクトン付加体は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを開始剤とし、典型的にはε−カプロラクトンであるω−ヒドロキシCアルカン酸ラクトンを開環付加反応させて得られる。2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート/ε−カプロラクトン付加体はプラクセルFAおよびFMシリーズとしてダイセル化学工業によって製造販売されている。
さらに、水酸基を含有するアクリル樹脂の水酸基価(mgKOH/g)が10〜130であることが好ましく、20〜100であることがより好ましい。水酸基価が10以上であれば感光層との密着が十分となり、カバーフィルム(E)の剥離時に感熱マスク層(C)が破れるなどの不具合を発生しにくくなる。また、水酸基価が150以下であれば、感光性樹脂層(A)からの物質移行が起こりにくくなる。
また、感熱マスク層(C)のアクリル樹脂と赤外線吸収物質の混合比率は重量比率でアクリル樹脂/赤外線吸収物質=3/7〜7/3であることが好ましい。アクリル樹脂が少ない場合はカーボンブラックを分散させた感熱マスク層(C)が柔らかく、べとつき、感光性樹脂印刷版原板とした場合、カバーフィルム(E)の剥離時に感熱マスク層(C)が破れるなどの不具合を発生しやすくなる。一方、アクリル樹脂が多い場合は、アクリル樹脂が水不溶性のためレリーフを形成する際の水現像の時間が長くなり、生産性が悪くなる場合がある。
感熱マスク層(C)は前記赤外線吸収物質とアクリル樹脂の他に、紫外光を遮断する機能を有する紫外線吸収物質を含有してもよい。
ここで、紫外光を遮断する機能を有するとは、感熱マスク層(C)の光学濃度(optical density)が2.0以上のことを指し、より好ましくは2.5以上であり5.0以下であることが好ましい。光学濃度は一般にDで表され、以下の式で定義される。
D=log10(100/T)=log10(I/I)
(ここで、Tは透過率(単位は%)、Iは透過率測定の際の入射光強度、Iは透過光強度である)。
光学濃度が2.0より小さい場合、感熱マスク層(C)を介して感光性樹脂層(A)が露光され、望みのレリーフを得ることができない場合がある。また、5.0以上であると感熱マスク層(C)の膜厚が厚くなり、レーザー描画による画像マスク形成が困難となる場合がある。
光学濃度の測定には、入射光強度を一定にして透過光強度の測定値から算出する方法と、ある透過光強度に達するまでに必要な入射光強度の測定値から算出する方法が知られているが、本発明における光学濃度は前者の透過光強度から算出した値をいう。
光学濃度は、オルソクロマチックフィルターを用いて、マクベス透過濃度計「TR−927」(コルモルゲンインスツルメンツ(Kollmorgen Instruments Corp.)社製)を用いることで測定することができる。
感熱マスク層(C)に好ましく使用される紫外線吸収物質としては特に限定されないが、好ましくは、300nm〜400nmの領域に吸収を有する化合物である。例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、カーボンブラック、および赤外線吸収物質で列挙した金属あるいは金属酸化物などを挙げることができる。なかでもカーボンブラックは、紫外光領域だけでなく赤外光領域にも吸収特性があり、光熱変換物質としても機能するので、特に好ましく用いられる。
本発明の感光性樹脂印刷版原版は感光性樹脂層(A)と感熱マスク層(C)の間に接着力調整層(B)を設けてもよい。接着力調整層(B)は、鹸化度30モル%以上の部分鹸化ポリ酢酸ビニル、ポリアミド等の水溶解性および/または水分酸性の樹脂を含有することが好ましい。また、接着力調整層(B)には、適当な接着力を最適化するための樹脂類やモノマー類、塗工性や安定性を調整するための界面活性剤や可塑剤などの添加剤を含有させることも任意である。
接着力調整層(B)の形成方法は特に限定されないが、薄膜形成の簡便さから、接着力調整層(B)成分を溶媒に溶解した状態で、感熱マスク層(C)上にコーティングしてから溶媒を除去する方法が好ましく行われる。溶媒の除去方法には例えば熱風乾燥、遠赤外線乾燥、あるいは自然乾燥などが行われる。
また、感熱マスク層(C)が不溶性の場合、感熱マスク層(C)表面にコロナ放電処理を施し、表面を親水性とした後に親水性の接着力調整層(B)を感熱マスク層(C)に接する様に積層すると、層(B)/(C)間の接着力を増大させることができる。
接着力調整層(B)をコーティングするために使用する溶媒は特に限定されないが、水やアルコール、または水とアルコールの混合物が主に使用される。水やアルコールを使用した場合、感熱マスク層(C)が水不溶性であると、感熱マスク層(C)上にコーティングしても感熱マスク層(C)が侵食を受けることがないため好ましい。
接着力調整層(B)の膜厚は15μm以下が好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。15μm以下であれば、紫外光を露光した際の該層による光の屈曲や散乱が抑えられ、シャープなレリーフ画像が得られる。また、0.1μm以上であれば、接着力調整層(B)の形成が容易となる。
こうして感熱マスク層(C)上に接着力調整層(B)を積層した後、接着力調整層(B)に接するようにさらに感光性樹脂層(A)を積層することにより、層(A)/(B)/(C)の順に十分な接着力で積層された積層体が得られる。
本発明では、感熱マスク層(C)の上に、カバーフィルム(E)を設ける。カバーフィルム(E)は、感熱マスク層(C)を外傷から保護する目的等に使用することができる。カバーフィルム(E)には、感熱マスク層(C)から剥離可能なポリマーフィルムが好ましく使用される。このようなカバーフィルム(E)として、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムが挙げられる。あるいはシリコーンなどが塗布された剥離紙もカバーフィルム(E)として使用できる。
カバーフィルム(E)の膜厚は25μm〜200μmが好ましく、50μm〜150μmがより好ましい。25μm以上であれば取り扱いが容易であり、かつ感熱マスク層(C)を外傷から保護する機能が発現し、200μm以下であれば安価で経済的に有利であり、かつ剥離しやすいという利点を有する。
感熱マスク層(C)の上に剥離補助層(D)を設けても良い。剥離補助層(D)は好ましくは感熱マスク層(C)とカバーフィルム(E)の間に設けられる。剥離補助層(D)は、感光性樹脂印刷版原版から剥離補助層(D)のみまたはカバーフィルム(E)のみまたはカバーフィルム(E)および剥離補助層(D)両方を容易に剥離せしめる機能を有することが好ましい。カバーフィルム(E)と感熱マスク層(C)が直接積層されており両層間の接着力が強いと、カバーフィルム(E)を剥離できない、または、感熱マスク層(C)ごと剥離してしまう可能性がある。
したがって、剥離補助層(D)は、感熱マスク層(C)との接着力が強く、カバーフィルム(E)との接着力が剥離可能な程度に弱い物質、あるいは感熱マスク層(C)との接着力が剥離可能な程度に弱く、カバーフィルム(E)との接着力が強い物質から構成されことが好ましい。なお、カバーフィルム(E)を剥離した後、剥離補助層(D)は感熱マスク層(C)側に残留し最外層になる場合があるので、取り扱いの面から粘着質でないことや、該層を通して紫外光露光されるため実質透明であることが好ましい。
剥離補助層(D)に使用される材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂などであり、水に溶解または分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、鹸化度60〜99モル%の部分鹸化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースが特に好ましく用いられる。
剥離補助層(D)は、さらに、赤外線で融除しやすくするために赤外線吸収物質を含有してもよい。赤外線吸収物質としては感熱マスク層(C)で記載したものを使用することができる。また、塗工性や濡れ性、剥離性向上のために界面活性剤を添加しても良い。特にリン酸エステル系の界面活性剤を剥離補助層(D)に含有するとカバーフィルム(E)からの剥離性が良化する。
剥離補助層(D)の膜厚は6μm以下が好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。1μm以下であれば、下層の感熱マスク層(C)のレーザー融除性を損なうことがない。また、0.1μm以上であれば、剥離補助層(D)の形成が容易である。
感光性樹脂印刷版原版からカバーフィルム(E)を200mm/分で剥離する時、1cm当たりの剥離力が0.5〜20g/cmであることが好ましく、1〜15g/cmがさらに好ましい。0.5g/cm以上であれば、作業中にカバーフィルム(E)が剥離してくることなく作業できるので好ましく、20g/cm以下であれば無理なくカバーフィルム(E)を剥離することができるので好ましい。
次に本発明の感光性樹脂印刷版原版の好ましい製造方法を記載する。
基板上に感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)、感熱マスク層(C)、剥離補助層(D)およびカバーフィルム(E)を順次積層した構造を有する原版で説明する。カバーフィルム(E)上に順次コーティング法で、剥離補助層(D)、感熱マスク層(C)および接着力調整層(B)を積層した感熱マスク層(C)を有するシートと、基板上に感光性樹脂層(A)を積層した感光性樹脂シートとをラミネートすることによって得ることができる。ラミネート方法としては特に限定されず、例えば、感光性樹脂層(A)あるいは接着力調整層(B)の表面を水および/またはアルコールで膨潤させ、感熱マスクシートを貼り合わせる方法、感光性樹脂層(A)と同じ、あるいは類似組成の高粘度の液体を、感光性樹脂シートと感熱マスクシートの間に流し込んで両者を貼り合わせる方法、常温下であるいは加熱しながらプレス機でプレスする方法などがある。
本発明における樹脂凸版印刷版の製造方法は、上述の感光性樹脂印刷版原版を用い、(1)赤外レーザーで感熱マスク層(C)に像様照射することによって画像マスク(C’)を形成する工程、(2)形成された画像マスク(C’)側から紫外光を用いて露光し、感光性樹脂層(A)に潜像を形成する工程、(3)水を主成分とする液により現像処理し、画像マスク(C’)および紫外光未露光部の感光性樹脂層(A)を除去する工程からなる。
剥離補助層(D)および/またはカバーフィルム(E)が存在する場合には、少なくともカバーフィルム(E)を剥離した後、感熱マスク層(C)に赤外レーザーを画像状に像様照射して、画像マスク(C’)を形成することが好ましい。より好ましくは、剥離補助層(D)とカバーフィルム(E)が存在し、カバーフィルム(E)のみを剥離した後、感熱マスク層(C)に赤外レーザーを画像状に像様照射して、画像マスク(C’)を形成することである。
(1)赤外レーザーで感熱マスク層(C)に像様照射して画像マスク(C’)を形成する工程とは、赤外レーザーを画像データに基づきON/OFFさせて、感熱マスク層(C)に対して走査照射する工程のことである。感熱マスク層(C)は、赤外レーザーが照射されると赤外線吸収物質の作用で熱が発生し、その熱の作用で熱分解性化合物が分解して感熱マスク層(C)が除去、すなわちレーザー融除される。レーザー融除された部分は、光学濃度が大きく低下し、紫外光に対して実質透明になる。画像データに基づき、感熱マスク層(C)を選択的にレーザー融除する事によって、感光性樹脂層(A)に潜像を形成しうる画像マスク(C’)が得られる。
赤外レーザー照射には、発振波長が750nm〜3000nmの範囲にあるものが用いられる。このようなレーザーとしては、例えば、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ペロブスカイトレーザー、Nd−YAGレーザーやエメラルドガラスレーザーなどの固体レーザー、InGaAsP、InGaAsやGaAsAlなどの半導体レーザー、ローダミン色素のような色素レーザーなどが挙げられる。またこれらの光源をファイバーにより増幅させるファーバーレーザーも用いることができる。なかでも、半導体レーザーは近年の技術的進歩により、小型化し、経済的にも他のレーザー光源よりも有利であるので好ましい。また、Nd−YAGレーザーも高出力であり、歯科用や医療用に多く利用されており、経済的にも安価であるので好ましい。
(2)画像マスク(C’)側から紫外光を用いて露光し、感光性樹脂層(A)に潜像を形成する工程とは、上記の方法でレーザー照射された感光性樹脂印刷版材に、紫外光を、好ましくは300〜400nmの波長の紫外光を、レーザーにより画像が形成された画像マスク(C’)を通して全面に露光し、画像マスク(C’)におけるレーザー融除部の下部の感光性樹脂層(A)を選択的に光硬化する工程である。
露光の際、感光性樹脂印刷版材のサイド面からも紫外光が入り込むので、紫外光が透過しないカバーでサイド面を覆うようにしておくのが良い。300〜400nmの波長を露光できる光源として、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などが使用できる。紫外光で露光された部分の感光性樹脂層(A)は、現像液により溶出分散できない物質に変化する。
(3)水を主成分とする液により現像処理し、画像マスク(C’)および紫外光未露光部の感光性樹脂層(A)を除去する工程は、例えば、感光性樹脂層(A)を溶解分散可能な水を主成分とする現像液を持つブラシ式洗い出し機を用いて現像することで達成される。この工程を経て、紫外光で露光された部分が残存し、レリーフ像を有する樹脂凸版印刷版が得られる。
水を主成分とする現像液には、水道水、蒸留水、水のいずれかを主成分とし、炭素数1〜6のアルコールを含有してもよい。ここで、主成分とは、70重量%以上であることを言う。また、これらの液に感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)、感熱マスク層(C)や剥離補助層(D)の成分が混入したものも使用できる。
画像マスク(C’)は、コシの強い、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシで擦ることで、物理的に除去することができる。
その後、必要に応じ、版面に付着している現像液を乾燥する処理、感光性樹脂印刷版材の後露光や粘着性除去処理等を行うこともできる。
本発明の製造方法で製造された樹脂凸版印刷版は、印刷機に装着できる樹脂凸版印刷版として好ましく使用される。
以下に、本発明を実施例を用いて、具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
<アクリル樹脂の重量平均分子量測定>
アクリル樹脂の重量平均分子量測定はGPC法により下記条件で測定し、ポリスチレン換算値として示した。
分析装置:HLC−8220(東ソー(株)製)
カラム:TSK−GEL Super HzM−M
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:35℃
検出器:示差屈折検出器
<アクリル樹脂の水酸基価測定>
(1)アセチル化試薬の調整
1gの無水酢酸をピリジンに加え、200gとした。
(2)滴定
三角フラスコに2.0gのアクリル樹脂を秤量し、アセチル化試薬10mLを入れたものを室温で18時間反応させ、その後1時間還流させてから冷却させた。得られたものに5mLの水を添加して10分間反応させた後、25mLのn−ブタノールを添加し、0.2mLのフェノールフタレイン指示薬を加えて、0.1N KOHエタノール溶液で滴定し、式(1)により水酸基価(mgKOH/g)を求めた。
Figure 2009244314
<感熱マスク層用塗工液の塗布性の測定>
塗布性の測定は、厚さ100μmのルミラーS10(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に、剥離補助層塗工液組成物を、バーコーターを用いて乾燥膜厚が0.3μmになるように塗布、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(D1)/カバーフィルム(E)の積層体の剥離補助層(D1)側に、感熱マスク層用塗工液組成物を、バーコーターを用いて乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、140℃30秒間乾燥させた後、目視及び、透過濃度計(Macbeth TR−927)で確認した。そして、塗膜面にスジ等ムラがなく透過濃度計によるOD値を100cmの面内5カ所で測定し、OD値がΔ0.5>のときを○、Δ0.5≦のときを×とした。
<感熱マスク層の破れ/10cmの測定>
マスク層の破れは、デジタルカメラ(ニコン社製COOLPIX S8)で感熱マスク層の10cmが画面に納まる範囲で写真を撮り、パソコンでデジタル画像をAdobe社製ソフトウェアphotoshopでグレースケール化したのち、SCION CORPORATION社製ソフトウェアSCION Image 4.03.2で破れ部と正常部を2値化し、破れ部面積を求めた。その後、破れ部の面積を10cmで割って、破れ部の比率を求めた。そして、破れ部の比率が5%>の場合を○、5%≦の場合を×とした。なお、2値化時の作業としてはThresholdメニューおよび、Density Sliceメニューで破れ部と正常部がはっきりと識別できるように、画像を見ながら閾値ボタンをスクロールさせて実施した。
<水溶性ポリアミド樹脂1の合成>
ε−カプロラクタム 10重量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩 90重量部および水100重量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、次いで水分を除去して水溶性ポリアミド樹脂1を得た。
<変性ポリビニルアルコール1の合成>
冷却管をつけたフラスコ中に、部分鹸化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”KL−05(鹸化度 78.5%〜82.0%、日本合成化学工業(株)製)50重量部、無水コハク酸2重量部およびアセトン 10重量部を入れ、60℃で6時間加熱した後、冷却管を外してアセトンを揮発させた。その後、100重量部のアセトンで未反応の無水コハク酸を溶出させる精製工程を2回行った後、60℃で減圧乾燥を5時間行い、水酸基にコハク酸がエステル結合した、変性ポリビニルアルコール1を得た。
<感光性樹脂層(A1)用の塗工液組成物1の調製>
撹拌ヘラおよび冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、水溶性ポリアミド樹脂1を7.5重量部、変性ポリビニルアルコール1を47.5重量部、ジエチレングリコール11重量部、水 38重量部およびエタノール 44重量部を入れ、撹拌しながら110℃で30分間、次いで70℃で90分間加熱しポリマーを溶解させた。ついで、“ブレンマー”G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)3重量部を添加し、70℃で30分間撹拌した。さらに“ブレンマー”GMR(グリシジルメタクリレートのメタクリル酸付加物、日本油脂(株)製)12重量部、“ライトエステル”G201P(グリシジルメタクリレートのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)5重量部、“エポキシエステル”70PA(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)6重量部、“NKエステル”A−200(重量平均分子量200のポリエチレングリコールのジアクリレート、新中村化学工業(株)製)5重量部、“イルガキュア”651(ベンジルジメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)0.1重量部、“イルガキュア”184(α−ヒドロキシケトン、チバ・ガイギー(株)製)1.5重量部、“Suminol Fast Cyanine Green G conc.”(酸性染料、カラーインデックス C. I. Acid Green 25、住友化学工業(株)製)0.01重量部、“ダイレクトスカイブルー6B”(浜本染料(株)製)0.01重量部、“フォーマスタ”(消泡剤、サンノプコ(株)製)0.05重量部、“チヌビン”327(紫外線吸収剤、チバ・ガイギー(株)製)0.015重量部、“TTP−44”(ビス−{2−(2−エトキシエトキシカルボニル)エチルチオ}オクチルチオ ホスフィン、淀化学(株)製)0.2重量部および“Q−1300”(アンモニウム N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、和光純薬工業(株)製)0.005重量部を添加して30分間撹拌し、流動性のある感光性樹脂層(A1)の塗工液組成物1を得た。
<接着剤塗布基板1の作製>
“バイロン31SS”(不飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡績(株)製)260重量部および“PS−8A”(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2重量部の混合物を70℃で2時間加熱後30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート7重量部を加えて2時間混合した。さらに、“コロネート”3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業(株)製)25重量部および“EC−1368”(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14重量部を添加し、接着剤組成物1を得た。
“ゴーセノール”KH−17(鹸化度78.5%〜81.5%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)50重量部を“ソルミックス”H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)200重量部および水200重量部の混合溶媒で70℃で2時間溶解させた後、“ブレンマー”G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)1.5重量部を添加して1時間混合し、さらに(ジメチルアミノエチルメタクリレート)/(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)重量比2/1の共重合体(共栄社化学(株)製)3重量部、“イルガキュア”651(ベンジルジメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)5重量部、“エポキシエステル”70PA(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)21重量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート20重量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却後“フロラード”TM FC−430(住友スリーエム(株)製)0.1重量部添加して30分間混合して接着剤組成物2を得た。
厚さ250μmの“ルミラー”T60(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に、接着層組成物1を乾燥後膜厚が40μmとなるようバーコーターで塗布し、180℃のオーブンに3分間入れて溶媒を除去後、その上に接着層組成物2を乾燥膜厚が30μmとなるようバーコーター塗布し、160℃のオーブンで3分間乾燥させ、接着剤塗布基板1を得た。
<感光性樹脂シート1の製造>
接着剤塗布基板1を接着剤塗工側から超高圧水銀灯で1000mJ/cm露光した後、感光性樹脂層(A1)用の塗工液組成物1を接着剤塗布基板1の接着剤塗布面に流延し、60℃のオーブン中で5時間乾燥させて、基板を含めておよそ厚さ900μmの感光性樹脂シート1を得た。感光性樹脂シート1の厚さは、基板上に所定厚のスペサーを設置し、スぺーサーからはみ出ている部分の塗工液組成物1を、水平な金尺で掻き出すことによって制御した。
<接着力調整層(B1)用の塗工液組成物2の調製>
“ゴーセノール”KL−05(鹸化度78.5%〜82%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)11重量部を水 55重量部、メタノール 14重量部、n−プロパノール 10重量部およびn−ブタノール 10重量部に溶解させ、接着力調整層(B1)用の塗工液組成物2を得た。
<感熱マスク層(C1〜C10)用の塗工液組成物3〜12の調製>
表1示すアクリル樹脂20重量部とカーボンブラック20重量部をメチルイソブチルケトン60重量部にあらかじめ混合させたものを、3本ロールミルを用いて混練分散させ、カーボンブラック含有の塗工液組成物3〜12を得た。
<剥離補助層(D1)用の塗工液組成物13の調製>
“ゴーセノール”AL−06(鹸化度91%〜94%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)11重量部を水55重量部、メタノール 14重量部、n−プロパノール 10重量部およびn−ブタノール 10重量部に溶解させ、剥離補助層(D1)用の塗工液組成物13を得た。
<感熱マスク要素1〜10の製造>
厚さ100μmのルミラーS10(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に、塗工液組成物13をバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.3μmになるように塗布、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(D1)/カバーフィルム(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の剥離補助層(D1)側に、塗工液組成物3〜12を、それぞれバーコーターを用いて乾燥膜厚が2μmになるように塗布、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(C1〜C10)/剥離補助層(D1)/カバーフィルム(E)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の感熱マスク層(C1〜C10)側に、塗工液組成物2をそれぞれバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布、140℃で乾燥し、接着調整層(B1)/感熱マスク層(C1〜C10)/剥離補助層(D1)/カバーフィルム(E)の積層体である表1に示す感熱マスク要素1〜10を得た。
(実施例1)
感光性樹脂シート1の感光性樹脂層(A1)上に、感熱マスク要素1を接着力調整層(B1)が感光性樹脂層(A1)に接するようにかぶせて、80℃に加熱したカレンダーロールでラミネートを行い、接着剤塗布基板1/感光性樹脂層(A1)/接着力調整層(B1)/感熱マスク層(C1)/剥離補助層(D1)/カバーフィルム(E)の順に積層された感光性樹脂印刷版原版1を得た。カレンダーロールのクリアランスは、原版1からカバーフィルム(E)を剥離した後における積層体の厚みが950μmになるように調整した。展開された塗工液組成物1は、ラミネート後1週間静置させることによって、残存溶媒が自然乾燥し、追加の感光性樹脂層(A1)を形成する。
感光性樹脂印刷版原版1からカバーフィルム(E)を剥離した後、ライトテーブル上で感熱マスク層(C1)を調べたが、感熱マスク層(C1)の破れはなかった。また、塗工時のバーコーターのスジもなく感熱マスク層(C1)の塗布性も良好であった。その後、赤外線に発光領域を有するファイバーレーザーを備えた外面ドラム型プレートセッター“CDI SPARK”(エスコ・グラフィックス(株)製)に、基板側がドラムに接するように装着し、解像度156線のテストパターン(ベタ部、1%〜99%網点、1〜8ポイントの細線、1〜8ポイントの白抜き部分を有する)をレーザー出力9W、ドラム回転数500rpmの条件でレーザー描画し、感熱マスク層(C1)から画像マスク(C1’)を形成した。この時、感熱マスク層(C1)が描画された部分には、マスク層の焼きとび残りはなかった。
続いて、画像マスク(C1’)側から、紫外領域に光源を有する超高圧水銀灯(オーク(株)製)で全面露光した(露光量:1000mJ/cm)。
次いで、PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のブラシを備えたブラシ式現像機FTW500II(東レ(株)製)を用いて、35℃の水道水で1.5分間現像を行ったところ、剥離補助層(D1)、画像マスク(C1’)および画像マスクに遮断され紫外線に露光されていない部分の感光性樹脂層(A1)が選択的に現像され、画像マスク(C1’)に対してネガティブなレリーフを忠実に再現していた。結果を表1示す。
(実施例2〜6)
感熱マスク要素2〜6を用いる以外は実施例1と同様の方法で感光性樹脂印刷版原版2〜6を作製した。
感光性樹脂印刷版原版からカバーフィルム(E)を剥離した後、ライトテーブル上で感熱マスク層を調べると、感熱マスク層の破れはなかった。また、塗工時のバーコーターのスジもなく感熱マスク層の塗布性も良好であった。その後、レーザー描画し、感熱マスク層(C2〜C6)から画像マスク(C2〜C6’)を形成した。この時、感熱マスク層が描画された部分には、マスク層の焼きとび残りはなかった。また、その後、露光、現像により形成したレリーフは画像マスク(C2〜C6’)の画像を忠実に再現していた。結果を表1示す。
(比較例1〜3)
感熱マスク要素7〜9を用いる以外は実施例1と同様の方法で感光性樹脂印刷版原版7〜9を作製した。
感光性樹脂印刷版原版3からカバーフィルム(E)を剥離した後、ライトテーブル上で感熱マスク層を調べると、感熱マスク層の破れが発生していた。塗工時のバーコーターのスジもなく感熱マスク層の塗布性は良好であった。結果を表1示す。
(比較例4)
感熱マスク要素10を用いる以外は実施例1と同様の方法で感光性樹脂印刷版原版10を作製した。
感光性樹脂印刷版原版10は感熱マスク層には塗工時のバーコーターのスジがあり、レーザー描画し、感熱マスク層から画像マスクの形成した際にマスク層の焼きとび残りが発生した。また、その後、露光、現像により形成したレリーフは画像を忠実に再現できなかった。結果を表1示す。
Figure 2009244314

Claims (2)

  1. 支持体上に、少なくとも水に溶解または分散可能な樹脂および紫外光により硬化可能なモノマーを含有する感光性樹脂層(A)、および赤外線吸収物質を含有する感熱マスク層(C)、カバーフィルム(E)を有する感光性樹脂印刷版原板において、感熱マスク層(C)が、水不溶性で重量平均分子量が100000〜500000のアクリル樹脂を含有することを特徴とする感光性樹脂印刷版原版。
  2. アクリル樹脂が水酸基を含有し、アクリル樹脂の水酸基価(mgKOH/g)が10〜130であること特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂印刷版原版。
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