JP2005325295A - 熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂フィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 線膨張係数が小さく、引張り伸度及び耐熱性に優れ、特に引張り伸度が向上した熱可塑性樹脂組成物及びこれを用いて得られる樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】 流出開始温度が260〜450℃の範囲にある熱可塑性樹脂(A)50〜95質量%及び(B)下記一般式(1)
SiX4−m (1)
(式中、Rは、炭素数2〜22の不飽和炭化水素基であり、Xは、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ないしはヒドロキシル基から選ばれる1種以上の加水分解性基である。mは1又は2である。mが2である場合、2つのRのうち一方は炭素数1〜20の不飽和炭化水素基以外の炭化水素基であってよい。)で表される有機珪素化合物により表面処理された平均粒径0.01〜20μmの充填材50〜5質量%の組み合わせを含む熱可塑性樹脂組成物、及びこの熱可塑性樹脂組成物を製膜してなる樹脂フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、線膨張率が小さく、引張り伸度及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物及びこれを用いて得られる樹脂フィルムに関する。
熱可塑性樹脂の中でも、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリールケトン樹脂に代表される流出開始温度が高い熱可塑性樹脂は、流出開始温度まで変形しにくく、耐熱性に優れているため、航空機部品、電気・電子部品を中心に多く使用されている。これらの樹脂は単独では線膨張係数が大きく、高温まで変形しにくいものとするために無機系充填材や有機系充填材の添加が必要であることが多い。
しかしながら、充填材の補強に伴い、機械的強度、例えば引張り伸度の低下が目立つため用途が限定される。このため、充填材の表面を表面処理剤により改質して流出開始温度が高い熱可塑性樹脂に混合分散させる試みがなされてきた。しかしながら、この混合分散は充填材表面の表面処理剤と樹脂との親和性に基づくので相性の問題があり、効果が得られる表面処理剤が限られるため、その選択が重要となる。また、流出開始温度が高い熱可塑性樹脂は成形加工温度が約300〜450℃の領域にあるため、充填材表面に反応ないし付着した表面処理剤が高温で劣化して本来の性能を発揮できないことが多く、その結果、得られる成形体、例えばフィルムの引張り伸度が低くなりやすい。このため、300℃を超える混練温度や成形温度でも効果が発揮される表面処理剤が求められてきた。
従来、充填材を含有する熱可塑性樹脂組成物として、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱可塑性及び熱硬化性の種々の合成樹脂に、炭素数1〜30のアルキル基1個と、炭素数1〜4のアルコキシ基3個を有する有機珪素化合物を充填材に対して0.05〜10質量%添加し、加熱反応させて得られた充填材を含有する熱可塑性樹脂組成物が提案されている。ここで、充填材として、炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、ガラス繊維、マイカ、などの珪酸塩類、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化亜鉛などの金属酸化物、金属水酸化物などが挙げられている(例えば、特許文献1参照)。
また、酸化チタン粒子に炭素数1〜約50個程度の非加水分解性の、脂肪族基、環式脂肪族基又は芳香族基とアルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ヒドロキシ基およびそれらの混合から選ばれる加水分解性基を有する有機珪素試薬を使用する工程を含む酸化チタン顔料スラリーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
上記の特許文献1、2に挙げられている、有機珪素化合物と加熱反応させて得られた充填材として、市販のマイカ粉末に珪素化合物として例示されたオクタデシルトリメトキシシランやメチルトリメトキシシランを加熱反応させて得られた充填材を用い、この充填材をポリエーテルイミド樹脂に溶融混練してなる熱可塑性樹脂組成物をプレス成形して得られる、フィルムの引張り伸度は、未処理のマイカ粉末を含有する熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムの引張り伸度と同程度でレベルが低いものである。
また、充填材を含有する熱可塑性樹脂組成物として、熱溶融性ポリイミド100質量部に芳香族ポリカルボン酸エステル0.002〜2質量部とエポキシ基含有シラン処理剤で表面処理されたガラス繊維5〜50質量%を配合してなる熱可塑性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、充填材を含有する熱可塑性樹脂組成物として、シランカップリング剤で表面処理されたチタン酸カリウム繊維5〜60質量%を含有することを特徴とするポリエーテルイミド熱可塑性樹脂組成物が提案されている。ここでシランカップリング剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが例示されている(例えば、特許文献4参照)。
さらにまた、充填材を含有する熱可塑性樹脂組成物として、熱溶融成形可能なポリイミド100質量部と、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、芳香族ポリアミド繊維などの繊維状補強材5〜100質量部よりなるポリイミド熱可塑性樹脂組成物が提案され、繊維状補強材の表面処理剤として、アミノシラン、エポキシシランなどが例示されている(例えば、特許文献5参照)。などが例示されている(例えば、特許文献5参照)。
また、充填材を含有する熱可塑性樹脂組成物として、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリ芳香族エーテル又はチオエーテル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂100質量部と、無機充填材50〜300質量部からなる熱可塑性樹脂組成物が提案されており、無機充填材はアミノシラン、ビニルシラン、フェニルシラン、エポキシシシラン等のシランカップリング剤により表面処理されたものでよいと記載されており、実施例中には平均粒径90μmのマイカが例示されている(例えば、特許文献6参照)。
しかしながら、これらの樹脂の中でポリエーテルイミド樹脂にビニルシランの代表例としてのビニルトリエトキシシラン、またはエポキシシランの代表例としての3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した平均粒径90μmのマイカを混練して得られる熱可塑性樹脂組成物をプレス成形して得られるフィルムの引張り伸度は低く、表面処理の効果は不十分であることが分かった。
これらの表面処理のなかでは、エポキシシランなどのシランカップリング剤は約300℃を超える高温で樹脂との混合、混練や成形などの工程を経ると必ずしも効果を発揮し得ない場合があり、特に熱可塑性ポリイミド樹脂やポリアリールケトン樹脂にマイカなどの充填材を加えた熱可塑性樹脂組成物として、機械的強度、特に引張り伸度が充分な熱可塑性樹脂組成物やフィルムは得られておらず、その改良が望まれていた。
特開昭58−136636号公報(第1−4頁) 特表平9−509688号公報(第1−6頁) 特開昭62−263253号公報(第1−3頁) 特開平1−313558号公報(第1−3頁) 特開平4−279662号公報(第1−5頁) 特開平11−80380号公報(第1、6及び7頁)
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、線膨張係数が小さく、引張り伸度及び耐熱性に優れ、特に引張り伸度が向上した熱可塑性樹脂組成物及びこれを用いて得られる樹脂フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の温度領域の流出開始温度を有する熱可塑性樹脂と特定の表面処理された充填材とを組合せることにより、上記課題を解決することのできる熱可塑性樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)流出開始温度が260〜450℃の範囲にある熱可塑性樹脂50〜95質量%、及び(B)下記一般式(1)
SiX4−m (1)
(式中、Rは、炭素数2〜22の不飽和炭化水素基であり、Xは、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ないしはヒドロキシル基から選ばれる1種以上の加水分解性基である。mは1又は2である。mが2である場合、2つのRのうち一方は炭素数1〜20の不飽和炭化水素基以外の炭化水素基であってよい。)
で表される有機珪素化合物により表面処理された充填材50〜5質量%の組み合わせを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。また、本発明は、この熱可塑性樹脂組成物を製膜してなる樹脂フィルムを提供するものである。
本発明によれば、エレクトロニクス用部材等として好適な、 線膨張係数が小さく、引張り伸度及び耐熱性に優れ、特に引張り伸度が向上した熱可塑性樹脂組成物、及びこの熱可塑性樹脂組成物を用いた樹脂フィルムを提供することができる。
以下、本発明を詳しく説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)流出開始温度が260〜450℃の範囲にある熱可塑性樹脂50〜95質量%と、(B)特定の有機珪素化合物で表面処理された充填材50〜5質量%の組み合わせを含む熱可塑性樹脂組成物であり、この熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる樹脂フィルムには、肉厚が比較的厚い500μm程度以上のシートも含まれる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における(A)成分の流出開始温度が260〜450℃の範囲にある熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(A)と略記する。)における流出開始温度とは、市販のキャピラリーレオメーター、例えば島津製作所株式会社製高化式フローテスター(型式:CFT−500C)等を使用し、下部に流出ノズル(長さ2mm、内径1mm)を装着したシリンダー(長さ40mm、内径11.329mm)にペレット状、粉末状ないしは、無定形の樹脂約1.8gをつめ、上部にピストン(長さ57mm、有効長20mm、外径11.282mm)を装着し、荷重40kg/cm(3.923MPa)下で、室温より昇温速度3℃/分の条件で昇温し、軟化温度やガラス転移温度に到達して荷重下で樹脂が変形してシリンダー内部空隙が消失することによりピストンが下降した後、荷重とつり合って停止し、続いて樹脂の昇温線膨張に伴うわずかな上昇が起こった後、再びピストンが明らかに降下し始める温度をいう。流出開始温度、すなわち、再びピストンが明らかに下降し始める温度は、装置に付属のピストンの上下動と温度を検出する装置により検出されるものであってよい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)の流出開始温度は260〜450℃の範囲であることを要し、好ましくは270〜400℃である。流出開始温度を260℃以上とすることにより、熱可塑性樹脂(A)含む熱可塑性樹脂組成物及びフィルムの高温における変形が起こりにくく、また、450℃以下とすることにより、成形加工が容易となる。
本発明を構成する熱可塑性樹脂(A)の具体例として、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリールケトン樹脂等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合及びイミド結合を含む熱可塑性樹脂であり、特に制限されるものでない。具体的には、下記構造式(2)
Figure 2005325295
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド[ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem1000」(流出開始温度274〜289℃)]、下記構造式(3)
Figure 2005325295
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド[ゼネラルエレクトリック社製の商品名「UltemCRS5001」(流出開始温度274〜284℃)]が挙げられ、そのほかの具体例として、三井化学株式会社製の商品名「オーラムPL500AM」(流出開始温度346℃)などが挙げられる。
ポリエーテルイミド樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、通常、上記構造式(2)を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とm−フェニレンジアミンとの重縮合物として、また上記構造式(3)を有する非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、4,4´−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの重縮合物として公知の方法によって合成される。
また、本発明で用いるポリエーテルイミド樹脂は、本発明の主旨を超えない範囲でアミド基、エステル基、スルホニル基など共重合可能な他の単量体単位を含むものであってもかまわない。なお、ポリエーテルイミド樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアリールケトン樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合及びケトン結合を含む熱可塑性樹脂であり、その代表例としては、ポリエーテルケトン(グレードP22、流出開始温度380℃)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等がある。また、本発明の主旨を超えない範囲でビフェニル構造、スルホニル基など共重合可能な他の単量体単位を含むものであってもかまわない。本発明においては、下記構造式(4)
Figure 2005325295
で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンが好適に使用される。この繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンは、VICTREX社製の商品名「PEEK381G」(流出開始温度344℃)、「PEEK450G」(流出開始温度345℃)などとして市販されている。なお、 ポリアリールケトン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性樹脂(A)としては、上記構造式(2)又は(3)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド、上記構造式(4)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンが好ましく、上記構造式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド、上記構造式(4)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における(B)成分の表面処理された充填材(以下、充填剤(B)と略記する。)を構成する充填材としては、公知のものを使用することができ、例えば、クレー、ガラス、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化珪素などの無機充填材、 ガラス繊維やアラミド繊維、炭素繊維などの繊維、無機鱗片状(板状)粉体、例えば、合成マイカ、天然マイカ、ベーマイト、タルク、セリサイト、イライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、スメクタイトなどが挙げられる。これらのなかで、合成マイカ、天然マイカ、タルク、セリサイト、イライト、カオリナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、スメクタイト、板状アルミナ、鱗片状チタン酸塩(鱗片状チタン酸マグネシウムカリウム、鱗片状チタン酸リチウムカリウム等)などの無機鱗片状(板状)粉体が好ましく、合成マイカ、天然マイカがより好ましい。これらの充填材は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
充填材(B)の形状としては、 板状が好ましく、平均粒径は0.01〜20μm程度、 好ましくは1〜10μm、平均アスペクト比(粒径/厚み)は20〜30程度以上、 好ましくは50以上のものが好適に用いられる。ここで、表面処理される前の充填材と処理された後の充填材(B)の形状は、同じものとして取り扱う
充填材(B)を構成する表面処理剤としては、下記一般式(1)
SiX4−m (1)
(式中、Rは、炭素数2〜22の不飽和炭化水素基であり、Xは、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ないしはヒドロキシル基から選ばれる1種以上の加水分解性基である。mは1又は2である。mが2である場合、2つのRのうち一方は炭素数1〜20の不飽和炭化水素基以外の炭化水素基であってよい。)で表される有機珪素化合物が挙げられる。上記一般式(1)において、Rは、不飽和基、すなわち、炭素−炭素二重結合ないし三重結合を少なくとも1つ含む直鎖状または分岐状の炭素数2〜22の炭化水素基である。mが2のとき、2個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。2個のRのうち、少なくも一方のRが炭素数2〜22の不飽和構造を含む炭化水素基であれば、他の一方は炭素数1〜20の不飽和炭化水素基以外の炭化水素基であってもよい。炭素数1〜20の飽和炭化水素基以外の炭化水素基として直鎖状ないし分岐状のアルキル基、環状構造を含む炭化水素基(例えば、芳香族基、シクロアルキル基、シクロアルキレン基)などが挙げられる。また、複数のXも互いに同一でも異なっていてもよい。不飽和炭化水素基以外の炭化水素基としては、直鎖、分岐状又は環状のアルキル基、芳香族基などが挙げられる。
この有機珪素化合物としては、Rが、炭素数2〜10の炭素−炭素二重結合を1つ含む不飽和炭化水素基、Xが炭素数1〜4のアルコキシ基、mが1のものが好ましく、より好ましくは、Rが炭素数2〜4の炭素−炭素二重結合を1つ含む不飽和炭化水素基、Xが炭素数1〜4のアルコキシ基、mが1のものである。
上記有機珪素化合物の具体例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリ(2−プロポキシ)シシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリ(sec−ブトキシ)シラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、trans−1−プロペニルトリメトキシシラン、trans−1−プロペニルトリエトキシシラン、trans−1−プロペニルトリプロポキシシラン、trans−1−プロペニルトリ(2−プロポキシ)シラン、trans−1−プロペニルトリブトキシシラン、trans−1−プロペニルトリ(sec−ブトキシ)シラン、trans−1−プロペニルトリ(t−ブトキシ)シラン、cis−1−プロペニルトリメトキシシラン、cis−1−プロペニルトリエトキシシラン、cis−1−プロペニルトリプロポキシシラン、cis−1−プロペニルトリ(2−プロポキシ)シラン、cis−1−プロペニルトリブトキシシラン、cis−1−プロペニルトリ(sec−ブトキシ)シラン、cis−1−プロペニルトリ(t−ブトキシ)シラン、2−プロペニルトリメトキシシラン、2−プロペニルトリエトキシシラン、2−プロペニルトリプロポキシシラン、2−プロペニルトリ(2−プロポキシ)シラン、2−プロペニルトリブトキシシラン、2−プロペニルトリ(sec−ブトキシ)シラン、2−プロペニルトリ(t−ブトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリ(2−プロポキシ)シラン、アリルトリブトキシシラン、アリルトリ(sec−ブトキシ)シラン、アリルトリ(t−ブトキシ)シラン、cis−1−トリメトキシシリル−1−ブテン、cis−1−トリエトキシシリル−1−ブテン、trans−1−トリメトキシシリル−1−ブテン、trans−1−トリエトキシシリル−1−ブテン、2−トリメトキシシリル−1−ブテン、2−トリエトキシシリル−1−ブテン、2−トリメトキシシリル−1−ブテン、2−トリエトキシシリル−1−ブテン、3−トリメトキシシリル−1−ブテン、3−トリエトキシシリル−1−ブテン、3−トリメトキシシリル−1−ブテン、3−トリエトキシシリル−1−ブテン、4−トリメトキシシリル−1−ブテン、4−トリエトキシシリル−1−ブテン、4−トリメトキシシリル−1−ブテン、4−トリエトキシシリル−1−ブテン、1−トリメトキシシリル−cis−2−ブテン、1−トリエトキシシリル−cis−2−ブテン、
1−トリメトキシシリル−trans−2−ブテン、1−トリエトキシシリル−trans−2−ブテン、2−トリメトキシシリル−cis−2−ブテン、2−トリエトキシシリル−cis−2−ブテン、2−トリメトキシシリル−trans−2−ブテン、2−トリエトキシシリル−trans−2−ブテン、2−トリメトキシシリル−1−ブテン、2−トリエトキシシリル−1−ブテン、2−トリメトキシシリル−1−ブテン、2−トリエトキシシリル−1−ブテン、3−トリメトキシシリル−1−ブテン、3−トリエトキシシリル−1−ブテン、3−トリメトキシシリル−1−ブテン、3−トリエトキシシリル−1−ブテン、4−トリメトキシシリル−1−ブテン、4−トリエトキシシリル−1−ブテン、4−トリメトキシシリル−1−ブテン、4−トリエトキシシリル−1−ブテン、cis−1−トリメトキシシリル−1−ペンテン、cis−1−トリエトキシシリル−1−ペンテン、trans−1−トリメトキシシリル−1−ペンテン、trans−1−トリエトキシシリル−1−ペンテン、cis−1−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、cis−1−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、trans−1−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、trans−1−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、2−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、2−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、3−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、3−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、3−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、3−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、4−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、4−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、5−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、5−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、6−トリメトキシシリル−1−ヘキセン、6−トリエトキシシリル−1−ヘキセン、1−トリメトキシシリル−cis−2−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−cis−2−ヘキセン、
1−トリメトキシシリル−trans−2−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−trans−2−ヘキセン、2−トリメトキシシリル−cis−2−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−cis−2−ヘキセン、2−トリメトキシシリル−trans−2−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−trans−2−ヘキセン、3−トリメトキシシリル−cis−2−ヘキセン、3−トリエトキシシリル−cis−2−ヘキセン、3−トリメトキシシリル−trans−2−ヘキセン、3−トリエトキシシリル−trans−2−ヘキセン、4−トリメトキシシリル−cis−2−ヘキセン、4−トリエトキシシリル−cis−2−ヘキセン、4−トリメトキシシリル−trans−2−ヘキセン、4−トリエトキシシリル−trans−2−ヘキセン、5−トリメトキシシリル−cis−2−ヘキセン、5−トリエトキシシリル−cis−2−ヘキセン、5−トリメトキシシリル−trans−2−ヘキセン、5−トリエトキシシリル−trans−2−ヘキセン、6−トリメトキシシリル−cis−2−ヘキセン、6−トリエトキシシリル−cis−2−ヘキセン、6−トリメトキシシリル−trans−2−ヘキセン、6−トリエトキシシリル−trans−2−ヘキセン、1−トリメトキシシリル−cis−3−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−cis−3−ヘキセン、1−トリメトキシシリル−trans−3−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−trans−3−ヘキセン、2−トリメトキシシリル−cis−3−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−cis−3−ヘキセン、2−トリメトキシシリル−trans−3−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−trans−3−ヘキセン、3−トリメトキシシリル−cis−3−ヘキセン、3−トリエトキシシリル−cis−3−ヘキセン、3−トリメトキシシリル−trans−3−ヘキセン、3−トリエトキシシリル−trans−3−ヘキセン、cis−1−トリメトキシシリル−1−オクテン、cis−1−トリエトキシシリル−1−オクテン、trans−1−トリメトキシシリル−1−オクテン、trans−1−トリエトキシシリル−1−オクテン、cis−1−トリメトキシシリル−1−デセン、cis−1−トリエトキシシリル−1−デセン、trans−1−トリメトキシシリル−1−デセン、trans−1−トリエトキシシリル−1−デセン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルエチルジエトキシシラン、アリルエチルジメトキシシラン、アリルエチルジエトキシシラン、trans−1−プロペニルメチルジメトキシシラン、trans−1−プロペニルメチルジエトキシシラン、cis−1−プロペニルメチルジメトキシシラン、cis−1−プロペニルメチルジエトキシシラン、2−プロペニルメチルジメトキシシラン、2−プロペニルメチルジエトキシシラン、などが挙げられる。
これらのうちで、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、cis−1−プロペニルトリメトキシシラン、cis−1−プロペニルトリエトキシシラン、trans−1−プロペニルトリメトキシシラン、trans−1−プロペニルトリエトキシシラン、2−プロペニルトリメトキシシラン、2−プロペニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランが好ましく、より好ましくは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランである。
なお、上記有機珪素化合物で充填材の表面処理を行なった場合に、充填材(B)の表面と熱可塑性樹脂(A)との親和性が向上する理由は、上記有機珪素化合物の加水分解性基が加水分解によりヒドロキシル基を生成し、加熱により充填材表面のヒドロキシル基と脱水縮合反応を生起して不飽和炭化水素基を有するシリル基が充填材表面に結合することによると推定される。
本発明で使用する充填材の表面処理剤(上記有機珪素化合物)は、充填材表面に付着、反応し、ないしは、高温の溶融混練条件下で何らかの化学変化が起こり、その表面状態を樹脂に対して親和性を高めるように作用するものである。炭素数2〜22の不飽和炭化水素基を有する上記有機珪素化合物は、エポキシ基、メタクリロイルオキシ基、やウレイド基を含むアルコキシシラン化合物に比べて、熱可塑性樹脂組成物及びそれを使用して得られるフィルムの引張り伸度を向上させる効果が高い。また、いわゆるチタネートカップリング剤は、本発明に係る熱可塑性樹脂と充填材の組合せに対して充分な効果を発揮しない。
表面処理剤の使用量は、充填材100質量部に対して、通常0.1〜8質量部程度、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部の範囲である。この使用量を0.1質量部以上とすることにより、充分な表面処理の効果が得られるため、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度が充分となる。また、表面処理剤の使用量が8質量部を超えても表面処理の効果が向上するものでもないので、8質量部までで充分である。
表面処理の方法としては、既知の種々の方法が適用できる。例えば、表面処理剤を溶解させた溶媒中で、充填材と表面処理剤を接触させた後に溶媒を除去する湿式法、表面処理剤を溶解した溶液と充填材とを噴霧、撹拌等の方法により接触させて、充填材表面に表面処理剤をまぶした後、溶媒を除去する半湿式法、樹脂、充填材及び表面処理剤又は少量の溶媒に溶解させた表面処理剤を混合撹拌するインテグラルブレンド法などが挙げられる。これらの表面処理方法のうち、充填材表面に効率よく表面処理剤を付着させるという観点から、湿式法、半湿式法が好ましい。
溶媒中の表面処理剤(上記有機珪素化合物)の濃度は、0.1〜80質量%程度とすることができる。溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ヘキサン等の除去しやすいものが好ましい。この溶媒は、少量の水や、加水分解を促進する少量の酸成分を含むものであってもよい。
上記表面処理方法により、充填材と、溶媒で希釈した表面処理剤を接触混合した後、数時間から数日間空気中に放置し、空気中の水分と接触させて加水分解を起こさせるとともに、使用した溶媒を蒸発除去することが推奨される。
この蒸発除去の処理は、アルコキシシリル基の加水分解反応や生成したヒドロキシルシリル基を充填材表面のヒドロキシル基と脱水縮合反応させ、かつ、発生したアルコールや使用した溶媒除去のため、常圧下ないし減圧下に、通常、温度80〜150℃程度、好ましくは100〜130℃に行なう。処理時間は通常4〜200時間程度であり、好ましくは24〜100時間である。
上記熱可塑性樹脂組成物においては、(A)成分と(B)成分との合計量中の熱可塑性樹脂(A)の含有比率は50〜95質量%であることを要し、好ましくは65〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%の範囲である。充填材(B)の含有比率は5〜50質量%であることを要し、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲である。熱可塑性樹脂(A)の含有比率を50質量%以上、すなわち充填材(B)の含有率を50質量%以下とすることにより、熱可塑性樹脂組成物を用いて製膜したフィルム状成形体の引張り伸度が低くなったり、著しくもろくなったりすることがない。また、熱可塑性樹脂(A)の含有比率を95質量%以下、すなわち充填材(B)の含有比率を5質量%以上とすることにより、充填材を混合することによる線膨張係数の低減効果が充分なものとなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、その性質を損なわない程度に、熱可塑性樹脂(A)以外の樹脂や充填材(B)以外の各種添加剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜配合してもよい。また充填材(B)を含めた各種添加剤の混合方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂(A)と充填材(B)と所望により用いられる各種添加剤をそれぞれ別々に単軸溶融混練機や二軸溶融混練機に供給して混合することもできる。また、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー、タンブラーなどの混合機を利用して、それらを予備混合した後、溶融混練機に供給して溶融混練することもできる。また、目的により、水性媒体や有機溶媒に分散せしめて湿式法により混合することも可能である。さらに、充填材(B)や各種添加剤を、熱可塑性樹脂(A)をベース樹脂として高濃度(代表的な含有量としては10〜60質量%程度)に混合したマスターバッチを別途作製しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合し、ニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法などが挙げられる。上記混合方法の中では、マスターバッチを作製し、混合する方法が分散性や作業性の点から好ましい。
混合された熱可塑性樹脂組成物は、ストランドないしはシート状に押し出され、カッティングされてペレット、顆粒、粉体等の成形加工に適した形態で得られる。
本発明の樹脂フィルムは、上述した熱可塑性樹脂組成物を製膜して得られるフィルムである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の成形法により所望の成形品に成形することができる。なかでも、フィルム、シート等の形態に押し出すことに適している。また、溶融混練機の後段にTダイを用いる押し出しキャストやカレンダー成形機、パイプ等種々の形態の成形装置を付設して、溶融混練に引き続いて直接に成形体とすることもできる。
本発明のフィルムの製膜方法としては、公知の方法、例えばTダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、フィルムの製膜性や安定生産性等の面から、Tダイを用いる押出キャスト法が好ましい。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね流出開始温度、ガラス転移温度ないしは融点以上、具体的には450℃以下、好ましくは340℃〜400℃である。また、本発明のフィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、 通常10〜800μm程度である。
本発明のフィルムの表面にはハンドリング性の改良等のために、エンボス加工やコロナ処理等を適宜施してもかまわない。また、上述したフィルムの少なくとも片面に接着層を介して、あるいは接着層を介することなく、金属体を加熱、 加圧により熱融着させて金属積層体とすることもでき、さらに、エッチング処理、メッキ処理などにより、フィルム表面に回路を形成し、さらに積層することもできる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物及びフィルムの用途としては、配線基板、リジッドフレックス基板、ビルドアップ多層基板、一括多層基板、金属ベース基板などのエレクトロニクス用基板の基材、フレキシブルプリント基板の保護板、熱遮蔽板、サーモフォーミングや真空成形によるトレー、各種電子機器の筐体、自動車エンジンルーム内部品や隔壁などが挙げられる。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。
(1)流出開始温度
島津製作所株式会社製高化式フローテスター(型式:CFT−500C)を使用し、下部に流出ノズル(長さ2mm、内径1mm)を装着したシリンダー(長さ40mm、内径11.329mm)にペレット状の樹脂約1.8gを充填し、上部にピストン(全長57mm、有効長20mm、外径11.282mm)を装着し、荷重40kg/cm(3.923MPa)下で、室温より昇温速度3℃/分の条件で昇温し、軟化温度やガラス転移温度に到達して荷重下で樹脂が変形してシリンダー内部空隙が消失する事によりピストンが下降したのち、荷重とつり合って停止し、続いて樹脂の昇温膨張に伴うわずかな上昇が起こった後、再びピストンが明らかに降下し始める温度(流出開始温度)を装置に付属のピストンの上下動と温度を検出する装置により検出した。
(2)引張り試験
ASTM D638−1980、に準じ、引張り速度50mm/分にて測定した。
(3)線膨張係数
セイコーインスツルメンツ株式会社製の熱応力歪み測定装置(型式:TMA/SS6100)を用いて、フィルムから切り出した短冊状の試験片(長さ10mm、幅2mm)を引張荷重9.807×10−4Nで固定し、30℃から5℃/分の割合で300℃まで昇温させたのち同様の速度で降温し寸法の温度変化を測定した。降温時の寸法変化量を温度に対してプロットし、約60℃〜110℃付近の比較的直線性がよい部分の傾きより線膨張係数を求めた。
(実施例1)
(1)表面処理された合成マイカの作製
市販の料理用ミキサー(株式会社テスコム製、型式TM3、容量780ml、回転数10,000回/分)に、トピー工業株式会社製の合成マイカPDM−5B(平均粒子径6μm、アスペクト比25)50gを入れ、その上から、表面処理剤ビニルトリエトキシシラン(東京化成工業株式会社製、試薬グレード、表1と表2において略号SVE)1.0g(マイカ100質量部に対して2質量部)を水分約5%のイソプロピルアルコール4gに溶解して得た20%溶液3.6gを振りかけ、ミキサー上部に蓋をした。ミキサーを1分間作動させて撹拌混合したのち、回転を止めて、混合部を外し、上下に数回振り、再びミキサーに戻し、さらにミキサーを2分間作動させて混合し、ミキサーの回転を止めて混合部を外し、数回上下に振り、さらにミキサーに戻してミキサーを2分間作動させ、計5分間撹拌混合した。
この混合物を、室内にて4日間放置したのち、120℃のオーブン中で48時間加熱処理し、室温まで冷却して表面処理された合成マイカ(略号FVとする。)を得た。
(2)混合、混練、成形
株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル(型式:20C200)を用いて、非晶性ポリエーテルイミド樹脂[ゼネラルエレクトリック社製、Ultem1000、流出開始温度:274〜289℃、ガラス転移温度Tg:216℃](以下、単にPEI−1と略記することがある)44.8gと上記合成マイカ(FV)11.2gを350℃にて混練し、塊状の熱可塑性樹脂組成物を得た。混練前に、PEI−1を160℃16時間通風オーブンにて乾燥した。混練においては、スクリュー回転数50回転/分にて約7分間かけてPEI−1とFVを、交互に徐々に混練部に投入し、投入完了直後にスクリュー回転数150回転/分にて5分間混練した。
次いで、このものを約2mm〜5mm程度の粒状に粉砕し、2.2gを厚さ約18μmの電解銅箔2枚の平滑面の間に挟み、北川精機株式会社製高性能高温真空プレス成形機(成型プレス、型式:VH1−1747)を使用し、最高温度350℃、最高温圧力保持時間10分、プレス圧力1.3MPaにて2枚の銅箔に挟まれたプレス成形フィルムを得た。このものを、銅貼りプリント回路基板の銅箔エッチング用塩化第二鉄溶液(濃度約40%)に、室温にて約2.5時間浸漬し、両面の銅箔を除去し、水にて洗浄し、風乾して厚さ約80μmのプレス成形フィルムを得た。
このフィルムの引張り強伸度は12%、引張り破断点強度は127MPa、線膨張係数は20.7x10−6/℃であった。評価結果を表1−1に示した。
(実施例2)
ビニルトリエトキシシランの使用量を0.65g(充填材100質量部に対して1.3質量部)、イソプロピルアルコールを2.6gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−1に示した。
(実施例3)
ビニルトリエトキシシランに代えて、ビニルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製、試薬グレード、表1において略号SVM)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−1に示した。
(比較例1)
実施例1で使用したPEI−1のペレット2gを実施例1と同様のプレス成形によりフィルムとし、評価を行った。結果を表1−1に示した。
(比較例2)
表面処理をせず、充填材11.2gを直接PEI−1と溶融混練したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−1に示した。
(比較例3)
合成マイカPDM−5Bに代えて、マイカ(株式会社クラレ製、商品名:クラライトマイカ200−D、平均粒径90μm、アスペクト比50)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−2に示した。
(比較例4)
ビニルトリエトキシシランに代えて、ビニルトリメトキシシラン(SVM)を使用した以外は比較例3と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−2に示した。
(比較例5)
ビニルトリエトキシシランに代えて、表面処理剤として3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(ナカライテスク株式会社、試薬グレード、表1−2において略号SEP)を使用した以外は比較例3と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−2に示した。
(比較例6)
ビニルトリエトキシシランに代えて、表面処理剤として3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(SEP)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−2に示した。
(比較例7)
ビニルトリエトキシシランに代えて、表面処理剤として3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(東京化成工業株式会社、試薬グレード、表1−3において略号SM)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−3に示した。
(比較例8)
ビニルトリエトキシシランに代えて、表面処理剤として3−ウレイドプロピル−トリエトキシシラン(信越化学工業株式会社、製品名:KBE−585、メタノール溶液、有効成分50%、表1−3において略号SU)を、4重量部(有効成分2質量部)使用した以外は実施例1と同様の操作を行い熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−3に示した。
(比較例9)
ビニルトリエトキシシランに代えて、表面処理剤としてイソプロピルトリステアロイルチタネート(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名:プレンアクトTTS、表1−3において略号TT)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−3に示した。
(比較例10)
ビニルトリエトキシシランに代えて、表面処理剤としてイソプロピルトリ(ドデシルベンゼンスホニル)チタネート(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名:プレンアクト9SA、表1−3において略号T9)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1−3に示した。
Figure 2005325295
Figure 2005325295
Figure 2005325295
(実施例4)
株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル(型式:20C200)を用いて、ポリエーテルエーテルケトン樹脂[VICTREX社製、商品名:PEEK450G、流出開始温度:345℃、ガラス転移温度Tg:143℃、融点:334℃](以下、単にPEEK−1と略記することがある)44.8gと上記合成マイカ(FV)11.2gを390℃にて混練し、塊状の熱可塑性樹脂組成物を得た。混練前に、PEEK−1を160℃16時間通風オーブンにて乾燥した。混練においては、スクリュー回転数50回転/分にて約7分間かけてPEEK−1とFVを、交互に徐々に混練部に投入し、投入完了直後にスクリュー回転数150回転/分にて5分間混練した。
次いで、このものを2〜5mm程度の粒状に粉砕し、2.2gを厚さ約18μmの電解銅箔2枚の平滑面の間に挟み、北川精機株式会社製の高性能高温真空プレス成形機(成型プレス、型式:VH1−1747)を使用し、最高温度380℃、最高温圧力保持時間10分間、プレス圧力1.3MPaにて2枚の銅箔に挟まれたプレス成形フィルムを得た。
このものを銅貼りプリント回路基板の銅箔エッチング用塩化第二鉄溶液(濃度約40質量%)に、室温において2時間浸漬してプレス成形フィルム両面の銅箔を除去し、水にて洗浄し、風乾して厚さ約80μmのプレス成形フィルムを得た。このフィルムの引張り伸度は11%、引張り破断点強度は123MPa、線膨張係数は20.7×10−6/℃であった。評価結果を表2に示した。
(比較例11)
実施例5で使用したPEEK−1のペレット2gを実施例5と同様のプレス成形によりフィルムとし、評価を行った。結果を表2に示した。
(比較例12)
表面処理をせず、充填材11.2gを直接PEEK−1と溶融混練したこと以外は実施例5と同様の操作を行い、熱可塑性樹脂組成物及びフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。
Figure 2005325295
表1−1、表1−2、表1−3より、本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用して成形された実施例記載のフィルムは、引張り伸度が優れ、線膨張係数も充填材無添加の比較例1に比べ小さく、いずれも引張り伸度と寸法安定性とのバランスに優れていることが分かる。また、実施例1〜実施例3と比較例2との対比より、本発明の範囲の熱可塑性樹脂組成物を使用したフィルムは表面処理剤が使用されない場合に比べ、引張り伸度に優れている。また、実施例1〜実施例3は、いずれも比較例2〜比較例10に比べて引張り伸度が高く、本発明範囲の表面処理剤の選択が引張り伸度向上に有効であることを示している。比較例3〜比較例5に、ビニルトリエトキシシランとビニルトリメトキシシラン、エポキシシランの代表例として3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランをそれぞれ表面処理したものを使用した熱可塑性樹脂組成物をプレス成形フィルムとしたものの実験例を示した。これらのプレス成形フィルムの引張り伸度に比較して、実施例1〜実施例3に示した組成物の引張り伸度と引張り破断点強度は高い。このことから、本発明の平均粒径範囲の充填材と本発明の範囲の有機珪素化合物を組み合わせて使用した場合に、良好な引張り伸度、引張り強度と寸法安定性を示す熱可塑性樹脂組成物及び樹脂フィルムが得られることを示しており、本発明の効果が明らかである。
また、表2より、本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用して成形された実施例4のフィルムは、引張り伸度が優れ、線膨張係数も充填材無添加の比較例11に比べて小さく、いずれも引張り伸度と寸法安定性とのバランスに優れていることが分かる。また、実施例4と比較例12との対比より、本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用したフィルムは表面処理剤を使用しない場合に比べ、引張り伸度に優れていることが分かる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物及びフィルムは、引張り伸度、耐熱性、寸法安定性、等に優れることから、その用途としては、プリント配線基板、リジッドフレックス基板、ビルドアップ多層基板、一括多層基板、金属ベース基板などのエレクトロニクス用基板の基材、フレキシブルプリント基板の保護板、熱遮蔽板、サーモフォーミングや真空成形によるトレー、各種電子機器の筐体、自動車エンジンルーム内部品や隔壁、航空宇宙機器の保護板、高温にさらされるエネルギー発生器機の部品などが挙げられる。また、銅やアルミニウムなどの金属箔と積層、接着する事により電磁波遮蔽板などの用途も挙げられる。

Claims (6)

  1. (A)流出開始温度が260〜450℃の範囲にある熱可塑性樹脂50〜95質量%、及び(B)下記一般式(1)
    SiX4−m (1)
    (式中、Rは、炭素数2〜22の不飽和炭化水素基であり、Xは、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ないしはヒドロキシル基から選ばれる1種以上の加水分解性基である。mは1又は2である。mが2である場合、2つのRのうち一方は炭素数1〜20の不飽和炭化水素基以外の炭化水素基であってよい。)
    で表される有機珪素化合物により表面処理された平均粒径0.01〜20μmの範囲にある充填材50〜5質量%の組み合わせを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. (A)成分の熱可塑性樹脂が、ポリアリールケトン樹脂及びポリエーテルイミド樹脂から選ばれる樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. (B)成分の表面処理された充填材が、無機充填材を表面処理したものである請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. (B)成分の表面処理された充填材の形状が板状である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. (B)成分の表面処理された充填材が、充填材100質量部に対して0.1〜8質量部の一般式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を製膜してなる樹脂フィルム。
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