JP2005320448A - ポリエステルフィルム及びそれを用いた包装材 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的強度、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、寸法安定性、コート層の接着性、強靱性、耐ピンホール性、耐屈曲性、落袋強度に優れ、耐衝撃性等を要求されるボイル処理やレトルト処理用、熱成形や真空成形用、水分含有食品や薬品等の包装用など各種用途用のポリエステルフィルムの提供。
【解決手段】エチレングリコールとテレフタル酸を主な原料成分とするポリエステル系樹脂(ポリエステル(A))10〜90重量%と、ポリエステル(A)とは異なる原料成分よりなるポリエステル系樹脂(ポリエステル(B))90〜10重量%との混合ポリエステル系樹脂組成物からなるポリエステルフィルムであって、示差走査熱量計(DSC)で測定した際、非可逆熱流速曲線から求められる該ポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピーク熱量ΔHが5.5J/g以上100J/g以下であること。
【選択図】 なし

Description

本発明は、食品包装用、成形加工用に適した耐衝撃性、耐ピンホール性および印刷性に優れたポリエステルフィルムに関し、又、それを用いた包装材に関するものである。
ポリエステル系樹脂フィルム(以下、「フィルム」は「シート」をも包含していう。)は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、寸法安定性などに優れ、包装用フィルム、磁気テープ用フィルム、写真フィルム、離型用フィルム、光学用フィルム、電子部品用フィルムなど各種用途に利用されている。
一方、強靱性、耐ピンホール性、耐屈曲性、落袋強度および耐衝撃性等を要求される分野である水分含有食品や薬品等の包装袋など各種用途には二軸延伸ポリアミドフィルムまたはシート(以下「フィルム」で代表する。)が使用されている。
しかし、ポリアミドフィルムは、平面性が悪化することがあり、蒸着やコーティングなどの表面加工特性がポリエステルより劣ること、吸湿による寸法変化があること、ボイルやレトルト処理時の吸湿、寸法安定性の不良によるカール、デラミネートなどの問題が生じやすいことから、強靱性、耐ピンホール性、耐屈曲性、落袋強度および耐衝撃性を持ち、かつ寸法安定性がよく、吸湿の少ないポリエステルフィルムが従来から要求されていた。又、要求に対応したポリエステルフィルムも開示されていた。
だが、これらのポリエステルフィルムは、基材となるポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに、共重合ポリエステルを混合したり(例えば、特許文献1参照)、積層フィルムの一部に使用したりする(例えば、特許文献2参照)ことにより、ポリエチレンテレフタレートの持つ結晶性や分子配向などを若干低下させ、その分、耐ピンホール性、耐屈曲性や耐衝撃性を付与させようとしたものであるため、ボイル処理やレトルト処理での吸湿、寸法安定性の問題は、十分に解決したものとはなり得ていなかった。
また、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートをブレンドしたフィルムも提案されている(例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)が、これらのフィルムは逐次2軸延伸終了後の熱固定条件および冷却条件が最適化されていないため、インキ密着性が問題であった。
特開昭52−136276号公報 特開平6−79776号公報 特開2002−179892号公報 特開2002−321277号公報 特開2003−113258号公報 特開2003−113259号公報
本発明は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、寸法安定性、及びコート層を設けた際の接着性などに優れ、かつ強靱性、耐ピンホール性、耐屈曲性、落袋強度および耐衝撃性等を要求されるボイル処理やレトルト処理を必要とする分野、熱成形や真空成形が行われる分野、水分含有食品や薬品等の包装袋など各種用途にも用いられるポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
本発明のポリエステルフィルムは、エチレングリコールとテレフタル酸を主な原料成分とするポリエステル系樹脂(ポリエステル(A))10〜90重量%と、ポリエステル(A)とは異なる原料成分よりなるポリエステル系樹脂(ポリエステル(B))90〜10重量%との混合ポリエステル系樹脂組成物からなるポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムを示差走査熱量計(DSC)のモジュレーテッドモードで測定した際、非可逆熱流速曲線から求められる該ポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピーク熱量ΔHが5.5J/g以上100J/g以下であることが必要である。
本発明のポリエステルフィルムは、上記の、ポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピーク熱量ΔHが7J/g以上20J/g以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、上記示差走査熱量計(DSC)のモジュレーテッドモードで測定した際、可逆熱流束曲線より得られる上記ポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶融解温度での吸熱ピークの半値幅が1℃以上20℃未満であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、エチレングリコールとテレフタル酸を主な原料成分とするポリエステル系樹脂(ポリエステル(A))10〜49重量%と、ポリエステル(A)とは異なる原料成分よりなるポリエステル系樹脂(ポリエステル(B))90〜51重量%との混合ポリエステル系樹脂組成物からなるポリエステルフィルムであることが好ましい。
本発明の包装材は、上記ポリエステルフィルムからなることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、従来ナイロンフィルムが使用されている用途、具体的には耐ピンホール性や耐破袋性が要求される食品用包装材として、とくにポリエステルが耐熱性や吸湿寸法安定性に優れる点を活用してボイル処理やレトルト処理加工を施す水産加工品、漬物、惣菜、蓄肉加工品等の包装材として有効に活用することができる。さらにペットフード、農薬、肥料、輸液パック、或は半導体や精密材料包装など医療、電子、化学、機械などの産業材料包装にも有効に活用することができる。また、耐熱性や耐衝撃性、結晶化特性を活かし、真空成形や圧空成形を利用する成形容器などの包装材やカード、電子機器ケースの材料としても有用である。
本発明のポリエステルフィルムは、エチレングリコールとテレフタル酸を主な原料成分とするポリエステル系樹脂(ポリエステル(A))10〜90重量%と、ポリエステル(A)とは異なる原料成分よりなるポリエステル系樹脂(ポリエステル(B))90〜10重量%との混合ポリエステル系樹脂組成物からなるポリエステルフィルムである。
上記ポリエステル(A)とポリエステル(B)の配合割合は、ポリエステル(A)10〜49重量%と、ポリエステル(B)90〜51重量%であることがより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、特に、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、寸法安定性、印刷性などと同時に、強靱性、耐ピンホール性、耐屈曲性、落袋強度および耐衝撃性等を付与するためには、ポリエステル(A)としてポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体を、ポリエステル(B)として上記以外の、例えばポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリペンタメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートおよびそれらの共重合体の中から少なくとも1種類以上を混合したポリエステルとするのが効果的である。
このとき、ポリエステル(A)及びポリエステル(B)は、原料成分中の酸成分としてテレフタル酸を全酸成分中に50モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは70モル%以上含むことである。
また、上記ポリエステル(A)及びポリエステル(B)は、原料成分中のグリコール成分としてエチレングリコールを全グリコール成分中に10モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは20モル%以上含むことである。
上記ポリエステル(A)に主成分として含有されるポリエチレンテレフタレートは、その原料成分中のジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、ジカルボン酸とジオールとを直接反応させる直接エステル化法、ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法などの従来公知の方法により合成される。これらの方法はそれぞれ、回分式および連続式のいずれの方法で行ってもよい。あるいは、分子量を高めるために固相重合法を用いてもよい。
上記ポリエステル(A)を構成する原料成分として、上記テレフタル酸、エチレングリコール以外に、本フィルムの特性を損なわない範囲で、以下に示すジカルボン酸成分、ジオール成分を配合することが可能である。
例えば、ジカルボン酸成分として、上記テレフタル酸以外に、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸やフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸やエイコ酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸やピロメリット酸などの多官能酸およびポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(2−オキシ酪酸)およびそれらの誘導体を挙げることができる。
又、ジオール成分としては、上記エチレングリコール以外に、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの誘導体などを挙げることができる。
上記ポリエステル(A)に、テレフタル酸、エチレングリコール以外の原料成分を配合する方法は、ホモポリマー、又は共重合ポリマーの形でポリエチレンテレフタレートにブレンドしても良く、あるいは原料として添加してエチレンテレフタレートとの共重合ポリマーを形成させても良い。
また、2種類以上のホモポリマー及び/または共重合ポリマーをブレンドして使用することも可能である。そのためのホモポリマーとしては、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリペンタメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ乳酸などが挙げられる。
上記ポリエステル(A)とは異なる原料成分よりなるポリエステル系樹脂(ポリエステル(B))として本発明に使用できるポリエステルは、上記したようにポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリペンタメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートおよびそれらの共重合体の中から少なくとも1種類以上を混合したポリエステルとするのが好ましいが、ポリエステル(B)においても本フィルムの特性を損なわない範囲で、その原料成分中に、以下に示すジカルボン酸成分、ジオール成分を配合することが可能である。
上記ポリエステル(B)の原料成分中に配合することが可能なジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸やフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸やエイコ酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸やピロメリット酸などの多官能酸およびポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(2−オキシ酪酸)およびそれらの誘導体を挙げることができる。
上記ポリエステル(B)の原料成分中に配合することが可能なジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの誘導体などを挙げることができる。
ポリエステル(B)として本発明に使用できるポリエステルは、以上に例示される原料成分を用いて上記ポリエステル(A)と同様の方法で合成される。合成されるポリエステルは、1種類ずつのジカルボン酸とジオールを用いたホモポリマーでも、また1種類以上のジカルボン酸とジオールを組み合わせた共重合ポリマーとしても良い。
また、上記ポリエステル(A)と同様、2種類以上のホモポリマー及び/または共重合ポリマーをブレンドして使用することも可能である。そのためのホモポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリペンタメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ乳酸などが挙げられる。
次に、本発明におけるフィルムの製膜方法について述べる。特にこれに限定されるものではないが、好ましくは以下に述べる方法である。
まず押出工程において、前述したポリエステル系樹脂(ポリエステル(A)及びポリエステル(B))、その他の樹脂ペレット等を混合し、押出機に投入、溶融し、T−ダイを用いて押出し、静電密着法などにより冷却ロールに密着させ、冷却固化させることにより未延伸フィルムを得る。その際、押出機の温度は、押出機のフィード部、圧縮部および計量部、さらにフィルタ、樹脂流路またT−ダイまで全て262℃以下とすることが好ましい。
一般に、押出の温度条件が記載されている場合は、樹脂がT−ダイに入る直前やT−ダイから出た直後の樹脂温度をもって押出の温度条件としていることが多い。そのため樹脂がT−ダイに入る直前やT−ダイから出た直後の樹脂温度を制御しても、それまでの押出工程中の樹脂温度は、T−ダイに入る直前やT−ダイから出た直後の樹脂温度とは必ずしも一致しない。スクリュー形状などその機台が持つ固有の状態と生産速度や安定性の点から、意図的に押出機のフィード部、圧縮部および計量部、さらにフィルタ、樹脂流路を変化させることが多く、各部の温度は実際には異なっている場合が多い。
本発明においては全ての押出工程から270℃以上のゾーンをなくすことが好ましい。その理由は、ポリエステル(B)に使用できる樹脂の分解が270℃付近から加速されるためである。
得られた未延伸フィルムは本発明の要件を満たせばそのまま使用できるが、好ましくは未延伸フィルムを少なくとも一軸に延伸する、より好ましくは二軸以上延伸することである。延伸方式は、チューブラー延伸、パンタグラフ方式による同時二軸延伸、リニアモータ方式による同時または逐次二軸延伸、加熱ロールとテンターの組合せによる逐次二軸延伸などの方式が挙げられる。逐次二軸方式の場合は、縦−横、横―縦、縦−縦−横、縦−横−縦、縦−横−横、縦−縦−縦−横などの延伸方式が挙げられる。
ここでは、一般的な縦−横方式による逐次二軸延伸を例に説明する。
得られた未延伸フィルムは、加熱した周速差のあるロールに導かれ、そこで縦方向に2〜5倍延伸される。延伸温度は、構成する樹脂により異なるが50〜120℃である。
縦方向に延伸されたフィルムは、テンターに導かれ横方向に3〜6倍延伸される。延伸温度は、これも構成する樹脂により異なるが70〜150℃である。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、包装材等として好適な、少なくとも一方向の熱収縮率が5%以下のフィルムを得るためには、延伸終了後に後述する方法で熱固定を行うことが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との混合ポリエステルからなるポリエステルフィルムであり、強靱性、耐ピンホール性、耐屈曲性、落袋強度および耐衝撃性を持ち、かつ寸法安定性が良く、吸湿が少ないというポリエステルフィルムの長所を生かすために、ポリエステル(A)として、ポリエチレンテレフタレートを主成分として含有することが必要である。
一方、ポリエステルフィルムの印刷性を良好に保つのに重要なのは、特にポリエステルフィルムを構成する一成分の結晶のランダム性を創出すること、すなわち包装材等として用いられるポリエステルフィルム(延伸・熱固定後のポリエステルフィルム)中に不完全な結晶を生成させることである。不完全な結晶は該ポリエステルフィルムを示差走査熱量計(DSC)のモジュレーテッドモードで測定した際、非可逆熱流速曲線から求められる該ポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピーク熱量ΔHとして定量することができ、該ΔHは5.5J/g以上100J/g以下であることがポリエステルフィルムの印刷性を良好に保つためには必要である。そして、フィルムの印刷性を良好に保つ役割を担うのが該ポリエステルフィルム中のポリエステル(B)で、従ってポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶の状態を管理することが重要である。
このポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピーク熱量ΔHは上記したように5.5J/g以上100J/g以下であることが必要で、好ましくは7J/g以上20J/g以下である。発熱ピーク熱量ΔHが5.5J/g未満の場合は、不完全な結晶の量が少ないことを示しており、インキの密着性が悪くなるという不具合を生じる。また100J/g以上となることは実質的にはなく、あえて創り出してもコスト的に不利になるだけである。
包装材等として用いられるポリエステルフィルム(延伸・熱固定後のポリエステルフィルム)中のポリエステル(B)の結晶のランダム性(不完全な結晶の量)が低下すると、ポリエステル(B)の主成分構造として用いられるブチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、ペンタメチレンテレフタレートまたはヘキサメチレンテレフタレート構造等の特徴である高結晶性のため、インキの密着性が悪化すると推定される。
上記のポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピーク熱量ΔHを5.5J/g以上100J/g以下とするには、すなわち包装材等として用いられる本発明のポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶のランダム性(不完全な結晶の量)を向上させる手段としては、延伸後のポリエステルフィルムを、ポリエステル(A)の融点とポリエステル(B)の融点の間の温度で熱処理した後、急冷することが効果的である。
上記熱処理温度としては、ポリエステル(B)の種類によって異なるが、200℃以上260℃以下が好ましい。200℃未満ではポリエステル(B)の結晶の融解が不十分であり、効果的に不完全な結晶の量を増加させることができず、ΔHを5.5J/g以上100J/g以下にできない場合が多い。また、260℃より高温で処理した場合は、ポリエステル(A)の結晶の融解が始まるため、フィルムの白化などの問題が発生するおそれがある。より好ましい処理温度は、220℃以上250℃以下、さらに好ましくは、230℃以上240℃以下である。
急冷する方法としては、テンターから出たフィルムに20℃以下の冷風をフィルム両面から当てる方法や水冷する方法が好ましい。なお、220℃以上250℃以下の熱処理と急冷処理の間に、180℃以上220℃未満の熱処理を5秒以下設けることは、実質的に樹脂に与える影響はないため、フィルム生産安定性の点からも好ましい。
又、上記熱処理の処理時間は、これもポリエステル(B)の種類によって異なるが、5秒以上2分以下が好ましい。5秒未満ではポリエステル(B)の結晶の融解が不十分であり、効果的に不完全な結晶量を増加させることができない可能性があり、ΔHを5.5J/g以上100J/g以下にできないおそれがある。また、2分より長時間処理した場合は、ポリエステル(A)の結晶の融解が始まるため、フィルムの白化などの問題が発生するおそれがある。
本発明のポリエステルフィルムは、強靱性,耐ピンホール性,耐屈曲性,落袋強度および耐衝撃性等を付与するために、該ポリエステルフィルムを示差走査熱量計(DSC)のモジュレーテッドモードで測定した際、可逆熱流束曲線より得られる該ポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶融解温度での吸熱ピークの半値幅が1℃以上20℃未満であることが好ましい。結晶融解温度での吸熱ピークの半値幅はポリエステル(A)と(B)の分散性を示しており、該半値幅が狭いほど、ポリエステル(B)の独立性が高いことを示している。半値幅が20℃以上では、ポリエステル(A)とポリエステル(B)がほぼ均一に混合された状態となるため、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の独立性が小さく、内容物を充填した袋とした場合に落下などによる破袋が発生することがある。また半値幅が1℃未満となることは実質的にはなく、あえて創り出してもコスト的に不利になるだけである。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、結晶融解温度での吸熱ピークの半値幅を1℃以上20℃未満とするには、すなわちポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の独立性を高めるには、前述のフィルムの製膜方法において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)を別々の押出機で溶融し、スタティックミキサーで混合してT−ダイより押出しする製膜方法によって製造するのが効果的である。
本発明のポリエステルフィルムの還元粘度(ηsp/c)は、好ましくは0.80dl/g以上、より好ましくは0.85dl/g以上、さらに好ましくは0.90dl/g以上である。0.80dl/g未満では、衝撃強度が低くなり内容物を充填した袋とした場合の破袋が起こりやすくなる。
本発明のポリエステルフィルムは、好ましくは厚さが5〜1000μmであり、より好ましくは8〜50μmである。一般用包装材として使用するには厚さ5μm未満では強度不足であり、逆に50μmを超えても性能的に飽和し、コストの面から好ましくない場合が多い。特殊な用途(例えば比重の大きなものを包装する等)のためには1000μmまで製造可能だがそれ以上は非現実的である。
本発明のポリエステルフィルムは、ヘイズが好ましくは0.001%以上7%未満、より好ましくは0.001%以上5%未満である。0.001%未満とすることは実質的に困難でありコストの面から好ましくない。7%以上では裏印刷物の見え方不良となり好ましくない場合が多い。
本発明のポリエステルフィルムは、熱収縮率が好ましくは、−0.1%以上5%未満、より好ましくは0%以上2%以下である。−0.1%未満または5%以上ではオフセット印刷での乾燥条件により熱による伸びが生じ、印刷ずれの原因となる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは、通常、滑剤を添加して成形してフィルムとされる。滑剤としては、二酸化珪素、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、シリコーン粒子、等が挙げられるが、無機系滑剤が好ましい。尚、溶融混合に際し、滑剤の他に、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、等の添加剤を含有させることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、コーティング層を設けることにより印刷性、易接着性、ガスバリア性、帯電防止性などを付与できる。コーティング材として使用できる基材樹脂としては、ポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびそれらの共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体などが使用できる。コート方式は公知のものが使用でき、例えばバーコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、リバースコート、リバースキスコート、ダイコート、カーテンコート、スプレーコートなどが挙げられる。また、コーティングは延伸終了後のフィルムをコーターにて行うオフラインコートおよびフィルム製膜中にコートを実施するインラインコートのいずれも可能である。
本発明のポリエステルフィルムはポリエチレンやポリプロピレンなどからなるヒートシール層を設けることにより熱接着性を付与できる。ヒートシール層を設ける方法は、押出ラミネート、フィルムラミネートおよび共押出方法によりフィルム製膜時に付与する方法などが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムには、有機及び/または無機のガスバリア層を設けることによりガスバリア性を付与することも可能である。その方法は、公知の方法が使用できる。
以下、実施例により具体的に説明する。尚、実施例におけるポリエステルの各特性値は、次のようにして測定した。
1.還元粘度(ηsp/C)
実施例1〜3、比較例1〜3により得られたフィルムを一部切り取り、その0.125gをフェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)25mlに溶解しウベローデ粘度管を用いて25℃で測定した。単位はdl/gである。
2.モジュレーテッドDSC(m−DSC)測定
(1)発熱ピーク熱量△H(J/g)
試料として実施例1〜3、比較例1〜3により得られたフィルムを用い、ティーエーインストロメント社製示差走査熱量計(DSC)(型番;DSC2920)のモジュレーテッド(Modulated)モードにて窒素ガス雰囲気下で、昇温速度5℃/分、温度振幅±1℃、周期60秒にて測定した。得られた非可逆熱流束曲線よりポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピークを求め、該再配列温度付近の発熱ピーク熱量を△H(J/g)として定量した。
(2)ポリエステル(B)結晶融解温度での吸熱ピークの半値幅
また、上記DSC測定で得られた可逆熱流束曲線より、ポリエステル(B)の結晶融解温度での吸熱ピークのベースラインからの高さをhとし、高さh/2での温度幅lを半値幅とした。概略図を図1に示す。
3.初期弾性率
試料として実施例1〜3、比較例1〜3により得られたフィルムを用い、JIS−K7127−1989に従い、オートグラフ AG−5000A(島津製作所(株)製)を用いて行った。測定は、縦・横の延伸方向に応じてそれぞれ行った。
4.ヘイズ
試料として実施例1〜3、比較例1〜3により得られたフィルムを用い、JIS−K7105−1981に基づき、濁度計 NDH2000(日本電色工業(株)製)を使用して測定し、表されるヘイズ(HZ)の値を使用した。
5.衝撃強度
試料として実施例1〜3、比較例1〜3により得られたフィルムを用い、東洋精機製作所社製フィルムインパクトテスター(製造番号;T−84−3)を使用し、測定フィルムをクランプで押さえ付け、1/2インチ径半球衝撃ヘッドで突き刺し、サンプルの衝撃強度を測定した。サンプルは10枚用意し、インパクトする面を変え5枚ずつ測定した。サンプルは100mm×100mm以上の大きさに切り出し、サンプルを固定するリングは内径30mmのものを用いた。求めたサンプルの衝撃強度の平均値を求め、その値を厚さ1mmあたりに換算してフィルムの衝撃強度(J/mm)として求めた。
6.熱収縮率
試料として実施例1〜3、比較例1〜3により得られたフィルムを用い、フィルムを10mm×150mmにカットし、100mm間隔で標線を入れたものを、縦・横の延伸方向に応じてそれぞれ10本ずつ測定サンプルとして作成する。その後、無荷重下で150℃のギアオーブン中に30分間放置し、取り出した後に室温で標線の間隔を測定して、下式に従い求め、縦・横10本ずつの平均値を各サンプルの熱収縮率とした。
熱収縮率=(A−B)/A×100
A:加熱前の標線の間隔距離
B:加熱後の標線の間隔距離
7.ゲルボピンホール
試料として実施例1〜3、比較例1〜3により得られたフィルムを用い、ゲルボフレックステスター(テスター産業(株)製、製造番号;27793)において雰囲気温度が5℃となるよう設定し、500回のゲルボ繰り返しを行ったフィルムサンプル(チャック間距離178mm 直径89mmφ)について、ピンホール個数を比較した(濾紙上でインクの透過箇所の個数を数えた)。ねじり角は440°とした。
8.落袋破袋試験
実施例1〜3、比較例1〜3により得られたフィルムにシーラントフィルムとして未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製 P1153 50μm)をドライラミネートし、インパルスシーラーで4方をシールし、150mm×150mmの水が充填された袋を10個作成し、これを5℃環境下で1mの高さから繰り返し20回落下させ、破袋または水漏れをした回数の平均値で表した。又、落袋破袋試験時のフィルム表面のシワ等、外観のチェックも同時に行った。
9.インキ印刷適性
実施例1〜3、比較例1〜3にて得られたフィルムに後加工にてインキ受容層を設けた。それを4色オフセット印刷を行い、色ずれがなければ◎、実質的に問題ないが微視的に色ずれが確認されれば○、明らかに色ずれがあれば×とした。インキ受容層は、ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロナールMD1200)を最終的に塗布量0.04g/mとなるようにバーコーターでコートして設けた。なお、乾燥温度は110℃とした。
10.裏印刷物の見え方
9.の印刷物を、裏から見て鮮明に見えれば○、不鮮明なら×とした。
11.インキ密着試験
9.の印刷物に1マス5mm×5mmで100マスの碁盤の目をカッターナイフで作成し、印刷面からセロテープ(ニチバン製 CT−18)(登録商標)で貼り付け、すばやくはがしたときにはがれたマスの数を数えた。この試験では10個以下を合格とした。
[実施例1]
ポリエステル(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(A1)(還元粘度0.75)、ポリエステル(B)としてポリブチレンテレフタレート樹脂(B1)(還元粘度1.20)、また有機リン化合物(アデカスタブ PEP−45:旭電化工業(株)製)を1%添加したポリブチレンテレフタレート樹脂(B2)をそれぞれ用意した。
それらをA1/B1/B2=35/63/2(重量%)となるように単軸押出機(65φ)に投入した。押出機及びダイの温度設定は、押出機の供給部(Ex1)、圧縮部(Ex2)、計量部(Ex3)としたとき、Ex1は240℃、Ex2、Ex3からダイのフィルタ部までは260℃、それ以降は255℃に設定して樹脂を供給した。樹脂のT−ダイから出た直後に実測した樹脂の温度は258℃であった。なおフィルタは200メッシュのものを使用した。T−ダイから出た樹脂は、静電密着にて20℃に冷却したロール上で急冷し、厚さ約200μmの未延伸フィルムを得た。その未延伸フィルムを、ロール延伸機に供給し、65℃で3.4倍に縦方向に延伸した。引き続いてテンター内において90℃で3.6倍に横延伸し、そのままテンター内にて240℃で約8秒、200℃で約5秒、4%横方向に緩和し、テンターから出たフィルムを両面から10℃、25m/秒の風速の冷風を約10秒当てて急冷し、約20μmのポリエステルフィルムを得た。
[実施例2]
ポリエステル(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(還元粘度0.75、触媒は二酸化ゲルマニウム)を60mmφ押出機[1](L/D=29 圧縮比4.2)に投入し、275℃で溶融した。またポリエステル(B)としてポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ製1200S、還元粘度1.30)および有機リン化合物(アデカスタブ PEP−45:旭電化工業(株)製)300ppmを別の60mmφ押出機[2](L/D=29 圧縮比4.2)に投入し、240℃で溶融した。その後に押出機[1]および押出機[2]のそれぞれの原料比率が[1]/[2]=46/64(重量比)となるようにスタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテッド製 N20 エレメント数18)に投入し混合させ、T−ダイから押出し、厚さ200μmの未延伸フィルムを得た。このときスタティックミキサーのシリンダ温度は260℃とし、スタティックミキサーからT−ダイまでは255℃とし、T−ダイから出た樹脂の温度は257℃となるようにした。また、T−ダイに入る直前の樹脂の圧力は、8.8MPa(90kgf/cm)となるようにした。この未延伸フィルムを、実施例1と同じ条件で延伸、熱固定、急冷することにより、厚さ20μmのポリエステルフィルムを得た。
[実施例3]
原料として、ポリエステル(B)を還元粘度0.90のポリトリメチレンテレフタレートとした以外は、実施例2と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
[比較例1]
実施例2と同様の方法でフィルムを作成し、縦延伸終了後のフィルムを引き続いてテンター内において90℃で3.6倍に横延伸し、そのままテンター内にて240℃で約1秒、160℃で約10秒、4%横方向に緩和し、テンターから出たフィルムを自然空冷して厚さ20μmのポリエステルフィルムを得た。
[比較例2]
実施例2と同様の方法でフィルムを作成し、縦延伸終了後のフィルムを引き続いてテンター内において90℃で3.6倍に横延伸し、そのままテンター内にて210℃で約15秒、4%横方向に緩和し、テンターから出たフィルムを自然空冷して厚さ20μmのポリエステルフィルムを得た。
[比較例3]
実施例2と同様の方法でフィルムを作成し、縦延伸終了後のフィルムを引き続いてテンター内において90℃で3.6倍に横延伸し、そのままテンター内にて240℃で約15秒、4%横方向に緩和し、テンターから出たフィルムを自然空冷して厚さ20μmのポリエステルフィルムを得た。
上記実施例1〜3、比較例1〜3のフィルムの測定結果を表1に示す。
























Figure 2005320448
本発明のポリエステルフィルムは、従来ナイロンフィルムが使用されている用途、具体的には耐ピンホール性や耐破袋性が要求される食品用包装材として、とくにポリエステルが耐熱性や吸湿寸法安定性に優れる点を活用してボイル処理やレトルト処理加工を施す水産加工品、漬物、惣菜、蓄肉加工品等の包装材として有効に活用することができる。さらにペットフード、農薬、肥料、輸液パック、或は半導体や精密材料包装など医療、電子、化学、機械などの産業材料包装にも有効に活用することができる。また、耐熱性や耐衝撃性、結晶化特性を活かし、真空成形や圧空成形を利用する成形容器などの包装材やカード、電子機器ケースの材料としても有用である。
DSC吸熱ピーク半値幅の求め方を示す概略図
符号の説明
1 DSCにて測定されるライン
2 ベースライン
h 結晶溶融温度での吸熱ピークの高さ
l 吸熱ピーク半値幅(℃)

Claims (5)

  1. エチレングリコールとテレフタル酸を主な原料成分とするポリエステル系樹脂(ポリエステル(A))10〜90重量%と、ポリエステル(A)とは異なる原料成分よりなるポリエステル系樹脂(ポリエステル(B))90〜10重量%との混合ポリエステル系樹脂組成物からなるポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムを示差走査熱量計(DSC)のモジュレーテッドモードで測定した際、非可逆熱流速曲線から求められる該ポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピーク熱量ΔHが5.5J/g以上100J/g以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。
  2. 上記の、ポリエステル(B)の結晶融解に伴う発熱ピーク熱量ΔHが7J/g以上20J/g以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルフィルム。
  3. 上記ポリエステルフィルムを示差走査熱量計(DSC)のモジュレーテッドモードで測定した際、可逆熱流束曲線より得られる上記ポリエステルフィルム中のポリエステル(B)の結晶融解温度での吸熱ピークの半値幅が1℃以上20℃未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のポリエステルフィルム。
  4. エチレングリコールとテレフタル酸を主な原料成分とするポリエステル系樹脂(ポリエステル(A))10〜49重量%と、ポリエステル(A)とは異なる原料成分よりなるポリエステル系樹脂(ポリエステル(B))90〜51重量%との混合ポリエステル系樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリエステルフィルムからなる包装材。
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