以下、本発明によるマイクロアクチュエータアレー、光学装置及び光スイッチアレーについて、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態による光学装置としての光スイッチアレー1を用いた光学システム(本実施の形態では、光スイッチシステム)の一例を模式的に示す概略構成図である。説明の便宜上、図1に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する(後述する図についても同様である。)。図1において、X’軸及びY’軸は、X軸及びY軸をそれぞれZ軸回りに45゜回転した軸を示す。光スイッチアレー1の基板11の面がXY平面と平行となっている。なお、Z軸方向の+側を上側、Z軸方向の−側を下側という場合がある。
この光スイッチシステムは、図1に示すように、光スイッチアレー1と、m本の光入力用光ファイバ2と、m本の光出力用光ファイバ3と、n本の光出力用光ファイバ4と、光スイッチアレー1に対して後述するように磁界を発生する磁界発生部としての磁石5と、制御部としての外部回路6と、を備えている。外部回路6は、光路切替状態指令信号に応答して、当該光路切替状態指令信号が示す光路切換状態を実現するための駆動信号を光スイッチアレー1に供給する駆動制御回路6aと、ミラー31の姿勢を調整する姿勢調整信号を光スイッチアレー1に供給する姿勢調整回路6bと、を有している。本発明では、駆動制御回路6a及び姿勢調整回路6bのいずれか一方又は両方を、基板11に搭載することも可能である。図1に示す例では、m=3、n=3となっているが、m及びnはそれぞれ任意の数でよい。
本実施の形態では、磁石5は、光スイッチアレー1の下側に配置された永久磁石であり、光スイッチアレー1に対して、X軸方向に沿ってその+側へ向かう略均一な磁界を発生している。もっとも、磁界発生部として、磁石5に代えて、例えば、他の形状を有する永久磁石や、電磁石などを用いてもよい。
光スイッチアレー1は、図1に示すように、基板11と、基板11上に配置されたm×n個のミラー31とを備えている。m本の光入力用光ファイバ2は、基板11に対するY’軸方向の一方の側からY’軸方向に入射光を導くように、XY平面と平行な面内に配置されている。m本の光出力用光ファイバ3は、m本の光入力用光ファイバ2とそれぞれ対向するように基板11に対する他方の側に配置され、光スイッチアレー1のいずれのミラー31によっても反射されずにY’軸方向に進行する光が入射するように、XY平面と平行な面内に配置されている。n本の光出力用光ファイバ4は、光スイッチアレー1のいずれかのミラー31により反射されて−X’軸方向に進行する光が入射するように、XY平面と平行な面内に配置されている。m×n個のミラー31は、m本の光入力用光ファイバ2の出射光路と光出力用光ファイバ4の入射光路との交差点に対してそれぞれ、後述するマイクロアクチュエータにより進出及び退出可能にZ軸方向に移動し得るように、2次元マトリクス状に基板11上に配置されている。なお、本例では、ミラー31の向きは、その法線がXY平面と平行な面内においてY軸’と45゜をなすY軸と平行となるように設定されている。もっとも、その角度は適宜変更することも可能であり、ミラー31の角度を変更する場合には、その角度に応じて光出力用光ファイバ4の向きを設定すればよい。なお、この光スイッチシステムの光路切替原理自体は、従来の2次元光スイッチの光路切替原理と同様である。
図2は、図1中の光スイッチアレー1を模式的に示す概略平面図である。光スイッチアレー1は、基板11(図2では図示せず)と、該基板11上に2次元状に配置されたm×n個の可動板12と、各可動板12に搭載されたミラー31とを備えている。図1及び図2並びに後述する図では、説明を簡単にするため、9個の光スイッチを3行3列に配置しているが、光スイッチの数は何ら限定されるものではない。光スイッチアレー1のうちのミラー31以外の部分が、マイクロアクチュエータアレーを構成している。
次に、図1中の光スイッチアレー1の単位素子としての1つの光スイッチの構造について、図3乃至図7を参照して説明する。
図3は、図1中の光スイッチアレー1の単位素子としての1つの光スイッチ(すなわち、1つのマイクロアクチュエータ及びこれにより駆動される1つのミラー31)を模式的に示す概略平面図である。図4及び図5はそれぞれ、図3中のA−A’線に沿った断面を+Y側から−Y軸方向に見た概略断面図である。図4はミラー31が上側に保持されて光路に進出した状態、図5はミラー31が下側に保持されて光路から退出した状態を示している。図6及び図7はそれぞれ、図3中のB−B’線に沿った断面を−X側から+X軸方向に見た概略断面図であり、図6及び図7はそれぞれ、ミラー31が上側に保持されて光路に進出した状態を示している。ただし、図6はミラー31の姿勢調整前の状態、図7はミラー31の姿勢調整後の状態を示している。なお、図4乃至図7では、後述する凸部24の図示を省略しそれによる段差がないものとして示している。また、図6及び図7では、絶縁膜19の図示は省略している。
光スイッチアレー1の単位素子としての光スイッチは、図3乃至図7に示すように、基板11上に設けられ基板11と共にマイクロアクチュエータを構成する可動部としての可動板12と、可動板12に搭載された被駆動体である光学素子としてのミラー31とを有している。本実施の形態では、基板11としてシリコン基板が用いられているが、本発明では、これに限定されるものではなく、適宜、基板11としてガラス基板等の絶縁性基板を用いてもよい。
ここで、可動板12について、図3乃至図7の他に、図8を参照して説明する。図8(a)は図3中の可動板12の外形及び凹凸の状況を示す概略平面図であり、図8(b)は図8(a)中のC−C’線に沿った断面図である。図3には、可動板12のAl膜22のパターン形状も現れている。理解を容易にするため、図3において、Al膜22の部分にハッチングを付している。
可動板12は、薄膜で構成され、図3及び図8(b)に示すように、可動板12の平面形状の全体に渡る下側の窒化ケイ素膜(SiN膜)21と、SiN膜21上に部分的に形成されたAl膜22とから構成されている。すなわち、可動板12は、下から順にSiN膜21からなる1層膜からなる部分と、下から順にSiN膜21及びAl膜22を積層した2層膜からなる部分とを、併有している。これらのSiN膜21及びAl膜22上に、更に、可動板12の平面形状の全体に渡るSiN膜を積層してもよい。Al膜22のパターン形状は図3に示す通りであるが、これについては後述する。可動板12は、SiN膜21とAl膜22との熱膨張係数の差によって生じる内部応力、並びに、成膜時に生じた内部応力により、図4に示すように基板11に対して上向き(+Z方向)に湾曲するように、予め定められた膜厚及び成膜条件によって形成されている。
可動板12は、図3及び図8(a)に示すように、ミラー31を搭載するための搭載部(すなわち、ミラー31用の支持基体)としての長方形状のミラー搭載板12bと、ミラー搭載板12bの端部に接続された2本の帯状の支持板12cとを含む。本実施の形態では、これらの2本の支持板12cが、互いに機械的に並列接続された2本の梁部となっている。支持板12cは、それぞれの端部に脚部12a及び脚部12dを有している。脚部12a及び12dは、いずれも基板11に固定されており、可動板12は、脚部12a及び12dを固定端として、図4に示すように、ミラー搭載板12b側が持ち上がるようになっている。このように、本実施の形態では、可動板12は、脚部12a,12dを固定端とする片持ち梁構造を持つ可動部となっている。本実施の形態では、基板11、並びに、後述する絶縁膜18,19及び固定電極35,36,37が、固定部を構成している。
可動板12には、図3及び図8(a)に示すように、可動板12のミラー31を搭載している部分を取り囲むように、凸部24が設けられている。凸部24は、図8(b)に示すように、可動板12を構成する複層膜を凸型にすることにより形成されている。このように凸部24を設けることにより、段差が生じるため、可動板12のうち、凸部24で囲まれた領域及び凸部24が設けられた領域は、内部応力による湾曲が抑制され、平面性を維持することができる。このため、可動板12は、図4のように内部応力による湾曲によりミラー31を上側の位置に持ち上げた状態であっても、ミラー31を搭載している部分は平面であるため、搭載されているミラー31の形状を一定に保つことができる。
このように、可動板12は、凸部24で囲まれた領域及び凸部24が設けられた領域は湾曲が抑制されるが、支持板12cの脚部12dに近い領域は、凸部24が設けられていない。これにより、凸部24が設けられていない支持板12cの領域の湾曲によって、可動板12は、脚部12a,12dを固定端として、図4のように、ミラー搭載板12b側が持ち上がるようになっている。また、支持板12cの脚部12dに近い領域は、凸部24が設けられていないことにより、弾性部としての板ばね部となっている。
ここで、可動板12のAl膜22の形状について、図3を参照して説明する。本実施の形態では、駆動力としてローレンツ力と静電力の両方を用いて可動板12を駆動するために、図3に示すような形状に、Al膜22をパターニングしている。
Al膜22のうちパターン22aは、2つの脚部12dのうちの一方から、可動板12の外周の縁に沿って延びて可動板12の先端まで到達した後、可動板12の反対側の縁に沿って他方の脚部12dに達するパターンである。このパターン22aは、ローレンツ力により可動板12を駆動する際に、ローレンツ力を生じさせるための電流を流す配線として用いられる。パターン22aは、図4及び図5に示すように、+Y側の脚部12dにおいて基板11上のシリコン酸化膜等の絶縁膜19のスルーホール及びSiN膜21のコンタクトホールを介して配線40に接続されるとともに、−Y側の脚部12dにおいて絶縁膜18,19間に形成された配線(図示せず)と接続され、脚部12dを介して配線40からローレンツ力用駆動信号としての電流が供給される。パターン22aのうち、可動板12の先端の一辺12eに沿ってY軸方向に延びた直線部分が、磁界内に配置されて通電により駆動力としてのローレンツ力を生じる電流路(ローレンツ力用電流路)を構成している。パターン22aの他の部分は、ローレンツ力用電流路の配線となっている。図1に示す磁石5によって、ローレンツ力用電流路がX軸方向の磁界内に置かれている。したがって、パターン22aに電流を供給すると、ローレンツ力用電流路に、その電流の向きに応じて、+Z方向又は−Z方向のローレンツ力が生ずる。
また、Al膜22のうちパターン22bは、2つの脚部12aのそれぞれから、可動板12の内側の縁に沿ってミラー搭載板12bの固定端側(−X側)まで延び、ミラー搭載板12bの固定端側に配置された長方形状のパターン22dに接続されている。パターン22dは、駆動力としての静電力を発生するための可動電極である。以下、パターン22dを可動電極22dと呼ぶ場合がある。パターン22dもAl膜22のうちのパターンである。パターン22bは、可動電極22dの配線パターンである。パターン22bは、両方の脚部12aにおいて、絶縁膜19のスルーホール及びSiN膜21のコンタクトホールを介して配線(図示せず)に接続され、Al膜等からなる固定電極35との間に電圧(静電力用電圧、静電力用駆動信号)が印加される。固定電極35は、基板11上の絶縁膜18,19間に形成され、可動電極22dと対向する位置に配置されている。固定電極35は、基板11から絶縁されている。可動電極22dと固定電極35との間に電圧が印加されると、両者の間に駆動力としての静電力が生じ、この静電力により可動板12は基板11に引き寄せられる。
本実施の形態では、可動電極22dと固定電極35との間の静電力用電圧及び前記ローレンツ力用電流路に流す電流を制御することで、ミラー31が上側(基板11と反対側)に保持された状態(図4)及びミラー31が下側(基板11側)に保持された状態(図5)にすることができる。本実施の形態では、後述するように、外部回路6の駆動制御回路6aによってこのような制御が行われるようになっている。図4及び図5において、Kは、ミラー31の進出位置に対する入射光の光路の断面を示している。
図4に示すように、駆動力としての前記静電力及び駆動力としての前記ローレンツ力が印加されていない状態では、凸部24が設けられていない支持板12cの領域の膜の応力(バネ力)によって+Z方向に湾曲した状態に復帰し、ミラー31が上側に保持される。これにより、ミラー31が光路Kに進出して、当該光路Kに入射した光を反射させる。この状態から、光路に入射した光をミラー31で反射させずにそのまま通過させる状態(図5)に切り替える場合には、例えば、まず、駆動力としての前記ローレンツ力を印加して、凸部24が設けられていない支持板12cの領域の膜の応力(バネ力)に抗してミラー31を下方へ移動させ、ミラー31が基板11側に保持された後、駆動力としての前記静電力を印加してその保持を維持し、前記ローレンツ力の印加を停止させればよい。
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、駆動力としての静電力を発生させる可動電極22d及び固定電極35、及び、駆動力としてのローレンツ力を発生させる前記ローレンツ力用電流路が、信号に応じて、可動板12の弾性部(凸部24が設けられていない支持板12cの領域)のバネ力に抗してミラー31の移動及び位置の保持を行う駆動力を可動板12に付与し得る駆動力付与手段を、構成している。
もっとも、本発明では、この駆動力付与手段は、例えば、可動電極22d及び固定電極35と前記ローレンツ力用電流路のうちの一方のみで構成してもよい。駆動力付与手段を可動電極22d及び固定電極35のみで構成する場合には、例えば、パターン22aを除去するかあるいは途中で断線させておけばよい。駆動力付与手段を前記ローレンツ力用電流路のみで構成する場合には、例えば、パターン22bを除去するかあるいは途中で断線させるか、あるいは、可動電極22dを除去すればよい。
本実施の形態では、ミラー31は、前記特許文献3に開示されているミラーと同様に、Au、Ni又はその他の金属で構成され、可動板12のミラー搭載板12bの上面に直立して、単に固定されている。このミラー31は、例えば、前記特許文献3に開示されているように、ミラー12に対応する凹所をレジストに形成した後、電解メッキによりミラー12となるべきAu、Niその他の金属を成長させ、その後に前記レジストを除去することで、形成することができる。ミラー31をその支持基体となるミラー搭載板12bにより支持する支持構造は、これに限定されるものではなく、例えば、特許文献1に開示された支持構造や、特許文献2に開示された支持構造を採用してもよい。その場合、これらの支持構造及びミラー31は、特許文献1や特許文献2に開示されている製造方法と同様の製造方法により製造することができる。
以上、本実施の形態による光スイッチアレー1の単位素子としての1つの光スイッチの基本的な構造及び動作について、説明した。
本実施の形態による光スイッチアレー1は、例えば、膜の形成及びパターニング、エッチング、犠牲層の形成・除去などの半導体製造技術を利用して、製造することができる。ミラー31及びその支持構造に関する製造方法については既に言及した。可動板12に関する製造方法については、例えば、特許文献2に開示されている製造方法と同様の製造方法により製造することができる。
本実施の形態による光スイッチアレー1の各光スイッチは、可動板12が静電力及びローレンツ力を受けていない状態(すなわち、前述した駆動力も後述する姿勢調整力も受けていない状態)で、可動板12の2本の支持板(梁部)12cのZ軸方向の高さが同一X軸方向位置で互いに同一となり、可動板12のミラー搭載板12bの面の法線がXZ平面と平行な面内に含まれ、かつ、ミラー31の反射面がミラー搭載板12bの面に対して垂直となり、ひいては、ミラー31の反射面がXZ平面と平行な面P1(図6参照)と一致する(したがって、ミラー31の反射面が基板11の面に対して垂直となる)ように、設計され、そうなるべく製造される。そして、ミラー31の反射面がXZ平面と平行な面P1と一致することを前提として、光入力用光ファイバ2から出射してミラー31で反射された反射光の、光出力用光ファイバ4に対する結合が最大となるように、図1に示すように、光スイッチ1の基板11と光ファイバ2,3との相対的な位置関係が設定される。
しかし、製造時のばらつき等のため、ミラー31の反射面が搭載板12bの面に対して完全に垂直にならなかったり、2本の支持板12cのバネ力に差が生ずることで2本の支持板12cの高さに差が生じてしまって搭載板12bが所期の向きに対して傾いたりする。その結果、可動板12が静電力もローレンツ力を受けていない状態で、ミラー31の反射面がXZ平面と平行な面P1に対してX軸回りに傾いてしまい、ミラー31の姿勢が所望の姿勢からずれてしまう。
図6は、可動板12が静電力もローレンツ力を受けていない状態(すなわち、前述した駆動力も後述する姿勢調整力も受けていない状態)で、2本の支持板12cの高さが両方ともH1であり両者に差はないが、ミラー31の反射面が搭載板12bの面に対して完全に垂直にならないことによって、ミラー31の反射面が基板11を基準としたXZ平面と平行な面P1に対してX軸回りに角度θだけ正方向(図6及び図7中の時計方向)に傾いている例を、示している。
図4に示すように駆動力としての前記静電力及び駆動力としての前記ローレンツ力が印加されていない状態(ミラー31が上側に保持されて光路に進出した状態)において、図6に示すようにミラー31の反射面が面P1に対して傾いていると、ミラー31による反射光の方向が所望の方向からずれてしまい、この反射光の光出力用光ファイバ4に対する光結合度が低下し、光量のロスが増大してしまう。なお、図5に示すようにミラー31が下側に保持されている状態では、ミラー31が光路から退出しているので、ミラー31の反射面が面P1に対して傾いていても、光量のロスやその他の不都合は全く生じない。
本実施の形態では、図3乃至図7に示すように、基板11上の絶縁膜18,19間に、Al膜等からなる固定電極36,37が設けられている。固定電極36,37は、基板11から絶縁されている。固定電極36は、可動板12の+Y側の支持板(梁部)12cの下側に配置され、この位置で可動板12のパターン22a,22bと対向している。固定電極37は、可動板12の−Y側の支持板(梁部)12cの下側に配置され、この位置で可動板12のパターン22a,22bと対向している。ミラー31が上側にある時はパターン22a,22bは例えば接地電位にする。固定電極36,37には、絶縁膜18,19間に形成された互いに異なる配線(図示せず)がそれぞれ接続され、互いに独立した電位を印加し得るようになっている。
したがって、固定電極36とこれに対向するパターン22a,22bの部分との間に電圧を印加することで、両者の間に第1の姿勢調整力としての静電力が生じ、この静電力により可動板12の+Y側の支持板12cが基板11に引き寄せられる。その結果、可動板12全体がX軸回りに正方向にねじれ、可動板12のミラー搭載板12bがX軸回りに正方向に回転し、ミラー31の反射面がX軸回りに正方向に回転し、その回転量は印加した電圧の大きさに依存した静電力の大きさにより定まる。このため、固定電極36とこれに対向するパターン22a,22bの部分との間に所望の大きさの電圧を印加することで、ミラー31の反射面のX軸回りの角度を正方向に所望の量だけ調整することができる。
同様に、固定電極37とこれに対向するパターン22a,22bの部分との間に電圧を印加することで、両者の間に第2の姿勢調整力としての静電力が生じ、この静電力により可動板12の−Y側の支持板12cが基板11に引き寄せられる。その結果、可動板12全体がX軸回りに逆方向(図6及び図7中の反時計方向)にねじれ、可動板12のミラー搭載板12bがX軸回りに逆方向に回転し、ミラー31の反射面がX軸回りに逆方向に回転し、その回転量は印加した電圧の大きさに依存した静電力の大きさにより定まる。このため、固定電極37とこれに対向するパターン22a,22bの部分との間に所望の大きさの電圧を印加することで、ミラー31の反射面のX軸回りの角度を逆方向に所望の量だけ調整することができる。
この点について、前述した図6に示す例に即して説明する。図6に示す状態において、固定電極37とこれに対向するパターン22a,22bの部分との間に電圧を印加し、両者の間に第2の姿勢調整力としての静電力を発生させると、図7に示すように−Y側の支持板12cの高さがH1からH2に減少する。高さH2は−Y側の支持板12cの板ばね部(凸部24が設けられていない−Y側の支持板12cの領域)のバネ力と当該静電力とがつり合う位置で決まり、静電力は電極間の電圧差と距離と面積で決まるので、固定電極37とこれに対向するパターン22a,22bの部分との間の電圧を調整すれば、ある程度の範囲でH2の高さを調整できる。このとき、+Y側の支持板12cの高さはほとんど変化せずH1のままである。よって、可動板12全体がねじれている状態になっている。このねじれの影響で、可動板12のミラー搭載板12bが基板11に対してX軸回りに逆方向に傾き、ミラー搭載板12bに搭載されているミラー31もX軸回りに逆方向に傾く。図7に示すように、このミラー31の反射面の傾きが図6に示す初期傾きθをうち消す角度となったとき、ミラー31の反射面は、XZ平面と平行な面P1と一致して基板11の面に対して垂直となる。
本実施の形態では、図1中の姿勢調整回路6bは、後述するように、駆動力(可動電極と固定電極35との間の静電力、及び、前記ローレンツ力)が発生していない状態において、固定電極36,37のうちの予め選択された方の固定電極とパターン22a,22bとの間に予め設定された大きさの電圧を、姿勢調整信号として供給する。また、図1中の姿勢調整回路6bは、設定によっては、駆動力が発生していない状態においても、固定電極36とパターン22a,22bとの間にも固定電極37とパターン22a,22bとの間にも電圧を供給せず、前記第1及び第2の姿勢調整力のいずれも発生させない。このような設定は、駆動力も姿勢調整力も発生していない状態においてそもそもミラー31の反射面がXZ平面と平行な面P1と一致しているような場合に、行われる。
先の説明からわかるように、固定電極36に対向するパターン22aの部分及び固定電極36に対向するパターン22bの部分は、全体として、固定電極36と共に前記第1の姿勢調整力を生じさせるための可動電極(第1の姿勢調整力用可動電極)となっている。したがって、この第1の姿勢調整力用可動電極の一部として、前記ローレンツ力用電流路の配線の一部(固定電極36に対向するパターン22aの部分)が兼用され、この第1の姿勢調整力用可動電極の他の一部として、駆動力用可動電極22dの配線の一部(固定電極36に対向するパターン22bの部分)が兼用されている。
同様に、固定電極37に対向するパターン22aの部分及び固定電極37に対向するパターン22bの部分は、全体として、固定電極37と共に前記第2の姿勢調整力を生じさせるための可動電極(第2の姿勢調整力用可動電極)となっている。したがって、この第2の姿勢調整力用可動電極の一部として、前記ローレンツ力用電流路の配線の一部(固定電極37に対向するパターン22aの部分)が兼用され、この第2の姿勢調整力用可動電極の他の一部として、駆動力用可動電極22dの配線の一部(固定電極37に対向するパターン22bの部分)が兼用されている。
このように、本実施の形態では、第1及び第2の姿勢調整力用可動電極として駆動力用可動電極の配線の一部や前記ローレンツ力用電流路の配線の一部を兼用している。これにより、構造が簡単となるとともに可動板12を小型化することができる。このように兼用しても、駆動力(可動電極と固定電極35との間の静電力、及び、前記ローレンツ力)が発生していない図4に示す状態においてのみ、前記第1又は第2の姿勢調整力を発生させることで、駆動力発生のための電圧・電流の印加動作と姿勢調整力発生のための電圧印加動作とが干渉して支障を来すような状況を回避することができる。前述した光量のロスを低減するためには、図4に示す状態においてのみミラー31の姿勢を調整することができればよく、図5に示す状態ではミラー31の姿勢を調整する必要がない。もっとも、第1及び第2の姿勢調整力用可動電極は、駆動力用可動電極の配線や前記ローレンツ力用電流路の配線とは独立して別に設けてもよい。この場合、例えば、各支持板12cのY軸方向の幅を広くし、各支持板12c上に姿勢調整力用可動電極をパターン22a,22bの横に並べて配置し、固定電極36,37を各姿勢調整力用可動電極と対向する位置に配置すればよい。
また、先の説明からわかるように、本実施の形態では、固定電極36及びこれに対向するパターン22a,22bの部分が、ミラー31をX軸回りの正方向へ回転させる第1の姿勢調整力を可動板12に付与する第1の付与手段を構成し、固定電極37及びこれに対向するパターン22a,22bの部分が、ミラー31をX軸回りの逆方向へ回転させる第2の姿勢調整力を可動板12に付与する第2の付与手段を構成し、これらが全体として被駆動体としてのミラー31の姿勢を調整する力を可動板12に付与する姿勢調整力付与手段を構成している。したがって、本実施の形態によれば、ミラー31の反射面の角度をX軸回りの正方向及び逆方向の両方向に調整することができる。通常は、製造ばらつき等によって、ミラー31の反射面の角度は所期の角度(本実施の形態では、XZ平面と平行な面P1と一致する角度)に対してX軸回りの正方向及び逆方向の両方にばらつく。よって、本実施の形態によれば、ミラー31の反射面の角度がいずれの方向にばらついても、そのずれを補正することができるので、好ましい。もっとも、本発明では、前記姿勢調整力付与手段を第1及び第2の付与手段の一方のみで構成してもよく、例えば、固定電極36,37のうちの一方を削除してもよい。この場合であっても、例えば、設計や製造条件等を適宜設定することで、製造ばらつき等によって、ミラー31の反射面の角度が所期の角度(XZ平面と平行な面P1と一致する角度)に対してX軸回りの一方方向に主としてばらつくようにすれば、製造ばらつきに関して実質的に本実施の形態と同程度の効果を得ることも可能である。
また、本実施の形態では、前述したように、前記第1及び第2の姿勢調整力を可動板12の各支持板(梁部)12cにそれぞれに与えるように構成されている。このため、前記第1及び第2の姿勢調整力が可動板12のねじれの中心から比較的大きく偏心した位置に付与されることになるので、第1及び第2の姿勢調整力が比較的小さくても、ミラー31の反射面の角度調整の範囲を拡げることができる。
ところで、本実施の形態による光スイッチアレー1のように、前述した単位素子として光スイッチを2次元に配置する場合、図1に示す外部回路6に相当する回路を各光スイッチに対して1対1に設けた個別回路の集合として構成することが考えられる。この場合、姿勢調整回路6bも各光スイッチに対して1対1に設けた個別姿勢調整回路の集合として構成されるので、各ミラー31の反射面の角度を1つずつ個別に独立して調整することができる。しかしながら、この場合には、前述した補正(姿勢調整)を行うために光スイッチアレー1から外部に引き出す配線の本数が大幅に増えてしまう。
一方、姿勢調整回路6bを各光スイッチに対して1対1に設けた個別姿勢調整回路の集合として構成する代わりに、前記個別姿勢調整回路と同じ構成を持つ1つの回路のみで姿勢調整回路6bを構成し、この回路を全ての光スイッチに対して共通して用いる(すなわち、当該回路に対して各光スイッチを並列的に接続する)ことが考えられる。この場合には、前述した補正(姿勢調整)を行うために光スイッチアレー1から外部に引き出す配線の本数が少なくてすむものの、全てのミラー31の反射面の角度を一括して同じように調整することしかできず、各ミラー31の反射面の角度を1つずつ個別に独立して調整することはできない。
これらに対して、本実施の形態による光スイッチアレー1では、図9に示す電気的な構成(特に、各行毎に当該行のマイクロアクチュエータの固定電極部36が電気的に共通して接続されるとともに、各行毎に当該行のマイクロアクチュエータの固定電極部37が電気的に共通して接続された構成)を採用することで、各マイクロアクチュエータの前記補正(姿勢調整)を互いに独立して行うことができるとともに、前記補正(姿勢調整)に関連してアドレス回路等を搭載せずに外部に引き出す配線の本数を減らすことができる。以下に、この点について、本実施の形態による光スイッチアレー1の電気的な構成について説明しつつ詳述する。
図9は、本実施の形態による光スイッチアレー1を示す電気回路図である。図3乃至図8に示す単一の光スイッチは、電気回路的には、1個の駆動力用コンデンサ(固定電極35と可動電極22dとがなすコンデンサに相当)と、1個の駆動力用コイル(前記ローレンツ力用電流路(パターン22aのうち、可動板12の先端の一辺12eに沿ってY軸方向に延びた直線部分))に相当)と、2個の第1の姿勢調整力用コンデンサ(固定電極36とこれに対向するパターン22bの部分とがなすコンデンサ、及び、固定電極36とこれに対向するパターン22aの部分とがなすコンデンサに相当)と、2個の第2の姿勢調整力用コンデンサ(固定電極37とこれに対向するパターン22bの部分とがなすコンデンサ、及び、固定電極37とこれに対向するパターン22aの部分とがなすコンデンサに相当)と見なせる。
図9では、m行n列の光スイッチの1個の駆動力用コンデンサをCmn、1個の駆動力用コイルをLmn、2個の第1の姿勢調整力用コンデンサをCmnAa,CmnAb(固定電極36とこれに対向するパターン22bの部分とがなすコンデンサをCmnAa、固定電極36とこれに対向するパターン22aの部分とがなすコンデンサをCmnAb)、2個の第2の姿勢調整力用コンデンサをCmnBa,CmnBb(固定電極37とこれに対向するパターン22bの部分とがなすコンデンサをCmnBa、固定電極37とこれに対向するパターン22aの部分とがなすコンデンサをCmnBb)と表記している。例えば、図2中の左上の(1行1列の)光スイッチの1個の駆動力用コンデンサをC11、1個の駆動力用コイルをL11、2個の第1の姿勢調整力用コンデンサをC11Aa,C11Ab、2個の第2の姿勢調整力用コンデンサをC11Ba,C11Bbと表記している。
本実施の形態では、各駆動力用コンデンサCmnの図9中の下側電極が固定電極35、各駆動力用コンデンサCmnの図9中の上側電極が可動電極22dとなっている。各第1の姿勢調整力用コンデンサCmnAa,CmnAbの図9中の上側電極が固定電極36、各第1の姿勢調整力用コンデンサCmnBa,CmnBbの図9中の上側電極が固定電極37となっている。
前述したように、前記第1の姿勢調整力用可動電極の一部として前記ローレンツ力用電流路の配線の一部(固定電極36に対向するパターン22aの部分)が兼用され、前記第2の姿勢調整力用可動電極の一部として前記ローレンツ力用電流路の配線の一部(固定電極37に対向するパターン22aの部分)が兼用されているので、図9に示すように、第1の姿勢調整力用コンデンサCmnAbの図9中の下側電極、第2の姿勢調整力用コンデンサCmnBbの図9中の下側電極、及びコイルLmnが、互いに接続されている。
また、前述したように、前記第1の姿勢調整力用可動電極の他の一部として、駆動力用可動電極22dの配線の一部(固定電極36に対向するパターン22bの部分)が兼用され、前記第2の姿勢調整力用可動電極の他の一部として、駆動力用可動電極22dの配線の一部(固定電極37に対向するパターン22bの部分)が兼用されているので、図9に示すように、第1の姿勢調整力用コンデンサCmnAaの図9中の下側電極、第2の姿勢調整力用コンデンサCmnBaの図9中の下側電極、及び駆動力用コンデンサCmnが、互いに接続されている。
図9では、説明を簡単にするため、既に説明したように、9個の光スイッチを3行3列に配置している。もっとも、光スイッチの数は何ら限定されるものではなく、例えば100行100列の光スイッチを有する場合も、原理は同一である。また、光スイッチの数が同じであっても、行数と列数を同数にする必要はない。例えば、光スイッチの数が16個の場合、4行4列及び2行8列のいずれの配置でもよい。
本実施の形態による光スイッチアレー1には、図9に示すように、複数の端子CA1〜CA3からなる第1の端子群、複数の端子CB1〜CB3からなる第2の端子群、複数の端子CD1〜CD3からなる第3の端子群、複数の端子CU1〜CU3からなる第4の端子群、複数の端子L0〜L3からなる第5の端子群が設けられている。これらの端子CA1〜CA3,CB1〜CB3,CD1〜CD3,CU1〜CU3,L0〜L3は、図1中の外部回路6に接続するための外部接続用の端子である。本実施の形態では、前述した脚部12aの下の配線パターン(図示せず)、脚部12dの下の配線パターン40及びその他の配線パターン(図示せず)によって、図9に示す電気的な接続が実現されている。前記各端子は、例えば、対応する配線パターンの一部を電極パッドとすることにより構成することができる。
また、図9では、第1の端子群の端子CA1〜CA3の数、第2の端子群の端子CB1〜CB3の数及び第3の端子群の端子CD1〜CD3の数が光スイッチの行数と同じく3個とされ、第4の端子群の端子CU1〜CU3の数が光スイッチの列数と同じく3個とされている。
本実施の形態では、1行目のコンデンサC11Aa,C11Ab,C12Aa,C12Ab,C13Aa,C13Abの固定電極36は、第1の端子群の端子CA1に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。2行目のコンデンサC21Aa,C21Ab,C22Aa,C22Ab,C23Aa,C23Abの固定電極36は、第1の端子群の端子CA2に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。3行目のコンデンサC31Aa,C31Ab,C32Aa,C32Ab,C33Aa,C33Abの固定電極36は、第1の端子群の端子CA3に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。このように、各行毎に、当該行のマイクロアクチュエータの固定電極36が電気的に共通して接続されている。
1行目のコンデンサC11Ba,C11Bb,C12Ba,C12Bb,C13Ba,C13Bbの固定電極37は、第2の端子群の端子CB1に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。2行目のコンデンサC21Ba,C21Bb,C22Ba,C22Bb,C23Ba,C23Bbの固定電極37は、第2の端子群の端子CB2に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。3行目のコンデンサC31Ba,C31Bb,C32Ba,C32Bb,C33Ba,C33Bbの固定電極37は、第2の端子群の端子CB3に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。このように、各行毎に、当該行のマイクロアクチュエータの固定電極37が電気的に共通して接続されている。
1行目のコンデンサC11,C12,C13の固定電極35は、第3の端子群の端子CD1に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。2行目のコンデンサC21,C22,C23の固定電極35は、第3の端子群の端子CD2に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。3行目のコンデンサC31,C32,C33の固定電極35は、第3の端子群の端子CD3に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。このように、各行毎に、当該行のマイクロアクチュエータの固定電極35が電気的に共通して接続されている。
1列目のコンデンサC11,C21,C31の可動電極22dは、第4の端子群の端子CU1に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。2列目のコンデンサC12,C22,C32の可動電極22dは、第4の端子群の端子CU2に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。3列目のコンデンサC13,C23,C33の可動電極22dは、第4の端子群の端子CU3に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。このように、各列毎に、当該列のマイクロアクチュエータの可動板12の可動電極22dが電気的に共通して接続されている。
また、図9では、1列目のコイルL11,L21,L31が直列に接続され、その一端が端子L1に他端が端子L0にそれぞれ接続されている。2列目のコイルL12,L22,L32が直列に接続され、その一端が端子L2に他端が端子L0にそれぞれ接続されている。3列目のコイルL13,L23,L33が直列に接続され、その一端が端子L3に他端が端子L0にそれぞれ接続されている。
1列目のコイルL11,L21,L31は、端子L1,L0間に電流を流したときにこれらのコイルL11,L21,L31に発生するローレンツ力の向きが同一になるように、電流の向きをそろえて接続されている。この点は、2列目のコイルL12,L22,L32及び3列目のコイルL13,L23,L33についても、同様である。本実施の形態では、電流を端子L1,L2,L3から端子L0に向かう方向に流したときに(この方向の電流を正の電流とする。)、マイクロアクチュエータのローレンツ力用電流経路にローレンツ力が下向きに働くように設定されている。
このように、図9に示す例では、各列毎に、当該列のマイクロアクチュエータのローレンツ力用電流経路が、通電された際に同じ向きのローレンツ力を生じるように、電気的に直列に接続されている。
なお、本実施の形態による光スイッチアレー1には、図9に示すように、アドレス回路や列選択スイッチや行選択スイッチ等は搭載されていない。
本実施の形態では、図1中の外部回路6の駆動制御回路6aは、前記端子CD1〜CD3,CU1〜CU3,L0〜L3に接続され、端子CD1〜CD3,CU1〜CU3の電位をそれぞれ独立して制御するとともに、端子L1〜L3に流れる電流をそれぞれ独立して制御することで、前記光スイッチアレー1の各光スイッチの光路切換状態を制御する。
一方、図1中の外部回路6の姿勢調整回路6bは、前記端子CA1〜CA3,CB1〜CB3に接続され、駆動制御回路6aと連動して、図4に示す状態にある光スイッチのミラー31の姿勢を調整する姿勢調整信号を、各端子CD1〜CD3,CU1〜CU3に与える電位として供給し、その調整状態を実現する。
まず、駆動制御回路6aによる光路切替動作について、図11を参照して説明する。なお、駆動制御回路6aの具体的な回路構成自体は、以下に説明する動作例から明らかである。
図11には、駆動制御回路6aが各端子CD1〜CD3,CU1〜CU3に与える電位、及び、各端子L1〜L3を経由して各コイルに流す電流のタイミングチャートの一例が示されている。
図11に示す例では、駆動制御回路6aは、第3の端子群の端子CD1〜CD3には2つの電位Vh,Vm1のいずれかの電位を与え、第4の端子群の端子CU1〜CU3には2つの電位Vm2,VLのいずれかの電位を与える。ここで、電位Vh,Vm1,Vm2,VLは、Vh>Vm1≧Vm2>VLの関係を満たしている。各端子L1〜L3には、I1(下向きのローレンツ力が生ずる方向の電流),−I2(上向きのローレンツ力が生ずる方向の電流)のいずれかの電流が流されるか、あるいは、電流が流されない(電流ゼロ)。端子L1に電流が流されない場合は、端子L1の電位は電位VLとされる。他の端子L2,L3についても同様である。
図11に示す例では、時刻t1以前は、各端子CD1〜CD3の電位がVhとされ、各端子CU1〜CU3の電位がVLとされ、端子L1〜L3には電流が流れておらず、9個の全てのアクチュエータがラッチ解除状態(可動板12が図4に示すように上側位置に位置する状態)になっているものとする。
時刻t1から時刻t2の間に、端子L1,L2,L3に電流I1が流され、9個の全てのアクチュエータの可動板12が下方向(基板11側、すなわち、固定電極35と可動電極22dの間隔が狭くなる方向)に動かされる。これにより、全てのアクチュエータの固定電極35と可動電極22dの間隔が狭くなり、両電極間の静電力がある一定値を越えると、その静電力によって、全てのアクチュエータの可動板12が図5に示すように下側位置にラッチ(保持)される。
時刻t3から時刻t4の間では、端子CD1の電位がVhからVm1に下げられ、端子CU1の電位がVLからVm2に上昇され、さらに、端子L1に電流−I2が流される。これにより、図9中のコンデンサC11の電極間電圧はVh−VLからVm1−Vm2に低下する。コンデンサC11の電極間電圧の低下に伴い、コンデンサC11の両電極間の静電力も低下する。一方、電流−I2によるローレンツ力は、固定電極35と可動電極22dを引き離す方向に働く。ここで、ローレンツ力とバネ力が引き離す方向で、静電力が引き合う方向の力であり、引き離す方向の力が引き合う方向の力よりも強くなるように設定するとラッチが解除され、コンデンサC11の固定電極35と可動電極22dが引き離される。
また、時刻t3から時刻t4の間、コンデンサC12,C13の両電極間電圧はVm1−VLとなる。端子L2,L3には電流は流さないので、コンデンサC12,13に相当するマイクロアクチュエータのコイルL12,L13には、ローレンツ力が発生しない。よって、電圧差Vm1−VLによって発生する静電力がバネ力よりも大きくなるように設定すれば、コンデンサC12,C13に相当するマイクロアクチュエータのラッチは維持される。
さらに、時刻t3から時刻t4の間、コンデンサC21、C31の両電極間電圧はVh−Vm2となる。端子L1には電流−I2が流れているので、コンデンサC21、C31に相当するマイクロアクチュエータのコイルL21,L31には、上向きのローレンツ力が発生する。よって、電圧Vh−Vm2によって発生する静電力がこのローレンツ力とバネ力の和よりも大きくなるように設定すれば、コンデンサC21,C31に相当するマイクロアクチュエータのラッチは維持される。
よって、時刻t3から時刻t4の間に、コンデンサC11に相当するマイクロアクチュエータのみがラッチが解除される。
時刻t3から時刻t4の間と同様に、時刻t5からt6の間にコンデンサC22に相当するマイクロアクチュエータのみがラッチが解除され、時刻t7から時刻t8の間にC33の固定電極35と可動電極22dのみがラッチが解除される。
ここまでで、コンデンサC11,C22,C33に相当するマイクロアクチュエータのラッチを解除し、その他のマイクロアクチュエータのラッチを維持しているという当該光スイッチの初期のミラー配置が終了した。
さらに、この初期配置から一部のミラー配置を変更する手順を説明する。
時刻t9から時刻t10の間に、端子L1に電流I1が流され、コンデンサC11に相当するマイクロアクチュエータの可動板12が下方向(基板121側、すなわち、固定電極35と可動電極の間隔が狭くなる方向)に動かされる。これにより、コンデンサC11に相当するアクチュエータの固定電極35と可動電極22dの間隔が狭くなり、両電極間の静電力がある一定値を越えると、その静電力によって、コンデンサC11に相当するアクチュエータの可動板12が下側位置にラッチされる。
時刻t11から時刻t12の間に、端子L2に電流I1が流され、コンデンサ22に相当するアクチュエータの可動板12が下方向(基板121側、すなわち、固定電極35と可動電極22dの間隔が狭くなる方向)に動かされる。これにより、コンデンサC22に相当するアクチュエータの固定電極35と可動電極22dの間隔が狭くなり、両電極間の静電力がある一定値を越えると、その静電力によって、コンデンサC22に相当するアクチュエータの可動板12が下側位置にラッチされる。
時刻t13から時刻t14の間では、端子CD2の電圧がVhからVm1に下げられ、端子CU1の電位がVLからVm2に上昇され、さらに、端子L1に電流−I2が流される。これにより、図9中のコンデンサC21の電極間電圧はVh−VLからVm1−Vm2に低下する。コンデンサ21の電極間電圧の低下に伴い、コンデンサC21の両電極間の静電力も低下する。一方、電流−I2によるローレンツ力は、固定電極と可動電極を引き離す方向に働く。ここで、ローレンツ力とバネ力が引き離す方向で、静電力が引き合う方向の力であり、引き離す方向の力が引き合う方向の力よりも強くなるように設定するとラッチが解除され、コンデンサC21の固定電極と可動電極が引き離される。このとき、その他のコンデンサに相当するマイクロアクチュエータは、時刻t1から時刻t2の間と同様に、ラッチが維持される。
時刻t15から時刻t16の間では、端子CD1の電圧がVhからVm1に下げられ、端子CU2の電位がVLからVm2に上昇され、さらに、端子L2に電流−I2が流される。これにより、図9中のコンデンサC12の電極間電圧はVh−VLからVm1−Vm2に低下する。コンデンサ12の電極間電圧の低下に伴い、コンデンサC12の両電極間の静電力も低下する。一方、電流−I2によるローレンツ力は、固定電極35と可動電極22dを引き離す方向に働く。ここで、ローレンツ力とバネ力が引き離す方向で、静電力が引き合う方向の力であり、引き離す方向の力が引き合う方向の力よりも強くなるように設定するとラッチが解除され、コンデンサC12の固定電極35と可動電極22dが引き離される。このとき、その他のコンデンサに相当するマイクロアクチュエータは、時刻t1から時刻t2の間と同様に、ラッチが維持される。
以上で、コンデンサC21,C12,C33に相当するマイクロアクチュエータのラッチを解除し、その他のマイクロアクチュエータのラッチを維持しているという当該光スイッチのミラー配置の変更が終了した。
以上の動作説明から、所望の光路切換状態を適切に実現することができることがわかる。また、各行において、同時に図4に示す状態(ラッチ解除状態)となるミラー31の数は、0個又は1個であることがわかる。なお、前述した各電圧値及び電流値は、前述した動作を実現することができるように、適宜定めればよい。
次に、図1中の外部回路6の姿勢調整回路6bの一例について、図10を説明する。図10は、姿勢調整回路6bの要部を示す電気回路図である。
図10に示す例では、姿勢調整回路6bは、m行n列の光スイッチに対応して、可変抵抗器VRmn及びMOSFET等のスイッチMmnを有している。また、姿勢調整回路6bは、光スイッチのm行に対応して、MOSFET等のスイッチMmA,MmB,MmC,MmDを有している。さらに、姿勢調整回路6bは、光スイッチアレー1の図9中の端子CA1〜CA3,CB1〜CB3にそれぞれ接続される端子CA1’〜CA3’,CB1’〜CB3’を有している。また、この姿勢調整回路6bでは、接地電位が前述した図11中の電位VLとされ、端子Vには電位VLより高い一定の電位が印加される。図10中のPmn,PmA,PmA’は対応するスイッチのゲート制御信号を示し、当該ゲート制御信号がハイの場合は対応するスイッチがオンするとともにローの場合は対応するスイッチがオフするものとする。
図10に示す例では、各可変抵抗器Vmnの一端が端子Vに接続され、各可変抵抗器Vmnの他端が接地され、各可変抵抗器Vmnの摺動端子が対応するスイッチMmnの一端に接続されている。各スイッチMmnの他端は、対応するm行毎に共通に接続されて、対応するm行のスイッチMmA,MmBの一端に接続されている。各スイッチMmA,MmBの他端は、対応するm行のスイッチMmC,MmDの一端にそれぞれ接続されている。各スイッチMmC,MmDの他端は、接地されている。各m行のスイッチMmB,MmD間の接続中点は対応する行mの端子CAm’に接続され、各m行のスイッチMmA,MmC間の接続中点は対応する行mの端子CBm’に接続されている。例えば、1行目のスイッチM1B,M1D間の接続中点は1行目の端子CA1’に接続され、1行目のスイッチM1A,M1C間の接続中点は1行目の端子CB1’に接続されている。
なお、姿勢調整回路6bは、ゲート制御信号Pmn,PmA,PmA’を供給する回路等を含んでいるが、その図示は省略している。
この姿勢調整回路6bは、例えば、次のようにして初期設定される。
1行目の回路の初期設定について説明すると、まず、前述した駆動制御回路6aの動作によって、1行目の光スイッチのうちの、1行1列の光スイッチのみを図4に示す状態(ラッチ解除状態)とし、他の1行2列及び1行3列の光スイッチを図5に示す状態(ラッチ状態)とする。その切替が終了すると、図11を参照して説明した駆動制御回路6aの動作からわかるように、図9中の端子CU1,L1には、電位VLが印加された状態となる。この状態で、まず、ゲート制御信号P1Aをハイにして、スイッチM1A,M1Dをオンにする。このとき、ゲート制御信号P1A’はローにして、スイッチM1B,M1Cはオフにしておく。これにより、端子CA1’,CA1(図9参照)は接地される(すなわち、電位VLとなる)。さらにゲート制御信号P11をハイにして、スイッチM11をオンにする。このとき、ゲート制御信号P12,P13をローにして、スイッチM12,M13はオフにしておく。その結果、端子CB1’,CB1(図9参照)は、可変抵抗器V11で定まる電位となるため、図9中の2個の第2の姿勢調整力用コンデンサC11Ba,C11Bbに可変抵抗器V11で定まる電圧が印加される。よって、可変抵抗器V11で定まる第2の姿勢調整力が1行1列のマイクロアクチュエータに加えられ、1行1列のミラー31の反射面の傾きが変化する。
図4に示す状態において、ミラー31の反射面の傾きが変化すると、ミラー31により反射された反射光の反射角度が変化し、この反射光の光出力用光ファイバ4に対する光結合度が変化し、光量のロスが変化する。このため、光入力用光ファイバ2からの入射光量を一定にすると、対応する光出力用光ファイバ4から得られる反射光の光量が変化する。よって、前述した状態において、対応する光出力用光ファイバ4から得られる反射光の光量が最大となるように可変抵抗器V11を調整する。
次に、ゲート制御信号P1Aをローにして、スイッチM1A,M1Dをオフにする。このとき、ゲート制御信号P1A’はハイにして、スイッチM1B,M1Cをオンにする。これにより、端子CB1’,CB1(図9参照)は接地され(すなわち、電位VLとなり)、端子CA1’,CA1(図9参照)は、可変抵抗器V11で定まる電位となる。よって、可変抵抗器V11で定まる第1の姿勢調整力が1行1列のマイクロアクチュエータに加えられ、1行1列のミラー31の反射面の傾きが逆方向に変化する。そして、この状態において、対応する光出力用光ファイバ4から得られる反射光の光量が最大となるように可変抵抗器V11を調整する。
このとき1行1列の光スイッチに関して得られた最大光量が、先に得られた1行1列の光スイッチに関して得られた最大光量より大きいか等しい場合には、可変抵抗器V11の調整を終了するとともに、1行1列の光スイッチの姿勢調整の際にはゲート制御信号P1Aをローにするとともにゲート制御信号P1A’をハイにする旨の情報を、図示しないメモリ等に記憶させる。一方、このとき1行1列の光スイッチに関して得られた最大光量が、先に得られた1行1列の光スイッチに関して得られた最大光量より小さい場合には、再び、ゲート制御信号P1Aをハイにするとともにゲート制御信号P1A’をローにして、対応する光出力用光ファイバ4から得られる反射光の光量が最大となるように可変抵抗器V11を調整した後に、可変抵抗器V11の調整を終了し、1行1列の光スイッチの姿勢調整の際にはゲート制御信号P1Aをハイにするとともにゲート制御信号P1A’をローにする旨の情報を、図示しないメモリ等に記憶させる。
以上、1行1列の光スイッチの初期設定について説明した。その後、1行2列の光スイッチの初期設定及び1行3列の光スイッチの初期設定を、順次、1行1列の光スイッチの初期設定と同様に行う。なお、1行2列の光スイッチの初期設定の場合は、スイッチM11をオンする代わりにスイッチM12をオンして可変抵抗器V12を調整し、1行3列の光スイッチの初期設定の場合は、スイッチM11をオンする代わりにスイッチM13をオンして可変抵抗器V13を調整する。これにより、1行目の光スイッチの初期設定が完了する。
以上、1行目の光スイッチの初期設定について説明した。他の行の光スイッチについても、1行目の光スイッチと同様に初期設定を行う。
このような初期設定は、光出力用光ファイバ4を光スイッチ1に対して厳密に光軸合わせを行うような場合に比べて、非常に簡単に行うことができる。
姿勢調整回路6bは、光スイッチアレー1の通常の動作時(初期設定後の動作時)には、例えば、光路切替期間(例えば、図11中の期間t3−t4、期間t5−t6、期間t7−t8、期間t9−t10、期間t11−t12、期間t13−t14、期間t15−t16)を除く光路切替終了期間(例えば、図11中の期間t4−t5、期間t6−t7、期間t8−t9、期間t10−t11、期間t12−t13、期間t14−t15、時刻t16以降の期間)において、図4に示す状態の光スイッチについて、当該光スイッチに対応するスイッチMmnをオンにするとともに、初期設定時に前述したメモリ等内に当該光スイッチに関連づけて記憶されたゲート制御信号PmA,PmA’の情報に従った、ゲート制御信号PmA,PmA’を対応するスイッチMmA,MmB,MmC,MmDのゲートに与える。
図11には、駆動制御回路6aが前述したように光路切替動作を行う場合の、スイッチM11〜M13,M21〜M23,M31〜M33のゲート制御信号P11〜P13,P21〜P23,P31〜P33のタイミングチャートも、示している。
このように、本実施の形態によれば、各行毎に当該行のマイクロアクチュエータの固定電極36が電気的に共通して接続されて端子CA1〜CA3にそれぞれ接続され、各行毎に当該行のマイクロアクチュエータの固定電極37が電気的に共通して接続されて端子CB1〜CB3にそれぞれ接続されているにも拘わらず、各ミラー31の姿勢を互いに独立して補正(調整)することができる。
したがって、本実施の形態によれば、製造時のばらつき等のため、各ミラー31の反射面が搭載板12bの面に対して完全に垂直にならなかったり、2本の支持板12cのバネ力に差が生ずることで2本の支持板12cの高さに差が生じてしまって搭載板12bが所期の向きに対して傾いたりすることによって、初期的に各ミラー31の反射面の角度が所望の角度からずれても、前述したように初期設定を行うことで、そのずれを互いに独立して補正することができ、ひいては、歩留りを低下させることなく反射光量のロスを低減することができる。
また、本実施の形態によれば、このように製造ばらつきに等に対処することができるのみならず、種々の原因でミラー31の反射面の角度が変化してもこれに対処することができる。例えば、経時変化によってミラー31の反射面の角度が変化しても、前記初期設定を再度行うことで、経時変化に起因するミラー31の反射面の角度ずれを補正し、経時変化に起因する反射光量のロスを低減することができる。さらに、本実施の形態によれば、使用環境の温度変化に起因してミラー31の反射面の角度が変化しても、この温度変化に応じて、前記初期設定を再度行うことで、温度変化に起因するミラー31の反射面の角度ずれを補正し、温度変化に起因する反射光量のロスを低減することができる。
さらに、本実施の形態によれば、各行毎に当該行のマイクロアクチュエータの固定電極36が電気的に共通して接続されて端子CA1〜CA3にそれぞれ接続され、各行毎に当該行のマイクロアクチュエータの固定電極37が電気的に共通して接続されて端子CB1〜CB3にそれぞれ接続されているので、ミラー31の姿勢調整のために光スイッチアレー1から外部に引き出す配線の本数(=端子CA1〜CA3,CB1〜CB3の個数)が、6本(6個)で済み、その数を低減することができる。姿勢調整回路6bを各光スイッチに対して1対1に設けた個別姿勢調整回路の集合として構成する場合には、姿勢調整のために光スイッチアレー1から引き出す配線(端子数)が3×3本(個)必要となる。
一般に、N×N個の光スイッチをアレー化した場合、本実施の形態と同様に構成すれば、姿勢調整のために光スイッチアレーから引き出す配線がN×2本で済むのに対し、姿勢調整回路6bを各光スイッチに対して1対1に設けた個別姿勢調整回路の集合として構成する場合には、姿勢調整のために光スイッチアレーから引き出す配線がN×N本必要となる。
図11に示す例では、外部回路6の駆動制御回路6aが、各期間においてコンデンサの電極間電圧として直流電圧が印加されるように、固定電極及び可動電極の電位を制御しているが、代わりに、図12に示すように、各期間においてコンデンサの電極間電圧としてパルスによる交流電圧が印加されるように、固定電極及び可動電極の電位を制御してもよい。図12は、外部回路6の駆動制御回路6aが各端子CD1〜CD3,CU1〜CU3に与える電位、及び、各端子L1〜L3を経由して各コイルに流す電流、並びに、ゲート制御信号P11〜P13,P21〜P23,P31〜P33のタイミングチャートの他の例を示すものであり、図11に対応している。
図12において、各時刻の各マイクロアクチュエータの可動電極22dの動き及び姿勢調整力の付与の状況は、図11の場合と同じである。図12に示す例では、固定電極に印加する電位(端子CD1,CD2,CD3に印加する電位)は、それぞれ位相が同じでデューティーが50%のパルス波形であり、グランドレベルを中心に正負方向に振幅Vh’もしくはVmで対称に振れている。また、可動電極に印加する電位(端子CU1,CU2,CU3に印加する電位)は、それぞれ位相が同じだが端子CD1,CD2,CD3に印加する電位とは逆位相のパルスで、デューティーは50%でありグランドレベルを中心に正負方向に振幅Vh’もしくはVmで対称に振れている。コンデンサの電極間電圧は、可動電極の電位及び固定電極の電位が共に振幅Vh’の場合は2×Vh’、一方が振幅Vh’で他方が振幅Vmの場合はVm+Vh’、共に振幅Vmの場合は2×Vmとなる。図12に示す例においても、各振幅値等を適宜設定することで、図11に示すように電位を供給する場合と同じ動作を実現することができる。
ただし、この場合には、例えば、図10中の接地電位を端子CU1〜CU3と同位相でかつ振幅Vh’のパルス電位とし、図10中の端子Vに端子CU1〜CU3とは逆位相のパルス電位を印加する。なお、必要に応じて、図10中の各スイッチとしてリレーの接点などの双方向性スイッチを用いてもよい。
なお、各期間において各端子CD1〜CD3,CU1〜CU3,図10中の端子V及び接地に、時間的にパルス状に変化する電位に代えて時間的に正弦波状に変化する電位を与えてもよい。
以上、本発明の実施の形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施の形態は、本発明を可動部が片持ち梁構造を持つタイプのマイクロアクチュエータを用いたマイクロアクチュエータアレーに適用した例であったが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、特許文献3に開示されているような可動部が両持ち構造を持つタイプのマイクロアクチュエータを用いたマイクロアクチュエータアレーにも適用できる。
また、前述した実施の形態は、本発明によるマイクロアクチュエータアレーを光スイッチアレーに適用した例であったが、本発明によるマイクロアクチュエータアレーは、他の光学装置やその他の種々の用途に用いることができる。
前述した実施の形態は、駆動力として静電力及びローレンツ力を用いる例であったが、本発明では、駆動力として静電力及びローレンツ力のうちの一方のみを用いてもよい。また、本発明では、駆動力として磁気力などの他の駆動力や任意の2種類以上を複合した駆動力により駆動されるように構成することもできる。また、例えば、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層の、熱膨張による変形を利用した駆動方式を採用してもよい。この場合、例えば、光や赤外線の吸収や電気抵抗部への通電などによって、前記変形のための熱を与えることができ、照射光量や通電量を駆動信号として用いることができる。