以下、本発明によるマイクロアクチュエータ、マイクロアクチュエータアレー及び光学装置について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態による光学装置としての光スイッチアレー1を備えた光学システム(本実施の形態では、光スイッチシステム)の一例を模式的に示す概略構成図である。説明の便宜上、図1に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する(後述する図についても同様である。)。光スイッチアレー1の基板11の面がXY平面と平行となっている。また、Z軸方向のうち矢印の向きを+Z方向又は+Z側、その反対の向きを−Z方向又は−Z側と呼び、X軸方向及びY軸方向についても同様とする。なお、Z軸方向の+側を上側、Z軸方向の−側を下側という場合がある。また、X軸方向の並びを列、Y軸方向の並びを行という。
この光スイッチシステムは、図1に示すように、光スイッチアレー1と、m本の光入力用光ファイバ2と、m本の光出力用光ファイバ3と、n本の光出力用光ファイバ4と、光スイッチアレー1に対して後述するように磁界を発生する磁界発生部としての磁石5と、光路切替状態指令信号に応答して、当該光路切替状態指令信号が示す光路切換状態を実現するための制御信号を光スイッチアレー1に供給する制御部としての外部制御回路6と、を備えている。図1に示す例では、m=3、n=3となっているが、m及びnはそれぞれ任意の数でよい。
本実施の形態では、磁石5は、図1に示すように、X軸方向の−側がN極に+側がS極に着磁された板状の永久磁石であり、光スイッチアレー1の下側に配置され、光スイッチアレー1に対して磁力線5aで示す磁界を発生している。すなわち、磁石5は、光スイッチアレー1に対して、X軸方向に沿ってその+側へ向かう略均一な磁界を発生している。もっとも、磁界発生部として、磁石5に代えて、例えば、他の形状を有する永久磁石や、電磁石などを用いてもよい。
光スイッチアレー1は、図1に示すように、基板11と、基板11上に配置されたm×n個のミラー31とを備えている。m本の光入力用光ファイバ2は、基板11に対するY軸方向の一方の側からY軸方向に入射光を導くように、XY平面と平行な面内に配置されている。m本の光出力用光ファイバ3は、m本の光入力用光ファイバ2とそれぞれ対向するように基板11に対する他方の側に配置され、光スイッチアレー1のいずれのミラー31によっても反射されずにY軸方向に進行する光が入射するように、XY平面と平行な面内に配置されている。n本の光出力用光ファイバ4は、光スイッチアレー1のいずれかのミラー31により反射されてX軸方向に進行する光が入射するように、XY平面と平行な面内に配置されている。m×n個のミラー31は、m本の光入力用光ファイバ2の出射光路と光出力用光ファイバ4の入射光路との交差点に対してそれぞれ、後述するマイクロアクチュエータにより進出及び退出可能にZ軸方向に移動し得るように、2次元マトリクス状に基板11上に配置されている。なお、本例では、ミラー31の向きは、その法線がXY平面と平行な面内においてX軸と45゜をなすように設定されている。もっとも、その角度は適宜変更することも可能であり、ミラー31の角度を変更する場合には、その角度に応じて光出力用光ファイバ4の向きを設定すればよい。この光スイッチシステムの光路切替原理自体は、従来の2次元光スイッチの光路切替原理と同様である。
図2は、図1中の光スイッチアレー1を模式的に示す概略平面図である。光スイッチアレー1は、基板11(図2では図示せず)と、該基板11上に2次元状に配置されたm×n個の可動板12と、各可動板12に搭載されたミラー31とを備えている。図1及び図2並びに後述する図では、説明を簡単にするため、9個の光スイッチを3行3列に配置しているが、光スイッチの数は何ら限定されるものではない。光スイッチアレー1のうちのミラー31以外の部分が、マイクロアクチュエータアレーを構成している。なお、図2において、後述する板ばね部12cには、ハッチングを付している。
次に、図1中の光スイッチアレー1の単位素子としての1つの光スイッチの構造について、図3乃至図7を参照して説明する。
図3は、図1中の光スイッチアレー1の単位素子としての1つの光スイッチを模式的に示す概略平面図である。図4は、図3中のA−A’線に沿った概略断面図である。ただし、図4は可動板12の断面のみを示している。図5は、図3中の可動板12を上から見たときのAl膜22のパターン形状を示す図である。理解を容易にするため、図5において、Al膜22の形成位置をハッチングで示している。図6及び図7はそれぞれ、図3及び図5中のB−B’線に沿った断面を+Y側から−Y軸方向に見た概略断面図である。ただし、図6及び図7には、−Y軸方向に見たミラー31も併せて示している。図6はミラー31が上側に保持されて光路に進出した状態、図7はミラー31が下側に保持されて光路から退出した状態を示している。なお、図6及び図7では、図面表記の便宜上、後述する凸部24の図示を省略してそれによる段差がないものとして示し、また、可動板12には後述する配線パターン42a及び固定電極41aによる形状転写に従った段差もないものであるとして示している。また、図6及び図7では、この光スイッチが2行2列に配置されたものとして、後述する配線パターン42aを表している。
光スイッチアレー1の単位素子としての1つの光スイッチは、図2及び図3に示すように、シリコン基板やガラス基板等の基板11上に設けられ基板11と共に1つのマイクロアクチュエータを構成する可動部としての1つの可動板12と、可動板12に搭載された被駆動体である光学素子としてのミラー31とを有している。
可動板12は、薄膜で構成され、図3乃至図7に示すように、可動板12の平面形状の全体に渡る下側の窒化ケイ素膜(SiN膜)21及び上側のSiN膜23と、これらの膜21,23の間において部分的に形成された中間のAl膜22とから構成されている。すなわち、可動板12は、下から順にSiN膜21,23を積層した2層膜からなる部分と、下から順にSiN膜21、Al膜22及びSiN膜23を積層した3層膜からなる部分とを、併有している。Al膜22のパターン形状は図5に示す通りであるが、これについては後述する。可動板12は、SiN膜21,23とAl膜22との熱膨張係数の差によって生じる内部応力、並びに、成膜時に生じた内部応力により、図6に示すように基板11に対して上向き(+Z方向)に湾曲するように、予め定められた膜厚及び成膜条件によって形成されている。
可動板12は、図3に示すように、XZ平面と平行な平面P(以下、「対称面P」という。)に対して、実質的に対称的な構造を有している。可動板12は、図3に示すように、ミラー31を搭載するための搭載部(すなわち、ミラー31用の支持基体)としての長方形状のミラー搭載板12aと、ミラー搭載板12aの端部に接続された2本の帯状の支持板12bとを含む。本実施の形態では、これらの2本の支持板12bが、互いに機械的に並列接続された2本の梁部となっている。支持板12bは、それぞれの端部に脚部12e及び脚部12fを有している。脚部12e及び12fはいずれも基板11に固定されており、可動板12は、各支持板12bにおける脚部12e及び12f付近の接続部12dを固定端として、図6に示すように、ミラー搭載板12a側が持ち上がるようになっている。このように、本実施の形態では、可動板12は、接続部12dを固定端とする片持ち梁構造を持つ可動部となっている。本実施の形態では、基板11及びこれに積層された後述する絶縁膜13,14,15等が、固定部を構成している。なお、厳密に言えば、支持板12bにおける接続部12dは、後述する凸部24により平面性が維持されるので、固定部を構成している。
可動板12には、図3に示すように、可動板12のミラー31を搭載している部分を含む領域を取り囲むように、凸部24が設けられている。凸部24は、図4に示すように、可動板12を構成する複層膜を凸型にすることにより形成されている。このように凸部24を設けることにより、段差が生じるため、可動板12のうち、凸部24で囲まれた領域及び凸部24が設けられた領域(すなわち、可動板12における板ばね部12c以外の領域(接続部12dを含む))は、内部応力による湾曲が抑制され、平面性を維持することができる。このため、可動板12は、図6のように内部応力による湾曲によりミラー31を上側の位置に持ち上げた状態であっても、ミラー31を搭載している部分は平面であるため、搭載されているミラー31の形状を一定に保つことができる。
このように、可動板12は、凸部24で囲まれた領域及び凸部24が設けられた領域は湾曲が抑制されるが、支持板12cの中間領域には、凸部24が設けられていない。これにより、凸部24が設けられていない支持板12cの中間領域が弾性部としての板ばね部12cとなり、板ばね部12cの湾曲によって、可動板12は、脚部12e,12f付近の接続部12dを固定端として、図6のように、ミラー搭載板12a側が持ち上がるようになっている。2本の支持板12bにおける板ばね部12cは、基板11に対して垂直な対称面Pに対して対称的に設けられている。なお、本発明では、2本の支持板12bに代えて、例えば、幅広に構成した1本の支持板12b、又は3本以上の支持板を、対称面Pに対して対称的に設けてもよい。1本の支持板12bを対称面Pに対して対称的に設ける場合には、その支持板12bを、その幅方向の中心線が対称面Pに含まれるように配置すればよい。
ここで、可動板12のAl膜22の形状について、図5を参照して説明する。本実施の形態では、駆動力としてローレンツ力と静電力の両方を用いて可動板12を駆動するために、図5に示すような形状に、Al膜22をパターニングしている。
Al膜22のうちパターン22aは、2つの脚部12fのうちの一方から、可動板12の外周の縁に沿って延びて可動板12の先端まで到達した後、可動板12の反対側の縁に沿って他方の脚部12fに達するパターンである。このパターン22aは、ローレンツ力により可動板12を駆動する際に、ローレンツ力を生じさせるための電流を流す配線として用いられる。パターン22aは、図6及び図7に示すように、+Y側の脚部12fにおいて基板11上の絶縁膜15のスルーホール及びSiN膜21のコンタクトホールを介してAl膜からなるローレンツ力用配線パターン42aに接続されるとともに、−Y側の脚部12fにおいて同様に別のローレンツ力用配線パターン(図6及び図7では図示せず、後述する図10及び図11参照。)と接続され、脚部12fを介してローレンツ力用配線パターンからローレンツ力用駆動信号としての電流が供給される。パターン22aのうち、可動板12の先端の一辺12gに沿ってY軸方向に延びた直線状の配線パターンが、磁界内に配置されて通電により駆動力としてのローレンツ力を生じる電流路(ローレンツ力用電流路)を構成している。パターン22aの他の部分は、直線状の配線パターンに電流を供給するためのローレンツ力用電流路の配線パターンとなっている。図1に示す磁石5によって、ローレンツ力用電流路がX軸方向の磁界内に置かれている。したがって、パターン22aに電流を供給すると、ローレンツ力用電流路に、その電流の向きに応じて、+Z方向又は−Z方向のローレンツ力が生ずる。
なお、図6及び図7に示すように、基板11上には、基板11側から順にシリコン酸化膜等の絶縁膜13,14,15が積層され、ローレンツ力用配線パターン42aは、絶縁膜14,15間に形成されている。
また、Al膜22のうちパターン22bは、2つの脚部12eのそれぞれから、可動板12の内側の縁に沿って可動板12の先端側(+X側)まで延び、先端側に配置された長方形状のパターン22dに接続されている。パターン22dは、駆動力としての静電力を発生するための可動電極である。以下、パターン22dを可動電極22dと呼ぶ場合がある。パターン22dもAl膜22のうちのパターンである。パターン22bは、可動電極22dの配線パターンである。パターン22bは、脚部12eにおいて、絶縁膜15のスルーホール及びSiN膜21のコンタクトホールを介して可動電極用配線パターン42b(図6及び図7では図示せず、後述する図10及び図11参照。)に接続され、Al膜からなる固定電極41aとの間に電圧(静電力用電圧、静電力用駆動信号)が印加される。固定電極41aは、基板11上の絶縁膜13,14間に形成され、可動電極22dと対向する位置に配置されている。可動電極22dと固定電極35との間に電圧が印加されると、両者の間に駆動力としての静電力が生じ、この静電力により可動板12は基板11に引き寄せられる。
本実施の形態では、可動電極22dと固定電極41aとの間の静電力用電圧及び前記ローレンツ力用電流路に流す電流を制御することで、ミラー31が上側(基板11と反対側)に保持された状態(図6)及びミラー31が下側(基板11側)に保持された状態(図7)にすることができる。本実施の形態では、後述するように、外部制御回路6aによってこのような制御が行われるようになっている。図6及び図7において、Kは、ミラー31の進出位置に対する入射光の光路の断面を示している。
図6に示すように、駆動力としての前記静電力及び駆動力としての前記ローレンツ力が印加されていない状態では、板ばね部12cの膜の応力(バネ力)によって+Z方向に湾曲した状態に復帰し、ミラー31が上側に保持される。これにより、ミラー31が光路Kに進出して、当該光路Kに入射した光を反射させる。この状態から、光路に入射した光をミラー31で反射させずにそのまま通過させる状態(図7)に切り替える場合には、例えば、まず、駆動力としての前記ローレンツ力を印加して、板ばね部12cの膜の応力(バネ力)に抗してミラー31を下方へ移動させ、ミラー31が基板11側に保持された後、駆動力としての前記静電力を印加してその保持を維持し、前記ローレンツ力の印加を停止させればよい。
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、駆動力としての静電力を発生させる可動電極22d及び固定電極41a、及び、駆動力としてのローレンツ力を発生させる前記ローレンツ力用電流路が、信号に応じて、可動板12の板ばね部12cのバネ力に抗してミラー31の移動及び位置の保持を行う駆動力を可動板12に付与し得る駆動力付与手段を、構成している。
もっとも、本発明では、この駆動力付与手段は、例えば、可動電極22d及び固定電極41aと前記ローレンツ力用電流路のうちの一方のみで構成してもよい。駆動力付与手段を可動電極22d及び固定電極41aのみで構成する場合には、例えば、パターン22aを除去するかあるいは途中で断線させておけばよい。駆動力付与手段を前記ローレンツ力用電流路のみで構成する場合には、例えば、パターン22bを除去するかあるいは途中で断線させるか、あるいは、可動電極22dを除去すればよい。
本実施の形態では、ミラー31は、前記特許文献2に開示されているミラーと同様に、Au、Ni又はその他の金属で構成され、可動板12のミラー搭載板12aの上面に直立して、単に固定されている。このミラー31は、例えば、前記特許文献2に開示されているように、ミラー31に対応する凹所をレジストに形成した後、電解メッキによりミラー31となるべきAu、Niその他の金属を成長させ、その後に前記レジストを除去することで、形成することができる。ミラー31をその支持基体となるミラー搭載板12aにより支持する支持構造は、これに限定されるものではなく、例えば、特許文献1に開示された支持構造を採用してもよい。その場合、これらの支持構造及びミラー31は、特許文献1に開示されている製造方法と同様の製造方法により製造することができる。
図8は、本実施の形態による光スイッチアレー1を示す電気回路図である。図3乃至図7に示す単一の光スイッチは、電気回路的には、1個のコンデンサ(固定電極41aと可動電極22dとがなすコンデンサに相当)と、1個のコイル(前記ローレンツ力用電流路(パターン22aのうち、可動板12の先端の一辺12gに沿ってY軸方向に延びた直線部分))に相当)と見なせる。図8では、m行n列の光スイッチのコンデンサ及びコイルをそれぞれCmn及びLmnと表記している。例えば、図2中の左上の(1行1列の)光スイッチのコンデンサ及びコイルをそれぞれC11,L11と表記している。本実施の形態では、各コンデンサの図8中の左側電極が固定電極41a、図8中の右側電極が可動電極22dとなっている。図8では、説明を簡単にするため、既に説明したように、9個の光スイッチを3行3列に配置している。もっとも、光スイッチの数は何ら限定されるものではなく、例えば100行100列の光スイッチを有する場合も、原理は同一である。また、光スイッチの数が同じであっても、行数と列数を同数にする必要はないし、マトリクス配置にする必要もない。例えば、光スイッチの数が9個の場合、1行9列の配置でもよいし、光スイッチの数が16個の場合、4行4列、1行16列及び2行8列のいずれの配置でもよい。
本実施の形態では、先の説明からわかるように、光スイッチアレー1の全体において、可動板12に設けられた前記ローレンツ力用配線パターン22a、前記可動電極22d及び前記可動電極用配線パターン22bが、図9に示すように配置されることになる。そして、本実施の形態では、光スイッチアレー1において、図10及び図11に示すように、ローレンツ力用配線パターン42a、可動電極用配線パターン42b、固定電極41a及び固定電極用配線パターン41bが基板11上に配置されることによって、図8に示す電気的な接続が実現されている。なお、可動板12の配線パターンと基板11上の配線パターンとは、両者が重なっている脚部12e,12fで接続されている。
図9は、光スイッチアレー1の全体における可動板12上のローレンツ力用配線パターン22a、可動電極22d及び可動電極用配線パターン22bの配置を示す概略平面図である。図10は、光スイッチアレー1の全体における基板11上のローレンツ力用配線パターン42a、可動電極用配線パターン42b、固定電極41a及び固定電極用配線パターン41bの配置を示す概略平面図である。図11は、図10中の一部(図10の2行2列目の可動板12との対向領域付近における基板11上のローレンツ力用配線パターン42a、可動電極用配線パターン42b、固定電極41a及び固定電極用配線パターン41b)を拡大した概略拡大平面図である。図10及び図11には、可動板12(板ばね部12c及び接続部12dを含む)の外形及び脚部12e,12fを、それぞれ破線で併せて示している。固定電極41a及び固定電極用配線パターン41bは、基板11上の絶縁膜13,14(図6及び図7参照)間に形成されている。ローレンツ力用配線パターン42a及び可動電極用配線パターン42bは、基板11上の絶縁膜14,15(図6及び図7参照)間に形成されている。
本実施の形態による光スイッチアレー1には、図8に示すように、複数の端子CD1〜CD3からなる第1の端子群、複数の端子CU1〜CU3からなる第2の端子群、複数の端子L0〜L3からなる第3の端子群が設けられている。これらの端子CD1〜CD3,CU1〜CU3,L0〜L3は、図1中の外部制御回路6に接続するための外部接続用の端子である。図面には示していないが、端子CD1〜CD3,CU1〜CU3,L0〜L3は、例えば、対応する配線パターンの一部を電極パッドとすることにより構成することができる。
また、図8では、第1の端子群の端子CD1〜CD3の数が光スイッチの行数と同じく3個とされ、第2の端子群の端子CU1〜CU3の数が光スイッチの列数と同じく3個とされている。
本実施の形態では、1行目のコンデンサC11,C12,C13の固定電極41aは、第1の端子群の端子CD1に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。2行目のコンデンサC21,C22,C23の固定電極41aは、第1の端子群の端子CD2に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。3行目のコンデンサC31,C32,C33の固定電極41aは、第1の端子群の端子CD3に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。このように、各行毎に、当該行のマイクロアクチュエータの固定電極41aが電気的に共通して接続されている。これらの電気的な接続は、図10及び図11に示すように、固定電極用配線パターン41bによって実現されている。
また、1列目のコンデンサC11,C21,C31の可動電極22dは、第2の端子群の端子CU1に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。2列目のコンデンサC12,C22,C32の可動電極22dは、第2の端子群の端子CU2に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。3列目のコンデンサC13,C23,C33の可動電極22dは、第2の端子群の端子CU3に共通して電気的に接続され、その他の端子には電気的に接続されていない。このように、各列毎に、当該列のマイクロアクチュエータの可動板12の可動電極22dが電気的に共通して接続されている。これらの電気的な接続は、図9、図10及び図11に示すように、可動電極22d、可動電極用配線パターン22b,42bによって実現されている。
また、図8では、1列目のコイルL11,L21,L31が直列に接続され、その一端が端子L1に他端が端子L0にそれぞれ接続されている。2列目のコイルL12,L22,L32が直列に接続され、その一端が端子L2に他端が端子L0にそれぞれ接続されている。3列目のコイルL13,L23,L33が直列に接続され、その一端が端子L3に他端が端子L0にそれぞれ接続されている。
1列目のコイルL11,L21,L31は、端子L1,L0間に電流を流したときにこれらのコイルL11,L21,L31に発生するローレンツ力の向きが同一になるように、電流の向きをそろえて接続されている。この点は、2列目のコイルL12,L22,L32及び3列目のコイルL13,L23,L33についても、同様である。本実施の形態では、電流を端子L1,L2,L3から端子L0に向かう方向に流したときに(この方向の電流を正の電流とする。)、マイクロアクチュエータのローレンツ力用電流経路にローレンツ力が下向きに働くように設定されている。
このように、図8に示す例では、各列毎に、当該列のマイクロアクチュエータのローレンツ力用電流経路が、通電された際に同じ向きのローレンツ力を生じるように、電気的に直列に接続されている。これらの電気的な接続は、図9、図10及び図11に示すように、ローレンツ力用配線パターン22a,42aによって実現されている。
なお、本実施の形態による光スイッチアレー1には、図8に示すように、アドレス回路や列選択スイッチや行選択スイッチ等は搭載されていない。
本実施の形態では、図1中の外部制御回路6は、前記端子CD1〜CD3,CU1〜CU3,L0〜L3に接続され、端子CD1〜CD3,CU1〜CU3の電位をそれぞれ独立して制御するとともに、端子L1〜L3に流れる電流をそれぞれ独立して制御することで、前記光スイッチアレー1の各光スイッチの光路切換状態を制御する。外部制御回路6は、光路切替状態指令信号に応答して当該光路切替状態指令信号が示す光路切換状態を実現するための制御信号を、各端子CD1〜CD3,CU1〜CU3に与える電位及び端子L1〜L3に流す電流として供給し、その光路切換状態を実現する。なお、外部制御回路6の具体的な回路構成自体は、以下に説明する動作例から明らかである。
図13は、外部制御回路6が各端子CD1〜CD3,CU1〜CU3に与える電位、及び、各端子L1〜L3を経由して各コイルに流す電流のタイミングチャートの一例を示すものである。図13に示す例では、外部制御回路6は、第1の端子群の端子CD1〜CD3には2つの電位Vh,Vm1のいずれかの電位を与え、第2の端子群の端子CU1〜CU3には2つの電位Vm2,VLのいずれかの電位を与える。ここで、電位Vh,Vm1,Vm2,VLは、Vh>Vm1≧Vm2>VLの関係を満たしている。各端子L1〜L3には、I1(下向きのローレンツ力が生ずる方向の電流),−I2(上向きのローレンツ力が生ずる方向の電流)のいずれかの電流が流されるか、あるいは、電流が流されない(電流ゼロ)。
図13に示す例では、時刻t1以前は、各端子CD1〜CD3の電位がVhとされ、各端子CU1〜CU3の電位がVLとされ、端子L1〜L3には電流が流れておらず、9個の全てのアクチュエータがラッチ解除状態(可動板12が図6に示すように上側位置に位置する状態)になっているものとする。
時刻t1から時刻t2の間に、端子L1,L2,L3に電流I1が流され、9個の全てのアクチュエータの可動板12が下方向(基板11側、すなわち、固定電極41aと可動電極22dの間隔が狭くなる方向)に動かされる。これにより、全てのアクチュエータの固定電極41aと可動電極22dの間隔が狭くなり、両電極間の静電力がある一定値を越えると、その静電力によって、全てのアクチュエータの可動板12が図7に示すように下側位置にラッチ(保持)される。
時刻t3から時刻t4の間では、端子CD1の電位がVhからVm1に下げられ、端子CU1の電位がVLからVm2に上昇され、さらに、端子L1に電流−I2が流される。これにより、図8中のコンデンサC11の電極間電圧はVh−VLからVm1−Vm2に低下する。コンデンサC11の電極間電圧の低下に伴い、コンデンサC11の両電極間の静電力も低下する。一方、電流−I2によるローレンツ力は、固定電極41aと可動電極22dを引き離す方向に働く。ここで、ローレンツ力とバネ力が引き離す方向で、静電力が引き合う方向の力であり、引き離す方向の力が引き合う方向の力よりも強くなるように設定するとラッチが解除され、コンデンサC11の固定電極41aと可動電極22dが引き離される。
また、時刻t3から時刻t4の間、コンデンサC12,C13の両電極間電圧はVm1−VLとなる。端子L2,L3には電流は流さないので、コンデンサC12,13に相当するマイクロアクチュエータのコイルL12,L13には、ローレンツ力が発生しない。よって、電圧差Vm1−VLによって発生する静電力がバネ力よりも大きくなるように設定すれば、コンデンサC12,C13に相当するマイクロアクチュエータのラッチは維持される。
さらに、時刻t3から時刻t4の間、コンデンサC21、C31の両電極間電圧はVh−Vm2となる。端子L1には電流−I2が流れているので、コンデンサC21、C31に相当するマイクロアクチュエータのコイルL21,L31には、上向きのローレンツ力が発生する。よって、電圧Vh−Vm2によって発生する静電力がこのローレンツ力とバネ力の和よりも大きくなるように設定すれば、コンデンサC21,C31に相当するマイクロアクチュエータのラッチは維持される。
よって、時刻t3から時刻t4の間に、コンデンサC11に相当するマイクロアクチュエータのみがラッチが解除される。
時刻t3から時刻t4の間と同様に、時刻t5からt6の間にコンデンサC22に相当するマイクロアクチュエータのみがラッチが解除され、時刻t7から時刻t8の間にC33の固定電極41aと可動電極22dのみがラッチが解除される。
ここまでで、コンデンサC11,C22,C33に相当するマイクロアクチュエータのラッチを解除し、その他のマイクロアクチュエータのラッチを維持しているという当該光スイッチの初期のミラー配置が終了した。
さらに、この初期配置から一部のミラー配置を変更する手順を説明する。
時刻t9から時刻t10の間に、端子L1に電流I1が流され、コンデンサC11に相当するマイクロアクチュエータの可動板12が下方向(基板121側、すなわち、固定電極41aと可動電極の間隔が狭くなる方向)に動かされる。これにより、コンデンサC11に相当するアクチュエータの固定電極41aと可動電極22dの間隔が狭くなり、両電極間の静電力がある一定値を越えると、その静電力によって、コンデンサC11に相当するアクチュエータの可動板12が下側位置にラッチされる。
時刻t11から時刻t12の間に、端子L2に電流I1が流され、コンデンサ22に相当するアクチュエータの可動板12が下方向(基板121側、すなわち、固定電極41aと可動電極22dの間隔が狭くなる方向)に動かされる。これにより、コンデンサC22に相当するアクチュエータの固定電極41aと可動電極22dの間隔が狭くなり、両電極間の静電力がある一定値を越えると、その静電力によって、コンデンサC22に相当するアクチュエータの可動板12が下側位置にラッチされる。
時刻t13から時刻t14の間では、端子CD2の電圧がVhからVm1に下げられ、端子CU1の電位がVLからVm2に上昇され、さらに、端子L1に電流−I2が流される。これにより、図8中のコンデンサC21の電極間電圧はVh−VLからVm1−Vm2に低下する。コンデンサ21の電極間電圧の低下に伴い、コンデンサC21の両電極間の静電力も低下する。一方、電流−I2によるローレンツ力は、固定電極と可動電極を引き離す方向に働く。ここで、ローレンツ力とバネ力が引き離す方向で、静電力が引き合う方向の力であり、引き離す方向の力が引き合う方向の力よりも強くなるように設定するとラッチが解除され、コンデンサC21の固定電極と可動電極が引き離される。このとき、その他のコンデンサに相当するマイクロアクチュエータは、時刻t1から時刻t2の間と同様に、ラッチが維持される。
時刻t15から時刻t16の間では、端子CD1の電圧がVhからVm1に下げられ、端子CU2の電位がVLからVm2に上昇され、さらに、端子L2に電流−I2が流される。これにより、図8中のコンデンサC12の電極間電圧はVh−VLからVm1−Vm2に低下する。コンデンサ12の電極間電圧の低下に伴い、コンデンサC12の両電極間の静電力も低下する。一方、電流−I2によるローレンツ力は、固定電極41aと可動電極22dを引き離す方向に働く。ここで、ローレンツ力とバネ力が引き離す方向で、静電力が引き合う方向の力であり、引き離す方向の力が引き合う方向の力よりも強くなるように設定するとラッチが解除され、コンデンサC12の固定電極41aと可動電極22dが引き離される。このとき、その他のコンデンサに相当するマイクロアクチュエータは、時刻t1から時刻t2の間と同様に、ラッチが維持される。
以上で、コンデンサC21,C12,C33に相当するマイクロアクチュエータのラッチを解除し、その他のマイクロアクチュエータのラッチを維持しているという当該光スイッチのミラー配置の変更が終了した。
以上の動作説明から、所望の光路切換状態を適切に実現することができることがわかる。なお、前述した各電圧値及び電流値は、前述した動作を実現することができるように、適宜定めればよい。
図13に示す例では、外部制御回路6が、各期間においてコンデンサの電極間電圧として直流電圧が印加されるように、固定電極及び可動電極の電位を制御しているが、代わりに、図14に示すように、各期間においてコンデンサの電極間電圧としてパルスによる交流電圧が印加されるように、固定電極及び可動電極の電位を制御してもよい。図14は、外部制御回路6が各端子CD1〜CD3,CU1〜CU3に与える電位、及び、各端子L1〜L3を経由して各コイルに流す電流のタイミングチャートの他の例を示すものであり、図13に対応している。
図14において、各時刻の各マイクロアクチュエータの可動電極22dの動きは、図13の場合と同じである。図14に示す例では、固定電極に印加する電位(端子CD1,CD2,CD3に印加する電位)は、それぞれ位相が同じでデューティーが50%のパルス波形であり、グランドレベルを中心に正負方向に振幅Vh’もしくはVmで対称に振れている。また、可動電極に印加する電位(端子CU1,CU2,CU3に印加する電位)は、それぞれ位相が同じだが端子CD1,CD2,CD3に印加する電位とは逆位相のパルスで、デューティーは50%でありグランドレベルを中心に正負方向に振幅Vh’もしくはVmで対称に振れている。コンデンサの電極間電圧は、可動電極の電位及び固定電極の電位が共に振幅Vh’の場合は2×Vh’、一方が振幅Vh’で他方が振幅Vmの場合はVm+Vh’、共に振幅Vmの場合は2×Vmとなる。図14に示す例においても、各振幅値等を適宜設定することで、図13に示すように電位を供給する場合と同じ動作を実現することができる。なお、各期間において各端子CD1〜CD3,CU1〜CU3に、時間的にパルス状に変化する電位に代えて時間的に正弦波状に変化する電位を与えてもよい。
ところで、図10及び図11に示す基板11側に形成された固定電極用配線パターン41b、ローレンツ力用配線パターン42a及び可動電極用配線パターン42bのうち、図15中に実線で示す部分と一致するパターンは、図8に示す電気的な接続を実現する上で必要のないダミー配線パターンとなっている。本実施の形態の特徴は、これらのダミー配線パターンを含む点にある。
比較例として、図10及び図11に示す固定電極用配線パターン41b、ローレンツ力用配線パターン42a及び可動電極用配線パターン42bから、ダミー配線パターン(図15中に実線で示す部分)を取り除いたものを、図16及び図17に示す。従来技術のように電気的な接続の観点のみに立って図8に示す電気的な接続を実現しようとすると、本実施の形態で採用されている図10及び図11に示す配線パターンに代えて、前記ダミー配線パターンを除去した図16及び図17に示す配線パターンが採用されることになる。
図16は、比較例による光スイッチアレーの全体における基板11上のローレンツ力用配線パターン42a、可動電極用配線パターン42b、固定電極41a及び固定電極用配線パターン41bの配置を示す概略平面図であり、図10に対応している。図17は、図16中の一部(図16の2行2列目の可動板12との対向領域付近における基板11上のローレンツ力用配線パターン42a、可動電極用配線パターン42b、固定電極41a及び固定電極用配線パターン41b)を拡大した概略拡大平面図であり、図11に対応している。この比較例による光スイッチアレーが本実施の形態による光スイッチアレー1と異なる所は、前記ダミー配線パターンを含まない点と、それによる後述の形状転写の影響のみである。
本実施の形態では、図10及び図11に示すように、前記ダミー配線パターンを含むことによって、可動板12における接続部12dを除く領域(板ばね部12cの領域を含む)との対向領域において、可動板12毎に、配線パターン41b,42a,42bが当該可動板12に関する基板11とは垂直な対称面Pに対して対称的に形成されている。これに対して、前記比較例では、図16及び図17に示すように、前記ダミー配線パターンを含まないことによって、可動板12との対向領域において、配線パターン41b,42a,42bが対称面Pに対して非対称となっている。
このような配線パターンの対称性・非対称性の影響について、図12及び図18を参照して本実施の形態及び前記比較例による光スイッチアレーの製造方法を説明しつつ、言及する。
図12は、本実施の形態による光スイッチアレー1の製造工程の途中の状態を模式的に示す概略断面図であり、図11中のC−C’線に沿った断面を展開して示す図である。図18は、前記比較例による光スイッチアレーの製造工程の途中の状態(図12に示す状態に対応する状態)を模式的に示す概略断面図であり、図17中のD−D’線に沿った断面を展開して示す図であり、図12に対応している。
本実施の形態による光スイッチアレー1は、例えば、膜の形成及びパターニング、エッチング、犠牲層の形成・除去などの半導体製造技術を利用して、製造することができる。その具体例を図12を参照して簡単に説明する。
まず、基板11上に絶縁膜13を成膜する。次いで、絶縁膜13上にAl膜を成膜し、フォトリソエッチング法等によって、このAl膜を図10及び図11に示す固定電極41a及び固定電極用配線パターン41bの形状にパターニングする。次に、この状態の基板上に絶縁膜14を成膜し、フォトリソエッチング法等によりこの絶縁膜14に脚部12e,12dのためのスルーホール等を形成する。その後、この状態の基板上にAl膜を成膜し、フォトリソエッチング法等によって、このAl膜を図10及び図11に示すローレンツ力用配線パターン42a及び可動電極用配線パターン42bの形状にパターニングする。
次に、この状態の基板上に絶縁膜15を成膜し、この絶縁膜15に脚部12e,12dのためのスルーホール等を形成する。次いで、この状態の基板上に犠牲層としてのレジスト100を形成し、このレジスト100に脚部12e,12dのための開口を形成する。更に、このレジスト100上に、凸部24を形成するための犠牲層としてレジスト101を島状に形成する。その後、SiN膜21を形成し、フォトリソエッチング法等によって、SiN膜21を可動板12の形状にパターニングするとともにSiN膜21に脚部12e,12dにおけるコンタクトホールを形成する。図12は、この状態を示している。
次に、この状態の基板上にAl膜を成膜し、フォトリソエッチング法等によりこのAl膜を図9に示すローレンツ力用配線パターン22a、可動電極用配線パターン22b及び可動電極22dの形状にパターニングする。次いで、SiN膜23を成膜し、これをフォトリソエッチング法等により可動板12の形状にパターニングする。
その後、例えば、前記特許文献1に開示されている製造方法と同様に、この状態の基板上にミラー形成用のレジストを塗布し、ミラー31に対応する凹所をこのレジストに形成した後、電解メッキによりミラー31となるべきAu、Niその他の金属を成長させる。最後に、アッシング法等により、レジスト100,101及び前記ミラー形成用レジストを除去する。これより、本実施の形態による光スイッチアレー1が完成する。
前記比較例による光スイッチアレーも本実施の形態による光スイッチアレー1と同様に製造することができる。ただし、比較例の場合、絶縁膜13上に成膜したAl膜を図16及び図17に示す固定電極41a及び可動電極用配線パターン41bの形状にパターニングし、絶縁膜14上に成膜したAl膜を図16及び図17に示すローレンツ力用配線パターン42a及び固定電極用配線パターン42bの形状にパターニングする。
図12及び図18に示すように、配線パターン41b,42a,42bの厚さ(例えば、少なくともおよそ500nm)により当該配線パターン41b,42a,42bの縁がなす段差形状がほぼ同じ形状で順次それらの上に積層された各層に転写される。したがって、可動板12との対向領域に存在する配線パターン41b,42a,42bの段差形状がほぼ同じ形状で可動板12(図12及び図18では、可動板12のSiN膜21のみが示されている。)に転写される。
本実施の形態では、前述したように、前記ダミー配線パターンを含むことによって、可動板12における接続部12dを除く領域(板ばね部12cの領域を含む)との対向領域において、配線パターン41b,42a,42bが当該可動板12の対称面Pと交差する線に対して対称的に形成されている(図10及び図11参照)。
本実施の形態では、このように、1つの可動板12の2つの板ばね部12cとの対向領域において配線パターン42a,42bが対称面Pに対して対称的に形成されていることから、2つの板ばね部12cには、対称面Pに対して対称的な段差形状が現れる。例えば、図12に示すように、箇所M1(一方の板ばね部12cの箇所)のSiN膜21及び箇所M1’(他方の板ばね部12cの箇所)のSiN膜21には、対称的な段差形状が現れている。よって、1つの可動板12の2つの板ばね部12cの弾性定数が同一となる。その結果、本実施の形態によれば、可動板12のX軸回りのねじれを低減することができ、可動板12の姿勢を対称面Pに対して対称的な姿勢(本実施の形態における所望の姿勢)を精度良く保つことが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、ミラー31が光路に進出して光を反射する際に、ミラー31の角度を精度良く所望の角度にすることができ、反射光量のロスを低減することができる。
また、本実施の形態では、可動板12のミラー搭載板12aとの対向領域等においても、配線パターン41b,42a,42bが対称面Pに対して対称的に形成されているので、ミラー搭載板12a等にも対称面Pに対して対称的な段差形状が現れる。例えば、図12に示すように、箇所M2,M3(ミラー搭載板12aの一方側の箇所)のSiN膜21及び箇所M2’,M3’(ミラー搭載板12aの他方側の箇所)のSiN膜21には、対称的な段差形状が現れている。可動板12のミラー搭載板12a等が完全な剛体であれば、ミラー搭載板12aに非対称な段差形状が現れても、可動板12のX軸回りのねじれが生ずることはない。しかしながら、凸部24により補強されているとは言え、ミラー搭載板12aも薄膜で構成されているのでわずかながらバネ性を持つことから、ミラー搭載板12aに非対称な段差形状が現れるとわずかながら可動板12のミラー搭載板12aがX軸回りにねじれる可能性がある。本実施の形態によれば、そのような可能性がなくなり、より好ましい。
これに対し、前記比較例では、前述したように、前記ダミー配線パターンを含まないことによって、可動板12との対向領域において、配線パターン41b,42a,42bが対称面Pに対して非対称になっている(図16及び図17参照)。
したがって、前記比較例では、例えば、図18に示すように、箇所M1(一方の板ばね部12cの箇所)のSiN膜21には、段差形状が全く現れていないのに対し、箇所M1’(他方の板ばね部12cの箇所)のSiN膜21には、段差形状が現れている。よって、1つの可動板12の2つの板ばね部12cの弾性定数が異なってしまい、可動板12のX軸回りのねじれが大きくなり、可動板12の姿勢を対称面Pに対して対称的な姿勢を精度良く保つことができない。したがって、前記比較例によれば、ミラー31が光路に進出して光を反射する際に、ミラー31の角度を精度良く所望の角度にすることができず、反射光量のロスが大きくなる。
また、前記比較例では、例えば、図18に示すように、箇所M2,M3’(ミラー搭載板12aの一方側の箇所)のSiN膜21には、段差形状が全く現れていないのに対し、箇所M2’,M3(ミラー搭載板12aの他方側の箇所)のSiN膜21には、段差形状が現れている。よって、可動板12のミラー搭載板12a等が完全な剛体でないことによっても、可動板12のミラー搭載板12aのねじれがわずかながら生ずる。
ところで、前記比較例のように、可動板12との対向領域において配線パターン41b,42a,42bが対称面Pに対して対称的に形成されていなくても、図18中のレジスト100を形成した後に、このレジスト100をCMP工程等の平坦化工程により平坦化すれば、可動板12のX軸回りのねじれを低減することができる。しかしながら、CMP工程等の平坦化工程によりレジスト100を平坦化しても、完全な平坦化は実際上困難であるため、やはり2つの板ばね部12cとの対向領域において非対称な段差形状が現れてしまい、本実施の形態ほど可動板12のX軸回りのねじれを低減することはできない。しかも、CMP工程等の平坦化工程を行うとすれば、その分工程数が増えてコストアップを免れない。
[第2の実施の形態]
図19は、本発明の第2の実施の形態による光スイッチアレーの全体における基板11上のローレンツ力用配線パターン42a、可動電極用配線パターン42b、固定電極41a及び固定電極用配線パターン41bの配置を示す概略平面図であり、図10に対応している。
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、配線パターン41b,42a,42bのうちのダミー配線パターンのみである。すなわち、前記第1の実施の形態では、図15中に実線で示すダミー配線パターンの代わりに、図19に示すようなダミー配線パターン(図19に示されかつ図16に示されていない配線パターン42a’,42b’)が採用されている点のみである。本実施の形態で採用されているダミー配線パターン42a’,42b’は、各可動板12について、当該可動板12の2つの板ばね部12cとの対向領域において対称面Pに対して対称的に配線パターン42a,42bが形成されるように、板ばね部12cとの対向領域付近のみに形成したものである。
本実施の形態によれば、可動板12のミラー搭載板12aとの対向領域等において配線パターン41b,42a,42b,42a’,42b’が対称面Pに対して対称的に形成されていないので、前記第1の実施の形態と比較するとミラー搭載板12aのX軸回りのねじれの低減効果は若干劣るものの、前記第1の実施の形態と同様に2つの板ばね部12cとの対向領域において対称面Pに対して対称的に配線パターン42a,42b,42a’,42b’が形成されているので、かなりのねじれ低減効果を得ることができる。
[第3の実施の形態]
図20は、本発明の第3の実施の形態による光スイッチアレーの製造工程の途中の状態を模式的に示す概略断面図であり、図12に対応している。
図21は、本実施の形態による光スイッチアレーで用いられている静電シールド層50を模式的に示す概略平面図である。
本実施の形態による光スイッチアレーが前記第1の実施の形態による光スイッチアレーと異なる所は、図20に示すように、配線パターン41b,42a,42bと可動板12の配線パターン22a,22bとの間にAl膜等からなる静電シールド50が位置するように、静電シールド層50が絶縁膜15上に形成され、更に静電シールド層50上にシリコン酸化膜等の絶縁膜51が形成されている点のみである。
本実施の形態では、静電シールド層50は、図21に示すように、開口50a,50e,50fの領域を除いて、可動板12が配置されている領域の全体を覆うように形成されている。開口50aは固定電極41aと対向する領域に形成され、開口50e,50fは脚部12e,12fの領域に形成されている。
静電シールド層50が形成されていない場合、可動板12の配線パターン及び基板11側の配線パターンの配置によっては、それらに互いに異なる電位が印加された際に両者の間に意図しない静電力が作用し、しかも、対称面Pに対する一方の側で作用する静電力と他方の側で作用する静電力とがアンバランスになる場合がある。このような場合、このアンバランスな静電力によって、可動板12がX軸回りにねじれる可能性がある。
本実施の形態によれば、静電シールド層50が形成されているので、たとえ、現状の配線パターンの配置を変形して、静電シールド層50がない場合にアンバランスな静電力が生じ得るような配線パターンの配置を採用しても、可動板12の配線パターン及び基板11側の配線パターンとの間に静電力が作用しなくなり、配線パターン間の静電力に起因する可動板12のX軸回りのねじれを防止することができる。また、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様に、基板上に形成された配線パターンによる形状転写に起因する可動板12のX軸回りのねじれも低減することができる。
なお、静電シールド層50は、本実施の形態のように可動板12が配置されている領域のほぼ全体を覆う領域に形成するのではなく、前述したアンバランスな静電力が生じ得る領域のみに部分的に形成してもよい。
[第4の実施の形態]
図22は、本発明の第4の実施の形態による光スイッチアレーの製造工程の途中の状態を模式的に示す概略断面図であり、図18に対応している。
本実施の形態による光スイッチアレーは、前記第1の実施の形態による光スイッチアレーに対して静電シールド層50及び絶縁膜51を追加して前記第3の実施の形態による光スイッチアレーを得たのと同様に、前記比較例による光スイッチアレーに対して静電シールド層50及び絶縁膜51を追加したものである。
本実施の形態によれば、前記第3の実施の形態と同様に、静電シールド層50が形成されているので、たとえ、現状の配線パターンの配置を変形して、静電シールド層50がない場合にアンバランスな静電力が生じ得るような配線パターンの配置を採用しても、可動板12の配線パターン及び基板11側の配線パターンとの間に静電力が作用しなくなり、配線パターン間の静電力に起因する可動板12のX軸回りのねじれを防止することができる。
ただし、本実施の形態によれば、前記比較例と同様に、基板上に形成された配線パターンによる形状転写に起因する可動板12のX軸回りのねじれは低減することができない。
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
例えば、マイクロアクチュエータアレーに搭載される電気回路は、図8に示す回路に限定されるものではなく、各マイクロアクチュエータの固定電極及び可動電極並びにローレンツ力用電流路の両端をそれぞれ独立して外部接続用端子に接続した回路や、アドレス回路等を搭載した回路など、種々の回路構成を採用してもよい。
また、前述した各実施の形態は、本発明をマイクロアクチュエータアレーや光スイッチアレーに適用した例を挙げたが、本発明はアレー化したものに限定されるものではなく、単一のマイクロアクチュエータや単一の光スイッチにも適用することができる。
さらに、前述した各実施の形態は、本発明を可動部が片持ち梁構造を持つタイプのマイクロアクチュエータに適用した例であったが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、特許文献2に開示されているような可動部が両持ち構造を持つタイプのマイクロアクチュエータにも適用できる。
また、前述した各実施の形態は、本発明によるマイクロアクチュエータを光スイッチに適用した例であったが、本発明は、ミラー31に代えて、光の反射率の低い遮光膜や、偏光特性を有する偏光膜や、光波長フィルタ特性を有する光学薄膜などを搭載することにより、光減衰器、偏光器、波長選択器等の種々の光学装置に適用することができる。例えば、ミラー31はそのままシャッタとして用いることができるので、前記第1の実施の形態による光スイッチアレーで採用されている光スイッチは、そのまま可変光減衰器として用いることができる。この場合、前記静電力用電圧又はローレンツ力用電流の大きさを制御することで、ミラー31を光路の途中の所望の位置で停止させて、光路を通過する光を所望の量だけ減衰させることができる。この場合、静電力及びローレンツ力の一方のみを用いるように構成してもよい。なお、可変光減衰器の場合、ミラー31に代えて光の反射率の低いシャッタを用いてもよい。