JP2005317823A - 窒化ガリウム系発光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】窒化ガリウム系発光装置において、発光スペクトルの狭帯化をはかる。
【解決手段】窒化ガリウム系発光装置は、サファイア基板10上に低温バッファ層12、高温バッファ層(GaN系層)14を下地層として形成し、その上にn型コンタクト層16、n型クラッド層18、発光層20、p型クラッド層22及びp型コンタクト層24を積層して構成される。n型コンタクト層16をInGaNとし、そのバンドギャップエネルギを発光層20のバンドギャップよりも十分小さくし、かつ、その膜厚も200nm以上とすることで発光層20から下方に射出される光を吸収し、発光スペクトルの半値幅を狭くする。
【選択図】図1
【解決手段】窒化ガリウム系発光装置は、サファイア基板10上に低温バッファ層12、高温バッファ層(GaN系層)14を下地層として形成し、その上にn型コンタクト層16、n型クラッド層18、発光層20、p型クラッド層22及びp型コンタクト層24を積層して構成される。n型コンタクト層16をInGaNとし、そのバンドギャップエネルギを発光層20のバンドギャップよりも十分小さくし、かつ、その膜厚も200nm以上とすることで発光層20から下方に射出される光を吸収し、発光スペクトルの半値幅を狭くする。
【選択図】図1
Description
本発明は窒化ガリウム系発光装置に関し、特に発光スペクトルの制御に関する。
近年、窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体を用いた発光装置が開発され、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)として種々の分野に応用されている。
図6には、従来のGaN系発光装置の構成が示されている。発光装置(LED)は、サファイア基板10上に低温バッファ層12及び高温GaN系バッファ層14を形成して下地層とし、これら下地層の上にLEDやLD等のデバイス構造を作製して構成される。
下地層の上に積層されるデバイス構造として、n型コンタクト層16、n型クラッド層18、発光層(活性層)20、p型クラッド層22、p型コンタクト層24が順次形成される。p型コンタクト層24上にはp型透明電極26が形成され、n型コンタクト層16上にはn電極28が形成される。
n型クラッド層18及びp型クラッド層22としては、AlInGaNなどを用いた超格子構造とし、発光層(活性層)20としては、AlInGaNの井戸層と障壁層を交互に積層した多重量子井戸(MQW)構造として発光強度を増大させている。
低温バッファ層12や高温GaN系バッファ層14は、クラックやピットのない高品質膜を積層するために必要な下地層であるが、バッファ層としてGaN半導体層を用いると、GaNは365nmに光の吸収端を有するため発光層20からの波長355nm〜375nmの光を吸収してしまい、発光装置としての発光強度が減じてしまうとともに、光の吸収に起因して発光スペクトルが拡がる問題があった。
図7には、LEDチップの真上、斜め及び真横から射出される光の発光スペクトルが示されている。真横から射出される光は、GaNバッファ層による短波長成分の吸収により長波長成分のみとなり、真上あるいは斜めから射出される光は、本来の短波長成分にGaNバッファ層により吸収された後の未吸収の成分とGaNバッファ層のフォトルミネセンス発光とが重なったスペクトルとなる。したがって、LEDチップから全方向に射出される光のスペクトルは、これらのスペクトルの重ね合わせとして図8に示されるようにメインピークの他に長波長側にサブピークを有するブロードなスペクトルとなってしまう。
GaN系発光装置を例えばセンサなどの用途に用いる場合、励起媒体を励起する波長以外はノイズとなるため、図8に示されるようなブロードな発光スペクトルを有する発光装置は望ましくなく、センサ性能の低下を生じ得る。
本発明の目的は、発光スペクトルの拡がりを抑制できる発光装置を得ることにある。
本発明は、基板と、前記基板上に形成されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層とを有する窒化ガリウム系発光装置であって、前記第1導電型コンタクト層のバンドギャップエネルギは、前記窒化ガリウム系発光層のバンドギャップエネルギよりも60meV以上小さく、かつ、その膜厚は200nm以上であることを特徴とする。
また、本発明は、基板と、前記基板上に形成されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層とを有する窒化ガリウム系発光装置であって、前記第1導電型コンタクト層のバンドギャップエネルギの換算波長(バンドギャップエネルギを波長に換算した値)は、前記窒化ガリウム系発光層の換算波長よりも6nm以上長く、かつ、その膜厚は200nm以上であることを特徴とする。
また、本発明は、基板と、前記基板上に形成されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層とを有する窒化ガリウム系発光装置であって、前記第1導電型コンタクト層と前記第1導電型クラッド層の間、あるいは前記バッファ層と前記第1導電型コンタクト層との間に光吸収層を設け、前記光吸収層のバンドギャップエネルギは、前記窒化ガリウム系発光層のバンドギャップエネルギよりも60meV以上小さく、かつ、その膜厚は200nm以上であることを特徴とする。
また、本発明は、基板と、前記基板上に形成されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層とを有する窒化ガリウム系発光装置であって、前記第1導電型コンタクト層と前記第1導電型クラッド層の間、あるいは前記バッファ層と前記第1導電型コンタクト層との間に光吸収層を設け、前記光吸収層のバンドギャップエネルギの換算波長は、前記窒化ガリウム系発光層の波長よりも6nm以上長く、かつ、その膜厚は200nm以上であることを特徴とする。
本発明においては、第1導電型コンタクト層、あるいは第1導電型コンタクト層と第1クラッド層との間の層、あるいは前記バッファ層と前記第1導電型コンタクト層との間を光吸収層として機能させ、発光層からの光(例えば波長340nm〜375nm)のうち下方(基板方向)に射出される光のほとんどを吸収する。また、第1導電型コンタクト層あるいは光吸収層の材料やキャリア密度を調整することで、吸収した光によるフォトルミネセンス光の発光強度を抑制し、結果として発光層のうち上方に射出される光のみを外部に射出させ、発光スペクトルの半値幅の狭いシャープな発光スペクトルが得られる。
発光層からの光を第1導電型コンタクト層あるいは光吸収層で吸収するための条件は、第1導電型層あるいは光吸収層のバンドギャップエネルギを発光層のバンドギャップエネルギよりも十分小さくし、かつ、その膜厚を十分大きくすることであり、具体的には
発光層のバンドギャップエネルギ−第1導電型コンタクト層(あるいは光吸収層)のバンドギャップエネルギ≧60meV
あるいは、バンドギャップエネルギを波長に換算した場合に、
あるいは、バンドギャップエネルギを波長に換算した場合に、
第1導電型コンタクト層(あるいは光吸収層)の波長−発光層の波長≧6nm
とし、第1導電型コンタクト層(あるいは光吸収層)の膜厚は200nm以上とすることが好適である。
とし、第1導電型コンタクト層(あるいは光吸収層)の膜厚は200nm以上とすることが好適である。
一方、発光層からの光を吸収して生じるフォトルミネセンス成分による発光スペクトルの拡大を抑制するためには、フォトルミネセンス強度を抑制し、具体的には発光層からの光のピーク強度の約1/5以下とすることが好適である。フォトルミネセンス強度は、光を吸収して励起される電子密度に依存して決定されるため、フォトルミネセンス強度を1/5以下とするためにはキャリア密度を十分小さくする必要がある。例えば、第1導電型コンタクト層をSiドープのIn0.05Ga0.95Nで構成した場合、そのキャリア密度を2×1018cm-3以下とすることで、そのフォトルミネセンス強度を1/5以下に抑制できる。
本発明によれば、発光層から下方(基板方向)に向けて射出される光を第1導電型コンタクト層あるいは光吸収層で吸収し、しかも当該層のフォトルミネセンス強度を抑制しているので、発光スペクトルの半値幅を小さくすることができる。これにより、半値幅の狭いシャープな発光スペクトル特性を要求する光デバイスに適用することができる。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係る発光装置(LED)の構成が示されている。サファイア基板10上に低温GaNバッファ層12及び高温GaN系バッファ層14を積層して下地層とし、これら下地層の上にn型コンタクト層16、n型クラッド層18、発光層(活性層)20、p型クラッド層22及びp型コンタクト層24を積層する構成である。低温バッファ層12は400℃以上750℃以下で形成され、高温GaN系バッファ層14は800℃以上1100℃以下で形成される。p型コンタクト層24上にp型透明電極26が形成され、n型コンタクト層16上にn電極28が形成される。図6に示された従来装置と異なる点は、n型コンタクト層16の組成や膜厚、及びキャリア密度を調整し、n型コンタクト層16のバンドギャップエネルギを発光層20のバンドギャップエネルギよりも十分小さくして発光層20から下方に射出された光のほとんどをn型コンタクト層16で吸収する構成とした点である。発光層20からの光のうち、下部に向けて射出される光をn型コンタクト層16で吸収することで、発光層20から直接上方に向けて射出された光の成分のみとする。n型コンタクト層16で光を吸収することで、本来の発光層20からの発光スペクトルに、発光層20の光により励起されたn型コンタクト層16のフォトルミネセンス光が重畳されたスペクトルとなるが、フォトルミネセンス光は一般に一桁程度以下で弱く、かつ、n型コンタクト層16のキャリア密度(さらには結晶性)を調整することでその影響が出ないように抑制できる。フォトルミネセンス光強度を弱くする方法は、上記以外にも一般的に知られている非発光再結合を増加させるためにバンドギャップ内に深いエネルギ準位を形成するための不純物をドープしたり、欠陥を形成する方法等が考えられる。
図1における各層の材料及びその厚さは以下の通りである。
低温バッファ層12:GaN
高温GaN系バッファ層14:アンドープGaN(2μm)
n型コンタクト層16:SiドープIn0.035Ga0.965N(2.0μm)
n型クラッド層18:アンドープAl0.2Ga0.8N障壁層(2nm)/SiドープGaN井戸層(2nm)を50層
発光層(活性層)20:In0.05Ga0.95N井戸層(2nm)/Al0.28In0.01Ga0.71N障壁層(10nm)を3層
p型クラッド層22:MgドープAl0.15Ga0.85N障壁層(2nm)/MgドープGaN井戸層(2nm)を50層
p型コンタクト層24:MgドープAl0.05Ga0.95N(20nm)
低温バッファ層12:GaN
高温GaN系バッファ層14:アンドープGaN(2μm)
n型コンタクト層16:SiドープIn0.035Ga0.965N(2.0μm)
n型クラッド層18:アンドープAl0.2Ga0.8N障壁層(2nm)/SiドープGaN井戸層(2nm)を50層
発光層(活性層)20:In0.05Ga0.95N井戸層(2nm)/Al0.28In0.01Ga0.71N障壁層(10nm)を3層
p型クラッド層22:MgドープAl0.15Ga0.85N障壁層(2nm)/MgドープGaN井戸層(2nm)を50層
p型コンタクト層24:MgドープAl0.05Ga0.95N(20nm)
なお、発光層(活性層)20とn型クラッド層18との境界にホールを閉じ込めるためのキャリア閉じ込め層を形成してもよく、キャリア閉じ込め層は例えばAl0.28In0.01Ga0.71N(26nm)を形成する。同様に、発光層20とp型クラッド層22との境界に電子を閉じ込めるためのキャリア閉じ込め層を形成してもよい。
また、低温バッファ層12として、低温SiNバッファ層と低温GaNバッファ層の積層構造としてもよい。
また、本実施形態では、高温GaN系バッファ層14を設けているが、この層を省略して、低温バッファ層12上に直接n型コンタクト層16を形成してもよい。これについてはさらに後述する。
図1に示される発光装置は以下のプロセスを経て作製される。すなわち、
(1)MOCVD装置のサセプタにサファイアC面基板10を載置し、1150℃で10分間水素雰囲気中にて熱処理する。
(2)次に、500℃まで降温し、アンモニアガスとトリメチルガリウム(TMG)を原料ガスとして供給し、低温GaNバッファ層12を成長させる。
(3)次に、1075℃まで昇温し、トリメチルガリウム(TMG)とアンモニアガスを原料ガスとして供給し、高温GaN系バッファ層14としてアンドープn型GaN層を成長させる。
(4)次に、900℃にてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム、アンモニアガス、シランガスを原料ガスとして供給し、n型コンタクト層16としてSiドープn型InGaN層を成長させる。
(5)次に、1075℃でn型クラッド層18としてアンドープAlGaN障壁層とSiドープGaN井戸層を交互に合計50層堆積させた超格子構造を成長させる。
(6)次に、840℃まで降温して発光層(活性層)20としてInGaN井戸層とAlInGaN障壁層を交互に合計3層堆積させる。
(7)次に、1025℃まで昇温してp型クラッド層22としてMgドープp型AlGaN障壁層とMgドープp型GaN井戸層を交互に50層堆積させた超格子構造を成長させる。
(8)次に、1025℃でp型コンタクト層24としてMgドープp型AlGaN層を成長させる。
(1)MOCVD装置のサセプタにサファイアC面基板10を載置し、1150℃で10分間水素雰囲気中にて熱処理する。
(2)次に、500℃まで降温し、アンモニアガスとトリメチルガリウム(TMG)を原料ガスとして供給し、低温GaNバッファ層12を成長させる。
(3)次に、1075℃まで昇温し、トリメチルガリウム(TMG)とアンモニアガスを原料ガスとして供給し、高温GaN系バッファ層14としてアンドープn型GaN層を成長させる。
(4)次に、900℃にてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム、アンモニアガス、シランガスを原料ガスとして供給し、n型コンタクト層16としてSiドープn型InGaN層を成長させる。
(5)次に、1075℃でn型クラッド層18としてアンドープAlGaN障壁層とSiドープGaN井戸層を交互に合計50層堆積させた超格子構造を成長させる。
(6)次に、840℃まで降温して発光層(活性層)20としてInGaN井戸層とAlInGaN障壁層を交互に合計3層堆積させる。
(7)次に、1025℃まで昇温してp型クラッド層22としてMgドープp型AlGaN障壁層とMgドープp型GaN井戸層を交互に50層堆積させた超格子構造を成長させる。
(8)次に、1025℃でp型コンタクト層24としてMgドープp型AlGaN層を成長させる。
以上のようにして各層を成長させた後、MOCVD装置からウエハーを取り出し、p型透明電極26を形成する。すなわち、Ni(10nm)、Au(10nm)をウエハー表面に順次真空蒸着し、5%の酸素を含む窒素雰囲気中520℃で熱処理してp型透明電極26を形成する。つぎに、全面にフォトレジストを塗布しエッチングマスクとして用いてn型コンタクト層16の一部が表面に露出するまでエッチングし、露出したn型コンタクト層16上にn電極28を形成する。すなわち、Ti(5nm)、Al(5nm)を順次真空蒸着し、窒素ガス中450℃で30分熱処理してn電極28を形成する。p型透明電極26及びn型電極28の一部にワイヤボンディング用の金パッドを500nm形成し、基板裏面を100μmまで研磨してスクライブによりLEDチップを切り出し、マウントしてLEDデバイスが得られる。
n型In0.035Ga0.965Nコンタクト層16のバンドギャップに対応する発光波長(実際に発光する波長ではなく、この組成のコンタクト層16のバンドギャップエネルギを波長に換算した値)は約374nmであり、発光層20からの発光波長365nmよりも約9nm長い。この程度に長い(すなわちこの程度だけn型コンタクト層16のバンドギャップエネルギは発光層20のバンドギャップエネルギよりも小さい)と、発光層20からの光を十分吸収することができる。さらに、n型InGaNコンタクト層16の膜厚は2μmに設定されているため、発光層20から下方に射出される光はn型InGaNコンタクト層16でほぼ完全に吸収され、n型InGaNコンタクト層16の下層に存在するGaN層で吸収されることはない。
n型InGaNコンタクト層16の膜厚が満たすべき条件は以下の通りである。発光層20からの光の波長365nmにおけるアンドープGaNの吸収係数は、約1×104 cm-1程度であることが知られている(例えば、G.Y.Zhao et al.,Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 38(1999)pp. L993-L995)。したがって、アンドープGaN界面での反射がないと仮定すると、発光波長365nmではGaNの膜厚が70nmあれば50%の光を吸収することができ、230nmでは90%、300nmでは95%、460nmでは99%の光を吸収することができる。このことから、n型InGaNコンタクト層16の膜厚としては、約200nm以上あれば90%以上の光を吸収でき、本実施形態のように2μmあればほぼ100%の光を吸収できることになる。
上記したようにn型InGaNコンタクト16は、高温GaN系バッファ層14を形成することなく、図2(a)に示されるように低温GaN系バッファ層12上に直接形成することも可能である。しかしながら、InGaNを低温バッファ層12上に直接形成した、基板/低温バッファ層12/n型InGaNコンタクト層16の構成では、例えばInGaNコンタクト層16の膜厚を0.5μm程度とすると、図2(b)のSEM写真に示されるようにその表面に多数のピットが存在し、平坦な膜が得られない。このように多数のピットが存在すると、ピット部分では光の吸収量が低減するため、発光層20からの光を十分吸収することができなくなる。さらに、ピットが多数存在するため、その上に良好なデバイス構造を作製できないという問題も生じる。本願出願人は、低温バッファ層12上に形成されるInGaN層の膜厚が0.8μm程度ではほとんどピットがなくなり、さらに1μm以上となるとピットが存在しなくなることを確認しており、したがって低温バッファ層12上にn型InGaNコンタクト層16を形成する場合にはその膜厚を1μm以上とする必要がある。なお、InGaNのIn組成が0〜10%まではピットの減少傾向は同じであり、上記した様になる。
次に、n型InGaNコンタクト層16での光吸収によるエレクトロルミネセンス(EL)について説明する。
図3には、n型コンタクト層16としてGaNを用いた場合と本実施形態のようにInGaNを用いた場合の発光スペクトルが示されている。図において、横軸は発光波長(nm)であり、縦軸はピーク強度を1とした相対発光強度(au)である。GaNは破線、InGaNは実線で示されており、GaNでは光吸収に伴うピーク(フォトルミネセンスピーク)がメインピークの近傍にあり、「肩」を持つスペクトルとなってその半値幅が拡がってしまう。一方、InGaNでは光吸収に伴うピーク(フォトルミネセンスピーク)は374nm近傍にあるがその強度は小さく、スペクトルの半値幅はほとんど拡大していない。このように、n型コンタクト層16としてInGaNを用いることで、発光層20から下方へ射出される光を吸収し、かつ、光吸収によるフォトルミネセンスの成分を抑制して半値幅の狭いシャープなスペクトルを得ることができる。
図4には、発光層20を基準とした場合のn型InGaNコンタクト層16の波長(そのバンドギャップエネルギを波長に換算した値)と、発光スペクトルの半値幅との関係が示されている。図において、横軸は発光層20を基準としたn型InGaNコンタクト層16(図ではその機能に着目して「吸収層」と記している)の波長であり、(n型InGaNコンタクト層16の波長)−(発光層20の波長)である。例えば、0は発光層20と同一値(同一のバンドギャップエネルギ)であり、+2は発光層20よりも2nmだけ長い(発光層20よりも2nmに対応するエネルギだけバンドギャップエネルギが小さい)ことを示し、−2は発光層20よりも2nmだけ短い(発光層20よりも2nmに対応するエネルギだけバンドギャップエネルギが大きい)ことを示す。n型InGaNコンタクト層16の波長は、Inの含有量を増減させることで変化させることができ、In含有量が多いほど波長は長くなる。図から分かるように、n型InGaNコンタクト層16の波長が−4〜+4nmまではほとんど変化がないが、+4nm以上、特に+6nm(バンドギャップエネルギが小さくなる)となると、スペクトルの半値幅が狭くなる。従って、半値幅狭小の観点からは、n型InGaNコンタクト層16の波長は、発光層20に対して4nm以上長いのが好適であり、6nm以上長いのが特に好適である。
一方、n型InGaNコンタクト層16で発光層20からの下方への光を吸収する結果、LEDチップからの発光強度は低下することになる。この低下量はLEDチップ形状や構造により異なるが、一例ではn型InGaNコンタクト層16の波長が−2〜+2nm程度ではLEDチップからの発光強度はほとんど変化しないが、+4nmを超えると発光強度は基準値に対して約15%低下し、+7nmを超えると発光強度は約25%低下した。
このように、発光強度が低下するデメリットがあるが、n型InGaNコンタクト層16の波長を発光層20に対して6nm程度長くすることで半値幅を狭めることができるので、発光強度はそれほど要求されず必要波長のみでの使用が要求されるセンサ等の用途に用いることができる。もちろん、発光強度と半値幅とはトレードオフの関係にあるため、両者のバランスを考慮してn型InGaNコンタクト層16の波長を選択してもよく、例えばn型InGaNコンタクト層16の波長を4〜5nm程度に設定する等である。
図5には、図4におけるn型InGaNコンタクト層16の波長をバンドギャップエネルギに換算したグラフが示されている。周知の如く、バンドギャップエネルギと波長とは反比例の関係にある(Eg=k/λ:kは定数、λは波長)ので、波長が大きくなるほどバンドギャップエネルギは小さくなる。図5の横軸は、(発光層20のバンドギャップエネルギ)−(n型InGaNコンタクト層16のバンドギャップエネルギ)を示す。例えば、図5における−20meVは、n型InGaNコンタクト層16のバンドギャップエネルギが発光層20のバンドギャップエネルギよりも20meVだけ大きいことを示す。また、図5における+40meVは、n型InGaNコンタクト層16のバンドギャップエネルギが発光層20のバンドギャップエネルギよりも40meVだけ小さいことを示す。n型InGaNコンタクト層16のバンドギャップはIn含有量により増減し、In含有量が多いほどバンドギャップは小さくなる。
図から分かるように、n型InGaNコンタクト層16のバンドギャップエネルギを小さくし、バンドギャップエネルギ差が40meV以上で半値幅が小さくなり、特に60meV以上になると半値幅がより小さくなる。このことから、(発光層20のバンドギャップエネルギ)−(n型InGaNコンタクト層16のバンドギャップエネルギ)≧40meVが好適であり、(発光層20のバンドギャップエネルギ)−(n型InGaNコンタクト層16のバンドギャップエネルギ)≧60meVがより好適である。
次に、n型InGaNコンタクト層16のフォトルミネセンスについて説明する。
n型InGaNコンタクト層16の波長を発光層20の波長よりも9nmだけ長く設定し、n型InGaNコンタクト層16のキャリア密度(Siドープ量)を変化させてフォトルミネセンス強度を変化させた複数のLEDチップの発光スペクトルの半値幅を測定したところ、以下のような結果が得られた。
すなわち、LEDチップの発光スペクトルにおいて、n型InGaNコンタクト層16からのフォトルミネセンスピーク強度が発光層20からの光のピーク強度に対して約1/2、約1/3、約1/5の場合を比較すると、ピーク強度が1/5の場合には半値幅は約10nmと狭いが、ピーク強度が1/3以上の場合には半値幅が12nm以上となった。
このことから、発光スペクトルの半値幅を狭くするには、n型InGaNコンタクト層16からのフォトルミネセンスピーク強度を発光層20からの光のピーク強度の1/5以下とするのが好適である。なお、ピーク強度を1/5以下とするためのキャリア密度は、2×1018cm-3以下である。
このことから、発光スペクトルの半値幅を狭くするには、n型InGaNコンタクト層16からのフォトルミネセンスピーク強度を発光層20からの光のピーク強度の1/5以下とするのが好適である。なお、ピーク強度を1/5以下とするためのキャリア密度は、2×1018cm-3以下である。
以上説明したように、本実施形態では、n型コンタクト層16をSiドープのInGaN層とし、そのバンドギャップエネルギを発光層20のバンドギャップよりも十分小さく(60meV以上小さく)し、かつ、その膜厚を200nm以上として光を十分吸収するとともに、そのフォトルミネセンスピーク強度を発光層20からの光のピーク強度よりも1/5以下とすべくキャリア密度を調整することで、半値幅の狭いシャープな発光スペクトルを有するLEDチップを得ることができる。
なお、本実施形態においては、n型コンタクト層16としてInGaNとしているが、図1においてn型コンタクト層16をGaNとし、n型コンタクト層16とn型クラッド層18との間、あるいはバッファ層14とn型コンタクト層16との間に上記の条件を満たす光吸収層を挿入してもよい。この場合、バンドギャップエネルギの大小関係は、発光層20>光吸収層となる。
また、n型コンタクト層16の材料、あるいはn型コンタクト層16とn型クラッド層18との間、あるいはバッファ層14とn型コンタクト層16との間に挿入される光吸収層の材料としては、InGaNの他に、AlInGaN、InGaN/InGaNの超格子構造、AlInGaN/AlInGaNの超格子構造、AlInGaN/InGaNの超格子構造等を用いることができる。
10 基板、12 低温バッファ層、14 高温バッファ層(GaN系層)、16 n型コンタクト層、18 n型クラッド層、20 発光層(活性層)、22 p型クラッド層、24 p型コンタクト層、26 p電極、28 n電極。
Claims (11)
- 基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、
前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、
前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
を有する窒化ガリウム系発光装置であって、
前記第1導電型コンタクト層のバンドギャップエネルギは、前記窒化ガリウム系発光層のバンドギャップエネルギよりも60meV以上小さく、かつ、その膜厚は200nm以上である
ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、
前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、
前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
を有する窒化ガリウム系発光装置であって、
前記第1導電型コンタクト層のバンドギャップエネルギの換算波長は、前記窒化ガリウム系発光層の換算波長よりも6nm以上長く、かつ、その膜厚は200nm以上である
ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、
前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、
前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
を有する窒化ガリウム系発光装置であって、
前記第1導電型コンタクト層と前記第1導電型クラッド層の間、あるいは前記バッファ層と前記第1導電型コンタクト層との間に光吸収層を設け、前記光吸収層のバンドギャップエネルギは、前記窒化ガリウム系発光層のバンドギャップエネルギよりも60meV以上小さく、かつ、その膜厚は200nm以上である
ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、
前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、
前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
を有する窒化ガリウム系発光装置であって、
前記第1導電型コンタクト層と前記第1導電型クラッド層の間、あるいは前記バッファ層と前記第1導電型コンタクト層との間に光吸収層を設け、前記光吸収層のバンドギャップエネルギの換算波長は、前記窒化ガリウム系発光層の換算波長よりも6nm以上長く、かつ、その膜厚は200nm以上である
ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
前記バッファ層は低温バッファ層であり、
前記第1導電型コンタクト層の膜厚は1μm以上である
ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
前記第1導電型コンタクト層のキャリア密度は、そのフォトルミネセンスピーク強度が前記窒化ガリウム系発光層からの光のピーク強度の1/5以下となる値に設定される
ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 請求項3、4のいずれかに記載の装置において、
前記光吸収層のキャリア密度は、そのフォトルミネセンスピーク強度が前記窒化ガリウム系発光層からの光のピーク強度の1/5以下となる値に設定される
ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
前記第1導電型コンタクト層は、AlInGaN(0≦Al≦0.1、0≦In≦0.1)の単層あるいは超格子層を含み、そのキャリア密度は2×1018cm-3以下であることを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 請求項8記載の装置において、
前記第1導電型コンタクト層は、InGaN(0≦In≦0.1)から構成され、そのキャリア密度は2×1018cm-3以下であることを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 請求項3、4のいずれかに記載の装置において、
前記光吸収層は、AlInGaN(0≦Al≦0.1、0≦In≦0.1)の単層あるいは超格子層を含み、そのキャリア密度は2×1018cm-3以下であることを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。 - 請求項10記載の装置において、
前記光吸収層は、InGaN(0≦In≦0.1)から構成され、そのキャリア密度は2×1018cm-3以下であることを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
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