JP2005311119A - 窒化ガリウム系発光装置 - Google Patents

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壽朗 佐藤
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直樹 和田
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士郎 酒井
Taku Noda
卓 納田
Yasushi Yamamoto
裕史 山本
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Abstract

【課題】窒化ガリウム系発光装置において、発光強度の増大と発光スペクトルの狭帯化をはかる。
【解決手段】窒化ガリウム系発光装置は、サファイア基板10上に低温SiNバッファ層12、低温GaN系バッファ層13、高温GaN系バッファ層14を下地層として形成し、その上にn型コンタクト層16、n型クラッド層18、発光層20、p型クラッド層22及びp型コンタクト層24を積層して構成される。低温GaN系バッファ層13と高温GaN系バッファ層14のトータル膜厚を10nm以上0.5μm以下とし、n型コンタクト層16を発光波長に対して透明となるバンドギャップに設定することで、光の吸収を抑制し、発光スペクトルの拡がりを抑制する。
【選択図】図1

Description

本発明は窒化ガリウム系発光装置に関し、特に発光スペクトルの制御に関する。
近年、窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体を用いた発光装置が開発され、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)として種々の分野に応用されている。
図8には、従来のGaN系発光装置の構成が示されている。発光装置(LED)は、サファイア基板10上に低温バッファ層12及び高温バッファ層14を形成して下地層とし、これら下地層の上にLEDやLD等のデバイス構造を作製して構成される。
下地層の上に積層されるデバイス構造として、n型コンタクト層16、n型クラッド層18、発光層(活性層)20、p型クラッド層22、p型コンタクト層24が順次形成される。p型コンタクト層24上にはp型透明電極26が形成され、n型コンタクト層16上にはn電極28が形成される。
n型クラッド層18及びp型クラッド層22としては、AlInGaNなどを用いた超格子構造とし、発光層(活性層)20としては、AlInGaNの井戸層と障壁層を交互に積層した多重量子井戸(MQW)構造として発光強度を増大させている。
WO2004/008551A1
低温バッファ層12や高温バッファ層14は、クラックやピットのない高品質膜を積層するために必要な下地層であるが、バッファ層としてGaN半導体層を用いると、GaNは365nmに光の吸収端を有するため発光層20からの波長355nm〜375nmの光を吸収してしまい、発光装置としての発光強度が減じてしまうとともに、光の吸収に起因して発光スペクトルが拡がる問題があった。
図9には、LEDチップの真上、斜め及び真横から射出される光の発光スペクトルが示されている。真横から射出される光は、GaNバッファ層による短波長成分の吸収により長波長成分のみとなり、真上あるいは斜めから射出される光は、本来の短波長成分にGaNバッファ層により吸収された後の未吸収の成分とGaNバッファ層のフォトルミネセンス発光とが重なったスペクトルとなる。したがって、LEDチップから全方向に射出される光のスペクトルは、これらのスペクトルの重ね合わせとして図10に示されるようにメインピークの他に長波長側にサブピークを有するブロードなスペクトルとなってしまう。
GaN系発光装置を例えばセンサなどの用途に用いる場合、励起媒体を励起する波長以外はノイズとなるため、図10に示されるようなブロードな発光スペクトルを有する発光装置は望ましくなく、センサ性能の低下を生じ得る。
本発明の目的は、発光強度の向上を図り、また、発光スペクトルの拡がりを抑制できる発光装置を得ることにある。
本発明は、基板と、前記基板上に形成された低温バッファ層と高温バッファ層からなる窒化ガリウム系バッファ層と、前記窒化ガリウム系バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層とを有する窒化ガリウム系発光装置であって、前記窒化ガリウム系バッファ層は、その厚さ(すなわち低温バッファ層と高温バッファ層のトータルの厚さ)が10nm以上0.5μm以下であり、前記第1導電型コンタクト層及び前記第1導電型クラッド層は前記窒化ガリウム系発光層からの発光波長に対して透明となるバンドギャップエネルギを有することを特徴とする。
また、本発明は、基板と、前記基板上に形成された低温バッファ層と高温バッファ層からなる窒化ガリウム系バッファ層と、前記窒化ガリウム系バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層とを有する窒化ガリウム系発光装置であって、前記窒化ガリウム系バッファ層は、面内方向に連続膜となっておらず凹凸が形成されており、前記第1導電型コンタクト層は、前記発光層からの発光波長に対して透明となるバンドギャップエネルギを有することを特徴とする。
本発明では、デバイス構造の下地層となる窒化ガリウム(GaN)系バッファ層、すなわち低温GaN系バッファ層と高温GaN系バッファ層を極薄く(10nm以上0.5μm以下)形成し、その上に発光層の発光波長に対して透明な第1導電型コンタクト層を形成する。極薄く形成されたGaNバッファ層上に積層されるコンタクト層の面内応力はその膜厚に比例して増大せず、十分厚く形成してもクラックやピット等が生じず、デバイス構造のクラック発生を抑制できる。また、極薄く形成されたGaN系バッファ層では発光層からの光の吸収が低減され、発光装置からの発光強度が増大する。GaN系バッファ層での光の吸収が低減されるため、GaN系バッファ層でのフォトルミネセンス成分による長波長化も抑制され、発光スペクトルの拡大が抑制される。
本発明では、低温バッファ及び高温バッファからなるGaN系バッファ層のトータル膜厚を極薄く形成する結果、GaN系バッファ層の表面は平坦ではなく凹凸が生じる。この凹凸は、その上に形成されるコンタクト層を十分厚く(1μm以上)形成することで平坦化され得る。本発明において、例えば第1導電型をn型、第2導電型をp型とすることができる。低温GaN系バッファ層の下地層として、さらに低温SiNバッファ層を有していてもよい。この低温SiNバッファ層は、発光層からの光吸収にはほとんど関与しないので、光吸収を抑制することを目的としてその膜厚を制御する必要はない。本発明における低温GaN系バッファ層と高温GaN系バッファ層は、そのトータル膜厚の上限が0.5μm以下であればよく、低温GaN系バッファ層、高温GaN系バッファ層それぞれの膜厚は任意である。さらに、本発明における「GaN系」バッファ層には、GaNの他、AlGaN、AlInGaN、InGaN、AlInN等、GaNにおけるGaの一部又は全部をAlやInで置換した化合物が含まれる。また、GaNにおけるNの一部をPやAsで置換した化合物も含まれる。
本発明によれば、発光層からの光の吸収を抑制して発光強度を増大させ、また、発光スペクトルの拡がりを抑制できる。特に、GaN系バッファ層が吸収する波長375nm以下の発光波長を有する発光装置において効果的に機能する。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係る発光装置(LED)の構成が示されている。サファイア基板10上に低温SiNバッファ層12と低温GaN系バッファ層13及び高温GaN系バッファ層14を積層して下地層とし、これら下地層の上にn型コンタクト層16、n型クラッド層18、発光層(活性層)20、p型クラッド層22及びp型コンタクト層24を積層する構成である。低温GaN系バッファ層13は400℃以上750℃以下で形成され、高温GaN系バッファ層14は800℃以上1100℃以下で形成される。p型コンタクト層24上にp型透明電極26が形成され、n型コンタクト層16上にn電極28が形成される。図10に示された従来装置と異なる点は、第1に、GaN系バッファ層13、14が極めて薄く形成されており、具体的には10nm以上0.5μm以下の厚さで形成されている点である。このように低温GaN系バッファ層13と高温GaN系バッファ層14のトータル膜厚を10nm以上0.5μm以下で形成した場合、高温GaN系バッファ層14の状態は、図1に示されるように面内方向に連続膜とならず島状に形成された状態となる。実施形態の発光装置は、このように高温GaN系バッファ層14が面内方向に連続膜となっておらず島状の凹凸となっている状態において発光層の波長に対して透明なn型コンタクト層16が積層される。高温GaN系バッファ層14を0.5μm以下と薄く形成することで、発光層20からの短波長(355〜375nm)の光の吸収を大幅に削減することができ、高温GaN系バッファ層14におけるフォトルミネッセンス発光が重畳されることによる発光スペクトルの拡がりも抑制される。
第2に、図1に示される発光装置では、高温GaN系バッファ層14と発光層20との間に形成されるn型コンタクト層16及びn型クラッド層18のバンドギャップエネルギを所定値以上、すなわち発光層20からの短波長光に対して透明となるバンドギャップエネルギに設定している点である。これにより、発光層20からの光はn型コンタクト層16、n型クラッド層18のいずれにおいても吸収されないため、発光強度の減少並びに発光スペクトルの拡がりが一層抑制される。
図1における各層の材料及びその厚さは以下の通りである。
低温SiNバッファ層12:SiN
低温GaN系バッファ層13:GaN(25nm)
高温GaN系バッファ層14:アンドープGaN(0.5μm)
n型コンタクト層16:Al0.05Ga0.95N(2.5μm)
n型クラッド層18:アンドープAl0.2Ga0.8N障壁層(2nm)/SiドープGaN井戸層(2nm)を50層
発光層(活性層)20:In0.05Ga0.95N井戸層(2nm)/Al0.28In0.01Ga0.71N障壁層(10nm)を3層
p型クラッド層22:MgドープAl0.15Ga0.85N障壁層(2nm)/MgドープGaN井戸層(2nm)を50層
p型コンタクト層24:MgドープAl0.05Ga0.95N(20nm)
なお、発光層(活性層)20とn型クラッド層18との境界にホールを閉じ込めるためのキャリア閉じ込め層を形成してもよく、キャリア閉じ込め層は例えばAl0.28In0.01Ga0.71N(26nm)を形成する。同様に、発光層20とp型クラッド層22との境界に電子を閉じ込めるためのキャリア閉じ込め層を形成してもよい。
図1に示される発光装置は以下のプロセスを経て作製される。すなわち、
(1)MOCVD装置のサセプタにサファイアC面基板10を載置し、1150℃で10分間水素雰囲気中にて熱処理する。
(2)次に、500℃まで降温し、アンモニアガス、シランガス、トリメチルガリウム(TMG)を原料ガスとして供給し、低温SiNバッファ層12と低温GaNバッファ層13を成長させる。
(3)次に、1075℃まで昇温し、トリメチルガリウム(TMG)とアンモニアガスを原料ガスとして供給し、高温GaN系バッファ層14としてアンドープn型GaN層を成長させる。
(4)次に、1075℃にてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニアガス、シランガスを原料ガスとして供給し、n型コンタクト層16としてSiドープn型AlGaN層を成長させる。
(5)次に、1075℃でn型クラッド層18としてアンドープAlGaN障壁層とSiドープGaN井戸層を交互に合計50層堆積させた超格子構造を成長させる。
(6)次に、840℃まで降温して発光層(活性層)20としてInGaN井戸層とAlInGaN障壁層を交互に合計3層堆積させる。
(7)次に、1025℃まで昇温してp型クラッド層22としてMgドープp型AlGaN障壁層とMgドープp型GaN井戸層を交互に50層堆積させた超格子構造を成長させる。
(8)次に、1025℃でp型コンタクト層24としてMgドープp型AlGaN層を成長させる。
以上のようにして各層を成長させた後、MOCVD装置からウエハーを取り出し、p型透明電極26を形成する。すなわち、Ni(10nm)、Au(10nm)をウエハー表面に順次真空蒸着し、5%の酸素を含む窒素雰囲気中520℃で熱処理してp型透明電極26を形成する。つぎに、全面にフォトレジストを塗布しエッチングマスクとして用いてn型コンタクト層16の一部が表面に露出するまでエッチングし、露出したn型コンタクト層16上にn電極28を形成する。すなわち、Ti(5nm)、Al(5nm)を順次真空蒸着し、窒素ガス中450℃で30分熱処理してn電極28を形成する。p型透明電極26及びn型電極28の一部にワイヤボンディング用の金パッドを500nm形成し、基板裏面を100μmまで研磨してスクライブによりLEDチップを切り出し、マウントしてLEDデバイスが得られる。
図2には、本実施形態において高温GaN系バッファ層14上にn型コンタクト層16を形成する際の前提となる高温GaN系バッファ層14の成長の様子が模式的に示されている。なお、図においては、低温SiNバッファ層12は光を吸収せず、また、低温GaN系バッファ層13はその膜厚が非常に薄く光吸収にはほとんど関与しないため、説明の都合上省略してある。
サファイア基板10上に高温GaN系バッファ層14としてGaN層を成長させる際、基板10との界面に結晶格子の不整合領域が存在するため、成長初期にはGaNは一様に成長するのではなく島状に成長する(図中一点鎖線)。そして、成長が進むにつれ面内方向の成長が支配的となり、最終的に連続膜となって高温GaN系バッファ層14が形成される(図中実線)。したがって、高温GaN系バッファ層14の膜厚がある程度薄い(0.5μm程度以下)と、GaN層の表面はいまだ平坦になっておらず島状の成長が残っている状態にある。本実施形態では、GaNの表面が面内方向に連続膜となっておらず島状となっている段階でAlGaNのn型コンタクト層16を成長させる。なお、このような島状の成長が残っている段階でのAlGaNコンタクト層16の成長に関しては、適宜、本願出願人の出願に係る特開2003−17744号公報を参照されたい。
図3(A)、(B)には、n型コンタクト層16の形成の様子が示されている。図中一点鎖線は高温バッファ層14としてのGaN層であり、面内方向に連続膜となっておらず島状となっている。この段階で(A)に示されるようにn型コンタクト層16としてのAlGaN層を成長させる。AlGaN層の各領域には図中a、bで示される方向の引っ張り応力が生じるが、島状成長部分の斜面ではその応力の向きが面内に平行ではない。このため、AlGaN層を厚く成長させると応力は大きくなるが、応力はベクトルであるため合成応力はAlGaN層の膜厚に比例して増大することはない。したがって、最終的に(B)に示されるようにAlGaN層を厚く形成(1μm以上)してその表面を平坦化しても合成応力は大きく増大せず、クラック、ピット、転位の発生を抑制することができる。
以上のようにして、低温GaN系バッファ層13と高温GaN系バッファ層14のトータル膜厚を10nm以上0.5μm以下に形成し、かつn型コンタクト層16を1μm以上形成してその表面を平坦化することで、その上に形成されるデバイス構造においてクラック、ピット、転位の発生を抑制でき、さらに高温GaN系バッファ層14における光吸収を効果的に抑制できる。
図4には、図1におけるn型コンタクト層16、n型超格子(SL)クラッド層18、発光層(活性層)20のバンドギャップエネルギが示されている。図においては、発光層20のうちn型超格子クラッド層18との境界には上記したようにホール閉じ込め層が形成されている場合が示されている。n型コンタクト層16としてAlGaN、発光層(活性層)20としてInGaN井戸層/AlInGaN障壁層のMQWとした場合、Alの組成やInの組成を調整することで、(n型コンタクト層16のバンドギャップエネルギ)>(発光層20の実効バンドギャップエネルギ)としてn型コンタクト層16を発光層20からの光に対して透明とすることができる。具体的には、n型コンタクト層16をSiドープN型Al0.05Ga0.95N層とし、発光層20としてIn0.05Ga0.95N井戸層/Al0.28In0.01Ga0.71N障壁層のMQWとすることでn型コンタクト層16を発光層20からの光に対して透明としている。
実施形態において、低温GaN系バッファ層13の膜厚は全て25nmである。この膜厚は高温GaN系バッファ層14に比べ無視できる程度に十分薄いため、以下は低温GaN系バッファ層13は無視し、高温GaN系バッファ層14としてのGaN層の厚さと発光スペクトルとの関係についてより詳細に説明する。
図5には、高温GaN系バッファ層14としてのGaN層の厚さを0.1μm、0.5μm、1μmずつ成長させたLEDチップを作製し、その発光スペクトルを測定した結果が示されている。発光スペクトルは、作製したLEDチップを積分球の中に入れ、電流を注入してLEDチップから射出した全方向成分を測定したものである。図において、実線はGaN層を1μm成長させた場合、一点鎖線はGaN層を0.5μm成長させた場合、破線はGaN層を0.1μm成長させた場合である。GaN層が1μmの場合には369nm程度にスペクトルの肩(サブピーク)が見られるが、GaN層が0.5μm及び0.1μmの場合にはこのようなサブピークは存在せず、半値幅が狭く鋭いピークが得られている。
図6には、GaN層の膜厚と発光スペクトルの半値幅との関係が示されている。GaN層が1μm以上の厚さでは発光スペクトルの半値幅に変化は見られず、GaN層の厚さが0.5μm、0.1μmと薄くなるにしたがい半値幅は15nmから順次10nm、8nmと減少しており、半値幅が狭く鋭い発光スペクトルが得られることがわかる。
これらの結果より、高温バッファ層14としてのGaN層の厚さを薄くし、特に0.5μm以下とすることにより発光層20からの光の吸収を抑制し、かつ長波長のフォトルミネッセンス成分の射出を抑制できる。
図7には、GaN層の膜厚と発光強度との関係が示されている。発光強度はGaN層の厚さが1μmの場合を基準とした相対値で示されている。GaN層を薄く形成することで発光層20からの光の吸収量が低減するため、LEDチップからの発光強度も増大する。図に示すように、GaN層の厚さが1μm以上ではほとんど変化はないが、0.5μm以下に薄くすると発光強度が増大していく。特にGaN層の厚さを0.1μmとすることで、1μmの場合に比べて発光強度が60%程度増大する。GaN層を薄くすることで、発光強度が増大し、かつ、発光スペクトルの半値幅も減少して鋭いピークを有する良好な発光スペクトルが得られる。なお、サファイア基板とGaN層を完全に除去した場合には発光効率が3〜4倍になるとの報告がなされているが(「2003年春季 第50回応用物理学関係連合講演会」30p−T−1)、サファイア基板上にデバイス構造を作製し、その後に基板とGaN層を除去する方法は技術的に複雑であり、高い歩留まりで安定して生産することが困難である。これに対し、本実施形態では、高温GaN系バッファ層14の厚さ及びn型コンタクト層16の成長を制御することで発光強度と発光スペクトルを制御できるので、安定して高品質のLEDチップを得ることが可能である。
さらに、本実施形態の発光装置は、発光層20からの光の吸収が少ないことから上下を逆にして基板側を上に配置するフリップチップマウントも可能であり、p型層側に光反射層を設け、サファイア基板10側から光を外部に取り出すことで発光強度をさらに向上させることも可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では発光層20としてInGaN井戸層/AlInGaN障壁層を用いているが、他の材料を用いることも可能であり、0.5μm以下に形成したGaN層は365nmよりも短波長の光に対してもその吸収量が少なく、発光スペクトルの狭帯化に有効である。
また、本実施形態では高温バッファ層14としてGaN、n型コンタクト層16としてAlGaNを用いているが、高温バッファ層14及びn型コンタクト層16をともにInGaN、AlGaN、あるいはAlInGaNとしてもよい。すなわち、バッファ層14(AlInGaN)/n型コンタクト層16(AlInGaN)やバッファ層14(AlGaN)/n型コンタクト層16(AlGaN)、バッファ層14(GaN)/n型コンタクト層16(AlInGaN)などとすることもできる。Inを入れる場合、成長温度を900℃前後まで下げる必要がある。これは、Inの取り込み量を増加させるためである。また、高温GaN系バッファ層14のAl組成を20%以上とすると、Al原子がマイグレーションしにくいため、目的とする島状の凹凸膜が形成されにくい。また、本実施形態では高温GaN系バッファ層14上に直接Siドープのn型コンタクト層16を形成しているが、高温GaN系バッファ層14とn型コンタクト層16の間にアンドープの透明層を挿入してもよい。この透明層は発光層の光に対して透明であれば、n型コンタクト層16と組成が異なっていてもよい。さらに、n型コンタクト層16を超格子構造としてもよい。n型コンタクト層16をAlGaNで構成する場合、n電極28とのオーミックコンタクトを得るためにAlの組成比を0.1以下(10%以下)とすることが好適であり、この範囲内において発光層20のバンドギャップエネルギよりも大きいバンドギャップエネルギに設定する。
高温バッファ層14、n型コンタクト層16、発光層20のバンドギャップエネルギをそれぞれEgb、Egc、Egaとすると、Egc>Ega≧Egbの関係にある。本実施形態においては、このようなバンドギャップエネルギの大小関係において、高温バッファ層14の厚さ、さらにはn型コンタクト層16の厚さを調整したものといえる。
なお、高温バッファ層14の厚さを0、すなわちバッファ層14自体をなくし、n型コンタクト層16をバッファ層としても機能させて光の吸収を低減することも考えられるが、n型コンタクト層16はオーミックコンタクトを得る機能とバッファとしての機能をともに有する必要があるためその組成に大きな制約が生じ、発光強度や膜の品質に影響を与えるおそれがある。したがって、高温バッファ層14の厚さtは、0<t≦0.5μmとする必要があり、低温GaN系バッファ層13の膜厚は10nm以上50nm程度以下であるので、低温GaN系バッファ層13と高温GaN系バッファ層14のトータル膜厚t2は、10nm≦t2≦0.5μmとなる。
実施形態に係る発光装置(LED)の構成図である。 バッファ層の成長説明図である。 バッファ層及びn型コンタクト層の成長説明図である。 n型コンタクト層、n型超格子クラッド層、活性層のバンドギャップの大きさの説明図である。 GaN層の厚さを0.1μm、0.5μm、1μmと変化させた場合の発光スペクトルの変化を示すグラフ図である。 GaN層の厚さと発光スペクトルの半値幅との関係を示す図である。 GaN層の厚さと発光強度との関係を示す図である。 従来装置の構成図である。 LEDチップの射出方向と発光スペクトルとの関係を示すグラフ図である。 従来のLEDチップの発光スペクトルを示すグラフ図である。
符号の説明
10 サファイア基板、12 低温SiNバッファ層、13 低温GaN系バッファ層、14 高温GaN系バッファ層、16 n型コンタクト層、18 n型クラッド層、20 発光層、22 p型クラッド層、24 p型コンタクト層。

Claims (8)

  1. 基板と、
    前記基板上に形成された低温バッファ層と高温バッファ層からなる窒化ガリウム系バッファ層と、
    前記窒化ガリウム系バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
    前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、
    前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、
    前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、
    前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
    を有する窒化ガリウム系発光装置であって、
    前記窒化ガリウム系バッファ層は、その厚さが10nm以上0.5μm以下であり、
    前記第1導電型コンタクト層及び前記第1導電型クラッド層は、前記窒化ガリウム系発光層からの発光波長に対して透明となるバンドギャップエネルギを有する
    ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
  2. 基板と、
    前記基板上に形成された低温バッファ層と高温バッファ層からなる窒化ガリウム系バッファ層と、
    前記窒化ガリウム系バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
    前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、
    前記第1導電型クラッド層上に形成された窒化ガリウム系発光層と、
    前記窒化ガリウム系発光層上に形成された第2導電型クラッド層と、
    前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
    を有する窒化ガリウム系発光装置であって、
    前記窒化ガリウム系バッファ層は、面内方向に連続膜となっておらず凹凸が形成されており、
    前記第1導電型コンタクト層は、前記発光層からの発光波長に対して透明となるバンドギャップエネルギを有する
    ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
  3. 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
    前記基板と前記低温バッファ層との間に、さらに低温窒化シリコンバッファ層を有することを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
  4. 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
    前記低温バッファ層は、400℃以上750℃以下の温度で形成されるバッファ層であり、
    前記高温バッファ層は、800℃から1100℃以下の温度で形成されるバッファ層である
    ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
  5. 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
    前記第1導電型コンタクト層は、その厚さが1μm以上であることを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
  6. 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
    前記窒化ガリウム系バッファ層及び前記第1導電型コンタクト層は、GaN、AlGaN、AlInGaNの少なくともいずれかを含んで構成されることを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の装置において、
    前記発光層は量子井戸構造を有し、その発光波長が375nm以下であることを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
  8. 請求項6記載の装置において、
    前記窒化ガリウム系バッファ層がAlを含んで構成される場合に、Al組成比は20%以下である
    ことを特徴とする窒化ガリウム系発光装置。
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