JP2005307322A - 成形性に優れたアルミニウム合金押出材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
強度特に溶接後の強度が高く、しかも成形性に優れたアルミニウム合金押出材を提供する。
【解決手段】
Zn:4.5〜7質量%,Mg:0.2〜0.38質量%,Cu:0.25〜0.4質量%,Zr:0.1〜0.3wt%を含み、さらにSi:0.05〜0.3質量%およびFe:0.05〜0.3質量%を(Fe質量%/Si質量%)=1〜3の範囲で含み、残部がAlと不可避的不純物とからアルミニウム合金を、均質化処理した後、押出加工して100℃/min以上の速度で冷却する。
【選択図】 なし
Description
溶接後の機械的特性が要求されるような部材には、Al−Zn−Mg系の、いわゆる7000系アルミニウム合金が使用されている。押出材として用いることも、例えば特許文献1,2,3,4で提案されている。
このように、既存の技術を、溶接後の機械的特性が要求される建築構造材,自動車フレーム,二輪車の部品等に適用するための薄肉押出材の製造にしようとすると、いずれも歩留まりが悪く、生産コストが高くなってしまう。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、強度特に溶接後の強度が高く、しかも成形性に優れたアルミニウム合金押出材を提供するものである。
さらに、Ti:0.001〜0.2質量%、B:0.0001〜0.01質量%のうちの1種または2種を含有させることもできる。
(1)均質化処理条件
・加熱速度 200℃/h以下
・均質化温度×時間 450〜520℃×1〜24h
・冷却速度 150℃/h以上
(2)押出加工条件
・押出加工温度 450〜540℃
・ダイス温度 400〜500℃
・形材出側温度 450℃以上
・冷却温度 100℃/min以上
さらに、押出加工後に、引抜き工程を付加してもよい。
したがって、溶接後の機械的特性が要求される建築構造材,自動車フレーム,二輪車の部品材等に適用するための薄肉押出材を低コストで製造することができる。
まず、本発明Al−Zn−Mg系アルミニウム合金を構成する成分の作用および含有量について説明する。
通常の7000系合金に含まれているMnやCrは析出物を形成して再結晶化を抑制し、機械的性質の向上および溶接時の割れ防止に寄与している。しかし、熱間変形抵抗値が高まって押出加工性を悪化させるため、薄肉材の製造が困難になる。そこで、本発明合金では、MnおよびCrは含有させていない。但し、溶製時に、原料であるアルミニウム合金スクラップから不可避的に不純物として混入するMn,Crは考慮に入れられていない。両者とも0.05質量%未満であれば押出成形性にはほとんど影響しない。
ZnはMg−Zn系の析出物を形成し、アルミニウム合金の強度を向上させるための最も重要な成分であり、その好ましい含有範囲は4.5〜7質量%である。Zn含有量が4.5質量%未満では強度向上の効果が十分ではない。7質量%を超えて含有してもそれ以上の強度向上が期待できなく、逆に耐食性が低下する。
MgはMg−Zn系の析出物を形成し、母相中に分散して押出材の機械的強度を向上させる。この効果はMgを0.2質量%以上含有させたとき顕著となる。逆に0.38質量%を超えて添加すると熱間変形抵抗が高まり、成形性および押出加工性が悪化し、生産性が低下する。したがって、Mgの含有量は0.2〜0.38質量%とする。好ましくは0.30〜0.35質量%とする。
Cuは母相中に固溶し、機械的強度を向上させる。この効果は、Cu含有量が0.25質量%以上で顕著になる。逆に0.4質量%を超えて含有させると耐食性が低下する。したがって、Cu含有量は0.25〜0.4質量%とする。0.25〜0.35質量%とすることが好ましい。
ZrはAl−Zr系化合物を形成して母相中に分散し、ピン留め効果によって再結晶粒の粗大化を抑制して強度を高め、また溶接時の割れ発生も防止する。この効果は、Zr含有量が0.1質量%以上で顕著となる。しかし、0.3質量%を超えて含有させると粗大なAl−Zr系化合物が生成して熱間加工性を低下させる。また析出物が過剰に生成すると熱間変形抵抗性が増大し、押出加工性を阻害することになる。
SiはAl−Si−Fe系の化合物を形成し、マトリックス中に微細分散して結晶粒の粗大化を抑制することにより、機械的強度を向上させる。この効果は、Si含有量を0.05質量%以上としたときに顕著となる。しかし、0.3質量%を超えて含有させるとMg−Si系化合物が形成されるためにMg−Zn系化合物の形成が阻害される。このため自然時効硬化性が低下し、溶接後に十分な強度が得られない。好ましくは、0.05〜0.15質量%の範囲で含有させる。
FeはAl−Si−Fe系の化合物を形成し、マトリックス中に微細分散して結晶粒の粗大化を抑制することにより、機械的強度を向上させる。この効果は、Fe含有量を0.05質量%以上としたときに顕著となる。しかし、0.3質量%を超えて含有させるとAl−Si−Fe系化合物が多量に分散するため、押出材の表面性状が損なわれる。好ましくは、0.10〜0.20質量%の範囲で含有させる。
押出後の結晶粒粗大化防止効果を得るためにFe,Siを含有させている。その他に鋳造割れを抑制する効果もあるが、上記の通り、両者の含有量が多すぎると機械的性質を低下させ、また押出加工性を阻害することになる。そこで、Al−Si−Fe系化合物を効率的に形成させるために、Fe/Si比を1〜3に規制する。Fe/Si比が1に満たないと、過剰となったSiがMgと化合物を形成してMg−Zn系化合物の形成を阻害し、機械的性質が低下する。またFe/Si比が3を超えると、過剰となったFeがAl−Fe系化合物を形成して押出加工性を低下させることになる。
Ti、Bは、鋳造材の結晶粒を微細化させ、鋳造時の割れ防止と押出加工性を向上させる作用を有している。このため、Ti:0.001〜0.2質量%、B:0.0001〜0.01質量%の範囲で、これらのうちの1種または2種を合金中に含有させることができる。Ti、Bの含有量がそれぞれ上限を超えると粗大な化合物が形成されて押出材の表面性状を悪化させることになる。
本発明のアルミニウム合金押出材も、各段階での温度条件や処理時間条件を限定することにより、所期の目的を達成することができている。
以下、その製造条件およびその限定理由について説明する。
・加熱速度;200℃/h以下
加熱速度が速いとAl−Zr系析出物が粗大化し、再結晶化抑制効果を下げ、機械的性質が低下する。また、溶接時の割れ感受性も高くなる。しかし遅すぎると経済的でない。好ましくは約100℃/h程度とする。
鋳造時に生じたMg,Zn等の偏析を均質化し、押出中に十分な固溶状態を得ること、および押出材の再結晶化抑制に適したAl−Zr系化合物を形成させるために実施する。450℃に満たない温度では24時間処理しても十分な組織は得られない。一方、520℃を超えたり、24時間を超えて処理すると、Mg,Znは均質化されるものの、Al−Zr系化合物が粗大化し、押出材の再結晶抑制効果が十分に得られない。1時間未満の処理では均質化が不十分である。したがって均質化処理は450〜520℃×1〜24hの条件で行う。
上記の高温保持により、Mg,Znは均質化されるが、冷却速度が遅い場合には粗大な析出物を形成し、押出中に十分な溶体化ができない。
したがって、均質化後の冷却速度は速く、150℃/h以上にする。
・押出加工温度;450〜560℃
押出直後の形材温度が450〜560℃になるように、ビレット加熱温度,押出速度を調整する。これにより、Mg,Znを十分に固溶させることが可能となる。450℃に満たないと固溶状態が不十分となり、その後の時効処理によっても十分な強度が得られない。一方、560℃を超えた温度で押出すと、再結晶化し易く、強度が低下するばかりでなく、溶接時の割れ感受性が高くなる。このため、薄肉中空材の製造においては、ビレット温度を450〜540℃に、ダイス温度を400〜500℃にして、3〜20m/minの押出速度で押出すことが好ましい。
肉厚2mm以上の標準的な管状体や厚肉材では断面の剛性が高いため、押出直後の高温時でも変形し難いが、本発明で目標とするような肉厚2mm以下の薄肉押出材では高温時および冷却過程で変形し易いため、変形防止を目的に押出直後から積極的に形材を冷却する。平均冷却速度100℃/min以上で150℃以下まで冷却することで変形を抑制することができる。冷却速度は、200℃/min以上とすることが好ましい。
冷却方法としては、空冷や液体窒素噴霧冷却が好ましい。水冷の場合、冷却が強すぎて冷却のバラツキが起こりやすく、冷却のバラツキによる変形が生じやすい。したがって薄肉押出材の場合には水冷は好ましくない。
高い寸法精度が要求される場合には、引抜加工を施す。但し、変形抵抗が高い場合は、引抜く前に焼きなまし処理を施しても良い。焼きなまし処理としては、200〜270℃×1〜6hrが好ましい。
引抜率は5〜25%とすることが好ましい。5%に満たないと引抜加工での寸法精度向上効果は得られない。一方、25%を超えて引抜くと材料が破断する。なお、本材料は室温環境下で時効硬化する合金であることから、押出後に引抜加工する際には10日以内に実施することが好ましい。
また、本材料には、時効硬化を促進させるために、人工時効を施しても良い。人工時効としては、80〜110℃×4〜12hr+120〜170℃×4〜24hrの二段時効を行うことが好ましい。
続いて図1に示すような長径120mm,短径85mm,肉厚1.3mmなる断面寸法を有する薄肉楕円管を押出成形した。この際、ビレット温度は500℃,ダイス温度は470℃,押出速度は6m/minとした。冷却条件は表1に示した通りである。なお、冷却はエアー冷却で行った。
また、試験No.4については、押出後、200℃×4hrの焼きなましを行った後に引抜加工を行い、可否評価を行った。引抜率は断面減少率で示した。
その結果を表2に示す。
なお、表2中、押出性の押出可否は、図1に示す寸法の中空体を2200t以下で押出せたものは○で、押出力が2200tを超え、押し詰まり等により、押出材が得られなかったものを×で表示した。同じく寸法精度は、外寸JIS特殊級を満足するもの(高さ±0.86mm,幅±1.12mm)を○で、JIS特殊級外を×で表示した。
また、引抜の可否は、引抜けたものを○で表示した。
さらに、強度評価に関しては、引張強さ220MPa以上、0.2%耐力170MPa以上のものを○とし、それに満たないものを×とした。溶接後の引張強さに関しても250MPa以上のものを○とし、それに満たないものを×とした。
以上を勘案して総合評価を下した。
これに対して、Cu含有量が少ない試験No.6は、押出加工は可能であるものの、耐力が低くなっている。また、Mn含有量が多い試験No.7、およびMg含有量が多い試験No.8では、熱間変形抵抗が高まり、押出加工を行おうとした際、押出力が2200tを超えて押し詰まり等が起こり、押出加工できなかった。
Claims (4)
- Zn:4.5〜7質量%,Mg:0.2〜0.38質量%,Cu:0.25〜0.4質量%,Zr:0.1〜0.3質量%を含み、さらにSi:0.05〜0.3質量%およびFe:0.05〜0.3質量%を(Fe質量%/Si質量%)=1〜3の範囲で含み、残部がAlと不可避的不純物とからなることを特徴とする成形性に優れたアルミニウム合金押出材。
- さらに、Ti:0.001〜0.2質量%、B:0.0001〜0.01質量%のうちの1種または2種を含有する請求項1に記載の成形性に優れたアルミニウム合金押出材。
- 請求項1または2に記載の成分組成を有するアルミニウム合金素材を、下記(1)で示す条件で均質化処理し、その後に下記(2)で示す条件で押出加工することを特徴とする成形性に優れたアルミニウム合金押出材の製造方法。
(1)均質化処理条件
・加熱速度 200℃/h以下
・均質化温度×時間 450〜520℃×1〜24h
・冷却速度 150℃/h以上
(2)押出加工条件
・押出加工温度 450〜540℃
・ダイス温度 400〜500℃
・形材出側温度 450℃以上
・冷却温度 100℃/min以上 - 押出加工後に引抜き工程を付加する請求項3に記載の成形性に優れたアルミニウム合金押出材の製造方法。
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