JP2005307251A - 自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents

自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 Download PDF

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Abstract

【目的】エバポレータ、コンデンサ、ラジエータやヒータコアなどのアルミニウム合金製自動車熱交換器用のチューブ材、とくにクラッド板の両端部が犠牲陽極材と当接するように曲げ加工してB型のチューブ形状としろう付けするものに好適な成形性に優れ、犠牲陽極材面のろう付け性、耐食性に優れた自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材を提供する。
【構成】芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の面にAl−Si系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材が1.5%を越え3.0%未満のSiを含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金または1.5%を越え3.0%未満のSiを含有するAl−Zn系合金であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、とくに、不活性ガス雰囲気中でのフッ化物系フラックスやセシウム化物系フラックスを用いたろう付けにより接合されるエバポレータ、コンデンサ、ラジエータやヒータコアなどのアルミニウム合金製自動車熱交換器用のチューブ材、または当該熱交換器と接続される配管材(押出クラッド管)として好適な自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に関する。
自動車熱交換器、例えばラジエータは、外面にフィンを有し、内面が作動流体(冷媒)の通路となるチューブおよびヘッダーから構成されている。このような自動車のラジエータまたはヒータコアなどのチューブ材、ヘッダープレート材としては、JIS A3003などのAl−Mn系合金を芯材とし、芯材の片面にAl−Si系合金ろう材をクラッドした二層構造のアルミニウム合金クラッド材、芯材の一方の面にろう材をクラッドし、他方の面にAl−Zn系合金またはAl−Zn−Mg系合金の犠牲陽極材をクラッドした三層構造のアルミニウム合金クラッド材が用いられている。
クラッド材のAl−Si系ろう材は、アルミニウム合金製熱交換器を製作するとき、チューブとフィンとの接合、チューブとヘッダープレートとの接合、またはクラッド板からろう付けによりチューブを製造する場合のろう付け接合のためにクラッドされている。これらのろう付には、最近では一般にフッ化物フラックスやセシウム化物系フラックスを用いる不活性ガス雰囲気ろう付けが適用される。また、犠牲陽極材は、たとえばチューブの内面側に使用され、作動流体と接して犠牲陽極作用を発揮し、芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。
近年、自動車の軽量化の要請に伴い、自動車熱交換器においても省エネルギー、省資源の観点から構成材料の薄肉化が要請され、チューブ材についても薄肉化が進行している。また、各種熱交換器の製造において、従来は図1に示すように、クラッド板を曲成して溶接により偏平チューブ1とし、これをヘッダープレートに組付けて一体ろう付けを行っていたが、最近では、省エネルギーや作業効率化などの観点から、図2に示すように、クラッド板の両端部が犠牲陽極材と当接するように曲げ加工するだけで、溶接することなくB型のチューブ形状2とし、ヘッダープレートに組付けた後、一体ろう付けすることが多くなっており、さらに、図3に示すように、チューブ1内にクラッドフィン材3を装入してろう付けすることにより、チューブの剛性を高める手法も行われている。
しかしながら、チューブ材やフィン材が薄肉であるため、クラッドされるろう材量が少なく、図2、図3のように犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいては、ろう付け時、ろう材のろうが十分にまわらず、図2のものにおいては、クラッド板の両端部と犠牲陽極材との当接部(点線囲い部−A部)に接合不良が生じることが少なくない。また、図3のように、チューブ1内にクラッドフィン材3を装入して不活性ガス雰囲気中でろう付けする場合、ろう付け中にチューブ内面の空気が不活性ガスに完全に置換されず残存するため、クラッドフィン材3のろう材が接合部に十分に濡れ広がらず、クラッドフィン材3とチューブ材1内面の犠牲陽極材との接触部(点線囲い部−B部)の接合が不十分となることがある。
チューブの内面側(犠牲陽極材面)にさらにろう材をクラッドし、接合部をろう対ろうの組み合わせとすることにより上記の問題を解決することが考えられるが、ろう付け時にろう材から犠牲陽極材へSiが拡散し、また犠牲陽極材からろう材へZnが拡散することで、充分な犠牲陽極効果が発揮されず、内面側の耐食性が低下するという問題点がある。
チューブ材として適用される耐エロージョン・コロージョン性に優れたアルミニウム合金クラッド材として、Al−Mn系合金芯材の片面に犠牲陽極材としてSi:3.0〜12.0%を含有し、またはSi:3.0〜12.0%、Zn:1〜10%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金をクラッドしたものが提案されており(特許文献1参照)、このクラッド材を使用し、犠牲陽極材にろう材としての機能をもたせることによって上記の問題を解決することが期待されるが、このものにおいては、ろう付け時における犠牲陽極材の流動が避けられず、犠牲陽極材の耐食性を安定して維持することが困難な場合が多い。
特開2000−190089号公報
発明者らは、チューブ材における前記従来の問題点を解消するために、犠牲陽極材へのSiの添加に着目し、犠牲陽極材面にろう付け性を与えるとともに、犠牲陽極材面の耐食性をも維持し得る犠牲陽極材の組成について試験、検討を行った結果、犠牲陽極材に通常のAl−Si系合金ろう材に比べてきわめて少量のSiを含有させることにより融点が低下し、ろう付け加熱中に犠牲陽極材中に僅かな液相が生じることによりろう付け性が向上すると同時に、犠牲陽極材はほとんど流動せず、犠牲陽極材の厚さが維持され耐食性の維持も可能であること、犠牲陽極材に多量のZnを共存させることによってさらに耐食性を高めることができることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいてさらに検討を加えた結果としてなされたものであり、その目的は、とくに、不活性ガス雰囲気中でのフッ化物系フラックスやセシウム化物系フラックスを用いたろう付けにより接合されるエバポレータ、コンデンサ、ラジエータやヒータコアなどのアルミニウム合金製自動車熱交換器用のチューブ材(クラッド板を曲成して溶接またはろう付けによりチューブ形状とし、犠牲陽極材に他の部材がろう付けされるもの、クラッド板の両端部が犠牲陽極材と当接するように曲げ加工してB型のチューブ形状としろう付けするもの)、および熱交換器と接続される配管材(押出クラッド管)として好適な成形性に優れ、犠牲陽極材面のろう付け性、耐食性に優れた自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材を提供することにある。
上記の目的を達成するための請求項1による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の面にAl−Si系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材が1.5%を越え3.0%未満のSiを含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする。
請求項2による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の面にAl−Si系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材が1.5%を越え3.0%未満のSiを含有するAl−Zn系合金であることを特徴とする。
請求項3による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材が1.5%を越え3.0%未満のSiを含有するAl−Zn系合金であることを特徴とする。
請求項4による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項2または3において、前記犠牲陽極材がSi:1.5%を越え3.0%未満、Zn:3.0〜10.0%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする。
請求項5による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記犠牲陽極材がさらにIn:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする。
請求項6による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記犠牲陽極材がさらにMg:4.0%以下を含有することを特徴とする。
請求項7による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記犠牲陽極材がさらにCu:0.05%以下、Ti:0.3%以下、Cr:0.2%以下、Zr:0.3%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
請求項8による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜7のいずれかにおいて、前記犠牲陽極材がさらにFe:0.15〜2.0%を含有することを特徴とする。
請求項9による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜8のいずれかにおいて、前記犠牲陽極材がさらにSr:0.005〜0.1%を含有することを特徴とする。
請求項10による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜9のいずれかにおいて、前記芯材がMn:0.3%を越え2.0%以下を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする。
請求項11による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜10のいずれかにおいて、前記芯材がさらにCu:0.1〜1.0%、Si:0.1〜1.5%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする。
請求項12による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜11記載のいずれかにおいて、前記芯材がさらにMg:0.5%以下を含有することを特徴とする。
請求項13による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜12のいずれかにおいて、前記芯材がさらにCr:0.5%以下、Zr:0.3%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
請求項14による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1、2、4〜13のいずれかにおいて、前記ろう材がSi:6〜13%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする。
請求項15による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1、2、4〜14のいずれかにおいて、前記ろう材がさらにFe:0.8〜2.0%、Zn:0.5〜5.0、Sr:0.005〜0.1%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
請求項16による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1、2、4〜15のいずれかにおいて、前記ろう材がさらにBi:0.2%以下、Be:0.1%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする。
請求項17による自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、請求項1、2、4〜16のいずれかにおいて、前記ろう材がさらにIn:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする。
本発明によれば、とくに、不活性ガス雰囲気中でのフッ化物系フラックスやセシウム化物系フラックスを用いたろう付けにより接合されるエバポレータ、コンデンサ、ラジエータやヒータコアなどのアルミニウム合金製自動車熱交換器用のチューブ材(クラッド板を曲成して溶接またはろう付けによりチューブ形状とし、犠牲陽極材に他の部材をろう付けするもの、クラッド板の両端部が犠牲陽極材と当接するように曲げ加工してB型のチューブ形状としろう付けするもの)、および熱交換器と接続される配管材(押出クラッド管)として好適な成形性に優れ、犠牲陽極材面のろう付け性、耐食性に優れた自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材が提供される。
本発明のアルミニウム合金クラッド材の組成およびその限定理由について説明する。
(犠牲陽極材)
Si:1.5%を越え3.0%未満
Siは、犠牲陽極材の融点を低下させ、ろう付け中に極わずか液相を生じさせることにより、ろうとして作用する。Siの好ましい含有量は1.5%を越え3.0%未満の範囲であり、1.5%以下ではろうとして有効に作用し難く、3.0%以上では、ろう付け加熱時に流動し易くなり、犠牲陽極材としての機能が損なわれる。Siのさらに好ましい含有範囲は2.0%を越え3.0%未満である。
Zn:3.0〜10.0%
Znは、犠牲陽極材の融点を低下させ、ろう付け中に極わずか液相を生じさせることにより、ろうとして作用する。また、犠牲陽極材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を発揮させ、芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。電位を貴化するSiを犠牲陽極材中に含有させるため、Znも相当量含有させることが必要である。Znの好ましい含有量は3.0〜10.0%の範囲であり、Znの含有量が3.0%未満ではその効果が小策く、10.0%を越えて含有すると犠牲陽極材の自己耐食性が低下する。Znのさらに好ましい含有範囲は4.0〜6.0%である。
In:0.001〜0.05%
Inは、微量の添加によって犠牲陽極材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を確実に発揮させ、芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。Inの好ましい含有量は0.001〜0.05%の範囲であり、0.001%未満ではその効果が十分でなく、0.05%を越えると、自己耐食性および圧延加工性が低下する。Inのさらに好ましい含有範囲は0.01〜0.03%である。
Sn:0.001〜0.05%
Snは、微量の添加によって犠牲陽極材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を確実に発揮させ、芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。Snの好ましい含有量は0.001〜0.05%の範囲であり、0.001%未満ではその効果が十分でなく、0.05%を越えると、自己耐食性および圧延加工性が低下する。Snのさらに好ましい含有範囲は0.01〜0.03%である。
Mg:4.0%以下
Mgは、熱交換器などのろう付け組み立て時、ろう付け加熱中に芯材へ拡散し、芯材中のSiやCuとともに強度を高めるよう機能する。犠牲陽極材に残存したMgはSiとともに犠牲陽極材の強度を高め、これらの効果によってクラッド材の強度を改善する。Mgの好ましい含有量は4.0%以下の範囲であり、4.0%を越えると圧延加工性が低下する。Mgのさらに好ましい含有範囲は2.5%以下である。
Cu:0.05%以下
Cuは、犠牲陽極材の電位を貴にし、犠牲陽極材へのZnの添加による自己耐食性の低下を抑制する。Cuの好ましい含有量は0.05%以下の範囲であり、0.05%を越えると、犠牲陽極材と芯材との間の電位差を十分に確保することができず、芯材に対する犠牲陽極効果が低下する。
Cr:0.2%以下、Zr:0.3%以下
CrおよびZrは、犠牲陽極材の結晶粒度を粗大にして、ろう付け加熱中の芯材のCuの粒界拡散を抑制する。CrおよびZrがそれぞれ0.2%および0.3%を越えると、鋳造時に巨大な晶出物が生成し、健全な板材の製造が困難となる。
Ti:0.3%以下
Tiは、材料の板厚方向に濃度の高い領域と低い領域に分かれ、これらの領域が層状となって交互に分布し、Ti濃度の低い領域が高い領域に比べ優先的に腐食することにより、腐食形態を層状にする効果を有し、この効果により板厚方向への粒界腐食の進行が妨げられ材料の耐孔食性が向上する。Tiの好ましい含有量は0.3%以下の範囲であり、0.3%を越えると、鋳造が困難となり、また加工性が低下して健全な材料の製造が困難となる。
Fe:0.15〜2.0%
Feは、Al−Fe−Si系化合物を形成し、Siの固溶度を低下することにより液相率を低下させ、ろうの流動を抑制する。また、Feは、Al−Fe系やAl−Fe−Si系化合物を形成し、それら化合物が腐食の起点となって孔食が分散されることにより耐食性を向上させる。Feの好ましい含有量は0.15〜2.0%の範囲であり、0.15%未満ではその効果が小さく、2.0%を越えると犠牲陽極材の自己耐食性が低下する。Feのさらに好ましい含有範囲は0.7%を越え1.2%以下である。
Sr:0.005〜0.1%
Srは、犠牲陽極材中におけるSi粒子の存在形態をより微細且つ均一にするよう機能し、その結果ろう付け性を向上させる。Srの好ましい含有量は0.005〜0.1%の範囲であり、0.005%未満ではその効果が十分でなく、0.1%を越えて含有してもその効果が飽和する。なお、本発明においては、犠牲陽極材中にNa:1〜100ppm、Sb:0.001〜0.5%が添加されていてもその効果に影響を与えることはない。
(芯材)
Mn:0.3〜2.0%
Mnは、芯材の強度を向上させるとともに、芯材の電位を貴にして犠牲陽極材との電位差を大きくして耐食性を高めるよう機能する。Mnの好ましい含有量は0.3〜2.0%の範囲であり、0.3%未満ではその効果が小さく、2.0%を越えると、鋳造時に粗大な化合物が生成し圧延加工性が低下して健全な板材(芯材)が得難くなる。Mnのさらに好ましい含有範囲は0.8〜1.5%である。
Cu:0.1〜1.0%
Cuは、芯材の強度を向上させるとともに、芯材の電位を貴にし、犠牲陽極材のとの電位差およびろう材との電位差を大きくして耐食性を向上させるよう機能する。また、ろう付け時に犠牲陽極材およびろう材に拡散して、犠牲陽極材およびろう材の厚さ方向になだらかなCuの濃度勾配を形成させ、この結果、芯材側の電位は貴となり、犠牲陽極材の表面側およびろう材の表面側の電位は卑となって、犠牲陽極材およびろう材の厚さ方向になだらかな電位勾配が形成されるため、腐食形態が全面腐食型となる。Cuの好ましい含有量は0.1〜1.0%の範囲であり、0.1%未満ではその効果が小さく、1.0%を越えると芯材の耐食性が低下し、また融点が低下してろう付け時に局部的な溶融が生じ易くなる。Cuのさらに好ましい含有範囲は0.4〜0.7%である。
Si:0.1〜1.5%
Siは、芯材の強度を向上させる効果を有する。とくに、犠牲陽極材にMgが含有する場合、Siはろう付け中に犠牲陽極材から拡散してくるMgと共存してMgと結合してMg2 Siを生成することにより、ろう付け後に時効硬化が生じ、強度がさらに向上する。Siの好ましい含有量は0.1〜1.5%の範囲であり、0.1%未満ではその効果が小さく、1.5%を越えると、芯材の耐食性が低下するとともに、芯材の融点を下げ、ろう付け時に局部溶融が生じ易くなる。Siのさらに好ましい含有範囲は0.3〜1.0%である。
Mg:0.5%以下
Mgは、芯材の強度を向上させる。0.5%を越えて含有すると、フッ化物系フラックスを用いて不活性ガス雰囲気中でろう付けを行う場合、ろう付け時にMgがフッ化物系フラックスと反応してMgのフッ化物が生成し、ろう付け性を低下させるとともに、ろう付け部の外観が悪くなる。Mgのさらに好ましい含有範囲は0.15%以下である。
Cr:0.5%以下、Zr:0.3%以下
CrおよびZrは、芯材の結晶粒度を粗大にし、ろう付け加熱中のろう材中のSiの粒界拡散を抑制する。CrおよびZrがそれぞれ0.5%および0.3%を越えると、鋳造時に巨大晶出物が生成し、加工性が低下して健全な板材の製造が困難となる。
(ろう材)
ろう材としては、通常用いられているAl−Si系合金、好ましくはSi:6〜13%を含む合金が使用される。Siが6%未満では流動性が低下してろう材としての作用が不十分となり、Siが13%を越えると、健全な材料の製造が困難となる。
Fe:0.8〜2.0%
Feは、Al−Fe系、Al−Fe−Si系化合物を形成し、これらの化合物が腐食の起点となるため孔食が分散し、外面の耐食性が向上する。Feの好ましい含有範囲は0.8〜2.0%であり、0.8%未満ではその効果が小さく、2.0%を越えると、外面の耐食性が低下する。
Zn:0.5〜5.0%
Znは、上記の範囲で含有されても本発明の効果を損なうことはない。5.0%を越えて含有すると、自己耐食性が低下する。
Sr:0.005〜0.1%
Srは、ろう材中のSi粒子を微細かつ均一に分散させる効果がある。Si粒子が微細かつ均一に分散することにより、ろうの溶融が均一になり、ろう付け性が改善される。Srの好ましい含有量は0.005〜0.1%の範囲であり、0.005%未満ではその効果が小さく、0.1%を越えると、その効果が飽和する。
Bi:0.2%以下、Be:0.1%以下
BiおよびBeは、上記の範囲で含有されても本発明の効果を損なうことはない。BiおよびBeが0.2%および0.1%を越えるとろう付け性が低下する。
In:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%
InおよびSnは、上記の範囲で含有されても本発明の効果を損なうことはない。InおよびSnが0.05%を越えると、ろう材の自己耐食性および圧延加工性が低下する。なお、本発明においては、Na:1〜100ppm、Sb:0.001〜0.5%が含有されていても、本発明の効果に影響することはない。
本発明のアルミニウム合金クラッド材は、芯材、犠牲陽極材およびAl−Si系ろう材を構成するアルミニウム合金を、たとえば、連続鋳造により造塊し、必要に応じて均質化処理後、犠牲陽極材用およびろう材用アルミニウム合金の鋳塊については、それぞれ所定厚さまで熱間圧延し、ついで、芯材用アルミニウム合金鋳塊と、犠牲陽極用アルミニウム合金およびろう材用アルミニウム合金を組み合わせて、常法に従って熱間圧延によりクラッド材とし、その後冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延により所定の厚さとすることによって製造される。
なお、本発明は、芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材が1.5%を越え3.0%未満のSiを含有するAl−Zn系合金である自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材を、図4に示すように、犠牲陽極材面にクラッドフィン材をろう付け接合する場合にも有効である。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。これらの実施例は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
連続鋳造によって表1に示す組成を有する芯材用合金、表2に示す組成を有する犠牲陽極材用合金、および表3に示す組成を有するろう材用合金を造塊し、得られた鋳塊のうち、芯材用合金および犠牲陽極材用合金の鋳塊については均質化処理を行った。
ついで、犠牲陽極材用合金およびろう材用合金の鋳塊を所定の厚さまで熱間圧延し、これらの熱間圧延板と芯材用合金の鋳塊とを合わせ材として熱間圧延しクラッド材を得た。その後、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延によって厚さ0.20mmの板材(クラッド材、調質H14)を得た。クラッド材の構成は、犠牲陽極材は0.025〜0.050mm、ろう材は0.020mmである。
Figure 2005307251
Figure 2005307251
Figure 2005307251
得られたクラッド材を試験材として、以下の方法により(1)クラッド性(圧延性)、(2)ろう付け性、(3)犠牲陽極材の耐食性を評価した。結果を表4〜6に示す。
クラッド性(圧延性):犠牲陽極材、芯材、ろう材の製造、あるいはクラッド材の製造において、圧延加工性がわるく健全な材料の製造ができないものをクラッド性不良(×)とし、健全なクラッド材が得られたものをクラッド性良好(○)とする。
ろう付け性:得られたクラッド材(試験材)と、3003合金板(厚さ1.0mm)を図5に示すように組み合わせて逆T字試験片を作製し、フッ化物系フラックスを塗布して、窒素ガス雰囲気中で600℃(材料温度)のろう付け温度に加熱し接合状態を評価した。接合状態が良好なものは○、接合不良や局部溶融が生じたものは×とした。
犠牲陽極材の耐食性:得られたクラッド材(試験材)を、単板のままフッ化物系フラックスを塗布して窒素ガス雰囲気中で600℃(材料温度)のろう付け温度に加熱した後、犠牲陽極材面について下記の条件で腐食試験を行った。
腐食液:Cl- :195ppm、SO4 2- :60ppm、Cu2+:1pm、Fe3+:30ppm
比液量:5mL/cm2
シール:ろう材面と端面をシリコン樹脂でシールした。
試験方法:88℃に加熱した腐食液中に8時間浸漬した後、冷却して25℃で16時間保持するサイクルを4か月間繰り返し、最大腐食深さを測定した。
Figure 2005307251
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表4〜6にみられるように、本発明に従う試験 No.1〜101はいずれも、クラッド性(圧延性)、ろう付け性に優れ、犠牲陽極材の腐食試験においても最大腐食深さはいずれも0.1mm未満であり、良好な耐食性をそなえている。
比較例1
連続鋳造によって表7に示す組成を有する芯材用合金、表8に示す組成を有する犠牲陽極材用合金、および表9に示す組成を有するろう材用合金を造塊し、芯材用合金および犠牲陽極材用合金の鋳塊を均質化処理した。
ついで、犠牲陽極材用合金の鋳塊およびろう材用合金の鋳塊を所定の厚さまで熱間圧延し、これらの熱間圧延板と芯材用合金の鋳塊とを合わせ材として熱間圧延し、クラッド材を得た。その後、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延によって厚さ0.20mmの板材(クラッド材、調質H14)を得た。クラッド材の構成は、犠牲陽極材は0.040mm、ろう材は0.020mmである。なお、表7〜9において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
得られたクラッド材を試験材として、実施例1と同じ方法で(1)クラッド性(圧延性)、(2)ろう付け性、(3)犠牲陽極材の耐食性を評価した。結果を表10に示す。
Figure 2005307251
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表10に示すように、試験材No.102は芯材のMn量が少ないため、犠牲陽極材の耐食性が劣る。試験材No.103は芯材のMn量が多いため、芯材の製造において圧延加工性がわるく、健全な芯材の製造が困難となった結果、クラッド性不良となった。試験材No.104は芯材のCu量が多いため、ろう付け時に芯材に局部溶融が生じろう付け性が低下した。試験材No.105は芯材のSi量が多いため、ろう付け時に芯材に局部溶融が生じろう付け性が低下した。試験材No.106は芯材のMg量が多いため、ろう付け性が劣り接合不良が生じた。
試験材No.107は犠牲陽極材のSi量が少ないため、ろう付け性が劣る。試験材N.108は犠牲陽極材のSi量が多いため、犠牲陽極材が流動して犠牲陽極材としての機能が失われ耐食性が劣る。試験材No.109は犠牲陽極材のZn量が多いため、犠牲陽極材の消耗が早くなり耐食性が低下している。試験材No.110および111は犠牲陽極材のIn量およびSn量が多いため、いずれも犠牲陽極材の製造において圧延加工性がわるく、健全な犠牲陽極材の製造が困難となった結果、クラッド性不良となった。
試験材No.112は犠牲陽極材のFe量が多いため、自己腐食性が多くなり耐食性が劣る。試験材No.113はろう材のSi量が多いため、圧延性が劣り、健全なクラッド材が得られなかった。
アルミニウム合金クラッド材から製造された従来のチューブ材示す断面図である。 本発明によるアルミニウム合金クラッド材から製造されたチューブ材(B型のチューブ形状)の実施例を示す断面図である 本発明によるアルミニウム合金クラッド材から製造されたチューブ材の他の実施例を示す断面図である。 本発明によるアルミニウム合金クラッド材とクラッドフィンとの接合を示す断面図である。 実施例1で作製する逆T字試験片を示す図である。
符号の説明
1 チューブ材
2 B型のチューブ形状
3 クラッドフィン材

Claims (17)

  1. 芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の面にAl−Si系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材が1.5%(質量%、以下同じ)を越え3.0%未満のSiを含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  2. 芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の面にAl−Si系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材が1.5%を越え3.0%未満のSiを含有するAl−Zn系合金であることを特徴とする自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  3. 芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材が1.5%を越え3.0%未満のSiを含有するAl−Zn系合金であることを特徴とする自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  4. 前記犠牲陽極材がSi:1.5%を越え3.0%未満、Zn:3.0〜10.0%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項2または3記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  5. 前記犠牲陽極材がさらにIn:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  6. 前記犠牲陽極材がさらにMg:4.0%以下を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  7. 前記犠牲陽極材がさらにCu:0.05%以下、Ti:0.3%以下、Cr:0.2%以下、Zr:0.3%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  8. 前記犠牲陽極材がさらにFe:0.15〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  9. 前記犠牲陽極材がさらにSr:0.005〜0.1%を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  10. 前記芯材がMn:0.3%を越え2.0%以下を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  11. 前記芯材がさらにCu:0.1〜1.0%、Si:0.1〜1.5%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  12. 前記芯材がさらにMg:0.5%以下を含有することを特徴とする請求項1〜11記載のいずれかに自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  13. 前記芯材がさらにCr:0.5%以下、Zr:0.3%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  14. 前記ろう材がSi:6〜13%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1、2、4〜13のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  15. 前記ろう材がさらにFe:0.8〜2.0%、Zn:0.5〜5.0、Sr:0.005〜0.1%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1、2、4〜14のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  16. 前記ろう材がさらにBi:0.2%以下、Be:0.1%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、2、4〜15のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  17. 前記ろう材がさらにIn:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、2、4〜16のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
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