JP2005306204A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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【課題】 切り増しから切り戻しへ操舵方向が変化するときの操舵力の抜け感を防止し、自然な操舵フィーリングが得られる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】 コントローラ13は、操舵の切り始めと切り終わりとを判断する操舵状態判断部17と、検出された操舵トルクが過渡的なトルクであるとき、逆アシストトルクを発生させるよう、モータ5を補償制御する補償制御手段と、この補償制御手段の補償制御量を、操舵の切り始めでは大きく、操舵の切り終わりでは小さくする補償制御量変更部18と、を備える。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ドライバの操舵負担を軽減する電動パワーステアリング装置の技術分野に属する。
従来の電動パワーステアリング装置では、切り増し操舵時よりも切り戻し操舵時にアシストトルクを大きくすることにより、切り過ぎ抑制と操舵フィーリング向上との両立を狙っている(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−48998号公報
しかしながら、上記従来技術にあっては、切り増し操舵時はハンドルが重く、切り戻し操舵時はハンドルが軽くなるようにアシストトルクを制御しているため、切り増しから切り戻しへ操舵方向が変化するとき、操舵力の抜け感が発生し、ドライバに違和感を与えることがある。さらに、車両挙動が限界付近の場合は、操舵力の抜けにより操舵角が過剰入力され、車両挙動の不安定化を招く可能性があるという問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、切り増しから切り戻しへ操舵方向が変化するときの操舵力の抜け感を防止し、自然な操舵フィーリングが得られる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明では、ステアリング操作手段に加わる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、舵取り機構にドライバの操舵力を補助するアシストトルクを出力するモータと、検出された操舵トルクに応じたアシストトルクが得られるよう、前記モータを駆動制御する操舵制御手段と、を備えた電動パワーステアリング装置において、
操舵の切り始めと切り終わりとを判断する操舵状態判断手段と、
検出された操舵トルクが過渡的なトルクであるとき、操舵トルクを増加させる方向へ逆アシストトルクを発生させるよう、前記モータを補償制御する補償制御手段と、
この補償制御手段の補償制御量を、操舵の切り始めでは大きく、操舵の切り終わりでは小さくする補償制御量変更手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、操舵の切り始めではアシストトルクが小さくなり、操舵の終わりではアシストトルクが大きくなるため、切り増しから切り戻しへ操舵方向が変化するときの操舵力の抜けを防止でき、自然な操舵フィーリングが得られる。
以下、本発明の電動パワーステアリング装置を実施するための最良の形態を、実施例1〜3に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の電動パワーステアリング装置を適用した車両用操舵装置の構成図である。
ドライバの舵取り操作用のハンドル(ステアリング操作手段)1と、舵取り動作を行う舵取り機構2とを連結する操舵軸3に、ハンドル1に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ(操舵トルク検出手段)4とドライバの操舵力を補助するモータ5とが配置されている。
前記ハンドル1は、図示しない車室内部のドライバと対向する位置に、軸周りに回動可能に設けられている。舵取り機構2は、操舵軸3の下端に一体形成されたピニオン6と、これに噛合するラック軸7とを備えるラック&ピニオン式の舵取り装置により構成されている。ラック軸7は、図示しない車両前部に、左右方向摺動可能に固定されており、その両端は、左右のタイロッド8,9を介して操向用の転舵輪10,11に連結されている。
前記モータ5は、モータ5の発生トルクを操舵軸3の回転トルクに変換する減速機12を介して、操舵軸3に結合されている。このモータ5に供給されるモータ電流は、コントローラ(操舵制御手段)13により制御されている。
続いて、図2の制御ブロック図を加えて、実施例1の制御系を説明する。
ドライバによりハンドル1が操舵されると、ハンドル1と機械的に連結された転舵輪10,11が操向される。このとき、トルクセンサ4に入力される捩れ方向の負荷は、操舵トルクとしてコントローラ13へ入力される。さらに、このコントローラ13には、車両の走行速度を検出する車速センサ14等の信号が与えられる。
コントローラ13は、モータ5の回転速度を推定するためのモータ端子間電圧センサ13aやモータ電流センサ13bが内蔵されている。コントローラ13の出力は、モータ5に与えられ、コントローラ13は、操舵トルク、モータの回転速度、車速等を用いて、モータ5の駆動電流を算出し、算出された駆動電流を内蔵するモータ電流センサ13bによりモータ電流を参照しつつ、モータ5を制御駆動する。モータ5へ供給される電源は、バッテリ15により与えられる。
コントローラ13では、検出された操舵トルクを、位相補償器16に通すことにより、過渡的なトルク変化に対して、操舵トルクを増大させる方向(逆アシスト)へモータ5を駆動する(補償制御手段に相当)。位相補償器16は、車速、操舵トルクや操舵速度に応じてその特性を変更できるものとする。
ここで、位相補償器16を下記の式(1)に示すように、1次進み/1次遅れで構成した場合、その周波数特性は、図3のようになる。
C(S)=(1−τnumS)/(1+τdenS) …(1)
そして、この位相補償器16の出力は、過渡的な入力、例えば、ステップ状のトルク入力があった場合、図4のような特性となる。図4において、出力の下方へのゲインは、1次進みの時定数τnumで決まる。また、出力の遅れは、1次遅れの時定数τdenで決まることになる。
この出力の時系列推移から分かるように、コントローラ13は、目標電流値として、過渡入力が入った直後は、ハンドル1を重くする方向へ逆アシストを実施し、時間の推移とともにハンドル1を軽くする方向へアシストを実施することとなる。
続いて、図5を用いてコントローラ13の操舵状態判断部(操舵状態判断手段)17と補償制御量変更部(補償制御量変更手段)18について説明する。
操舵状態判断部17には、モータ速度と操舵トルクが入力され、まず、操舵トルクが微分器17aにより微分され、操舵トルク微分値が算出される。モータ速度と操舵トルク微分値は、それぞれ所定の不感帯手段17b,17cを通過した後、積分器17dにより乗算され、補償制御量変更部18へ出力される。すなわち、モータ速度と操舵トルク微分値が同じ方向の場合は、正が出力され、逆の場合は負が出力されることになる。
補償制御量変更部18は、操舵状態判断部17の出力値が正の場合、補償制御変更量を1とし、位相補償部16の出力をそのまま出力する。操舵状態判断部17の出力値が負の場合、補償制御変更量をゼロとし、位相補償部16の出力をゼロとする。
次に、作用を説明する。
[補償制御量変更作用]
図6に、実際の操舵時のデータを示す。
操舵の切り始めは、モータ速度(ハンドル角微分と同じ)と操舵トルク微分の方向が同じとなるので、コントローラ13では、算出した目標電流値に位相補償部16で算出した補償制御量がそのまま加算される。次の操舵が止まる過程では、モータ速度と操舵トルク微分の方向が異なるので、位相補償部16の制御量はゼロに補正され、補償制御が実施されない。
続いて、操舵停止後、ハンドル1を中立方向へ切り始めると、モータ速度(ハンドル角微分と同じ)と操舵トルク微分の方向が同じとなるので、コントローラ13では、算出した目標電流値に位相補償部16で算出した補償制御量がそのまま加算される。最後の操舵が中立にて止まる過程では、モータ速度と操舵トルク微分の方向が異なるので、位相補償部16の制御量はゼロに補正され、補償制御が実施されない。
すなわち、実施例1では、直進時に微小修正舵を行った場合に、切り始めにおいては逆方向へのアシストが行われ、ハンドル1が重くなるため、ドライバへ車両が直進するハンドル位置を教えることができる(中立感を出すことができる)。さらに、操舵の切り終わりにおいては、タイヤ入力に応じた反力がドライバへ伝わり、自然な操舵フィーリングを実現できる。
次に、効果を説明する。
実施例1の電動パワーステアリング装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
(1) コントローラ13は、操舵の切り始めと切り終わりとを判断する操舵状態判断部17と、検出された操舵トルクが過渡的なトルクであるとき、逆アシストトルクを発生させるよう、モータ5を補償制御する補償制御手段と、この補償制御手段の補償制御量を、操舵の切り始めでは大きく、操舵の切り終わりでは小さくする補償制御量変更部18と、を備えるため、切り増しから切り戻しへと操舵方向が変化するとき、操舵力の抜けが発生せず、自然な操舵フィーリングが得られる。よって、車両挙動が限界付近の場合、操舵角の過剰入力が抑制され、車両挙動が不安定となるのを防止できる。
(2) 操舵状態判断部17は、操舵トルクの時間変化量とハンドル角の時間変化量とに基づいて、操舵の切り始めと切り終わりとを判断するため、切り始めと切り終わりを確実に判断できる。
実施例2では、切り終わりのとき、補償制御量を負とする点で実施例1と異なり、他の構成は実施例1と同じであるため、構成の説明は省略する。
図7は、実施例2の補償制御量変更部18の補償制御変更量特性を示す図であり、補償制御量変更部18は、操舵状態判断部17の出力値(モータ速度と操舵トルク微分値の積)が正の場合、補償制御変更量を1とする。一方、操舵状態判断部17の出力値が負の場合、補償制御変更量を−1とする。
次に、作用を説明する。
実施例2では、コントローラ13において、モータ速度と操舵トルク微分値の積が負の場合、すなわち、操舵が止まる時に、算出した目標電流値に対し、負の補償制御量が加算されることになる。従って、切り始めにおいては逆方向へのアシストが行われてハンドル1が重くなるため、ドライバへ車両が直進するハンドル位置を教えることができる(中立感を出すことができる)。
さらに、切り終わりにおいては、補償制御量が負となるので、ハンドル1が軽くなり、そこから中立方位へ操舵を開始すると位相補償量16は正となり、ハンドル1は重くなる。従って、スラローム操舵や直線走行時に微小な操舵を繰り返し場合において、操舵停止から操舵開始時の操舵力差、いわゆる操保舵力を自由に設定できる。
次に、効果を説明する。
実施例2の電動パワーステアリング装置にあっては、実施例1の効果(1),(2)に加え、以下の効果が得られる。
(3) 補償制御量変更部17は、操舵の切り終わりと判断されたとき、補償制御量を負の値とするため、スラローム操舵や直線走行時に微小な操舵を繰り返す場合において、操舵停止から操舵開始時の操舵力差、いわゆる操保舵力を自由に設定できる。
実施例3では、補償制御量を、車速、操舵トルクおよび操舵角(ハンドル角)に応じて変化させる点で実施例2と異なり、他の構成は実施例1,2と同一であるため、構成の説明は省略する。
図8は、車速に応じた補償制御変更量特性を示す図であり、補償制御量変更部18は、車速が高いほど、補償制御変更量を大きくする。なお、補償制御変更量の上限値は1に設定されている。
図9は、操舵トルクに応じた補償制御変更量特性を示す図であり、補償制御量変更部18は、操舵トルクが大きいほど、補償制御変更量を大きくする。なお、補償制御変更量の上限値は1に設定されている。
図10は、操舵角に応じた補償制御変更量特性を示す図であり、補償制御量変更部18は、操舵角が大きいほど、補償制御変更量を大きくする。なお、補償制御変更量の上限値は1に設定されている。
補償制御量変更部18では、車速、操舵トルクおよび操舵角に応じて3つの補償制御変更量を算出し、最終的に3つの補償制御変更量を乗算して最終的な補償制御変更量を設定する。
次に、作用を説明する。
実施例3では、車速が高いほど補償制御量が増加するため、車速が高いほどハンドル1が重くなり、高速走行時の中立をしっかりさせることができる。また、操舵トルクや操舵角に応じて補償制御量を減らすことにより、早い操舵時に操舵力が重くなっているときに、不要な操舵力変化の発生を防止できる。
次に、効果を説明する。
実施例3の電動パワーステアリング装置にあっては、実施例1の効果(1),(2)、実施例2の効果(3)に加え、以下の効果が得られる。
(4) 補償制御量変更部17は、操舵トルク、操舵角および車速に応じて補償制御量を変更するため、操舵停止から操舵開始時の操舵力差、いわゆる操保舵力を走行状態に合わせて自由に設定できる。
(他の実施例)
以上、本発明を実施する最良の形態を、実施例1〜3に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例1〜3に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、電動パワーステアリング装置においては、モータとハンドルとは機械的に連結された構成であるため、実施例1〜3では、モータの回転速度をハンドル回転速度としているが、操舵軸にハンドル回転速度センサを取り付け、または操舵軸にハンドル角センサを取り付け、検出値を微分することで、ハンドル回転速度を算出する構成としてもよい。さらに、モータにモータ角度センサを取り付け、検出値を微分してモータ回転速度を算出する構成や、モータにモータ回転速度センサを取り付ける構成としてもよい。
また、実施例3では、操舵制御変更量を、操舵トルク、操舵角および車速に応じて変化させたが、こららのうち1つまたは2つに応じて変化させる構成としてもよい。
実施例1の電動パワーステアリング装置を適用した車両用操舵装置の構成図である。 実施例1の制御ブロック図である。 位相補償器の周波数特性図である。 位相補償器の入出力特性図である。 操舵状態判断部と補償制御量変更部の詳細な制御ブロック図である。 実施例1の補償制御量変更作用を示す図である。 実施例2の補償制御変更量特性を示す図である。 実施例3の車速に応じた補償制御変更量特性を示す図である。 実施例3の操舵トルクに応じた補償制御変更量特性を示す図である。 実施例3の操舵角に応じた補償制御変更量特性を示す図である。
符号の説明
1 ハンドル
2 舵取り機構
3 操舵軸
4 トルクセンサ
5 モータ
6 ピニオン
7 ラック軸
8,9 タイロッド
10,11 転舵輪
12 減速機
13 コントローラ
13a モータ端子間電圧センサ
13b モータ電流センサ
14 車速センサ
15 バッテリ
16 位相補償器
17 操舵状態判断部
18 補償制御量変更部

Claims (4)

  1. ステアリング操作手段に加わる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
    舵取り機構にドライバの操舵力を補助するアシストトルクを出力するモータと、
    検出された操舵トルクに応じたアシストトルクが得られるよう、前記モータを駆動制御する操舵制御手段と、
    を備えた電動パワーステアリング装置において、
    操舵の切り始めと切り終わりとを判断する操舵状態判断手段と、
    検出された操舵トルクが過渡的なトルクであるとき、操舵トルクを増加させる方向へ逆アシストトルクを発生させるよう、前記モータを補償制御する補償制御手段と、
    この補償制御手段の補償制御量を、操舵の切り始めでは大きく、操舵の切り終わりでは小さくする補償制御量変更手段と、
    を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記ステアリング操作手段の操舵角を検出する操舵角検出手段を設け、
    前記操舵状態判断手段は、操舵トルクの時間変化量と操舵角の時間変化量とに基づいて、操舵の切り始めと切り終わりとを判断することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記補償制御量変更手段は、操舵の切り終わりと判断されたとき、補償制御量を負の値とすることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記補償制御量変更手段は、操舵トルク、操舵角または車速の少なくとも1つに応じて補償制御量を変更することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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