JP2005306033A - ポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム及びその製造方法 - Google Patents

ポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 多孔性でない極薄のPTFE樹脂フィルムを得ることができる方法を提供する。
【解決手段】
多孔性PTFE樹脂膜を実質的に無孔にするまで加熱処理を行うことによりPTFE樹脂フィルムを製造するPTFE樹脂フィルム製造方法であって、前記多孔性PTFE樹脂膜は、実質的に結節を有しないフィブリル化PTFE樹脂膜であることを特徴とするPTFE樹脂フィルム製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]樹脂フィルムの製造方法に関する。
PTFE樹脂フィルムの製造方法としては、圧縮成形等によるブロック焼成体を切削するスカイビンク製法が知られている。スカイビンク製法を用いて得られたPTFE樹脂フィルムは、しかしながら、充分に薄膜化することができないという問題があった。
PTFE樹脂フィルムの製造方法として、PTFE樹脂液状組成物を基材上に塗布し乾燥して得られるフィルムを基材から剥離するキャスティング製法等が知られている。キャスティング製法を用いて得られたPTFE樹脂フィルムは、しかしながら、引張強度が低く、若干白濁するという問題があった。
PTFE樹脂フィルムの製造方法として、圧延ロールを用いてPTFEのペースト押出成形品を延伸し、成形助剤を乾燥除去した後、焼結する方法等が知られている。この方法を用いて得られたPTFE樹脂フィルムは、しかしながら、薄膜化が困難であるという問題があった。
PTFE樹脂フィルムの製造方法として、PTFEファインパウダーを材料とする成形体を延伸することにより得られる延伸多孔質PTFEをPTFEの融点未満の温度で圧縮した後に、この融点以上の温度で圧縮することからなるPTFE薄膜の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法では、しかしながら、圧縮操作が必須であり、また、各圧縮操作の際、ゴミが取り込まれ、得られるPTFE薄膜の品質が低下するという問題があった。
PTFE樹脂フィルムの製造方法として、未焼成PTFEを延伸した後、PTFEの融点より高い温度下で加熱することからなるPTFE薄膜の製造方法、半焼成PTFEを延伸した後、PTFE焼成体の融点より高い温度にて加熱することからなるPTFE薄膜の製造方法等が開示されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。これらの製造方法から得られるPTFE薄膜は、しかしながら、多孔性であり、ガス分離膜等、気密性が求められる用途には使用できないものであった。
特表2002−275280号公報 特表平11−501961号公報 特開平5−202217号公報
本発明は、上述の現状に鑑み、多孔性でない極薄のPTFE樹脂フィルムを得ることができる方法を提供することを目的とする。
本発明は、多孔性PTFE樹脂膜を実質的に無孔にするまで加熱処理を行うことによりPTFE樹脂フィルムを製造するPTFE樹脂フィルム製造方法であって、前記多孔性PTFE樹脂膜は、実質的に結節を有しないフィブリル化PTFE樹脂膜であることを特徴とするPTFE樹脂フィルム製造方法である。
本発明は、多孔性PTFE樹脂膜を実質的に無孔にするまで加熱処理を行うことによりPTFE樹脂フィルムを製造するPTFE樹脂フィルム製造方法であって、上記多孔性PTFE樹脂膜は、(1)倍率〔E〕が10〜30倍である一軸延伸を行うことにより一軸延伸膜を得る工程と、(2)倍率〔E〕が20〜50倍である二軸延伸を行うことにより二軸延伸膜を得る工程とを含む延伸方法により得られた延伸PTFE樹脂膜であり、上記一軸延伸の倍率〔E〕と上記二軸延伸の倍率〔E〕との乗数〔E×E〕は、400〜850であることを特徴とするPTFE樹脂フィルム製造方法である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法は、多孔性PTFE樹脂膜を実質的に無孔にするまで加熱処理を行うことによりPTFE樹脂フィルムを製造することよりなるものである。
本明細書において、上記「多孔性PTFE樹脂膜」とは、実質的に無孔でない膜であって、PTFE樹脂からなるものを意味する。
上記「実質的に無孔でない」とは、探傷液をPTFE樹脂膜、PTFE樹脂フィルム等に滴下することよりなる浸透探傷試験を行った際、探傷液がフィルムを浸透すると判断することができることを意味する。本発明において、上記探傷液としては、赤色染料を有機溶剤に溶かした液体(商品名:水洗性浸透液R−3B(NT)、栄進化学社製)を用いる。
本明細書において、上記PTFE樹脂は、ペースト押出成形加工をすることができるテトラフルオロエチレンの乳化重合樹脂である。上記PTFE樹脂としては、テトラフルオロエチレン単独重合体[TFEホモポリマー]及び/又は変性ポリテトラフルオロエチレン[変性PTFE]からなる樹脂が挙げられる。
本明細書において、上記「変性PTFE」は、テトラフルオロエチレン[TFE]と、TFE以外の微量単量体との共重合体であって、ペースト押出成形加工をすることができる乳化重合体である。
上記微量単量体としては、例えば、フルオロオレフィン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[PMVE]、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]等のフッ素化(アルキルビニルエーテル)、環式のフッ素化された単量体、パーフルオロ(アルキルエチレン)等が挙げられる。上記微量単量体としては、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]等が好ましい。
変性PTFEにおいて、上記微量単量体に由来する微量単量体単位の全単量体単位に占める含有率は、0.001〜2モル%の範囲であることが好ましい。
本明細書において、上記微量単量体単位等の「単量体単位」は、変性PTFEの分子構造上の一部分であって、対応する単量体に由来する部分を意味する。例えば、TFE単位は、変性PTFEの分子構造上の一部分であって、TFEに由来する部分であり、−(CF2−CF2)−で表される。上記「全単量体単位」は、変性PTFEの分子構造上、単量体に由来する部分の全てである。本明細書において、「全単量体単位に占める微量単量体単位の含有率(モル%)」とは、上記「全単量体単位」が由来する単量体、即ち、変性PTFEを構成することとなった単量体全量に占める、上記微量単量体単位が由来する微量単量体のモル分率(モル%)を意味する。
上記PTFE樹脂としては、溶融流動粘度がTFEホモポリマーよりも低く、無孔膜を得やすい点で、変性PTFEからなる樹脂が好ましい場合もあるが、結晶度が高いので、結節が少なくフィブリルが多いフィブリル化PTFE樹脂膜が得られやすい点で、TFEホモポリマーからなる樹脂が好ましい。
上記多孔性PTFE樹脂膜は、実質的に結節を有しないフィブリル化PTFE樹脂膜であることが好ましい。
本明細書において、上記フィブリル化PTFE樹脂膜とは、フィブリル(繊維質構造)を有するPTFE樹脂膜を意味する。
上記フィブリルとしては、実質的に無孔にしやすく、また、薄層化しやすい点で、平均フィブリル径が0.05μm以上、0.2μm以下であるものが好ましい。
本明細書において、上記平均フィブリル径は、走査型電子顕微鏡[SEM]で撮影した写真を画像処理装置に取り込み、結節とフィブリルとに分離し、フィブリルのみからなる像について演算処理して求めた値である。
上記フィブリル化PTFE樹脂膜は、薄膜化が容易となる点で、膜厚が0.5μm以上、50μm以下であるものが好ましい。上記膜厚の好ましい下限は0.6μmであり、上記膜厚の好ましい上限は30μmである。
本明細書において、膜厚は、1D−110MH型膜厚計(ミツトヨ社製)を用い、上記樹脂膜を5枚重ねて、2cm四方の測定面に100gの荷重(push pull Gauge型番PP−705−1000、Teclock社製にて荷重)を掛けて全体の膜厚を測定し、その膜厚を5で除して求めた値である。
上記フィブリル化PTFE樹脂膜は、実質的に無孔でなく、上述の浸透探傷試験を行った際、探傷液がフィルムを浸透すると判断することができるものである。
本明細書において、上記「実質的に無孔」でない膜を「多孔性」と表すことがある。
上記結節(node)は、一般に、膜状等のPTFE成形体を延伸することにより生じるフィブリル化部分に点在し、通常、フィブリルよりも径が太い。上記結節としては、(1)複数のフィブリルが連結して塊となっている部分(例えば、図1(a)、斜線部分)、(2)複数のフィブリルが連結し、フィブリル径より大きい径を有する部分(例えば、図1(b)及び(c)、斜線部分)、及び、(3)PTFE樹脂からなる一次粒子に由来する部分であって、放射線状に伸びたフィブリルの起点となる部分(例えば、図1(d)、(e)及び(f)、斜線部分)等が挙げられる。なお、フィブリルの分岐部分であって、フィブリルと径が同じもの(例えば、図1(g)、斜線部分)は、上記結節と定義されないものである。
本明細書において、上記「実質的に結節を有しない」とは、走査型電子顕微鏡[SEM]写真の画像処理から測定した結節の面積が、フィブリルと結節との合計面積の5%以下であって、結節の最大面積が2μm以下であることを意味する。
本明細書において、上記結節の最大面積は、走査型電子顕微鏡[SEM]で撮影した写真を画像処理装置に取り込み、結節とフィブリルとに分離し、結節のみからなる像について演算処理して求めた値である。
本明細書において、上記「加熱処理」は、多孔性PTFE樹脂膜を構成するフィブリル同士を加熱により多孔性PTFE樹脂膜の厚み方向に融着するための処理を意味する。
上記加熱処理は、多孔性PTFE樹脂膜を実質的に無孔にするまで行うものであるが、通常、後述する温度にて加熱しさえすれば多孔性PTFE樹脂膜を実質的に無孔にすることができる。多孔性PTFE樹脂膜は、実質的に結節を有しないものであるので、後述する温度にて加熱することにより、内在するフィブリル同士の融着を結節に阻害されることなく行うことができ、フィブリル同士が融着した結果、実質的に無孔のPTFE樹脂フィルムに変化することができる。本明細書において、上記加熱処理を「熱固定」ということがある。
上記加熱処理は、表面平滑性の向上等の点で、加圧しながら行うものであってもよいが、上述のように加熱しさえすれば実質的に無孔の膜が得られる点で、工業上、多孔性PTFE樹脂膜を加圧せずに行うものであることが好ましい。
本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法は、上記加熱処理を行う際、実質的に無孔にすることを目的として、従来の方法とは異なり、加圧する必要がないものである。本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法は、上記加熱処理を行う際に加圧しなくても、得られるPTFE樹脂フィルムを実質的に無孔にすることができるのみならず、極薄膜化することも可能であり、また、従来法の加熱加圧に伴うゴミの取り込みから生じるPTFE樹脂フィルムの品質低下等を回避することができる。
上記フィブリル化PTFE樹脂膜は、未延伸PTFE半焼成体を延伸することにより実質的に結節を有しないものとして作製することができる。上記「未延伸PTFE半焼成体」とは、半焼成のPTFE樹脂からなり、本発明における延伸の対象物となるものであって、延伸することなく作製されたものを意味する。
本明細書において、上記「半焼成」とは、未焼成ではないが、完全に焼成されていないことを意味する。
上記未延伸PTFE半焼成体は、焼成度が0.3以上、0.8以下であるものが好ましい。上記焼成度のより好ましい下限は0.4であり、より好ましい上限は0.6である。
なお、後述する全延伸面積倍率が400倍以上である場合、上記焼成度は0.35以上、0.55以下であることが好ましい。
本明細書において、上記「焼成度」は、示差走査熱量計(DSC−50型、島津製作所社製)を用い、PTFE未焼成体、PTFE半焼成体及びPTFE焼成体について、それぞれ昇温速度10℃/分にて測定を行い、得られた結晶融解曲線における融解熱ピークより各PTFE成形体の融解熱を算出し、下記式:
焼成度=(ΔH1−ΔH3)/(ΔH1−ΔH2)
(式中、ΔH1はPTFE未焼成体の融解熱(J)、ΔH2はPTFE焼成体の融解熱(J)、ΔH3はPTFE半焼成体の融解熱(J)を表す。)
に基づき算出された値である。
上記未延伸PTFE半焼成体としては、PTFE粉末に潤滑剤を加えてペースト押出成形を行い、次いでカレンダーロールによる圧延加工を行い得られるシートから上記潤滑剤を除去してなる未延伸PTFE成形未焼成体を、特定温度にて加熱することにより得たものが好ましい。本明細書において、上記「未延伸PTFE成形未焼成体」を単に「未延伸PTFE未焼成体」ということがある。該未延伸PTFE成形未焼成体は、該特定温度にて加熱することにより、延伸後に未延伸PTFE半焼成体に加工される。未延伸PTFE半焼成体は、後述の延伸処理により実質的に結節(node)を生じないものである。
上記未延伸PTFE成形未焼成体を加熱する特定温度は、上記ペースト押出成形における加熱後に得られるものを半焼成とすることができる温度であり、好ましくは、上記特定温度の下限は、用いたPTFE未焼成体についての示差走査熱量計〔DSC〕による測定における吸熱カーブのピーク付近の温度(例えば、327℃)とし、上記特定温度の上限は、上記PTFE未焼成体を一旦380℃にまで加熱したのち冷却したものを再度DSCにより測定した場合における吸熱カーブのピーク付近の温度(例えば、345℃)とする。
上記未延伸PTFE半焼成体は、膜厚が30μm以上、200μm以下であることが好ましい。上記膜厚のより好ましい下限は50μmであり、より好ましい上限は150μmである。
上記膜厚は、1D−110MH型膜厚計(ミツトヨ社製)を使用し、上記樹脂膜を5枚重ねて、2cm四方の測定面に100gの荷重(push pull Gauge型番PP−705−1000、Teclock社製にて荷重)を掛けて全体の膜厚を測定し、その膜厚を5で除して求めた値である。
上記フィブリル化PTFE樹脂膜としては、(1)未延伸PTFE半焼成体に一軸延伸を行うことにより一軸延伸膜を得る工程と、(2)上記一軸延伸の方向と垂直な方向に上記一軸延伸膜に二軸延伸を行う工程とを含む延伸方法により得られるものであることが好ましい。
本明細書において、上記二軸延伸は、上記工程(1)により得られる一軸延伸膜に対し、第2の延伸を行うものであり、その結果、工程(1)と工程(2)とを合わせて合計二軸延伸を行うこととなる趣旨で当業者間で「二軸延伸」と称されるものである。本明細書において、上記一軸延伸を縦延伸、上記二軸延伸を横延伸ということもあるが、上記工程(2)における「二軸延伸」が縦と横との2方向の延伸を行うものではないことを簡潔に表すために「縦」「横」を用いるのであって、必ずしも、工程(1)における延伸を縦方向に行い、工程(2)における延伸を横方向に行うことに限定するものではない。
本明細書において、上記工程(1)と工程(2)とを含む延伸方法により行う延伸を「延伸処理」ということがある。
上記一軸延伸の倍率〔E〕は、10倍以上であることが好ましく、12倍以上であることがより好ましい。上記Eの好ましい上限は、30倍であり、より好ましい上限は25倍である。
上記二軸延伸の倍率〔E〕は、20倍以上であることが好ましく、30倍以上であることがより好ましい。上記Eの好ましい上限は、60倍であり、より好ましい上限は50倍であり、更に好ましい上限は45倍である。
上記延伸は、全延伸面積倍率(上記Eと上記Eとの乗数)が400倍以上、1000倍以下であることが好ましい。上記全延伸面積倍率の好ましい下限は450倍であり、上記全延伸面積倍率の好ましい上限は、850倍であり、より好ましい上限は700倍である。
上記二軸延伸を後述する一軸延伸膜を2枚以上重ねて行う場合、二軸延伸の倍率〔E〕は、上限を60倍にすることもでき、上記全延伸面積倍率は、上限を1000倍にすることもできる。延伸の倍率を大きくすることによりフィブリル化を高め、得られるPTFE樹脂フィルムの極薄膜化を促進することも可能である。
本明細書において、上記倍率〔E〕及び上記倍率〔E〕は、それぞれ、各延伸操作後におけるPTFE成形体の一次元寸法(長さ)と各延伸操作前におけるPTFE成形体の一次元寸法(長さ)との比として求めた値である。上記一次元寸法とは、同方向で採寸されるPTFE成形体部分のうち、最も長い部分における長さを意味する。
上記一軸延伸は、280℃以上、上記未延伸PTFE半焼成体についての示差走査熱量計による測定において得られる吸熱カーブのベースラインと吸熱カーブとの交点のうち高い方の温度以下の温度において行うことが好ましい。
上記一軸延伸の温度のより好ましい下限は、延伸操作の効率の点で300℃、更に好ましくは310℃であり、上記一軸延伸の温度のより好ましい上限は、延伸性が良い点で、330℃である。
上記一軸延伸は、公知の方法で行うことができ、例えば、複数のロールを装備した装置を用いて連続して行うことができる。上記一軸延伸を、上記装置を用い連続して行う場合、各ロールの周速度は、使用する装置のスケールや未延伸PTFE半焼成体の種類、サイズに応じて適宜設定することができる。
上記一軸延伸は、上記加工温度で行い、且つ、該一軸延伸後の厚みが該一軸延伸前の厚みの80%以下となるように行うものであることが好ましい。上記一軸延伸前の厚みに対する該一軸延伸後の厚みのより好ましい上限は60%、更に好ましい上限は55%であり、これらの範囲内であれば、下限は10%であってよく、好ましい下限は15%、より好ましい下限は20%である。その他の縦延伸の条件(延伸速度等)は延伸機の機差によって変動するので厚み変化を指標に各種条件を設定するとよい。
従来一般に、多孔性のPTFE樹脂膜を作製する場合は、延伸によって厚みの減少が殆どない条件で加工されてきた。従来の加工法では、延伸物の空孔率の上昇(密度の低下)をもたらし多孔体を生成することとなるが、このときPTFEの繊維は延伸方向に強く配向するため光学的異方性は増大し、複屈折率が大きくなる。
一方、本発明において、延伸後の厚みが減少する上記条件での延伸では、延伸により若干のフィブリルは発生するが延伸方向への配向は殆ど発生せず、膜が厚み方向に圧縮される現象が発生する。配向が殆ど発生しないことは複屈折率の測定で証明することができる。このような条件で縦延伸することにより実質的に無孔なPTFE樹脂フィルムの前駆体として最適な一軸延伸物を得ることができる。
未延伸PTFE半焼成体の代わりに、延伸により結節(node)を生じてしまう未延伸PTFE成形未焼成体を延伸した場合、厚み方向への圧縮が効果的に発生しない傾向にある。
本明細書において、上記「複屈折率」は、王子計測機器(株)製 自動複屈折計 KOBRA−21D/IRを用いて、一軸延伸膜のレターデーション(retardation)を測定することにより得られる値である。
レターデーション(retardation)とは、複屈折に起因して発生する入射光と同振動方向の常光線とそれと垂直な振動方向に分離した異常光線との間に生ずる位相差のことで光学的異方性が大きいほど、レターデーションの値は大きくなる。光学的異方性を持つPTFE結晶の集合体である膜を測定した場合、分子鎖の方向が揃っている(配向している)とレターデーションの値は大きくなり、アモルファス様に分子鎖の方向がランダムな場合、複屈折は互いにうち消され、マクロ的に光学的異方性は見られなくなる(レターデーション値小)。
上記二軸延伸は、公知の方法で行うことができるが、300℃以上の温度において行うことが好ましい。
上記二軸延伸は、上記一軸延伸膜を2枚以上重ねて行うことが好ましい。一般にPTFE樹脂フィルムは、工業的生産において、PTFE粉末の製造工程、ペースト押出の成形工程において作業環境や作業員の動作等に由来するゴミ等の異物が混入したものとして得られる場合がある。上記異物は、延伸焼成工程において帯電等から生じるピンホール、膜破れ等の膜欠陥の原因になるが、上記異物の混入を防ぐことは容易でない。これに対し、上記一軸延伸膜を2枚以上重ねて二軸延伸を行う場合、一の膜における膜欠陥が生じ得る混入部位と他の膜における混入部位とが重なる確率は非常に小さいので、全体として膜欠陥がないPTFE樹脂フィルムを容易に連続して工業的に製造することができる。
上記一軸延伸膜を2枚以上重ねて上記二軸延伸を行う場合、上記一軸延伸膜を2枚以上重ねる操作、上記二軸延伸、及び、後述する加熱処理は、テンター等の装置を用い、連続して行うことができる。上記二軸延伸を、テンターを用い連続して行う場合、フィルムの走行速度は、使用する装置のスケールや一軸延伸膜の種類、サイズに応じて適宜設定することができ、延伸性をよくすることができる。
本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法におけるフィブリル化PTFE樹脂膜は、特に限定されないが、例えば、特開平5−202217号公報記載の方法により作製することができる。
上記フィブリル化PTFE樹脂膜は、上述したように未延伸PTFE半焼成体を材料として得るものなので実質的に結節を有しない。そのため、上記フィブリル化PTFE樹脂膜を用いて膜厚10μm以下のPTFE樹脂フィルムを製造する場合、加圧することなく後述する条件下で加熱するだけで製造することができる。また、この場合、得られるPTFE樹脂フィルムは実質的に無孔であるので、気密性、引張強度等に優れている。
本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法において、多孔性PTFE樹脂膜は、未延伸PTFE半焼成体に延伸処理を行うことにより得られるものであり、上記延伸処理及び加熱処理は、未延伸PTFE半焼成体を、多孔性PTFE樹脂膜を経て実質的に無孔にするまで行うものであることが好ましい。
上記延伸処理は、未延伸ポリテトラフルオロエチレン半焼成体に実質的に結節を生じないように行うものであることが好ましい。
即ち、本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法は、未延伸PTFE半焼成体に延伸処理及び加熱処理を行うことによりPTFE樹脂フィルムを製造するPTFE樹脂フィルム製造方法であって、該延伸処理及び加熱処理は、該延伸処理ののち該加熱処理を行うことにより上記未延伸PTFE半焼成体を実質的に無孔にするものであり、上記未延伸PTFE半焼成体は、上記延伸処理により実質的に結節を生じないものであることが好ましい。
上記好ましい本発明において、前駆体の一軸延伸物は横延伸することにより実質的に無孔なPTFE樹脂フィルムの前駆体の二軸延伸物に加工され、更に加熱処理を行うことにより実質的に無孔なPTFE樹脂フィルムに加工される。
本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法は、上記多孔性PTFE樹脂膜を実質的に無孔にするまで加熱処理を行うことによりなるものである。
上記加熱処理は、多孔性PTFE樹脂膜が実質的に結節を有しないものであるので、加圧せずに行うことができる。ゆえに、本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法には、上述した従来の加圧に伴う問題はない。従来、結節を有しないPTFE樹脂膜から得られるPTFE樹脂フィルムは、通常、多孔性であるので、多孔性PTFE樹脂フィルムの製造方法に用いられてきた。これに対し、本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法は、実質的に無孔のPTFE樹脂フィルムを製造する方法である点で、従来の多孔性PTFE樹脂フィルム製造方法とは異なる特徴を有するものである。
上記加熱処理は、上記多孔性PTFE樹脂膜についての示差走査熱量計による測定においてベースラインから離れるピーク曲線と上記ベースラインとの交点のうち高い方の温度以上、390℃以下の温度で行うことが好ましい。上記加熱処理は、樹脂が充分に溶融する温度で行うことが好ましく、ピーク温度から20℃高い温度以上で行うことがより好ましい。上記温度の好ましい下限は、370℃であり、好ましい上限は、385℃である。
上記加熱処理は、フィルムを走行させる装置を用いて連続的に行うこともできる。上記加熱処理を連続して行う場合、フィルムの走行速度は、使用する装置のスケールやPTFE成形体の種類、サイズに応じて適宜設定することができる。
多孔性PTFE樹脂膜を実質的に無孔にするまで加熱処理を行うことによりPTFE樹脂フィルムを製造するPTFE樹脂フィルム製造方法であって、上記多孔性PTFE樹脂膜は、(1)倍率〔E〕が10〜30倍である一軸延伸を行うことにより一軸延伸膜を得る工程と、(2)倍率〔E〕が20〜50倍である二軸延伸を行うことにより二軸延伸膜を得る工程とを含む延伸方法により得られた延伸PTFE樹脂膜であり、上記一軸延伸の倍率〔E〕と上記二軸延伸の倍率〔E〕との乗数〔E×E〕は、400〜850であることを特徴とするPTFE樹脂フィルム製造方法もまた、本発明の1つである。
上記PTFE樹脂フィルム製造方法において、好ましい多孔性PTFE樹脂膜、(1)及び(2)の工程、並びに、加熱処理は、上述したものと同じである。
例えば、上記PTFE樹脂フィルム製造方法において、上記多孔性PTFE樹脂膜は、実質的に結節を有しないフィブリル化PTFE樹脂膜であることが好ましい。
本発明のPTFE樹脂フィルム製造方法から得られるPTFE樹脂フィルムは、実質的に無孔であるので、気密性、引張強度等に優れている。上記PTFE樹脂フィルムは、以下に記載する本発明のPTFE樹脂フィルムと同様の特徴を有する。
本発明のPTFE樹脂フィルムは、実質的に無孔であって、走査型電子顕微鏡[SEM]による表面観察においてフィブリルが観察されるものである。
本明細書において、上記「走査型電子顕微鏡[SEM]による表面観察」は、走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、日立製作所社製)を用い、倍率20000倍にて実施したものである。
フィブリル構造は、一般に、PTFE樹脂からなる成形体を延伸すると生じる。本発明のPTFE樹脂フィルムは、フィブリル構造が観察されることから、延伸したものを加圧せずに得られたものであることがわかる。本発明のPTFE樹脂フィルムは、また、実質的に無孔であることから、上記のように加圧せずに得られたものであるにもかかわらず、無孔にすることができたものであることがわかる。
本発明のPTFE樹脂フィルムは、表面にフィブリルを有するものであるので他材との接着性がよく、積層化が容易であるので、工業上幅広い用途に供することができる。
本発明のPTFE樹脂フィルムは、波長500nmの可視光に対する透過率が90%を超えるものであってもよい。
本発明のPTFE樹脂フィルムは、上述のようにSEMにより表面観察においてフィブリルが観察されるものであるにもかかわらず、上記範囲内のように高い可視光透過率を示すことができる。このように高い可視光透過率を示すことができる機構は明確ではないが、PTFE樹脂フィルム内部に光を乱反射するような空間が殆ど存在しないことに起因するものと考えられる。
本明細書において、上記「透過率」は、厚み0.6μmのPTFE樹脂フィルムについてU4100型分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い測定したものである。
本発明のPTFE樹脂フィルムは、上記可視光透過率が上記範囲内にあるものなので、樹脂フィルムとして透明度が高い点で優れている。
本発明のPTFE樹脂フィルムの厚みは、0.2〜10μmにすることができるが、用途により上記範囲内に限定されるものではない。
上記厚みは、強度等の点で0.3μm以上であることが好ましく、加工性の点で、5μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。
本発明のPTFE樹脂フィルムは、上述したように、薄膜であるにもかかわらず、気密性、引張強度、絶縁性、耐侯性、耐薬品性等に優れているので、絶縁性部品、半導体、高周波ケーブル、エレクトレット用膜等の家電/電気関連製品;薬品容器等の容器に関連する用途に好適である。
上記絶縁性部品に関連する用途としては、例えば、電磁波絶縁膜等が挙げられる。
上記半導体に関連する用途としては、例えば、プリント基板等の離型;リソグラフィーのペリクル膜等が挙げられる。
上記エレクトレット用膜に関連する用途としては、例えば、小型マイクロホン、イヤホン等のエレクトレット用膜が挙げられる。
本発明のPTFE樹脂フィルムの製造方法は、上述の構成よりなるものであるので、透明性、光学的当方性、気密性、引張強度、絶縁性、耐侯性、耐薬品性等に優れ、膜厚が非常に小さいPTFE樹脂フィルムを効率良く製造することができる。本発明のPTFE樹脂フィルムは、上述の構成よりなるものであるので、透明性、気密性、引張強度、絶縁性、耐侯性、耐薬品性等に優れ、膜厚が非常に小さいので、家電/電気関連製品、薬品容器等の容器の材料等として優れている。
本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例、比較例により限定されるものではない。
各実施例及び各比較例で行った測定は、以下の方法を用いて行った。
(1)浸透探傷試験
吸取紙上に樹脂フィルムを置き、探傷液として水洗性浸透液R−3B(NT)(商品名、栄進化学社製)を滴下し、放置した。放置して10分後、(a)探傷液が吸取紙上に達していないことが肉眼で判断できる場合、実質的に無孔化しているものとし、(b)探傷液が吸取紙上に達していることが肉眼で判断できる場合、多孔性であるものとした。
(2)膜厚
1D−110MH型膜厚計(ミツトヨ社製)を用い、樹脂フィルムを5枚重ねて、2cm四方の測定面に100gの荷重(push pull Gauge型番PP−705−1000、Teclock社製にて荷重)を掛けて全体の膜厚を測定し、その膜厚を5で除して求めた。
(3)焼成度
示差走査熱量計(DSC−50型、島津製作所社製)を用い、PTFE未焼成体、PTFE半焼成体及びPTFE焼成体について、下記条件にて示差走査熱測定を行い、得られた結晶融解曲線より各成形体の融解熱(単位:J)を測定した。
(熱測定条件)
PTFE未焼成体及びPTFE半焼成体:3.0±0.1mgの試験体について、250℃まで昇温速度50℃/分で、次いで250℃〜380℃の間は昇温速度10℃/分で加熱した。
PTFE焼成体:PTFE未焼成体の熱測定後、直ぐに試験体を降温速度10℃/分で250℃に冷却し、再び昇温速度10℃/分で380℃に加熱した。
更に、得られた各融解熱の値から、以下の式を用い焼成度を求めた。
焼成度=(ΔH1−ΔH3)/(ΔH1−ΔH2)
(ΔH1はPTFE未焼成体の融解熱、ΔH2はPTFE焼成体の融解熱、ΔH3はPTFE半焼成体の融解熱)。
(4)延伸倍率
各延伸操作後におけるPTFE成形体の一次元寸法(長さ)と各延伸操作前におけるPTFE成形体の一次元寸法(長さ)との比として求めた。上記一次元寸法とは、同方向で採寸されるPTFE成形体部分のうち、最も長い部分における長さを意味する。
(5)透過率
U4100型分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、厚み0.6μmのPTFE樹脂フィルムについて、波長500nmの可視光に対して測定した。
(6)レターデーション(配向度)
王子計測機器(株)製 自動複屈折計 KOBRA−21D/IRを用いて測定した。
実施例1
未延伸PTFE半焼成体の作製
PTFEファインパウダー(商品名:ポリフロンファインパウダーF104、ダイキン工業社製)を用い、特開昭59−152825号公報に記載の方法に従い、ペースト押出、ロール圧延、乾燥を行い、未延伸PTFE未焼成体(厚さ0.1mm、幅18cm、比重1.55g/cm)を得た。上記未延伸PTFE未焼成体を雰囲気温度338℃で45秒間加熱処理して、未延伸PTFE半焼成体(焼成度0.45、厚さ0.1mm、幅17cm、比重2.55g/cm)を作製した。
一軸延伸
未延伸PTFE半焼成体を図2の模式図に示す装置を用いて、以下の延伸条件にて一軸延伸方向に12.5倍延伸して、多孔構造を有する一軸延伸膜(厚さ25μm、幅12cm、見かけ密度1.0g/cm、空孔率55%:真比重2.55g/cmとして算出)を得た。
(延伸条件)
ロール3、4:巻出し速度0.8m/分、温度25℃
ロール6:周速度5m/分、温度310℃
ロール7:周速度10m/分、温度310℃
ロール10:周速度10m/分、温度25℃
ロール2:巻出し速度10m/分、温度25℃
・一軸延伸は、未延伸PTFE半焼成体を図2の模式図に示す装置に連続的に供給し、ロール6及び7にて延伸速度100%/秒で行った。
二軸延伸及び加熱処理
上記一軸延伸膜を2枚重ねて、予熱オーブン(310℃)、延伸オーブン(320℃)及び熱固定オーブン(380℃)からなる装置を用い、10m/分の速度で各オーブンを通過させて、上記一軸延伸膜を二軸延伸方向に45倍に延伸し、得られた多孔性PTFE樹脂膜[二軸延伸膜、一軸延伸方向の倍率と二軸延伸倍率の乗数(全延伸面積倍率):562.5倍]を380℃で熱処理して、PTFE樹脂フィルムを得た。得られたPTFE樹脂フィルムについて、膜厚、浸透探傷試験、透過率及びレターデーションを上記(1)、(2)、(5)及び(6)の方法に従い測定した。透過率は、92%であった。
実施例2〜5
各実施例において、一軸延伸の温度を、それぞれ320℃(実施例2)、300℃(実施例3)、290℃(実施例4)、280℃(実施例5)に代えた以外は、実施例1と同様に未延伸PTFE半焼成体を作製し、一軸延伸、二軸延伸及び加熱処理を行い、PTFE樹脂フィルムを得た。得られたPTFE樹脂フィルムについて、膜厚、浸透探傷試験及びレターデーションを上記(1)、(2)及び(6)の方法に従い測定した。
比較例1〜2
一軸延伸の温度を340℃(比較例1)、350℃(比較例2)に代えた以外は、実施例1と同様に未延伸PTFE半焼成体を作製し、一軸延伸、二軸延伸及び加熱処理を行ったが、二軸延伸ができず樹脂膜が破断し、樹脂フィルムは得られなかった。
比較例3〜4
各実施例において、一軸延伸の温度を270℃(比較例3)、250℃(比較例4)に代えた以外は、実施例1と同様に未延伸PTFE半焼成体を作製し、一軸延伸、二軸延伸及び加熱処理を行った。得られた樹脂フィルムについて、膜厚、浸透探傷試験及びレターデーションを上記(1)、(2)及び(6)の方法に従い測定した。
実施例1〜5、比較例1〜4での各結果を表1に示す。
実施例1〜5では膜厚が1.0μm未満である実質的に無孔のPTFE樹脂フィルムが得られたのに対し、一軸延伸の温度が、未延伸PTFE半焼成体を上述の示差走査熱測定したときに得られる融点ピークとそのベースラインとの交点のうち高い方の温度(A)より高い比較例1〜2では二軸延伸ができなかった。これは、一軸延伸の温度が上記温度(A)より高い場合、得られる一軸延伸後の樹脂膜の焼成度が高くなることが原因であると考えられた。
一方、一軸延伸の温度が280℃未満である比較例3〜4で得られた樹脂フィルムは、多孔性であった。このことより、一軸延伸の温度が280℃未満である場合、一軸延伸後の樹脂膜の焼成度が低くなり、二軸延伸を経た樹脂膜を加熱しても無孔化することができないことが分かった。
更に、実施例1にて得られた多孔性PTFE樹脂膜について、走査型電子顕微鏡(SEM;日立S−4000型、日立製作所社製)を用いて20000倍にして表面観察したところ、図4に示すように、実質的に結節を有しないフィブリルからなることが分かった。また、実施例1で得られたPTFE樹脂フィルムについて、SEMを用いて上記と同様に表面観察したところ、図5に示すように表面にフィブリルを有し、実質的に無孔であることが確認された。
実施例6
二軸延伸の倍率[E]を35倍に代えた以外は、実施例1と同様に未延伸PTFE半焼成体を作製し、一軸延伸、二軸延伸及び加熱処理を行い、PTFE樹脂フィルムを得た。得られたPTFE樹脂フィルムについて、膜厚、浸透探傷試験及びレターデーションを上記(1)、(2)及び(6)の方法に従い測定した。
比較例5
二軸延伸の倍率[E]を25倍に代えた以外は、実施例1と同様に未延伸PTFE半焼成体を作製し、一軸延伸、二軸延伸及び加熱処理を行った。得られた樹脂フィルムについて、膜厚、浸透探傷試験及びレターデーションを上記(1)、(2)及び(6)の方法に従い測定した。
実施例6及び比較例5で得られた各結果を表2に示す。
実施例6では膜厚0.5μmである実質的に無孔のPTFE樹脂フィルムが得られたのに対し、比較例5で得られた樹脂フィルムは、多孔性であった。
実施例7〜8
各実施例において、一軸延伸の倍率[E]を、それぞれ17.5倍(実施例7)、10倍(実施例8)に代えた以外は、実施例1と同様に未延伸PTFE半焼成体を作製し、一軸延伸、二軸延伸及び加熱処理を行い、PTFE樹脂フィルムを得た。各実施例から得られたPTFE樹脂フィルムについて、膜厚、浸透探傷試験及びレターデーションを上記(1)、(2)及び(6)の方法に従い測定した。
比較例6
一軸延伸の倍率[E]を8倍に代えた以外は、実施例1と同様に未延伸PTFE半焼成体を作製し、一軸延伸、二軸延伸及び加熱処理を行った。得られた樹脂フィルムについて、膜厚、浸透探傷試験及びレターデーションを上記(1)、(2)及び(6)の方法に従い測定した。
実施例7〜8及び比較例6で得られた各結果を表3に示す。
実施例7〜8では表3記載の膜厚である実質的に無孔のPTFE樹脂フィルムが得られたのに対し、一軸延伸の倍率[E]が8倍である比較例6で得られた樹脂フィルムは、多孔性であった。
比較例7
加熱処理の温度を360℃に代えた以外は、実施例1と同様に未延伸PTFE半焼成体を作製し、一軸延伸、二軸延伸及び加熱処理を行った。得られた樹脂フィルムについて、膜厚、浸透探傷試験及びレターデーションを上記(1)、(2)及び(6)の方法に従い測定した。
比較例7で得られた結果を表4に示す。
表4の結果より、加熱処理の温度が多孔性PTFE樹脂膜を上述の示差走査熱測定したときに得られる融点ピークとそのベースラインとの交点のうち高い方の温度(B)より低い場合、多孔性PTFE樹脂膜を加熱しても実質的に無孔にできないことが分かった。
本発明のPTFE樹脂フィルムの製造方法は、上述の構成よりなるものであるので、透明性、光学的当方性、気密性、引張強度、絶縁性、耐侯性、耐薬品性等に優れ、膜厚が非常に小さいPTFE樹脂フィルムを効率良く製造することができる。本発明のPTFE樹脂フィルムは、上述の構成よりなるものであるので、透明性、気密性、引張強度、絶縁性、耐侯性、耐薬品性等に優れ、膜厚が非常に小さいので、家電/電気関連製品、薬品容器等の容器の材料等として優れている。
結節を表した図である。 各実施例及び比較例において延伸に使用した装置を表した図である。 テンターを表した図である。 SEMで撮影した多孔性PTFE樹脂膜の写真である。 SEMで撮影した本発明のPTFE樹脂フィルムの写真である。
符号の説明
1.フィルム巻出ロール、2.巻取ロール、3,4,5,6,7,8,9.ロール、10.ヒートセットロール、11.冷却ロール、12.ロール、13.フィルム巻出ドラム、14.巻出制御機構、15.予熱オーブン、16.延伸オーブン、17.熱固定オーブン、18,19.ラミネートロール、19.加熱ロール、20.巻取制御機構、21.フィルム二軸延伸フィルム巻取ドラム、22,23.不織布取付ドラム

Claims (12)

  1. 多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜を実質的に無孔にするまで加熱処理を行うことによりポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルムを製造するポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法であって、
    前記多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜は、実質的に結節を有しないフィブリル化ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜である
    ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  2. 多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜は、未延伸ポリテトラフルオロエチレン半焼成体に延伸処理を行うことにより得られるものであり、
    前記延伸処理及び加熱処理は、前記未延伸ポリテトラフルオロエチレン半焼成体を、前記多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜を経て実質的に無孔にするまで行うものである請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  3. 延伸処理は、未延伸ポリテトラフルオロエチレン半焼成体に実質的に結節を生じないように行うものである請求項2記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  4. 多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜は、(1)未延伸ポリテトラフルオロエチレン半焼成体に一軸延伸を行うことにより一軸延伸膜を得る工程と、(2)前記一軸延伸膜に二軸延伸を行う工程とを含む延伸方法により得られるものである請求項1、2又は3記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  5. 多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜を実質的に無孔にするまで加熱処理を行うことによりポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルムを製造するポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法であって、
    前記多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜は、
    (1)倍率〔E〕が10〜30倍である一軸延伸を行うことにより一軸延伸膜を得る工程と、
    (2)倍率〔E〕が20〜50倍である二軸延伸を行うことにより二軸延伸膜を得る工程
    とを含む延伸方法により得られた延伸ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜であり、
    前記一軸延伸の倍率〔E〕と前記二軸延伸の倍率〔E〕との乗数〔E×E〕は、400〜850である
    ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  6. 多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜は、実質的に結節を有しないフィブリル化ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜である請求項5記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  7. 一軸延伸は、前記一軸延伸後の厚みが前記一軸延伸前の厚みの80%以下となるように行うものである請求項4、5又は6記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  8. 二軸延伸は、一軸延伸膜を2枚以上重ねて行うものである請求項4、5、6又は7記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  9. 未延伸ポリテトラフルオロエチレン半焼成体は、焼成度が0.3〜0.8である請求項2、3、4、5、6、7又は8記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  10. 加熱処理は、多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜を加圧せずに行うものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  11. 加熱処理は、多孔性ポリテトラフルオロエチレン樹脂膜についての示差走査熱量計による測定においてベースラインから離れるピーク曲線と前記ベースラインとの交点のうち高い方の温度以上、390℃以下の温度で行うものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載のポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム製造方法。
  12. 実質的に無孔であるポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルムであって、
    前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルムは、走査型電子顕微鏡[SEM]による表面観察においてフィブリルが観察される
    ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルム。
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