JP2005299923A - 転動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リニアガイド装置100は、案内レール11と、スライダ12と、ボール軌道溝11a,12aで形成されたボール転動路15内に配された複数のボール13と、隣接する各ボール13の間に介装されたセパレータ18と、で構成されている。
セパレータ18はポリエーテルエーテルケトン樹脂で構成されているとともに、その表面には、PFPEを含有する超臨界二酸化炭素を接触させ、浸透したPFPE及び超臨界二酸化炭素のうち超臨界二酸化炭素のみを除去する改質処理が施されている。
【選択図】 図1
Description
炭化水素系潤滑油はフッ素油と比べて潤滑性が優れているので、宇宙環境で使用される人工衛星等において高面圧下で使用されても、焼付きが生じにくい。よって、潤滑性に優れるアルキル化シクロペンタンを含浸させた保持器を備える特許文献3に記載の転がり軸受は、高面圧下における耐久性に優れていた。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、樹脂製の構成部品を有する転動装置であって、一般的な潤滑剤が使用できないような場合でも優れた潤滑性及び耐久性を有する転動装置を提供することを課題とする。
さらに、本発明に係る請求項6の転動装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の転動装置において、前記潤滑油がパーフルオロポリエーテルであることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項7の転動装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の転動装置において、前記潤滑油がアルキル化シクロペンタンであることを特徴とする。
なお、本発明は種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング,XYテーブル等である。
さらに、本発明における構成部品とは、転動装置を構成する部品を意味し、例えば内方部材,外方部材,転動体,セパレータ,保持器,密封装置があげられる。
〔改質処理について〕
転動装置の樹脂製構成部品の改質処理は、浸漬処理工程と蒸発除去工程とからなる。浸漬処理工程は、PFPE,アルキル化シクロペンタン等の潤滑油を含有する超臨界二酸化炭素の中に構成部品を浸漬する工程である。超臨界状態の二酸化炭素は潤滑油と相溶状態となり、構成部品の表面から内部へと浸透する。
さらに、浸漬処理工程における浸漬時間は特に限定されるものではなく、構成部品の厚さや大きさ等を考慮して適宜設定される。
さらに、超臨界二酸化炭素中の潤滑油の濃度は、二酸化炭素の超臨界状態において概ね飽和溶解度となるように調整される。
なお、蒸発除去装置内の温度は、構成部品を構成する樹脂のガラス転移温度未満とすることが好ましい。ガラス転移温度以上であると、構成部品の中から二酸化炭素が除去される際に、発泡が生じる可能性が高くなる。
このような改質処理により、構成部品に潤滑油が浸透するので、構成部品に潤滑性が付与される。また、潤滑油の浸透により構成部品と潤滑剤との親和性(濡れ性)が向上するので、転動装置に潤滑剤を使用した場合には、潤滑剤の潤滑効果が向上する。
本発明においては、種々の超臨界流体を用いることができる。例えば、二酸化炭素,二酸化窒素,アンモニア,エタン,プロパン,エチレン,メタノール,エタノール等があげられる。ただし、二酸化炭素は比較的穏和な条件で超臨界流体となり、しかも毒性がなく不燃性であるため最も好ましい。
本発明において使用可能な潤滑油の種類は、特に限定されるものではない。ただし、転動装置が真空環境下で使用される場合は、蒸気圧の低い潤滑油が好ましいので、20℃における蒸気圧が1.3×10-5Pa以下の潤滑油がより好ましく、1.3×10-6Pa以下の潤滑油がさらに好ましい。
なお、使用する潤滑油の種類は、樹脂製の構成部品を潤滑する際に用いる潤滑剤中の潤滑油の種類に合わせて選択するとよい。そうすれば、構成部品と潤滑剤との濡れ性が、より良好となる。
本発明において構成部品を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではないが、改質処理を好適に適用可能な樹脂としては、蒸発除去工程における構成部品の発泡を防止するために、ガラス転移温度(Tg)が超臨界流体の臨界温度よりも高いものが好ましい。また、本発明の転動装置は真空環境で使用される場合があることから、アウトガスの発生が少ない樹脂が好ましい。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明に係る転動装置の一実施形態であるリニアガイド装置の構造を示す部分平面図である。ただし、該平面図においては、要部を破断して示してある。また、図2は、図1のリニアガイド装置のセパレータ及びボールの拡大図である。ただし、該拡大図においては、セパレータを破断して示してある。
さらに、セパレータ18はポリエーテルエーテルケトン樹脂(ビクトレックス社製PEEK450G)で構成されており、その表面には以下のような改質処理が施されている。すなわち、潤滑油(ダイキン工業株式会社製のデムナムS−200)を含有する超臨界二酸化炭素を接触させ、浸透した潤滑油及び超臨界二酸化炭素のうち超臨界二酸化炭素のみを除去する処理である。
また、前述の改質処理においては潤滑油としてPFPEを用いたが、トリ(2−オクチルドデシル)シクロペンタン(Nye Lubricants社製のNye Synthetic Oil 2001A)を用いてもよい。この場合の改質処理の手順は、以下の通りである。
図3は、本発明に係る転動装置の別の実施形態であるボールねじの構造を示す斜視図である。ただし、該斜視図においては、要部を破断して示してある。
図3のボールねじ200は、外周面に螺旋状のねじ溝(軌道面)21aを有するねじ軸(内方部材)21と、このねじ溝21aと対向するねじ溝(軌道面)22aを内周面に有するナット(外方部材)22と、両ねじ溝21a,22aの間に形成されたボール転動路に転動自在に配された複数のボール(転動体)23と、で構成されている。ナット22には、前記ボール転動路の一端に転動してくるボール23をすくい上げて他端に送るリターンチューブ(ボール循環路)27が取り付けられている。そして、このボールねじ200は、複数のボール23の転動を介してねじ軸21とナット22とを相対回転させることによって、ねじ軸21とナット22とが軸方向に相対移動するようになっている。
このボールねじ200においては、隣接する各ボール23の間に第一実施形態と同様の図示されないセパレータが介装されており、各ボール23の間の競り合いが抑制されるようになっている。
さらに、セパレータは第一実施形態と同様にポリエーテルエーテルケトン樹脂で構成されており、その表面には第一実施形態と同様の改質処理が施されている。よって、第一実施形態のリニアガイド装置100の場合と同様の効果が得られる。
図4は、本発明に係る転動装置の別の実施形態である転がり軸受(深溝玉軸受)の構造を示す断面図である。また、図5は、図4の転がり軸受に組み込まれた保持器の斜視図である。
図4の転がり軸受300は、外周面に軌道面31aを有する内輪(内方部材)31と、内輪31の軌道面31aに対向する軌道面32aを有し内輪31の外方に配置された外輪(外方部材)32と、両軌道面31a,32a間に転動自在に配置された複数の転動体(玉)33と、両軌道面31a,32a間に転動体33を保持する保持器34と、シールド35,35と、を備えている。
また、この転がり軸受300の保持器34は、チタン酸カリウムウィスカーを15質量%含有するETFE(大塚化学株式会社製のポチコンFT24)を射出成形して製造したものであり、その表面には第一実施形態と同様の改質処理が施されている。よって、第一実施形態のリニアガイド装置100の場合と同様の効果が得られる。
また、本実施形態においては転がり軸受の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
また、保持器44は、炭素繊維を30質量%含有する熱可塑性ポリイミド樹脂(三井化学株式会社製のAURUM JCN3030)を射出成形して製造したものであり、その表面には第一実施形態と同様の改質処理が施されている。よって、第一実施形態のリニアガイド装置100の場合と同様の効果が得られる。
前述の改質処理を施すことによって樹脂の潤滑剤に対する親和性が向上することを確認するため、以下のような試験を行った。
PEEK(ビクトレックス社製PEEK450G)製の円板状の試験片(直径30mm、厚さ3mm)に、第一実施形態と同様の改質処理を施した。なお、超臨界流体の種類は超臨界二酸化炭素、使用した潤滑油はPFPE(ダイキン工業株式会社製のデムナムS−200)及びトリ(2−オクチルドデシル)シクロペンタン(Nye Lubricants社製のNye Synthetic Oil 2001A)である。改質処理の条件は、潤滑油にPFPEを使用した場合は、温度120℃、圧力15MPaであり、トリ(2−オクチルドデシル)シクロペンタンを使用した場合は、温度120℃、圧力25MPaである。
その結果、10秒後の動的接触角は、PFPEの場合の実施例は20.5°で、比較例は31.5°であった。また、トリ(2−オクチルドデシル)シクロペンタンの場合の実施例は19.0°で、比較例は26.5°であった。これらの結果から、実施例の試験片は、改質処理によって試験片の表面層に潤滑油が浸透し固定化されているため、付着させた潤滑油に対する親和性(濡れ性)が優れていることが分かった。
11a ボール軌道溝
12 スライダ
12a ボール軌道溝
13 ボール
18 セパレータ
21 ねじ軸
21a ねじ溝
22 ナット
22a ねじ溝
23 ボール
31,41 内輪
32,42 外輪
33,43 転動体
34,44 保持器
100 リニアガイド装置
200 ボールねじ
300 転がり軸受
Claims (7)
- 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配置された複数の転動体と、を備える転動装置において、
構成部品のうち少なくとも1つは、樹脂で構成されているとともに、潤滑油を含有する超臨界流体を接触させ、浸透した潤滑油及び超臨界流体のうち超臨界流体のみを除去する改質処理が施されていることを特徴とする転動装置。 - 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配置された複数の転動体と、を備える転動装置において、
前記内方部材及び前記外方部材の少なくとも一方は、樹脂で構成されているとともに、潤滑油を含有する超臨界流体を接触させ、浸透した潤滑油及び超臨界流体のうち超臨界流体のみを除去する改質処理が施されていることを特徴とする転動装置。 - 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配置された複数の転動体と、前記各転動体の間に介装されたセパレータと、を備える転動装置において、
前記セパレータは、樹脂で構成されているとともに、潤滑油を含有する超臨界流体を接触させ、浸透した潤滑油及び超臨界流体のうち超臨界流体のみを除去する改質処理が施されていることを特徴とする転動装置。 - 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配置された複数の転動体と、前記両軌道面間に前記転動体を保持する保持器と、を備える転動装置において、 前記保持器は、樹脂で構成されているとともに、潤滑油を含有する超臨界流体を接触させ、浸透した潤滑油及び超臨界流体のうち超臨界流体のみを除去する改質処理が施されていることを特徴とする転動装置。
- 前記超臨界流体が超臨界二酸化炭素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の転動装置。
- 前記潤滑油がパーフルオロポリエーテルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転動装置。
- 前記潤滑油がアルキル化シクロペンタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転動装置。
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