JP2005291122A - 自動車用蒸発燃料処理装置の故障診断方法および故障診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ポンプによる負圧導入時の挙動を測定してリーク検出を行なうエバポ系の故障診断装置および故障診断方法の信頼性を向上させる。
【解決手段】 エバポ系35のリーク故障診断のために、切換弁70によって基準漏れ穴85を含む基準通路系80を選択した状態でポンプ50により負圧を導入して、圧力センサ90により第1回目の基準圧力測定が行なわれる。次に、切換弁70の選択を切換えて、エバポ系35へポンプ50により負圧が導入された状態で圧力センサ90によりエバポ系35の漏れ測定が行なわれる。圧力センサ90の測定圧力が第1回目の基準圧力に到達しない場合には、再び基準漏れ系80へポンプ50により負圧を導入して第2回目の基準圧力測定が行なわれる。エバポ系35の漏れ測定時とポンプ50の状態が近い第2回目の基準圧力を反映することで、信頼性の高いエバポ系35のリーク検出が可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】 エバポ系35のリーク故障診断のために、切換弁70によって基準漏れ穴85を含む基準通路系80を選択した状態でポンプ50により負圧を導入して、圧力センサ90により第1回目の基準圧力測定が行なわれる。次に、切換弁70の選択を切換えて、エバポ系35へポンプ50により負圧が導入された状態で圧力センサ90によりエバポ系35の漏れ測定が行なわれる。圧力センサ90の測定圧力が第1回目の基準圧力に到達しない場合には、再び基準漏れ系80へポンプ50により負圧を導入して第2回目の基準圧力測定が行なわれる。エバポ系35の漏れ測定時とポンプ50の状態が近い第2回目の基準圧力を反映することで、信頼性の高いエバポ系35のリーク検出が可能となる。
【選択図】 図1
Description
この発明は、自動車用蒸発燃料処理装置の故障診断方法および故障診断装置に関し、より特定的には、蒸発燃料の漏れ(リーク)を検出する故障診断技術に関する。
自動車用蒸発燃料処理装置は、燃料タンクで発生した蒸発燃料の大気への放散を防止するために設置される。このような自動車用蒸発燃料処理装置では、燃料タンクから導入通路を介して導入される蒸発燃料を一旦キャニスタ内の吸着材に付着し、この吸着した蒸発燃料を内燃機関の運転時にパージ通路を介して内燃機関の吸気管へ供給する構成としている。内燃機関へのパージ量は、パージ通路に設けられたパージ制御弁によって制御される。燃料タンクからキャニスタおよびパージ通路を介してパージ制御弁に至る結合体(以下、「エバポ系」と称する)は、上記パージ制御弁が閉状態のときに蒸発燃料が拡散可能な閉空間を形成するが、米国の法規制では、このエバポ系に蒸発燃料の漏れがないかどうかを判定する故障診断装置の設置が義務付けられている。
特に、米国の法規制では、このような故障診断装置を、OBD(On Board Diagnosis)として設け、自己診断および診断結果の記憶機能を持たせることを要求している。すなわち、定期的にエバポ系のリーク故障診断を行なって、リークを検出した場合にはランプの点灯等によって運転者へ通知するシステムの設置が義務付けられている。
このようなエバポ系のリーク故障診断に適用可能な検査装置および検査方法として、負圧を与えるためのポンプを備えた漏れ診断ユニットを配置して、ポンプ・モータに供給された電流を測定することにより、エバポ系に相当するタンク通気装置にポンプから与えるべき供給流れが基準漏れを介して負圧を与えたときに存在する供給流れと異なっているかどうかを特定する手法が開示されている(たとえば特許文献1)。
また、燃料残量が特に多い状態でも高精度にエバポ系の漏れを検出するために、エバポ系内の圧力が第1の所定圧力から第2の所定圧力に低下するまでの所定時間を、漏れ箇所に基準の漏れ穴を含む状態と含まない状態とでそれぞれ測定し、両者の所要時間を比較することによって、雰囲気温度との影響を受けずに漏れの状態について診断することが可能な故障診断方法および故障診断装置が開示されている(たとえば特許文献2)。
さらに、燃料タンク内の燃料液面の傾斜等に起因する誤診断を防止するために、圧力センサの出力を平均値処理して故障診断を行なう故障診断装置が開示されている(たとえば特許文献3)。
また、燃料タンク内の燃料の性状にかかわらず正確な異常診断を行なうために、エバポ系に吸気負圧を導入、密閉した後の圧力変化を判定して比較し、異常検出を行なう構成において、燃料温度および外気温度等で判定値を補正する手法が開示されている(たとえば特許文献4)。
特開2002−4959号公報
特開2004−3440号公報
特開平9−32659号公報
特開平7−12014号公報
特許文献1等のように、ポンプを用いて基準漏れ系およびエバポ系に交互に負圧を導入して両者の挙動を比較する構成では、リーク故障診断の開始後、ポンプを起動して一方の系に負圧を導入して一定時間その挙動を測定した後に、再度ポンプを起動して他方の系に負圧を導入して同様の測定を行なう必要がある。
しかしながら、エバポ系のリーク故障診断は、自動車の運転停止後数時間程度が経過して燃料タンク系が安定した状態で実施する必要があるので、上記一方の系へ負圧を与えるための初回動作時と、上記他方の系へ負圧を与えるための2回目動作時との間では、ポンプの条件が大きく異なってくる。具体的には、リーク故障診断開始時の初回動作時には、ポンプ自体の温度も低く、かつ電源の温度も低い状態である一方で、2回目動作時ではポンプおよび電源の温度がある程度上昇している。
このようなポンプ状態の差異により、ポンプの動作条件設定を同様としても、比較されるべき2つの系に同様の圧力(負圧)を実際に与えることが困難となってしまい、リーク故障検出の信頼性を低下させてしまう。
また、最初の測定で燃料にベーパー等が発生した場合にも、比較されるべき2つの系での条件が異なってくるので、リーク故障検出の信頼性が低下する。
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、ポンプによる負圧導入時の挙動を測定してリーク検出を行なう自動車用蒸発燃料処理装置の故障診断装置および故障診断方法の信頼性を向上させることである。
この発明による故障診断方法は、燃料タンクから導入通路を介して導かれた蒸発燃料を一時的に吸着する吸着材を収納したキャニスタと、吸着材から脱離した蒸発燃料を内燃機関の吸気管へ導くパージ通路と、吸気管へ導く蒸発燃料の量を調整するためにパージ通路に設けられたパージ制御弁とを含むエバポ系を備えた自動車用蒸発燃料処理装置について、パージ制御弁の閉状態時におけるエバポ系の漏れを検出する故障診断方法であって、第1の基準測定ステップと、漏れ測定ステップと、第2の基準測定ステップと、第1の判定ステップとを備える。第1の基準測定ステップは、基準漏れを含む基準漏れ系に対して圧力源より圧力を与えて、基準漏れ系の圧力を計測する。漏れ測定ステップでは、パージ制御弁が閉状態である時エバポ系に対して第1の基準測定ステップと同様に圧力源を動作させて、そのときの圧力を測定する。第2の基準測定ステップは、漏れ測定ステップの後に実行されて、漏れ測定ステップと同様に圧力源を動作させて基準漏れ系での圧力を計測する。第1の判定ステップは、エバポ系に基準を超えた漏れが存在するかどうかを、少なくとも第2の基準測定ステップで測定された圧力が反映された判定圧力と、漏れ測定ステップで測定された圧力との比較に基づいて判定する。
好ましくは、この発明による故障診断方法は、第2の判定ステップをさらに備える。第2の判定ステップは、第1の基準測定ステップで測定された基準圧力と漏れ測定ステップで測定された圧力に基づいて、エバポ系に基準を超えた漏れが存在しないことを判定する。さらに、第2の判定ステップにおいてエバポ系に基準を超えた漏れが存在しないと判定された場合には、第2の基準測定ステップおよび第1の判定ステップの実行は省略される。
さらに好ましくは、第2の判定ステップは、漏れ測定ステップと並列に実行され、かつ、漏れ測定ステップでの測定圧力と第1の基準測定ステップで測定された基準圧力とを逐次比較して、測定圧力が基準圧力に達した場合に、エバポ系に基準を超えた漏れが存在しないとの判定を下すとともに、エバポ系の漏れを検出する故障診断を終了させる。
あるいは好ましくは、第1の判定ステップで用いられる判定圧力は、第1および第2の基準測定ステップで測定された圧力の両方に基づいて決定される。
さらに好ましくは、判定圧力は、第1および第2の基準測定ステップで測定された圧力の平均値である。
この発明による故障診断装置は、燃料タンクから導入通路を介して導かれた蒸発燃料を一時的に吸着する吸着材を収納したキャニスタと、吸着材から脱離した蒸発燃料を内燃機関の吸気管へ導くパージ通路と、吸気管へ導く蒸発燃料の量を調整するためにパージ通路に設けられたパージ制御弁とを含むエバポ系を備えた自動車用蒸発燃料処理装置について、パージ制御弁の閉状態時におけるエバポ系の漏れを検出する故障診断装置であって、基準漏れ系と、圧力源と、切換弁と、圧力計測器と、制御装置とを備える。基準漏れ系は、基準漏れを含む。圧力源は、圧力を与えるために設けられる。切換弁は、圧力源からの圧力をエバポ系および基準漏れ系の一方へ選択的に与えるために設けられる。圧力計測器は、エバポ系および基準漏れ系の切換弁によって選択された一方の圧力を測定する。制御装置は、故障診断装置の動作を制御する。特に、制御装置は、切換弁によって基準漏れ系を選択し、かつ基準漏れ系に対して圧力源より圧力を与えて、基準漏れ系での圧力を圧力計測器によって測定する第1の基準測定と、切換弁によってエバポを選択し、第1の基準測定と同様に圧力源を動作させて、パージ制御弁が閉状態であるエバポ系の圧力を圧力計測器によって測定する漏れ測定と、漏れ測定の後に切換弁によって基準漏れ系を再び選択し、かつ漏れ測定と同様に圧力源を動作させて基準漏れ系での圧力を圧力計測器によって測定する第2の基準測定と、エバポ系に基準を超えた漏れが存在するかどうかを、第2の基準測定で測定された圧力が少なくとも反映された判定圧力と、漏れ測定測定された圧力との比較に基づいて判定する第1の判定動作とを行なう。
好ましくは、制御装置は、第1の基準測定および漏れ測定でそれぞれ測定された飽和圧力に基づいて、エバポ系に基準を超えた漏れが存在するかどうかを判定する第2の判定動作を第2の基準測定に先立ってさらに行ない、かつ、第2の判定動作においてエバポ系に基準を超えた漏れが存在しないと判定された場合には、第2の基準測定および第1の判定動作の実行を省略する。
この発明による自動車用蒸発燃料処理装置の故障診断方法および故障診断装置では、エバポ系の漏れ測定の直後に当該漏れ測定とより近い条件で測定した基準圧力(2回目)を考慮に入れた判定圧力と、当該漏れ測定時の測定圧力との比較により、エバポ系に基準を超えた漏れが存在するとの判定を下すことができる。これにより、リーク誤検出を防止した信頼性の高い故障診断を行なうことができる。
また、エバポ系の漏れ測定前に予め実行された基準通路系での基準圧力(1回目)測定の結果を反映して、エバポ系の漏れ測定時に測定圧力が当該基準圧力へ到達した場合には、エバポ系に基準を超えた漏れが存在しないとの判定(リーク正常判定)を下して、エバポ系の漏れ測定以降の故障診断フローを省略することにより、故障診断を効率的に行なうことが可能となる。
さらに、エバポ系の漏れ測定時に、測定圧力と上記基準圧力(1回目)とを逐次比較した上で上記リーク正常判定を下すことにより、故障診断をさらに効率的に行なうことができる。
なお、上記判定圧力に複数回の基準測定の結果を反映することにより、故障診断の信頼性を向上できる。特に、エバポ系の漏れ測定の前後での第1回目および第2回目の基準測定で測定された基準圧力の平均値を用いれば、判定圧力を簡易に設定できる。
以下において、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
図1は、この発明に従う故障診断装置を備えた自動車用蒸発燃料処理装置の構成を説明するブロック図である。
図1を参照して、この発明による自動車用蒸発燃料処理装置5は、燃料タンク10と、導入通路12と、キャニスタ20と、パージ通路24と、パージ制御弁30と、故障診断装置60と、通気管92と、エアフィルタ95とを備える。
燃料タンク10には、ガソリンに代表される揮発性の燃料15が格納される。揮発した蒸発燃料は、導入通路12を介してキャニスタ20へ導かれる。キャニスタ20は、代表的には活性炭フィルタで構成された吸着材21を収納する。吸着材21は、導入通路12により導入された蒸発燃料を一時的に蓄積する。
吸着材21から脱離した蒸発燃料は、パージ通路24を介して、パージ制御弁30を介して内燃機関(図示せず)の吸気管40へ導かれる。パージ制御弁30としては、その開度を電気信号で制御可能な電磁弁が用いられる。
パージ制御弁30は、エンジンの各部を制御する電子制御ユニット(図示せず)によって制御される。エンジン運転時には、デューティ制御等によって調整されたパージ制御弁30の開度に応じて、吸着材21から脱離した蒸発燃料が吸気管40の負圧により吸気管40内にパージされる。
吸気管40に導かれた蒸発燃料は、矢印41で示すように内燃機関へ導かれ、インジェクタ(図示せず)からの噴射燃料とともに燃焼される。内燃機関で生じた熱エネルギが運動エネルギへ変換されることによって、図示しない車両の駆動エネルギが発生される。
パージ制御弁30は、エンジン停止時には閉状態とされる。このとき、燃料タンク10、導入通路12、キャニスタ20およびパージ通路24によって、密閉されたエバポ系35が構成される。
エバポ系35のリーク故障診断のための故障診断装置60は、「圧力源」であるポンプ50と、チェック弁55と、切換弁70と、基準通路系80と、「圧力計測器」として設けられる圧力センサ90と、故障診断装置60における故障診断測定を制御する制御装置100とを備える。
基準通路系80は、フィルタ81および基準漏れ穴85を含む。基準漏れ穴85は、法規制上、検出が義務付けられた漏れ量の存在を検知可能な大きさで設けられる。
ポンプ50は、制御装置100からの動作指示に応じて作動する。ポンプ50の排出量や排出圧等の動作条件についても、制御装置100から指示が与えられるものとする。ポンプ50を作動させることによって、エンジン停止中でも、負圧を導入することが可能となる。
切換弁70は、ポンプ50による負圧導入経路を切換えるために設けられる。切換弁70の位置は、制御装置100からの電気的信号により制御可能である。切換弁70が位置Iに設定される場合には、基準通路系80が通気管92と接続されるので、ポンプ50の作動によって導入される負圧は基準通路系80へ与えられる。これに対して、切換弁70が位置IIに設定される場合には、キャニスタ20に接続された通気通路22をフィルタ51を介してポンプ50と接続することにより、ポンプ50の作動によって導入される負圧はエバポ系35へ与えられる。
なお、通常運転時には切換弁70は位置Iに設定され、キャニスタ20と接続された通気通路22は、通気管92およびエアフィルタ95を介して大気に解放される。
チェック弁55は、切換弁70の位置IIに対応するシステム閉塞時の圧力抜け防止のために設けられている。ポンプ50の作動時における基準通路系80またはエバポ系35の圧力は、圧力センサ90によって逐次測定される。圧力センサ90の測定圧力は、制御装置100へ送出され、制御装置100でのリーク故障診断に用いられる。
制御装置100は、所定の処理手順がプログラムされたマイクロコンピュータで構成することが可能である。なお、この発明の実施の形態では、制御装置100を故障診断装置60の要素として記載したが、制御装置100の機能をエンジンを制御する電子制御ユニット(図示せず)に持たせる構成とすることも可能である。
次に、故障診断装置60によるエバポ系35のリーク故障診断方法について図2〜図4を用いて詳細に説明する。
図2および図3は、この発明による故障診断方法を説明するフローチャートであり、図4は、故障診断時における圧力センサ90の測定圧力の推移を示す図である。
なお、図2および図3に示したフローチャートは、図1に示した制御装置100に予めプログラムされた処理として実行されるものとする。すなわち、以下の説明するこの発明によるリーク故障診断は、制御装置100の指示に従って、故障診断装置60の各部が動作することにより実行される。
図2を参照して、エバポ系リーク故障診断が開始されると(ステップS100)、まず診断前処理が実行される(ステップS110)。
診断前処理では、運転条件、温度条件等が決められた所定の条件を満たすかどうかを判定し、リーク故障診断を行なう条件が成立していることが確認される。たとえば、リーク故障診断はエバポ系35の圧力が安定した状態で行なう必要があるため、エンジン停止から所定時間が経過しているかどうかがチェックされる。エンジン運転中には、燃料タンク10内の温度上昇により、あるいは燃料15が揺さぶられることによる蒸発の促進によってエバポ系35内の圧力が変動するので、このような状態でのリーク故障診断の実行が排除される。
診断前処理では、さらに、圧力センサ90による測定圧力値が安定しているかや、大気圧の測定が実行される。特に、車両が高地に位置しているときには、正しくリーク故障診断を行なうことができないため、大気圧の測定によって、このような条件でのリーク故障診断の実行が排除される。
なお、図示を省略しているが、診断前処理においてリーク故障診断を行なう条件が成立していないと判定された場合には、エバポ系リーク故障診断は中断されて、以降のステップ群は実行されない。
図4を参照して、時刻t1までに診断前処理(ステップS110)が実行されるので、診断前処理が終了する時刻t1以前での圧力センサ90での測定圧力は大気圧Pairとなる。
再び図2を参照して、診断前処理(ステップS110)が終了し、リーク故障診断の実行条件が成立している場合には、「第1の基準測定ステップ」に相当する1回目のリファレンス圧力計測が行なわれる(ステップS120)。
リファレンス圧力計測時には、図1の構成において、切換弁70は位置Iに設定され、基準通路系80に対してポンプ50により負圧が導入される。
図4に示すように、ポンプ50の作動(時刻t1)に応答して、圧力センサ90によって測定される、基準漏れ穴85を含む基準通路系の圧力が低下していき、ポンプ50の排出量と基準漏れ穴85からの流入量が均衡すると、圧力センサ90の測定圧力が飽和する(時刻t2)。このときの飽和圧力値は、基準圧力Prf1として、制御装置100に記憶される。
再び図2を参照して、測定された基準圧力Prf1が異常値でないことを確認するために、基準圧力Prf1が所定範囲内であることの確認が行なわれ(ステップS130)、基準圧力Prf1が所定範囲から外れており異常値と認められる場合には、ポンプ系異常を警告してリーク故障診断は終了される(ステップS135)。
一方、基準圧力Prf1が正常値であることが確認された場合には、リーク故障の検出対象であるエバポ系35に対する「漏れ測定ステップ」が実行される(ステップS140)。
エバポ系35の漏れ測定では、図1の構成において、切換弁70の設定を位置IIに切換えた状態でポンプ50を作動させることにより、通気通路22を介してエバポ系35に対して負圧が導入される(ステップS142)。
図4に示すように、エバポ系35に対して負圧が導入される時刻t3から、圧力センサ90によって測定される圧力は徐々に低下するが、その圧力挙動は、エバポ系35に存在するリーク量によって異なる。すなわち、リーク量が小さい場合には、符号110に示すように圧力が十分負圧側へ低下する一方で、リーク量が大きい場合には、符号120に示すように圧力低下は緩やかなものとなち、かつ、その低下量も小さい。
特に、基準漏れ穴85によるリーク量よりもエバポ系35のリーク量が小さい場合には、符号110に示されるように、圧力センサ90での測定圧力は、基準圧力Prf1に到達した後、基準圧力Prf1よりも低い領域で飽和する。一方、基準漏れ穴85によるリーク量よりもエバポ系35のリーク量が大きい場合には、符号120に示されるように、圧力センサ90での測定圧力は、基準圧力Prf1へ到達しない。すなわち、測定圧力は、基準圧力Prf1よりも高い領域で飽和する。
再び図2を参照して、漏れ測定ステップS140は、上記のエバポ系へ負圧を導入するステップ(S142)に加えて、圧力センサの測定圧力が飽和したかどうかを判定するステップ(S144)と、一定時間が経過しても測定圧力が飽和しないときにタイムオーバーと判定するステップ(S146)と、圧力センサの測定圧力が飽和したときに飽和圧力を測定して制御装置100へ記憶するステップ(S148)とを含む。
一定期間が経過してステップS148でタイムオーバと判定されるまでの間、ステップS144は、測定圧力が飽和するまで所定間隔で繰り返し実行される。ステップS144では、たとえば、前回との測定圧力の差が所定値以下であるかどうかを判定することにより、測定圧力が飽和したかどうかが判定される。
一定時間を経過しても測定圧力が飽和せず、ステップS148でタイムオーバと判定された場合(ステップS148)には、診断異常としてリーク故障診断は終了される(ステップS300)。なお、診断異常の発生は、必要に応じて警告灯(図示せず)によって運転者へ検知される。
また、エバポ系への負圧導入後、圧力センサ90の測定圧力が基準圧力Prf1へ到達したかどうかの判定が並列的に逐次実行される(ステップS150)。ステップS150において、測定圧力が基準圧力Prf1へ到達したと判定された場合には、エバポ系35のリーク量が基準漏れ穴85によるリーク量よりも小さいことから、エバポ系リークには基準を超えるリークが存在しないとの「リーク正常判定」がなされて(ステップS160)、リーク故障診断は終了される(ステップS300)。ステップS150は、ステップS144と同様に所定間隔で繰り返し実行される。
したがって、図4の符号110に示される圧力挙動時(リーク小)には、エバポ系への負圧導入が開始される時刻t3より徐々に低下する測定圧力が基準圧力Prf1を下回った時刻t4において、ステップS150,S160によって「リーク正常判定」がなされて、リーク故障診断は終了される。
一方、図4の符号120に示される圧力挙動時(リーク大)には、時刻t3から測定圧力が飽和する時刻t5までの間、時刻t3より上記のステップS144,S146、S150が繰り返し実行され、時刻t5にステップS148が実行されて、飽和圧力(測定圧力)Pdtが制御装置100へ記憶される。
上述したように、リーク故障診断はエンジン停止後所定時間が経過した状態で実行する必要があるので、1回目のリファレンス圧力計測が行なわれる時刻t1〜t3では、ポンプ50自体の温度およびその電源(バッテリ)の温度は大気温に応じて十分に低下している。その一方、漏れ測定で飽和圧力が検出される時刻t5では、ポンプ50がある程度の時間しているので、ポンプ温度およびバッテリ温度が上昇している。したがって、制御装置100からポンプ50への動作条件設定を共通としても、これらの測定時間でポンプ50により導入される圧力を同一とすることが困難である。
したがって、測定条件を揃えることが困難である、1回目のリファレンス圧力計測での基準圧力Prf1と、漏れ測定での飽和圧力Pdtとの比較のみで、リーク有無を判定することは故障診断の信頼性を低下させる可能性がある。
このため、図3に示されるように、この発明によるリーク故障診断方法では、漏れ測定ステップS140において測定圧力が基準圧力Prf1に到達しなかった場合は、リーク故障検出の信頼性を高めるために、「第2の基準測定ステップ」に相当する2回目のリファレンス圧力計測が行なわれる(ステップS170)。2回目のリファレンス圧力計測は、1回目のリファレンス圧力計測(ステップS120)と同様に行なわれる。
再び図4を参照して、2回目のリファレンス圧力計測が開始される時刻t6より切換弁70の設定が再び位置Iへ切換えられ、時刻t7より再び基準通路系80へ負圧が導入される。この結果、時刻t8での飽和圧力値が基準圧力Prf2として、制御装置100に記憶される。
2回目のリファレンス圧力計測時(時刻t1〜t2)にポンプ50から基準通路系80へ与えられる圧力(負圧)は、漏れ測定時(時刻t5)にポンプ50からエバポ系35へ与えられた圧力(負圧)とほぼ同一レベルであることが期待される。すなわち、2回目のリファレンス圧力計測時の測定条件は、エバポ系35の漏れ測定条件と近く、得られた基準圧力Prf2は、より信頼性の高いものであると期待できる。
再び図3を参照して、2回目のリファレンス圧力計測(ステップS170)で測定された基準圧力Prf2を少なくとも反映して、リーク故障検出の判定圧力が算出される(ステップS180)。たとえば、判定圧力は、両者の平均値(Prf1+Prf2)/2に設定される。
このように、基準圧力Prf1およびPrf2の両方に基づいて判定圧力を算出することにより、複数回の圧力測定によって判定圧力を設定できるので、故障診断の信頼性を向上することができる。なお、判定圧力の算出は、上記の例に限られず、基準圧力Prf1,Prf2に基づく限り任意の手法で設定可能である。
ステップS180で算出された判定圧力と漏れ測定時の飽和圧力Pdtとの比較により、最終的なエバポ系リーク有無が判定される(ステップS190)。すなわち、測定圧力(飽和圧力)Pdtが判定圧力よりも低い場合には、エバポ系に基準以上のリークは存在しないとして、「リーク正常判定」がなされて(ステップS200)、リーク故障診断が終了される(ステップS300)。
一方、判定圧力が測定圧力(飽和圧力)Pdtよりも低く、測定圧力が判定圧力まで到達しない(負圧側)場合には、エバポ系に基準を超えたリークが存在するとして、「リーク有り判定」がなされて(ステップS210)、リーク故障診断が終了される(ステップS300)。エバポ系35への「リーク有り判定」は、警告灯(図示せず)によって運転者へ検知される。
なお、図3に示したステップS190がこの発明における「第1の判定ステップ」を構成し、図2に示したステップS150,S160は、この発明における「第2の判定ステップ」を構成する。
以上説明したように、この発明による自動車用蒸発燃料処理装置のエバポ系のリーク故障診断方法および故障診断装置では、エバポ系の漏れ測定の直後により近い測定条件で測定した基準圧力を考慮に入れて、基準を超えた漏れが存在するとの「リーク有り判定」を下すので、リーク誤検出を防止して故障診断の信頼性を向上することができる。
また、エバポ系の漏れ測定前に、基準漏れ穴を含む基準通路系で同様のポンプ条件で基準圧力を予め測定しておき、エバポ系の漏れ測定時に測定圧力が当該基準圧力へ到達した場合には、基準を超えた漏れが存在しないとの「リーク正常判定」を下して、2回目のリファレンス圧力測定(S170)以降を省略することにより、故障診断を効率的に行なうことが可能となる。
さらに、エバポ系の漏れ測定時に、1回目のリファレンス圧力測定での基準圧力と測定圧力とを逐次比較して(ステップS150)、上記「リーク正常判定」を下すことにより、故障診断をさらに効率的に行なうことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
5 自動車用蒸発燃料処理装置、10 燃料タンク、12 導入通路、15 燃料、20 キャニスタ、21 吸着材、22 通気通路、24 パージ通路、30 パージ制御弁、35 エバポ系、40 吸気管、50 ポンプ(圧力源)、51,81,95 フィルタ、55 チェック弁、60 故障診断装置、70 切換弁、80 基準通路系、85 基準漏れ穴、90 圧力センサ、92 通気管、110 圧力挙動(リーク小)、120 圧力挙動(リーク大)、Pdt 飽和圧力(エバポ系測定圧力)、Prf1,Prf2 基準圧力。
Claims (7)
- 燃料タンクから導入通路を介して導かれた蒸発燃料を一時的に吸着する吸着材を収納したキャニスタと、前記吸着材から脱離した蒸発燃料を内燃機関の吸気管へ導くパージ通路と、前記吸気管へ導く蒸発燃料の量を調整するために前記パージ通路に設けられたパージ制御弁とを含むエバポ系を備えた自動車用蒸発燃料処理装置について、前記パージ制御弁の閉状態時における前記エバポ系の漏れを検出する故障診断方法であって、
基準漏れを含む基準漏れ系に対して圧力源より圧力を与えて、前記基準漏れ系の圧力を計測する第1の基準測定ステップと、
前記パージ制御弁が閉状態である時前記エバポ系に対して前記第1の基準測定ステップと同様に前記圧力源を動作させて、そのときの圧力を測定する漏れ測定ステップと、
前記漏れ測定ステップの後に実行されて、前記漏れ測定ステップと同様に前記圧力源を動作させて前記基準漏れ系での圧力を計測する第2の基準測定ステップと、
前記エバポ系に基準を超えた漏れが存在するかどうかを、少なくとも前記第2の基準測定ステップで測定された圧力が反映された判定圧力と、前記漏れ測定ステップで測定された圧力との比較に基づいて判定する第1の判定ステップとを備える、故障診断方法。 - 前記第1の基準測定ステップで測定された基準圧力と前記漏れ測定ステップで測定された圧力に基づいて、前記エバポ系に基準を超えた漏れが存在しないことを判定する第2の判定ステップをさらに備え、
前記第2の判定ステップにおいて前記エバポ系に基準を超えた漏れが存在しないと判定された場合には、前記第2の基準測定ステップおよび前記第1の判定ステップの実行は省略される、請求項1記載の故障診断方法。 - 前記第2の判定ステップは、前記漏れ測定ステップと並列に実行され、かつ、前記漏れ測定ステップでの測定圧力と前記前記第1の基準測定ステップで測定された前記基準圧力とを逐次比較して、前記測定圧力が前記基準圧力に達した場合に、前記エバポ系に基準を超えた漏れが存在しないとの判定を下すとともに、前記エバポ系の漏れを検出する故障診断を終了させる、請求項2記載の故障診断方法。
- 前記第1の判定ステップで用いられる前記判定圧力は、前記第1および第2の基準測定ステップで測定された圧力の両方に基づいて決定される、請求項1記載の故障診断方法。
- 前記判定圧力は、前記第1および第2の基準測定ステップで測定された圧力の平均値である、請求項4記載の故障診断方法。
- 燃料タンクから導入通路を介して導かれた蒸発燃料を一時的に吸着する吸着材を収納したキャニスタと、前記吸着材から脱離した蒸発燃料を内燃機関の吸気管へ導くパージ通路と、前記吸気管へ導く蒸発燃料の量を調整するために前記パージ通路に設けられたパージ制御弁とを含むエバポ系を備えた自動車用蒸発燃料処理装置について、前記パージ制御弁の閉状態時における前記エバポ系の漏れを検出する故障診断装置であって、
基準漏れを含む基準漏れ系と、
圧力を与えるための圧力源と、
前記圧力源からの圧力を前記エバポ系および前記基準漏れ系の一方へ選択的に与えるための切換弁と、
前記エバポ系および前記基準漏れ系の前記切換弁によって選択された一方の圧力を測定するための圧力計測器と、
前記故障診断装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記切換弁によって前記基準漏れ系を選択し、かつ前記基準漏れ系に対して前記圧力源より圧力を与えて、前記基準漏れ系での圧力を前記圧力計測器によって測定する第1の基準測定と、
前記切換弁によって前記エバポを選択し、前記第1の基準測定と同様に前記圧力源を動作させて、前記パージ制御弁が閉状態である前記エバポ系の圧力を前記圧力計測器によって測定する漏れ測定と、
前記漏れ測定の後に前記切換弁によって前記基準漏れ系を再び選択し、かつ前記漏れ測定と同様に前記圧力源を動作させて前記基準漏れ系での圧力を前記圧力計測器によって測定する第2の基準測定と、
前記エバポ系に基準を超えた漏れが存在するかどうかを、前記第2の基準測定で測定された圧力が少なくとも反映された判定圧力と、前記漏れ測定測定された圧力との比較に基づいて判定する第1の判定動作とを行なう、故障診断装置。 - 前記制御装置は、前記第1の基準測定および前記漏れ測定でそれぞれ測定された飽和圧力に基づいて、前記エバポ系に基準を超えた漏れが存在するかどうかを判定する第2の判定動作を前記第2の基準測定に先立ってさらに行ない、かつ、第2の判定動作において前記エバポ系に基準を超えた漏れが存在しないと判定された場合には、前記第2の基準測定および前記第1の判定動作の実行を省略する、請求項6記載の故障診断装置。
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