JP2005290615A - 炭素繊維ストランド及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 不飽和マトリックス樹脂との接着性に優れ、濡れ性、ILSS等の物性が優れた炭素繊維強化樹脂複合材料が得られる炭素繊維ストランドを提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される官能基を化合物の両末端に含有するエステル化合物と、イソシアン酸エステル化合物とを含有するサイズ剤が付着されてなる炭素繊維ストランド。
【化1】
Figure 2005290615

〔式中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。〕
一般式(1)で示される官能基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はα−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基が好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂の強化材に好適な炭素繊維ストランドに関する。詳細には、ラジカル重合性樹脂をマトリックス樹脂として用いる場合に、樹脂と炭素繊維の密着性に優れた複合材料を製造することができる炭素繊維ストランド及びその製造方法に関する。
炭素繊維は他の繊維と比較し、強度や弾性率が高く、軽いという特徴を有するため、航空宇宙産業やスポーツ産業といった、各種の産業分野において利用されている。また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化材として使用されている。
熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として複合材料を製造する方法としては、中間基材であるプリプレグを用いて賦形成型する方法のほか、引抜成形法、レジン・トランスファー・モールディング(RTM)法、フィラメント・ワインディング(FW)法、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)法、バルク・モールディング・コンパウンド(BMC)法、ハンドレイアップ法などがある。
複合材料において、マトリックス樹脂となる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂のほか、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等の不飽和熱硬化性樹脂が使用される。
不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂は一般的にスチレン等の重合性モノマーと共に使用される。これらの樹脂は、エポキシ樹脂に比べ粘度が低いことや硬化速度が速いことから、RTMや引抜成形によって製造される複合材料のマトリックス樹脂として広く利用されている。
しかしながら、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂をマトリックス樹脂(不飽和マトリックス樹脂)とし、従来のサイズ剤を付与した炭素繊維を強化材として使用する場合、得られる複合材料の物性は、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする場合と比較して低い場合がある。具体的には諸物性のうち、炭素繊維と、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂との接着強度、特に剪断強度がエポキシ樹脂の場合と比較して低く、得られる複合材料は実用的に使用し難いものとなる場合がある。
炭素繊維と不飽和マトリックス樹脂との接着強度を向上させる技術としては、ビニルエステル樹脂を炭素繊維に付着させる方法(特許文献1)、不飽和基を有するウレタン化合物を炭素繊維に付着させる方法(特許文献2、3)、末端不飽和基を有するエステル化合物を炭素繊維に付着させる方法(特許文献4)、末端不飽和基と極性基とを有する化合物を特定の表面処理を行った炭素繊維に付着させる方法(特許文献5、6)が開示されている。
しかし、特許文献1に記載のビニルエステル樹脂を炭素繊維に付着させる方法は、特許文献7の比較例2に示されているとおり、樹脂の含浸性に効果があっても接着性には効果がない。
また、特許文献2〜6に記載の方法は、サイズ剤にカップリング剤の機能を持たせることにより、炭素繊維と不飽和ポリエステル樹脂との接着性を向上させる方法であるが、その効果は不十分である。中でも、特許文献5、6記載の方法は、炭素繊維の表面処理を必要とし、通常の炭素繊維に対して広く使用できる方法ではない。
特公昭62−18671号公報(特許請求の範囲) 特開昭56−167715号公報(特許請求の範囲) 特開昭63−50573号公報(特許請求の範囲) 特開昭63−105178号公報(特許請求の範囲) 特開平11−93078号公報(特許請求の範囲) 特開2001−164471号公報(特許請求の範囲) 特開2000−355881号公報(実施例および比較例)
本発明者等は、熱硬化性樹脂用強化材に適した炭素繊維を開発するために種々検討しているうちに、炭素繊維ストランド(数百本乃至数万本のフィラメントからなる繊維束)に付着するサイズ剤として、所定の構造を有するエステル化合物と、イソシアン酸エステル化合物とを併用することにより、上記炭素繊維ストランドが熱硬化性樹脂系複合材料に適した強化材となり得ることを知得し本発明を完成するに至った。
よって、本発明の目的とするところは熱硬化性樹脂、特に不飽和マトリックス樹脂との接着性に優れ、炭素繊維強化複合材料の物性に優れた炭素繊維ストランド及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
〔1〕 下記一般式(1)
Figure 2005290615
〔式中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。〕
で示される官能基を化合物の両末端に含有するエステル化合物と、イソシアン酸エステル化合物とを含有するサイズ剤が付着されてなる炭素繊維ストランド。
〔2〕 一般式(1)で示される官能基がアクリロイル基、メタクリロイル基、又はα−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基である〔1〕に記載の炭素繊維ストランド。
〔3〕 イソシアン酸エステル化合物が、アルコール類、β−ジケトン類、オキシム類、及びラクタム類から選ばれる化合物が付加することにより保護基を導入したブロック型イソシアン酸エステルである〔1〕又は〔2〕に記載の炭素繊維ストランド。
〔4〕 下記一般式(1)
Figure 2005290615
〔式中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。〕
で示される官能基を化合物の両末端に含有するエステル化合物と、イソシアン酸エステル化合物とを含有するサイズ剤を溶解した溶液又は前記サイズ剤を分散させた水系エマルション中に炭素繊維を浸漬した後、80〜200℃で乾燥することを特徴とする〔1〕に記載の炭素繊維ストランドの製造方法。
〔5〕 イソシアン酸エステル化合物がブロック型イソシアン酸エステルであって、乾燥後に保護基の脱離温度より低温で加熱処理する〔4〕に記載の炭素繊維ストランドの製造方法。
本発明の炭素繊維ストランドは、両末端に所定の官能基を有するエステル化合物と、イソシアン酸エステル化合物とを含有するサイズ剤が付着しているので、不飽和マトリックス樹脂との接着性に優れる。本発明の炭素繊維ストランドと不飽和マトリックス樹脂の強化材に使用することにより、濡れ性、ILSS等の物性が優れた炭素繊維強化樹脂複合材料を得ることが可能である。
本発明の炭素繊維ストランドはサイズ剤が付着されてなり、このサイズ剤は下記一般式(1)
Figure 2005290615
〔ここでR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。〕
で示される官能基を化合物の両末端に含有するエステル化合物と、イソシアン酸エステル化合物とを含有する。
上記一般式(1)で示される官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、α−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基が好ましい。
上記一般式(1)で示される官能基を化合物の両末端に含有するエステル化合物は特に限定されるものではないが、以下のものが例示できる。
(i) 1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,3−プロパントリオール等の脂肪族ポリオール若しくはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の芳香族ポリオールの単量体若しくは縮合体と、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和一塩基酸とのエステル化合物。脂肪族ポリオールとしては炭素数1〜20のものが好ましく、1〜10のものがより好ましい。芳香族ポリオールの単量体又は縮合体としては、分子量110〜1100のものが好ましく、110〜530のものがより好ましい。
(ii) 下記一般式(2)
Figure 2005290615
〔式中のR2、R7は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表し、R3、R4、R5、R6は、それぞれ独立して水素、又はメチル基を表し、l、m、nは、それぞれ独立して1以上の整数を表す。〕
で示されるアルキレンオキシド変性ビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物。
一般式(2)において、lは1〜12が好ましく、mは1〜12が好ましく、nは1〜3が好ましい。
(iii) 下記一般式(3)
Figure 2005290615
〔式中のR8、R11は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表し、R9、R10は、それぞれ独立して水素、又はメチル基を表し、pは1以上の整数を表す。〕
で示されるビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物。
一般式(3)において、pは1〜3が好ましい。
以上のエステル化合物のうちでも、ビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物が靭性に優れることから特に好ましい。
更に具体的には、(i)の脂肪族ポリオール又は芳香族ポリオールの単量体又は縮合体と、不飽和−塩基酸とのエステル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製ライトエステル2EG)や、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物のジメタクリレート(共栄社化学株式会社製ライトエステルBP−2EM)等が挙げられる。
(ii)のアルキレンオキシド変性ビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物としては、例えば、ビスフェノールAエチレンオキシド2モル付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3002A)や、ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3002M)等が挙げられる。
(iii)のビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3000A)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3000M)、ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3002M)等が挙げられる。
これらの化合物は、例えばエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とにより合成することができる。
イソシアン酸エステル化合物は、芳香族イソシアン酸エステル、脂肪族イソシアン酸エステル等が使用できる。具体的には、以下に示す炭素数6〜13のジイソシアネートが好ましい。例示すれば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水素化MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が例示できる。さらに、これらのビュウレット型、アダクト型、イソシアヌル酸エステル型が使用できる。具体的には、アダクト型TDI、イソシアヌル酸エステル型TDI、ビュウレット型HMDI、アダクト型HMDI、イソシアヌル酸エステル型HMDI、ビュウレット型IPDI、アダクト型IPDI,イソシアヌル酸エステル型IPDI等が挙げられる。
本発明においては、イソシアン酸エステル化合物として、イソシアン酸エステルに、アルコール、フェノール、アミン、β−ジケトン、オキシム、及びラクタム類から選ばれる化合物が付加することにより官能基−N=C=Oに保護基を導入した化合物、即ちブロック型イソシアン酸エステルも使用できる。サイズ剤にブロック型イソシアン酸エステルを使用した場合には、保護基の脱離温度より低温では不飽和マトリックス樹脂との反応が殆どおこらない。このため、温度をコントロールすることにより容易に反応開始時間を遅らせることが可能となり、炭素繊維ストランドにマトリックス樹脂を十分含浸させることができるので、より一層炭素繊維ストランドと不飽和マトリックス樹脂との接着性に優れた複合材料を得ることができる。
本発明の炭素繊維ストランドに付着されたサイズ剤は、上記エステル化合物とイソシアン酸エステル化合物の配合比を、質量比で90:10〜50:50とすることが好ましく、80:20〜60:40とすることがより好ましい。エステル化合物に対するイソシアン酸エステル化合物の含有量が前記範囲より少ないと、繊維と樹脂の接着性が低くなる虞がある。また、イソシアン酸エステル化合物に対するエステル化合物の含有量が少ないと、複合材料を製造する際に不飽和マトリックス樹脂とイソシアン酸エステル化合物の反応により樹脂の粘度が高くなり、樹脂の含浸性が悪くなる虞がある。
上記エステル化合物とイソシアン酸エステル化合物の含有量は、これらの化合物の合計でサイズ剤中10質量%以上とするが、好ましくは20〜40質量%である。
サイズ剤には、炭素繊維の集束性をより向上させるため、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド樹脂等の樹脂を本発明の効果を損なわない範囲内で加えても良い。これらの樹脂の含有量は、通常サイズ剤全質量の70質量%以下である。
さらに、炭素繊維の取扱い性や、耐擦過性、耐毛羽性を高め、マトリックス樹脂の含浸性を向上させるため、サイズ剤には公知の添加剤や補助成分が含まれていても良い。添加剤や補助成分としては、分散剤、界面活性剤、平滑剤、安定剤等を挙げることができる。
サイズ剤の付着量は、炭素繊維ストランド全質量に対して0.3〜5.0質量%とすることが好ましい。サイズ剤の付着量が0.3質量%未満の場合は、本発明の効果が得られないばかりでなく、炭素繊維の集束性も劣るものとなる。一方、サイズ剤の付着量が5.0質量%を超える場合は、炭素繊維ストランドの開繊性が劣るものとなり、炭素繊維ストランドに対するマトリックス樹脂の含浸性が低下するので、マトリックス樹脂との良好な接着性が得られない。
本発明の炭素繊維ストランドは、炭素繊維フィラメントを束ねたものであり、そのフィラメント数は特に制限はないが、樹脂の含浸の容易さからは1束当たり1000〜50000本が好ましい。
前記炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維は、原料としては特に限定するものではないが、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維等が例示できる。これらの炭素繊維のうち、取扱性能、製造工程通過性に適したPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が好ましい。ここで、PAN系炭素繊維は、アクリロニトリル構造単位を主成分として、イタコン酸、アクリル酸、アクリルエステル等のビニル単量体単位を10モル%以内で含有する共重合体を常法に従い、酸化安定化後、炭素化して炭素繊維化したものである。
また、ピッチ系炭素繊維は、タールやピッチを常法に従い、光学的性質を整え、酸化不融化後、炭素化して炭素繊維化したものである。
本発明の炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着強度を高めるために、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.1〜0.3であることが好ましい。
炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cを上記範囲にするためには、炭素繊維の製造工程において、炭素化処理終了後、表面処理を施すことが好ましい。
かかる表面処理は、液相処理、気相処理などによる表面処理を挙げることができる。本発明においては、生産性、処理の均一性、安定性等の観点から、液相電解表面処理が好ましい。
この場合、十分に洗浄して電解質を除去することが好ましい。
炭素繊維の表面処理を行う程度を管理するための指標としては、X線光電子分光法(XPS)により測定される炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cが好ましい。
O/Cは一例として次の方法によって求めることができる。予めサイズ剤を除去した炭素繊維を10-6Paに減圧した測定室に入れ、日本電子株式会社製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXにより、Mgを対極として電子線加速電圧10kV、電流10mAの条件で発生させたX線を照射し、光電子の脱出角度を90°とした場合に炭素原子、酸素原子より発生する光電子スペクトルを測定し、その面積比を算出する。
発生する光電子の割合は各元素により異なり、この日本電子株式会社製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXの場合の装置定数を含めた換算計数は2.69である。
表面処理を施された炭素繊維は、前述したサイズ剤を施す。
サイズ剤の付与は、スプレー法、液浸法、転写法等、既知の方法を採択し得る。汎用性、効率性、付与の均一性に優れることから、液浸法が特に好ましい。
炭素繊維ストランドをサイズ剤液に浸漬する際、サイズ剤液中に設けられた液没ローラー又は液浸ローラーを介して、炭素繊維ストランドの開纖と絞りを繰り返し、炭素繊維ストランドの内部までサイズ剤を含浸させることが好ましい。
サイズ剤付与処理は、アセトン等の溶剤にサイズ剤となる化合物を溶解させた溶液中に炭素繊維を浸漬する溶剤法と、乳化剤等を用い、水系エマルション中に炭素繊維を浸漬するエマルション法とがある。人体の安全性及び自然環境の汚染を防止する観点からエマルション法が好ましい。
炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤、炭素繊維ストランドのしなやかさ調整用の樹脂等の補助成分を添加する場合には、これらの補助成分は、予めサイズ剤となる化合物の組成物に添加しても良く、又は別途付与しても良い。具体的には、液浸法によるサイズ剤の付与の場合は、サイズ剤を含むサイジング浴に上記補助成分を添加しても良く、又は別の浴で付与しても良い。
サイズ剤付与処理後、炭素繊維ストランドは通常の乾燥工程により、サイズ剤付与時の分散媒であった水の乾燥あるいは溶媒である溶剤の乾燥を行う。乾燥工程は乾燥炉を通過させる方法、加熱したローラーに接触させる方法等、既知の方法が採択し得る。乾燥温度は特に規定されるものではないが、汎用的な水系エマルションの場合は通常80〜200℃に設定される。
また、本発明においては、乾燥工程の後ならば、200〜250℃の温度で炭素繊維ストランドの熱処理を行うことも可能である。但し、ブロック型イソシアン酸エステルを用いる場合は、所定の温度を超えると保護基の脱離が起こるので、熱処理の温度を保護基の脱離温度より低くすることが好ましい。ブロック型イソシアン酸エステルを使用する場合の熱処理温度は、保護基の種類にもよるが、概ね80〜170℃とすることが好ましく、100〜120℃とすることがより好ましい。
炭素繊維ストランドのストランド引張り強さは、4000MPa以上が好ましく、4500MPa以上がより好ましい。ストランド引張り強さは、プリカーサーと呼ばれる前駆体繊維紡糸工程、耐炎化(不融化)工程、炭素化工程において、延伸(収縮)倍率、処理温度、処理時間等を調整することにより4000MPa以上とすることができる。
本発明の炭素繊維ストランドは、樹脂の強化材として好適であり、複合材料の物性を高めるものである。複合材料に用いるマトリックス樹脂は特に制限されるものではないが、例えばビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の不飽和マトリックス樹脂を用いた場合には本発明の効果がより発揮でき好ましい。
複合材料における本発明の炭素繊維ストランドの含有量としては、複合材料全質量中40〜80質量%とすることが好ましい。
以下の実施例及び比較例に記載した条件により炭素繊維ストランドを作製した。各炭素繊維ストランドの諸物性値を、以下の方法により測定した。
<コンポジット成型及び層間剪断強さ(ILSS)>
ビニルエステル樹脂(昭和高分子株式会社製リポキシR−806)100質量部、メチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製パーメック−N)1質量部、6質量%ナフテン酸コバルト溶液(和光純薬工業株式会社製)0.5質量部に調製されたマトリックス用樹脂を、樹脂浴(長さ:400mm、幅120mm、高さ:100mm)に適量投入した。
30cm長に切断した炭素繊維ストランドを適度な本数、平行に束ね(以下サンプル束という)、両端を市販の炭素繊維ストランド(東邦テナックス株式会社製ベスファイトHTA−12K E30)にて縛り、固定した。
この内、片端の固定に使用している市販の炭素繊維ストランド(以下誘導糸とする)を予め絞りガイド及び筒状の金型(サンプル束が通過する内断面:10mm×3mm、長さ30cm)に通過させておいた。
サンプル束を樹脂浴に樹脂浴長さ方向と平行に浸漬させ、30秒浸漬後、サンプル束を15cm/分の速度で引っ張って金型内に収めた。その後、誘導糸を切断除去した。
尚、サンプル束を形成する炭素繊維ストランドの本数は炭素繊維フィラメントの断面積及び炭素繊維ストランドのフィラメント数により決定した(炭素繊維体積含有率Vfが60%になるように調製した)。
上記のサンプル束が充填された金型を12時間室温で放置した後、120℃のオーブン中に2時間加熱することで、マトリックス樹脂を硬化させた。脱型した成型物(コンポジット)からJIS K 7078に準拠した試験片を作製し、同規定に準拠してILSSの測定を行った。クロスヘッドの移動スピードは1.3mm/分とした。
<濡れ性>
上記コンポジットの内、ILSS測定に用いない部分をJIS K 7074に準拠して破壊し、破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を、
A:繊維表面の大半に樹脂が付着し、繊維断面と樹脂断面の段差が小さい(繊維と樹脂が良く馴染み、繊維破断面と樹脂破断面とがほぼ同一面内にあり、破断面がスパッと切れている。)
B:繊維表面の大半に樹脂が付着するが、繊維断面と樹脂断面の段差が大きい(繊維と樹脂が良く馴染んでいるが、破断箇所で繊維の素抜けが見られ、繊維破断面と樹脂破断面との間に段差がある。)
C:繊維表面への樹脂の付着が殆ど見られず、繊維断面と樹脂断面の段差が非常に大きい(繊維と樹脂が馴染まず、繊維と樹脂の間に空間が存在し、破断箇所で繊維の素抜けが見られる。)
のようにA、B、Cの三段階で表現した。
実施例1、2及び比較例1、2
未サイジングの炭素繊維ストランド(東邦テナックス株式会社製ベスファイト、12000フィラメント、引張り強さ3900MPa、引張り弾性率235GPa)をサイジング浴に連続的に浸漬させた。
サイジング浴は、アセトン50質量%、エタノール50質量%を混合したアセトン/エタノール系溶剤に、エステル化合物とイソシアン酸エステル化合物を表1に示す割合で含有するサイズ剤を2質量%溶解させた溶液で行った。
その後、雰囲気温度110℃の熱風乾燥機中で溶剤を除去し、炭素繊維ストランドを得た。得られた炭素繊維ストランドのサイズ剤付着量を表1に示す。なお、エステル化合物、イソシアン酸エステル化合物の炭素繊維ストランドに対する付着割合は、サイジング浴で含浸させたサイズ剤と同割合である。これらの炭素繊維ストランドを用いて、上記に挙げた各種評価試験を行った。その結果を表1にまとめて示した。
表1に示すように、実施例1、2は何れも満足な結果が得られた。比較例1、2についてはILSSは満足な結果が得られたが、濡れ性が劣るものであった。
Figure 2005290615
尚、表1において用いられている各成分の詳細は以下の通りである。
3000M:ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製、エポキシエステル3000M)
B.I.−1:HMDI型ブロック型イソシアン酸エステル(住化バイエルウレタン株式会社製、デスモジュールTPLS−2759)

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2005290615
    〔式中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。〕
    で示される官能基を化合物の両末端に含有するエステル化合物と、イソシアン酸エステル化合物とを含有するサイズ剤が付着されてなる炭素繊維ストランド。
  2. 一般式(1)で示される官能基がアクリロイル基、メタクリロイル基、又はα−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基である請求項1に記載の炭素繊維ストランド。
  3. イソシアン酸エステル化合物が、アルコール類、β−ジケトン類、オキシム類、及びラクタム類から選ばれる化合物が付加することにより保護基を導入したブロック型イソシアン酸エステルである請求項1又は2に記載の炭素繊維ストランド。
  4. 下記一般式(1)
    Figure 2005290615
    〔式中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。〕
    で示される官能基を化合物の両末端に含有するエステル化合物と、イソシアン酸エステル化合物とを含有するサイズ剤を溶解した溶液又は前記サイズ剤を分散させた水系エマルション中に炭素繊維を浸漬した後、80〜200℃で乾燥することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維ストランドの製造方法。
  5. イソシアン酸エステル化合物がブロック型イソシアン酸エステルであって、乾燥後に保護基の脱離温度より低温で加熱処理する請求項4に記載の炭素繊維ストランドの製造方法。
JP2004107431A 2004-03-31 2004-03-31 炭素繊維ストランド及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4420712B2 (ja)

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