JP4155852B2 - 炭素繊維ストランド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維強化熱硬化性樹脂複合材料の製造用炭素繊維ストランドに関し、詳しく述べれば不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等のラジカル重合性の熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料において、マトリックス樹脂と炭素繊維の密着性に優れた複合材料を製造することのできる炭素繊維ストランドに関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は他の繊維と比較し、強度や弾性率が高く、軽いという特徴を有するため、航空宇宙産業やスポーツ産業といった、各種の産業分野において熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化材として使用されている。
【0003】
熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として複合材料を製造する方法としては、中間基材であるプリプレグを用いて賦形成型する方法の外、引抜成形法、レジン・トランスファー・モールディング(RTM)法、フィラメント・ワインディング(FW)法、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)法、バルク・モールディング・コンパウンド(BMC)法、ハンドレイアップ法などがある。
【0004】
複合材料において、マトリックス樹脂となる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂のほか、ラジカル重合性の不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等の不飽和熱硬化性樹脂が使用される。
【0005】
不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂は一般的にスチレン等の重合性モノマーと共に使用され、エポキシ樹脂に比べ粘度が低いことや硬化速度が速いことから、RTMや引抜成形によって製造される複合材料のマトリックス樹脂として広く利用されている。
【0006】
しかしながら、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂をマトリックス樹脂(不飽和マトリックス樹脂)とし、従来のサイズ剤を付与した炭素繊維を強化材として使用する場合、得られる複合材料の物性は、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする場合と比較して低い場合がある。具体的には諸物性のうち、炭素繊維と、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂との接着強度、特に剪断強度が炭素繊維とエポキシ樹脂との場合と比較して低く、得られる複合材料は実用的に使用し難いものとなる場合がある。
【0007】
炭素繊維と不飽和マトリックス樹脂との接着強度を向上させる技術としては、ビニルエステル樹脂を炭素繊維に付着させる方法(特許文献1)、不飽和基を有するウレタン化合物を炭素繊維に付着させる方法(特許文献2、特許文献3)、末端不飽和基を有するエステル化合物を炭素繊維に付着させる方法(特許文献4)、末端不飽和基と極性基を共に有する化合物を特定の表面処理を行った炭素繊維に付着させる方法(特許文献5)が開示されている。
【0008】
しかし、前記特許文献1にみられるビニルエステル樹脂を炭素繊維に付着させる方法の場合は、特許文献6の比較例2に示されているとおり、樹脂の含浸性に効果があっても接着性には効果がない。
【0009】
また、他の技術においては、サイズ剤にカップリング剤の役割を持たせることによって、炭素繊維と不飽和ポリエステル樹脂との接着性を向上させようと試みているが、その効果は不十分であり、前記特許文献5では炭素繊維に対して特定範囲の表面処理を必要としており、通常の炭素繊維に対して広く使用できる技術ではない。
【0010】
【特許文献1】
特公昭62−18671号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭56−167715号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開昭63−50573号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭63−105178号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平11−93078号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開2000−355881号公報(実施例および比較例)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、熱硬化性樹脂強化用に適した炭素繊維を開発するために種々検討しているうちに、炭素繊維ストランド(数百本乃至数万本のフィラメントからなる繊維束)に付着するサイズ剤として、末端に不飽和結合を含有する窒素含有化合物を使用することにより、上記炭素繊維ストランドが熱硬化性樹脂系複合材料に適した強化材となり得ることを知得し本発明を完成するに至った。
【0012】
よって、本発明の目的とするところは熱硬化性樹脂、特に不飽和マトリックス樹脂との接着性に優れ、炭素繊維強化複合材料の物性に優れた炭素繊維ストランドを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
【0014】
[1] 分子の末端に結合した不飽和有機基と、分子中にアリーレン基又はエーテル基を有する三級アミン化合物(A)を含有するサイズ剤が付着されてなる炭素繊維ストランド。
【0015】
[2] 化合物(A)が、一つの三級アミンの窒素原子に不飽和有機基を二つ結合した[1]記載の炭素繊維ストランド。
【0016】
[3] 化合物(A)が、下記式(1)で示される不飽和有機基を有する[2]記載の炭素繊維ストランド。
【0017】
【化2】
【0018】
(式(1)中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。)
[4] 式(1)中のR1が、−H、−CH3 、又は−CH2OHである[3]記載の炭素繊維ストランド。
【0019】
[5] 化合物(A)が、式(1)で示される官能基を2つ以上有する[3]または[4]記載の炭素繊維ストランド。
【0020】
[6] 化合物(A)がジアミノジフェニルメタン骨格、キシリレンジアミン骨格、フェニレンジアミン骨格を有する化合物から選ばれた1つまたは2つ以上の組み合わせである[5]記載の炭素繊維ストランド。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の炭素繊維ストランドはサイズ剤が付着されてなる。このサイズ剤は分子の末端に不飽和有機基を結合し、分子内にアリーレン基又はエーテル基を含む三級アミン化合物(以下、化合物(A)で表す)である。
【0023】
尚、本発明においてアリーレン基とは、例えば、フェニレン基(メタキシリレン基、パラキシリレン基等のフェニレン基の誘導体基を含む)、ジフェニレン基(ジフェニルメチル基等のジフェニレン基の誘導体基を含む)、ナフタレン基等、いわゆる芳香族環を分子骨格として含む少なくとも2官能の基である。
【0024】
本発明においてエーテル基とは、−O−を示し、エステル中の−O−は含まない。
【0025】
本発明において、不飽和有機基とは、ラジカル重合性の二重結合又は三重結合からなる不飽和部と残部とからなり、好ましくはラジカル重合性の二重結合又は三重結合が末端に結合している。残部は特に制限がなく、例えばアルキレン、フェニレン、エステル、エーテル等又はこれらの組合せで構成される。
【0026】
本発明における化合物(A)は、上記構造のものであれば特に限定されるものではないが、以下のものが例示できる。
【0027】
(i) N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N−ジメチルアミノエチルアリルエーテル、N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、N−ジエチルアミノエチルアリルエーテル、N−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、N−ジメチルアミノプロピルアリルエーテル、N−ジエチルアミノプロピルビニルエーテル、N−ジエチルアミノプロピルアリルエーテル、N−ジメチルアミノブチルビニルエーテル、N−ジメチルアミノブチルアリルエーテル、N−ジエチルアミノブチルビニルエーテル、N−ジエチルアミノブチルアリルエーテル等のアルキルアミノ基を有する不飽和エーテル類。
【0028】
(ii) 4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン化合物とアクリル酸、メタクリル酸、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸等の不飽和一塩基酸との反応により得られるエステル化合物。
【0029】
(iii) N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルオルソトルイジン、N,N−ジグリシジルオルソトルイジン、N,N−ジグリシジルオルソトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−o−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−オルトキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−メタキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−パラキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N,O−トリグリシジルアミノフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン等のジグリシジルアミノ化合物とアクリル酸、メタクリル酸、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸等の不飽和一塩基酸との反応により得られる下記式(1)で表される官能基を有する化合物。
【0030】
【化3】
【0031】
式(1)中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。
【0032】
これら(i)〜(iii)の化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
以上の化合物のうちでも、テトラグリシジルキシリレンジアミン系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物が炭素繊維と樹脂との界面接着性に優れることから特に好ましい。
【0034】
本発明の炭素繊維ストランドに付着されたサイズ剤は、式(1)で示される官能基を有する化合物を30質量%以上含むことが好ましい。
【0035】
本発明の炭素繊維ストランドは、炭素繊維フィラメントを束ねたものであり、そのフィラメント数は特に制限はないが、樹脂の含浸の容易さからは1束当たり1000〜50000本が好ましい。
【0036】
前記炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維は、原料としては特に限定されるものではないが、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維等が例示できる。これらの炭素繊維のうち、取扱性能、製造工程通過性に適したPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が好ましい。ここで、PAN系炭素繊維は、アクリロニトリル構造単位を主成分として、イタコン酸、アクリル酸、アクリルエステル等のビニル単量体単位を10モル%以内で含有する共重合体を常法に従い、酸化安定化後、炭素化して炭素繊維化したものである。
【0037】
また、ピッチ系炭素繊維は、タールやピッチを常法に従い、光学的性質を整え、酸化不融化後、炭素化して炭素繊維化したものである。
【0038】
本発明の炭素繊維ストランドを構成する炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着強度を高めるために、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.1〜0.3であることが好ましい。
【0039】
炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cを上記範囲にするためには、炭素繊維の製造工程において、炭素化処理終了後、表面処理を施すことが好ましい。
【0040】
かかる表面処理は、液相処理、気相処理などによる表面処理を挙げることができる。本発明においては、生産性、処理の均一性、安定性等の観点から、液相電解表面処理が好ましい。
【0041】
この場合、十分に洗浄して電解質を除去することが好ましい。
【0042】
炭素繊維の表面処理を行う程度を管理するための指標としては、X線光電子分光法(XPS)により測定される炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cが好ましい。
【0043】
O/Cは一例として次の方法によって求めることができる。予めサイズ剤を除去した炭素繊維を10-6Paに減圧した測定室に入れ、日本電子株式会社製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXにより、Mgを対極として電子線加速電圧10kV、電流10mAの条件で発生させたX線を照射し、光電子の脱出角度を90°とした場合に炭素原子、酸素原子より発生する光電子スペクトルを測定し、その面積比を算出する。
【0044】
発生する光電子の割合は各元素により異なり、この日本電子株式会社製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXの場合の装置定数を含めた換算計数は2.69である。
【0045】
表面処理を施された炭素繊維は、前述したサイズ剤を施す。
【0046】
サイズ剤の付与は、スプレー法、液浸法、転写法等、既知の方法を採択し得る。汎用性、効率性、付与の均一性に優れることから、液浸法が特に好ましい。
【0047】
炭素繊維ストランドをサイズ剤液に浸漬する際、サイズ剤液中に設けられた液没ローラー又は液浸ローラーを介して、炭素繊維ストランドの開繊と絞りを繰り返し、炭素繊維ストランドの内部までサイズ剤を含浸させることが好ましい。
【0048】
サイズ剤付与処理は、アセトン等の溶剤にサイズ剤となる化合物を溶解させた溶液中に炭素繊維を浸漬する溶剤法と、乳化剤等を用い、水系エマルション中に炭素繊維を浸漬するエマルション法とがある。人体の安全性及び自然環境の汚染を防止する観点からエマルション法が好ましい。
【0049】
また、炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤、炭素繊維ストランドのしなやかさ調整用の樹脂等の補助成分を添加しても良い。
【0050】
これらの補助成分は、予めサイズ剤となる化合物の組成物に添加しても良く、又は別途付与しても良い。具体的には、液浸法によるサイズ剤の付与の場合は、サイズ剤を含むサイジング浴に上記補助成分を添加しても良く、又は別の浴で付与しても良い。
【0051】
なお、補助成分の添加量はサイズ剤の付着量の70質量%以下が好ましい。
【0052】
サイズ剤付与処理後、炭素繊維ストランドは通常の乾燥工程により、サイズ剤付与時の分散媒であった水の乾燥あるいは溶媒である溶剤の乾燥を行う。乾燥工程は乾燥炉を通過させる方法、加熱したローラーに接触させる方法等、既知の方法が採択し得る。乾燥温度は特に規定されるものではないが、汎用的な水系エマルションの場合は通常80〜200℃に設定される。
【0053】
また、本発明においては、乾燥工程の後ならば、200℃を超える熱処理工程を経ることも可能である。
【0054】
炭素繊維ストランドのストランド引張り強さは、4000MPa以上が好ましく、4500MPa以上がより好ましい。
【0055】
本発明においては、上記炭素繊維ストランド、表面酸素濃度、サイズ剤等を適宜調節することにより、本発明の炭素繊維ストランドを製造できる。
【0056】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0057】
【実施例】
以下の実施例及び比較例に記載した条件により炭素繊維ストランドを作製した。各炭素繊維ストランドの諸物性値を、以下の方法により測定した。
【0058】
<コンポジット成型及び層間剪断強さ(ILSS)>
ビニルエステル樹脂(昭和高分子株式会社製リポキシR−806)100質量部、過酸化物硬化剤(日本油脂株式会社製パーキュアーO)2質量部に調製されたマトリックス用樹脂を、樹脂浴(長さ:400mm、幅120mm、高さ:100mm)に適量投入した。
【0059】
30cm長に切断した炭素繊維ストランドを適度な本数、平行に束ね(以下サンプル束という)、両端を市販の炭素繊維ストランド(東邦テナックス株式会社製ベスファイトUT500−12K E30)にて縛り、固定した。
【0060】
この内、片端の固定に使用している市販の炭素繊維ストランド(以下誘導糸とする)を予め絞りガイド及び筒状の金型(サンプル束が通過する内断面:10mm×3mm、長さ30cm)に通過させておいた。
【0061】
サンプル束を樹脂浴に樹脂浴長さ方向と平行に浸漬させ、30秒浸漬後、サンプル束を15cm/分の速度で引っ張って金型内に収めた。その後、誘導糸を切断除去した。
【0062】
尚、サンプル束を形成する炭素繊維ストランドの本数は炭素繊維フィラメントの断面積及び炭素繊維ストランドのフィラメント数により決定した(炭素繊維体積含有率Vfが60%になるように調製した)。
【0063】
上記のサンプル束が充填された金型を、3℃/分の速度で150℃までオーブン中で加熱することで、マトリックス樹脂を硬化させた。脱型した成型物(コンポジット)からJIS K 7078に準拠した試験片を作製し、同規定に準拠してILSSの測定を行った。クロスヘッドの移動スピードは1.3mm/分とした。
【0064】
<濡れ性>
上記コンポジットの内、ILSS測定に用いない部分を曲げ試験と同様にして破壊し、破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を
A:繊維表面の大半に樹脂が付着し、繊維断面と樹脂断面の段差が小さい(繊維と樹脂が良く馴染み、繊維破断面と樹脂破断面とがほぼ同一面内にあり、破断面がスパッと切れている。)
B:繊維表面の大半に樹脂が付着するが、繊維断面と樹脂断面の段差が大きい(繊維と樹脂が良く馴染んでいるが、破断箇所で繊維の素抜けが見られ、繊維破断面と樹脂破断面との間に段差がある。)
C:繊維表面への樹脂の付着が殆ど見られず、繊維断面と樹脂断面の段差が非常に大きい(繊維と樹脂が馴染まず、繊維と樹脂の間に空間が存在し、破断箇所で繊維の素抜けが見られる。)
のようにA、B、Cの三段階で表現した。
【0065】
<化合物の同定>
サイズ剤に含まれる成分の構造は分取クロマトグラフ法、赤外分光法及び核磁気共鳴分光法により確認した。サイジング浴から水分を蒸発させて得られたサイズ剤に含まれる成分の定量はサイズ排除クロマトグラフ法により行った。
【0066】
[実施例1]
未サイジングの炭素繊維ストランド(東邦テナックス株式会社製ベスファイト、12000フィラメント、引張り強さ3900MPa、引張り弾性率235GPa)をサイジング浴に連続的に浸漬させた。
【0067】
サイジング浴には、メタクリル酸344gとヒドロキノン0.086gとが入ったフラスコを、105℃に加熱しながらN,N,N’,N’−テトラグリシジル−メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製TETRAD−X)360gを上記混合物中に2.5時間かけて滴下し、酸価10以下となるまで更に1時間反応させて得たテトラメタクリレート化合物(下記構造式で示される化合物。固形分中85質量%)をポリオキシエチレン(40モル)スチレン化フェニルエーテル(固形分中15質量%)で乳化し、4.5%濃度となるように調製したエマルションで満たした。
【0068】
【化4】
【0069】
その後、雰囲気温度120℃の熱風乾燥機中で溶剤である水を除去することで炭素繊維ストランドを得た。これらの炭素繊維ストランドを用いて、上記に挙げた各種評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2]
サイジング液に、メタクリル酸344gとヒドロキノン0.086gとが入ったフラスコを、105℃に加熱しながらN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(東都化成株式会社製エポトートYH−434)422gを上記混合物中に2.5時間かけて滴下し、酸価10以下となるまで更に1時間反応させて得たテトラメタクリレート化合物(下記構造式で示される化合物。固形分中85質量%)をポリオキシエチレン(40モル)スチレン化フェニルエーテル(固形分中15質量%)で乳化し、4.0%濃度となるように調製したエマルションを用いた以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0071】
【化5】
【0072】
表1に示すように、実施例1及び2は何れも満足な結果が得られた。
【0073】
[比較例1]
サイジング液に、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート(共栄社化学社製エポキシエステル3000M)(下記構造式で示される化合物。固形分中85質量%)のポリオキシエチレン(40)スチレン化フェニルエーテル(固形分中10質量%)とポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(20/80)(分子量15000)(固形分中5質量%)で乳化し、3.0%濃度となるように調製したエマルションを用いた以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0074】
【化6】
【0075】
その結果、表1に示すように成形性、ILSSは満足な結果が得られたが、濡れ性が若干劣った。
【0076】
[比較例2]
サイジング液に、メタクリル酸86gとヒドロキノン0.043gとが入ったフラスコを、105℃に加熱しながらビスフェノールAジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート828)372gを上記混合物中に2.5時間かけて滴下し、酸価5以下となるまで更に1時間反応させて得たビスフェノールAジグリシジルエーテルモノメタクリレート(下記構造式で示される化合物。固形分中85質量%)のポリオキシエチレン(40)スチレン化フェニルエーテル(固形分中10質量%)とポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(20/80)(分子量15000)(固形分中5質量%)で乳化し、3.0%濃度となるように調製したエマルションを用いた以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0077】
【化7】
【0078】
その結果、表1に示すように成形性、濡れ性は満足な結果が得られたが、ILSSが若干劣った。
【0079】
[比較例3]
サイジング液に、グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(共栄社化学株式会社製UA−101H)(下記構造式で示される化合物。固形分中90質量%)のポリオキシエチレン(40)スチレン化フェニルエーテル(固形分中10質量%)を用いて乳化し、4.0%濃度となるように調製したエマルションを用いた以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0080】
【化8】
【0081】
その結果、成形時に樹脂の粘度が上昇し、金型の入り口で樹脂が搾りきれなくなり、途中で誘導糸が切断した。しかし、表1に示すように濡れ性は満足な結果が得られた。
【0082】
【表1】
【0083】
【発明の効果】
本発明の炭素繊維ストランドは、このストランドを用いて作製した炭素繊維強化樹脂複合材料における不飽和マトリックス樹脂との接着性に優れるため、濡れ性、ILSS等の物性が優れた炭素繊維強化樹脂複合材料を得ることが可能である。
Claims (6)
- 分子の末端に結合した不飽和有機基と、分子中にアリーレン基又はエーテル基を有する三級アミン化合物(A)を含有するサイズ剤が付着されてなる炭素繊維ストランド。
- 化合物(A)が、一つの三級アミンの窒素原子に不飽和有機基を二つ結合した請求項1記載の炭素繊維ストランド。
- 式(1)中のR1が、−H、−CH3 、又は−CH2OHである請求項3記載の炭素繊維ストランド。
- 化合物(A)が、式(1)で示される官能基を2つ以上有する請求項3または4記載の炭素繊維ストランド。
- 化合物(A)がジアミノジフェニルメタン骨格、キシリレンジアミン骨格、フェニレンジアミン骨格を有する化合物から選ばれた1つまたは2つ以上の組み合わせである請求項5記載の炭素繊維ストランド。
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