JP2005287976A - 手袋型清掃具 - Google Patents

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Abstract

【課題】手袋を用いて作業している際の発塵を押さえ、手袋と接触する清掃の対象物を傷つけず、拭き取り性に優れ、装着した際に素手の感覚で清掃することができる装着性の優れた手袋を提供すること。
【解決手段】極細繊維マルチフィラメントからなる手袋型清掃具であって、当該マルチフィラメントを80重量%以上含み、ループが連続してなるように編成した編物からなり、当該マルチフィラメントの単糸繊度は0.02〜0.9dtexで、当該マルチフィラメントは熱収縮率の異なる2種以上のポリマーからなる分割型複合繊維を分割せしめたものである手袋型清掃具。
【選択図】図1

Description

本発明は極細繊維を用いた手袋形状の清掃具に関し、さらに詳しくはクリーンルームに適した手袋型清掃具に関する。
一般に電子部品等の精密機器を組み立てる際に、作業者は、機器を取り扱うときに手の汚れが付着しないように手袋を装着している。そのような手袋として、たとえば、特許文献1及び特許文献2では、極細繊維フィラメントからなる布帛を裁断縫製したものが提案されている。
また極細繊維マルチフィラメントからなる手袋として、芯糸のまわりに極細繊維を配したエア加工糸を編み立てたワイピング用装着物が提案されている。そして、この極細繊維として、ポリエステルとポリアミドからなる複合繊維を用いることが例示されている。
特開平10−331010号公報 特開平10−158912号公報 特開平11−178767号公報
しかしながら、特許文献1、2のように、極細繊維フィラメントからなる布帛を裁断縫製したものは、縫製した部分にはミシンをかけた際の針穴により布帛に穴ができてしまい、糸屑が発生しやすい。この糸屑などが塵となり、手袋として使用した際に発塵が生じ易く、この発塵により精密機器等を傷つけることがある。また、手袋を装着した際に、縫製した部分が違和感となり、素手の感覚が得られにくい。
そして、特許文献3には、極細繊維を含む手袋を編み立てたものが開示されているが、このものは手袋に張り、腰をもたせるために、単糸繊度が太い芯糸を一定以上の割合で用いている。そして、太い芯糸と極細繊維を配したエア加工糸からなるため、手袋を装着した際、芯糸と細い糸による凹凸があり、着用者は手袋を装着しているとの違和感があり、具体的には、手袋を装着した状態でものを触ったときに、そのものの細かい形状が知覚できず、素手の感覚が得られにくい。また、構成する糸は40〜60%の太い芯糸と60〜40%の極細繊維からなるエア加工糸であるため、太い芯糸が表層に露出することがあり、清掃の対象物を傷つけることがある。さらに、構成する糸の芯糸が太く、糸の表面のループが大きいものとなるため、糸切れが生じ易く、発塵しやすく、クリーンルーム内の清掃に適したものは得られない。また、芯糸が太く、構成する糸のループが大きすぎることにより、細かな塵を補足するのが難しく、クリーンルーム内で精密機器等を清掃するには、拭き取り性が充分でない。
したがって、本発明は、上記課題の解決をはかり、手袋を用いて作業している際の発塵を押さえ、手袋と接触する清掃の対象物を傷つけず、拭き取り性に優れ、装着した際に素手の感覚で清掃することができる装着性の優れた手袋を提供する。
上記課題を解決するために、本発明は、極細繊維マルチフィラメントからなる手袋型清掃具であって、当該マルチフィラメントを80重量%以上含み、ループが連続してなるように編成した編物からなり、当該マルチフィラメントの単糸繊度は0.02〜0.9dtexで、当該マルチフィラメントは熱収縮率の異なる2種以上のポリマーからなる分割型複合繊維を分割せしめたものである手袋型清掃具をその要旨とする。このマルチフィラメントは、仮撚加工を施したものであることが好ましく、また捲縮復元率が15〜40%であることが好ましい。また、このマルチフィラメントは、撚り方向が互いに異なる仮撚加工糸の双糸からなることが好ましい。
このマルチフィラメントの横断面形状は、放射状部と、この放射状部を補完する補完部とからなり、放射状部が内層に入り込み、補完部が表面層にでるような二層構造であるものがさらに好ましい。なかでも、放射状部はポリアミドなどの熱収縮率が高いポリマーであり、補完部はポリエステルなどの放射状部より熱収縮率が低いポリマーであるのがよい。そして、放射状部のポリアミドが内層に入り込み、前記補完部からなるポリエステルが交絡のないループを形成してなる二層構造糸からなるものが好ましい。
また、本発明は、熱収縮率の異なる2種以上のポリマーからなる分割型複合繊維の仮撚加工糸を編み立てて手袋形状となし、湯洗いし、得られた編物の編み始めの開始端部と編み終わりの終了端部を固定化する手袋型清掃具の製造方法でもある。
また、本発明は、放射状部がポリアミド、放射状部を補完してなる補完部がポリエステルからなる横断面形状である複合繊維マルチフィラメントの仮撚加工糸を手袋編み機を用いて編み立て、5〜20%のアルカリ減量をした後、湯洗いし、得られた編物の編み始め端と編み終わり端を加熱溶融して、樹脂化する手袋型清掃具の製造方法でもある。
本発明の清掃具によれば、クリーンルーム内で、発塵を押さえて清掃対象物を傷つけず、拭き取り性および装着性に優れた手袋を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、極細繊維マルチフィラメントからなる手袋型清掃具である。この清掃具は、ループが連続してなるように編成せしめた編物からなる。この「ループが連続してなるように編成せしめた」とは、たとえば、手袋編み機で手袋を編成したものそのものであり、手袋全体が連続したループで形成されており、途中で編物の端面が存在するなどループが切断されるところがないものをいう。このように、途中に編物の端面が存在せず、連続したループであると、縫製した際の糸屑などが、途中にある編物の端面から発塵することもなく、使用の際の発塵を抑制することができる。さらに、この手袋は、編物の編み始めの開始端部(編み始めの糸の端面の部分)および編み終わりの終了端部(編み終わりの糸の端面の部分)を加熱溶融して融着せしめるなど樹脂化して固定化せしめたものであれば、使用の際の自己発塵をさらに抑制することができ、クリーンルーム内でより好適に用いることができる。
この編物の編組織としては、連続したループが形成されていればよく、手袋編み機、緯編み機、丸編機、などから製編されるよこ編組織でもよいし、トリコット機、ミラニーズ機、ラッセル機などから製編されるたて編組織でもよい。なかでも、装着性のよい手袋を容易に得る点からは、手袋編み機からなる天竺組織がよい。
また、清掃時の優れた拭き取り性と、素手感覚の装着性を備えたものを得る点からは、手袋型清掃具自体が薄くてかつ、極細繊維マルチフィラメントのそれぞれの単糸間に空隙を保持しながらも、高密度の素材であることが好ましい。
このような点から、上記マルチフィラメントの単糸繊度は0.02〜0.9dtex、総繊度は40〜500dtex、編物の編目密度はウエールが15〜40本/2.5cm、コースが20〜40本/2.5cmが好適である。また、編物の見かけ密度は、200,000〜400,000g/m3であることが好ましい。
そして、これらの素材を用いて0.3〜1.0mmの厚みとするのが好適である。この厚みは、1.0mmを超えると、素手感覚が得られにくくなる。また、0.3mm未満であると、手自身の汚れが清掃対象物に付着するおそれがある。
また、これらの編物伸度(JISL1096の低荷重伸度)は、快適な装着性の点から、10%以上であることが好適である。
次に、本発明の編物を構成する糸について好適な態様をさらに詳しく説明する。本発明の編物は、分割型複合繊維を分割せしめた極細繊維マルチフィラメントから構成される。そして、この編物の構成糸全体に対する極細繊維マルチフィラメントの構成比率は、極細繊維の拭き取り性および快適な装着性を保ちやすい点から、80重量%以上である。
そして、このマルチフィラメントは少なくとも2種類の熱収縮率が異なるポリマーを素材とした分割型複合繊維を分割せしめたものである。このポリマーの組み合わせは、たとえば、ポリエステルとポリアミド、ポリエステルとポリオレフィン、ポリアミドとポリオレフィンなどが挙げられる。なかでも、拭き取り性、装着性、製造しやすさの点からポリエステルとポリアミドの組み合わせが好ましい。ポリエステルとポリアミドの組み合わせであると、熱処理した際、ポリエステルよりもポリアミドが収縮しやすいため、ポリエステルが表面層に、ポリアミドが内層に入り込む二層構造となる。そして、この組み合わせであると、マルチフィラメントの単糸間に十分な空隙を備えることができるので、汚れがその空隙に入り込むことが可能となり、拭き取り性能が向上する。また、このような空隙が備わっているため、ソフトで手触りもよく、装着性にも優れる。このような効果を得るためには、2種類のポリマーをそれぞれ単糸とした際の熱収縮率(沸水収縮率)の差は、5%〜30%が好適である。
そして、上記分割型複合繊維を分割せしめる方法は、分割型複合繊維の一方の成分を、溶解や分解によって除去したり、膨張剤によって膨潤させたり、逆に収縮剤によって収縮させたり、あるいは加熱によって変形、収縮を生起させたりして行うことができる。また、複数成分を、摩擦や打撃によって物理的に分割することもできる。なかでも、編物の密度を充分に保ち、張り、腰のある装着感のよい手袋型清掃具を得るには、一方の成分を、溶解や分割によってほぼ除去する方法をとるよりも、一方の成分を膨潤剤によって膨潤させたり、収縮剤によって収縮させたり、加熱等によって変形、収縮を生起させたり、物理的に分割するほうが好ましい。さらには、拭き取り性および装着性がすぐれている点からは、後述するような仮撚割繊により分割せしめた仮撚加工糸であることがより好ましい。
また、上記極細繊維マルチフィラメントの単糸繊度は、手触りのソフトさ、清掃時の拭き取り性から、0.02〜0.9dtexが好ましい。すなわち、単糸繊度が細すぎる場合は、清掃時に単糸の切断が生じ易くなり、それに伴う発塵が生じるおそれがある。逆に、単糸繊度が太すぎる場合は充分な拭き取り性、装着性が得られないおそれがある。
なお、上記極細繊維マルチフィラメントの総繊度は、40〜500dtex程度であるのが、好適である。
次に、本発明の分割型複合繊維の横断面形状の例を図1(a)〜(i)に示す。これらはいずれも2成分からなり、たとえば、図1(a)のものおよび同図(d)のものを分割すれば、2つの成分がともに扁平な細い繊維が得られるようになっている。また、同図(b)のものは、2成分が多数の扇形のセグメントとして交互に並んでおり、同図(c)および(g)のものは、放射形の成分(放射状部)と扇形の成分(放射状部を補完する補完部)とが複合されている。さらに、同図(e)、(h)のものおよび同図(i)のものは、2成分が環状に交互に並んでおり中空部を有している例、同図(f)のものは、2成分が左右方向に交互に並んで複合されている例である。これらの他、どのような複合形態であっても、それぞれの部分がセグメントに分割可能であれば、極細繊維マルチフィラメントを得ることができる。
なかでも、図1(b)のものおよび同図(c)および(g)に示す放射状部と放射状部を補完する補完部からなる分割型複合繊維に由来する極細繊維マルチフィラメントは、シャープなエッジを有するため、清掃効果が高く、好適である。
次に、極細繊維マルチフィラメントの繊維横断面形状と好適なポリマーの組み合わせを例示する。
まず、図1の(e)、(h)のものおよび同図(i)に示す、2成分が環状に交互に並んでおり中空部を有している分割型複合繊維に由来する極細繊維マルチフィラメントで、この2成分がポリアミドとポリエステルであるものは、ポリアミドが内層に沈み、ポリエステルが表層に露出しやすく、それぞれのポリマーの収縮率の差による空隙を備えるため、塵を補足しやすく、清掃効果が高くなり、好適である。
さらに、同図(c)および(g)に示す放射状部と、放射状部を補完する補完部とからなる分割型複合繊維に由来する極細繊維マルチフィラメントで、放射状部がポリアミド、補完部がポリエステルであるものは、補完部が内層に沈み、放射状部が表層に露出しやすく、それぞれのポリマーの収縮率の差による空隙を十分に備えるため、塵を補足しやすく、清掃効果が高くなり、最適である。
このように、ポリエステルとポリアミドのような熱収縮率の異なる成分を組み合わせて、同図(c)、(e)、(g)、(h)、(i)のような繊維横断面形状を備え、分割せしめた後に、一方の成分の内層が沈み、他の一方の成分が表面に露出するような二層構造糸であり、かつ、分割により空隙を充分備えるように組み合わせたものが、特に好ましい。
また、手袋型清掃具の表面は、上記極細繊維のマルチフィラメントが適度なたるみ(マルチフィラメントの表層のループ)を備えたものであることが好ましい。すなわち、あまり大きなたるみになると、使用した際に、少しのことで糸切れが発生し、発塵の原因となるおそれがある。そして、たるみがあまり小さなものであると、手触りがソフト性にかけ装着性に劣るうえ、塵を補足するのが難しくなるおそれがある。このような点からは、上記極細繊維フィラメントは、生糸そのものよりも、仮撚加工等の加工を施した加工糸が好ましい。
このようなたるみをもたせるための上記マルチフィラメントの分割の方法として、たとえば、膨潤剤による分割、仮撚による分割、部分的溶解による分割が考えられるが、拭き取り性および装着性のすぐれたものを容易に得ることができるため、仮撚による分割割繊がより好ましい。
そして、上記マルチフィラメントは、加工糸のなかでも、仮撚加工を施した仮撚加工糸であることが好ましい。この仮撚加工糸は、ソフトで手触りがよいものとなり、快適な装着性を得ることができるうえ、適度なたるみにより、塵を補足しやすく拭き取り性がより優れたものとなる。さらに、仮撚割繊せしめた仮撚加工糸を用いることにより、極細繊維からなる高密度のものが容易に得やすく、拭き取り性や装着性に優れた清掃具を得ることができる。
また、上記仮撚加工糸は、捲縮復元率が15〜40%であることが好ましい。この範囲であると、仮撚加工糸が適度なたるみをもったものとなり、手触りがソフトで装着性がよいうえ、清掃対象物を傷つけることなくより拭き取り性に優れたものとなる。すなわち、捲縮復元率が15%以上であると、仮撚加工糸の表面がある程度のたるみをもったループとなり、手触りがソフトで装着性が優れ、また、塵を補足しやすく、拭き取り性により優れる。また、40%以内であれば、クリーンルームでの使用時にも糸切れ等による発塵のおそれがなく、被清掃物を傷つけることがない。
この捲縮復元率とは、0.88mN/dtexの初荷重をかけ、ラップリールで捲き数10回の小カセを試料より採取し、これを温水処理し、0.018×20mN/dtexの軽荷重と0.88×20mN/dtexの重荷重を加えて温度20℃の水中に浸漬した後、カセ長を測り(l1)、無荷重を取り除いて軽荷重のみで2分間放置後、カセ長をを測り(l2)、次式により算出する値である。
(数1)
捲縮復元率=[(l1−l2)/l1]×100(%)
また、上記マルチフィラメントは、交絡のない無交絡糸を用いるのがより好ましい。大きな交絡を施すと、糸表面のたるみが大きいものとなり、清掃具として用いた際、糸屑となり発塵するおそれがある。また、少なくとも交絡部では糸が収束することになるため、表面に熱収縮率の低いポリマーが露出し、内層に熱収縮率の高いポリマーが収束して、空隙を保った状態とはなりがたく、清掃の際に、塵の入りこむ空隙が減少することになる。なお、本発明の交絡のないとは、積極的にエア加工、タスラン加工など、実質的に交絡を付与したものではないとの趣旨であり、通常の工程で意識しないで交絡されるものは含まない。
また、上記マルチフィラメントは、ソフトな風合いを保ったまま、高密度化させやすく、編目の曲がりを防止しやすい点から、単糸を用いるよりも、S撚りとZ撚りの逆方向の撚りを組み合わせた複数本の仮撚加工糸を組み合わせたものが好ましい。
次に、本発明の手袋型清掃具を、製造する好適な方法について、以下、具体的に説明する。
まず、上記したような2種以上の熱収縮率の異なるポリマーを複合した分割型複合繊維マルチフィラメントを準備する。
そして、この分割型複合繊維マルチフィラメントを分割せしめる。この分割の方法は上記したような方法が考えられる。好適な分割方法として、膨潤剤による分割、仮撚による分割、部分的溶解による分割があげられる。なかでも、上述したように拭き取り性および装着性のよい清掃具を容易に得る点から、仮撚による分割割繊が最適である。
すなわち、仮撚による分割割繊では、スピンドル式、ベルト式、ディスク式などの仮撚機により、仮撚加工を施し、割繊し、分割する。この仮撚加工の際は、通常より低めの温度、低めの速度で仮撚りを施すことにより、糸表面により適度なたるみをもたらすことができる。この適度なたるみにより拭き取り性が向上し、素手の感覚に近い快適な装着感をの清掃具を容易に得ることができる。そして、上述した好適な仮撚加工糸となるように他の条件も適宜設定することが好ましい。
なお、溶解による分割の場合は、編物を編み立てた後、アルカリ処理液等により、部分的に溶解することになる。
また、膨潤剤による分割の場合は、編物を編み立てた後、ベンジルアルコールなどの膨潤剤により膨潤させることになる。
次に、得られた分割型複合繊維を分割せしめた糸を、単糸または複数本引き揃えて、手袋状に編み立てる。編み立て方法については、上記した通りであり、編み始めの糸の端面の開始端部と、編み終わりの糸の端面の終了端部以外がループにより連続したものとなるように編み立てればよく、製造容易な点からは手袋編み機で編み立てるのがよい。なお、編み立ての際の編目密度としては、ウエールが13〜36本/2.5cm、コースが16〜32本/2.5cmが好適である。また、仮撚割繊による分割の場合、または部分的溶解による分割の場合は、最終的に製造される清掃具の編目密度よりも、ウエールは8〜15%、コースは15〜25%程度、編目密度が低いものとすることが好適である。
その後、得られた編物をソーダ灰により精練したり、アルカリ処理液によりアルカリ減量する。精練する場合、温度は60〜110℃が好ましく、時間は30分〜60分程度が好ましい。
また、アルカリ減量する場合、さほど減量しないようにすることが好ましく、減量率は5〜20%程度にとどめるのがよい。減量率が大きすぎると適度な密度を持たせることが難しくなり、得られた清掃具は、張り、腰もなくなりがちで、拭き取り性に劣る場合がある。
そして、精練またはアルカリ減量の後、洗浄のために、40〜80℃で、20〜40分程度、湯洗いすることが好適である。
なお、本発明においては、ベンジルアルコールなどの膨潤剤を用いて分割処理を施すと、洗浄工程で収縮が大きいため、通常の手袋の大きさに編み立てると、縮みすぎて装着がしづらい場合がある。収縮率を見込んで予め粗い密度で大きな手袋を編み立てて膨潤剤により収縮させると、ほどよい大きさのものを得ることができる。しかしながら、上記のように、上記マルチフィラメントを仮撚割繊した後、編み立てて、精練後、湯洗いするとの処理を行う方法であれば、最初の編地を大きく収縮させることなく、所望の大きさの手袋を得ることができ、生産効率がよい。また、上記マルチフィラメントを編み立てて、少量のアルカリ減量により部分的に溶解して上記マルチフィラメントを分割し、洗浄する方法も、膨潤剤による分割よりも生産効率がよい。参考までに、このような仮撚割繊による分割および部分溶解による分割であれば、湯洗い洗浄した時点では、編み立て時点より10〜20%程度、収縮するだけである。
その後、編物の糸の開始端部と終了端部がほつれないように、それぞれの端部を溶融や接着などにより固定する。なかでも、加熱による溶融などにより樹脂化して固定化することが好適である。
ついで、クリーンルーム内で純水により洗浄し、自然乾燥して手袋型清掃具を得る。この場合、純水として、17MΩ・cm以上の超純水を用いるのが好ましく、また洗浄時間は、15〜60分程度が好ましい。
以下、実施例に基づいて、さらに具体的に説明する。物性値の測定および評価は以下のとおりに行った。
(1)厚み
ダイアルシックネスゲージにより厚みを測定した。
(2)拭き取り性
まず、ガラス板を用意し、その表面にワセリンを一定量塗布したのち、試料である編物でそのガラス面を一定回数、拭き取り、ワセリンの除去の程度を肉眼により評価し、評価のよいものから順に、◎、○、△、×とした。
(3)被清掃物の傷
学振型摩擦装置を用い、試料である編物でアクリル板表面を摩擦して、アクリル板表面の傷の有無を評価した。
(4)発塵量
各試料に対し、IES−RP−CC−003−87−T Helmke Drum 測定法に準拠した気中測定法により、発塵量を測定した。0.3μm以上の観測される粒子を発塵量とした。
(5)装着性
実際に手に装着し、ガラス板の拭き取りテストを行い、装着のずれなどの発生を確認し、評価した。
(実施例1)
84dtex/28fで、放射状部が6-ナイロン、補完部がポリエチレンテレフタレートからなる図1(g)に示す繊維横断面形状を備える分割型複合繊維マルチフィラメント(放射状部と補完部の重量比率は1:3、補完部は放射状部を補完する4個の扇形の部分)を準備した。このマルチフィラメントにスピンドル式の仮撚機を用いて、撚数が3000回、フィードが+2、ヒーター温度が170℃にてS方向、Z方向の双糸仮撚加工を施し、放射状部と補完部の分割を行った。得られた仮撚加工糸は、0.75dtexの放射状部の6−ナイロンと、0.56dtexの扇形の補完部のポリエチレンテレフタレートから構成され、捲縮復元率は25%であった。この仮撚加工糸を2本引き揃え、手袋編み機(13ゲージ)を用いて、ウエールが17本/2.5cm、コースが26本/2.5cmの編目密度で、天竺組織の手袋状に編み立てた。得られた手袋状の編物を下記の条件で精練処理し、60℃の湯洗い後、乾燥させた。
<精練条件>
[処理液]ソーダ灰 2g/L
ノニオン系界面活性剤 0.2g/L
[温度]98℃
[時間]40分
この編物の編み始めの開始端部と終了端部とを加熱溶融させ樹脂化した。ついで、クラス100のクリーンルーム内において、比抵抗値約18MΩ・cmの超純水にて洗浄を行った後、自然乾燥した。得られた手袋状の編物を清掃具とした。この清掃具は、表1に記載のように、自己発塵が極めて少なく、良好な拭き取り性を備え、被清掃物を傷つけることもなかった。また、この清掃具を手袋として装着して清掃する際には、素手の感覚で清掃することができた。
(実施例2)
56dtex/25fで、図1(i)に示す繊維横断面形状(16個の扇形の成分:6−ナイロン、16個の扇形の成分:ポリエチレンテレフタレート、これら2種の成分が交互に配置、中空率:10%)を備える分割型複合繊維マルチフィラメント(6−ナイロンとポリエステルの重量比率は1:3)を準備した。このマルチフィラメントにスピンドル式の仮撚機を用いて実施例1と同様に、S方向、Z方向の双糸仮撚加工を施し、6-ナイロンとポリエチレンテレフタレートの分割をおこなった。得られた仮撚加工糸は、0.03dtexの6−ナイロンと、0.09dtexのポリエチレンテレフタレートから構成され、捲縮復元率は20%であった。この仮撚加工糸を2本引き揃え、手袋編み機(13ゲージ)を用いて、ウエールが19本/2.5cm、コースが26本/2.5cmの編目密度で、天竺組織の手袋状に編み立てた。得られた手袋状の編物を下記の条件で精練をおこない、60℃の湯洗い後、乾燥させた。
<精練条件>
[処理液]ソーダ灰 2g/L
ノニオン系界面活性剤 0.2g/L
[温度]98℃
[時間]40分
この編物を編み始めの開始端部と終了端部を加熱溶融させ樹脂化した。ついで、クラス100のクリーンルーム内において、比抵抗値約18MΩ・cmの超純水にて洗浄を行った後、自然乾燥した。得られた手袋状の編物を清掃具とした。この清掃具は、表1に記載のように、自己発塵が極めて少なく、良好な拭き取り性を備え、被清掃物を傷つけることもなかった。また、この清掃具を手袋として装着して清掃する際には、素手の感覚で清掃することができた。
(実施例3)
84dtex/28fで、図1(g)に示す繊維横断面形状(放射状部:6−ナイロン、4個の扇形の補完部:ポリエチレンテレフタレート、重量比率:6−ナイロンとポリエチレンテレフタレートの重量比率は1:3)の分割型複合繊維マルチフィラメントにスピンドル式の仮撚機を用いて、実施例1と同じ条件で、S方向に仮撚加工を施し、6-ナイロンとポリエチレンテレフタレートの分割をおこなった。得られた仮撚加工糸は、0.75dtexの放射状部の6−ナイロンと、0.50dtexの補完部となる扇形のポリエチレンテレフタレートから構成され、捲縮復元率は22%であった。この仮撚加工糸と、図1の(c)に示す横断面形状の分割型複合繊維フィラメント(放射状部:6−ナイロン、8個の扇形の補完部:ポリエチレンテレフタレート、重量比率:6‐ナイロンとポリエチレンテレフタレートの重量比率は1:2、56dtex/25f)とをS方向に300T/Mで合撚した合撚糸Aを準備した。また、仮撚り方向、合撚方向を逆のZ方向にした以外は合撚糸Aと同様に作成した合撚糸Bを準備した。合撚糸Aを2本と合撚糸Bを1本の合計3本を引き揃えて、手袋編み機(13ゲージ)を用いて、ウエールが18本/2.5cm、26本/2.5cmの編目密度で、天竺組織の手袋状に編み立てた。得られた手袋状の編物を糸染め用染色機を用いて、下記の条件で減量加工を施し、60℃で湯洗い後、乾燥した。
<減量加工条件>
[処理液]NaOH水溶液 29g/L
[温度]98℃
[時間]40分
上記減量加工による減量率は12%であり、図1(c)に示す横断面形状の分割型複合繊維フィラメントは、0.67dtexの6−ナイロン1個の放射状部と0.16dtexのポリエチレンテレフタレートの扇形の補完部8個に分割された。
この編物の開始端部と終了端部を加熱溶融させ樹脂化した。ついで、クラス100のクリーンルーム内において、比抵抗値約18MΩ・cmの超純水にて洗浄を行った後、自然乾燥した。得られた手袋状の編物を清掃具とした。この清掃具は、表1に記載のように、自己発塵が極めて少なく、良好な拭き取り性を備え、被清掃物を傷つけることもなかった。また、この清掃具を手袋として装着して清掃する際には、素手の感覚で清掃することができた。
(実施例4)
実施例1と同じ分割型複合繊維フィラメント2本をS方向に110回撚りかけて合撚して合撚糸Aとした。また、撚り方向をZ方向とした以外は合撚糸Aと同じの合撚糸Bを準備した。合撚糸Aを1本と合撚糸Bを1本の2本を引き揃えて、手袋編み機(13ゲージ)を用いて、ウエールが17本/2.5cm、コースが26本/2.5cmの編目密度で、天竺組織の手袋状に編み立てた。
得られた手袋状の編物に、実施例3と同じ条件で減量加工をおこなった。減量加工による減量率は11%であった。得られたフィラメントは、0.75dtexの6−ナイロン1個の放射状部と0.50dtexのポリエチレンテレフタレートの扇形の補完部8個に分割されたものであった。
この編物の開始端部と終了端部を加熱溶融させ樹脂化した。ついで、クラス100のクリーンルーム内において、比抵抗値約18MΩ・cmの超純水にて洗浄を行った後、自然乾燥した。得られた手袋状の編物を清掃具とした。この清掃具は、実施例1のものより、拭き取り性、装着性には劣ったが、表1のとおり、良好な性能を示した。
(比較例1)
分割型複合繊維マルチフィラメントの代わりに、丸断面形状のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(56dtex/24f、単糸繊度2.3dtex)を用いる以外は、実施例1と同様に処理し、清掃具を得た。
この清掃具は、表1に示すように自己発塵は極めて少なく、装着性も良好であったが、拭き取り性が悪く、被清掃物を傷つけてしまった。
(比較例2)
実施例1の仮撚加工糸を、丸編機(釜径110cm、32ゲージ)を用いてインターロック組織に編み立てて開反した後、下記の条件で洗浄し、60℃の湯洗い後、乾燥させた。
[処理液]ソーダ灰 2g/L
[温度] 98℃
[時間] 40分
得られた編物にレーザー光による溶断カットを行い、人の手形のシートとした。このシート2枚をポリエステル糸により、ミシンで手袋状に縫製した。ついで、実施例1と同様に、クリーンルーム内において超純水で洗浄した後、自然乾燥し、清掃具とした。
この清掃具は、表1に記載のように、自己発塵が極めて少なく、良好な拭き取り性を備え、被清掃物を傷つけることはなかった。しかし、ミシン針によりあけられた穴からの発塵が認められ、クリーンルーム内での使用には不向きであった。また、この清掃具を手袋として装着して清掃する際には、縫製したところが違和感となり、素手の感覚で清掃することができなかった。
(比較例3)
実施例1の分割型複合繊維フィラメント双糸仮撚加工糸と、比較例1のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント双糸仮撚加工糸とを、前者のオーバーフィード率が後者のそれよりも20%大きくなるようにして、エアを吹き付け、交絡させた。得られたエアー加工糸(捲縮復元率は27%)を用いて、手袋編み機(13ゲージ)で、ウエールが19本/2.5cm、コースが26本/2.5cmの編目密度で、天竺組織の手袋状に編み立てた。編み立て以降は、実施例1と同じ処理を行い、清掃具を作成した。この清掃具は、表1に記載のように、自己発塵は極めて少なかったが、拭き取り性がやや悪いものであった。また比較例1のマルチフィラメントが部分的に露出していたため、被清掃物に傷をつけてしまった。又、表面に飛び出した単繊維のループが被清掃物に引掛り、糸切れが生じやすかった。
実施例1〜4、比較例1〜3において得られた清掃具について、糸の捲縮復元率と、得られた清掃具の単糸繊度、編目密度、極細繊維比率(編物の構成糸全体に対する極細繊維マルチフィラメントの構成比率)、厚み、拭き取り性、被清掃物の傷、発塵量、装着性を、以下の表1に示す。
Figure 2005287976
本発明の分割型複合繊維の繊維横断面図の例である。

Claims (12)

  1. 極細繊維マルチフィラメントからなる手袋型清掃具であって、当該マルチフィラメントを80重量%以上含み、ループが連続してなるように編成した編物からなり、当該マルチフィラメントの単糸繊度は0.02〜0.9dtexで、当該マルチフィラメントは熱収縮率の異なる2種以上のポリマーからなる分割型複合繊維を分割せしめたものである手袋型清掃具。
  2. 前記マルチフィラメントは仮撚加工を施したものである請求項1記載の手袋型清掃具。
  3. 前記マルチフィラメントは捲縮復元率が15〜40%である請求項2に記載の手袋型清掃具。
  4. 前記マルチフィラメントは撚り方向が互いに異なる仮撚加工糸の双糸からなる請求項2または請求項3に記載の手袋型清掃具。
  5. 前記マルチフィラメントの横断面形状は、放射状部と、当該放射状部を補完する補完部とからなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の手袋型清掃具。
  6. 前記放射状部は熱収縮率が高いポリマーであり、前記補完部は前記放射状部より熱収縮率が低いポリマーである請求項5に記載の手袋型清掃具。
  7. 前記放射状部はポリアミドからなり、前記補完部はポリエステルからなる請求項6記載の手袋型清掃具。
  8. 前記放射状部のポリアミドは内層に入り込み、前記補完部からなるポリエステルが交絡のないループを形成してなる請求項7記載の手袋型清掃具。
  9. 熱収縮率の異なる2種以上のポリマーからなる分割型複合繊維に仮撚加工を施した仮撚加工糸を、編み立てて手袋形状となし、湯洗いし、得られた編物の編み始めの開始端部と編み終わりの終了端部を固定化する手袋型清掃具の製造方法。
  10. 放射状部がポリアミド、前記放射状部を補完してなる補完部がポリエステルからなる横断面形状である複合繊維マルチフィラメントに、仮撚加工を施した仮撚加工糸を、手袋編み機を用いて編み立て、精練した後、湯洗いし、得られた編物の編み始めの開始端部と編み終わりの終了端部を加熱溶融して、樹脂化する手袋型清掃具の製造方法。
  11. 放射状部がポリアミド、放射状部を補完してなる補完部がポリエステルからなる横断面形状である複合繊維マルチフィラメントに、仮撚加工を施した仮撚加工糸を、手袋編み機を用いて編み立て、5〜20%のアルカリ減量をした後、湯洗いし、得られた編物の編み始めの開始端部と編み終わりの終了端部を加熱溶融して、樹脂化する手袋型清掃具の製造方法。
  12. 前記樹脂化した後、超純水にて洗浄を行い、ついで自然乾燥する請求項10または請求項11記載の手袋型清掃具の製造方法。
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