JP2005285858A - 軟磁性材料部材及びその製造方法 - Google Patents

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晃和 松本
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直樹 神谷
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渉 八木
Takashi Kamasaka
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Abstract

【課題】高い磁気特性を備え且つ容易に製造できる軟磁性材料部材の製造方法の提供。
【解決手段】鋳鉄系材料を鋳造により成形する工程とその成形体に対して、脱炭処理を行う工程と、を有することを特徴とする。本発明の軟磁性材料部材及び軟磁性材料部材の製造方法で製造された軟磁性材料部材は、炭素含有量が低いので高い磁気特性を発揮できる。そして、目的とする形状に鋳造により容易に成形することができる。従って、成形性と磁気特性とが両立できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁気特性に優れ且つ製造が容易な軟磁性材料部材及びその製造方法に関する。
トランス、モータ、ソレノイドなどの磁気回路を構成する部材には軟磁性材料が用いられている。特に、モータ用の鉄心には特許文献1及び2に開示されるような高ケイ素含有ケイ素鋼板や低ケイ素含有ケイ素鋼板が採用されている。ケイ素鋼板は含有するケイ素を多くすることで材料の比抵抗を大きくし、鉄損失(渦電流損失が主)を低くしている。また、材料を薄くすることでも渦電流損失を低くすることができるので、薄いケイ素鋼板(0.35mm〜0.5mm程度)を複数枚積層して鉄心などの目的の形態にすることがよく行われている。
ここで、ケイ素鋼板が鉄心などの軟磁性材料部材として汎用されているのは磁気特性に優れていると共に、比較的安価に鉄心形状を形成できるからである。例えば、単純な形状をもつ磁気回路はケイ素鋼板の積層により簡単に形成できる。また、積層方向に対して垂直方向に磁束を通すような使用形態において、ケイ素鋼板の使用は磁気特性を向上する観点から有効である。
しかしながら、ソレノイドの可動子やヨーク、モータのケース材の磁路としてケイ素鋼板の積層体を採用することは加工性の観点から困難である。代替する方法としては、ケイ素鋼を溶融させ、鋳造により形成した鋳造品や、ケイ素鋼の塊から切削加工した成形体に対して、特許文献1に記載の方法を適用する等の方法で磁気特性の高い部材を形成可能であるが、コストが高くなり高価なものになることが予想される。また、低ケイ素のケイ素鋼板(Si含有量3.3%以下)をプレス加工した後、特許文献1の方法を適用することでも磁気特性に優れた軟磁性材料部材を形成できるが、部材の形状がプレス加工可能な形状に限定されてしまう。
また、鋳造により任意の3次元形状を容易に形成できる従来技術の軟磁性材料部材として、鋳鉄系材料を採用した軟磁性材料部材が開示されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3に記載の軟磁性材料部材は、析出する黒鉛により磁気的損失が発生するので高い磁束密度を実現することが困難になり、高い磁束密度が必要な部材に採用することが困難であった。
特公平5−49745号公報 特開平10−140299号公報 特開2002−280210号公報
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、高い磁気特性を備えると共に、容易に製造できる軟磁性材料部材を提供することを解決すべき課題とする。また、高い磁気特性を備えると共に、容易に製造できる軟磁性材料部材を製造する方法を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する目的で本発明者らが鋭意検討を行った結果、鋳鉄系材料を用いて鋳造した鋳造品について脱炭処理を行うことにより、部材の成形性と磁気特性とを両立できることを見出した。また、脱炭処理により鋳鉄系材料中のケイ素が内部から表面部へ拡散移動することを見出した。本発明者らは以上の知見から、以下の発明を完成させた。
すなわち、本発明の軟磁性材料部材は、表層部及びその近傍における全炭素濃度が4質量%以下、表層部及びその近傍のマトリックス中に含有される平均炭素濃度が0.2質量%以下である鉄系材料から構成され、
該表層部及び/又は該表層部近傍に、内部から拡散移動したケイ素によりケイ素濃度がマトリックス中の平均ケイ素濃度より高濃度になる高ケイ素濃度領域をもつことを特徴とする(請求項1)。
ここで、鋳鉄系材料に対して脱炭処理を行うことで、ケイ素濃度にも濃度勾配が生じるため、上記のようなケイ素高濃度領域をもつ軟磁性材料部材は脱炭処理を経ていることが推察できる。このように、特許文献1及び特許文献2に開示された外部からのケイ素の拡散により、ケイ素高濃度領域が形成されるものとは大きく異なっている。このことは後述する実施例(試験5など)において詳述する試験結果からも支持されている。
更に、前記表層部を除き、表面から所定の深さの領域に、表面に向かうほどケイ素濃度が低いケイ素濃度勾配をもつことが好ましい(請求項2)。ここで、所定の深さの領域としては、表面から、0.1mm〜0.2mmの深さの領域が例示できる。そして、所定の深さの領域として、0.2mm〜0.3mm、0.1mm〜0.3mm、0.1mm〜0.5mmなどの範囲を採用することもできる。
上記した「所定の深さの領域」にケイ素濃度勾配を有するとは、少なくとも「所定の深さの領域」にケイ素濃度勾配を有するという意味であり、その他の部分や、表層部を除いた本発明の軟磁性材料部材全体においてケイ素濃度勾配が生じる場合もある。
更に、本発明の軟磁性材料部材は鋳鉄系材料由来の場合が多いので、前記鋳鉄系材料は、マトリックスと該マトリックス中に分散されたセメンタイトとを含んだ組織からなることがある(請求項3)。そして、脱炭処理の程度によっては、表面に向かうほど炭素濃度が低い炭素濃度勾配をもつことがある(請求項4)。そして、他の領域に表面に向かうに従い増加する炭素濃度勾配を有しないことが好ましい。なお、ケイ素と同様に、表層部に炭素濃度が局所的に高い部分を有することがあるので、炭素濃度勾配も表層部を除いて特定することが好ましい。
そして、更に、他の本発明の軟磁性材料部材は、鋳鉄系材料を鋳造により成形体に成形する工程と、
該成形体に対して、脱炭処理を行う工程と、を有する製造方法により製造されうることを特徴とする(請求項5)。
更に、上記課題を解決する本発明の軟磁性材料部材の製造方法は、鋳鉄系材料を鋳造により成形体に成形する工程と、
該成形体に対して、脱炭処理を行う工程と、を有することを特徴とする(請求項6)。
そして、前記鋳造工程により鋳造された成形体はチル組織を含むものになっていることが望ましい(請求項7)。また、前記鋳鉄系材料は、CE値が1%以上であることが好ましい(請求項8)。
本発明の軟磁性材料部材及び軟磁性材料部材の製造方法で製造された軟磁性材料部材は、マトリックス中の炭素含有量が低いので高い磁気特性を発揮できる。また、本発明の軟磁性材料部材は、表層部及びその近傍の全炭素濃度が4質量%以下なので、鋳鉄系材料由来であることが推察され、目的とする形状に鋳造により容易に成形することができる。従って、成形性と磁気特性とを両立することができる。
〔軟磁性材料部材:第1実施形態〕
本実施形態の軟磁性材料部材は、表層部及びその近傍における全炭素濃度が4質量%以下、表層部及びその近傍のマトリックス中に含有される平均炭素濃度が0.12質量%以下である鉄系材料から構成されている。表層部の厚みとしては特に限定しないが、厚みの下限としては0.1mm程度や0.3mm程度が例示できる。上限としては0.5mm程度や1mm程度が例示できる。ここで、マトリックス中に含有される平均炭素濃度(以下、「マトリックスC量」とも記載する)とは全炭素濃度(以下、「全C量」とも記載する)からマトリックスから析出している炭素量(以下、「遊離C量」とも記載する)を引いたものである。つまり、磁気特性を発揮する目的で、特に表面近傍における炭素の濃度が所定値以下に調節されていることを示している。このマトリックスC量としては0.1質量%以下にすることが好ましく、0.01質量%以下にすることがより好ましい。また、表層部及びその近傍における全炭素濃度としては2.0質量%以下にすることが好ましく、0.5質量%以下にすることがより好ましい。炭素含有量は一般的な元素分析とX線マイクロアナライザとの組み合わせで測定できる。
本実施形態の軟磁性材料部材は、表層部及び/又はその表層部近傍に、内部から拡散移動したケイ素によりケイ素濃度がマトリックス中の平均ケイ素濃度より高濃度になる高ケイ素濃度領域をもつことを特徴とする。高ケイ素の鉄−ケイ素化合物が優れた磁気特性を示すことから、ケイ素が高濃度になる領域が形成されていることが好ましいものと考えられる。ここで、高ケイ素濃度領域と、マトリックス中の平均ケイ素濃度との差は1原子%以上であることが好ましく、2原子%以上であることがより好ましく、3原子%以上であることが更に好ましい。そして、高ケイ素濃度領域は表層部にピーク状に存在することが好ましい。
本実施形態の軟磁性材料部材は、表層部を除き、表面に向かうほどケイ素濃度が低いケイ素濃度勾配をもつことが好ましい。脱炭処理ではケイ素の拡散が表面から進行することが多いので、表面に近い部分で特に顕著なケイ素濃度勾配が生ずることがある。従って、脱炭処理により生成しうるケイ素濃度勾配は、最表面近傍を除き、表面から所定の深さの領域に生成する。所定の深さとしては表層部の近傍である0.1mm〜0.2mm、0.2mm〜0.3mm、0.1mm〜0.3mm又は0.1mm〜0.5mmなどの深さの領域を採用することもできる。
ここで、これら以外の他の深さの領域についてもケイ素濃度勾配が存在することは問題ないが、検出の容易さから範囲を区切ってケイ素濃度勾配がある場合を規定している。ケイ素濃度勾配が存在する領域として表層部を除くのは、そのケイ素濃度勾配がある部分より表面に近い部分である表層部にはケイ素高濃度領域があるからである。ケイ素の濃度は、X線マイクロアナライザにより部材の断面を深さ方向に走査して測定することで算出できる。また、ケイ素濃度勾配が存在する領域としては深さの絶対値は問わず、深さ方向の厚みが0.1mm以上の領域も例示できる。また、X線マイクロアナライザにより断面のケイ素濃度を2次元分析することで、表層部に存在する高ケイ素濃度領域の存在を容易に検出することができる。
ここで、ケイ素濃度勾配を有するとは、ある線分にそって測定されたケイ素濃度が概ね漸減乃至漸増していることをいう。ケイ素濃度勾配におけるケイ素濃度の最大値と最小値との差としては、0.1原子%以上、1原子%以上、2原子%以上、3原子%以上等の濃度勾配が例示できる。
本軟磁性材料部材を構成する鉄系材料は、上述したような炭素元素分布とケイ素元素分布とを有するものであり、その他の組成としては鉄を主成分とする以外は特に限定しない。すなわち、炭素及びケイ素以外の元素を含有することができる。例えば、Cr、Sn、Mo、V、Nb、Sb、Cu、Ni、Alを含有することができる。鉄系材料中にはセメンタイトと、そのセメンタイトを分散するマトリックスとからなる組織を含むことができる。セメンタイトは鋳鉄系材料に含有される炭素由来である。セメンタイトの含有量は少ない方が好ましいが、前述の炭素含有量の範囲内であれば特に大きな問題はない。この場合に、マトリックスはフェライトなどから構成される。
また、表面に向かうほど炭素濃度が低い炭素濃度勾配を有していても良い。ここで、炭素濃度勾配を有するとは、ケイ素濃度勾配と同じくある線分にそって測定された炭素濃度が概ね漸減乃至漸増していることをいう。炭素濃度勾配は、最大値と最小値との差としては、0.1質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上等の濃度勾配が例示できる。この炭素濃度勾配も、X線マイクロアナライザにより部材の断面を深さ方向に走査して測定することで算出できる。
なお、ケイ素濃度勾配や炭素濃度勾配の有無を特定する目的で行うX線マイクロアナライザ測定において、電子線を走査して照射する部分には、析出した鉄−シリコン化合物、セメンタイトやグラファイトなどが存在しない部位にすることが望ましい。
〔軟磁性材料部材:第2実施形態〕
本実施形態の軟磁性材料部材は、後述する本実施形態の製造方法にて製造されうる形態をもつ部材である。具体的には、概ね前述の第1実施形態の軟磁性材料部材と同じであると推定される。製造方法の詳細は後述するので、ここでは省略する。
〔軟磁性材料部材の製造方法〕
本実施形態の軟磁性材料部材の製造方法は、鋳造工程と脱炭工程とを有する。鋳造工程は、鋳鉄系材料を鋳造により所望の形状に鋳造する工程である。ここで、鋳鉄系材料とは、JISなどにて規定されたいわゆる鋳鉄の他、鋳鉄と同等の融点などの鋳造に必要な性能をもつ鉄系材料である。JISに規定された一般的な鋳鉄としては、JISで規格されるねずみ鋳鉄、合金鋳鉄、可鍛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄などが挙げられる。特に好ましい鋳鉄系材料としてはCE値が2質量%以上の材料が好ましく、CE値が2.5質量%以上の材料が更に好ましい。ここで、CE値とはCE値(質量%)={Si(質量%)/3+C(質量%)}で表される値である。鋳造工程で得られる成形体の組織はチル組織を含むものであることが好ましい。鋳造工程において鋳鉄系材料を急冷凝固させることでチル組織を含むようにすることができる。また、鋳鉄系材料に炭化物生成元素を添加することにより、チル組織を形成することができる。炭化物生成元素としてはMg、Mn、Sn、Cr、Vなどを例示できるが特にこれらに限定されるものではない。なお、鋳造工程にて、急冷を行う場合にはCE値を1〜2質量%にしても磁気特性を向上することができる。
脱炭工程は鋳造工程により鋳造した成形体に対して脱炭処理を行う工程である。脱炭は成形体の表層部の炭素濃度を低下させる工程である。具体的な脱炭処理の方法は特に限定されず、通常の脱炭用ガス雰囲気下や脱炭浴中などで所定温度、所定時間加熱することで行うことができる。脱炭用ガスとしては炭酸ガス、窒素ガス、水素ガスなどの混合ガスが例示できる。
脱炭を行う温度及び時間としては特に限定しないが、脱炭処理を行う程度の指標を以下に示す。脱炭処理を行う程度としては、前述の第1実施形態の軟磁性材料部材で説明したように、ケイ素濃度に濃度勾配が生ずる程度にまで行うことで充分である。ここで、ケイ素濃度勾配が認められる程度にまで脱炭処理を行うと、部材中の炭素濃度がほぼ一様な程度にまで減少することもある。なお、ケイ素についても、部材中の濃度をほぼ一様な程度まで脱炭処理を行うこともできるが、あまりに長時間、脱炭処理を行っても、それ以上磁気特性向上効果が得られない可能性もあるので、適正な範囲にすることが好ましい。
脱炭工程後の部材の組成は、いわゆる鋳鉄系材料とは異なる組成になっている。例えば、磁気特性向上に顕著な影響を与える炭素含有量が減少する。炭素含有量の減少は磁気特性に大きな影響を与える表面(表皮効果)から進行しており、効果的に磁気特性を向上できる。本製造方法により製造された軟磁性材料部材については、上述の本実施形態における軟磁性材料部材の説明がほぼ妥当する。
なお、本製造方法を適用後の軟磁性材料部材に対して、更に機械的加工(切削加工や、塑性変形など)を行うこともできる。
〔試験1:脱炭処理による磁気特性の変化〕
(実施例1)
高純度の銑鉄(炭素含有量4.0質量%)を6kgとS10Cを19kgと加炭剤(炭素含有70質量%)を360gとフェロシリコン(ケイ素含有70質量%)を610gとを溶解用の高周波炉にて溶解した。1600℃まで溶解した湯を100gの鉄粉でカバーされた球状化処理剤(Mg:5質量%含有)が710g入った取鍋に注ぎ、その後、大阪特殊合金製のカルバロイ(Fe−Si系)を用い、注湯流接種を行いながら砂型に湯を注いだ。注湯から1時間後に砂型をばらして鋳物を取り出した。砂型内のキャビティは、材料磁気特性、組織観察用それぞれのテストピースが採れるように、円柱形状(直径60mm、長さ200mm)とした。前記方法により、全体を基準にして、炭素2.0質量%、ケイ素1.71質量%、残部Feからなる組成をもつ成形体を得た(CE値=2.57%)。
上記成形体について、外径26mm、内径19mm、厚み2mmのリング状に切り出した後に脱炭処理を行い本実施例の試験試料である軟磁性材料部材を得た。脱炭処理は二酸化炭素ガスと窒素ガスと水素ガスとを0.3:99.2:0.5で混合した混合ガスを流動させた雰囲気中に試料を入れ、1000℃で10時間処理した後、炉冷することで行った。また、脱炭処理を行わない成形体をそのまま対照試料とした。
(実施例2)
全体を基準にして、炭素1.55質量%、ケイ素3.01質量%、残部Feからなる組成をもつ成形体を得た(CE値=2.55%)。
(実施例3)
全体を基準にして、炭素3.3質量%、ケイ素2.5質量%、残部Feからなる組成をもつ成形体を得た(CE値=4.13%)。
(交流磁気特性及び直流磁気特性)
各実施例の試験試料及び対照試料に対して、励磁用コイルとして200ターン、検出用コイルとして50ターン巻き付け磁気特性を測定した。交流磁気特性測定は、岩崎通信機(株)製のB−HアナライザSY−8232を用い、交流周波数400Hz、磁界10000A/mの条件で測定した。直流磁気特性は、理研電子(株)製の直流B−H特性装置BHU−60を用い、磁界10000A/mの条件で測定した。結果を表1及び図1に示す。図1では交流磁気特性測定において、交流磁束密度の磁場依存性をグラフに示した。
Figure 2005285858
表1及び図1から明らかなように、脱炭処理を行うことによって、直流磁気特性及び交流磁気特性共に向上することが分かった。ここで、実施例1及び3について、それぞれ試験試料及び対照試料の組織を図2(実施例1:対照試料)、図3(実施例1:試験試料)、図4(実施例3:対照試料)及び図5(実施例3:試験試料)に示す。実施例1では脱炭処理前の組織がチル組織(図2)であったところ、脱炭処理後にはフェライトが主となるマトリックスに、セメンタイトが分散された組織(図3)になった。
実施例3では脱炭処理前の組織にはパーライトからなるマトリックスに、グラファイト又はセメンタイトが分散された組織(図4)をもっていた。実施例1の脱炭処理前の組織と比べて、実施例3では炭素含有量が多いのでグラファイトなどが分散される量が多い。そして、脱炭処理後には炭素が減少し、空孔が分散された組織に変化していた(図5)。
実施例1及び3を比較すると、実施例1の方が実施例3よりも脱炭処理による磁気特性の向上効果に優れていることが分かる。このことから、脱炭処理前の組織がチル組織を有するものの方が脱炭処理による磁気特性を向上させる効果に優れていることが推測できる。なお、図には示さないが、以下に示す試験においても同様の組成をもつ成形体であっても組織にチル組織を有するものの方が磁気特性を向上させる効果に優れていることを確認している。
また、脱炭処理後の試験試料について、表層部を研磨により、僅かに除去したところ、磁気特性が低下することが分かった。つまり、表層部に磁気特性を向上させる組成をもつ層が形成されていたことを示唆していると考えられる。
〔試験2:脱炭処理を行う成形体の形状が磁気特性に及ぼす影響について〕
表2に示す2種類の組成(M66:炭素2.12%、ケイ素3.96%;M69:炭素1.55%、ケイ素3.01%)について、実施例1とほぼ同様にして成形体を形成し脱炭処理前後の磁気特性を試験1と同様の方法で評価した。実施例1と異なるところは、鋳鉄系材料の組成が異なること、鋳造により形成する成形体の形状が300mm×120mm×10mmの直方体であること、その直方体から切り出すリング状の成形体の厚みが0.5mm、1.0mm及び2.0mmの3種類あることの3点である。なお、試料番号において、かっこ内にて示すC及びSiの後に続く数字は炭素及びケイ素の脱炭処理前の含有量(質量%)を示すものである(以下同じ)。
結果を表2に併せて示す。表2を参照すると、脱炭処理を行う際の成形体の厚みが1.0mm以下になることで磁気特性の向上効果が高くなることが分かる。これは本試験における脱炭処理条件(処理時間やガス組成など)では、厚みが薄い方が炭素やケイ素などの元素の拡散が容易になることや、脱炭の程度が適正になるからと推測される。
Figure 2005285858
〔試験3:鋳鉄系材料の組成及び鋳造条件が磁気特性に及ぼす影響について〕
表3に示す4種類の組成(M75:炭素2.54%、ケイ素4.89%;M76:炭素3.28%、ケイ素4.82%;M77:炭素2.0%、ケイ素1.5%;M78:炭素1.5%、ケイ素1.5%)について、実施例1とほぼ同様にして成形体を形成し脱炭処理前後の磁気特性を試験1と同様の方法で評価した。実施例1と異なるところは、鋳鉄系材料の組成が異なること、鋳造により形成する成形体の形状が直径100mm、長さ100mmの円柱であることの2点である。結果を表3に併せて示す。表3を参照すると、表2で得られた試験試料の方が全般的に磁気特性に優れていることが分かる。これは表2で示したM66及びM69では鋳造により形成する成形体の形状の比表面積が大きいので、冷却速度が大きくなって、チル組織が形成されたためと推測される。なお、詳細は示さないが、表3で示したM75〜M78についても冷却速度を大きくすることで脱炭処理後の磁気特性を向上することができた。
鋳鉄系材料の組成が磁気特性に及ぼす影響については、一定以上のCE値(実施例1などの結果から2〜2.5%程度以上)を満たす組成であればそれ程大きな影響を与えないものと思われる。また、詳細は示さないがCE値がそれ以下であっても冷却速度を大きくすることで組織を変化させ、磁気特性を向上できることが期待できる。
Figure 2005285858
〔試験4:脱炭処理時間が磁気特性に及ぼす影響について〕
試料番号M69(炭素1.55%、ケイ素3.01%)について磁気特性を評価した。脱炭処理時間が異なる以外は、試験2と同様の条件で試験試料を作製した。すなわち、厚みを0.5mm、1.0mm及び2.0mmとした各成形体に対して、脱炭処理を3、6、10、20及び40時間行った後の磁気特性を評価した。結果を表4に示す。表4から明らかなように、脱炭処理時間は長い方が磁気特性が向上する傾向がある。しかしながら、詳細に検討すると、ある程度、脱炭処理を行うと、磁気特性向上効果は飽和するものと推測できる。例えば、最大透磁率の値を検討すると、40時間脱炭処理を行ってもあまり磁気特性は向上しない。このことは厚みが薄い成形体を採用した方が顕著である。厚みが2.0mmの成形体では脱炭処理時間20〜40時間程度で最大透磁率が極大値をもつのに対して、厚みが1.0mmの成形体では脱炭処理時間10〜20時間程度で、厚みが0.5mmの成形体では脱炭処理時間10時間程度でそれぞれ最大透磁率が極大値を示すように、徐々に脱炭処理の効果が飽和しており、脱炭処理時間にも適正値が存在することが分かった。
Figure 2005285858
〔試験5:深さ方向における元素組成の変化〕
試料番号M66(厚さ2.0mm)の試験試料(脱炭処理前後)について、元素組成の深さプロファイルを測定した。元素組成は試験試料を表面と垂直方向に切断後、その切断面を深さ方向にX線マイクロアナライザを用いて測定した。測定する部位としてはリング状の試験試料の内周面から、内周面に垂直な方向に測定した。結果を図6及び7に示す。
図6から明らかなように、脱炭処理前の成形体は酸化物などが存在する最表面部を除き、内部のケイ素濃度はほぼ一定であるのに対して、脱炭処理後では図7に示すように、充分に明確な高ケイ素濃度領域(表面からの深さ0.05mm〜0.08mm程度)及びケイ素濃度の勾配(表面からの深さ0.1mm〜0.2mm程度)の存在が認められた。また、X線マイクロアナライザにより断面を2次元的に分析したところ、表層部に存在する高いケイ素濃度をもつ高ケイ素濃度領域の層が明確に認められた。
〔参考〕
図8及び9に他の組成をもつ鋳鉄系材料や、他の脱炭処理条件を採用した場合の磁気特性を測定した結果を示す。いずれの場合であっても脱炭処理を行うことで磁気特性が向上することが明らかとなった。なお、図8におけるFCD400における+鍛造とは、鍛造プレスにより圧縮し、脱炭処理により形成される空孔をつぶす操作を脱炭処理後の試験試料に対して行ったこと示している。
実施例1〜3の試験試料の磁束密度の磁場依存性を示したグラフである。 実施例1の成形体(脱炭処理前)の内部の組織を示す図である。 実施例1の試験試料(脱炭処理後)の内部の組織を示す図である。 実施例3の成形体(脱炭処理前)の内部の組織を示す図である。 実施例3の試験試料(脱炭処理後)の内部の組織を示す図である。 試験5において測定した脱炭処理前の成形体における各元素濃度の深さ方向のプロファイルを示したグラフである。 試験5において測定した脱炭処理後の試験試料における各元素濃度の深さ方向のプロファイルを示したグラフである。 その他の組成の鋳鉄系材料などに対して脱炭処理を行った場合の磁気特性を示した表である。 その他の組成の鋳鉄系材料などに対して脱炭処理を行った場合の磁気特性を示した表である。

Claims (8)

  1. 表層部及びその近傍の全炭素濃度が4質量%以下、該表層部及びその近傍のマトリックス中に含有される平均炭素濃度が0.2質量%以下である鉄系材料から構成され、
    該表層部及び/又は該表層部近傍に、内部から拡散移動したケイ素によりケイ素濃度がマトリックス中の平均ケイ素濃度より高濃度になる高ケイ素濃度領域をもつことを特徴とする軟磁性材料部材。
  2. 前記表層部を除き、表面から所定の深さの領域に、表面に向かうほどケイ素濃度が低いケイ素濃度勾配をもつ請求項1に記載の軟磁性材料部材。
  3. 前記鉄系材料は、マトリックスと該マトリックス中に分散されたセメンタイトとからなる組織を含む請求項1又は2に記載の軟磁性材料部材。
  4. 表面に向かうほど炭素濃度が低い炭素濃度勾配をもつ請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性材料部材。
  5. 鋳鉄系材料を鋳造により成形体に成形する工程と、
    該成形体に対して、脱炭処理を行う工程と、を有する製造方法により製造されうることを特徴とする軟磁性材料部材。
  6. 鋳鉄系材料を鋳造により成形体に成形する工程と、
    該成形体に対して、脱炭処理を行う工程と、を有することを特徴とする軟磁性材料部材の製造方法。
  7. 前記鋳造工程により鋳造された成形体はチル組織を含むものである請求項6に記載の軟磁性材料部材の製造方法。
  8. 前記鋳鉄系材料は、CE値が1質量%以上である請求項6又は7に記載の軟磁性材料部材の製造方法。
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