JP2005283742A - プラスチック製レンズを用いた光学ユニット - Google Patents

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文行 鈴木
Tadashi Mochizuki
正 望月
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Abstract

【課題】全てのレンズがプラスチック製レンズで構成される高解像度用途の光学ユニットの提供。
【解決手段】下記レンズ(1)、(2)を含む光学ユニット。
(1)アッベ数が45〜60のプラスチック製レンズ、
(2)6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなる極限粘度が0.30〜0.50dl/gであるポリカーボネートを射出成形して得られるレンズ。
【選択図】なし

Description

本発明は、銀塩カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラ等に使用される高解像度用途の光学ユニットに関する。
近年の撮像用半導体の急速な高解像度化とコストダウンにより、それに使用される光学ユニットにも高解像度化とともに小型軽量化とコストダウンが求められている。小型軽量化およびコストダウンのためには、光学ユニットに使用するレンズとして、プラスチック製のレンズを採用することが望ましく、低解像度の用途においては、構成するレンズを全てプラスチックレンズとした光学ユニットが普及している。
しかしながら、プラスチック材料は、ガラスに比べて複屈折が大きく、光学ユニットのレンズとして使用した場合、これが解像度に悪影響するという問題があった。低解像度の用途においては、要求される解像度が低いため問題とされなかったが、高解像度、特に解像度を空間周波数(MTF)で表した場合に、コントラスト20%における解像度が150本/mm程度以上、好ましくは200本/mm程度以上の解像度の用途においては、所望の解像度が得られないため、光学ユニットを構成する全てのレンズをプラスチック製のレンズとすることはできなかった。
光学ユニットの光学設計においては、互いにアッベ数が異なる複数のレンズを組み合わせて使用することにより色収差を補正することが行われている。高解像度用途の光学ユニットの場合、上記したプラスチックレンズの複屈折の問題から、互いにアッベ数が異なるプラスチック製とガラスレンズとを組み合わせることで、色収差を補正している。
ガラスレンズと組み合わせて使用されるプラスチック製レンズとしては、光学ユニット用のレンズとして好ましい特性を有することから、アッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズが広く使用されている。このような脂環式ポリオレフィン樹脂は、市販品としては、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TM、JSR株式会社製のアートン(ARTON)TM、三井化学株式会社製のアペル(APEL)TM等が使用されている。
したがって、構成するレンズが全てプラスチック製レンズである光学ユニットを光学設計する場合、上記したアッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズと、該レンズとはアッベ数が大きく異なるプラスチック材料製のレンズとを組み合わせて色収差を補正することになる。低解像度用途、具体的には例えば、コントラスト20%における解像度が100本/mm程度未満の光学ユニットにおいては、アッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズと、アッベ数がこれよりも低い(例えば30程度)ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂製のレンズとを組み合わせて色収差を補正することが行われている。しかし、このビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂は固有複屈折が0.106と大きく(非特許文献1)、高解像度の光学ユニットには適用することができなかった。
よって、アッベ数45〜60の脂環式オレフィン樹脂製のレンズと組み合わせて、色収差を補正するのに適したアッベ数を有し、複屈折が小さく、かつ光学ユニットのレンズ材料に適した物性を有するプラスチック材料は従来知られていなかった。
井出文雄,「ここまできた透明樹脂」,工業調査会,2001年,p.29
すなわち、本発明は、全てのレンズがプラスチック製レンズで構成される高解像度用途の光学ユニットを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、下記レンズ(1)、(2)を含む光学ユニットを提供する。
(1)アッベ数が45〜60のプラスチック製レンズ、
(2)6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなる極限粘度が0.30〜0.50dl/gであるポリカーボネートを射出成形して得られるレンズ。
前記ポリカーボネートにおいて、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの使用モル割合が、1:9〜9:1であることが好ましい。
前記ポリカーボネートにおいて、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールの合計100モル部に対して、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物を、0.2〜3.0モル部添加してなることが好ましい。
前記ポリカーボネートにおいて、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物が、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、及び2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジメチル−3−ヘプテンからなる群より選択された少なくとも1種類であることが好ましい。
前記アッベ数45〜60のプラスチック製レンズは、脂環式ポリオレフィン樹脂から作製されることが好ましい。
本発明に光学ユニットにおいて、前記レンズ(1)、(2)は、光学的な作用を有するレンズ部と、前記レンズ部の周囲に設けられたフランジ部からなり、
前記レンズ(1)のフランジ部と、前記レンズ(2)のフランジ部と、は嵌合可能であり、
前記レンズ(1)、(2)は、前記フランジ部の嵌合によって、組み合わされた状態で互いの光軸を一致する形状を有することが好ましい。
前記レンズ(1)、(2)は、前記フランジ部の嵌合によって、組み合わされた状態で、互いの光軸方向の位置が適正となる形状を有することが好ましい。
本発明の光学ユニットにおいて、前記レンズ(2)はその表面全体に防湿皮膜が形成されていることが好ましい。
前記防湿皮膜は、SiOからなるガラス質膜であることが好ましい。
また、前記防湿皮膜は、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を主成分とすることが好ましい。
本発明の光学ユニットは、全てのレンズがプラスチック製レンズで構成されているにもかかわらず、複屈折による解像度への悪影響が生じることがなく、高解像度用途の光学ユニットとして優れている。
本発明の光学ユニットは、全てのレンズがプラスチック製レンズで構成されているため、小型軽量化が要求される用途に好適である。
また、本発明の光学ユニットは、低アッベ数のレンズを構成する材料に、流動性に優れた特定のポリカーボネート材料を使用するため、より低温で射出成形することができ、かつ射出成形の際の成形性に優れている。このため、レンズの生産性に優れており、光学ユニットのコストダウンが可能である。
また、射出成形の際の成形性に優れることにより、様々な形状のレンズを使用することができる。このようなレンズとして、レンズの光軸合わせ構造や、レンズの光軸方向における位置合わせ構造を有するレンズを使用することで、光学ユニットを組み立てる際にレンズの光軸合わせや、レンズの光軸方向における位置合わせを容易に行うことができる。また、射出成形により製造されるレンズの特徴であるゲート跡を光軸合わせの目印とすることでも、光軸合わせを容易に行うことができる。
レンズ、特に低アッベ数レンズの表面全体に防湿皮膜が形成された本発明の光学ユニットは、環境変化、より具体的には光学ユニットが置かれる環境の湿度の変化によりレンズの光学性能が変化することが防止されている。
以下、図面を参照して本発明の光学ユニットを説明する。
図1は、本発明の光学ユニットの1実施形態の側部断面図である。図1に示す光学ユニット1は、銀塩カメラのレンズ機構や、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラの撮像モジュールに使用される一般的な光学ユニットの構成である。図1の光学ユニットでは、円筒状の鏡筒5内に2枚のレンズ2,3が収納されている。
以下、図の説明において、光学ユニット1の撮影光の入射側を前部、その反対側を後部とする。2枚のレンズ2,3のうち、後部側のレンズ2はアッベ数45〜60のプラスチック製のレンズ(以下、「高アッベ数レンズ」という。)であり、アッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズであることが好ましい。前部側のレンズ3は、レンズ2と組み合わせて色収差の補正を行うのに相応しいアッベ数を有するレンズであり、通常は高アッベ数レンズ材料よりもアッベ数が小さい(アッベ数23〜35程度)のレンズ(以下、「低アッベ数レンズ」という。)であり、後で詳述する特定のポリカーボネートから射出成形される。鏡筒5内において、2枚のレンズ2,3は、スペーサ6を介して固定されている。スペーサ6は、レンズ2,3を光学方向における適正な位置に位置決めしている。前部側に位置するレンズ3は、脱落を防止するためレンズ押さえ7により固定されている。
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなる極限粘度が0.3〜0.5dl/gであるポリカーボネートである。
炭酸エステル形成化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリールカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
上記した低アッベ数レンズ材料は、ビスフェノールA〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〕からポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法を採用することができる。
前者のホスゲン法においては、通常酸結合剤および溶媒の存在下において、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、ホスゲンとを反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられる。また、溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレンなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような3級アミン触媒および第4級アンモニウム塩などの触媒が使用される。また、重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等で表されるフェノール類等一官能基化合物を分子量調節剤として加える。更に、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤を小量添加してもよい。反応は、通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常5分〜10時間、好ましくは10分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
一方、後者のエステル交換法においては、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、ビスアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。この時、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール類等の一官能基化合物を分子量調節剤として加えてもよい。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終的には1mmHg以下にすることが好ましく、エステル交換反応により生成した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜6時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく。また、所望に応じ、酸化防止剤を添加して反応を行ってもよい。
ホスゲン法とエステル交換法では、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、及び4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールの反応性を考慮した場合、ホスゲン法の方が好ましい。
更に、分子量調節剤としては、一価フェノール類が好ましく、具体的には、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デカニルフェノール、テトラデカニルフェノール、ヘプタデカニルフェノール、オクタデカニルフェノール等の長鎖アルキル置換フェノール;ヒドロキシ安息香酸ブチル、ヒドロキシ安息香酸オクチル、ヒドロキシ安息香酸ノニル、ヒドロキシ安息香酸デカニル、ヒドロキシ安息香酸ヘプタデカニル等のヒドロキシ安息香酸長鎖アルキルエステル;ブトキシフェノール、オクチルオキシフェノール、ノニルオキシフェノール、デカニルオキシフェノール、テトラデカニルオキシフェノール、ヘプタデカニルオキシフェノール、オクタデカニルオキシフェノール等の長鎖アルキルオキシフェノール類が例示される。
ホスゲン法を採用する場合は、ホスゲン吹き込み終了後に反応を効率よく行うため第4級アンモニウム塩を少量添加することが好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイドなどが例示される。これらのうちトリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドが好ましい。この第4級アンモニウム塩は、使用される全ビスフェノール類に対して、一般に0.0005〜5mol%使用されることが好ましい。第4級アンモニウム塩の添加後、3〜10分後に、トリエチルアミンなどの3級アミン及び分子量調節剤を添加して重合させることが好ましい。3級アミンの添加量は、全ビスフェノール類に対して、0.01〜1.0mol%である。また、分子量調節剤の添加量は、全ビスフェノール類に対して、3〜10mol%である。
分岐化剤として作用する3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物としては、フロログルシン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシフジェニルエーテル、2,2−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジメチル−ヘプテン−3、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジメチル−ヘプタン−2、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン等が例示される。そのうち、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、及び2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジメチル−3−ヘプテンが反応性や取り扱いの容易さから最も好ましい。
さらに、分岐化剤となる3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの合計100モル部に対して、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物を0.2〜3.0モル部添加することが好ましい。0.2モル部未満では流動性改善効果が低く、3.0モル部を超えると耐衝撃性が劣ってくる。
6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの使用モル割合は、1:9 〜9:1が好ましい。6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンが1割未満では、耐熱性が低下すると同時に複屈折改善効果が不十分となる。また、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンが9割を超えると、極限粘度が0.3dl/g以上の高分子量体を得ることが困難となる。
低アッベ数レンズ材料は、射出成形時に必要な安定性や離型性を確保するため、所望に応じて、ヒンダードフェノール系やホスファイト系酸化防止剤;シリコン系、脂肪酸エステル系、脂肪酸系、脂肪酸グリセリド系、密ろう等天然油脂などの滑剤や離型剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系、サリチレート系等の光安定剤;ポリアルキレングリコール、脂肪酸グリセリド等帯電防止剤などを適宜併用することも可能である。
上記した低アッベ数レンズ材料は、高解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として好適な以下の特性を有している。
低複屈折
上記した低アッベ数レンズ材料は、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂のような、低解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として従来使用されているポリカーボネート樹脂に比べて、複屈折が少ないことを特徴とする。例えば、光学面の半径9mm、中心部の厚さ2.5mmのレンズを射出成形した場合に、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂のレンズでは、レタデーションが200〜400nm程度であるのに対して、上記した低アッベ数レンズ材料で作製したレンズは、レタデーションが0〜120nm程度である。
なお、上記のレタデーションは、レンズを偏光板(直交ニコル)に挟んで、干渉色を基準サンプルと比較することにより求めた。
このような特性により、色収差を補正するためにアッベ数45〜60の高アッベ数レンズと組み合わせて使用しても、解像度に悪影響を及ぼすことがない。
低吸水性
上記した低アッベ数レンズ材料は低吸水性であり、具体的には、JIS K7209に従って測定した飽和吸水率が0.3%以下である。
このような特性により、湿度による屈折率変化が生じにくく、レンズの寸法安定性にも優れる。
高流動性
上記した低アッベ数レンズ材料は、極限粘度が0.30〜0.50dl/gと低いため、流動性に優れている。この特性は、射出成形によりレンズを作製する場合に特に好ましい。すなわち、低解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として従来使用されているポリカーボネート樹脂よりも低温、具体的にはポリマー温度240〜260℃で射出成形することができる。しかも、該温度範囲において、射出成形において通常実施されるせん断速度100〜1000(S-1)におけるせん断速度と粘度の関係がニュートン流体に近い特性を有する。
これらの特性により、レンズを射出成形する際の成形性に優れている。よって、成形不良が生じることがなく、しかも様々な構造を有するレンズに成形することができる。
また、従来のポリカーボネート樹脂よりも低温で射出成形されるため、レンズ材料の熱劣化が軽減されている。レンズ材料の熱劣化は、レンズの着色の原因となるため、熱劣化の軽減は光学ユニット、特に高解像度用途の光学ユニットのレンズにとって好ましい。
さらにまた、より低温で射出成形することにより、レンズ成形に要するエネルギーが少なくて済み、レンズ製造、ひいては光学ユニット製造における歩留まりにも優れている。
アッベ数
上記した低アッベ数レンズ材料は、アッベ数が23〜35程度であり、アッベ数45〜60の高アッベ数レンズ材料と組み合わせて色収差を補正するのに好ましい。
高アッベ数レンズ材料は、アッベ数45〜60で、レンズ等光学用途で使用されるプラスチック材料である。したがって、複屈折および吸水性が低く、寸法安定性に優れた透明なプラスチック材料であることが好ましい。このようなプラスチック材料としては、メタクリル樹脂(PMMA)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、オレフィン・マレイミド交互共重合体、ポリ(1,3−シクロヘキサンジエン)、ポリシクロヘキサン、脂環式ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、高解像度用途の光学ユニットのレンズとして好ましい特性を有することから脂環式ポリオレフィン樹脂が好ましい。脂環式ポリオレフィン樹脂は、嵩高い脂環式構造から分子骨格が形成されており、PMMAと同様に複屈折が低く、しかも低吸水性および耐熱性という点ではPMMAよりもはるかに優れている。
このような脂環式ポリオレフィン樹脂としては、具体的には特開平5−279554号、特表2001−072870号、特開平6−107735号、特開平6−136035号、および特開平09−263627号に開示されるノルボルネン系の脂環式ポリオレフィン樹脂、特開2004−51949号、特開2003−313177号、特開2003−327630号、特開2004−51949号、特願2002−293492号の開示されるメタクリル基を側鎖にもつノルボルネン誘導体をメタロセン触媒等で開環重合させた後、水素化して得られる脂環式ポリオレフィン樹脂、特開2001−26693号、特開2001−26682号、特開2003−321591号、特開2003−313247号、特開2002−332312号、特開2002−275314号、特開2002−105131号に開示されるエチレンとシクロオレフィンの共重合体からなる脂環式ポリオレフィン樹脂が挙げられ、市販品としては、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TM、JSR株式会社製のアートン(ARTON)TM、三井化学株式会社製のアペル(APEL)TMが挙げられる。
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、高解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として好適な以下の特性を有している。
低複屈折
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、複屈折が少ないことを特徴とする。具体的には、この材料を用いて射出成形したレンズ(光学面の半径が6.4mm、中心部厚さ2.9mm)は、レタデーションが0〜150nm程度である。この特性により、色収差を補正するために、上記した低アッベ数レンズと組み合わせて使用しても解像度に悪影響を及ぼすことがない。
低吸水性
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、吸水性が非常に低いことを特徴とする。具体的には、具体的には、JIS K7209に従って測定した飽和吸水率が0.01%未満である。このような特性により、湿度による屈折率変化が生じにくく、レンズの寸法安定性にも優れる。
低光学弾性係数
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、光学弾性係数が低いことを特徴とする。具体的には、光学弾性係数が7.0×10-13cm2/dyne以下である。
光学弾性係数の低い材料を用いて射出成形した成形体は、光学弾性係数が高い材料から射出成形した成形体と比較した場合、成形体に内在する分子の歪が同程度であったとしても、複屈折が成形体に現れにくい特性を有する。従って、光学弾性係数の低い材料は、複屈折の少ない成形体を得るうえで好ましい。
本発明の光学ユニットは、高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズを少なくとも1つ備えていればよく、図1に示した光学ユニット1のように、高アッベ数レンズ2および低アッベ数レンズ3を1つずつ備えたものに限定されない。したがって、光学ユニットを構成するレンズは、3枚以上であってもよい。この場合、本発明の光学ユニットは、全体として色収差が補正されるように光学設計されるのであれば、高アッベ数レンズまたは低アッベ数レンズのうち、いずれか一方が2枚以上であってもよく、さらに両者とも2枚以上であってもよい。
上記したように、アッベ数が異なる複数のレンズを用いて色収差を補正することは、高解像度用途の光学ユニットにおいて、通常行われる光学設計であるが、複数のレンズを用いて高解像度用途の光学ユニットを得るためには、レンズ間の光軸を適正に一致させること(以下、「光軸合わせ」という。)が必要となる。高解像度用途の光学ユニットでは、レンズ間の光軸の一致に関して、より高い精度が要求される。さらに、デジタルカメラや携帯電話組み込み用小型カメラの普及により光学ユニットは年々小型化が進み、光学ユニットを構成するレンズはより小径、薄厚となっている。これらにより、レンズの光軸合わせは、非常に困難なものとなっている。
本発明の光学ユニットは、構成するレンズが成形性に優れたプラスチック製であるため、レンズを成形する際に、ガラス製のレンズでは不可能であった、以下に述べる光軸合わせに有用な構造を設けることができ、上記の問題を解消することができる。
本発明の光学ユニットを構成する高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズは、好ましくは射出成形で製造される。射出成形で成形されるプラスチック製レンズには、金型のゲートに相当する位置にゲート跡と呼ばれる形状が存在する。このゲート跡とレンズの光軸との位置関係は、レンズの光学設計および射出成形装置の構造から特定することができる。よって、このゲート跡を目印にすることで、レンズの位置合わせの比較的容易に行うことができる。この場合、ゲートの形状を工夫することで、目印としてのゲート跡を識別しやすくすることも可能である。
さらに、本発明の光学ユニットは、構成するレンズ、特に低アッベ数のレンズが高流動性の材料製であるため、射出成形の際の成形性に優れている。この特性により、射出成形の際に、以下に述べる光軸合わせ構造をレンズに設けることができる。
図2は、光軸合わせ構造を有する低アッベ数レンズの1実施形態を示しており、(a)はレンズの平面図であり、(b)はレンズの側部断面図である。
図2(a)、(b)に示すレンズ3は、その中心に位置し、光学的作用をするレンズ部31と、該レンズ31の周囲に設けられたフランジ部32からなる。該フランジ部32は、光学ユニットを構成する他のレンズに設けられたフランジ部と嵌合可能であり、該他のレンズのフランジ部とともに光軸合わせ構造をなす。
図3は、本発明の光学ユニットの別の1実施形態を示した側部断面図である。なお、理解を容易にするため、光学ユニットの構成要素のうち、鏡筒およびレンズ押さえは省略されている。また、図3に示す光学ユニット1では、スペーサは使用されていない。図3に示す光学ユニット1は、図2に示す低アッベ数レンズ3と、該レンズ3の前後に配置される2枚の高アッベ数レンズ2,4と、を有している。図3に示す光学ユニット1では、これら3枚のレンズ2,3,4により、色収差が補正されるように光学設計されている。高アッベ数レンズ2,4は、低アッベ数レンズ3と同様に、レンズ部21,41と、フランジ部22,42からなる。
図3に示すように、レンズ2,3,4は、フランジ部22,32,42を介して互いに嵌合されている。より具体的には、図3に示す光学ユニット1は、レンズ2のフランジ部22を上方からレンズ3のフランジ部32に嵌合して、フランジ部22のフランジ面(光軸方向の表面)をレンズ部31の上面に当接し、他方、レンズ4のフランジ部42を下方からレンズ3のフランジ部32に嵌合して、フランジ部42のフランジ面をレンズ部31の下面に当接して組み立てられる。
このような構成であれば、フランジ部22,32,42を嵌合することで、レンズ2,3,4間の相対位置を所定の位置関係にすることができる。ここで、レンズ2,3,4の光軸が一致するように光学設計すれば、フランジ部22,32,42を互いに嵌合することのみで、特別な操作を行うことなしに、レンズ2,3,4の光軸合わせを行うことができる。
さらに、フランジ部22,32,42の厚さ(光軸方向の厚さ)を、レンズ2,3,4の光軸方向における相対位置に対応する厚さとなるよう光学設計しておけば、フランジ部22,32,42を嵌合することのみで、レンズ2,3,4を、互いの光軸方向の位置が適正になるように位置合わせすることができる。すなわち、該フランジ部22,32,42は、レンズ2,3,4の光軸方向における位置合わせ構造としても作用する。
上記したように、低アッベ数レンズ材料は低解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として使用される従来のポリカーボネート材料に比べて射出成形時の成形性に優れているため、図2、3に示すような光軸合わせ構造を有するレンズを射出成形により製造することができる。
なお、レンズが光軸合わせ構造を有する光学ユニットは、図3に示した形態に限定されない。図3では、光学ユニット1は、3枚のレンズ2,3,4で構成されているが、図1に示す光学ユニットと同様に、レンズが2枚であってもよく、または4枚以上であってもよい。また、高アッベ数レンズと低アッベ数レンズの配置も図示した形態に限定されず、1枚の高アッベ数レンズの上下に2枚の低アッベ数レンズが配置された構造であってもよい。また、互いに嵌合可能であれば、レンズ(レンズ部21,31,41およびフランジ部22,32,42)の形状は円形に限定はされず、各種の形状が利用可能である。
さらに、図3に示した光学ユニット1では、フランジ部22,32,42の厚さを各レンズ2,3,4の光軸方向における相対位置に応じた厚さとし、フランジ部22,32,42とレンズ部21,31,41とを当接させることで、レンズ2,3,4の光軸方向における位置合わせを行っている。しかしながら、各レンズ2,3,4の光軸方向における位置合わせは、図1に示す光学ユニット1のように、スペーサ5で行ったのでもよい。
また、本発明の光学ユニットにおいて、高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズは、所望の特性を与えるための構造を有してもよい。このような構成としては、具体的には、例えば反射防止膜、ハードコート、汚れ防止皮膜、防湿膜、または特定の波長の光線、例えば赤外線や紫外線をカットするフィルタ等が挙げられる。
反射防止膜は、無機材料または有機材料を用いて形成され、膜構成としては、単層であってもよく、または多層であってもよい。さらにまた、無機材料の膜と有機材料の膜との多層構造であってもよい。反射防止膜は、光学ユニットを構成するレンズの一面側又は両面に設けることができる。両面に設ける場合、両面の反射防止膜は、同じ構成であっても別の構成であっても良い。例えば、一方の面の反射防止膜を多層構造とし、他方の面側の反射防止膜を簡略化して単層構造とすることも可能である。
無機材料としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti23、Ti25、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、レンズがプラスチック製のレンズであるので、低温で真空蒸着が可能なSiO2、ZrO2、TiO2、Ta25が好ましい。
無機材料で形成される多層膜としては、レンズ側からZrO2層とSiO2層の合計光学的膜厚がλ/4、ZrO2層の光学的膜厚がλ/4、最表層のSiO2層の光学的膜厚がλ/4の、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に成膜する積層構造が例示される。ここで、λは設計波長であり、通常520nmが用いられる。最表層は、屈折率が低く、かつ反射防止膜に機械的強度を付与できることからSiO2とすることが好ましい。
無機材料で反射防止膜を形成する場合、成膜方法は例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。
有機材料としては、例えばFFP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等を挙げることができ、レンズ材料やハードコート膜(有する場合)の屈折率を考慮して選定される。成膜方法は、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成膜することができる。
ハードコート層としては、公知の紫外線硬化もしくは電子線硬化のアクリル系もしくはエポキシ系の樹脂を用いることができる。
汚れ防止膜としては、含フッ素有機重合体のような撥水撥油性材料を使用することができる。
プラスチック製のレンズは、軽量であり、かつ成形性に優れているため、低コストで大量生産できる点で優れているが、ガラス製のレンズに比べて吸湿性が高いため、吸湿または脱湿により屈折率等の光学性能が変化する。すなわち、環境変化、より具体的にはレンズが置かれる環境の湿度の変化によって、レンズの光学性能が影響を受けやすい。したがって、レンズの吸湿および脱湿を防止するために、レンズ表面に防湿皮膜を形成することが好ましい。防湿皮膜が形成されたレンズを使用した光学ユニットは、環境変化、より具体的には光学ユニットが置かれる環境の湿度の変化によって、レンズの光学性能が影響されることが防止されている。
このような理由から、防湿皮膜は、レンズの表面全体に形成することが好ましい。したがって、上記した光軸合わせ構造を有するレンズの場合、レンズ部のみではなく、フランジ部も含めた表面全体に防湿皮膜を形成することが好ましい。
なお、上記の理由から、光学ユニットを構成する高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズの両方について、レンズの表面全体に防湿皮膜を形成することが最も好ましい。
但し、上記した低アッベ数レンズ材料は、高アッベ数レンズの好適材料である脂環式ポリオレフィン樹脂に比べると、吸水性においてやや劣る。このため、光学ユニットを構成する高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズのうち、少なくとも低アッベ数レンズに対して、レンズの表面全体に防湿皮膜を形成することが好ましい。
防湿皮膜としては、透明性が高く、透湿性の高い材料を広く使用することができ、無機材料であってもよく、または有機材料であってもよい。
好適な無機材料の一例として、SiO2 、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti23、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3、InとSnの混合酸化物からなる混合物が挙げられる。
これら無機材料で防湿皮膜を形成する場合、できるだけ緻密な構造を有し、かつ目的とする波長の光線の吸収が少ないことが好ましい。このため、上記の無機材料の中でも、SiOからなるガラス質膜であるのが好ましい。
無機材料で防湿皮膜を形成する場合、膜厚は10nm〜1000nm(1μm)であるのが好ましい。この膜厚がこのような範囲であれば、防湿性能に影響を与えるピンホールの数が少ないからである。すなわち、無機材料で形成される防湿皮膜の膜厚を上記範囲に限定する理由は、膜厚が、10nmより薄いとピンホールの発生の懸念があるし、また、1000nmより厚くしても、防湿性という観点からは、その寄与は最早少ないし、膜厚を厚くすると、生産性が低下する、特に乾式成膜法では生産性が低下するし、また、残留応力によりクラックが入りやすくなるからである。
無機材料で防湿皮膜を形成する場合、形成方法には、特に限定は無く、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(Chemical Vapor Deposition) 等の各種の乾式成膜法や、ゾル−ゲル法などの各種の湿式成膜法が利用可能であり、形成する防湿皮膜の組成や膜厚等に応じて、適宜、選択すればよい。特に、乾式成膜法による防湿皮膜の膜厚は、上述した10nm〜1μmであるのがより好ましい。この理由は、上記限定理由がより顕著だからである。
さらに、ゾル−ゲル法などの湿式の成膜法を利用する際における溶液の塗布方法にも、特に限定は無く、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等各種の塗布方法が利用可能であるが、レンズ表面全体に防湿皮膜を成膜できる等の点で、ディップコート(浸漬塗布)が好ましく例示される。
ゾル−ゲル法による場合、防湿皮膜は、例えば、アルコキシシラン化合物を加水分解することにより得られるが、市販品では日本ダクロシャムロック社製のソルガード(SolGard)TM等を用いることができる。
有機材料からなる好適な防湿皮膜の一例として、ポリ塩化ビニリデンや塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体などを主成分とする皮膜、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TMなどの脂環式ポリオレフィン樹脂を主成分とする皮膜、旭硝子社製のサイトップ(CYTOP)TMやデュポン社製のテフロン(登録商標)AF(Teflon AF)などの非晶フッ素樹脂(アモルファスフルオロポリマー)を主成分とする皮膜、住友3M社製のノベック(Novec)TMなどのフッ素系樹脂を主成分とする皮膜、信越化学工業の信越シリコーンKR251、KR400、KR114A等のシリコーン系樹脂を主成分とする皮膜等が例示される。これらの中でも、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体などを主成分とする皮膜であるのが好ましい。
有機材料で防湿皮膜を形成する場合、膜厚は100nm〜10000nm(10μm)であるのが好ましい。この膜厚がこのような範囲であれば、防湿性能に影響を与えるピンホールの数が少ないからである。すなわち、膜厚を上記範囲に限定する理由は、膜厚が、100nmより薄いとピンホールができやすくなり、また、10μmより厚くしても、防湿性という観点からは、その寄与は最早少ないし、極端に厚いと厚みが不均一となりやすく、光学性能が低下するからである。
さらに、有機材料から形成される防湿皮膜の光学特性としては、光線透過性が良好で、屈折率が低いことが好ましい。屈折率が低いと入射光の表面反射によるロスが少なく、結果として光線透過率が向上するからである。有機材料から形成される防湿皮膜に、機能反射防止、ハードコート等の機能を併せ持たせることも可能である。
有機材料で防湿皮膜を形成する場合、その形成方法には、特に限定は無く、皮膜となる樹脂成分を溶解あるいは分散してなる塗料を調整して塗布/乾燥する成膜法などの各種の湿式成膜法や、プラズマ重合やCVDなどの各種の乾式成膜法が利用可能であり、形成する皮膜の組成や膜厚等に応じて、適宜、選択すればよい。
また、塗料を用いる湿式の成膜法において、塗料の塗布方法には、特に限定はなく、スプレー塗布、刷毛による塗布、ディップコートなど、各種の方法が利用可能であるが、レンズ表面全体に防湿皮膜を成膜できる等の点で、ディップコートが好ましく例示される。
特に、塗布成膜法により有機材料からなる防湿皮膜を形成する場合、その膜厚は、上述した100nm〜10μmであるのがより好ましい。この理由は、上記限定理由がより顕著だからである。
防湿皮膜は、単層膜であっても良いし、多層膜であっても良い。多層膜の場合、無機材料の層のみからなるものであってもよく、または有機材料の層のみからなるものであってもよい。さらにまた、無機材料の層と有機材料の層を含んだ複合膜であっても良い。このような複合膜からなる防湿皮膜は、特に優れた防湿性を発現する。その理由は定かでは無いが、無機材料からなる防湿皮膜および有機材料からなる防湿皮膜は、互いに異なる積層原理や皮膜構成を有するので、互いの欠陥や欠点を埋め合うあるいは補い合うと共に、それぞれの皮膜が有する防湿性能を相乗的に得ることができ、その結果、非常に優れた耐湿性を得ることができると考えられる。
また、一般的に、無機材料からなる防湿皮膜は硬質でピンホールやクラック等が多く、逆に、有機材料からなる防湿皮膜はある程度の弾性を有する。そのため、防湿皮膜として複合膜を用いる場合、下層に無機材料からなる防湿皮膜、上層に有機材料からなる防湿皮膜を設けることにより、無機材料からなる防湿皮膜のピンホール等を有機材料からなる防湿皮膜が好適に埋めて、結果的に欠陥の無い皮膜を形成でき、無機材料からなる防湿皮膜の防湿性能を完全に生かした非常に高い防湿性能を発現できる。しかも、弾性を有する有機材料からなる防湿皮膜が、外部からのストレスに対する耐性や、熱等によるレンズの膨張/収縮に対して無機材料からなる防湿皮膜を保護する保護膜としても作用するので、強度も十分に確保して、長期にわたって良好な耐湿性を発揮できる。
また、光学ユニットは、その用途、すなわち銀塩カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラ等にとって好ましい他の機構を有していてもよい。このような機構としては、具体的には、焦点合わせ機構、ズーム機構等が挙げられる。
上記した理由により、高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズは、射出成形により製造することが好ましい。射出成形条件としては、各々以下であることが好ましい。
高アッベ数レンズ
ポリマー温度:240〜270℃
金型温度:100〜130℃
金型内冷却保持時間:30秒〜5分
低アッベ数レンズ
ポリマー温度:250〜260℃
金型温度:90〜120℃
金型内冷却保持時間:30秒〜5分
射出成形による製造された高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズを、図1または図3に示す形態に組み立てることにより、本発明の光学ユニットが製造される。但し、上記した高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズを少なくとも1つ有する光学ユニットであれば、図示した形態以外であってもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。但し、これらの実施例は説明を目的とするものであり、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
本実施例では、低アッベ数レンズ材料として、下記手順で合成したポリカーボネート(表1において、「PC1」と表記する)を使用した。
低アッベ数レンズ材料(PC1)の合成
8.8%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液58リットルに、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン4.93kg(以下SPIと略称、16mol)、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール8.30kg(以下BPMと略称、24mol)、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン183.6g(以下THPEと略称、0.6mol)及びハイドロサルファイト10gを加え溶解した。これにメチレンクロライド36リットルを加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン5kgを50分かけて吹き込んだ。吹き込み終了後、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド5g(0.022mol)を加え5分間激しく撹拌して反応液を乳化させ、次にp−ターシャルブチルフェノール510g(以下PTBPと略称、3.4mol)を加え、さらに20mlのトリエチルアミン(0.14mol)を加え、約1時間撹拌し重合した。重合物を濾過した後、乾燥して白色粉末状のポリカーボネート重合体を得た。
このポリカーボネート重合体の濃度0.5g/dlの溶液(溶媒:塩化メチレン)の温度20℃における極限粘度[η]を測定したところ0.35dl/gであった。
また、JIS K7142に従って、光源に波長選択フィルターの付属するアッベ屈折計を用いて、波長を変えて(C線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)屈折率を測定し、得られた屈折率を用いてこのポリカーボネート重合体のアッベ数を求めた。測定温度は25℃であった。算出されたアッベ数は30であった。
このポリカーボネートを用いて、以下の条件で射出成形を行い、図1に示すレンズ3を得た。
ポリマー温度:250℃
金型温度:110℃
保持圧力:50MPa
金型内冷却保持時間:120秒
得られたレンズ3は、光学面の半径9mm、中心部厚さ2.5mmであった。得られたレンズのレタデーションを、レンズを偏光板(直交ニコル)に挟んで、干渉色を基準サンプルと比較することにより求めた。その結果、レンズのレタデーションは、0〜50nmであった。
一方、高アッベ数レンズ材料には、アッベ数56.2(25℃、カタログ値)、吸水率0.01%未満のゼオネックス(ZEONEX)TM480R(日本ゼオン株式会社製)を使用し、以下の条件で図1のレンズ2を射出成形した。
ポリマー温度:280℃
金型温度:125℃
保持圧力:80MPa
金型内冷却保持時間:130秒
得られたレンズ2は、光学面の半径6.4mm、中心部厚さ2.9mmであった。レンズ3と同様に、レンズのレタデーションを求めた。その結果、レンズのレタデーションは、0〜150nmであった。
得られたレンズ2,3を用いて、図1に示す光学ユニットを組み立てて、レンズの複屈折による解像度への影響を以下の手順で評価した。
図4は、評価に使用した装置の模式図である。図4において、コリメート光源8から出た平行光線は、撮影用のチャート10を通過して光学ユニット1に入射する。該チャート10は、図5に示すように、複屈折を持たない透明なガラス板に碁盤目状に線が記入されたものである。但し、複屈折による解像度への影響評価に使用するパターンとしては、図5に示す撮影チャート以外も使用可能であり、例えば、図6や図7に示す撮影チャートも使用可能である。使用する撮影チャートの選択は、光学ユニットの用途や、要求される解像度に応じて適宜選択可能である。
このチャート10を、図1に示す光学ユニット1を用いて、CCDカメラ12に結像させて撮影する。光学ユニット1とCCDカメラ12とは、焦点距離の調整機構と絞り機構を有するアダプタ11により接続されている。CCDカメラ12により撮影された画像は、電子データとしてコンピュータ13に取り込まれる。コンピュータ13には、予め複屈折ゼロの基準データが保存されており、該基準データと取り込んだ画像データとを画像演算プログラムを用いて比較し、基準データに対する画像の低下を以下の基準に従って評価した。なお、基準データは、理論上複屈折ゼロの画像データとして、コンピュータ上で作成したものである。
○ 画像低下がほとんど認められない場合。
△ 画像低下がある程度認められる場合。
× 画像低下がはっきり認められる場合。
結果を表1に示した。
実施例2
本実施例では、低アッベ数レンズ材料として、SPIを6.16kg(20mol)、BPMを6.92kg(20mol)、THPEを122.4g(0.4mol)及びPTBPを450g(3.0mol)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で合成したポリカーボネート重合体(表1において、「PC2」と表記。)を使用した点以外は、実施例1同様に実施した。
このポリカーボネート重合体の濃度0.5g/dlの溶液(溶媒:塩化メチレン)の温度20℃における極限粘度[η]を測定したところ0.33dl/gであった。このポリカーボネート重合体についても、実施例1と同様にアッベ数を求めた。得られたアッベ数は30(25℃)であった。
実施例1と同様の条件でレンズ3を射出成形し、レンズ3のレタデーションを求めた。その結果、レンズのレタデーションは0〜100nmであった。複屈折による解像度への影響評価の結果を表1に示した。
比較例
低アッベ数レンズ材料として、従来低解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として使用されるアッベ数30(25℃、カタログ値)のビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂(AD−5503(帝人化成株式会社製)(表1において、「PC」と表記。)を使用して、以下の条件でレンズ3を射出成形した点以外は、実施例1と同様に実施した。
ポリマー温度:280℃
金型温度:130℃
保持圧力:60MPa
金型内冷却保持時間:240秒
このビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を用いて射出成形したレンズ3についても、実施例1のレンズ3と同様にレンズのレタデーションを求めた。その結果、レンズのレタデーションは200〜400nmであった。レンズの複屈折による解像度への影響評価の結果を表1に示した。
Figure 2005283742
図1は、本発明の光学ユニットの1実施形態の側部断面図である。 図2(a)は、光軸合わせ構造を有する低アッベ数レンズの平面図であり、(b)は該レンズの側部断面図である。 図3は、本発明の光学ユニットの別の1実施形態の側部断面図であり、光軸合わせ構造を有するレンズが使用されている。 図4は、レンズの複屈折による画像への影響を評価する装置の模式図である。 図5は、図4の装置の構成要素である撮影チャートの平面図である。 図6は、撮影チャートの別の1例を示した平面図である。 図7は、撮影チャートの別の1例を示した平面図である。
符号の説明
1:光学ユニット
2,3,4:レンズ
21,31,41:レンズ部
22,32,42:フランジ部
5:鏡筒
6:スペーサ
7:レンズ押さえ
8:コリメート光源
10:撮影用チャート
11:接続アダプタ
12:CCDカメラ
13:コンピュータ

Claims (10)

  1. 下記レンズ(1)、(2)を含む光学ユニット。
    (1)アッベ数が45〜60のプラスチック製レンズ、
    (2)6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなる極限粘度が0.30〜0.50dl/gであるポリカーボネートを射出成形して得られるレンズ。
  2. 前記ポリカーボネートにおいて、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの使用モル割合が、1:9〜9:1である請求項1に記載の光学ユニット。
  3. 前記ポリカーボネートは、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールの合計100モル部に対して、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物を、0.2〜3.0モル部添加してなる請求項1または2に記載の光学ユニット。
  4. 前記ポリカーボネートにおいて、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物が、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、及び2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジメチル−3−ヘプテンからなる群より選択された少なくとも1種類である請求項1ないし3のいずれかに記載の光学ユニット。
  5. 前記アッベ数45〜60のプラスチック製レンズは、脂環式ポリオレフィン樹脂から作製される請求項1ないし4のいずれかに記載の光学ユニット。
  6. 前記レンズ(1)、(2)は、光学的な作用を有するレンズ部と、前記レンズ部の周囲に設けられたフランジ部からなり、
    前記レンズ(1)のフランジ部と、前記レンズ(2)のフランジ部と、は嵌合可能であり、
    前記レンズ(1)、(2)は、前記フランジ部の嵌合によって、組み合わされた状態で互いの光軸を一致する形状を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光学ユニット。
  7. 前記レンズ(1)、(2)は、前記フランジ部の嵌合によって、組み合わされた状態で、互いの光軸方向の位置が適正となる形状を有することを特徴とする請求項6に記載の光学ユニット。
  8. 前記レンズ(2)は、その表面全体に防湿皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の光学ユニット。
  9. 前記防湿皮膜は、SiOからなるガラス質膜であることを特徴とする請求項8に記載の光学ユニット。
  10. 前記防湿皮膜は、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を主成分とすることを特徴とする請求項8に記載の光学ユニット。
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