JP2005281836A - エッチング性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板 - Google Patents

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Abstract

【課題】エッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板を提供する。
【解決手段】mass%で、Ni:34〜40%(またはNi: 30〜34%、Co:3〜6%)、C:0.05%以下、Si:0.1%以下、Mn:1%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Cr≦3%(0を含む)を含み、(Nb+V+B+Cu+Ti+Al+Ca+Mg)≦3%(0を含む)であり、残部が実質的にFeからなるFe-Ni系合金薄板であり、前記Fe-Ni系合金薄板の表面から板厚の1/2までの任意の位置におけるエッチングファクタをEf2、前記表面のエッチングファクタをEf1とした場合、0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1であり、かつ2.5≦Ef1≦3.5であるシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板。
【選択図】図1

Description

本発明は、カラーテレビ用ブラウン管、OA機器用のディスプレイ等の受像管に使用されるシャドウマスクに用いられるエッチング性に優れた高品質のシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板に関するものである。
カラーテレビ用ブラウン管、OA機器用のディスプレイ等の受像管に使用されるシャドウマスクについては、ブラウン管の高精度化、高輝度化に伴い、電子ビーム通過孔が高精度で形成できるよう、よりエッチング性に優れることが要求される。また、シャドウマスクは、電子ビームの衝突により発熱しこの熱膨張より電子ビーム通過孔が変位し所定の蛍光面にあたらなくなる、いわゆるドーミング現象を引きおこす問題もある。
上記シャドウマスクの素材としては、従来から、低炭素Alキルド鋼やFe-Ni系合金が用いられている。中でもFe-Ni系合金は、熱膨張率が小さいため、前記ドーミングに対して有利であり、近年使用されることが多くなってきている。一方で、Fe-Ni系合金は、上述したようにシャドウマスクとして電子ビーム通過孔の形成という微細なフォトエッチング加工が施されるため、最近のブラウン管の高輝度化、高精度化に伴って、シャドウマスク上に均一な形状の電子ビーム通過孔を均一なピッチで設ける必要があり、Fe-Ni系合金に対してエッチング性の向上は、いっそう求められてきている。
エッチング性を改善する技術として、例えば、特許文献1には、炭素含有量を0.01%以下にすることにより、エッチング性を改善することが開示されている。
特許文献2には、非金属介在物を規制することにより、エッチング性を改善することが開示されている。
特許文献3には、シャドウマスク材の表面に[100]結晶面を35%以上集積させることによりエッチング性を改善することが開示されている。
特許文献4には、板厚方向の中央の[100]結晶面を、表面よりも大きくすることによりエッチング性を改善することが開示されている。
特開昭61-82453号公報 特開昭61-84356号公報 特開昭61-19737号公報 特開平05-009658号公報
しかしながら、特許文献1〜4において、数々の改良はなされているものの、色ずれやバラツキが発生したりと何れの技術をとってもエッチング性は不充分であり、精度や輝度の面で問題があるのが現状である。
本発明は、以上の問題を解決するためになされたものであり、エッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究した。その結果、エッチング性を向上させるには、エッチングファクタ(以下、Efと称す)を最適な範囲に規定し、かつ、シャドウマスクの表面と板厚中心とのEfの差を小さくすることが重要であることを見出した。さらには、Fe-Ni系合金薄板を製造するに際し、冷間圧延において原板に導入される加工歪とEfとの間には相関があることを見出し、加工歪を板厚方向で均一にすることにより、Efを板厚方向で一定とすることができることも見出した。そして、以上により、Fe-Ni系合金に、均一な形状の電子ビーム通過孔をエッチングにより形成することが可能になる。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]mass%で、Ni:34〜40%、C:0.05%以下、Si:0.1%以下、Mn:1%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Cr≦3%(0を含む)を含み、(Nb+V+B+Cu+Ti+Al+Ca+Mg)≦3%(0を含む)であり、残部が実質的にFeからなるFe-Ni系合金薄板であり、前記Fe-Ni系合金薄板の表面から板厚の1/2までの任意の位置におけるエッチングファクタをEf2、前記表面のエッチングファクタをEf1とした場合、0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1であり、かつ2.5≦Ef1≦3.5であることを特徴とするエッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板。
[2]mass%で、Ni: 30〜34%、Co:3〜6%、C:0.05%以下、Si:0.1%以下、Mn:1%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Cr≦3%(0を含む)を含み、(Nb+V+B+Cu+Ti+Al+Ca+Mg)≦3%(0を含む)であり、残部が実質的にFeからなるFe-Ni系合金薄板であり、前記Fe-Ni系合金薄板の表面から板厚の1/2までの任意の位置におけるエッチングファクタをEf2、前記表面のエッチングファクタをEf1とした場合、0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1であり、かつ2.5≦Ef1≦3.5であることを特徴とするエッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板。

なお、上記手段において、「残部実質的にFe」とは、本発明の作用効果を無くさない限り、不可避不純物をはじめ、他の微量元素を含有するものが本発明の範囲に含まれ得ることを意味する。また、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべてmass%である。
本発明によれば、エッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板が得られる。また、本発明のシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板を用いて、エッチングを行い電子ビーム通過孔を形成することにより、形状の滑らかなエッチング面の形成が可能となり電子ビームの乱反射が抑えられるので、色むらの少ないシャドウマスクの製造が可能となる。このように本発明のFe-Ni系合金薄板は高精細のシャドウマスク用の材料として極めて有用である。
本発明のシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板は、下記に示す成分に規定し、さらにFe-Ni系合金薄板の表面から板厚の1/2までの任意の位置におけるエッチングファクタをEf2、前記表面のエッチングファクタをEf1とした場合、0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1であり、かつ2.5≦Ef1≦3.5とすることを特徴とする。これらは本発明において最も重要な要件であり、上記のように成分、Efを最適化することにより、エッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板を得ることができる。
以下に本発明の詳細を説明する。
まず、本発明のFe-Ni系合金薄板の化学成分について説明する。
Ni:34〜40%
Niは、Fe−Ni系合金の低熱膨張特性に大きな影響を及ぼす元素である。シャドウマスクに用いられる電子部品材料は、色ずれを防止するため、低熱膨張特性が要求される。従って、本発明は、上記の効果を達成するために、Niの成分範囲は34〜40%とする。
なお、Niの代わりにCoを添加することも可能であり、その場合はNi:30〜34%、Co:3〜6%とする。
C:0.05%以下
その含有量が0.05%を超えると鉄炭化物の生成が著しく、これがエッチング穿孔性を阻害し穿孔欠陥の原因となる。従って、Cの成分範囲は0.05%以下とする。
Si:0.1%以下
Siは、合金の精錬に際して脱酸剤として使用するが、0.1%を超えるとSiO2 の生成が著しく、これが熱間圧延やその後の冷間圧延の加工により高延性のため直鎖状に残留してエッチング時に筋状の穿孔ムラの原因となる。従って、Siの成分範囲は0.1%以下とする。
Mn:1%以下
Mnは、固溶強化成分であり、また合金の精錬に際して脱酸剤として使用するが、1%をこえると脱酸効果は飽和し、経済的に不利となる上、エッチング速度を低下させる。従って、Mnの成分範囲は1%以下とする。
P:0.1%以下
Pは、0.1%を超えるとエッチング性を著しく阻害する。従って、Pの成分範囲は0.1%以下とする。
S:0.01%
Sは、打ち抜き性の向上に有効な成分であるが、0.01%を超えると、合金中の結晶粒界に偏析して、粒界を脆化させ、その結果、熱間加工における粒界割れを生じる原因となる。従って、Sの成分範囲は0.01%以下とする。
Cr≦3%(0を含む)
Crは、耐食性を向上させるために有効な元素であるが、多量に存在すると、熱膨張係数を悪化させる。従って、Crの成分範囲は3%以下とする。
さらに、本発明の効果を達成するために、(Nb+V+B+Cu+Ti+Al+Ca+Mg)の組成の組み合わせを3%(0を含む)以下の範囲とする。
Nb、V、B、Cu、Ti、Al、Ca、Mgの元素は、鋼中に固溶または微細な析出物として存在することにより、強度の向上に寄与する。しかしながら、いずれも熱膨張率を大きくする作用があるため、できるだけ少量に抑えるべきものである。また、酸化物などの介在物として鋼中に存在した場合、均一であるべき電子ビーム通過孔の形状を悪くする。さらに、水酸化物としてエッチング液中に浮遊した場合にも、電子ビーム通過孔の形状を悪くしたり、エッチング液の寿命を短くする。従って、以上より、上記元素の総量を3%以下(0を含む)とする。
次に、本発明の主要な要件であるEfについて説明する。本発明において、エッチング性を向上させるには、Efを最適な範囲に規定することが重要であり、Fe-Ni系合金薄板の表面から板厚の1/2までの任意の位置におけるエッチングファクタをEf2、前記表面のエッチングファクタをEf1とした場合、0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1であり、かつ2.5≦Ef1≦3.5とする。
シャドウマスクにおいて、エッチングにより電子ビーム通過孔を形成する場合、表面からすり鉢状にエッチング面が広がり、所定の形状の通過孔が形成される。この時の孔形状はEfによって決まる。Efとは、深さ方向のエッチング速度を横方向に対して相対的に評価するものである。図1は、本発明のシャドウマスク材に形成する電子ビーム通過孔の模式図である。図中、hは孔の深さ、D1はレジスト開口部の大きさ、D2はエッチング後の開口部の大きさであり、Efは次式(1)式で定義される。
Ef=2h/(D2-D1)-----(1)
エッチングの加工精度を向上させるには、Efが板厚方向全体で均一であることが望ましい。板厚の表面付近と中央部とでEfの差が大きい場合には、均一なエッチングが行われず、結果として孔の形状が安定せず段差を持った形状になってしまう。そして、その場合、電子ビームが段差部分で乱反射してしまい、輝度が安定せず、結果として色むらが発生する。
しかし、実際の製造において、Efを板厚方向全体で均一とするためには、エッチング条件の厳密な管理を行わなければならない等、必ずしも実用的でない。そこで、実用上充分な程度のEfとして、本発明では、板厚の1/2までのエッチングファクタをEf2、表面のエッチングファクタをEf1とした場合、0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1とする。板厚の1/2までのエッチングファクタEf2が表面のエッチングファクタEf1に対して小さすぎる場合、すなわちEf2/ Ef1が0.7未満の場合、表面の開口部よりも内部の開口部のほうが大きくなり、エッチング性が劣る。一方、板厚の1/2までのエッチングファクタEf2が表面のエッチングファクタEf1に対して大きすぎる場合、すなわちEf2/ Ef1が1.1超えの場合、表面の開口部よりも内部の開口部のほうが小さくなり、エッチング性が劣る。なお、表面から板厚の1/2までの任意の位置におけるエッチングファクタEf2は、板厚の任意の位置における、エッチングにより形成された電子ビーム通過孔の深さをha、そのときの表面の電子ビーム通過孔の開口部の直径をD2aとした時に、Ef2=2ha/(D2a-D1)であらわされる。
また、電子ビーム通過孔は画面の高輝度化、高精度化のため、高密度に形成する必要があることから、Efの値そのものも最適に設定する必要がある。特に、エッチングは表面から始まり、その後、板の内部へと進行するので、表面のエッチング特性で孔形状の良し悪しが決まってしまう場合が多い。そのため、表面のエッチングファクタEf1を規定することが重要となる。Ef1が3.5超えの場合は、サイドエッチングが小さくなるので、シャドウマスク表面で十分な開口部が得られず、電子ビームの入射量が小さくなり、高輝度化が達成できなくなる。加えて、電子ビームの入射角度も制限されるため、シャドウマスクの設計の自由度も少なくなる。Ef1が2.5未満の場合は、開口部が大きくなりすぎるため、電子ビーム通過孔の高密度化には不利になる。以上より、Ef1は2.5以上3.5以下とする。
なお、Efは例えば圧延時のロ−ルを変えることにより調整可能である。また、圧下配分を変えることでもEfの調整は可能である。
以上より、エッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板が得られる。なお、本発明のエッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板は、例えば以下のようにして製造することができる。
Fe-Ni系合金材料に対して熱間圧延を行い、次いで冷間圧延および焼鈍を1回以上行って再結晶集合組織とする。なお、冷間圧延時に使用するロール表面の粗さを小さくすることにより、表面の剪断歪み量を抑え、歪みの総量を板厚方向で均一にすることが可能となり、Efを板厚方向で一定とすることができる。再結晶集合組織を形成させた後に、さらに、調質圧延あるいは調質圧延に加えて歪み取り焼鈍を実施しても良い。
表1に示す成分からなるFe-Ni系合金を、熱間圧延した後、冷間圧延および焼鈍を行い試験材を製造した。なお、この時、冷間圧延および焼鈍条件を変化させることにより、8種類の試験材を製造した。
Figure 2005281836
それぞれの試験材について、エッチング処理を施し、Efを算出し、そのエッチング性を評価した。エッチング条件としては、上記試験材にφ100μmの開孔を有するフォトレジスト膜を形成してから、46ボーメの塩化第2鉄溶液を用い、5kgf/mm2のスプレー圧力、65℃の温度で、エッチング液をスプレーエッチングした。なお、Efを調整するため、エッチング時間は30秒、60秒、90秒、120秒の4種類とした。
また、Efは、エッチング前のレジストの孔径、エッチング後の板表面の孔径および孔深さを測定して求めた。得られた結果を表2及び図2に示す。なお、断面形状は、エッチング後の断面を調べ、エッチング孔の形状に歪みがなく、エッチング面にも荒れが生じず、充分に優れたエッチング性を有するものを○、歪みや荒れが生じたりでエッチング性が劣るものを×とした。
Figure 2005281836
表2及び図2より、表面のエッチングファクタ(Ef1)が2.5〜3.5の範囲であり、かつ0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1である本発明例A〜Eは、孔の形状が良好であり、形状がなめらかなエッチング面を形成できることが確認でき、エッチング性に優れていることがわかった。
一方、Ef1が小さい比較例L〜Nは、板厚の1/8〜1/4tの間でEf2≧1.1Ef1となっており、断面を見ると、この部分で段差が出来ていた。そして、エッチング面に荒れが生じ、エッチング性が劣っていた。
本発明のシャドウマスク材に形成する電子ビーム通過孔の模式図である。 板厚位置とEf2/Ef1との関係を示す図である。
符号の説明
D1 レジスト開口部
D2 エッチング後のシャドウマスク開口部
h 孔深さ

Claims (2)

  1. mass%で、Ni:34〜40%、C:0.05%以下、Si:0.1%以下、Mn:1%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Cr≦3%(0を含む)を含み、(Nb+V+B+Cu+Ti+Al+Ca+Mg)≦3%(0を含む)であり、残部が実質的にFeからなるFe-Ni系合金薄板であり、
    該Fe-Ni系合金薄板の表面から板厚の1/2までの任意の位置におけるエッチングファクタをEf2、前記表面のエッチングファクタをEf1とした場合、0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1であり、かつ2.5≦Ef1≦3.5
    であることを特徴とするエッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板。
  2. mass%で、Ni: 30〜34%、Co:3〜6%、C:0.05%以下、Si:0.1%以下、Mn:1%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Cr≦3%(0を含む)を含み、(Nb+V+B+Cu+Ti+Al+Ca+Mg)≦3%(0を含む)であり、残部が実質的にFeからなるFe-Ni系合金薄板であり、
    該Fe-Ni系合金薄板の表面から板厚の1/2までの任意の位置におけるエッチングファクタをEf2、前記表面のエッチングファクタをEf1とした場合、0.7Ef1≦Ef2≦1.1Ef1であり、かつ2.5≦Ef1≦3.5
    であることを特徴とするエッチング性に優れたシャドウマスク用Fe-Ni系合金薄板。
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