JP2005281532A - イオン低溶出性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 純水中のイオン溶出量を低減させ、機械的特性を向上させることにより、高温環境下で使用可能な成形品を得ることが可能な熱可塑性樹脂組成物を提供する。この成形品は純水に接する半導体部品、燃料電池車載部品およびポンプ部品として有用である。
【解決手段】 (a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、(b)炭素繊維0.01〜250重量部、(c)シラン化合物を0.02〜10重量部を配合してなる、表面積1.53cmの成形品を、80℃,100mlの純水に500時間浸漬したときのイオン溶出量が10mg/l以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、純水に接する用途に適した、イオン溶出量が極めて少ない成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の改質に関するものであり、さらに詳しくは、このようにイオン溶出量を低減された成形品は、純水に接する半導体部品、燃料電池車載部品およびポンプ部品として有用である。
熱可塑性樹脂の中でもポリアリーレンスルフィド樹脂を使用したガラス繊維強化熱可塑性樹脂は耐熱性、高剛性、成形加工性に優れ、かつ、難燃性、耐薬品性、寸法安定性に優れた性能を有するため高機能、高性能のエンジニアリングプラスチックとして注目されている。
ところが、ガラス繊維で補強した熱可塑性樹脂もいくつかの欠点が指摘されている。例えば、近年、環境問題で燃料電池車の関心が高まっており、燃料電池では、純水が循環するため純水中にイオンを溶出させない材料が要求されている。従来は、このような場所には、金属材料が用いられてきた。しかし、燃費向上を目的として軽量化が進められており樹脂材料での部品供給が求められている。しかし、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂を純水中に浸漬した状態で使用した場合にガラス繊維からイオンが溶出するため、ガラス繊維で強化した樹脂組成物を使用することが出来ないなどの欠点が挙げられる。
一般に、イオンの溶出を抑えるためには無機鉱物やガラス繊維を使用しないポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を使用するとイオンの発生を抑制する方法(特許文献1参照)が知られている。
しかしながら、自動車部品などの高温環境下で用いられる場合、ガラス繊維を使用しないポリアリーレンサイファイド樹脂では強度が足らないという問題があった。
特開平07−157660号公報(第1頁)
従って、本発明は、純水中のイオン溶出量を低減させ、機械的特性を向上させることにより、高温環境下で使用可能な成形品を得ることが可能な熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。この成形品は純水に接する半導体部品、燃料電池車載部品およびポンプ部品として有用である。
本発明者は、以下のような手法にて熱可塑性樹脂と炭素繊維およびシラン化合物を配合した熱可塑性樹脂組成物を用いて純水に接する半導体部品、燃料電池車載部品およびポンプ部品を提供できることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)(a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、(b)炭素繊維0.01〜250重量部、(c)シラン化合物を0.02〜10重量部を配合してなる、表面積1.53cmの成形品を、80℃,100mlの純水に500時間浸漬したときのイオン溶出量が10mg/l以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(2)熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂からなる(1)記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)ポリアリーレンスルフィド樹脂が、純水100ccに表面積1.53cmの成形品を80℃,500時間浸漬したときのイオン溶出量が1mg/l以下であることを特徴とする(2)記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)炭素繊維が純水100mlに0.5gを80℃,500時間浸漬したときのイオン抽出量が1mg/l以下であることを特徴とする(1)記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)表面積1.53cmの成形品を、80℃,100mlの純水に500時間浸漬したときのイオン溶出量が10mg/l以下である熱可塑性樹脂を射出成形品して純水に接する半導体部品、燃料電池車載部品およびポンプ部品用である(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
上述したように、上記のように構成される本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、純水中のイオン溶出量を低減させ、機械的特性を向上させることにより、高温環境下で使用可能な成形品を得ることが可能となる。この成形品は純水に接する半導体部品、燃料電池車載部品およびポンプ部品として有用である。
(a) 本発明で使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマなどが挙げられる。なかでも、特にポリアリーレンスルフィド樹脂が好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、下記構造式で示される繰り返し単位を有するポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましく挙げられる。
Figure 2005281532
上記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上含むポリフェニレンスルフィド樹脂であることが耐熱性の点でより好ましい。また、上記ポリフェニレンスルフィド樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成したものであってもよい。
Figure 2005281532
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法については、組成物が本発明の範囲を満足する限り、特に制限はなく、基本的な製造としては、公知の方法、例えば特公昭45−3368号公報に記載される方法あるいは特公昭52−12240号公報に記載される方法などによって製造できる。本発明において上記のように得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、また、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄を施し、溶出物を充分に低減させた上で使用する。有機溶媒で洗浄する場合、用いる有機溶媒としてはポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアルデヒド、1、3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドラフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化メチレン、パークロルエチレン、モノクロルエチレン、モノクロルエタン、クロルベンゼン、などのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、及びベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられ、中でもN−メチルピロリドンやアセトンが好ましい。洗浄温度についても特に制限が無く通常、常温から300℃程度が選択される。酸水溶液で洗浄する場合、用いる酸としてはポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用を有しないものであれば、特に制限は無く、例えば酢酸、塩酸、リン酸、珪酸、炭酸及びプロピル酸などが挙げられる。また、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用し、さらには十分に溶出物を低減されるまで繰り返し洗浄することが特に好ましい。
(b)本発明で用いられる炭素繊維としては特に制限はなく、アクリル系、レーヨン系、ピッチ系、あるいはポリビニルアルコール系など、いずれの原料から得られたものであってもよい。
炭素繊維の製造方法としては、アクリル系、レーヨン系、ピッチ系、あるいはポリビニルアルコール系繊維を紡糸し、200℃〜400℃の空気や酸化窒素などの酸化性雰囲気中で加熱焼成して、酸化繊維に転換する耐炎化工程を通過した後、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中や真空中でさらに300℃〜2500℃に加熱して炭化及び又は黒鉛化する炭化、黒鉛化工程を経ることによって製造する方法があげられる。
本発明においては、熱可塑性樹脂100重量部に対して炭素繊維0.01〜250重量部配合する。また、炭素繊維は純水100mlに0.5gを80℃,500時間浸漬したときのイオン抽出量が1mg/l以下であることが好ましい。
本発明においては、樹脂との密着性を高めるために炭素繊維に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、中でもウレタン樹脂が挙げられる。表面処理剤の使用量は、炭素繊維100重量部に対して、0.01重量部から18重量部であることが好ましい。本発明で用いる炭素繊維の形状としては、炭素繊維をロービングのままもしくは、炭素繊維をカットして短繊維化したチョップドストランドタイプであっても良いし、ミルドタイプであっても良い。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、炭素繊維以外の離型剤、結晶核剤などの添加剤を添加することができる。
また、繊維補強材として、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカなどは、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。非繊維状の補強材として、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケート、などのケイ酸塩、アルミナ、塩化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素及びシリカなどが挙げられるが本発明で規定する範囲を超えない程度にとどめる必要がある。
(c)シラン化合物としては、エポキシシラン化合物、アミノシラン化合物、ウレイドシラン化合物、イソシアネートシラン化合物のほか種々のものが使用できる。
かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
シラン化合物は熱可塑性樹脂100重量部に対して0.02〜10重量部配合する。熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の配合量であることが好ましく、なかでも0.2〜5重量部の配合量がより好ましい。
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、またはモンタン酸ワックス類、または脂肪酸アミド系重縮合物、例えばエチレンジアミン・ステアリン酸重縮合物、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸などが挙げられるが本発明で規定する範囲を超えない程度にとどめる必要がある。
結晶核剤としてはポリエ−テルエ−テルケトン樹脂、ナイロン樹脂、タルク、カオリン等を本発明の効果を損なわない範囲での添加剤を添加することができる。
また、着色防止剤、可塑剤、あるいは防食剤、酸化防止剤、熱安定剤、渇剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤等を本発明の効果を損なわない範囲での添加剤を添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に特に制限はないが原料の混合物を2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなどの通常公知の溶融混合機に供給して280℃〜380℃の温度で溶融混練する方法などを代表例として挙げることができる。また、原料の混合順序に特に制限はなく、熱可塑性樹脂、シラン化合物、炭素繊維および任意の添加剤を予めドライブレンドして、もしくはしないで上記溶融混合機に供することにより、配合する方法が好ましく挙げられる。
かくして得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形、トランスファー成形、真空成形など一般に熱可塑性樹脂の公知の成形方法により成形されるが、なかでも射出成形が好ましい。
このようにしてなる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、純水100mlに表面積1.53cmの成形品(本発明の熱可塑性樹脂組成物で成形したもの)を80℃,500時間浸漬したときのイオン溶出量が10mg/l以下であり、1mg/l以下であることが特に好ましい。上記のイオン溶出量の測定装置としては例えば日立製の偏光ゼーマン原子吸光光度計の180−80およびエスアイアイ・ナノテクノロジー製:シーケンシャル型ICP分光分析装置のSPS3000,SPS4000を用いることができる。
本発明により得られた熱可塑性樹脂組成物は、純水へのイオン溶出が極めて少ない成形品を得ることができ、かかる特性を生かして純水に接する半導体部品、燃料電池車部品およびポンプ部品その他各種用途に有用であり、なかでも純水に接するインペラ、カバー部品およびタンクに特に有用である。
次に実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限を受けるものではない。
実施例におけるイオン抽出量の測定、曲げ強度は次の方法に従い測定を行った。
〈イオン溶出量の測定〉
テフロン(登録商標)製容器にイオン溶出量が0.1mg/l以下の純水100mlに表面積1.53cmの成形品(形状:縦30mm×横20mm×厚み3.3mm)を入れ、密閉する。これを80℃のギアオーブンに入れて、500時間放置する。その後、テフロン(登録商標)製容器内の溶出液を取り出し、硝酸を添加した溶液を空気−アセチレンフレームを使用した日立製の原子吸光分析装置偏光ゼーマン型180−80でNa、Kイオンを測定した。また、その他のイオンは高周波出力1.3kw、プラズマ流量16L/min、補助ガス流量0.5L/min、キャリアガス流量1L/minの条件でエスアイアイ・ナノテクノロジー社製のICP分光分析装置シーケンシャル型SPS4000で純水中のイオンを測定することによりイオン溶出量を測定した。
〈曲げ特性の測定〉
曲げ強さ試験は片方にゲートを有する厚み1/4インチ(6mm)、幅1/2(12mm)インチの曲げ試験片を型締力100tonの射出成形機を用いてシリンダー温度320℃、金型温度130℃の条件で成形し、曲げ歪み速度3mm/min、支点間距離100mmの条件でASTM−D790に準拠して曲げ強さ、曲げ弾性率の試験を行った。
〈引張強さの測定〉
引張強さ試験は、片方にゲートを有するASTM1号ダンベル片を型締力100tonの射出成形機を用いてシリンダー温度320℃、金型温度130℃の条件で成形し、引張歪速度10mm/min、支点間距離114mmの条件でASTM−D638に準拠して引張強さ試験を行った。
〈ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−1)の製造〉
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびNMP5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.7モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。冷却後、反応生成物を温水で5回洗浄し、次に100℃に加熱されNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに熱湯で数回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾過のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥して、(株)東洋精機製作所製のキャピログラフ1Bを用いて測定される、バレル径9.55mm、ポリアリーレンスルフィド樹脂の滞留時間8分、樹脂温度300℃、せん断速度200s−1、キャピラリーの長さをL、キャピラリーの径をDとしたときのL/D=60/1における溶融粘度が400Pa・sのポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−1)を得た。
実施例1、2、3、比較例5
前述のようにして用意したPPS−1、炭素短繊維、シラン化合物および炭酸カルシウムを表1に示す組成でドライブレンドした。使用した炭素短繊維およびシラン化合物を下記に示す。比較例5は実施例1〜3に比しイオン溶出量が多すぎる場合である。
(炭素短繊維)
東レ(株)製トレカ TS12(フィラメント数70000本,ポリアクリロ ニトリル系炭素繊維)
(シラン化合物)
信越化学(株)製 β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメト キシシランカップリング剤 KBM303
(炭酸カルシウム)
林化成(株)製 炭酸カルシウム KSS−1000
このようにして得られたドライブレンド混合物をシリンダー温度320℃に設定した二軸押出機(東芝製TEM−50)により溶融混練して、ペレタイズし、炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得た。得られたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、シリンダー温度320℃、金型温度130℃の条件で射出成形し、イオン溶出量、曲げ強さ、曲げ弾性率、引張強さを測定した。
比較例1
PPS−1のみを表1に示す組成で実施例と同様にしてペレタイズ、成形、イオン溶出量の測定、曲げ強さ、曲げ弾性率、引張強さの測定を実施した。その評価結果を表1に示す。
比較例2、3、4
実施例1、2,3における炭素繊維がガラス繊維であり、表1に示した組成で行った以外は実施例1、2,3と同様にしてペレタイズ、成形、イオン溶出量の測定、曲げ強さ、曲げ弾性率、引張強さを測定した。その結果を表1に示す。
(ガラス繊維)
日本電気硝子(株)製 ガラス繊維 T−747GH
Figure 2005281532
表1から明らかなように、実施例1〜3は比較例1〜5に比してイオン溶出量および機械的特性(曲げ強さ、曲げ弾性率、引張強さ)に優れていることがわかる。

Claims (5)

  1. (a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、(b)炭素繊維0.01〜250重量部、(c)シラン化合物を0.02〜10重量部を配合してなる、表面積1.53cmの成形品を、80℃,100mlの純水に500時間浸漬したときのイオン溶出量が10mg/l以下であること特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂からなる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. ポリアリーレンスルフィド樹脂が、純水100ccに表面積1.53cmの成形品を80℃,500時間浸漬したときのイオン溶出量が1mg/l以下であることを特徴とする請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 炭素繊維が純水100mlに0.5gを80℃,500時間浸漬したときのイオン抽出量が1mg/l以下であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 表面積1.53cmの成形品を、80℃,100mlの純水に500時間浸漬したときのイオン溶出量が10mg/l以下である熱可塑性樹脂組成物を射出成形して純水に接する半導体部品、燃料電池車載部品およびポンプ部品用である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
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