JP2005281113A - ニオブ酸リチウム基板およびその製造方法ならびにニオブ酸リチウム基板の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高性能素子に対応するニオブ酸リチウム基板およびその製造方法ならびにニオブ酸リチウム基板の表面処理方法を提供する。
【解決手段】表面が原子レベルでフラットであり、かつ、上記表面が単一元素で終端されているようにした。素子基板として各種素子に用いられるニオブ酸リチウム基板の製造方法であって、ニオブ酸リチウム基板を、大気中において、700℃以上融点以下の温度で所定の時間加熱処理する段階を有するようにした。加熱処理される上記ニオブ酸リチウム基板は、予め表面に鏡面研磨処理のみが施されたものであるようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】表面が原子レベルでフラットであり、かつ、上記表面が単一元素で終端されているようにした。素子基板として各種素子に用いられるニオブ酸リチウム基板の製造方法であって、ニオブ酸リチウム基板を、大気中において、700℃以上融点以下の温度で所定の時間加熱処理する段階を有するようにした。加熱処理される上記ニオブ酸リチウム基板は、予め表面に鏡面研磨処理のみが施されたものであるようにした。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ニオブ酸リチウム基板およびその製造方法ならびにニオブ酸リチウム基板の表面処理方法に関し、さらに詳細には、各種素子に用いられる素子基板であるニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板として用いて好適なニオブ酸リチウム基板およびその製造方法ならびにニオブ酸リチウム基板の表面処理方法に関する。
近年、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板の表面に電極膜が形成されて構成される圧電素子や表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子、あるいは、ニオブ酸リチウム基板の表面に光導波路が形成されて構成される光変調素子などの各種素子が提案されている。
これら圧電素子、SAW素子あるいは光変調素子などの各種素子に用いられる素子基板たるニオブ酸リチウム基板の表面は、電極膜などの各種の薄膜や導波路を作製する土台となるものであり、また、圧電効果や表面弾性波の機能を発現する基板と電気の入出力となる電極との界面になるものである。
このため、従来のニオブ酸リチウム基板は、単結晶基板をダイヤモンドカッターなどで切断し、その表面にダイヤモンド粉末を使用した研磨を施した後、コロイダルシリ力などを含む溶液中で化学エッチングを行って、ニオブ酸リチウム基板の表面を鏡面状態に研磨していた。
しかしながら、上記したようにして表面が鏡面研磨された単結晶基板である従来のニオブ酸リチウム基板であっても、基板の表面の粗さは1nm程度あり、この粗さはNb−Li間などの原子層間隔(0.22nm)の5層分以上にも相当するものである。
こうしたニオブ酸リチウム基板表面の粗さ1nm程度のランダムな乱れは、各種素子を構成するためにニオブ酸リチウム基板の表面に形成される金属薄膜や導波路に悪影響を及ぼすので、従来のニオブ酸リチウム基板は高性能素子(小型、高周波、高出力、長寿命)に対応することができないという問題点があった。
具体的には、例えば、SAW素子のような周波数フィルタは、ニオブ酸リチウム基板の表面にアルミニウム電極膜となる金属薄膜が作製されて構成されるものである。そして、このアルミニウム電極膜の結晶性が、周波数フィルタの高周波特性ならびに耐久性に大きく影響するので、高性能素子に対応するためには、ニオブ酸リチウム基板の表面に一様で高密度な金属薄膜を形成することが望まれる。
しかしながら、上記した従来のニオブ酸リチウム基板を用いてSAW素子を構成する場合には、従来のニオブ酸リチウム基板の表面の粗さが1nm程度あるので、基板の不規則な凹凸表面上に金属薄膜を成長させることになる。その結果、従来のニオブ酸リチウム基板表面の多数の凹凸部分のそれぞれにおいて結晶成長が生じ、それぞれの結晶成長の結晶粒が成膜の進行とともに接するようになって、粒界や刃状転移、らせん転移などの成長欠陥が生起されてしまい、ニオブ酸リチウム基板の表面における一様で高密度な金属薄膜の形成は阻害される。
このように従来のニオブ酸リチウム基板を用いた場合には、当該基板の表面は粗く凹凸があるために、基板表面に一様で高密度な電極薄膜を形成することができず、高性能素子に対応することができなかった。
また、光変調素子はニオブ酸リチウム基板の表面に光導波路が形成されて構成されるものであるが、こうした導波路デバイスにおいても、エピタキシャル膜中の欠陥がその特性に大きく影響することが知られている(非特許文献1参照)。
しかし、導波路デバイスに従来のニオブ酸リチウム基板を用いると、当該ニオブ酸リチウム基板表面の凹凸によって、表面に形成されるエピタキシャル膜中に欠陥が生じてしまうので、導波路デバイスの特性に影響が及んでしまい、高性能素子に対応することができなかった。
電子情報通信学会論文誌J77−C−1、No.5(1994)、P229
電子情報通信学会論文誌J77−C−1、No.5(1994)、P229
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高性能素子に対応するニオブ酸リチウム基板およびその製造方法ならびにニオブ酸リチウム基板の表面処理方法を提供しようとするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、従来の鏡面研磨が施されたニオブ酸リチウム基板の表面に多数存在する不規則な凹凸をなくし、ニオブ酸リチウム基板の表面を原子レベルでフラットにし、かつ、その表面を3元素系の基板でありながら単一元素で終端させるようにしたものである。
即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、表面が原子レベルでフラットであり、かつ、上記表面が単一元素で終端されているようにしたものである。
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、10nm〜100μmの広いテラス幅を有する極平坦なテラスと0.22nmの高さのステップとにより構成されニオブ原子で終端された表面を有するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、単結晶基板であって表面に鏡面研磨処理が施されたニオブ酸リチウム基板を酸素雰囲気下で高温処理することによって得られる、平坦なテラスと直線状のステップとの周期構造からなり単一元素で終端された表面を有するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、単結晶基板であって表面に鏡面研磨処理が施されたニオブ酸リチウム基板を、酸素雰囲気下で高温処理しその後所定の冷却速度で室温まで冷却することによって得られる、平坦なテラスと直線状のステップとの周期構造からなり単一元素で終端された表面を有し、上記表面の上記テラスの幅は使用したニオブ酸リチウム基板のカット角度に応じたものであるしたものである。
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、素子基板として各種素子に用いられるニオブ酸リチウム基板の製造方法であって、ニオブ酸リチウム基板を、大気中において、700℃以上融点以下の温度で所定の時間加熱処理する段階を有するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、素子基板として各種素子に用いられるニオブ酸リチウム基板の製造方法であって、所定のサイズに切り出されたニオブ酸リチウム基板を、大気中において、1000℃で5時間加熱処理する段階を有するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6のいずれか1項に記載の発明において、さらに、加熱処理された上記ニオブ酸リチウム基板を、毎分5℃よりも速くかつ毎分15℃よりも遅い冷却速度で冷却する段階を有するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項8に記載の発明は、請求項5、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の発明において、加熱処理される上記ニオブ酸リチウム基板は、予め表面に鏡面研磨処理のみが施されたものであるようにしたものである。
また、本発明のうち請求項9に記載の発明は、ニオブ酸リチウム基板を、大気中において、700℃以上融点以下の温度で所定の時間加熱処理するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項10に記載の発明は、ニオブ酸リチウム基板を、大気中において、1000℃で5時間加熱処理するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項11に記載の発明は、請求項9または請求項10のいずれか1項に記載の発明において、さらに、加熱処理された上記ニオブ酸リチウム基板を、毎分5℃よりも速くかつ毎分15℃よりも遅い冷却速度で冷却するようにしたものである。
また、本発明のうち請求項12に記載の発明は、請求項9、請求項10または請求項11のいずれか1項に記載の発明において、表面に鏡面研磨処理が施されたニオブ酸リチウム基板を加熱処理するようにしたものである。
本発明によるニオブ酸リチウム基板およびその製造方法ならびにニオブ酸リチウム基板の表面処理方法は、高性能素子に対応できるようになるという優れた効果を奏する。
以下、添付の図面に基づいて、本発明によるニオブ酸リチウム基板およびその製造方法ならびにニオブ酸リチウム基板の表面処理方法の実施の形態の一例について詳細に説明するものとする。
図1には、本発明によるニオブ酸リチウム基板の製造方法の実施の形態の一例を概念的に表す説明図が示されている。
即ち、本発明によるニオブ酸リチウム基板の製造方法は、大気中において加熱処理が可能な加熱処理システム100により、ニオブ酸リチウム基板10を加熱処理するものである。
ここで、加熱処理システム100は、大気中において、予め設定された温度で所定の時間、ニオブ酸リチウム基板10を加熱可能なものである。こうした加熱処理システム100としては、例えば、広く一般的に用いられる高温型電気炉などを用いることができる。こうした高温型電気炉は、例えば、発熱にカンタル線など用いており、電源はAC100Vまたは200Vを使って、室温〜1250℃の範囲で加熱が可能なものである。また、加熱処理システム100として高温型電気炉を用いたときに、炉内の温度を熱電対などでモニタし、それをフィードバックして温度制御できる温度コントローラを備えることにより、炉内温度の上昇や下降の速度も制御可能なものである。
そして、ニオブ酸リチウム基板10として、この実施の形態においては、単結晶基板を所定のサイズに切り出し鏡面研磨基板として一般に市販されているニオブ酸リチウム基板を用いることとする。従って、ニオブ酸リチウム基板10の表面10aには、予め所定の手法により鏡面研磨処理が施されているものであり、こうしたニオブ酸リチウム基板10に対して、加熱処理システム100により加熱処理を行うことになる。
図2(a)には、市販の鏡面研磨されたニオブ酸リチウム基板(LN(0001))、即ち、加熱処理システム100による加熱処理前のニオブ酸リチウム基板10の表面10aを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)で観察したAFM像が示されており、図2(b)は、図2(a)に示すA−A線の箇所における断面の凹凸を示すものである。
図2(a)(b)からも明らかなように、鏡面研磨された表面であっても粗さは1nm程度あり、加熱処理システム100による加熱処理前のニオブ酸リチウム基板10の表面10aには多数の凹凸が存在している。
こうしたニオブ酸リチウム基板10を、加熱処理システム100に投入し、大気中において、所定の時間、700℃以上融点以下の温度で加熱処理を施す。なお、ニオブ酸リチウム基板の融点は1250℃であるので、加熱処理システム100においては、700℃以上1250℃以下の温度で、ニオブ酸リチウム基板10の加熱処理が行われる。
そして、加熱処理システム100において所定時間の加熱処理が終了したならば、その後、加熱したニオブ酸リチウム基板10を冷却する。こうして加熱処理後のニオブ酸リチウム基板10を冷却する際には、冷却速度が早すぎると、基板表面の原子移動時のステップ吸着が十分でなくなってテラスに多数の原子が残ることがあり、逆に、冷却速度が遅すぎると、ある温度域で結晶成長してしまうことがあるので、こうした事態を回避可能な冷却速度で加熱されたニオブ酸リチウム基板の温度を降下させなければならない。例えば、毎分5℃よりも速くかつ毎分15℃よりも遅い冷却速度で、加熱したニオブ酸リチウム基板10を冷却すれば、良好な処理結果を得ることができる。
図3(a)には、加熱処理システム100において1000℃で5時間の加熱処理が施され、その後約7℃/分の冷却速度で室温にまで冷却された市販の鏡面研磨されたニオブ酸リチウム基板(LN(0001))、即ち、加熱処理システム100による加熱処理後のニオブ酸リチウム基板10の表面10aを原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)で観察したAFM像が示されており、図3(b)は、図3(a)に示すB−B線の箇所における断面の凹凸を示すものである。
図3(a)(b)からも明らかなように、ニオブ酸リチウム基板10の表面10aには不規則な凹凸がなくなり、平坦なテラスと直線状のステップとの周期構造が得られている。
つまり、加熱処理システム100における基板の表面処理によって、ニオブ酸リチウム基板10の表面10aは著しく変化し、多数の凹凸があった加熱処理前のニオブ酸リチウム基板10の表面10a(図2(a)(b)参照)とは全く異なっている。
より詳細には、1000℃で5時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板10の表面10a(図3(a)(b)参照)を構成する極平坦なテラスは、200nm〜300nmのテラス幅を有するものである。なお、図3(b)に示す断面図においては、縦軸と横軸とのスケールが大きく異なるため、広いテラス幅が得られていることを指摘しておく。また、図3(b)に示すニオブ酸リチウム基板の表面のステップ/テラス構造全体の形状は所定の傾斜角度を有しているが、この傾きは使用した基板のミスカットに起因するものであり、当該表面は現実での理想表面である。
そして、上記したテラスとともに加熱処理後のニオブ酸リチウム基板10の表面10aを構成するステップ/テラス構造の直線状のステップは、図3(b)に示すステップ高さhが0.22nmと一定であって均一高さを有する。このステップ高さ「h=0.22nm」という値は、結晶学的に知られる「Li(リチウム)、Nb(ニオブ)、O(酸素)の1周期分」である。このことから、ニオブ酸リチウム基板10の表面10aのステップ/テラス構造のテラスが単一元素で終端されることがわかる。
実際、本願出願人は、同軸型直衡突低速イオン散乱法により、加熱処理システム100における加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面を調べた結果、終端面は金属、具体的には、ニオブ原子であることが確認された。
つまり、加熱処理システム100における加熱処理後のニオブ酸リチウム基板10の表面10aは、原子レベルでフラットであり、かつ、単一元素で終端されているものである。
ここで、図4乃至図8には、本願出願人により、加熱処理システム100における加熱温度と加熱時間とを様々に変化させた結果が示されている。なお、加熱処理システム100によって加熱したニオブ酸リチウム基板を室温まで冷却する際の温度降下速度は約7℃/分である。また、原子間力顕微鏡で観察したAFM像は、スキャンサイズが2000nm×2000nmであり、基板表面の凹凸の山の部分と谷の部分との差であるP−V(peak to valley)値を測定している。
図4(a)は、加熱処理前のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は1.43nmである。図4(b)は、500℃で5時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は6.74nmである。
図5(a)は、600℃で1時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は5.53nmである。図5(b)は、600℃で5時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は88.5nmである。
図6(a)は、700℃で1時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は2.88nmである。図6(b)は、700℃で5時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は138nmである。
図7(a)は、800℃で1時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は1.03nmである。図7(b)は、800℃で5時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は284nmである。
図8は、900℃で5時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のAFM像であり、P−V値は0.48nmである。
これら結果のうち、図5(a)と図5(b)、図6(a)と図6(b)、図7(a)と図7(b)をそれぞれ比較すると、加熱処理システム100における加熱温度が600℃、700℃、800℃の場合には、加熱時間が1時間であればP−V値は小さく比較的平坦な表面が得られるが、加熱時間が5時間になると1時間の場合よりもP−V値が大きくなって粗い表面になってしまう。このように加熱が短時間だと基板表面が平坦化しかけて、加熱を継続すると基板表面の凹凸が多くなってしまうのは、基板表面の原子移動(平坦化)と核成長(表面の凹凸化)という互いに反対の作用のバランスで決まることによる。
そして、加熱処理システム100における加熱時間が1時間の場合を比較すると、図5(a)のP−V値は5.53nm、図6(a)のP−V値は2.88nm、図7(a)のP−V値は1.03nmというように、加熱温度が600℃、700℃、800℃と上昇するのに従ってP−V値は小さくなる。しかしながら、加熱温度が600℃では平坦な表面は得られておらず、700℃ではやや広い面積で平坦になり、800℃で全範囲にわたり平坦な表面が得られる。ただし、800℃の場合にはステップ形状がまだ直線状にはなっていない。
また、加熱処理が900℃で5時間の場合(図8参照)ならびに1000℃で5時間の場合(図3(a)(b)参照)はいずれも、P−V値が極めて小さく、平坦な表面が得られているが、加熱処理の時間は5時間に満たずとも、少なくとも10分以上、例えば、1時間程度でも、5時間の場合と同程度の良好な結果が得られるものである。なお、加熱温度が900℃あるいは1000℃の場合に、5時間以上の加熱を行っても、定常状態に達して、加熱処理が5時間の場合の結果と変わらない。これら結果に基づき、加熱処理システム100においては、少なくとも10分以上、700℃以上融点以下の温度でニオブ酸リチウム基板に加熱処理を施すとよい。
上記したように、本発明によるニオブ酸リチウム基板の製造方法によれば、ニオブ酸リチウム基板10を、加熱処理システム100により大気中において700℃以上1250℃以下の温度で所定の時間加熱処理するようにしたため、表面が原子レベルでフラットであり、かつ、表面が単一元素で終端されているニオブ酸リチウム基板を得ることができる。
つまり、上記した実施の形態において用いたような鏡面研磨基板として一般に市販されているニオブ酸リチウム基板、即ち、従来のニオブ酸リチウム基板に対して、本発明よるニオブ酸リチウム基板の表面処理を施すことにより、同一元素で終端され同一結晶方位のみをもつテラス面からなり直線状の規則的なステップをもつ表面を得ることができる。
このように、本発明によれば、Li(リチウム)、Nb(ニオブ)、O(酸素)の3元素系、即ち、複合元素であって、イオン結合した酸化物であるニオブ酸リチウム基板の表面を改質して、特定元素で終端された直線状ステップ/テラス表面とすることができる。
換言すれば、本発明によるニオブ酸リチウム基板の表面は、従来のニオブ酸リチウム基板のように粗く多数の凹凸が存在するものではなく、各種素子を構成するために電極膜などの各種の薄膜や導波路を作製する土台として、また、圧電効果や表面弾性波の機能を発現する基板と電気の入出力となる電極との界面として好適なものであり、小型・高周波・高出力・長寿命である高性能素子に対応し、当該高性能素子の特性向上に貢献するものである。
つまり、本発明によるニオブ酸リチウム基板上に、様々な素子に使われる各種金属薄膜や導波路を作成する際には、界面の乱れに起因する結晶欠陥や結晶歪みの極めて少ない薄膜の形成が可能になり、一様で高密度な金属薄膜を形成することができる。しかも、本発明によるニオブ酸リチウム基板の表面は、金属であるニオブ原子で終端されているため、当該基板表面に金属薄膜の電極を形成するのに極めて有用である。
より詳細には、従来のニオブ酸リチウム基板においては、表面に異種結晶面が露出しているので、当該表面上に成長する薄膜に、設計以外の成長方位を与えてしまうこととなっていた。このため、従来のニオブ酸リチウム基板の表面に形成された金属薄膜は、高周波電界により粒界が流動し、容易に剥離、崩壊を生じていた。こうした粒界の移動は、高性能素子では、素子の小型化に伴って薄膜形状も微細になるため致命的なものであり、従来のニオブ酸リチウム基板が高性能素子に対応できない原因の一つでもあった。
こうした従来の技術に対して、本発明によれば表面が単一元素で終端されたニオブ酸リチウム基板を得ることができるので、高性能素子として小型化に伴う微細な薄膜形状が基板表面に形成されても、高周波電界によって粒界が流動するようなことはなく、高性能素子に対応することができる。
また、従来のニオブ酸リチウム基板を用いてSAW素子を構成する場合には、ニオブ酸リチウム基板の表面に成長させるアルミニウム電極膜の電極構造の乱れを回避するために、Ti(チタン)のバッファ層を挟み込んで、基板とAl電極層とのミスフィットを緩和し、結晶性のよい電極層を作成する手法が提案されていた。
こうした従来の技術に対して、本発明による手法は大気中、常圧で行われるために、低コストで簡便なプロセスであって、しかも市販されているニオブ酸リチウム基板に対して特定の前処理(例えば、ニオブ酸リチウム基板からOH基を除去する特殊処理など。)を施すこともない。従って、本発明によるニオブ酸リチウム基板を用いてSAW素子を構成する場合には、上記した従来の手法のように異種金属であるTiの蒸着という面倒な工程は必要とせず、単に鏡面研磨処理のみが施され何ら特殊処理が施されていないOH基を含んだ状態のニオブ酸リチウム基板を用いることができ、高性能素子の製造工程を簡単にしてコスト削減を実現できる。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(4)に説明するように変形してもよい。
(1)上記した実施の形態においては、図2(a)(b)に示すように表面粗さが1nm程度の鏡面研磨基板を用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、表面粗さが2nm程度のニオブ酸リチウム基板を加熱処理システム100に投入するようにしてもよく、加熱処理前のニオブ酸リチウム基板の表面粗さやサイズなどは特に限定されるものではない。
(2)上記した実施の形態においては、加熱処理システム100により大気中においてニオブ酸リチウム基板10の加熱処理を行うようにしたが、ニオブ酸リチウム基板が酸化物単結晶であるので、酸素欠陥を生じないように酸素雰囲気下で高温処理すればよく、酸素濃度などは適宜設定可能なものである。
(3)上記した実施の形態において、図3(b)からも明らかなように、1000℃で5時間の加熱処理後のニオブ酸リチウム基板10の表面10aのステップ/テラス構造全体の形状は、使用した基板のミスカットにより所定の傾斜角度を有するようになっていた。このように基板のミスカットに起因して、ニオブ酸リチウム基板の表面のステップ/テラス構造全体の形状が傾いてしまうことから、使用する基板表面のカット角度を調整することによって、加熱処理後のニオブ酸リチウム基板の表面のテラス幅を制御することもできる。
例えば、図9(a)には、上記実施の形態において説明した図3(a)(b)に示す結果が得られたニオブ酸リチウム基板10とはミスカットの状態が異なるニオブ酸リチウム基板を、加熱処理システム100において1000℃で1時間の加熱処理を施しその後約7℃/分の冷却速度で室温にまで冷却した基板表面のAFM像が示されており、図9(b)には、図9(a)に示すC−C線の箇所における断面の凹凸が示されている。この図9(a)(b)に示すニオブ酸リチウム基板の表面の極平坦なテラスは、2μm〜3μmのテラス幅を有するものである。
従って、本発明によれば、使用する基板のカット角度を調整するだけで、表面が原子レベルでフラットでかつ表面が単一元素で終端されているニオブ酸リチウム基板の表面のテラス幅を簡単に制御することができる。図3(a)(b)や図9(a)(b)に示した具体的な結果によれば、200nm〜3μmの範囲でテラス幅を制御可能なものであり、ニオブ酸リチウム基板の表面の平坦なテラスと直線状のステップとの周期構造としては、10nm〜100μmの広いテラス幅を得ることが可能である。
こうして簡単にテラス幅を制御することができる本発明は、例えば、酸化物上に特異的な金属吸着を用いてそのステップにナノサイズ幅の細線を形成するなど、デバイス作製に役立てることができる。
(4)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(3)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
本発明は、圧電素子、SAW素子あるいは光変調素子などの各種素子において利用することができる。
10 ニオブ酸リチウム基板
10a 表面
100 加熱処理システム
10a 表面
100 加熱処理システム
Claims (12)
- 表面が原子レベルでフラットであり、かつ、前記表面が単一元素で終端されている
ことを特徴とするニオブ酸リチウム基板。 - 10nm〜100μmの広いテラス幅を有する極平坦なテラスと0.22nmの高さのステップとにより構成されニオブ原子で終端された表面を有する
ことを特徴とするニオブ酸リチウム基板。 - 単結晶基板であって表面に鏡面研磨処理が施されたニオブ酸リチウム基板を酸素雰囲気下で高温処理することによって得られる、平坦なテラスと直線状のステップとの周期構造からなり単一元素で終端された表面を有する
ことを特徴とするニオブ酸リチウム基板。 - 単結晶基板であって表面に鏡面研磨処理が施されたニオブ酸リチウム基板を、酸素雰囲気下で高温処理しその後所定の冷却速度で室温まで冷却することによって得られる、平坦なテラスと直線状のステップとの周期構造からなり単一元素で終端された表面を有し、前記表面の前記テラスの幅は使用したニオブ酸リチウム基板のカット角度に応じたものである
ことを特徴とするニオブ酸リチウム基板。 - 素子基板として各種素子に用いられるニオブ酸リチウム基板の製造方法であって、
ニオブ酸リチウム基板を、大気中において、700℃以上融点以下の温度で所定の時間加熱処理する段階
を有するニオブ酸リチウム基板の製造方法。 - 素子基板として各種素子に用いられるニオブ酸リチウム基板の製造方法であって、
所定のサイズに切り出されたニオブ酸リチウム基板を、大気中において、1000℃で5時間加熱処理する段階
を有するニオブ酸リチウム基板の製造方法。 - 請求項5または請求項6のいずれか1項に記載のニオブ酸リチウム基板の製造方法において、さらに、
加熱処理された前記ニオブ酸リチウム基板を、毎分5℃よりも速くかつ毎分15℃よりも遅い冷却速度で冷却する段階
を有するニオブ酸リチウム基板の製造方法。 - 請求項5、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載のニオブ酸リチウム基板の製造方法において、
加熱処理される前記ニオブ酸リチウム基板は、予め表面に鏡面研磨処理のみが施されたものである
ニオブ酸リチウム基板の製造方法。 - ニオブ酸リチウム基板を、大気中において、700℃以上融点以下の温度で所定の時間加熱処理する
ことを特徴とするニオブ酸リチウム基板の表面処理方法。 - ニオブ酸リチウム基板を、大気中において、1000℃で5時間加熱処理する
ことを特徴とするニオブ酸リチウム基板の表面処理方法。 - 請求項9または請求項10のいずれか1項に記載のニオブ酸リチウム基板の表面処理方法において、さらに、
加熱処理された前記ニオブ酸リチウム基板を、毎分5℃よりも速くかつ毎分15℃よりも遅い冷却速度で冷却する
ことを特徴とするニオブ酸リチウム基板の表面処理方法。 - 請求項9、請求項10または請求項11のいずれか1項に記載のニオブ酸リチウム基板の表面処理方法において、
表面に鏡面研磨処理が施されたニオブ酸リチウム基板を加熱処理する
ものであるニオブ酸リチウム基板の表面処理方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008126532A1 (ja) * | 2007-03-14 | 2008-10-23 | Nippon Mining & Metals Co., Ltd. | エピタキシャル成長用基板および窒化物系化合物半導体単結晶の製造方法 |
-
2004
- 2004-03-31 JP JP2004101707A patent/JP2005281113A/ja active Pending
Non-Patent Citations (2)
Title |
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JPN6010007331, I.E.Kalabin et al., "Nanofaceting of LiNbO3 X−cut surface by high temperature annealing and titanium diffusion", Optics Communications, 200306, Vol.221, pp.359−363 * |
JPN6010007334, S.A.Kulinich et al., "Epitaxial LiNb0.5Ta0.5O3 films on LiTaO3 and LiNbO3 substrates grown by thermal plasma", Journal of Crystal Growth, 200301, Vol.247, pp.408−418 * |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008126532A1 (ja) * | 2007-03-14 | 2008-10-23 | Nippon Mining & Metals Co., Ltd. | エピタキシャル成長用基板および窒化物系化合物半導体単結晶の製造方法 |
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