JP2005276684A - 非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体 - Google Patents

非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体 Download PDF

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Abstract

【課題】非水電解質二次電池に使用した際のガス発生の問題を改善することができ、サイクル特性等の電池特性に優れた非水電解質二次電池を実現し得る非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物の保存形態を提供する。
【解決手段】(i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気中、或いは、(ii)10kPa以下の雰囲気中に、リチウム遷移金属複合酸化物が封入されている非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体。

Description

本発明は、非水系二次電池活物質用のリチウム遷移金属複合酸化物の封入体に関する。詳しくは、非水系二次電池の正極活物質として用いた際に、ガス発生による膨れなどを起こしにくく、保存特性に優れた非水電解質二次電池を実現し得る非水電解質二次電池リチウム遷移金属複合酸化物の封入体に関する。
近年、電気製品の軽量化、小型化に伴い、高いエネルギー密度を持つ非水系二次電池として、非水電解質二次電池が注目されている。この非水電解質二次電池用の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が知られている。
リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする正極は、リチウム遷移金属複合酸化物及び結着剤と必要に応じて導電材を分散媒に分散させた、いわゆる、活物質合剤と呼ばれる分散液(以下「塗料」と称す場合もある。)を、集電体上に塗布して、乾燥することにより作成される。
そして、この活物質の保存方法として、特許文献1には、リチウム遷移金属複合酸化物を、その製造直後から活物質合剤塗料調製までの間、露点−20℃以下のガス中に保存することで、保存中の水分の吸収を抑え、高容量で内部抵抗の低い非水電解質二次電池用電極を製造することが記載されている。
特開平11−45716号公報
非水電解質二次電池がノートパソコンや携帯電話などの携帯機器に適用されることが急速に拡大するのに伴い、非水電解質二次電池に対する高性能化への要求は一段と加速している。このため正極活物質材料についても、高容量化、サイクル特性等の向上と共に、ガス発生に代表される電池の膨れを防止することは、安全性の確保において極めて重要な解決すべき課題である。
このような状況において、特許文献1に記載されるようにリチウム遷移金属複合酸化物の保存中の水分を管理する方法では、1週間程度の短期保存下ではある程度有効であるものの、1ヶ月〜6ヶ月程度の長期保存下では、電極とした場合のガス発生の抑制効果の点で未だ不十分であった。
従って、本発明は、非水電解質二次電池に使用した際のガス発生の問題を改善することができ、サイクル特性等の電池特性に優れた非水電解質二次電池を実現し得る非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物の保存形態を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、リチウム遷移金属複合酸化物を特定の雰囲気中に封入しておくことにより、保存特性、ガス発生の問題が著しく改善されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、(i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気中、或いは、(ii)10kPa以下の雰囲気中に、リチウム遷移金属複合酸化物が封入されていることを特徴とする非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体(以下、「本発明の封入体」と称す場合がある。)に存する。
このように、封入体内雰囲気を(i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気とすることによる本発明の効果の作用機構は次のように推定される。
リチウム遷移金属複合酸化物については、例えば、下記式(A1)((A1)式中、Mは遷移金属元素)のような反応により、リチウム遷移金属複合酸化物と水との反応により表面に遊離のLiOHが存在したり、下記式(A2)のような反応により、リチウム遷移金属複合酸化物がCOに曝されるとCOとLiOとの反応で内部からLiが引き抜かれたりすることがある。
LiMO+HO→LiOH+MOOH …(A1)
2LiOH+CO→LiCO+HO …(A2)
式(A1)で生成した遊離のLiOHとCOが反応するとリチウム遷移金属複合酸化物の表面に炭酸リチウムの抵抗膜を生成し、電池性能が低下するが、CO濃度を30ppm以下に抑えることで、形成される抵抗膜の厚みは1/10程度となり、抵抗も1/10程度に抑えることができる。また、リチウム遷移金属複合酸化物内部からLiが引き抜かれると、Li量の低下により容量が低下するが、COに曝されるのを押さえることで、この容量低下を防止することができる。なお、COに暴露することで、炭酸リチウムの抵抗膜ができるか、内部からLiが引き抜かれ容量低下を起こすかは、リチウム遷移金属複合酸化物の特性、物性によるところであり、どちらが起きるかを一概に言うことはできない。
更には、COに触れることでリチウム遷移金属複合酸化物からLiが抜かれ、表面に炭酸リチウムができることを抑制することで、電池動作させた際に、炭酸リチウムからCOガスなどが発生することの抑制も可能である。また、長期間低CO濃度雰囲気におくことで、リチウム遷移金属複合酸化物表面に吸着したCOが表面から脱離する量が増加したり、炭酸リチウムとして表面に生成した抵抗膜が、可逆反応により二酸化炭素とLiに戻る効果も期待できる。
封入体内雰囲気を(ii)10kPa以下の雰囲気とする場合にあっても、リチウム遷移金属複合酸化物がCOに触れることがなくなり、上記と同様の作用機構で本発明の効果が達成される。
本発明においては、このように、リチウム遷移金属複合酸化物を上記特定の雰囲気の封入体とすることにより、リチウム遷移金属複合酸化物を良好な状態に維持して保存することができる。リチウム遷移金属複合酸化物を本発明の封入体の形で保存した場合の利点として、上述の如く、大気中のCOと接触のないこと、封入体中のCO濃度が薄いことにより、リチウム遷移金属複合酸化物に吸着もしくは反応したCOが脱離し、更にリチウム遷移金属複合酸化物表面の抵抗を下げることができることなどが挙げられるが、リチウム遷移金属複合酸化物を封入体とすることで、このリチウム遷移金属複合酸化物を用いて活物質合剤を調製し、これを集電体上に塗布するなどして電極を作製するまでのリチウム遷移金属複合酸化物の品質を高度に保ち、活物質合剤調製にそのまま用いることができる;大量な輸送、運搬などにおいても不都合がない;などの効果も得られる。
本発明において、該封入雰囲気は、露点−30℃以下であることが好ましい。また、該リチウム遷移金属複合酸化物は、下記一般式(I)で表されることが好ましい。
Li …(I)
(式(I)中、aは0.45≦a≦1.2の数を表し、bは0.95≦b≦1.05の数を表し、cは0≦c≦0.1の数を表し、AはNi、Mn、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn、Nb、Sn、Ta及びVよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を表し、DはB、P、S、Bi、Si、Sb、Ca、Zr及びCよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を表す。)
該リチウム遷移金属複合酸化物は、好ましくは比表面積0.1m/g以上、平均粒径0.3μm以上40μm以下の粉体である。
本発明において、該リチウム遷移金属複合酸化物が、リチウムニッケル系複合酸化物であり、該封入雰囲気がCO濃度30ppm以下、かつ、露点−30℃以下の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
本発明においては、該リチウム遷移金属複合酸化物と共にCO吸収剤が封入されていても良い。
本発明の封入体によれば、粉体保存特性の向上、及びガス発生抑制効果に優れた非水電解質二次電池用正極活物質用のリチウム遷移金属複合酸化物が提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は何らこれらの内容に特定されるものではない。
[リチウム遷移金属複合酸化物]
まず、本発明の封入体の封入物であるリチウム遷移金属複合酸化物について説明する。
<組成>
本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、非水電解質二次電池用正極活物質として使用されるものであり、リチウム遷移金属複合酸化物であれば、特に限定されない。例えば、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物などが挙げられるが、スピネルマンガン化合物などの遷移金属酸化物材料などでも良い。
正極活物質として用いた場合の非水電解質二次電池特性の観点から、特に以下の一般式(I)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
Li …(I)
(式(I)中、aは0.45≦a≦1.2の数を表し、bは、0.95≦b≦1.05の数を表し、cは0≦c≦0.1の数を表し、AはNi、Mn、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn、Nb、Sn、Ta及びVよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を表し、なかでもNi及びCoが好ましい。DはB、P、S、Bi、Si、Sb、Ca、Zr及びCよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を表す。)
上記一般式(I)において、遷移金属AとしてNi又はCoが、全遷移金属A1モルに対して、0.3モル以上含まれていることが好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物としては、非水電解質二次電池に用いた場合に高容量、高レート、高寿命である点で、特にリチウムニッケル複合酸化物が好ましい。リチウムニッケル複合酸化物としては、基本組成がLiNiO、LiNiO、LiNi又はLiNi等で表されるもの、及びこれらのニッケルの一部を他の元素で置換したものなどが挙げられる。これらのリチウムニッケル複合酸化物のうち、特に下記一般式(II)で表されるものが、COに対し反応性が高く、空気中不安定な物質が多いという理由で好ましい。
LiNi …(II)
(式(II)中、aは0.9以上1.2以下の数、dは0.3以上1.2以下の数、d+eの合計は0.9以上1.2以下の数であり、MはB、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn及びGaよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を表す。)
上記一般式(II)で表されるリチウムニッケル複合酸化物として、より好適な具体例としては、次のようなものが挙げられる。これらは、非水電解質二次電池に用いた場合に、高容量、高レートでしかもサイクル寿命にも優れている点において好ましい。
LiNi1−xCoAl(0≦x≦0.7,x=y+z)、
LiNi1−xMnCo(0≦x≦0.7,x=y+z)、
LiCo1−x(0≦x≦0.7,Q=Ni、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種)
本発明の封入体の封入物は、これらのリチウム遷移金属複合酸化物のうちの1種を単独でも良いし、2種以上の混合物でも良い。また、これら複合酸化物を芯材とし、表面処理ないし表面コーティングが施されたものであっても良い。
<粉体物性>
本発明の封入体に封入されるリチウム遷移金属複合酸化物の形態としては特に制限はないが、一般的には粉体である。
このリチウム遷移金属複合酸化物粉体の比表面積は、下限が通常0.1m/g以上、好ましくは0.3m/g以上、更に好ましくは0.5m/g以上であり、上限が通常7m/g以下、好ましくは6m/g以下、更に好ましくは5m/g以下である。比表面積がこの下限を下回ると粉体の電気抵抗が高く、電池にした時のレート特性が悪くなりやすい。上限を上回ると反応面が多く、電池充放電サイクルや電池保存中の抵抗増加が著しく、寿命が低下しやすい。
本発明においてリチウム遷移金属複合酸化物粉体の比表面積は、BET式粉体比表面積測定装置を用い、ASTM D3037に準拠したBET法(窒素表面積法)により測定される。
また、本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物粉体の平均粒径(メジアン直径)は、下限が通常0.3μm以上、好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、上限が通常40μm以下、好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下である。平均粒径がこの下限を下回ると正極活物質層を形成する際、粉の数が多いため、通常量の結着剤では膜剥離を起こしやすい。上限を上回ると高レートを得るための正極活物質層の薄膜化で塗布膜の筋引きを生じやすい。
本発明において、粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置、具体的には、堀場製作所製(型式:LA920、LA910、LA500)等を用いて測定される。
<製造方法>
以下に、本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法の一例について説明するが、本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物を製造する方法は、以下の製造方法によって何ら限定されるものではない。
前記一般式(II)に表されるリチウム遷移金属複合酸化物を製造するには、無機リチウム塩、リチウムの水酸化物などのリチウム原料、Ni(OH)、NiO、NiOOHなどのニッケル原料、CoO、Co、Co、Co(OH)、CoOOHなどのコバルト原料、マンガン原料、その他の元素の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、脂肪酸塩、ハロゲン化物等の元素Mの原料などを適宜選択して原料とし、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子を製造する。
例えば、ニッケル原料、コバルト原料、及びその他の元素Mの原料などを、水などの分散媒に分散させ、湿式法により粉砕・混合し、スラリー化する。原料の粉砕・混合に用いる装置は特に限定されず、ビーズミル、ボールミル、振動ミル等の任意の装置を用いることができる。
次いで、ニッケル原料、コバルト原料、及び元素Mなどの原料の湿式粉砕・混合により得られたスラリーについて、スラリー中の分散粒子(一次粒子)を凝集させ、より大きな粒子状物(凝集粒子、二次粒子)を作成する作業、即ち造粒を行なうと共に、併せて粒子状物の乾燥を行うために、スプレードライヤー等を用いた噴霧乾燥などを行う。
噴霧乾燥により得られる粒子状物の粒径は、通常、最終的な本発明におけるリチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子の粒径とおおよそ同じになる。乾燥により得られる粒子状物の平均粒径は、通常は2μm以上、好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上、また、通常40μm以下、好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μmである。この粒径は、噴霧形式、加圧気体流供給速度、スラリー供給速度、乾燥温度等の噴霧乾燥条件を適宜選定することによって制御することができる。
なお、噴霧乾燥以外の手法を用いて造粒・乾燥を行なっても良い。他の造粒法の例としては、水に可溶な原料を用い、それらを撹拌しながら、溶解度の低い塩を添加することで析出、造粒する共沈法が挙げられる。
次いで、上記の造粒・乾燥工程により得られた粒子状物を、リチウム原料と乾式混合して、混合粉とする。次に、得られた混合粉を焼成処理し、一次粒子が焼結して形成された二次粒子を得る。
焼成処理の手法は任意であるが、例えば箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。焼成処理は、通常、昇温・最高温度保持・降温の三工程に分けられる。第二工程の最高温度保持工程は必ずしも一回とは限らず、目的に応じて二段階又はそれ以上の段階を踏ませても良い。最高温度保持工程における焼成温度は、使用する各原料の種類、及びその組成比、リチウム原料とその他の原料との混合順序などによって異なるが、通常500℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは800℃以上、また、通常1200℃以下、好ましくは1100℃以下である。最高温度保持工程での保持時間は、通常1時間以上、100時間以下の広い範囲から選択される。
焼成により得られたリチウム遷移金属複合酸化物は、必要に応じ、解砕・分級・粉砕され、封入物としてのリチウム遷移金属複合酸化物の粒子となる。解砕・分級・粉砕の方法は、例えば、タッピングボール入りの振動篩、ピンミル、ボールミル、ジェットミル等、公知の方法を使用することができる。
[その他の封入物]
<結着剤、導電材>
本発明の封入体においては、リチウム遷移金属複合酸化物と共に、結着剤、導電材が封入体内に封入されていても良い。即ち、正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物が、結着剤及び導電材と共に混合された正極合剤として封入されていても良い。
結着剤としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等の樹脂;スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、弗素ゴム等のゴム;ポリ酢酸ビニル及びセルロース等の高分子物質が挙げられる。好ましくはポリビニリデンフルオライド、ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロースである。
導電材としては、非水電解質二次電池に用いられることが知られているいずれのものも用いることができる。例えば、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。
結着剤及び導電材が共に封入されている場合、リチウム遷移金属複合酸化物、結着剤及び導電材の封入割合は、正極活物質層の形成に適当な混合割合であることが好ましく、封入物合計(ただし、後述の吸着剤を含まず。)中のリチウム遷移金属複合酸化物の量は、通常65重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上であり、通常98.9重量%以下、好ましくは97重量%以下、特に好ましくは96重量%以下である。この下限を下回るとこれを用いて製造された電池の容量等の電池特性を十分に確保しにくく、上限を上回ると、電極としての機械的強度を確保することも、良好なサイクル寿命を得ることも困難となる。
導電材は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、通常、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。この下限を下回ると、良好なサイクル寿命を得にくく、上限を上回ると、体積当たりの電池容量が低下しやすい。
結着剤は、通常0.1重量%以上、好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であり、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。この下限を下回ると、電極としての機械的強度を確保しにくく、上限を上回ると電池容量や導電性等の電池特性を十分に確保しにくい。
<CO吸着剤、水分吸着剤>
本発明の封入体には、更に、CO吸着剤や水分吸着剤が封入されていても良い。
CO吸着剤としては、物理吸着作用によるものでも、化学吸着作用によるものでも良いが、特に、CaOが望ましい。CaOは化学反応による吸着剤であり、封入体中に存在する水分と炭酸とを同時に吸着することができる点で好ましい。CaOはその吸着反応を速めるために、粒径10μm以上100μm以下程度の微粉を使用するのが良い。反応生成物である炭酸カルシウムは溶解度が低く、リチウム遷移金属複合酸化物中に不純物として悪影響をおよぼすことはない。また、吸着剤としてはCaOを含み、炭酸との反応を利用して硬化するポルトランドセメントなども使用することもできる。吸着剤は粉体とのコンタミ防止のため、目の細かい織物、不織布、もしくは微細な孔の空いた樹脂からなる袋に入れて用いるのが良い。ここで微細な孔は孔径1μm以下が望ましい。HO、CO透過性樹脂からなる袋を用いても良い。
封入する吸着剤の量は特に制限されないが、例えば、CaOであればその粒径にもよるが、粒径10μm程度の微粉CaOであれば、封入体の封入容積10L当たり1g程度でよく、粒径100μm以上のCaOであれば、封入体の封入容積10L当たり2g程度入れるのが良い。通常CaOが1g以上であれば、十分な水及びCO吸着能が得られる。吸着剤の封入量が過度に多いと経済的でなく、廃棄時、水との接触で発熱し、危険も伴うため、封入体の封入容積10L当たり5g以下とすることが好ましい。
水分吸着剤としては、物理吸着作用によるものでも、化学吸着作用によるものでも良く、CO吸着剤を兼ねるCaOの他、シリカゲル(物理吸着)、モレキュラーシーブ(物理吸着)、活性炭(物理吸着)等を用いることができる。
CaOの封入量については上述の通りである。シリカゲル、モレキュラーシーブ、活性炭等の物理吸着作用を利用するものは、そのものの表面積、細孔径、含水量などにより、水分吸着量が変化するので、一概には言えないが、封入体の封入容積10L当たり0.1g以上10g以下程度封入するのが良い。この封入量が少ないと十分な水分吸着ができず、炭酸とリチウム遷移金属複合酸化物のLiとの反応を促進し、多すぎると不経済である。
これらの吸着剤の封入体内への封入位置等については、封入体の内部であればどこでも構わないが、特に封入体の内面に貼り付けるのが好ましい。樹脂製封入体に一体化して取り付けても良い。
[封入雰囲気]
次に、本発明の封入体の封入リチウム遷移金属複合酸化物について説明する。
本発明の封入体においては、(i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気中、或いは、(ii)10kPa以下の雰囲気下に、リチウム遷移金属複合酸化物が封入される。
<(i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気中に封入する場合>
この場合の封入ガス種としては、ヘリウム、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、中でも窒素、アルゴンが、経済上、また封入体構成素材からの透過性の低さという点で好ましい。また、上記不活性ガスと酸素を混合して用いても良く、この場合には、酸欠事故防止に効果的である。
封入ガス中のCO濃度の下限は特にないが、通常0.5ppm以上であり、この下限を下回ることは、封入ガスの精製上、経済的ではない。また、CO濃度の上限は通常30ppm以下、好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。この上限を上回るとCOがリチウム遷移金属複合酸化物表面のLiOHと反応して炭酸リチウムの抵抗膜を生成したり、リチウム遷移金属複合酸化物内部のLiを引き抜き容量低下を生じるという問題がある。
(i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気中にリチウム遷移金属複合酸化物を封入する場合、封入ガスのCO濃度が、本発明における規定範囲内であれば、封入ガス圧力は問わない。ただし、過度に高圧であると封入コスト、輸送コストが上昇するため常圧以下であることが好ましい。
<(ii)10kPa以下の雰囲気中に封入する場合>
10KPaの減圧下であれば、上記(i)の場合と同様にCOがリチウム遷移金属複合酸化物表面のLiOHと反応して炭酸リチウムの抵抗膜を生成したり、リチウム遷移金属複合酸化物内部のLiを引き抜き容量低下を生じるという問題を抑えることができる。また、封入体がどの程度の減圧状態にあるか、判別が容易であり、保管管理の点でも好ましい。
この場合の封入ガスは、(i)で挙げたものでも良いし、空気でも良い。
封入ガス圧力としては、下限が通常1Pa以上、好ましくは5Pa以上、更に好ましくは10Pa以上であり、上限が通常10kPa以下、好ましくは9kPa以下、更に好ましくは8kPa以下である。この下限を下回ると、常圧に戻したとき、封入体内部に加わる圧力のためリチウム遷移金属複合酸化物が部分的に破壊しやすく、上限を上回るとCO濃度が高くなり、Liとの反応による容量低下を引き起こしやすい。
[その他の好ましい封入条件]
本発明の封入体は、上記(i)又は(ii)の雰囲気中にリチウム遷移金属複合酸化物を封入することにより、本発明の効果を得るものであるが、更に次のような条件を採用することにより、より一層優れた効果を得ることができる。
<封入雰囲気の露点>
封入雰囲気の露点は、下限が通常−80℃以上で、上限が通常−30℃以下、好ましくは−40℃以下、更に好ましくは−50℃以下である。この上限を超えると水分を仲介としたLiとCOの反応を促進しやすく、下限を下回ると封入ガスの精製上、経済的でない。
<封入体の形態>
封入体の形態は、封入物と外気との遮断性が良好に保たれるものであれば良く、任意の形状のものを採用することができる。
封入体としては、袋、ボトル、箱などの容器が用いられるが、輸送形態としての実用性の面から、特に袋体が好適である。袋体であれば、適度に減圧を保つことにより型くずれの問題もなく、持ち運びも容易である。なお、不活性ガスを封入した状態でも、前述の如く、常圧より高い状態は封入コスト、輸送コストが上昇し、経済的でない。
封入体の材質としては、O、CO、HOを通しにくいものが好ましい。また、軽量かつ輸送に耐えうるだけの強度が必要である。
封入体のうち、ボトル等の容器としては、例えば、樹脂製容器、ガラス製容器、金属製密封缶などが使用できる。また、袋体の場合、強度とガスバリヤ性の高い素材であること、また、封入口を熱で融着することにより密封できるものが好ましく、これらを満たす層構造を有した樹脂が望ましい。特に、樹脂膜の間にアルミニウム薄膜を挟んだものが好ましく、例えばポリエステル、アルミニウム、ポリエチレンの3層構造素材、ナイロン、アルミニウム、ポリエチレンの3層構造素材などが好適に用いられる。
封入体の大きさ、封入物の容量と封入体の大きさのバランスについては、袋詰め封入体の場合、封入物容量は、袋体の容量に対し5割以上9割以下にすることが望ましい。袋体内に封入物を多く入れすぎると、封入口を閉じる際に封入物も巻き込み、空気の漏れ込みの原因となりやすい。少なすぎると封入効率、輸送効率が悪く、経済的でない。
[封入方法]
次に、本発明の封入体におけるリチウム遷移金属複合酸化物の封入方法を説明する。
<(i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気下にリチウム遷移金属複合酸化物を封入する場合>
(i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気下にリチウム遷移金属複合酸化物を封入するために、CO濃度、好ましくは更に露点を制御した状態で封入する方法は、特に限定されないが、例えば以下のような方法を採用することができる。
(1) 減圧ボックス中で、一定圧まで減圧した後、CO濃度(及び水分)が制御されたガスを導入し、封入する。
(2) CO濃度(及び水分)が制御されたガス環境下のグローブボックス中で封入する。
(3) CO(及び水分)を吸収するようなCO吸着剤(及び水分吸着剤)を、同一雰囲気中に封入する。
これらの方法は、2以上を併用することもできる。
上記封入方法において、減圧ボックスやグローブボックスなどを使って封入する方法は、常法によればよく、使用する装置も特に制限されない。封入時の減圧ボックスの到達減圧圧力も、CO濃度が規定範囲になる限りは制限されない。
この封入に際しては、封入ガス導入前に予備脱気処理を行うことが好ましい。これは、大気中にはCOが約330ppm含まれており、リチウム遷移金属複合酸化物の重量に対し微量ではあるが、最もその影響が大きく現れる表面において、COとの反応で生成した炭酸リチウムの層がまだらに数Å程度の厚さの薄膜を形成するおそれがあるからである。
封入前の予備脱気の程度については特に制限されないが、通常10kPa以下である。
封入時の雰囲気は、前述の封入体内雰囲気と同様であり、ガス種としては、アルゴンや窒素などの不活性ガスが好ましく、CO濃度は、前述の封入体内雰囲気と同様の理由から、下限として通常0.5ppm以上であり、上限として通常30ppm以下、好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。
露点については、下限として通常−80℃以上、上限として通常−50℃以下、好ましくは−55℃以下、更に好ましくは−60℃以下であることが好ましい。
封入ガス圧力については、CO濃度が規定範囲内であれば、特に問わない。封入ガス圧力は減圧にすることもでき、減圧下であれば、高価な不活性ガスの使用量が低減するので経済性の点で好ましい。
封入体の封止方法(口の閉じ方)には特に限定されないが、例えば、樹脂製の袋体であれば、熱融着を行うのが好ましい。この場合、皺がよらないように、接着面を整えてから、幅1cm程度に融着する。この融着代は、密封が取れていれば3mm程度でも構わないが、接着面の強度を取る意味で1cm程度あると良い。
封止の程度は気密が取れる程度であれば良く、その気密の程度は、封入体の封入雰囲気が維持できれば特に制限されない。
<(ii)10kPa以下の雰囲気にリチウム遷移金属複合酸化物を封入する場合>
(ii)10kPa以下の雰囲気にリチウム遷移金属複合酸化物を封入する場合、封入ガス圧力を、下限が通常1Pa以上、好ましくは5Pa以上、更に好ましくは10Pa以上であり、上限が通常10kPa以下、好ましくは9kPa以下、更に好ましくは8kPa以下の条件とすること以外は、前記(i)の場合と同様に行うことができる。
[正極の作製]
本発明の封入体に封入された非水電解質二次電池用リチウム遷移金属酸化物は正極活物質として正極の作製に好適に使用できる。
正極の作製方法としては、特に制限はないが、例えば、乾式法と湿式法が挙げられる。
乾式法の場合、リチウム遷移金属複合酸化物、結着剤及び導電材を含有する組成物(正極合剤)をフィルム状に成形して正極を製造する。
湿式法の場合、リチウム遷移金属複合酸化物、結着剤、及び導電材を含有する組成物(正極合剤)を溶媒に分散させてスラリーを調製する。本発明の封入体に封入されたリチウム遷移金属複合酸化物は、封入体から取り出した後、そのまま乾燥工程を経ないでこのスラリー化に使用することもできるが、必要に応じてスラリー化前に真空乾燥などを行っても良い。調整したスラリーを、集電体表面に塗布し乾燥させた後、一軸プレスやロールプレス等による圧密化処理を行うことにより、正極を製造することができる。
ここでスラリーの調製に用いる溶媒としては、エチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル及びアクリル酸メチル等のエステル系溶媒;ジエチルトリアミン及びN,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン系溶媒;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒;並びに水などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合せ及び比率で混合して用いても良い。
正極の集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が挙げられ、これらのうちアルミニウム、特にアルミニウム箔が好ましい。集電体の厚みは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上で、通常1000μm以下、好ましくは500μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
なお、結着剤、導電材及びそのリチウム遷移金属複合酸化物との混合割合は、その他の封入物として前述した通りである。
[非水電解質二次電池の作製]
上記の方法で作製した正極を用いて、非水電解質二次電池を好適に作製することができる。
非水電解質二次電池は、リチウムを吸蔵・放出可能な正極と、リチウムを吸蔵・放出可能な負極と、リチウム塩を電解塩とする非水電解質とを備える。更に、正極と負極との間に、非水電解質を保持するセパレータを備えていても良い。正極と負極との接触による短絡を効果的に防止するには、このようにセパレータを介在させるのが望ましい。
負極は通常、正極と同様に、負極集電体上に負極活物質層を形成して構成される。
負極集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。中でも金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、特に金属薄膜が、現在工業化製品に使用されていることから好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成しても良い。負極集電体として金属薄膜を使用する場合、その好適な厚さの範囲は、正極集電体について上述した範囲と同様である。
負極活物質層は、負極活物質を含んで構成される。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、その種類に特に制限はないが、通常は安全性の高さの面から、リチウムを吸蔵、放出できる炭素材料が用いられる。
炭素材料としては、その種類に特に制限はないが、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)や、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物が挙げられる。有機物の熱分解物としては、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、或いはこれらピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。中でも黒鉛が好ましく、特に好適には、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチに高温熱処理を施すことによって製造された、人造黒鉛、精製天然黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチを含む黒鉛材料等であって、種々の表面処理を施したものが主として使用される。これらの炭素材料は、それぞれ1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
負極活物質として黒鉛材料を用いる場合、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335nm以上、また、通常0.34nm以下、好ましくは0.337nm以下であるものが好ましい。
また、レーザー回折・散乱法により求めた黒鉛材料のメジアン径が、通常1μm以上、中でも3μm以上、更には5μm以上、特に7μm以上、また、通常100μm以下、中でも50μm以下、更には40μm以下、特に30μm以下であることが好ましい。
また、黒鉛材料のBET法比表面積は、通常0.5m/g以上、好ましくは0.7m/g以上、より好ましくは1.0m/g以上、更に好ましくは1.5m/g以上、また、通常25.0m/g以下、好ましくは20.0m/g以下、より好ましくは15.0m/g以下、更に好ましくは10.0m/g以下である。
なお、上述の各種の炭素材料の他に、リチウムの吸蔵及び放出が可能なその他の材料の負極活物質として用いることもできる。炭素材料以外の負極活物質の具体例としては、酸化錫や酸化ケイ素などの金属酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金などが挙げられる。
これらの炭素材料以外の材料は、それぞれ1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述の炭素材料と組み合わせて用いても良い。
負極活物質層は、通常は正極活物質層の場合と同様に、上述の負極活物質と、結着剤と、必要に応じて導電材及び増粘剤とを液体媒体でスラリー化したものを負極集電体に塗布し、乾燥することにより製造することができる。スラリーを形成する液体媒体や結着剤、導電材等としては、正極について上述したものと同様のものを使用することができる。
電解質としては、例えば公知の有機電解液、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質等を用いることができるが、中でも有機電解液が好ましい。有機電解液は、有機溶媒に溶質(電解質)を溶解させて構成される。
ここで、有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等を使用することができる。代表的なものを列挙すると、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられ、これらの単独若しくは2種類以上の混合溶媒が使用できる。
上述の有機溶媒には、電解塩を解離させるために、高誘電率溶媒を含めることが好ましい。ここで、高誘電率溶媒とは、25℃における比誘電率が20以上の化合物を意味する。高誘電率溶媒の中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、それらの水素原子をハロゲン等の他の元素又はアルキル基等で置換した化合物が、電解液中に含まれることが好ましい。高誘電率溶媒の電解液に占める割合は、好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは40重量%以上である。高誘電率溶媒の含有量が上記範囲よりも少ないと、所望の電池特性が得られない場合がある。
電解塩の種類も特に限定されず、従来公知の任意の溶質を使用することができる。具体例としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiB(C、LiCl、LiBr、CHSOLi、CFSOLi、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF、LiN(SOCF等のリチウム塩が挙げられる。これらの電解塩は任意の1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
リチウム塩等の電解塩は電解液中に、通常0.5mol/L以上、好ましくは0.75mol/L以上、通常1.5mol/L以下、好ましくは1.25mol/L以下となるように含有させる。この濃度が0.5mol/L未満でも1.5mol/Lを超えても、電気伝導度が低下し、電池特性に悪影響を与えることがある。
なお、有機電解液にはCO、NO、CO、SO等のガスやポリサルファイドS 2−など負極表面にリチウムイオンの効率良い充放電を可能にする良好な被膜を形成する添加剤を、任意の割合で添加しても良い。
高分子固体電解質を使用する場合にも、その種類は特に限定されず、固体電解質として公知の任意の結晶質・非晶質の無機物を用いることができる。結晶質の無機固体電解質としては、例えば、LiI、LiN、Li1+xTi2−x(PO(J=Al、Sc、Y、La)、Li0.5−2xRE0.5+xTiO(RE=La、Pr、Nd、Sm)等が挙げられる。また、非晶質の無機固体電解質としては、例えば、4.9LiI−34.1LiO−61B、33.3LiO−66.7SiO等の酸化物ガラス等が挙げられる。これらは任意の1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
電解質として前述の有機電解液を用いる場合には、電極同士の短絡を防止するために、正極と負極との間にセパレータが介装される。セパレータの材質や形状は特に制限されないが、使用する有機電解液に対して安定で、保液性に優れ、且つ、電極同士の短絡を確実に防止できるものが好ましい。好ましい例としては、各種の高分子材料からなる微多孔性のフィルム、シート、不織布等が挙げられる。高分子材料の具体例としては、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン高分子が用いられる。特に、セパレータの重要な因子である化学的及び電気化学的な安定性の観点からは、ポリオレフィン系高分子が好ましく、電池におけるセパレータの使用目的の一つである自己閉塞温度の点からは、ポリエチレンが特に望ましい。
ポリエチレンからなるセパレータを用いる場合、高温形状維持性の点から、超高分子ポリエチレンを用いることが好ましく、その分子量の下限は好ましくは50万以上、更に好ましくは100万以上、最も好ましくは150万以上である。他方、分子量の上限は、好ましくは500万以下、更に好ましくは400万以下、最も好ましくは300万以下である。分子量が大きすぎると流動性が低くなりすぎてしまい、加熱された時にセパレータの孔が閉塞しない場合があるからである。
非水電解質二次電池は、上述した正極と、負極と、電解質と、必要に応じて用いられるセパレータとを、適切な形状に組み立てることにより製造される。更に、必要に応じて外装ケース等の他の構成要素を用いることも可能である。
非水電解質二次電池の形状は特に制限されず、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。一般的に採用されている形状の例としては、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。また、電池を組み立てる方法も特に制限されず、目的とする電池の形状に合わせて、通常用いられている各種方法の中から適宜選択することができる。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例においてリチウム遷移金属複合酸化物を用いた非水電解質二次電池性能の評価は次のようにして行った。
[非水電解質二次電池性能の評価]
<正極の作製>
後述する方法で保存した又は保存前のリチウム遷移金属複合酸化物よりなる正極活物質と、アセチレンブラック、ポリテトラフルオロエチレンを75:20:5の重量比で混合しシート状にした。これを9mmφペレットに打ち抜き、アルミニウムのエキスパンドメタルを圧着した。正極合剤層(活物質層)の電極密度が2.4±0.1g/ccになるように加圧した。
<負極の作製>
厚さ0.5mmのLi箔を12mmφに打ち抜いて負極とした。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートの体積比3:7の混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1mol/Lとなるように溶解させた。
<電池の作製>
直径20mm、厚さ3.2mmのコインセル(CR2032)を使用し、正極缶の中に、非水電解液を浸漬させた正極、及びセパレータとして非水電解液を浸漬させた厚さ25μmの多孔性ポリエチレンフィルム2枚を順次挿入した後、正極と負極の短絡を防ぐために、リング状のポリプロピレン製ガスケットで押さえた。更に、ガスケット上にLi負極及び厚みを調整するためのステンレス製のスペーサーをのせ、最後に負極缶をかぶせて、封口し、電池を作製した。
<容量の測定>
作製した電池について、正極面積に対し0.2mA/cmの電流で上限4.2V−下限3.2Vの定電流充放電を実施し、充電容量及び放電容量を測定し、下記式により充放電効率を算出した。
Figure 2005276684
[実施例1]
5ccの密閉ガラス瓶に、BET法における比表面積3.1m/g、平均粒径0.7μmのリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi0.85Co0.15Al0.05)2gを、CO濃度10ppm以下のArドライボックス(露点−65℃)中で封入し、ガラス瓶は封をしたまま大気中に取り出し保管した(リチウム遷移金属複合酸化物の封入量は封入体の封入容量の20容積%程度)。封入前、封入後2週間、4週間、180日後にリチウム遷移金属複合酸化物中に含まれる炭酸イオン(CO 2−)濃度を各々イオンクロマト法を用いて分析し、結果を表1に示した。
[比較例1]
5ccの密閉ガラス瓶に実施例1と同様なリチウム遷移金属複合酸化物2gを入れ、大気中で、蓋を軽くあけたまま保管した。保管前、保管後2週間、4週間、180日後にリチウム遷移金属複合酸化物中に含まれる炭酸イオン(CO 2−)濃度をイオンクロマト法を用いて分析し、結果を表1に示した。
Figure 2005276684
[実施例2]
ガスバリア性の高いナイロン、アルミニウム、ポリエチレンの3層構造を有する袋体(容量10L)に、BET法における比表面積0.9m/g、平均粒径9μmのリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi0.85Co0.15Al0.05)10kgを13.3Pa(0.1Torr)まで減圧したのち、CO濃度10ppm以下のN(露点−70℃)を常圧になるまで入れ、そのまま封入した(リチウム遷移金属複合酸化物の封入量は封入体の封入容量の70容積%)。
封入前のリチウム遷移金属複合酸化物と封入180日後のリチウム遷移金属複合酸化物を使用して各々電池を作製し、電池容量を測定し、結果を表1に示した。
[実施例3]
ガスバリア性の高いナイロン、アルミニウム、ポリエチレンの3層構造を有する袋体(10L)にBET法における比表面積0.9m/g、平均粒径9μmのリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi0.85Co0.15Al0.05)10Kgを、13Paまで減圧し、そのまま封入した(リチウム遷移金属複合酸化物の封入量は封入体の封入容量の70容積%)。
封入前のリチウム遷移金属複合酸化物と封入180日後のリチウム遷移金属複合酸化物を使用して各々非水電解質二次電池電池を作製し、電池容量を測定し、結果を表2に示した。
[比較例2]
減圧せず、大気を封入した以外は実施例2と同じ方法でリチウム遷移金属複合酸化物を封入した。
封入前のリチウム遷移金属複合酸化物と封入180日後のリチウム遷移金属複合酸化物を使用して各々電池を作製して電池容量を測定し、結果を表2に示した。
Figure 2005276684
表1より明らかなように、大気中で保管した比較例1では炭酸イオン濃度が上昇しているのに対し、Arガス中に封入した実施例1では炭酸イオン濃度が上昇せず、LiCOの生成が抑制されていることから、電池動作中のガス発生の抑制が可能なリチウム遷移金属複合酸化物が得られていることがわかる。また、表2より明らかなようにN中に封入した実施例2や、封入前に減圧を行った実施例3では、保管後のリチウム遷移金属複合酸化物を用いた電池の電池特性の劣化は見られなかったが、大気を封入した比較例2では、保管後のリチウム遷移金属複合酸化物を用いた電池の充電容量及び放電容量が低下した。
本発明の封入体に封入されたリチウム遷移金属複合酸化物は、低抵抗、高容量で、ガス発生の少ない非水電解質二次電池用正極活物質として好適に使用でき、ノートパソコンや携帯電話などの携帯機器や車載用の高性能非水電解質二次電池用途に用いることができるので、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (6)

  1. (i)CO濃度が30ppm以下の雰囲気中、或いは、(ii)10kPa以下の雰囲気中に、リチウム遷移金属複合酸化物が封入されていることを特徴とする非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体。
  2. 該封入雰囲気が、露点−30℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体。
  3. 該リチウム遷移金属複合酸化物が、下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体。
    Li …(I)
    (式(I)中、aは0.45≦a≦1.2の数を表し、bは0.95≦b≦1.05の数を表し、cは0≦c≦0.1の数を表し、AはNi、Mn、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn、Nb、Sn、Ta及びVよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を表し、DはB、P、S、Bi、Si、Sb、Ca、Zr及びCよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を表す。)
  4. 該リチウム遷移金属複合酸化物が、比表面積0.1m/g以上、平均粒径0.3μm以上40μm以下の粉体であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体。
  5. 該リチウム遷移金属複合酸化物がリチウムニッケル系複合酸化物であり、該封入雰囲気がCO濃度30ppm以下、かつ、露点−30℃以下の不活性ガス雰囲気であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体。
  6. 該リチウム遷移金属複合酸化物と共にCO吸収剤が封入されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池活物質用リチウム遷移金属複合酸化物封入体。
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