JP2005273036A - 炭素繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数のグラファイト層が集束されて構成された炭素繊維であって、該炭素繊維の表面にグラファイト層のエッジ面が露出していることを特徴とする炭素繊維。
【選択図】図1
Description
本発明の他の目的は、上記の炭素繊維を製造する方法を提供することにある。
複数のグラファイト層が集束されて構成された炭素繊維であって、該炭素繊維の表面にグラファイト層のエッジ面が露出していることを特徴とする炭素繊維により達成される。
30 < L/D (1)
本発明の炭素繊維は、複数のグラファイト層が集束されて構成された炭素繊維であって、該炭素繊維の表面にグラファイト層のエッジ面が露出していることを特徴とする。
30 < L/D (1)
ここで、上記関係式を満足する場合には、高性能複合材料用フィラーとしての性能が更に向上する。より好ましくはL/Dが50以上である。
上記条件を満足する炭素繊維は、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体の混合物から製造される。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、安定化前駆体繊維を製造後、容易に除去される必要がある。このため、酸素または不活性ガス雰囲気下、350℃以上600℃未満の温度で5時間保持することで、初期重量の15wt%以下、より好ましくは10wt%以下、さらには5wt%以下にまで分解する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。このような熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が好ましく使用される。これらの中でもガス透過性が高く、容易に熱分解しうる熱可塑性樹脂として、例えば下記式(I)で表されるポリオレフィン系の熱可塑性樹脂やポリエチレンなどが好ましく使用される。
本発明に用いられる熱可塑性炭素前駆体は、酸素または酸素/沃素の混合ガス雰囲気下、200℃以上350℃未満で2〜30時間保持した後、次いで350℃以上500℃未満の温度で5時間保持することで、初期重量の80wt%以上が残存する熱可塑性炭素前駆体を用いるのが好ましい。上記条件で、残存量が初期重量の80%未満であると、熱可塑性炭素前駆体から充分な炭化率で炭素繊維を得ることができず、好ましくない。
本発明で使用する混合物は、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体から製造される。本発明で使用する混合物から、繊維径が2μm未満である炭素繊維を製造するためには、熱可塑性炭素前駆体の熱可塑性樹脂中への分散径が0.01〜50μmとなるのが好ましい。熱可塑性炭素前駆体の熱可塑性樹脂(I)中への分散径が0.01〜50μmの範囲を逸脱すると、高性能複合材料用としての炭素繊維を製造することが困難となることがある。熱可塑性炭素前駆体の分散径のより好ましい範囲は0.01〜30μmである。また、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体からなる混合物を、300℃で3分間保持した後、熱可塑性炭素前駆体の熱可塑性樹脂中への分散径が0.01〜50μmであることが好ましい。
本発明の炭素繊維は、上述の熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体とからなる混合物から製造することができる。即ち、本発明の炭素繊維は、(4−1)熱可塑性樹脂100重量部と熱可塑性炭素前駆体1〜150重量部からなる混合物から前駆体繊維を形成する工程、(4−2)前駆体繊維を安定化処理に付して前駆体繊維中の熱可塑性炭素前駆体を安定化して安定化前駆体繊維を形成する工程、(4−3)安定化前駆体繊維から熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成する工程、そして、(4−4)繊維状炭素前駆体を炭素化もしくは黒鉛化する工程を経ること製造される。各工程について、以下に詳細に説明する。
本発明では、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体の溶融混練で得た混合物から前駆体繊維を形成する。前駆体繊維を製造する方法としては、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体とからなる混合物を紡糸口金より溶融紡糸することにより得る方法などを例示することができる。溶融紡糸する際の紡糸温度としては150℃〜400℃、好ましくは180℃〜350℃である。紡糸引取り速度としては10m/分〜2000m/分である事が好ましい。
本発明の製造方法における第二の工程では、上記で作成した前駆体繊維を安定化処理に付して前駆体繊維中の熱可塑性炭素前駆体を安定化して安定化前駆体繊維を形成する。熱可塑性炭素前駆体の安定化は炭素化もしくは黒鉛化された炭素繊維を得るために必要な工程であり、これを実施せず次工程である熱可塑性樹脂の除去を行った場合、熱可塑性炭素前駆体が熱分解したり融着したりするなどの問題が生じる。
本発明の製造方法における第三の工程は安定化前駆体繊維に含まれる熱可塑性樹脂を熱分解で除去するものであり、具体的には安定化前駆体繊維中に含まれる熱可塑性樹脂を除去し、安定化された繊維状炭素前駆体のみを分離し、繊維状炭素前駆体を形成する。この工程では、繊維状炭素前駆体の熱分解をできるだけ抑え、かつ熱可塑性樹脂を分解除去し、繊維状炭素前駆体のみを分離する必要がある。
本発明の製造方法における第四の工程は、熱可塑性樹脂を初期重量の15wt%以下にまで除いた繊維状炭素前駆体を不活性ガス雰囲気中で炭素化もしくは黒鉛化し炭素繊維を製造するものである。本発明において繊維状炭素前駆体は不活性ガス雰囲気下での高温処理により炭素化もしくは黒鉛化し、所望の炭素繊維となる。得られる炭素繊維の繊維径としては0.001μm〜1μmであることが好ましい。
なお、本実施例中の、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体との混合物中の熱可塑性炭素前駆体の分散粒子径および安定化前駆体繊維、炭素繊維の繊維径は、超高分解能電解放出型走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製(UHR−FE−SEM S−5000))にて測定した。
更に、炭素繊維のラマン測定は、ラマン分光測定装置(Ramanor T−64000(Jobin Yvon社製)にて測定した。
なおR(I1355/I1580)値、Δ1580のラマンバンドパラメーターはスペクトルの形状を最小二乗法によってローレンツ関数でフィッティングすることにより求めた。
熱可塑性樹脂としてポリ−4−メチルペンテン−1(TPX:グレードRT−18[三井化学株式会社製])100重量部と熱可塑性炭素前駆体としてメソフェーズピッチAR−HP(三菱ガス化学株式会社製)11.1部を同方向二軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX−30、バレル温度290℃、窒素気流下)で溶融混練して混合物を作成した。この条件で得られた混合物の、熱可塑性炭素前駆体の熱可塑性樹脂中への分散径は0.05〜2μmであった。また、この混合物を300℃で10分間保持したが、熱可塑性炭素前駆体の凝集は認められず、分散径は0.05〜2μmであった。
気相法で製造された炭素繊維(昭和電工株式会社製「VGCF」)のラマン測定を行った。ラマン分光法から評価したR値は0.073、Δ1580値は21.6であった。走査型電子顕微鏡図(図2)から評価した炭素繊維表面は平滑であり、グラファイト層のエッジ面は繊維表面に露出していなかった。
Claims (9)
- 複数のグラファイト層が集束されて構成された炭素繊維であって、該炭素繊維の表面にグラファイト層のエッジ面が露出していることを特徴とする炭素繊維。
- ラマン分光法で評価したRが0.08〜0.2の範囲にあり、かつΔ1580が25cm−1以下である請求項1記載の炭素繊維。
[ここで、Rは1355cm−1付近のラマンバンドの強度(I1355)と1580cm−1付近のラマンバンドの強度(I1580)の比(I1355/I1580)を、Δ1580は1580cm−1付近のラマンバンドの半値全幅である。] - 繊維径(D)が0.001μm〜2μmの範囲にある請求項1記載の炭素繊維。
- 繊維長(L)と繊維径(D)との間に下記関係式(1)が成り立つ請求項1記載の炭素繊維。
30 < L/D (1) - (1)熱可塑性樹脂100重量部並びにピッチ、ポリアクリロニトリル、ポリカルボジイミド、ポリイミド、ポリベンゾアゾールおよびアラミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性炭素前駆体1〜150重量部からなる混合物から前駆体繊維を形成する工程、(2)前駆体繊維を酸素または酸素/沃素の混合ガス雰囲気下で安定化処理に付して安定化前駆体繊維を形成する工程、(3)安定化前駆体繊維から熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成する工程、(4)繊維状炭素前駆体を炭素化もしくは黒鉛化する工程を経る炭素繊維の製造方法。
- 熱可塑性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1またはその共重合体である請求項6記載の炭素繊維の製造方法。
- 熱可塑性樹脂がポリエチレンである請求項6記載の炭素繊維の製造方法。
- 熱可塑性炭素前駆体がメソフェーズピッチ、ポリアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
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