JP2005272626A - セルロース誘導体ドープ組成物及びこれを用いた光学フィルム - Google Patents

セルロース誘導体ドープ組成物及びこれを用いた光学フィルム Download PDF

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豊尚 大屋
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Abstract

【課題】 液晶表示素子に組み込んだ時の使用環境における表示むらを改良する、電子ディスプレイ用基板フィルムを提供すること。
【解決手段】 a)特定の置換度を満足するセルロース誘導体、b)加水分解と重縮合が可能な反応性金属化合物、c)反応性金属化合物の加水分解と重縮合のための金属キレート化合物、及び/又は、有機遷移金属化合物、並びに、d)溶媒を少なくとも含有することを特徴とするセルロース誘導体ドープ組成物。

Description

本発明はハロゲン化銀写真感光材料または、液晶画像表示装置用の偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、あるいは、視野角拡大フィルムなどに使用される液晶画像表示装置に有用なセルロース誘導体フィルムに関する。
セルロース誘導体は吸湿性を有する高分子であり、これから作成されたセルロース誘導体フィルムは、湿度環境の変化に伴って面内のレターデーション(Re)ならびに厚み方向のレターデーション(Rth)が変動する。セルロース誘導体フィルムを液晶表示素子に組み込んだ場合、レターデーションの変動が起こると表示むらが発生し、液晶画像表示素子として性能を悪化させる。なお、Re、Rthの定義については、例えば、非特許文献1に記載されている。それゆえ、湿度変化に伴うReとRthの変動は少ないことが望まれており、25℃10%Rhと25℃80%Rhとの環境変化に伴うReならびにRthの変動が、好ましくは、0nm以上90nm以下、さらに好ましくは、0nm以上60nm以下、特に好ましくは0nm以上40nm以下であると、表示むらを解消できる。
このような湿度変化に伴うRe、Rth変化は、湿度変化に伴い短時間(数時間)で発生し、かつ可逆的な変化であり、耐湿性(長時間(数週間以上)高湿に曝すことで発生する非可逆的な変化)とは異なる。
セルロースエステルフィルムを延伸し、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させ、液晶表示素子の位相差膜として使用し、視野角拡大を図ることが実施されている。近年、バーティカルアラインメント(VA)方式の液晶表示素子が開発され、より高いRe、Rthを持った位相差膜が要求されている。このような位相差膜に対応するため、アセチル基とプロピオニル基との混合エステルであるセルロース誘導体フィルムを溶液流延し製膜したフィルムを用いる技術が公開されている(特許文献1)。しかし、この特許に記載されているものについても、湿度変化に伴うRe、Rth変化は実用的に十分ではなく、これを改良できる技術が望まれている。
セルロース誘導体と、加水分解と重縮合が可能な反応性金属化合物の反応物とを含有する、いわゆる有機無機ハイブリッド技術によりフィルムを作成する技術が知られている(例えば、特許文献2、3および非特許文献2参照)。しかし、これらの公知技術により作成したフィルムは、全置換度の小さいセルロース誘導体を用いているために湿度変化に伴うRe、Rth変化を低減することができない、反応性金属化合物の加水分解を十分に進行させることが困難である、といった問題がある。
一方、より高度な架橋構造を有するセルロース誘導体の有機無機ハイブリッド技術として、セルロースをアセチル基と、エトキシシリル基を含有する置換基とで共に修飾した、セルロース誘導体ならびにこれを用いた有機無機ハイブリッドフィルムが知られている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、これらの公知のセルロース誘導体有機無機ハイブリッドフィルムは、その調整に強酸性の塩酸を用いているため、工業的な生産を行った際には、乾燥時に発生する塩酸による製膜装置の腐食や、酸によるセルロース誘導体の劣化が発生する場合があり、これらの問題を解決できる技術が望まれていた。
特開2001−188128号公報 特開2003−171500号公報 特開2003−238688号公報 発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行) Journal of polymer science, Vol.58,1263−1274(1995)
本発明が解決しようとする課題は、液晶表示素子に組み込んだ時の使用環境における表示むらを改良する、電子ディスプレイ用基板フィルムを提供することである。
本発明の上記課題は以下の手段によって解決された。
(1)a)下記の置換度を満足するセルロース誘導体、
2.5≦X+Y+Z≦3.0
0<X+Y<3.0
0<Z<3.0
(式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yはアセチル以外のアシル基の置換度の総和を表し、Zは下記式(1)で表される基の置換度を表す。)
−(L1m(L2)SiRn3-n (1)
(式中、L1はセルロースの水酸基由来の酸素原子と結合可能な2価の連結基を表し、L2は2価の連結基を表し、Rはアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環基を表し、Qはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、または、アシルオキシ基を表し、mは0又は1を表し、nは0、1又は2を表す。)
b)加水分解と重縮合が可能な反応性金属化合物、
c)反応性金属化合物の加水分解と重縮合のための金属キレート化合物、及び/又は、有機遷移金属化合物、並びに、
d)溶媒
を少なくとも含有することを特徴とするセルロース誘導体ドープ組成物。
以下に上記(1)の実施態様を列挙する。
(2)式(1)において、L1が−CO−、又は−CONH−であり、L2がアルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−C=O−、−NR1−(R1はアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環基を表す)、及び2価のヘテロ環基よりなる群から選択される基、又はこれらの組み合わせによる複合置換基を表す、(1)に記載のセルロース誘導体ドープ組成物。
(3)b)反応性金属化合物が、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンおよびゲルマニウムから選択される元素を含有する化合物である、(1)又は(2)に記載のセルロース誘導体ドープ組成物。
(4)b)反応性金属化合物を構成する反応性金属のうち、ケイ素のモル含率が50%以上100%以下である、(1)〜(3)いずれか1つに記載のセルロース誘導体ドープ組成物。
(5)c)反応性金属化合物の加水分解と重縮合のための金属キレート化合物が、アルミニウムキレート化合物及び/又はチタンキレート化合物である、(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロース誘導体ドープ組成物。
(6)(1)〜(5)いずれか1つに記載のセルロース誘導体ドープ組成物を流延・乾燥して得られた光学フィルム。
(7)面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)が、下記式を満足する(6)に記載の光学フィルム。
Rth≧Re
200≧Re≧0
500≧Rth≧20
(8)25℃10%Rhと25℃80%Rhとの環境変化に伴うReならびにRthの変動が、0nm以上40nm以下である、(6)又は(7)に記載の光学フィルム。
本発明により、液晶表示素子に組み込んだ時の使用環境における表示むらを改良する新規なセルロース誘導体フィルムが得られた。
a)セルロース誘導体
本発明に好ましく用いられるセルロース誘導体について詳細に記載する。本発明のセルロース誘導体は、以下の式を満足することを特徴とする。すなわち、XまたはYの少なくとも一方と、Zとを置換基として少なくとも有し、XとYとZとの合計置換度は2.5以上3.0以下である。
2.5≦X+Y+Z≦3.0
0<X+Y<3.0
0<Z<3.0
(式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yはアセチル基以外のアシル基の置換度の総和を表し、Zは一般式(1)で表される基の置換度を表す。)
セルロースを構成する、β−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロース誘導体は、これらの水酸基の一部または全部をエステル化した重合体(ポリマー)である。置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)の合計を意味する。すなわち、完全に水酸基が置換されたセルロース誘導体の置換度は3である。
本発明において、Xはアセチル基の置換基を表す。Xの好ましい範囲は0ないし2.95であり、更に好ましくは0.2ないし2.90であり、特に好ましくは0.4ないし2.90である。
本発明において、Yはアセチル基以外のアシル基を表す。Yは、脂肪族アシル基、芳香族アシル基のいずれであってもよい。
本発明のセルロース誘導体のアシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数2ないし22であることが好ましく、炭素数2ないし8であることが更に好ましく、炭素数2ないし4であることが特に好ましい。脂肪族アシル基の例としては、アルキルカルボニル、アルケニルカルボニルあるいはアルキニルカルボニルなどを挙げることができる。
アシル基が芳香族アシル基である場合、炭素数6ないし22であることが好ましく、炭素数6ないし18であることが更に好ましく、炭素数6ないし12であることが特に好ましい。これらのアシル基は、それぞれ更に置換基を有していてもよい。
好ましいアシル基Yの例としては、プロピオニル、ブチリル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブチリル、ブチリル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフタレンカルボニル、フタロイル、シンナモイル、t‐ブタノイルなどを挙げることが出来る。これらの中でも、更に好ましいものは、プロピオニル、ブチリル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどであり、特に好ましいものは、プロピオニル、ブチリルである。
Yの好ましい範囲は0ないし2.95であり、更に好ましくは0.2ないし2.90であり、特に好ましくは0.4ないし2.90である。
また、X+Yの好ましい範囲は1.0ないし2.95であり、更に好ましくは2.0ないし2.9であり、特に好ましくは2.4ないし2.90である。
本発明において、Zは式(1)で表される基の置換度を表す。
式(1)
−(L1m(L2)SiRn3-n
(式(1)中、L1はセルロースの水酸基由来の酸素原子と結合可能な2価の連結基を表し、L2は2価の連結基を表し、Rはアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環基を表し、Qはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、または、アシルオキシ基を表し、mは0又は1を表し、nは0、1又は2を表す。)
式(1)について更に詳しく説明する。
1はセルロースの水酸基由来の酸素原子と結合可能な2価の連結基を表し、L2は2価の連結基を表す。mは0又は1を表す。ここで、mが0であることは、セルロースの2,3または6位の水酸基由来の酸素原子と、L2で表される2価の基とが直接結合していることを意味する。L1およびL2は、結合形成が可能であればいかなる組合せでも良い。
1は、セルロースの2位、3位または6位の水酸基と結合可能な2価の基であり、好ましい例としては、−SO2−、−S=O−、−C=O−、−C=ONH−などの基を挙げることができるが、−C=O−、および、−O−C=ONH−から選択される基であることが更に好ましく、−O−C=ONH−であることが特に好ましい。
2は好ましくは原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20、更に好ましくは原子数1ないし30かつ、炭素数0ないし10、特に好ましくは原子数0ないし20かつ、炭素数0ないし6の2価の連結基を表す。ここで、L2の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。置換基としては、2価の連結基を表し、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−S=O−、−S(=O)2−、−C=O−、−NR1−(R1はアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環基を表す)、2価のヘテロ環基、および、これらの組み合わせによる複合置換基から選択される基であることが好ましい。
これらの中でも、L2の好ましい例としては、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、エチリデン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、メチルエチレン、エチルエチレンなど)、アルケニレン基(ビニレン、プロペニレンなど)、環式のアルキレン基(例えば、cis−1,4−シクロヘキシレン、trans−1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロペンチリデンなど)、アリーレン基(o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニレンなど)、−O−、−S−、−S=O−、−S(=O)2−、−C=O−、スルホンアミド、ウレイレン、チオウレイレン、−NR1−(R1は、例えば、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、フェニルなど)、2価のヘテロ環基(ピリジンジイル、フランジイル、チオフェンジイル、ピペリジンジイル、キノリンジイルなど)などを挙げることができる。これらの2価の基は互いに結合して二価の複合基を形成してもよい。複合置換基の例としては、−(CH22O−、−(CH22O(CH22−、−(CH22O(CH22O(CH2)−、−(CH22S(CH22−、−(CH222C(CH22−、−CH2NH−、−CH2O−、−CH2S−、−OCH2−、−SCH2−、−NHCH2−、−CH2NH(CH22−、−CH2NH(CH22O−、−C=ONH(CH22−、−C=OO(CH22O−などを挙げることができる。
Rはアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環基を表す。好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環基を表す。Rの好ましい例としては、アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2―エチルヘキシルなど)、シクロアルキル基(シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルなど)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、アルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル、アリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)などを挙げることができる。
Rはさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(単環性シクロアルキル基及び多環性シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(単環性シクロアルケニル基及び多環性シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、リン酸エステル基、シリル基が挙げられる。
Qはハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、好ましくは炭素数が1ないし20、更に好ましくは炭素数が1ないし15、特に好ましくは、炭素数が1ないし10であるアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ベンジルオキシ、2−フェニルエトキシ)、好ましくは炭素数が6ないし20、更に好ましくは炭素数が6ないし15、特に好ましくは、炭素数が6ないし10であるアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、4−クロロフェノキシ、2−クロロフェノキシ、2−メトキシフェノキシなど)、好ましくは炭素数が2ないし20、更に好ましくは炭素数が2ないし15、特に好ましくは、炭素数が2ないし10であるアルケニルオキシ基(例えば、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、2−メチルプロメニルオキシなど)、好ましくは炭素数が2ないし20、更に好ましくは炭素数が2ないし15、特に好ましくは、炭素数が2ないし10であるアルキニルオキシ基(例えば、アセチレンオキシなど)、好ましくは炭素数が1ないし20、更に好ましくは炭素数が1ないし15、特に好ましくは、炭素数が1ないし10であるヘテロ環オキシ基(例えば、ピリジンオキシ基など)、または、好ましくは炭素数が1ないし20、更に好ましくは炭素数が1ないし15、特に好ましくは、炭素数が1ないし10であるアシルオキシ基(例えば、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ベンゾイルオキシなど)を表す。
以下に、一般式(1)で表される基の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(C25O)3Si(CH23NHCO−
(CH3O)3Si(CH23NHCO−
(C25O)3Si(CH24NHCO−
(CH3O)3Si(CH24NHCO−
(C65O)3Si(CH23NHCO−
(C65O)3Si(CH24NHCO−
(C25O)3Si(CH25NHCO−
(C25O)3Si(CH22CO−
(C25O)3Si(CH23CO−
(CH3O)3Si(CH22CO−
(CH3O)3Si(CH23CO−
(CH3O)3Si(CH22
(C25O)3Si(CH22
(C65O)3Si(CH22
(CH3O)3Si(CH23
(C25O)3Si(CH23
(C65O)3Si(CH23
(CH3O)3Si(CH24
(C25O)3Si(CH24
(C65O)3Si(CH24
(C25O)2CH3Si(CH23NHCO−
(CH3O)2CH3i(CH23NHCO−
(C25O)2CH3Si(CH24NHCO−
(CH3O)2CH3Si(CH24NHCO−
(C65O)2CH3Si(CH23NHCO−
(C65O)2CH3Si(CH24NHCO−
(C25O)2CH3Si(CH25NHCO−
(C25O)2CH3Si(CH22CO−
(C25O)2CH3Si(CH23CO−
(CH3O)2CH3Si(CH22CO−
(CH3O)2CH3Si(CH23CO−
(CH3O)2CH3Si(CH22
(C25O)2CH3Si(CH22
(C65O)2CH3Si(CH22
(CH3O)2CH3Si(CH23
(CH3O)2CH3Si(CH24
(C25O)2CH3Si(CH23
(C65O)2CH3Si(CH23
(C25O)265Si(CH23NHCO−
(CH3O)265Si(CH23NHCO−
(C25O)265Si(CH24NHCO−
(CH3O)265Si(CH24NHCO−
(C65O)265Si(CH23NHCO−
(C65O)265Si(CH24NHCO−
(C25O)265Si(CH25NHCO−
(C25O)265Si(CH22CO−
(C25O)265Si(CH23CO−
(CH3O)265Si(CH22CO−
(CH3O)265Si(CH23CO−
(CH3O)265Si(CH22
(C25O)265Si(CH22
(C65O)265Si(CH22
(CH3O)265Si(CH23
(C25O)265Si(CH23
(C65O)265Si(CH23
(C25O)225Si(CH23NHCO−
(CH3O)225Si(CH23NHCO−
(C25O)225Si(CH24NHCO−
(CH3O)225Si(CH24NHCO−
(C65O)225Si(CH23NHCO−
(C65O)225Si(CH24NHCO−
(C25O)225Si(CH25NHCO−
(C25O)225Si(CH22CO−
(C25O)225Si(CH23CO−
(CH3O)225Si(CH22CO−
(CH3O)225Si(CH23CO−
(CH3O)225Si(CH22
(C25O)225Si(CH22
(C65O)225Si(CH22
(CH3O)225Si(CH23
(C25O)225Si(CH23
(C65O)225Si(CH23
(C25O)3Si(CH23SO2
(C25O)3Si(CH23SO−
(CH3O)3Si(CH22OCOCH2
(CH3O)3Si(CH23OCOCH2
(CH3O)3Si(CH24OCOCH2
(CH3O)3Si(1,4−C64)OCOCH2
(C25O)3Si(1,4−C64)NHCO−
(CH3O)3Si(1,4−C64)NHCO−
(C25O)3Si(1,4−C64)NHCO−
(CH3O)3Si(1,4−C64)NHCO−
(C65O)3Si(1,4−C64)NHCO−
(C65O)3Si(1,4−C64)NHCO−
(C25O)3Si(1,4−C64)NHCO−
(C25O)3Si(1,4−C64)CO−
(C25O)3Si(1,4−C64)CO−
(CH3O)3Si(1,4−C64)CO−
(CH3O)3Si(1,4−C64)CO−
(CH3O)3Si(1,4−C64)−
(C25O)3Si(1,4−C64)−
(C65O)3Si(1,4−C64)−
(CH3O)3Si(1,4−C64)−
(C25O)3Si(1,4−C64)−
(C65O)3Si(1,4−C64)−
(CH3O)3Si(1,2−C64)−
(C25O)3Si(1,3−C64)−
(C65O)3Si(1,4−C64)−
(C25O)225Si(CH25NHSO2
(C25O)225Si(CH25SO2NHCO−
一般式(1)で表される基の置換度Zの好ましい範囲は0.001ないし1.5であり、更に好ましくは0.05ないし1.0であり、特に好ましくは0.1ないし0.6である。
本発明では、置換度の総和すなわちX+Y+Zが、より好ましくは2.65以上2.96以下であり、特に好ましくは2.75以上2.95以下である。
本発明においては、セルロースの2位、3位および6位のそれぞれの水酸基の置換度は特に限定されない。
本発明においては、異なる2種類以上のセルロース誘導体を混合あるいは層を分けてフィルムを作成しても良い。
セルロースアシレートの合成方法は、右田伸彦他、木材化学180ないし190頁(共立出版、1968年)などに記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相アシル化法である。具体的には、綿花リンターや木材パルプ等のセルロース原料を適当量のカルボン酸(必要に応じて、水、硫酸などを含んでいても良い)で前処理した後、アシル化剤混液を投入してエステル化し、セルロース誘導体を合成する方法である。上記アシル化剤混液は、一般に溶媒としての酢酸またはカルボン酸、エステル化剤としてのカルボン酸無水物、および、プロトン酸(硫酸、過塩素酸、リン酸)またはルイス酸触媒(塩化亜鉛など)を含む。カルボン酸無水物は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが好ましい。触媒の量はセルロース100質量に対して0.5ないし25質量部であることが好ましい。
反応温度は目的とするセルロース誘導体の特性に応じて任意に選択することができるが、−30℃ないし70℃であることが好ましく、−20℃ないし60℃であることが好ましく、−10℃ないし50℃であることが特に好ましい。反応温度は反応の段階に応じて変化させても良い。反応温度の調節は、アシル化剤混液の温度や反応容器の温度制御で行うことができる。
反応完了の際の2位、3位および6位のアシル置換度の合計は、ほぼ3.00に近い高置換度であることが好ましく、これより低い置換度のセルロース誘導体は、後述のいわゆる熟成工程を経ることにより得ることができる。
アシル化反応の終了後に、残存している過剰のカルボン酸無水物の加水分解およびエステル化触媒の一部または全部の中和のために、水や中和剤(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛などの炭酸塩、カルボン酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、フタル酸塩など)、水酸化物または酸化物)またはその溶液を添加してもよい。
得られたセルロース誘導体は、少量の酸触媒(一般には、残存する硫酸や過塩素酸などの酸触媒)の存在下で−10℃ないし90℃に保つことにより、エステル結合の加水分解(ケン化)ならびにエーテル結合の解重合を行い、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロース誘導体に至るまで加水分解させること(いわゆる熟成)が好ましく行われる。所望のセルロース誘導体が得られた時点で、残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全または部分的に中和するか、あるいは中和することなく、水または適切な有機溶媒中にセルロース誘導体ドープ組成物を投入(あるいは、セルロース誘導体ドープ組成物中に、水または適切な有機溶媒を投入)してセルロース誘導体を沈殿させ、洗浄を行うことによりセルロース誘導体を得ることができる。
副生するセルロース硫酸エステルの分解や、残存する酸の中和を目的に、安定化剤(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛などの炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)の水溶液による処理を行うことが好ましい。
6位置換度の大きいセルロース誘導体の合成については、特開平11−5851、特開2002−212338号や特開2002−338601号などに記載がある。
セルロース誘導体の他の合成法としては、塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、t−ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)の存在下に、カルボン酸ハライドと反応させる方法、アシル化剤として混合酸無水物(カルボン酸・トリフルオロ酢酸混合無水物、カルボン酸・メタンスルホン酸混合無水物など)を用いる方法も用いることができ、特に後者の方法は、炭素数の多いアシル基や、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相アシル化法が困難なアシル基を導入する際には有効である。
セルロース混合アシレートを得る方法としては、アシル化剤として2種のカルボン酸無水物を混合または逐次添加により反応させる方法、2種のカルボン酸の混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を用いる方法、カルボン酸と別のカルボン酸の酸無水物(例えば、酢酸とプロピオン酸無水物)を原料として反応系内で混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を合成してセルロースと反応させる方法、置換度が3に満たないセルロース誘導体を一旦合成し、酸無水物や酸ハライドを用いて、残存する水酸基を更にアシル化する方法などを用いることができる。
セルロース誘導体から低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロース誘導体よりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロース誘導体は、通常の方法で合成したセルロース誘導体から低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロース誘導体を適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、硫酸触媒を用いて低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、アシル化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して0.5ないし25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、好ましい分子量分布を有する(分子量分布の均一な)セルロース誘導体を合成することができる。
本発明のこれらセルロース誘導体の、原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の7頁ないし12頁にも詳細に記載されている。
本発明のセルロース誘導体は、一般的な水酸基を修飾する既知のいかなる方法を用いて製造してもよいが、上述のセルロース誘導体の残存OH基を修飾して式(1)で表される基を導入する方法、または、あらかじめ式(1)で表される基をセルロースに導入した後に、アセチル基あるいはアセチル基以外のアシル基の少なくとも一方に相当する基を導入する方法が好ましく用いられる。
すなわち、セルロース誘導体の残存水酸基とイソシアナート化合物とを、ジブチルスズラウリレートのような金属触媒を用いて反応させる方法、酸ハライドと適切な塩基触媒を用いて反応させる方法、酸無水物と酸触媒または塩基触媒を用いて反応させる方法、エポキシまたはオキセタン化合物を酸触媒またはルイス酸触媒を用いて反応させる方法、ハロゲン化アルキル化合物と塩基存在下で反応させる方法、アルカリセルロースとハロゲン化アルキルあるいはエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのエポキシ化合物を反応させる方法、アルカリセルロースとα−ハロカルボニル化合物とを反応させる方法などを組み合わせて合成することが可能である。
これらのセルロースの誘導化に先立って、水酸化ナトリウム水溶液で処理する、いわゆるマーセル化と呼ばれる処理や、塩化リチウム/ジメチルアセトアミドなどのようなセルロース溶剤で溶解させ、その溶液から再生セルロースを得る処理、液体アンモニアによる前処理、温水、水蒸気あるいは酸による処理などの前処理を、反応の活性化などを目的に行ってもよい。
本発明で好ましく用いられるセルロース誘導体の重合度は、平均重合度150ないし700、好ましくは180ないし550、更に好ましくは200ないし400であり、特に好ましくは平均重合度200ないし350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105ないし120頁、1962年)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。更に特開平9−95538に詳細に記載されている。
本発明のセルロース誘導体フィルムの製造に使用されるセルロース誘導体は、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。一般に、セルロース誘導体は水を含有しており、その平衡含有率は2.5ないし5質量%であることが知られている。本発明においてセルロース誘導体の含水率を好ましい量に調整するためには、セルロース誘導体を乾燥することが好ましい。乾燥の方法については、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されない。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロース誘導体からなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フィルム製造の原料としては、セルロース誘導体が粒子状または粉末状であることが好ましい。セルロース誘導体が粒子状であるとき、使用する粒子の90質量%以上は、0.5ないし5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1ないし4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロース誘導体粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
b)加水分解と重縮合が可能な反応性金属化合物
次に、加水分解と重縮合が可能な反応性金属化合物(以下、単に「反応性金属化合物」ともいう。)について詳細に説明する。該加水分解縮合物は、本発明のセルロース誘導体フィルム中では、加水分解、縮合して得られる縮合物または部分縮合物がフィルム中で構造体を形成したり、結合剤として機能することで、フィルムの湿度膨張を抑制して、レターデーションの湿度依存性を低下させる働きをすると考えられる。セルロース誘導体にアシル化されていない水酸基が存在するときは、反応性金属化合物との間に結合を形成させてもよい。なお、本発明において、金属とは、「周期表の化学」岩波書店 、斎藤一夫著、71頁に記載の金属すなわち半金属性原子を含む元素を表す。
本発明に用いられる加水分解と重縮合が可能な反応性金属化合物としては、例えば金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属アシルオキシドなどが挙げられ、これらの金属は反応性の置換基の他に、炭化水素基(例えば、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロ環基など)を有していても良い。
好ましい金属種はケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンおよびゲルマニウムから選ばれるものであり、更に好ましくはケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンであり、特に好ましい金属種はケイ素である。
本発明のフィルムは複数の金属種を含んでいても良いが、ケイ素を含有する化合物のモル含率が50%以上100%以下であることが好ましく、70%以上100%以下であることが好ましく90%以上100%以下であることが特に好ましい。
反応性金属化合物は、セルロース誘導体100質量部に対して0.01〜50質量部添加することが好ましく、0.1〜20質量部添加することがより好ましい。
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物で、加水分解可能な置換基が該金属1原子当たり2個である化合物の例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン、ジフェニル児アセトキシシラン、バリウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、銅エトキシド、マグネシウムエトキシド、マンガンメトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、すずエトキシド、亜鉛メトキシエトキシド、などが挙げられる。
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり3個である化合物の例としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウム−s−ブトキシド、アルミニウム−t−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、ビスマス−t−ペントキシド、クロムイソプロポキシド、エルビウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド、鉄エトキシド、ランタンイソプロポキシド、ネオジウムメトキシエトキシド、プラセオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、イットリウムイソプロポキシド等が挙げられる。
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり4個である化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラプロピオニルオキシシラン、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−ブトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、テトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、テトラn−ブトキシゲルマン、セリウムt−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムn−ブトキシド、テルルエトキシド等が挙げられる。
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり5個である化合物の例としては、モリブデンエトキシド、ニオブエトキシド、ニオブn−ブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−ブトキシド、タングステンエトキシド、タングステンフェノキシド等が挙げられる。
本発明においては、加水分解可能な置換基が金属1原子当たり2個以上5個以下である化合物を用いることが好ましい。
本発明において反応性金属化合物としては、金属酸化物になった際に400nm以上の可視部に吸収を持たない金属化合物が好ましく、より好ましくはケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの化合物であり、またこれらの複核化合物でも良い。
複核化合物とは、一分子中に複数の金属原子を含む化合物であり、アルミニウム銅アルコキシド、アルミニウムチタンアルコキシド、アルミニウムイットリウムアルコキシド、アルミニウムジルコニウムアルコキシド、バリウムチタンアルコキシド、バリウムジルコニウムアルコキシド、インジウムスズアルコキシド、マグネシウムアルミニウムアルコキシド、マグネシウムチタンアルコキシド、マグネシウムジルコニウムアルコキシド、ストロンチウムチタンアルコキシド、ストロンチウムジルコニウムアルコキシド等が挙げられる。
本発明において反応性金属化合物はケイ素化合物であるであることが特に好ましい。
一般的には式(R)4Siで表される化合物が好ましく用いられる。式中、Rは炭化水素基(例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基で、これらの基は置換基を有していても良い)、アルコキシル基、オキシアシル基あるいはハロゲン原子を表す。1分子中の4個のRはこの定義の範疇であれば互いに同じであっても異なっていても良く、自由に組み合わせて選択することができるが、4個のRのうち少なくとも1つはアルコキシル基、オキシアシル基あるいはハロゲン原子を表す。好ましくは1分子中に同時に存在する炭化水素基は2つ以下である。
これらのケイ素化合物の中で、アルコキシシラン類が特に好ましく用いられる。例としては、Si(OR1x(R24-xで表されるアルコキシシランである。
かかるアルコキシシラン中のR1は、炭素数1ないし5のアルキル基または炭素数1ないし4のアシル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。
また、R2は、炭素数1ないし10の有機基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、n−デシル基、フェニル、ビニル基、アリル基等などの無置換の炭化水素基、γ−クロロプロピル基、CF3CH2−、CF3CH2CH2−、C37CH2CH2CH2−、H(CF24CH2OCH2CH2CH2−、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基などの置換炭化水素基が挙げられる。xは2ないし4の整数であることが好ましい。
これらのアルコキシシランの具体例を以下に示す。
x=4のもの(以下4官能オルガノシランと称す)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラアセトキシシランなどを挙げることができる。
x=3のもの(以下3官能オルガノシランと称す)としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH33、C25CH2CH2Si(OCH33、C25OCH2CH2CH2Si(OCH33、C37OCH2CH2CH2Si(OC253、(CF32CHOCH2CH2CH2Si(OCH33、C49CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33、H(CF24CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
x=2のもの(以下2官能オルガノシランと称す)としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、(CF3CH2CH22Si(OCH32、(C37OCH2CH2CH22Si(OCH32、[H(CF26CH2OCH2CH2CH22Si(OCH32、(C25CH2CH22Si(OCH32などを挙げる事ができる。
上記のオルガノシランは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明のセルロース誘導体を作製するためには、セルロース誘導体と無機高分子を共存させることが必須であり、いわゆる有機−無機ポリマーハイブリッドまたは有機−無機ポリマーコンポジットまたはゾル・ゲル法などと呼ばれる手法が用いてフィルムが作成される。
即ち、本発明のセルロース誘導体および加水分解重縮合可能な反応性金属化合物の溶液に、ゾル・ゲル法を適用し加水分解重縮合をおこなわせるため、必要に応じて水と触媒、その他の添加剤を加え、加水分解と縮合反応を実施する。
c)反応性金属化合物の加水分解と重縮合のための金属キレート化合物
本発明においては、反応性金属化合物の加水分解/部分縮合反応を促進する目的で、金属キレート化合物を用いる。好ましいものとしては下記(C1)の化合物であり、これらの中から好ましい化合物を必要量添加する。また、金属キレート化合物のほかに、有機遷移金属化合物などの種々の触媒化合物を併用してもよい。
(C1)金属キレート化合物
一般式R10OH(式中、R10は炭素数1ないし6のアルキル基を示す)、で表されるアルコールとR11COCH2COR12(式中、R11は炭素数1ないし6のアルキル基、R12は炭素数1ないし5のアルキル基または炭素数1ないし16のアルコキシ基を示す)で表されるジケトンを配位子とした、金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。
本発明の金属キレート化合物として特に好ましいものは中心金属にAl、Ti、Zrを有するものであり、一般式Zr(OR10p1(R11COCHCOR12p2、Ti(OR10q1(R11COCHCOR12q2およびAl(OR10r1(R11COCHCOR12r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記(a)成分の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のR10およびR11は、同一または異なってもよく炭素数1ないし6のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R12は、前記と同様の炭素数1ないし6のアルキル基のほか、炭素数1ないし16のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリル基、ステアリル基などである。また、金属キレート化合物中のp1ないしr2は4あるいは6座配位となる様に決定される整数を表す。
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタンなどのチタンキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
本発明においては、触媒としてアルミニウムキレート化合物またはチタンキレート化合物を用いることが更に好ましい。
(C2)有機遷移金属化合物
本発明においては、上記の金属キレート化合物のほかに、有機遷移金属化合物を併用してもよい。
好ましい有機金属遷移化合物としては特に制限はないが、中でもスズの化合物は安定性と活性が良く特に好ましい。これらの具体的化合物例としては、(C492Sn(OCOC11232、(C492Sn(OCOCH=CHCOOC492、(C8172Sn(OCOC11232、(C8172Sn(OCOCH=CHCOOC492、Sn(OCOCC8172などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C492Sn(SCH2COOC8172、(C492Sn(SCH2COOC8172、(C8172Sn(SCH2CH2COOC8172、(C8172Sn(SCH2COOC12252等のメルカプチド型やスルフィド型の有機スズ化合物、(C492SnO、(C8172SnO、または(C492SnO、(C8172SnOなどの有機スズオキサイドとエチルシリケートマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などを挙げることができる。
これらの(C1)および(C2)の群の中、2種以上を互いの促進効果が阻害されない範囲内で適宜選択して併用することができる。
また、本発明においては、上記の(C1)または(C2)の触媒に加えて、以下に示す(C3)ないし、(C5)の群で表される化合物を、その活性に悪影響が及ばない範囲で任意に併用することができる。
(C3)金属塩類
金属塩類としては有機酸のアルカリ金属塩(例えばナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、オクタン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ラウリル酸カリウムなど)が好ましく用いられる。
(C4)有機または無機の酸
無機酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸など、有機酸化合物としてはカルボン酸類(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、オクタン酸、マレイン酸、2−クロロプロピオン酸、シアノ酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸、安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、フタル酸など)、スルホン酸類(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸など)、リン酸・ホスホン酸類(リン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸など)、ルイス酸類(三フッ化ホウ素エーテラート、スカンジウムトリフレート、アルキルチタン酸、アルミン酸など)、ヘテロポリ酸(燐モリブデン酸、燐タングステン酸など)を挙げることができる。
(C5)有機または無機の塩基
無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンモニアなど、有機塩基化合物としてはアミン類(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、エタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、アニリン、ピリジンなど)、ホスフィン類(トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィンなど)、金属アルコキシド(ナトリウムメチラート、カリウムエチラートなど)を挙げることができる。
ゾル・ゲル触媒化合物の組成物中の割合は、原料である反応性金属化合物に対し、0.01ないし50質量%、好ましくは0.1ないし50質量%、さらに好ましくは0.5ないし10質量%である。
触媒は加水分解、縮合を行ったフィルムから除去しても、除去しなくても良く、酸触媒または塩基触媒を用いる場合には中和をしてもよい。揮発性の触媒を減圧下で除去してもよいし、適切な有機溶媒、水溶媒あるいは洗浄剤による洗浄等の手段により除去してもよい。
本発明においては、反応性金属化合物の加水分解・縮合反応用として水を添加する。水の使用量は、反応性金属化合物の加水分解可能な基あたり、通常、1.0ないし3.0当量、好ましくは1.1ないし2.0当量程度であるが、セルロース誘導体の飽和含水量として含まれる水分や環境中の水分を利用して、実質的に水を添加しなかったり、水の添加量を低下させることもできる。
ゾル・ゲル反応速度の調節や液安定性向上の観点でキレート配位能のある化合物を用いることも好ましい。好ましく用いられるものとしては一般式R10COCH2COR11で表されるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類であり、本発明の組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記促進液中に存在する金属キレート化合物(好ましくはジルコニウム、チタンおよび/またはアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物による反応性金属化合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる膜の硬化速度をコントロールするものと考えられる。R10およびR11は、前記金属キレート化合物を構成するR10およびR11と同義であるが、使用に際して同一構造である必要はない。
このβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。かかるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、金属キレート化合物1モルに対し2モル以上、好ましくは3ないし20モルであり、2モル未満では得られる組成物の保存安定性に劣るものとなる。
本発明において、特定の置換度を満足することを特徴とするセルロース誘導体と、加水分解と重縮合が可能な反応性金属化合物の加水分解縮合物を含有することを特徴とするセルロース誘導体フィルムが、湿度変化に対するレターデーション変化が少ない理由については、詳細は明らかではないが、以下のように考えることができる。
すなわち、セルロース誘導体フィルム中に反応性金属化合物の重合体または構造体を形成させることにより、吸湿によるフィルムの膨張が抑制され、結果として湿度変化に対するレターデーション変化が少なくなるものと考えられる。全置換度が2.5よりも低いセルロース誘導体を用いた場合には、セルロース誘導体自体の親水性が大きく、反応性金属化合物の重合体または構造体を形成させたとしても、その効果は十分には発現されないと考えられる。
d)溶媒
次に、本発明のセルロース誘導体が溶解される有機溶媒について記述する。
本発明においては、セルロース誘導体が溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは有機溶媒は特に限定されない。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤、ならびに非塩素系有機溶媒を挙げることができる。
本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3ないし12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3ないし12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3ないし12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3ないし12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
以上のセルロース誘導体に用いられる有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、本発明のセルロース誘導体の好ましい混合溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4ないし7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1ないし10のアルコールまたは炭化水素から選ばれ、より好ましくは炭素数1ないし8のアルコールである。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、ギ酸メチル、ギ酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合液であってもよい。
第3の溶媒であるアルコールの好ましくは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級ないし第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
以上の3種類の混合溶媒は、第1の溶媒が20ないし95質量%、第2の溶媒が2ないし60質量%さらに第3の溶媒が2ないし30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30ないし90質量%であり、第2の溶媒が3ないし50質量%、さらに第3のアルコールが3ないし25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30ないし90質量%であり、第2の溶媒が3ないし30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3ないし15質量%含まれることが好ましい。なお、第1の溶媒が混合液で第2の溶媒を用いない場合は、第1の溶媒が20ないし90質量%、第3の溶媒が5ないし30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30ないし86質量%であり、さらに第3の溶媒が7ないし25質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の12頁ないし16頁に詳細に記載されている。本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロピルアルコール(75/10/10/5/7、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロピルアルコール(80/10/5/8、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/15/5/6、質量部)、
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/1,3−ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブチルアルコール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、
・1,3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール (55/20/10/5/5/5、質量部)
などをあげることができる。
更に下記の方法で作製した溶媒をセルロース誘導体ドープ組成物に用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロース誘導体ドープ組成物を作製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロース誘導体ドープ組成物を作製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロース誘導体ドープ組成物を作製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加
本発明のセルロース誘導体ドープ組成物(以下、「ドープ」ともいう。)には、上記本技術の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本技術の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
また、本発明のセルロース誘導体の溶液を作製するに際しては、場合により主溶媒として塩素系有機溶媒も用いられ、その詳細を以下に記載する。本発明においては、セルロース誘導体が溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。
また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは少なくとも50質量%使用することが必要である。
本発明の併用される非塩素系有機溶媒について以下に記す。
すなわち、好ましい非塩素系有機溶媒としては、炭素原子数が3ないし12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3ないし12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3ないし12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3ないし12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
また、塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級ないし第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
以上のセルロース誘導体に用いられる主溶媒である塩素系有機溶媒と併用される非塩素系有機溶媒については、特に限定されないが、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサン、炭素原子数が4ないし7のケトン類またはアセト酢酸エステル、炭素数が1ないし10のアルコールまたは炭化水素から選ばれる。なお好ましい併用される非塩素系有機溶媒は、酢酸メチル、アセトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができる。本発明の好ましい主溶媒である塩素系有機溶媒の組合せとしては以下を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロピルアルコール(75/10/10/5/7、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロピルアルコール(80/10/5/8、質量部)、
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/1,3−ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブチルアルコール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (70/10/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、
などをあげることができる。
本発明のセルロース誘導体は、有機溶媒に10ないし30質量%溶解している溶液であることが好ましく、より好ましくは13ないし27質量%であり、特には15ないし25質量%溶解しているセルロース誘導体ドープ組成物であることが好ましい。これらの濃度にセルロース誘導体を実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9ないし14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロース誘導体ドープ組成物として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロース誘導体ドープ組成物としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロース誘導体ドープ組成物濃度になるように実施されれば特に問題ない。
本発明はセルロース誘導体ドープ組成物に加水分解重縮合可能な反応性金属化合物、ゾル・ゲル法を適用し加水分解重縮合を行わせるための水・触媒ならびに必要な添加剤を加え、加水分解と縮合反応を起こさせる。これらの素材の添加時期、添加量、添加順序は目的に応じて任意に選択でき、加水分解と縮合反応を流延前の組成物の状態で部分的に進行させてから流延を行い、後工程で反応を完結しても、実質的に組成物の状態では反応を進行させず、後工程で反応を完結しても良い。
(その他の添加剤)
本発明のセルロース誘導体フィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開平2001−151901号などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロース誘導体フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。
さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の16頁ないし22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
本発明のセルロース誘導体ドープ組成物(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロース誘導体ドープ組成物の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロース誘導体の有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の22頁ないし25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロース誘導体のドープ溶液は、溶液濃縮、ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明のセルロース誘導体ドープ組成物は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instruments社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃ないし−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率 G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1ないし400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上が好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10ないし200Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が100ないし100万が好ましい。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万ないし100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万ないし500万Paであることが好ましい。
上記のセルロース誘導体ドープ組成物を流延・乾燥することにより、本発明の光学フィルムを得ることができる。
本発明の光学フィルムは、フィルム面内のレターデーション(Re)と、厚み方向のレターデーション(Rth)が下記の範囲にあることが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムのReは0〜200nmが好ましく、25〜100nmがさらに好ましく、30〜80nmが最も好ましい。また、Rthは20nm〜500nmが好ましく、90nm〜350nmがさらに好ましく、110nm〜320nmが最も好ましい。
また、Rth≧Reであることが好ましい。
ここで、フィルムのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(I)および(II)において、nxは、フィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率である。
式(I)および(II)において、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率である。
式(II)において、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率である。
式(I)および(II)において、dは、単位をnmとするフィルムの厚さである。
[フィルムのレターデーションの湿度依存性]
本発明のセルロースアシレートフィルムの25℃10%RHにおけるReと25℃80%RHにおけるReの差は0nm以上40nm以下が好ましく、10nm以下がさらに好ましい。
また、25℃10%RHにおけるRthと25℃80%RHにおけるRthの差は0nm以上40nm以下が好ましく、15nm以下がさらに好ましい。
次に、本発明のセルロース誘導体ドープ組成物を用いた光学フィルム(以下、「セルロース誘導体フィルム」ともいう。)の製造方法について述べる。
本発明のセルロース誘導体ドープ組成物を基材上に押し出しあるいは流延して製膜、乾燥し、その後、必要に応じて、熱処理、紫外線処理、或いはプラズマ処理等を行うことにより、反応性金属化合物の加水分解と縮合の進んだセルロース誘導体フィルムを得ることが出来る。
本発明のセルロース誘導体フィルムを製造する方法及び設備は、従来セルロース誘導体フィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロース誘導体ドープ組成物)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(「ウェブ」とも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の25頁ないし30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50ないし50℃であることが好ましい。更には−30ないし40℃であることが好ましく、特には−20ないし30℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロース誘導体ドープ組成物は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロース誘導体から有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。また、その場合の湿度は0ないし70%RHが好ましく、さらには0ないし50%RHが好ましい。
また、本発明ではセルロース誘導体ドープ組成物を流延する流延部の支持体の温度が好ましくは−50ないし130℃であり、より好ましくは−30ないし25℃であり、更には−20ないし15℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
本発明においてその各層の内容と流延については、特に以下の構成が好ましい。すなわち、セルロース誘導体ドープ組成物が25℃において、少なくとも一種の液体又は固体の可塑剤をセルロース誘導体に対して0.1ないし20質量%含有しているセルロース誘導体ドープ組成物であること、及び/又は少なくとも一種の液体又は固体の紫外線吸収剤をセルロース誘導体に対して0.001ないし5質量%含有しているセルロース誘導体ドープ組成物であること、及び/又は少なくとも一種の固体でその平均粒径が5ないし3000nmである微粒子粉体をセルロース誘導体に対して0.001ないし5質量%含有しているセルロース誘導体ドープ組成物であること、及び/又は少なくとも一種のフッ素系界面活性剤をセルロース誘導体に対して0.001ないし2質量%含有しているセルロース誘導体ドープ組成物であること、及び/又は少なくとも一種の剥離剤をセルロース誘導体に対して0.0001ないし2質量%含有しているセルロース誘導体ドープ組成物であること、及び/又は少なくとも一種の劣化防止剤をセルロース誘導体に対して0.0001ないし2質量%含有しているセルロース誘導体ドープ組成物であること、及び/又は少なくとも一種の光学異方性コントロール剤をセルロース誘導体に対して0.1ないし15質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の赤外吸収剤をセルロース誘導体に対して0.1ないし5質量%含有しているセルロース誘導体ドープ組成物であること、を特徴とするセルロース誘導体ドープ組成物およびそれから作製されるセルロース誘導体フィルムであって、(b)一般式(1)で表される芳香族ビニル化合物を少なくとも1種含有するモノマーを重合させたホモポリマーまたはコポリマーとを含有することが好ましい。
流延工程では1種類のセルロース誘導体ドープ組成物を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロース誘導体ドープ組成物を同時及び又は逐次共流延しても良い。2層以上からなる流延工程を有する場合は、作製されるセルロース誘導体ドープ組成物及びセルロース誘導体フィルムにおいて、各層の塩素系溶媒の組成が同一であるか異なる組成のどちらか一方であること、各層の添加剤が一種類であるかあるいは2種類以上の混合物のどちらか一方であること、各層への添加剤の添加位置が同一層であるか異なる層のどちらか一方であること、添加剤の溶液中の濃度が各層とも同一濃度であるかあるいは異なる濃度のどちらか一方であること、各層の会合体分子量が同一であるかあるいは異なる会合体分子量のどちらか一方であること、各層の溶液の温度が同一であるか異なる温度のどちらか一方であること、また各層の塗布量が同一か異なる塗布量のどちらか一方であること、各層の粘度が同一であるか異なる粘度のどちらか一方であること、各層の乾燥後の膜厚が同一であるか異なる厚さのどちらか一方であること、さらに各層に存在する素材が同一状態あるいは分布であるか異なる状態あるいは分布であること、各層の物性が同一であるかあるいは異なる物性のどちらか一方であること、各層の物性が均一であるか異なる物性の分布のどちらか一方であること、を特徴とするセルロース誘導体ドープ組成物及びその溶液から作製されるセルロース誘導体フィルムであることも好ましい。ここで、物性とは発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の6頁ないし7頁に詳細に記載されている物性を含むものであり、例えばヘイズ、透過率、分光特性、レターデーションRe、同Rth、分子配向軸、軸ズレ、引裂強度、耐折強度、引張強度、巻き内外Rt差、キシミ、動摩擦、アルカリ加水分解、カール値、含水率、残留溶剤量、熱収縮率、高湿寸度評価、透湿度、ベースの平面性、寸法安定性、熱収縮開始温度、弾性率、及び輝点異物の測定などであり、さらにはベースの評価に用いられるインピーダンス、面状も含まれるものである。また、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の11頁に詳細に記載されているセルロース誘導体のイエローインデックス、透明度、熱物性(Tg、結晶化熱)なども挙げることが出来る。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、延伸してもよい。テンター乾燥装置としては、ピンテンター方式またはクリップテンター方式のいずれでもよく、液晶表示装置用のセルロースエステルフィルムとしては、テンター乾燥装置を使用して、0.5ないし5%程度横方向に延伸するのが好ましい。また、乾燥を行った後に、TgないしTgを上回る温度雰囲気下で延伸を行うこともできる。本発明の加水分解と縮合反応は、ドープを調整してから、フィルムの乾燥が終了するまでの間の任意の場所で、一段階または多段階で行えばよく、特にフィルムが乾燥工程にあるときにその熱を利用して縮合反応を実施させることが好ましい。また、フィルムを後加熱するアニーリングを行ってもよい。
セルロース誘導体フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロース誘導体フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3ないし20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の30頁ないし32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10ないし1000Kev下で20ないし500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30ないし500Kev下で20ないし300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロース誘導体フィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行う。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。
フィルムと乳剤層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロース誘導体フィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の32頁に記載されている。また本発明のセルロース誘導体フィルムの機能性層についても各種の機能層が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の32頁ないし45頁に詳細に記載されている。
本発明で作製されたセルロース誘導体の用途について簡単に述べる。本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロース誘導体フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロース誘導体フィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロース誘導体フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。本発明のセルロース誘導体フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロース誘導体フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90ないし360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300ないし1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。本発明のセルロース誘導体フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロース誘導体フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロース誘導体フィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。以上述べてきたこれらの詳細なセルロース誘導体フィルムの用途は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の45頁ないし59頁に詳細に記載されている。
以下に実施例により本発明のセルロース誘導体についての具体的な実施態様を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
セルロース誘導体の合成
60.4gのセルロースアセテート(アセチル置換度2.45、イーストマン・ケミカル製、398−30)を570gの蒸留精製したテトラヒドロフランに溶解し、窒素気流下で3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを5.36gと410mgのジブチルすずジラウリレートを添加し、60℃で6時間攪拌した。混合物を室温まで冷却した後にジエチルエーテルで再沈殿と洗浄を行い、室温で24時間真空乾燥させた。1H−NMR測定から、得られたセルロース誘導体は−OC=ONH(CH23Si(OC253基を置換度0.3で有していた。
(実施例2)
1.セルロース誘導体フィルムの製膜
[1]セルロースアシレートの調製
実施例1と同様にして、表1に記載のような置換基の種類、置換度の異なるセルロース誘導体を調製した。
[2]セルロースアシレートの溶解
(1)溶剤
下記溶剤から選択し、表1に記載した。
・非塩素系:酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール
(80/5/7/5/3、質量部)
・塩素系:ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール
(85/6/5/4、質量部)
(2)セルロース誘導体ドープ組成物
送風乾燥によって含水率を0.5%以下とした後、表1記載のセルロース誘導体を上記溶剤に対し25重量%となるようにセルロース誘導体ドープ組成物(ドープ)を調製した。
(3)添加剤
下記添加剤を上記ドープに添加した。
・可塑剤A:リン酸トリフェニル(3重量%)
・可塑剤B:リン酸ビフェニルジフェニル(1wt%)
・UV剤a:2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(0.5wt%)
・UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(0.2重量%)
・UV剤c:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(0.1重量%)
・クエン酸エチルエステル(モノエステルとジエステルが1:1混合、0.2重量%)
※上記添加量(wt%)は全てセルロース誘導体に対する割合である。
(4)膨潤・溶解
これらのセルロース誘導体、溶剤、添加剤を溶剤中に撹拌しながら投入した。投入が終わると撹拌を停止し、25℃で3時間膨潤させスラリーを作成した。これを再度撹拌し、完全にセルロース誘導体を溶解した。
(5)反応性金属化合物のオリゴマーと水、触媒の添加
上記セルロース誘導体ドープ組成物に、反応性金属化合物、水、触媒を添加し、40℃で4時間攪拌した。表1に記載の種類と量を示す。表中に記載の反応性金属化合物の添加量(重量%)は全てセルロース誘導体に対する割合である。また、表中に記載の水および触媒の添加量は、反応性金属化合物のアルコキシ基に対する当量である。
A)反応性金属化合物
A−1 テトラエトキシシラン
A−2 メチルトリメトキシシラン
A−3 フェニルトリメトキシシラン
B)触媒
B−1 エチルアセトアセトナトアルミニウムジイソプロポキシド
(6)ろ過・濃縮
この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
(3)未延伸フィルムの製膜
上述のドープを35℃に加温し、下記の方法で流延した。
ギーサーを通して、15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。使用したギーサーは、特開平11−314233号に記載の形態に類似するものを用いた。なお流延スピードは60m/分でその流延幅は250cmとした。
残留溶剤が100重量%で剥ぎ取った後、40℃から120℃の間を昇温(除昇温)した後、120℃で5分、更に145℃で20分乾燥してセルローストリアシレートフィルムを得た。得られたフィルムは両端を3cmトリミングした後、両端から2ないし10mmの部分に高さ100μmのナーリングを付与し、3000mロール状に巻き取った。
これらのフィルムについて25℃10%Rhと25℃80%Rhとの環境変化に伴うReならびにRthの変動を測定し、表1に記載した。
Re及びRthは、下記の方法で測定した。
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)製)を用い、面内レターデーションRe(0)を測定した。また面内の遅相軸をあおり軸として40°および−40°あおってレターデーションRe(40)およびRe(−40)を測った。膜厚および遅相軸方向の屈折率nxをパラメータとし、これらの測定値Re(0)、Re(40)、Re(−40)にフィッティングするように進相軸方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを計算で求め、Rthレターデーション値を決定した。測定波長は590nmとした。
Figure 2005272626
本発明の範囲外である、置換度が2.5未満のセルロース誘導体から作成された試料番号1および2のフィルム、置換度が2.5以上であっても本発明の反応性金属化合物と組み合わせない試料番号3のフィルム、ならびに、反応性金属化合物と組み合わせていても、式(1)で表されるの置換基を含まない試料番号4のフィルムは、いずれも、湿度に対するレターデーション変化がRe、Rthとも大きく、良好な光学フィルムを得ることはできない。
これに対し、本発明の置換様式のセルロース誘導体と、本発明の反応性金属化合物と組み合わせて作成した本発明のフィルムは、本発明は良好な特性を示した。
(実施例2)
製膜中の未乾燥状態(剥ぎ取り後の除昇温終了直後)で20%MD延伸、50%TD延伸した。延伸を行った後に、乾燥を行った延伸フィルムを作成し、実施例1と同様に評価を行ったところ、本発明のフィルムは良好な特性を示した。
(実施例3.偏光板の作成と特性評価)
(1)セルロース誘導体フィルムの鹸化
実施例1のセルロース誘導体フィルムを下記の方法で鹸化を行い、表2に記載した。
イソプロピルアルコール80質量部に水20質量部を加え、これに水酸化カリウムを1.5規定となるように溶解し、これを60℃に調温したものを鹸化液として用いた。
これを60℃のセルロース誘導体フィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化した。
この後、50℃の温水をスプレーを用い、10l/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。
(2)偏光層の作成
特開2001−141926の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光層を調製した。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光層と、上記鹸化処理したセルロース誘導体フィルムのうちから2枚選び、これらで上記偏光層を挟んだ後、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロース誘導体フィルムの長手方向が90度となるように張り合わせた。このうちセルロース誘導体フィルムを特開2000−154261号公報の図2ないし9に記載の20インチVA型液晶表示装置液晶表示装置に25℃60%rh下で取り付けた後、これを25℃10%rhの中に持ち込み、目視で色調変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)で評価し、表示むらの発生している領域を目視で評価し、それが発生している割合(%)を表2に記載した。本発明を実施したものは、良好な性能が得られた。
特開2002−86554の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が斜め45度となるように延伸した偏光板についても同様に本発明のセルロース誘導体フィルムを用い作成したが、上記同様良好な結果が得られた。
Figure 2005272626
(実施例4.光学補償フィルムの作成と評価)
特開平11−316378号の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の鹸化済みの延伸セルロース誘導体フィルムを使用し、これを、特開2002−62431の実施例9に記載のベンド配向液晶セルに25℃60%rh下で取り付けた後、これを25℃10%rhの中に持ち込み、コントラストの変化を目視評価したところ、本発明を実施したものは良好な性能が得られた。
さらに、本発明のセルロース誘導体フィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い本発明の延伸、未延伸セルロース誘導体フィルムを用いて低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能が得られた。

Claims (8)

  1. a)下記の置換度を満足するセルロース誘導体、
    2.5≦X+Y+Z≦3.0
    0<X+Y<3.0
    0<Z<3.0
    (式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yはアセチル基以外のアシル基の置換度の総和を表し、Zは下記式(1)で表される基の置換度を表す。)
    −(L1m(L2)SiR3-n (1)
    (式中、L1はセルロースの水酸基由来の酸素原子と結合可能な2価の連結基を表し、L2は2価の連結基を表し、Rはアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環基を表し、Qはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、または、アシルオキシ基を表し、mは0又は1を表し、nは0、1又は2を表す。)
    b)加水分解と重縮合が可能な反応性金属化合物、
    c)反応性金属化合物の加水分解と重縮合のための金属キレート化合物、及び/又は、有機遷移金属化合物、並びに、
    d)溶媒
    を少なくとも含有することを特徴とするセルロース誘導体ドープ組成物。
  2. 式(1)において、L1が−C=O−、又は−C=ONH−であり、L2がアルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR1−(R1はアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環基を表す)、及び2価のヘテロ環基、よりなる群から選択される基、又はこれらの組み合わせによる複合置換基を表す、請求項1に記載のセルロース誘導体ドープ組成物。
  3. b)反応性金属化合物が、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンおよびゲルマニウムから選択される元素を含有する化合物である、請求項1又は2に記載のセルロース誘導体ドープ組成物。
  4. b)反応性金属化合物を構成する反応性金属のうち、ケイ素のモル含率が50%以上100%以下である、請求項1〜3いずれか1つに記載のセルロース誘導体ドープ組成物。
  5. c)反応性金属化合物の加水分解と重縮合のための金属キレート化合物が、アルミニウムキレート化合物及び/又はチタンキレート化合物である、請求項1〜4いずれか1つに記載のセルロース誘導体ドープ組成物。
  6. 請求項1〜5いずれか1つに記載のセルロース誘導体ドープ組成物を流延・乾燥して得られた光学フィルム。
  7. 面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)が、下記式を満足する請求項6に記載の光学フィルム。
    Rth≧Re
    200≧Re≧0
    500≧Rth≧20
  8. 25℃10%Rhと25℃80%Rhとの環境変化に伴うReならびにRthの変動が、0nm以上40nm以下である、請求項6又は7に記載の光学フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011227508A (ja) * 2011-06-06 2011-11-10 Fujifilm Corp 透明保護フィルム、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置
JP5540368B2 (ja) * 2006-05-09 2014-07-02 国立大学法人名古屋大学 光学異性体分離用充填剤

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