JP2005268684A - 焼結磁石スラッジの再利用方法、r−tm−b系永久磁石の製造方法及び磁石製造システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 研削により生成されるスラッジを磁石製造用原料として用いることにより、スラッジを有効に再利用するとともに、低コストで永久磁石を製造する。
【解決手段】 焼結磁石を研削加工して生成されたスラッジを含むスラリを回収するステップと、スラッジをスラリに基づく湿式の状態で磁場中成形して成形体を得るステップと、を備える。焼結磁石がR−TM−B系焼結磁石(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)の場合、スラッジよりもRの量がリッチなRリッチ合金を成形体中に溶浸させることにより焼結磁石を得ることができる。また、スラッジと、スラッジよりもRの量がリッチなRリッチ合金粉末との混合物を磁場中成形し、得られた成形体を焼結することにより焼結磁石を得ることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、少ない処理工程であってもスラッジを有効に再利用することのできる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような方法で得られた磁石粉末を用いて永久磁石を得る方法を提供することを目的とする。
通常、数μmから数十μmの大きさの粒子からなるスラッジと研削液と共に、回収タンクに相当の時間貯留される。R−TM−B系焼結磁石のような希土類化合物は活性であり、特にその化合物表面積が大きいと酸素と反応しやすい。スラッジは加工によって新生面が露出した粒子で構成されており、その酸素との反応は早く、防錆剤を混合した研削液といえども、長時間浸漬状態であれば酸化が進行し粒子の磁気特性は低下する。
本発明は以上の知見に基づくものであり、焼結磁石を研削加工して生成されたスラッジを含むスラリを回収するステップと、このスラッジをスラリに基づく湿式の状態で磁場中成形して成形体を得るステップと、を備えることを特徴とする焼結磁石スラッジの再利用方法である。
本発明は、以上のようにして得られた焼結体を粉砕して粉砕粉末を得るステップと、粉砕粉末と結合材とを含むコンパウンドを作製するステップと、コンパウンドを所定形状に成形するステップとを少なくとも備えることにより、ボンド磁石を作製することもできる。
また、当該R−TM−B系合金粉末と、所定組成の合金粉末との混合物を磁場中で成形して成形体を作製するステップと、この成形体を焼結するステップとを備えることを特徴としている。この場合、所定組成の合金粉末を、R−TM−B系合金粉末よりもRの量がリッチなものとすることができる。ここで、R−TM−B系合金粉末は、研削加工により生成されたものとすることができる。
本発明の焼結磁石スラッジの再利用方法は、スラッジが研削液と共存したスラリのまま、つまり湿式状態で磁場中成形して成形体を作製し、この成形体を用いて永久磁石を製造する。
ここで、スラッジは、研削加工時及び研削加工後のスラリの状態において酸化されるため、R−TM−B系焼結磁石の場合、磁石の結晶粒界に存在すべき所謂Rリッチ相の量が不足した状態となる。周知のように、R−TM−B系焼結磁石の保磁力は、結晶粒界に存在するRリッチ相の存在に起因している。したがって、スラッジのみでは高い保磁力を得ることができなくなることがある。そこで、本発明では、スラッジに対してRリッチ合金を補填することが、高い保磁力を得る上で望ましい。
Rリッチ合金を補填する形態に基づいて、磁場中成形による成形体を用いて永久磁石を製造する方法は、少なくとも2つの形態を含む。1つは磁場中成形による成形体を得た後にRリッチ合金を溶浸する方法(以下、溶浸法という)であり、他の1つはスラッジにRリッチ合金粉末を添加、混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を磁場中成形に供する方法(以下、混合法という)である。以下、R−TM−B系焼結磁石のスラッジを対象として、溶浸法、混合法の順にその内容を説明する。
成形時に印加する磁界は、直流磁界であってもパルス磁界であってもよく、これらを併用してもよい。また、圧力印加方向と磁界印加方向とがほぼ直交するいわゆる横磁場成形法にも、圧力印加方向と磁界印加方向とがほぼ一致する、いわゆる縦磁場成形法にも本発明は適用することができる。
以上の磁場中成形により得られた成形体は、5%以下程度の含水率となるが、必要に応じて乾燥を行うことができる。
溶浸用のRリッチ合金とは、Rを含みR2T14BよりもRがリッチな合金を言う。なお、R2T14Bは、RがNd、TがFeのとき、26.7重量%Nd−72.3重量%Fe−1.0重量%Bとなる。したがって、溶浸用合金のR含有量は、望ましくは、40〜99重量%、より望ましくは60〜90重量%である。Rが少なすぎると融点を低くすることが難しくなり、また、磁石の保磁力向上効果も不十分となる。Rが多すぎるか、あるいはR単体であっても、やはり融点が高くなってしまう。なお、残部は実質的に上記TMであることが好ましい。ただし、Mの一部に替えて、B、Si、Cやその他の元素の少なくとも1種を添加してもよい。
溶浸用合金の形態は、バルク状であってもよく、粉末状であってもよいが、溶浸用合金はR含有量が多く酸化されやすいため、好ましくはバルク状のものまたは粗粉を用いる。
溶浸用合金の加熱手段は特に限定されず、電気炉や高周波加熱炉等のいずれを用いてもよいが、成形体も同時に加熱できる手段、例えば、電気炉を用いることが好ましい。成形体を溶浸用合金と同等の温度まで加熱することにより成形体へ均一な溶浸ができ、焼結磁石となる。
成形体上に溶浸用合金を載置する方法を用いる場合、少なくとも成形体中の空隙を埋めるために必要な量の溶浸用合金を用いればよいが、実用的にはやや過剰の量を用いる。なお、成形体の空隙率は、成形体用合金の組成と成形体密度とから算出することができる。
また、溶浸の前後で成形体の寸法はほとんど変化しないため、溶浸後に寸法調整のための研削加工を行なう必要がない。また、磁界中成形された成形体を用いた場合でも、異方性付与に起因する収縮率差がほとんど生じないので、磁石のクラックや割れを防ぐことができる。
混合法においては、湿式状態にあるスラッジにRリッチ合金粉末を添加する。Rリッチ合金の組成は上述した溶浸用合金と同様とすればよく、またその粒径は10〜1000μm 、望ましくは50〜500μmの平均粒径とする。平均粒径が小さすぎると、粉末中の酸素量が多くなるためである。一方、平均粒径が大きすぎると、スラッジとの混合が十分ではなく、磁石体中にRリッチ相が偏析状態になるからである。
Rリッチ合金粉末の添加量は、Rリッチ合金粉末の組成あるいはスラッジを構成する合金の組成によって変動するが、スラッジとの混合物において5〜40wt%、望ましくは10〜30wt%の範囲とする。添加量が少なすぎると保磁力発生のために必要なRリッチ相の量を確保することができなくなり、添加量が多すぎると主相の量が相対的に不足することにより、残留磁束密度、最大エネルギ積が低下してしまう。
ボンド磁石を製造する場合、バルク体を粉砕して得られた磁石粉末と結合材とからなるコンパウンドを作製する。結合材としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又はゴム(エラストマ)を用いることができる。コンパウンドの成形としては、圧縮成形、射出成形、押出成形、圧延を用いることができる。一般的に、熱硬化性樹脂を用いる場合は、室温下でコンパウンドを圧縮成形する。また、熱可塑性樹脂を用いる場合は、加熱下で射出又は押し出し成形する。
図1は磁石製造システムの構成を示すブロック図である。この磁石製造システム10は、ストリップ・キャスト、その他の鋳造方法で得られた新たな原料合金を用いて焼結磁石を製造することができる。さらにこの磁石製造システム10は、新たな原料合金を用いて焼結磁石(第1の磁石)を製造する過程の加工、特に研削加工で生成するスラッジを原料粉末として永久磁石(第2の磁石)を製造することができる。
粗粉砕はまた、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等の粉砕機を用い、不活性ガス雰囲気中にて行なうこともできる。
粗粉砕後、微粉砕に移る。微粉砕では、通常、気流式粉砕機を用いて平均粒径1〜10μm程度まで処理される。なお、成形時の潤滑及び配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等を微粉砕時に添加することができる。
磁場中成形は、加圧方向と磁場印加方向とがほぼ直交するいわゆる横磁場成形法、加圧方向と磁場印加方向とがほぼ一致するいわゆる縦磁場成形法の両者を用いることができる。
以上のようにして得られたNd−Fe−B系焼結磁石の磁気特性は、残留磁束密度(Br)が13.7kG、保磁力(Hcj)が16kOeであった。
所望の寸法まで約2時間の加工を行い、加工の際に生じたスラッジを回収タンクに収容した。スラッジを研削液に浸漬状態で回収タンクにて保管し、加工終了後スラッジを研削液と一緒に回収タンクから取り出した。取り出したスラッジをろ紙によりろ過することにより、研削液とスラッジとを分離した。このときのスラッジの含水率は20%程度であった。
成形体の含水率は3%程度である。さらに、成形体を金属製バットに移し、Arガス気流が流れている温度28℃のグローブボックス中で12時間保持することにより、水分を蒸発させた。
所望の寸法まで約2時間の加工を行い、加工の際に生じたスラッジを回収タンクに収容した。スラッジを研削液に浸漬状態で回収タンクにて保管し、加工終了後スラッジを研削液と一緒に回収タンクから取り出した。取り出したスラッジをろ紙によりろ過することにより、研削液とスラッジとを分離した。なお、ろ過後のスラッジの含水率は20%程度であった。
以上のようにして得られたスラッジとRリッチ合金粉末との混合物を磁場中成形した。磁場中成形は、12mm×10mmのキャビティを有する金型を用い、印加磁場を12kOe、成形圧力を12ton/cm2の条件とした。
得られたNd−Fe−B系焼結磁石の寸法、重量を測定するとともに、密度(ρ)を測定した。また、B−Hトレーサを用いて磁気特性を測定した。その結果を表2に示す。なお、スラッジの状態における保磁力(Hcj)を測定したところ、3000Oeであった。表2に示すように、スラッジとRリッチ合金粉末の混合成形体を焼結することにより、保磁力(Hcj)が向上することがわかる。
得られたボンド磁石の磁気特性を、B−Hトレーサを用いて測定した。その結果を表2に示す。
Claims (10)
- 焼結磁石を研削加工して生成されたスラッジを含むスラリを回収するステップと、
前記スラッジを前記スラリに基づく湿式の状態で磁場中成形して成形体を得るステップとを備えることを特徴とする焼結磁石スラッジの再利用方法。 - 前記焼結磁石はR−TM−B系焼結磁石(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)であり、
前記スラッジよりもRの量がリッチなRリッチ合金を前記成形体中に溶浸して焼結体を得るステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の焼結磁石スラッジの再利用方法。 - 前記焼結磁石はR−TM−B系焼結磁石(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)であり、
前記スラッジよりもRの量がリッチなRリッチ合金粉末を前記スラッジに添加した後に磁場中成形して前記成形体を得た後に、
前記成形体を焼結して焼結体を得るステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の焼結磁石スラッジの再利用方法。 - 前記焼結体を粉砕して粉砕粉末を得るステップと、
前記粉砕粉末と結合材とを含むコンパウンドを作製するステップと、
前記コンパウンドを所定形状に成形するステップとを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の焼結磁石スラッジの再利用方法。 - R−TM−B系焼結磁石(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)の製造過程で生成されたR−TM−B系合金粉末から構成される成形体を作製するステップと、
前記成形体に存在する空隙に所定組成の合金を充填するステップとを備えることを特徴とするR−TM−B系永久磁石の製造方法。 - 前記所定組成の合金は、前記R−TM−B系合金粉末よりもRの量がリッチなRリッチ合金とし、かつ溶融状態で前記成形体に存在する空隙に充填されることを特徴とする請求項5に記載のR−TM−B系永久磁石の製造方法。
- R−TM−B系焼結磁石(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TMはFe、又はFe及びCo)の製造過程で生成されたR−TM−B系合金粉末と、所定組成の合金粉末との混合物を磁場中で成形して成形体を作製するステップと、
前記成形体を焼結するステップとを備えることを特徴とするR−TM−B系永久磁石の製造方法。 - 前記所定組成の合金粉末は、前記R−TM−B系合金粉末よりもRの量がリッチであることを特徴とする請求項7に記載のR−TM−B系永久磁石の製造方法。
- 前記R−TM−B系合金粉末は、研削加工により生成されたものであることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のR−TM−B系永久磁石の製造方法。
- 焼結磁石を所定の寸法及び/又は形状に研削加工する加工部と、
前記加工部から排出される研削液とスラッジを含むスラリを磁場中成形する湿式成形部と、
前記湿式成形部で得られた成形体を用いて磁石を作製する磁石作製部とを備えることを特徴とする磁石製造システム。
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