JP2005268152A - 質量分析用データ処理装置および方法 - Google Patents

質量分析用データ処理装置および方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ADC方式の飛行時間型質量分析用データ収集において、小振幅な信号を除去することなくA/D変換器からのサンプリングデータを圧縮し、測定時間を短縮させる技術を提供する。
【解決手段】 質量分析装置におけるデータ収集回路51は、1回測定毎のサンプリングデータに対し、任意に設定したしきい値によって信号成分13aとノイズ成分13bに分けるレベル判定を行う信号レベル判定回路13、しきい値以上となる信号成分データを格納する信号積算メモリ15、しきい値より下となるノイズ成分データを格納するノイズ積算メモリ18、積算後のノイズ成分データ16aに対し再度しきい値によるレベル判定を行って、しきい値以上となるデータを信号成分として取得し、信号積算メモリ15に加算する積算ノイズレベル判定回路17などを有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、質量分析技術に関し、特に、飛行時間型の質量分析装置におけるA/D変換器を用いた質量分析用データ処理技術に関する。
図6に、本発明者が本発明の前提として検討した飛行時間型質量分析装置(TOF-MS:Time Of Flight Mass Spectrometry)の概要を示す。TOF-MSは、試料をイオン化して加速・飛行させ、その質量に応じた飛行時間を測定することで試料に含まれる成分を分析する装置である。試料は、導入部1でイオン化され、TOF部2に送り込まれる。TOF部2に入ったイオンは、イオン打出し信号発生器4から発生されるイオン打出し信号4aのタイミングで加速される。加速されたイオンは、TOF部2の内部を図中の矢印のような軌道で飛行した後、検出器3に到達(衝突)し、検出信号3aを発生する。データ収集回路5ではこの検出信号3aによってイオンの飛行時間を計測し、収集したデータ(測定結果)5bはCPU6を介して出力装置7に出力する。
ここで、前記データ収集回路5における飛行時間データの収集方式には、TDC(Time to Digital Converter)方式とADC(Analog to Digital Converter)方式があり、試料に含まれる各成分の定量的解析を行う装置の場合、ADC方式を用いることが多い。
TDC方式は、イオンを加速させた(打ち出した)時間を基準(0[秒])として、イオンが検出器に到達するまでの飛行時間を計測する方式であるが、同じサンプリング時間内に複数のイオンが検出器に到達した場合でも、1つのイオンとしてしか計測できないため、イオンの数え落としが発生し、感度が劣化するという欠点がある。
それに対し、図7に示す従来のADC方式の質量分析装置では、検出器3に到達(衝突)したイオンの個数に応じて振幅が異なる検出信号3aをデータ収集回路5のA/D変換器9において電圧値を表すデジタルデータ9aに変換して、積算メモリ10に格納していくため、前記のように複数のイオンが同時に検出器に到達した場合でも、イオン個数を電圧値の違いとして計測でき、イオンの数え落としを低減できる。
また、TOF-MSでは、1回の測定で得られるSN比が不十分であることが多く、複数回の測定で得られるデータを積算処理することによってSN比を向上させている。ここで1回の測定というのは、1回のイオン打出し信号4aによって加速された分のイオンの検出器出力データを収集することを指すものとする。
そのため、従来のADC方式では、積算処理用に膨大なメモリデータを何度もCPU6に転送し、そのCPU6でデータ処理を行う必要があるため、測定開始から出力装置7へ解析結果を表示するまでの処理速度が遅くなるといった問題がある。
検出器での検出信号の振幅に関係なく飛行時間のみを計測するTDC方式に比べて、A/D変換器を用いたデータ収集方式では、検出信号の振幅を表わすA/D変換器からのnビットサンプリングデータを数十万ポイント取得し、さらにそれらのデータを積算処理する必要があるため、全体のデータ量が増大してしまう。
そのため、従来では、特許文献1に記載の技術のように、不要なサンプリングデータを間引く手法や、特許文献2に記載の技術のような、しきい値によるノイズリダクションなどのデータ圧縮処理が提案されている。
特開2000−299083号公報 米国特許出願公開第2003−0173514号明細書
図8に、特許文献2に関連する技術として本発明者が本発明の前提として検討したノイズリダクション手法について示す。A/D変換器からのサンプリングデータには、ピークのスペクトラム以外に、例えばノイズレベルのような不要なデータが多く含まれている。そこで、このノイズリダクション手法は、あるしきい値を設定して、そのしきい値以下のサンプリングデータはメモリに書き込まず、切り捨ててしまうデータ処理手法である。前記しきい値以下となって切り捨てられた点のデータについての処理方式には、図8(a)に示すように、あるレベル(図中ではしきい値)に一律にオフセットさせるオフセット方式や、図8(b)に示すように、あるレベル(しきい値)以下のデータをすべて0レベルとして扱うしきい値方式など、色々な処理方法がある。
また、これらのノイズリダクションは、すべての測定データがCPUに転送された後の積算データに対して処理されても良いし、1回測定のデータ毎に処理されても良い。
ただし、積算データに対してノイズリダクションを行う場合、すべての測定データをCPUに転送し、その後にCPUでリダクション処理する必要があるため、測定開始から結果表示までの処理速度が遅くなるという問題がある。また、1回測定のデータ毎にノイズリダクションを行う場合は、1回の測定毎に前記しきい値以下のデータは切り捨てられるため、例えば、積算後であれば信号成分として得られる程度の小振幅な信号を切り捨ててしまうという問題がある。
本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、飛行時間型の質量分析装置におけるADC方式のデータ収集回路において、測定感度を劣化させずに測定中のデータ圧縮を実現し、CPUでの積算データ処理を不要とすることで、測定時間の短縮化を実現し、同時に、積算されないとノイズ成分として除去されてしまうような小振幅な信号を信号成分として取得することができ、装置の高感度化を実現することのできる、質量分析用データ処理装置及び方法を提供することにある。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
前記目的を達成するために、本発明の質量分析用データ処理装置及び方法では、飛行時間データの測定・収集を行うADC方式の質量分析用データ処理装置及び方法において、1回測定毎のサンプリングデータに対して、ハードウェアで以下のようなデータ圧縮処理を行い、所定のしきい値以上の信号成分のデータのみをメモリに書き込むことで、メモリへの書き込み回数を削減し、また、測定終了後のCPU処理も不要とすることを特徴としている。
また本発明におけるデータ圧縮処理では、A/D変換器からのサンプリング(電圧値)データに対し、比較器で所定のしきい値と1回目の比較(レベル判定)を行って、信号成分とノイズ成分の二種類のデータに分ける。前記しきい値以上の信号成分側に判定された電圧値データは、そのまま信号積算メモリに積算しながら格納する。前記しきい値より下のノイズ成分側として判定された電圧値データは、信号積算メモリには書き込まれず、ノイズ積算メモリに積算しながら格納される。これら各積算メモリへのデータの書き込みは、リード・モディファイ・ライトとし、一旦メモリの内容を読み出して、次に書き込むデータを加算して、再度メモリに書き込む動作を行うものとする。ここで、ノイズ積算メモリへのデータの書き込みの際は、積算処理された後の値(前のメモリ内容と加算した後の値)に対し、2回目の所定のしきい値との比較を行う。もしその積算値がしきい値を超えた場合は、信号成分とみなし、信号積算メモリ内に値を書き込んでいく。
このようなデータ処理装置及び方法により、測定中にしきい値によるデータ圧縮を行いつつ、ノイズ成分のデータに対して、積算処理後、再度、しきい値との比較処理を行うことで、除去するはずのノイズ成分データの中から積算処理後に信号成分として得られるような小振幅な信号を検出して信号成分として取得することで装置の高感度化を実現することを特徴とする。
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
本発明によれば、ADC方式のデータ収集回路において、しきい値より下のノイズ成分を除去するデータ圧縮処理を行い、積算メモリへの無駄なデータの書き込み動作を除去することで、測定時間の短縮化を実現し、同時に、積算されないとノイズ成分として除去されてしまうような小振幅な信号を、高精度に信号成分と判定して取得することができるため、装置の高感度化を実現できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における質量分析用データ処理装置を用いたADC方式の質量分析装置の構成を示し、1台の高分解能A/D変換器を用いる場合の構成を示す。本実施の形態1の質量分析用データ処理装置は、飛行時間型の質量分析装置のデータ収集回路51において、以下に述べる所定のデータ処理方法によりデータ収集を行うものである。
この質量分析装置は、試料をイオン化する導入部1と、イオンを加速し、飛行させるTOF部2と、飛行してきたイオンを検出する検出器3と、イオンを加速させるタイミングを決定するイオン打出し信号4aを発生するイオン打出し信号発生器4とを有する部分と、検出信号3aからイオンの飛行時間を計測・収集するためのデータ収集回路51と、それを制御し、取得したデータを解析処理するためのCPU6と、その測定結果および解析結果を表示するための出力装置7とから構成される。
また、実施の形態1の質量分析用データ処理装置におけるデータ収集回路51は、クロック発生器8と、A/D変換器9と、信号レベル判定回路13と、信号積算メモリ15と、積算値演算回路14と、信号積算メモリ15と、積算ノイズ演算回路16と、積算ノイズレベル判定回路17と、ノイズ積算メモリ18と、カウンタ12とで構成される。
クロック発生器8は、動作クロックを生成する。A/D変換器9は、TOF部2からの検出信号3aをサンプリングしてサンプリング(電圧値)データ9aを出力する。信号レベル判定回路13は、A/D変換器9からのサンプリングデータ9aをある所定のレベルのしきい値Tと比較して信号レベルの判定を行って二種類のデータに分割するための回路である。積算値演算回路14は、信号レベル判定回路13から出力される信号成分データ13aを積算演算し、信号積算メモリ15に書き込むための回路である。信号積算メモリ15は、信号成分データ13aの積算値を格納するためのメモリである。積算ノイズ演算回路16は、信号レベル判定回路13から出力されるノイズ成分データ13bを積算するための回路である。積算ノイズレベル判定回路17は、積算ノイズ演算回路16から出力される積算ノイズデータを、再度、しきい値Tと比較して判定を行うための回路である。ノイズ積算メモリ18は、ノイズ成分の積算値を格納しておくメモリである。カウンタ12は、測定開始信号5aの生成および各メモリへの書き込みアドレスを決定する信号12aを出力する。
ここで、クロック発生器8はデータ収集回路51内部の回路で使用する様々な動作クロックを生成することができ、A/D変換器9や、各積算メモリのアドレスカウンタなどはこのクロック発生器8からのクロック信号に同期して動作している。
まず、CPU6もしくは外部装置から測定開始命令が与えられるとデータ収集回路51のカウンタ12は測定開始信号5aを発生し、このタイミングが測定の基準時間(0[秒])となる。測定開始信号5aを受けたイオン打出し信号発生器4は、TOF部2に打出し信号4aを発生し、TOF部2内のイオンを加速させる。TOF部2内を飛行したイオンはやがて検出器3に到達(衝突)し、検出信号3aを発生する。
図2は、実施の形態1の質量分析用データ処理装置及びデータ処理方法における、データ圧縮及びデータ積算の処理の様子を示す図である。(a)は、信号レベル判定回路13における、しきい値Tによるサンプリングデータの9aのレベル判定、分割についての説明図である。(b)は、信号レベル判定回路13においてしきい値T以上となるデータである信号成分データについての積算および積算メモリへの格納について示す説明図である。また(c)は、信号レベル判定回路13においてしきい値Tより下となるデータであるノイズ成分データについての積算および積算メモリへの格納について示す説明図である。
データ収集回路51では、ゲイン調整器19によりゲイン調整された検出信号3aをA/D変換器9でサンプリングし、サンプリング時間毎の電圧値を示すサンプリングデータ9aに変換する。このサンプリングデータ9aを受け取った信号レベル判定回路13は、図2(a)に示すように、サンプリングデータ9aをしきい値Tと比較し、そのレベルの大小により信号成分とノイズ成分に振り分ける。(a)において、横軸は時間、縦軸はイオン強度を示し、1回の測定データについてしきい値Tによって信号成分とノイズ成分とに分割することを示している。ここで、この信号レベル判定回路13におけるしきい値Tはユーザが任意の値を設定できることとする。
信号レベル判定回路13においてサンプリングデータ9aのレベルがしきい値T以上の場合は、信号成分データ13aとして判定される。この信号成分データ13aは、図2(b)に示すように、積算値演算回路14で積算値演算され、その積算された信号成分データ14aが信号積算メモリ15に格納される。信号積算メモリ15にすでにデータが入っている場合は、一旦メモリ内容を読み出して、次に書き込むデータを加算し、再度メモリに格納される。図2(b)で、横軸は時間、縦軸は積算イオン強度を示し、実線の部分が信号成分データ13aに相当する。点線枠部分が、n回分の測定結果であるメモリに格納された積算結果を示す。
信号レベル判定回路13においてサンプリングデータ9aのレベルがしきい値Tより下の場合は、ノイズ成分データ13bとして判定される。このノイズ成分データ13bは、積算ノイズ演算回路16でノイズ積算メモリ18の内容と加算された後に、積算されたノイズ成分データ16aとして積算ノイズレベル判定回路17へ送られる。積算ノイズレベル判定回路17では、前記積算されたノイズ成分データ16aを、再度、しきい値Tと比較し、その積算値がしきい値T以上となる場合、これを信号成分とみなして、このデータ17aについて信号積算メモリ15のデータに繰り上げる形で加算する。例えば、信号積算メモリ15の最下位ビットをインクリメント(+1)し、ノイズ積算メモリ18は0にクリアする。また積算ノイズレベル判定回路17における比較でしきい値Tより下となる成分についてはノイズ成分データ17bとしてノイズ積算メモリ18に格納される。図2(c)で、横軸は時間、縦軸は積算イオン強度を示し、実線の部分がノイズ成分データ13bに相当する。n回分のノイズ成分積算値においてしきい値Tを超える部分があり、この部分が、図2(b)に示すように信号成分として信号積算メモリ15に繰り上げ記録される。繰り上げされた場合、データを0に戻す。
その結果、測定終了時点で信号積算メモリ15には、しきい値Tより下となるノイズ成分を除去した、しきい値T以上となる積算データに加え、従来ではノイズ成分として除去されてしまう小振幅信号の積算データも同時に収集される。測定終了後は、この信号積算メモリ15の内容をCPU6に転送するだけで良いため、全体の測定時間を短縮することができる。
図3に、データ収集回路51における各積算メモリの構成例を示す。(a)は、信号積算メモリ15の構成例を、(b)は、ノイズ積算メモリ18の構成例を示す。メモリのアドレスがサンプリングデータの時間を示している。必要なメモリ幅は、信号積算メモリ15とノイズ積算メモリ18で異なり、(a)に示す信号積算メモリ15の構成では、最大でA/D変換器9のビット数と積算回数で決まるビット幅が必要となる。対して、(b)に示すノイズ積算メモリ18の構成では、A/D変換器9のビット数と同じビット幅があれば良い。例えば、A/D変換器9として8ビットA/D変換器を使用し、積算回数を65535回までとすると信号積算メモリ15は24ビット、ノイズ積算メモリ18は8ビットのメモリ幅が必要になる。
また、実施の形態1の質量分析用データ処理装置に使用するA/D変換器9として高分解能なA/D変換器を使用し、しきい値Tより下のノイズ成分における信号を細かく取得することによって、ノイズ成分データの中から高精度に小振幅信号を検出することを可能にしている。
また、実施の形態1では、1度イオン打出し信号4aを発生した後は、データの積算処理が終わるまで、次のイオン打出し信号4aを発生しないことによって、積算メモリ(15,18)における書き込みエラーを防ぐ。
ここで、前記しきい値Tとは、レベル判定回路におけるサンプリングデータを信号成分とノイズ成分の二種類のデータに分ける判定を行うために使用する便宜的な値であり、例えば、ユーザが設定した任意の値でも良いし、検出信号3aを入力していないときのサンプリングデータから統計的に求めたノイズフロアレベルを0として設定する。これは通常の測定前に信号未入力による積算測定を行い、システムのノイズフロアレベルを測定し、その値を測定データのゼロレベルとして設定する。
以上のように、実施の形態1の質量分析用データ処理装置および方法によれば、ADC方式のデータ収集回路において、しきい値Tより下となるノイズ成分はメモリに書き込まない方式のデータ圧縮処理を行い、無駄なデータの書き込み動作を除去することで、測定時間の短縮化を実現し、同時に、積算されないとノイズ成分として除去されてしまうような小振幅信号を、高精度に信号成分と判定して取得することができるため、装置の高感度化を実現できる。
また、しきい値以上の信号成分と、積算後にしきい値を超えるような小振幅のデータについてのみメモリへの積算格納を行うため、メモリへの書き込み回数を削減でき、また、測定終了後にCPUでの積算処理やデータ圧縮処理が不要になるため、測定時間を短縮することができる。
なお、本実施の形態1の質量分析用データ処理装置が用いる質量分析用データ処理方法(データ収集方法)は、TOF-MS以外の質量分析装置のデータ処理方法としても適用可能である。
(実施の形態2)
次に、図4を参照しながら、本発明の実施の形態2における質量分析用データ処理装置およびデータ処理方法について説明する。図4は、実施の形態2における質量分析用データ処理装置の構成を示す。実施の形態2では、データ収集回路52において、2つのA/D変換器20,21及びゲイン調整器23,24を備えることが主な特徴であり、その他の部分については前記実施の形態1の構成と同様である。
前記実施の形態1の構成において、ノイズ成分のデータの中から高精度に小振幅信号を検出するためには、A/D変換器9としてより高分解能なA/D変換器が必要となるが、例えば1ns以下の高速なサンプリング速度で動作するA/D変換器となると、現在の市販部品では8〜10ビットの分解能が限界である。そのため、あるしきい値より下で分割されたノイズ成分データに対しては数ビットの分解能しかなく、精度良く信号とノイズを切り分けることができない。
そこで、実施の形態2の質量分析用データ処理装置では、図4に示すように、A/D変換器をA/D変換器20,21の2台使用し、検出信号3a全体を測定する(信号成分測定用)A/D変換器20の他に、ノイズ成分データ部分のみを(ノイズ成分測定用)A/D変換器21でサンプリングすることによって、ノイズ成分データを高分解能に測定することができ、小振幅信号を精度良く検出することが可能となる。
各A/D変換器20,21の前段には、入力信号のレベルを調整するためのゲイン調整器23,24を配置して使用する。TOF部2からの検出信号3aは、ゲイン調整器23によって信号成分測定用の第1のA/D変換器20がフルスケールで測定(有効ビットを全て使用したA/D変換)できるようにその振幅が調整される。また、ノイズ成分測定用の第2のA/D変換器21の前段のゲイン調整器24は、しきい値のレベルがA/D変換データの最大値となるように、検出信号3aの振幅を調整する。
次に、第1のA/D変換器20のサンプリングデータ20aは、信号レベル判定回路13において、しきい値T以上となるデータを判定し、しきい値T以上のデータは、信号成分データとして、積算値演算回路14で積算処理された後に、信号積算メモリ15に格納される。
検出信号3aのうち、しきい値Tより下となるノイズ成分の部分を拡大してA/D変換を行う第2のA/D変換器21からのサンプリングデータ21aは、積算ノイズ演算回路16で、ノイズ積算メモリ18に格納されている前回取得データに加算され、積算ノイズレベル判定回路17で再度しきい値Tでレベル判定され、信号成分のデータ17aは信号積算メモリ15に、ノイズ成分のデータ17bはノイズ積算メモリ18に格納される。
以上のように、実施の形態2によれば、ADC方式のデータ収集回路において、信号成分の取得のためのA/D変換器とは別のA/D変換器を使用してノイズ成分のデータを取得するため、1台のA/D変換器を使用する構成よりも高分解能にノイズ成分を解析でき、精度良く小振幅の信号成分を見つけ出して取得することができる。
また、しきい値より下となるノイズ成分はメモリに書き込まない方式のデータ圧縮を行い、無駄なデータの書き込み動作を除去することで、測定時間の短縮化を実現し、同時に、ノイズ成分の信号をもう1台のA/D変換器で高分解能に測定することで、ノイズ成分データの中から小振幅の信号を精度良く判定して取得することができるため、装置の高感度化を実現できる。
(実施の形態3)
次に、図5を参照しながら、本発明の実施の形態3における質量分析用データ処理装置およびデータ処理方法について説明する。図5は、実施の形態3における質量分析用データ処理装置の構成を示す。
実施の形態3の質量分析用データ処理装置は、前記実施の形態1,2のようにカウンタ12から測定開始信号5aをイオン打出し信号発生器4に対し与えて処理の制御を行うのではなく、CPU61により飛行時間の測定、データ収集の制御を行うものである。実施の形態3では、CPU61からイオン打出し信号発生器41に対し、測定開始信号とイオン打出し信号の発生のタイミングを決定する信号6aを入力する。イオン打出し信号発生器41は、TOF部2に対しイオン打出し信号4aを発生し、また測定開始信号4bをデータ収集回路53内のカウンタ22に対し入力する。カウンタ22は、測定開始信号4bの入力に基づき制御され、各積算メモリ(信号積算メモリ15,ノイズ積算メモリ18)に対し各メモリへの書き込みアドレスを決定する信号12aの入力を行う。他の部分については実施の形態1の構成と同様である。
実施の形態3の質量分析用データ処理装置及び方法によれば、CPU61による制御に基づき、イオン打出し信号4aの発生および検出信号3aの生成を行わせると共に、ADC方式のデータ収集回路53における飛行時間測定、データ収集を行わせることができる。データ収集回路53において、しきい値より下となるノイズ成分はメモリに書き込まない方式のデータ圧縮処理を行い、無駄なデータの書き込み動作を除去することで、測定時間の短縮化を実現し、同時に、積算されないとノイズ成分として除去されてしまうような小振幅信号を、高精度に信号成分と判定して取得することができるため、装置の高感度化を実現できる。また、しきい値以上の信号成分と、積算後にしきい値を超えるような小振幅のデータについてのみメモリへの積算格納を行うため、メモリへの書き込み回数を削減でき、また、測定終了後にCPU61での積算処理やデータ圧縮処理が不要になるため、測定時間を短縮することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
本発明の実施の形態1における質量分析用データ処理装置を用いたADC方式の質量分析装置の構成を示す図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施の形態1の質量分析用データ処理装置及びデータ処理方法におけるデータ圧縮及びデータ積算の処理の様子を示す図である。 (a),(b)は、実施の形態1の質量分析用データ処理装置の備える積算メモリの構成を示す図である。 本発明の実施の形態2における質量分析用データ処理装置を用いたADC方式の質量分析装置の構成を示す図である。 本発明の実施の形態3における質量分析用データ処理装置を用いたADC方式の質量分析装置の構成を示す図である。 本発明の前提として検討した飛行時間型質量分析装置の概要を示す図である。 本発明の前提として検討したADC方式の質量分析装置の構成を示す図である。 (a),(b)は、本発明の前提として検討したノイズリダクション手法について示す図である。
符号の説明
1…導入部、2…TOF部、3…検出器、4,41…イオン打出し信号発生器、5,51,52,53…データ収集回路、6,61…CPU、7…出力装置、8…クロック発生器、9…A/D変換器、10…積算メモリ、11,12,22…カウンタ、13…信号レベル判定回路、14…積算値演算回路、15…信号積算メモリ、16…積算ノイズ演算回路、17…積算ノイズレベル判定回路、18…ノイズ積算メモリ、19,23,24…ゲイン調整器、20…(信号成分測定用)A/D変換器、21…(ノイズ成分測定用)A/D変換器、T…しきい値。

Claims (10)

  1. 飛行時間型の質量分析装置における質量分析用データ処理装置であって、
    検出信号をサンプリングするA/D変換器と、
    前記A/D変換器からのサンプリングデータに対し、所定のしきい値によるレベル判定を行って二種類のデータに分割する第1の判定回路と、
    前記しきい値以上のデータを積算処理しながら格納する積算メモリと、
    前記しきい値未満のデータを積算し、その積算値に対し、再度前記しきい値によるレベル判定を行って、前記しきい値以上となる場合はそのデータを前記積算メモリに格納する第2の判定回路と、を備えたことを特徴とする質量分析用データ処理装置。
  2. 飛行時間型の質量分析装置における質量分析用データ処理装置であって、
    検出信号全体をサンプリングするための第1のA/D変換器と、
    所定のしきい値未満のレベルのノイズ成分信号をサンプリングするためのノイズレベル用の第2のA/D変換器と、
    検出信号が前記第1のA/D変換器の入力最大レベルになるように調整するための第1のゲイン調整器と、
    前記第2のA/D変換器の信号レベルを前記しきい値のレベルが前記第2のA/D変換器の入力最大レベルになるように調整するための第2のゲイン調整器と、
    前記第1のA/D変換器のサンプリングデータから前記しきい値以上のデータを選択する第1の判定回路と、
    前記しきい値以上のデータを積算しながら格納する第1の積算メモリと、
    前記第2のA/D変換器のサンプリングデータを積算しながら格納する第2の積算メモリと、
    前記第2のA/D変換器からのノイズ成分信号の積算値に対し、再度前記しきい値によるレベル判定を行って、前記しきい値以上となる場合はそのデータを前記第1の積算メモリに格納する第2の判定回路と、を備えたことを特徴とする質量分析用データ処理装置。
  3. 請求項1または2に記載の質量分析用データ処理装置において、
    通常の測定前に、信号未入力による積算測定を行ってシステムのノイズフロアレベルを測定し、その値を測定データのゼロレベルとして設定する手段を備えたことを特徴とする質量分析用データ処理装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の質量分析用データ処理装置において、
    1度イオン打出し信号を発生した後はデータの積算処理が終わるまで次のイオン打出し信号を発生しないイオン打出し信号発生器を備えたことを特徴とする質量分析用データ処理装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の質量分析用データ処理装置において、
    イオンを加速させるタイミングを決定するカウンタを備えたことを特徴とする質量分析用データ処理装置。
  6. 飛行時間型の質量分析装置における質量分析用データ処理方法であって、
    検出信号をA/D変換器でサンプリングし、
    前記A/D変換器からのサンプリングデータに対し、所定のしきい値によるレベル判定を行って二種類のデータに分割する第1の判定を行い、
    前記しきい値以上のデータを積算処理しながら積算メモリに格納し、
    前記しきい値未満のデータを積算し、その積算値に対し、再度前記しきい値によるレベル判定を行って、前記しきい値以上となる場合はそのデータを前記積算メモリに格納する第2の判定を行うことを特徴とする質量分析用データ処理方法。
  7. 飛行時間型の質量分析装置における質量分析用データ処理方法であって、
    検出信号全体をサンプリングするための第1のA/D変換器で検出信号をサンプリングし、
    所定のしきい値未満のレベルのノイズ成分信号をサンプリングするためのノイズレベル用の第2のA/D変換器で、ゲイン調整器で信号レベルを調整された検出信号をサンプリングし、
    前記第1のA/D変換器の出力データから前記しきい値以上のデータを選択する第1の判定を行い、
    前記しきい値以上のデータを積算しながら第1の積算メモリに格納し、
    前記第2のA/D変換器の出力データを積算しながら第2の積算メモリに格納し、
    前記第2のA/D変換器からのノイズ成分信号の積算値に対し、再度前記しきい値によるレベル判定を行って、前記しきい値以上となる場合はそのデータを前記第1の積算メモリに格納する第2の判定を行うことを特徴とする質量分析用データ処理方法。
  8. 請求項6または7に記載の質量分析用データ処理方法において、
    通常の測定前に、信号未入力による積算測定を行い、システムのノイズフロアレベルを測定し、その値をしきい値として設定することを特徴とする質量分析用データ処理方法。
  9. 請求項5〜8のいずれか一項に記載の質量分析用データ処理方法において、
    1度イオン打出し信号を発生した後はデータの積算処理が終わるまで次のイオン打出し信号を発生しないようにイオン打出し信号発生の制御を行うことを特徴とする質量分析用データ処理方法。
  10. 請求項5〜9のいずれか一項に記載の質量分析用データ処理方法において、
    カウンタにより、イオンを加速させるタイミングを決定する信号を発生することを特徴とする質量分析用データ処理方法。

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