JP2005266772A - 無端ベルトの製造方法および無端ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】膜厚及び周長を目標値どおりに均一に塗布できる無端ベルトの製造方法および該製造方法により得られる無端ベルトを提供する。
【解決手段】円筒芯体1の外径よりも大きな円形の孔6を有する環状体5を塗液2上に自由移動可能状態で設置し、前記孔に前記円筒芯体を通して前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させて、前記円筒芯体表面に塗液を塗布して無端ベルトを製造する方法であって、少なくとも、前記円筒芯体を浸漬している間の該円筒芯体と前記環状体との温度を略同一とすることを特徴とする無端ベルトの製造方法である。また、当該製造方法により製造される無端ベルトである。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、電子写真装置において、感光体、転写ベルト、及び定着ベルト等に適用される無端ベルトの製造方法及び無端ベルトに関する。
電子写真装置では、感光体、帯電体、転写体及び定着体などに、金属、各種プラスチック、またはゴム製の回転体が使用されている。装置の小型化或いは高性能化のために、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のように、定着回転体としては変形可能なものが好ましいことがあり、それには肉厚が薄い樹脂製ベルトが用いられる。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない無端ベルトが好ましい。その材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド(以後、ポリイミドを「PI」と略す場合がある)樹脂が特に好ましい。
PI樹脂製の無端ベルトを作製するには、例えば、特許文献3に記載のように、円筒体の内面にPI前駆体溶液を塗布し、回転しながら乾燥させる遠心成形法や、特許文献4に記載のように、円筒体内面にPI前駆体溶液を展開する内面塗布法があった。但し、これらの内面に成膜する方法では、PI前駆体を加熱反応させる際に、皮膜を円筒体から抜いて外型に載せ換える必要があり、工数が増える問題がある。
他の無端ベルトの製造方法として、例えば、特許文献5に記載のように、芯体の表面に、浸漬塗布法によってPI前駆体溶液を塗布して乾燥し、加熱した後、PI樹脂皮膜を芯体から剥離する方法もある。この方法では、外型に載せ換える工数が不要なので有利である。但し、芯体の表面に、浸漬塗布法によってPI前駆体溶液を塗布すると、一般にPI前駆体溶液は粘度が非常に高いために、塗膜の付着量が多くなり、膜厚が厚くなり過ぎるという問題がある。
そこで、例えば、特許文献6〜8に開示されているように、芯体の表面に樹脂又はその前駆体を含有する塗液を厚く付着させた後、所定の間隙の内径を有した外型を通過させて、余分な塗液を掻き落とす方法もあった。しかしながら、作業工程が増加するという短所があった。
また、PI前駆体を含有する塗液を希釈して、膜厚が厚くなりすぎないように浸漬塗布することもできるが、塗布上端部の垂れが大きくなり、膜厚の均一性が大いに損なわれる問題があった。
一方、感光体、定着ロール、帯電ロール、転写ロールには、回転体の表面に、機能性の被膜を形成したものがある。機能性被膜として、定着ロールの場合にはトナーの定着性や離型性を調整する非粘着性の被膜、帯電ロールの場合には感光体への放電特性、帯電性、電荷リーク等を調整する半導電性の被膜、転写ロールの場合には導電性、ニップ等を調整する被膜、感光体の場合には感光層または保護層がある。このような被膜は、一般的に10〜100μmの厚みのものが所望されるが、被膜を浸漬塗布法で形成すると、やはり塗布上端部の垂れが大きくなるなどの問題がある。
そこで、特許文献9に記載のように、円筒芯体の断面の外径よりも大きな円形の孔を設けた環状体を、前記塗液上に自由移動可能状態で設置し、塗布時には、該環状体が液面から持ち上がり、かつ液面から離脱しないような範囲内の高さにおさまるよう、環状体の孔を通して、円筒芯体を前記塗液から相対的に上昇させる塗布方法がある。
その塗布方法においては、塗布時の円筒芯体と環状体との温度は同じであるべきで、その場合は円筒芯体の直径と環状体の内径との差は一定であるが、円筒芯体を塗布装置に取り付けた直後では必ずしもそうならないことがある。円筒芯体と環状体の材質がアルミニウムの場合、熱膨張係数が23×10-6/℃と大きいので、温度差が生じると円筒芯体の直径と環状体の内径との差、及び円筒芯体の外径が一定ではなくなってしまい、塗布後の膜厚や周長が目標値から外れることとなる。
また、塗布後は塗膜が垂れないよう円筒芯体を水平にして回転させ、乾燥機に投入するが、それまでの時間が長いと垂れが発生し、膜厚が目標値から外れたり、膜厚むらが大きくなる問題がある。さらに、PI前駆体を加熱反応させる際に、温度むらが少しでもあると、膜厚以外の諸特性、特に樹脂中に導電性粒子を分散させた際の抵抗値にばらつきを生じる問題がある。
特開平8−262903号公報 特開平11−133776号公報 特開昭57−74131号公報 特開昭62−19437号公報 特開昭61−273919号公報 特開平6−23770号公報 特開平7−24859号公報 特開平9−277286号公報 特開2002−91027号公報
そこで、本発明は、膜厚及び周長を目標値どおりに均一に塗布できる無端ベルトの製造方法および該製造方法により得られる無端ベルトを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、
<1> 円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、前記孔に前記円筒芯体を通して前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させて、前記円筒芯体表面に塗液を塗布して無端ベルトを製造する方法であって、
少なくとも、前記円筒芯体を塗布している間の該円筒芯体と前記環状体との温度を略同一とすることを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
<2> 前記円筒芯体を塗布している間の該円筒芯体と前記環状体との温度差の大きさが5℃以内であることを特徴とする<1>に記載の無端ベルトの製造方法である。
<3> 少なくとも、前記円筒芯体を塗布している間の塗布液と前記円筒芯体との温度差の大きさが5℃以内であることを特徴とする<1>または<2>に記載の無端ベルトの製造方法である。
<4> 前記円筒芯体に塗液を塗布した後から5分以内に前記円筒芯体を水平にしてその軸心を中心に回転させることを特徴とする<1>に記載の無端ベルトの製造方法である。
<5> 前記円筒芯体を前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させる際、前記環状体を、その垂直方向への移動を規制した状態で設置することを特徴とする<1>に記載の無端ベルトの製造方法である。
<6> 円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、前記孔に前記円筒芯体を通して前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させて、前記円筒芯体表面に塗液を塗布して無端ベルトを製造する方法であって、
前記円筒芯体に塗液を塗布した後から5分以内に前記円筒芯体を水平にしてその軸心を中心に回転させることを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
<7> 前記回転させる際の回転速度が2〜20rpmであることを特徴とする<4>に記載の無端ベルトの製造方法である。
<8> 円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、前記孔に前記円筒芯体を通して前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させて、前記円筒芯体表面に塗液を塗布して無端ベルトを製造する方法であって、
前記円筒芯体を前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させる際、前記環状体を、その垂直方向への移動を規制した状態で設置することを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
<9> 前記環状体の孔の内壁が傾斜した面であり、その傾斜角が鉛直線に対して1〜10°であることを特徴とする<6>に記載の無端ベルトの製造方法である。
<10> 前記環状体の孔の真円度が20μm以下であることを特徴とする<6>または<9>に記載の無端ベルトの製造方法である。
<11> 前記円筒芯体の相対的上昇方向先端部に、その外径が前記円筒芯体の外径よりも大きく、かつ前記環状体の孔の最小径未満となる間隔調節部材を設け、前記間隔調節部材により前記芯体の上昇時に前記芯体と前記環状体との間隙を均一に合わせることを特徴とする<8>〜<10>のいずれかに記載の無端ベルトの製造方法である。
<12> 前記円筒芯体表面に塗液を塗布して塗膜を形成した後、該塗膜に送風処理を施して乾燥皮膜を形成し、次に、該乾燥皮膜に間接的に送風する間接送風処理を施して樹脂を反応させて皮膜を形成することを特徴とする<1>〜<11>のいずれかに記載の無端ベルトの製造方法である。
<13> <1>〜<12>のいずれかに記載の無端ベルトの製造方法によって製造されることを特徴とする無端ベルトである。
本発明によれば、膜厚が比較的厚い場合でもあっても、その膜厚を均一にかつ、周長が一定な無端ベルトを製造することができる。従って、本発明の無端ベルトは、その膜厚が均一である。当該無端ベルトを用いれば、機能性被膜を均一に塗布した定着体、帯電体、転写体等を効率よく作製することができる。
[1]無端ベルトの製造方法:
以下、本発明の無端ベルトの製造方法を各態様ごとに分けて説明する。
(第1の製造方法)
本発明の第1の無端ベルトの製造方法は、円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、その孔に円筒芯体を通して塗液から相対的に垂直方向に(塗液面に対し垂直方向に)上昇させて、円筒芯体表面に塗液を塗布する塗布工程を有する製造方法である。
そして、その塗布工程において、少なくとも、前記円筒芯体を塗布している間の該円筒芯体と前記環状体との温度を略同一とするものである。
塗布時の円筒芯体と環状体との温度は同じ室温の環境下であれば、円筒芯体の直径と環状体の内径との差は設定値と同じであるので塗布後の膜厚は目標値どおりである。しかし、円筒芯体と環状体との材質がアルミニウムの場合、熱膨張係数が23×10-6/℃と大きいので、具体的には円筒芯体の直径が366mmの場合、環状体に対して円筒芯体の温度が10℃高いと、円筒芯体が膨張して円筒芯体の直径と環状体の内径の差が半径で42μm狭くなり、周長は264μm長くなる。逆に環状体に対して円筒芯体の温度が10℃低いと円筒芯体が収縮して円筒芯体の直径と環状体の内径との差が半径で42μm広くなり、周長は264μm短くなる。このように環状体と円筒芯体の温度差によって出来上がった皮膜の厚さが厚くなったり、薄くなったりする現象が発生する。
また、円筒芯体は通常、塗布装置とは離れた所に保管されており、塗布直前に塗布室へ運搬されて設置されるものである。そのために温度差が生じる場合が多い。
これに対し、本発明では、円筒芯体と環状体との温度を略同一とすることで、円筒芯体の直径と環状体の内径との差、及び円筒芯体の外径を一定とすることが可能となり、塗布後の膜厚や周長を目標値の範囲内とすることができる。
上記「略同一」の意義として、前記円筒芯体を塗布している間の該円筒芯体と環状体との温度差の大きさ(|(円筒芯体の温度)−(環状体の温度)|)は、5℃以内とする。
塗布時の円筒芯体と環状体との温度差が5℃以内であれば、例えば円筒芯体の直径が366mmの場合、膜厚のずれは中心値(目標値)に対して3.5μm以内、周長のずれは中心値(目標値)に対して132μm以内になり、その程度の膜厚変動および周長変動では電子写真装置において、感光体、定着ロール、帯電ロール、転写ロール、転写ベルト、及び定着ベルト等のロールまたはベルト部材の品質に影響を与えない。特に転写ベルトでは、該転写ベルト上に順次トナーを重ねていくので、転写ベルトの膜厚ばらつきが大きいとトナーの色ずれが顕著になるが、その色ずれには影響を与えない。
また、少なくとも、前記円筒芯体を塗布している間の塗布液と前記円筒芯体との温度差の大きさも5℃以内とすることが好ましい。
塗布液と円筒芯体との温度差の大きさを5℃以内とすることで、円筒芯体と環状体との温度差の大きさも5℃以内とすることができる。
円筒芯体と環状体との温度を略同一とするには、これらを放置しておくという方法が挙げられるが、両者の温度が略同一となるまでに時間がかかる場合がある。そこで、両者を恒温槽に保管し温度の制御を的確に行う処理を施すことが好ましい。このとき、迅速に両者の温度を略同一とするため、送風処理を行ってもよい。当該送風処理は、円筒芯体や環状体の温度を迅速に同じにするに有効であるだけでなく、放置の場合に比べ、埃などの不純物の付着を防止できる利点がある。
また、円筒芯体と環状体とを使用する塗布液に接触させた状態で放置し、両者の温度を略同一としてもよい。上記塗布液に接触させる処理によれば、円筒芯体、環状体および塗布液の温度をすべて略同一とすることができる。
また、雰囲気の温度により円筒芯体の直径が変化してしまうことを考慮して、少なくとも、円筒芯体を環状体に通して塗布している間は、その雰囲気温度も、円筒芯体と略同一(雰囲気温度と円筒芯体との温度差の大きさが5℃以内)とすることが好ましい。
第1の製造方法や、後述する第2の製造方法にも適用される塗布工程における塗布方法について、図面を用いて説明する。なお、実質的に同様の機能を有するものには、全図面通して同じ符号を付して説明し、場合によってはその説明を省略することがある。
図1及び図2は塗布工程の概略断面図である。但し、塗布主要部のみを示し、周辺部は省略した。なお、本明細書において、「円筒芯体上に塗布する」とは、円筒芯体の表面上、及び該表面に層を有する場合はその層上に塗液を塗布する意味である。例えば、円筒芯体が電子写真感光体用支持体であるとき、支持体上への塗布は、表面に層を有する時は、その層上に塗布する場合を含む。また、「円筒芯体を上昇」とは、塗布液面との相対関係であり、「円筒芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
図1において、塗液2を塗布槽3に入れ、その中に円筒芯体1を浸漬し、次いで上昇させることにより塗布が行われ、塗膜4が形成される。塗液2上には、円筒芯体1の断面の外周外径よりも大きな円形の孔6を設けた環状体5を自由移動可能状態で設置する。
環状体5の材質は、塗布液によって侵されないものであり、種々の金属、プラスチック等から選ばれる。環状体は、軽量化のために、例えば中空構造でもよい。また、環状体の沈没防止のために、環状体5の外周面または塗布槽に、環状体5を支える足や腕を設けてもよい。
円筒芯体1の外径と環状体5の孔6の内径と(内径が段階的もしくは連続的に変化する場合には、最小の内径)の間隙は、所望の膜厚を鑑みて調整する。乾燥膜厚は、濡れ膜厚と塗液の不揮発分濃度の積であるが、これから所望の濡れ膜厚が求められ、前記間隙は、所望の濡れ膜厚の1倍〜2倍にするのがよい。1倍〜2倍とするのは、塗液の粘度及び/又は表面張力、および皮膜の収縮などにより、間隙の距離が濡れ膜厚になるとは限らないからである。
無端ベルトを作製する場合、塗液は樹脂材料及び/又はこれらの前駆体(以下、「樹脂材料等」という場合がある)を含有するものである。樹脂材料等として、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、フタル酸系ポリエステル、ポリカーボネート等がある。
これらの中では、強度や寸法安定性の面でPIが特に好ましい。樹脂材料等を含有する塗液の固形分濃度は、15〜50%程度、粘度は10〜1000Pa・s、上昇速度は0.1〜1.5m/min程度であるのが好ましい。無端ベルトの厚さは、25〜200μmの範囲であることが好ましい。
無端ベルトを接触帯電フィルムのような帯電体、或いは転写ベルトとして使用する場合、樹脂材料等の中に必要に応じて予め導電性粒子を分散させる。導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質;銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2・In23複合酸化物等の導電性金属酸化物;チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等が挙げられる。
次に、塗液について説明する。本明細書において、「塗液」とは、種々の溶液、分散液などの液体を含む意である。
本発明で用いる塗液は、摩擦力により環状体を持ち上げる関係から、粘度が200mPa・s以上であることが好ましく、400mPa・s以上がより好ましい。粘度が200mPa・s以上の塗液は、上端部での垂れは少なくなり、従来の浸漬塗布方法において常に課題であった上端部での垂れを、本発明の方法では低減することができる。
環状体5に設けられる孔6の内壁6aの形状は、図1の断面図に示すように、塗液2に浸る下部で円筒芯体1との間隙が広く、上部が狭い形状であれば、斜めの直線状であるもののほか、階段状や曲線状でもよい。
以下、環状体5の最小内径部分における円筒芯体1との間隙を本発明では「間隙」とし、環状体5の「高さ」とは、環状体5の最小内径部分の液面からの高さを示す。
環状体5は、図3に示すように、その内径が最小部を含む構成部分52と、それ以外の構成部分53とが上下に分かれている構造であってもよい。こうすると例えば、最小内径構成部分よりも比重が重い材料で、それ以外の構成部分を作製して、環状体5の重心を低くし、持ち上がり時の安定性を向上させることができる。また、内径が最小である構成部分が内側、それ以外の構成部分が外側、といった構造でも良い。いずれの場合も、円筒芯体1との間隙を変えて膜厚を変化させたい場合は、内径最小構成部分のみの交換で対応することができる。
塗布を行う際は、円筒芯体1を孔6に通して塗液2に浸漬し、次いで、円筒芯体を上昇させる。この際、円筒芯体1と孔6との間隙により、塗膜4の膜厚が制限される。
他の塗布方法について、図2に示す。塗液2を環状塗布槽7に入れ、その下部から上部へ円筒芯体1を通過させると、塗布が行われる。環状塗布槽7の底部には、塗液が漏れないよう、シール材8を取り付ける。シール材は、ポリエチレンやシリコーンゴム、フッソ樹脂等の柔軟性板材から成る。
環状塗布槽7を用いる環状塗布方法は、図1に示した浸漬塗布方法より、塗液が少なくてすむ利点がある。環状体5を塗液2上に自由移動可能状態で設置するのは、前記と同じである。
環状体5は、塗液2上でわずかの力で動くことができるよう、自由移動可能状態で設置するが、その方法としては、図1に示すように環状体5を塗液上に浮遊させる方法のほか、環状体5をロールやベアリングで支える方法、環状体5をエア圧で支える方法、などがある。
環状体5の孔6を通して円筒芯体1を上昇させると、塗液2の介在により、円筒芯体1と環状体5との間隙にて摩擦抵抗が生じ、環状体5には上昇力が作用し、環状体5は持ち上げられる。
このように環状体5が持ち上げられた際、環状体5は円筒芯体1との摩擦抵抗が周方向で一定になるように水平方向に移動し、間隙が周方向で一定になる。環状体5が一方向にずれた場合、間隙が狭まろうとした部分では摩擦抵抗が大きくなり、その反対側では間隙が広がって摩擦抵抗が小さくなる不均衡状態が生じるが、摩擦抵抗が大きな部分は小さくなるよう、すなわち間隙が広くなるように環状体5が水平方向に移動するので、環状体5が円筒芯体1と接触することはなく、常に一定間隙が保たれる。
円筒芯体1を上昇させる際、円筒芯体1が多少傾いていても、あるいは、円筒芯体1の上昇手段にフレを有する場合でも、環状体5は円筒芯体1に追随して水平方向に動きうるので、膜厚は一定に塗布できる利点もある。
このように環状体5が作用するには、環状体5は、ある程度、持ち上げられなくてはならない。環状体5の持ち上げられる高さが低い場合、環状体5が中心位置に復元する力が弱いので、間隙が周方向である方向にずれて塗布されることになる。すなわち、間隙が広い部分の膜厚は厚く、逆の部分の膜厚は薄くなるのである。
環状体5の上昇力は、円筒芯体1の上昇速度が速いほど強くなるが、環状体5が持ち上げられすぎて、その底面が液面から離れてしまうと、底面から塗液のほかに空気が巻き込まれるようになり、塗膜に気泡が入る問題が生じる。また、環状体5の底面が液面から離れると、塗布終了時に環状体5が液面に落下することになるが、その際にはやはり塗液に泡が巻き込まれるので、塗布作業を繰り返す場合は非常に不都合である。
以上の理由により、円筒芯体を上昇させる際には、環状体は高すぎず低すぎず、一定範囲の高さであることが必要である。そのために本発明では、円筒芯体の上昇速度を調節することが好ましい。すなわち、環状体の持ち上げ量(高さ)が低い場合は速度を速くし、逆に、環状体が上がりすぎて、その底面が液面から離れようとした場合には、上昇速度を遅くする。
環状体の高さを一定にするには、簡便には、目視で環状体の高さを判断し、手動で速度を調整することもできる。しかし、確実には、機械式や光学式の各種検出器を使用して環状体の高さを検出し、それに応じて塗布速度を自動調整するのがよい。検出器としては、光学式スイッチのほか、レーザ式距離計や超音波式距離計等が挙げられる。
ここで、環状体と円筒芯体との間隙は、目的とする膜厚を得るために重要な条件であるし、塗液の粘度は容易には変更できない場合が多いので、塗布速度を所望値にしたい場合は、環状体の内径を調整するのが好都合である。その場合、環状体が前記のように分かれた構造であると、最小内径構成部分はそのままで、それ以外の部分を、重さの違うものに交換すればよい。
また、環状体5の孔の真円度は重要である。真円度が低いと膜厚精度が低下するので、真円度(JIS B 0621(1974))は20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることはさらに好ましい。もちろん、真円度が0μmであることが最適なのであるが、加工上は困難である。
環状体5に設けられる孔6の内壁の形状は、塗液に浸る下部で芯体との間隙が広く、上部が狭い形状であれば、図5の断面図に示すように、斜めの直線状である傾斜面のほか、階段状や曲線状でもよいが、作製の容易さを鑑みると、傾斜面が好ましい。傾斜面である場合、図5に示すように、内壁の傾斜角55は、鉛直線54に対して1〜10°であるのが好ましい。傾斜角が小さいほど摩擦力が強く働き、芯体外径との間隙を均一にする作用が強くなるが、塗布速度が遅くなるので、最小値は1°程度である。傾斜角が10°を越えると、芯体外径との間隙を均一にする作用が弱いことがある。
なお、円筒芯体を上昇させて環状体が持ち上げられて、環状体が水平方向に移動し、環状体と円筒状芯体との間隙が均一になるまでには、多少の時間がかかる事もある。その場合は、円筒芯体の上部では、膜厚の均一領域が減ることとなる。
そこで、円筒芯体1の上昇方向先端部に当該先端部の外径が芯体の外径よりも大きくかつ前記環状体の孔の最小径未満となる間隔調節部材を設けることが好ましい。具体的には、例えば、図8に示すように、環状体5の位置合わせを行わせられるよう、先端部の外径が環状体5の孔6の最小径と略同等となる板状の間隙調節部材9を設ける。ここで、略同等とは、先端部の外径と孔6の最小径との比((先端部の外径)/(孔6の最小径))が、0.99〜1であることが好ましい。
間隙調節部材9は、円筒芯体1の上昇方向先端部が、間隙にほぼ等しいか、少し薄い厚さの突起物が好ましく、板状であることがより好ましい。間隙調節部材9は、図8に示すように、少なくとも3箇所以上にあればよい。この板状の場合、円筒芯体1の上端部に全周にわたってあってもよい。間隙調節部材9が取り付けられた円筒芯体1部分が環状体5の孔6が通過することで、環状体5は強制的に位置合わせが行われ、円筒芯体1の上昇直後から円筒芯体1との間隙は均一になるのである。
円筒芯体に皮膜形成用塗液を塗布する塗布工程を経た後は、加熱硬化などを行い、形成された皮膜を芯体から剥離する。
具体的には、まず、塗布された芯体の表面の塗液を乾燥後、塗膜を芯体ごと所定温度で加熱すると、樹脂材料等が硬化し、皮膜が形成される。乾燥時に塗液が下方に垂れる場合、芯体を横にして回転しながら乾燥させてもよい。形成された皮膜を芯体から剥離して無端ベルトを得る。
乾燥時に、残留溶剤を完全に除去できない場合、あるいは加熱反応時に樹脂から発生する水等の気化成分が除去しきれない場合、樹脂皮膜に膨れが生じることが避けられないことがある。これは特にPI樹脂皮膜の膜厚が50μmを越えるような場合に顕著である。
その場合、芯体の表面を、Ra:0.2〜2μm程度に粗面化することが有効である。これにより、PI樹脂皮膜から生じる残留溶剤または水の蒸気は、芯体とPI樹脂皮膜の間にできるわずかな隙間を通って外部に出ることができ、膨れを防止することができる。芯体表面の粗面化には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法がある。
無端ベルトを作製するための円筒芯体は、剥離のためには熱膨張率が大きい方が好ましいという観点から、アルミニウムが好ましい。また、皮膜の剥離性を良くするため、その表面は、クロムやニッケルでメッキしたり、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で表面を被覆したり、あるいは表面に離型剤を塗布することも有効である。
(第2の製造方法)
本発明の第2の製造方法は、円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、その孔に円筒芯体を通して塗液から相対的に垂直方向に(塗液面に対し垂直方向に)上昇させて、円筒芯体表面に塗液を塗布する塗布工程を有する製造方法であり、円筒芯体に塗液を塗布する前記塗布工程を経た後から5分以内に円筒芯体を水平にし軸心を中心に回転させる工程(回転工程)を有するものである。
塗布後の円筒芯体をそのまま(塗液に対し垂直状態)にして5分を超えて放置すると、塗膜の垂れが始まり、上端部の膜厚は薄く、下端部膜厚は薄くなる現象が起きる。そこで5分以内に円筒芯体を水平にして回転させれば塗膜の垂れは発生しない。
円筒芯体を回転させる際の回転速度は、2〜20rpmであることが好ましい。回転速度が2rpm未満では回転が遅くて液だれが発生しやすく、20rpm以上では塗膜が凸凹になりやすい。
回転工程の後においては、上記回転させた状態で、100〜200℃で30〜120分間乾燥処理を施す。その間、乾燥を促進するために、塗膜表面にはその温度以上の風を吹きつける送風処理を施すことが好ましい。その後は、第1の製造方法と同じようにして無端ベルトが製造される。
ここで、より均一な膜を形成する観点から、塗布工程については、第1の製造方法の塗布工程を適用してもよい。
(第3の製造方法)
本発明の無端ベルトの製造方法は、円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、孔に円筒芯体を通して塗液から相対的に垂直方向に上昇させて、円筒芯体表面に塗液を塗布する塗布工程を有する無端ベルトを製造する方法であって、円筒芯体を前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させる際、環状体を、その垂直方向への移動を規制した状態で設置するものである。以下、図面を参照して説明する。
図5に示す塗布装置は、円筒芯体1をその長手方向を垂直にして取り付け、環状塗布槽7に入れられた塗液2から上昇させることにより塗布する装置である(円筒芯体の昇降手段は省略)。塗液2上には、円筒芯体1の断面の外周外径よりも大きな円形の孔6を設けた環状体5を設置するが、環状体は、水平方向には自由移動が可能状態とし、垂直方向には移動を規制した状態で設置するのが第3の製造方法の特徴である。
その方法としては、例えば図6に示すように、静止時には環状体5をアーム22で沈まないように支え、塗布時に環状体5が浮上するのを支持体21で引っ張って防止する方法がある。支持体21をワイヤーやフックで構成すれば、環状体5は、水平方向には自由移動が可能で、垂直方向には移動を規制される。また、図7に示すように、アーム22に環状体5の浮上を防止する支持体21を取り付けても良い。アームや支持体は少なくとも3箇所、多くて6箇所あればよい。なお、支持体21の加工上の精度によって、環状体5は多少は垂直方向に上下してもよく、それが数mm程度以下であれば問題はない。具体的には、環状体5の高さの移動量が、3mm以内となるように規制することが好ましい。3mm以内とすることで均一な膜厚とすることができる。
但し、環状体が傾かないよう、各アームや支持体は、環状体が水平になるように取り付けなくてはならない。この発明においては、環状体は垂直方向に移動が規制されているので、塗液の落下もなく、連続的に塗布をしても、塗液中に気泡が混入することはない。
塗膜を形成した後は、第1の製造方法と同じようにして無端ベルトが製造される。ここで、均一の膜を形成する観点から、塗布工程を経た後は、第2の製造方法のように、円筒芯体に塗液を塗布した後から5分以内に円筒芯体を水平にしてその軸心を中心に回転させて乾燥させることが好ましい。
PI樹脂に既述の導電性粒子を分散させてある場合、加熱反応時の温度むらによって抵抗値のばらつきが生じやすい。そこで、乾燥皮膜を加熱反応させる時は、熱風を直に当てない方が好ましい。すなわち、円筒芯体表面に塗液を塗布して塗膜を形成した後、その塗膜に送風処理を施して乾燥皮膜を形成し、次に、その乾燥皮膜に間接的に送風する間接送風処理を施して樹脂を反応させて皮膜を形成することが好ましい。このようにすることで、樹脂中に導電性粒子を分散させた際にも抵抗値を均一にすることができる。
ここで、間接乾燥処理とは、上記乾燥皮膜の側面に向かって直に当たらないように、何らかの障害物に風を当てて、その当たった風を乾燥皮膜に当てたり、芯体の軸方向に送風したり、送風手段の風の吹出口や、吹出口と乾燥皮膜の側面との間にメッシュを設置して送風したりする処理をいう。
間接乾燥処理の具体的な方法としては、図14に示すように、円筒芯体1に覆い60をすっぽり被せて加熱炉に入れ、送風処理する方法が好ましい。この場合、円筒芯体1と覆い60の隙間は、20〜100mm程度が好ましい。隙間に熱風が入っても、乾燥皮膜に直に当たることはないので、この程度の隙間はあっても良い。円筒芯体1への伝熱は、円筒芯体1の内部に入る熱風によるほか、覆い60が加熱されることからくる輻射熱によってもなされる。PI樹脂のイミド化反応は、250〜400℃、好ましくは300〜350℃に加熱によって完結する。また、送風の温度(吹出し口の温度)も、上記温度範囲とすることが好ましい。間接乾燥処理における風速は、0.5〜7m/sであることが好ましい。
以上のようにして、本発明の無端ベルトが製造されるが、本発明の無端ベルトの製造方法の最も好ましい態様としては、第1〜第3の製造方法を少なくとも2つ組み合わせた態様である。すなわち、円筒芯体を塗布している間の該円筒芯体と前記環状体との温度を略同一とし、必要に応じて第3の製造方法に係る塗布方法により塗膜を形成し、塗膜形成後、5分以内に前記円筒芯体を水平にしてその軸心を中心に回転させて乾燥させ、必要に応じて既述の間接乾燥処理を施す無端ベルトの製造方法が、好ましい製造方法となる。
[2]無端ベルト:
本発明の無端ベルトは、既述の本発明の無端ベルトの製造方法により作製される。上述のように、本発明の塗布方法は膜厚を均一に塗布できるので、これにより作製された無端ベルトは、膜厚むらが少ないものとなる。
また、当該無端ベルトは、ロールの表面にかぶせることにより、表面が機能性被膜(例えばPI樹脂等)からなる定着ロール、帯電ロール、または転写ロール等や定着ベルト、転写ベルト、感光体等を製造することができる。
(定着ロール)
すなわち、定着ロールを製造する場合には、芯金の周囲にシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性ゴム材からなる弾性層を設けたロールの表面に、無端ベルトをかぶせる。帯電ロールや転写ロールを製造する場合、金属の筒体、または芯金の周囲に導電性を付与したゴムやスポンジ等の弾性層を設けたロールの表面に、導電性粒子を分散させた無端ベルトをかぶせる。
ロールの表面にPI樹脂からなる無端ベルトをかぶせることにより、耐久性を増すことができる。無端ベルトをロールの表面にかぶせる際は、ロールに設けられている弾性層を収縮させて行うことがよい。その場台、弾性層を冷却して収縮させてから無端ベルトをロールの表面にかぶせる方法もある。さらに、弾性層と無端ベルトのずれを防止するために、接着剤を介在させてもよい。
次に、定着ロールの表面に形成される機能性被膜に関して、簡単に述べる。該機能性被膜としては、例えば特開平9−22212号公報や特開平11−338283号公報に記載されている離型層が挙げられる。その塗布液はフッ素ゴムを主体とし、必要に応じてフッ素樹脂粒子やSiC、Al23等の無機粒子を混合したものが挙げられる。
フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VdF)を主成分とするもの、VdFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、上記VdF−HFP共重合体とテトラフルオロエチレン(TFE)との3元共重合体、TFEとプロピレンとの交互共重合体等のフッ素系エラストマーが挙げられる。この他、VdF−クロロトリフルオロエチレン共重合体や、例えばシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム等とVdFを主成分とする上記フッ素系エラストマーとの混合物を用いることもできる。これらのフッ素ゴムは、前記弾性層の構成材料とすることもできる。なお、フッ素ゴムを主体とする塗液の粘度は200mPa・s以上である場合が多く、このような高粘度の塗液を用いると、従来の浸漬塗布方法では膜厚が厚くなりすぎるが、環状体を用いることにより、塗布が可能となる。離型層の厚さは5〜30μmの範囲が好ましい。
(帯電ロール、転写ロール)
次に、本発明の無端ベルトを使用し、帯電ロール及び転写ロールの表面に形成される機能性被膜に関して、簡単に述べる。
これらの機能性被膜に用いられる塗液は、ナイロン系やウレタン系、アクリル系などのバインダー樹脂の、単独、または導電性粒子を分散した液である。なお、弾性層を有しないハード転写ロールに適用される塗液は、後述する転写ベルトの材料と同じであってよい。
これらの塗液において、導電性粒子は、無端ベルトを帯電体或いは転写ベルトとして使用する場合に挙げるものと同じでよいが、一般にバインダー樹脂溶液に導電性粒子を分散すると、粘度が10〜30%上昇する性質があり、粘度は200mPa・s以上になることがある。そのような場合、従来は浸漬塗布方法では膜厚が厚くなりすぎるので塗布できなかったが、環状体を用いることにより、やはり塗布が可能となる。帯電ロールまたは転写ロールに塗布される被膜の厚さは2〜30μmの範囲が好ましい。
(定着ベルト)
本発明の無端ベルトから定着ベルトを製造するには、無端ベルト表面にトナーの付着を防止するために、非粘着性被膜を形成することが好ましい。非粘着性の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂層の厚さは5〜50μmが好ましく、10〜45μmがより好ましい。
フッ素樹脂層を形成するには、その水分散液を塗布して焼き付け加工する方法を適用することが好ましい。塗布方法としては、図4に示すような浸漬塗布方法が塗膜の平滑性や膜厚の均一性の面で好ましい。浸漬塗布をするには、皮膜形成用塗膜4を形成した円筒芯体1を、フッ素樹脂分散液10に浸漬し、次いで上昇させて、フッ素樹脂の塗膜11を形成する。
その際、芯体表面にフッ素樹脂分散液が塗布されたり、芯体と塗膜の隙間にフッ素樹脂分散液が侵入することを防止するために、芯体をその中心軸を垂直にした際に下端側となる部分の塗膜の端部、および芯体表面の露出部分があれば、その部分に被覆処理12を施すことが好ましい。
浸漬塗布装置には、必要に応じて、ポンプなどの、容器に塗液を入れる塗液供給手段、円筒芯体を塗布液に浸漬した際に、容器上部から溢流する塗液を受ける溢流受け手段、溢流塗液を再度容器に循環させる再供給手段、などを有していてもよい。
フッ素樹脂の水分散液の粘度が高く、やはり膜厚が厚くなりすぎる場合には、環状体を用いる本発明の塗布方法を採用することもできる。
塗布後、溶媒を乾燥し、フッ素樹脂を焼成する。焼成の際に、皮膜形成用塗膜の熱処理を同時に行ってもよい。
前記フッ素樹脂の水分散液の粘度が高く、やはり膜厚が厚くなりすぎる場合には、環状体を用いる既述の方法を採用することもできる。また、塗布後、溶媒を乾燥し、フッ素樹脂を焼成する。焼成の際に、皮膜形成用塗膜の加熱処理を同時に行ってもよい。
(感光体)
本発明の無端ベルトを有機感光体に適用する場合、本発明の製造方法に係る塗布方法は、膜厚が厚い電荷輸送層に適用するのがよい。電荷発生層は一般に、膜厚が薄いので、従来の浸漬塗布方法で塗布可能である。但し、膜厚の厚い電荷発生層が必要な場合は、本発明の塗布方法を用いることができる。
電荷輸送層に関して、簡単に述べる。電荷輸送層はヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物、トリフェニルアミン化合物などの電荷輸送剤を、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステルなどのバインダー樹脂と混合して塗液にされる。バインダー樹脂は分子量が大きいほど摩耗しにくくなり好ましいが、分子量が大きいと塗液にした際の粘度が高くなるので、従来の浸漬塗布方法では膜厚が厚くなり過ぎて、塗布が困難であった。また、粘度を下げるために希釈溶剤の量を多くすれば、垂れによる膜厚の不均一が拡大する問題があった。しかしながら、既述の塗布方法では、塗液の粘度が高い場合でも、膜厚を制御することができるので、従来の浸漬塗布方法より分子量が大きなバインダー樹脂を採用することができる。
塗液には各種の溶媒が用いられる。この溶媒として、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素;アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;が挙げられる。これらを単独又は複数を混合して使用することもできる。
塗液の固形分濃度は20〜50%程度、粘度は200〜8000mPa・s程度が好ましく、より好ましくは400mPa・s以上である。これは、従来の浸漬塗布方法に適用される電荷輸送層の塗液より、高濃度、高粘度である。電荷輸送層の膜厚は、15〜40μm程度が一般的であるが、本発明では特に25μm以上の膜厚を塗布したい場合に好ましい。塗布の条件として、上昇速度が0.1〜0.8m/min程度であるのが好ましい。
なお、本発明において、円筒芯体に形成された塗膜に顔料が含有されている場合、それらの厚さは、以下に説明するようにして測定することが好ましい。
円筒芯体上に形成された塗膜もしくは皮膜に顔料が分散されている場合、それらに光透過性はないが、皮膜表面が平滑であるので反射率はきわめて高い。そこで、塗膜もしくは皮膜の膜厚測定は、静置状態を防ぎ、かつ効率的に測定するために、円筒芯体を水平回転させながら、レーザ変位センサおよび渦電流式変位センサにより行うことができる。
例えば、塗膜の厚さを測定する場合、まず、レーザ変位センサにより塗膜までの距離を測定する。その後、渦電流式変位センサにより円筒芯体表面までの距離を測定し、その差から膜厚を算出することができる。ここで、円筒芯体を水平回転させながら測定を行うことが好ましいが、その理由は、塗膜形成工程直後の塗膜はポリイミド前駆体を溶解する溶剤が約8割含まれており、かつこの溶剤が常温では蒸発しにくく、静置させると徐々に垂れが発生してしまうので、この垂れを防止することによる。一方、乾燥後の皮膜は、溶剤が約4割に減少するので静置しても垂れることはない。
レーザ変位センサは塗膜表面もしくは皮膜表面によりレーザ光が反射されるので、それらの外周面までの距離を測定することができる。一方、渦電流センサは塗膜もしくは皮膜の存在にかかわらず、金属体までの距離を測定することができる。そのため、渦電流センサの導入により、円筒芯体を水平回転させる際の振れや円筒芯体自体の変形があっても、両者の差をとれば対処することができ、膜厚測定が可能となる。
ここで用いるレーザ変位センサは、例えば、レーザ波長が670nmで、レーザスポット径が楕円(短径30μm、長径850μm)のものを使用することで、塗膜もしくは皮膜の曲面に対する測定が可能となり、光沢面の測定が可能なものを使用する。一方、渦電流式変位センサは円筒芯体の材質がアルミやステンレスに対応すべくオールメタル仕様のものを使用する。
以上により、レーザ変位センサと渦電流式変位センサとを併用することで、円筒芯体表面の塗膜もしくは皮膜の膜厚測定が可能となり、さらに円筒芯体を水平回転させる際に振れが発生した場合や、円筒芯体自体に変形があった場合でも、これらの影響を受けることなく膜厚が測定可能となる。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
ポリイミド前駆体のN−メチル−2−ピロリドン溶液(商品名:UワニスS、宇部興産(株)製)を塗液2とし、液温を20℃にした。固形分濃度は約18%、粘度は50Pa・sである。これを図1のように内径500mm、高さ1000mmの塗布槽3に入れた。
外径366mm、長さ650mmのアルミニウム製円筒を用意し、球形アルミナ粒子(不二製作所社製、粒径105〜125μm)によるブラスト処理により、表面をRa:1.5μmに粗面化した後、表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理し、円筒芯体1とした。
一方、環状体5として、高さが50mm、外径が450mmで、最も狭い部分の内径が367.3mmの孔6を設けたアルミニウム製の中空体を作製した。その内壁は図1に示すように、傾斜面であった。アルミニウム製円筒と環状体と同じ温度(20℃)の環境で恒温槽中に保管し、アルミニウム製円筒(円筒芯体)と環状体と温度を20℃とした。
環状体を上記塗液(液温は20℃)に浮かべた。環状体の液面からの高さは、目視によって検出するようにした。まず、環状体を沈まないように固定して、芯体1をその中に1m/minの速度で浸漬した。次いで環状体の固定を解除し、芯体を0.7m/minの速度で上昇させたところ、環状体はすぐに液面より約20mm持ち上げられ、芯体の上昇と共に、環状体の高さは増した。そこで、速度を徐々に減じたところ、芯体が約60mm上昇した時点で、環状体の高さは約20mmで安定したので、芯体の上昇速度を一定にした。その時の速度は0.6m/minであった。
芯体の上昇途中で環状体が芯体に接触することはなく、塗布後には、芯体に濡れ膜厚が約480μmの塗膜4が形成された。その膜厚は芯体と環状体の孔の間隙により定まり、芯体の上昇速度には左右されなかった(塗布工程)。
その後、170℃で45分間乾燥し、次いで芯体を縦にして340℃で30分間加熱して樹脂を反応させた。室温に冷えてから皮膜を取り出すことにより、ポリイミド樹脂製の無端ベルトを得ることができた。
膜厚を測定すると、濡れ膜厚が約480μmの被膜が形成された。最終膜厚は80μmで周長は1149.24mmであり、当初目的の膜厚と周長の皮膜が得られた。図9に皮膜の軸方向の平均膜厚分布を示す。膜厚はほぼ一定である。図10に皮膜の周方向の平均膜厚分布を示す。膜厚はほぼ一定である。
(実施例2)
恒温槽中で、さらに送風を行ってアルミニウム製円筒の温度を25℃とし環状体の温度を20℃とした以外は、実施例1と同様にして無端ベルトを作製した。膜厚等の品質は実施例1と同等であったが、送風を行ったため塗布工程に要した時間が、実施例1より短いものとなった。
(実施例3)
アルミニウム製円筒および環状体を塗布液中に浸漬させて、アルミニウム製円筒、環状体および塗布液の温度を20℃とした以外は、実施例1と同様にして無端ベルトを作製した。膜厚等の品質は実施例1と同等であったが、アルミニウム製円筒および環状体を使用する塗布液中に浸漬したため、3者を効率よく略同一の温度とすることができた。
(実施例4)
ポリイミド前駆体のN−メチル−2−ピロリドン溶液(商品名:UワニスS、宇部興産(株)製)を塗液2とし、液温を20℃にした。固形分濃度は約18%、粘度は50Pa・sである。これを図1のように内径500mm、高さ1000mmの塗布槽3に入れた。
外径366mm、長さ650mmのアルミニウム製円筒を用意し、球形アルミナ粒子(不二製作所社製、粒径105〜125μm)によるブラスト処理により、表面をRa:1.5μmに粗面化した後、表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理し、円筒芯体1とした。
一方、環状体5として、高さが50mm、外径が450mmで、最も狭い部分の内径が367.3mmの孔6を設けたアルミニウム製の中空体を作製した。その内壁は図1に示すように、傾斜面であった。
目視によって検出するようにした。まず、環状体を沈まないように固定して、芯体1(20℃)をその中に1m/minの速度で塗液2に浸漬した。次いで環状体の固定を解除し、芯体を0.7m/minの速度で上昇させたところ、環状体(20℃)はすぐに液面より約20mm持ち上げられ、芯体の上昇と共に、環状体の高さは増した。そこで、速度を徐々に減じたところ、芯体が約60mm上昇した時点で、環状体の高さは約20mmで安定したので、芯体の上昇速度を一定にした。その時の速度は0.6m/minであった。
芯体の上昇途中で環状体が芯体に接触することはなく、塗布後には、芯体に濡れ膜厚が約480μmの塗膜4が形成された。その膜厚は芯体と環状体の孔の間隙により定まり、芯体の上昇速度には左右されなかった(塗布工程)。
その後(塗布工程による塗布を行った後)、3分以内に芯体の軸方向を水平にして6rpmで回転させながら、170℃で45分間乾燥し、次いで芯体を縦にして340℃で30分間加熱して樹脂を反応させた。室温に冷えてから皮膜を取り出すことにより、ポリイミド樹脂製の無端ベルトを得ることができた。
膜厚等の品質は実施例1と同等であった。
(実施例5)
5分間で円筒芯体の軸方向を水平にして6rpmで回転させながら、170℃で45分間乾燥した以外は、実施例4と同様にして無端ベルトを作製した。膜厚等の品質は実施例1と同等であった。
(比較例1)
実施例1において、アルミニウム製円筒を30℃の環境で保管して30℃とし、環状体は20℃の環境で保管した後、実施例1と同様に塗布した。濡れ膜厚が約440μmと実施例1より薄い被膜が形成された。最終膜厚も73μmにしかならず、周長は1149.50mmと長くなり、当初目的の膜厚及び周長の物が得られなかった。
(比較例2)
実施例1において、アルミニウム製円筒を40℃の環境で保管して40℃とし、環状体は20℃の環境で保管した後、実施例1と同様に塗布した。濡れ膜厚が約400μmと実施例1より薄い被膜が形成された。最終膜厚も66μmにしかならず、周長は1149.77mmと長くなり、当初目的の膜厚及び周長の物が得られなかった。
(比較例3)
実施例1において、液温を30℃にし、アルミニウム製円筒を27℃、環状体を20℃の環境で保管した後、実施例1と同様に塗布した。濡れ膜厚が約522μmと実施例1より厚い被膜が形成された。最終膜厚も87μmと厚くなった。周長は1149.24mmとなり、当初目的の膜厚の物が得られなかった。液温が高いことにより塗布液に浸かっていたリングの温度が上がって膨張し、膜厚が厚くなったためである。
(比較例4)
実施例1において、液温を40℃にし、アルミニウム製円筒を27℃、環状体を20℃の環境で保管した後、実施例1と同様に塗布した。濡れ膜厚が約564μmと実施例1より厚い被膜が形成された。最終膜厚も94μmと厚くなった。周長は1149.24mmとなり、当初目的の膜厚の物が得られなかった。液温が高いことにより塗布液に浸かっていたリングの温度が上がって膨張し、膜厚が厚くなったためである。
(比較例5)
塗布後6分で芯体の軸方向を水平にした以外は実施例4と同様にして無端ベルトを作製しようとしたところ、液だれが発生していた。図11に皮膜の軸方向の平均膜厚分布を示す。塗布開始側の膜厚は薄く、塗布終了側の膜厚は厚くなっている。
(比較例6)
円筒芯体を水平にして回転速度を1rpmとした以外は比較例5と同様にして無端ベルトを作製しようとしたところ、回転時に液だれが発生しているのが観察された。図12に皮膜の周方向の平均膜厚分布を示す。膜厚が不均一であることがわかる。
(比較例7)
円筒芯体を水平にして回転速度を25rpmとした以外は比較例5と同様にして無端ベルトを作製しようとしたところ、得られた皮膜が凸凹になっているのが観察された。図13に皮膜の周方向の平均膜厚分布を示す。膜厚が不均一であることがわかる。
(実施例6)
ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:UワニスS、宇部興産(株)製)を塗液3とし、液温を20℃とした。固形分濃度は18%、粘度は約5Pa・sである。これを図1に示すような内径28mm、高さ50mmの環状塗布槽に入れた。なお、環状塗布槽の中央には内径67mmの穴を設けた0.5mm厚の軟質ポリエチレン製の環状シール材8を取り付け、その穴に、外径28mm、長さ50mmのポリアセタール樹脂製の中間体を嵌めた。中間体は芯体を塗布しない時に液の流出を防止するために嵌めるものである。
一方、外径30mm、長さ400mmのアルミニウム製円筒を用意し、球形アルミナ粒子(不二製作所社製、粒径105〜125μm)によるブラスト処理により、表面をRa0.8μmに粗面化した後、表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で30分間、焼き付け処理し、芯体とした。
環状体として、高さが25mm、外径が60mmで、最も狭い部分の内径が31.2mmの孔6を設けたポリアセタール樹脂製の中空体を作製した。その内壁は傾斜面であり、鉛直線となす傾斜角は7°とした。また、孔6の真円度は13μmであった。環状体の外側面には、長さ30mm、太さ1mmのステンレス棒材からなるアーム22を3本、等間隔に取り付けた。該アームには、図7に示すように、環状体の上昇高さが1mm以内に規制される支持体21をそれぞれ取り付けた。
次いで、アーム22を塗布槽の縁に載せるようにして、環状体(20℃)を塗液上に設置した。次いで芯体(20℃)を0.7m/minの速度で上昇させたところ、環状体はすぐに上昇したが、支持体21の作用により、上昇高さ(規制値)は1mm以内であった。
芯体の上昇途中で環状体が芯体に接触することはなく、塗布後には、芯体に濡れ膜厚が約600μmの塗膜4が形成された。その膜厚は芯体と環状体の孔の間隙により定まり、芯体の上昇速度には左右されなかった。
その後、芯体の軸方向を水平にして20rpmで回転させながら、120℃で60分間乾燥し、次いで芯体を縦にして200℃で30分間、380℃で1時間加熱して樹脂を反応させた。室温に冷えてから皮膜を取り出すことにより、ポリイミド樹脂製の無端ベルトを得ることができた。
膜厚を測定すると、上端部から30mmを除いて、70μmで均一であった。上端部から30mm内の膜厚は、周方向で厚い部分と薄い部分があったが、これは、環状体が水平方向に移動して、芯体との間隙が均一に合うまでに、多少の時間がかかったためと考えられる。
(実施例7)
実施例6において、芯体の上昇方向先端部に、図8に示すように間隙調節部材9として、5mm角に切った0.5mm厚のポリエチレンシートを3箇所、120°ずつずらして貼り付けた。次いで、他は実施例1と同様にして塗布作業を行った。これにより、環状体は塗布の最初から中心位置が合わされたことになる。乾燥後に間隙調節部材を除去した。
得られた無端ベルトの膜厚を測定すると、上端から10mmより下の部分は70μmで均一であり、実施例1よりも膜厚均一部分は多く得られた。
(比較例8)
実施例6において、環状体を使用しないで芯体への塗布を行ったところ、濡れ膜厚が約2mm以上に塗布され、厚すぎるばかりでなく、下端からの液の滴下があり、乾燥することが困難であった。環状体を使用しないと、このように膜厚が厚くなりすぎた。
(比較例9)
実施例6において、支持体22を取り付けないで塗布を行ったところ、環状体は芯体の上昇と共にどんどん上昇し、芯体が約90mm上昇した時点で環状体の下部が液面から離れ、塗布終了時には約100mm持ち上がり、芯体の上昇停止と共に環状体は液上に落下した。その際、塗液には細かい気泡が多数混入した。塗液は粘度が高いために、気泡はなかなか消える事はなく、次の塗布作業に支障をきたした。また、厚みも不均一であった。
(実施例8)
実施例6と同じようにしてPI前駆体を塗布し、乾燥後の芯体を取り出し、一端の塗膜端部に被覆処理をした。別途、PFAの水性塗料(商品名:710CL、三井デュポンフロロケミカル社製、濃度60%、粘度400mPa・s、溶媒として水のほかに、エタノール、t−ブタノールを含む)を、内径90mm、高さ480mmの塗布槽に入れた。この中に、前記芯体を、被覆を下側にして垂直にし、上部のPI前駆体皮膜を5mmだけ残して浸漬した。次いで0.3m/分の速度で引き上げ、PFA塗膜を形成した。
80℃で10分間の乾燥後、被覆を除去した。次に150℃で20分間、続いて200℃で20分間加熱乾燥させた。これにより、PI前駆体皮膜からは溶剤が除去され、PFA塗膜からは水が除去された。その後、380℃で30分間加熱してPI前駆体を反応させてPI樹脂皮膜を形成すると共に、PFA塗膜を焼成した。室温に冷えた後、芯体から皮膜を取り外し、無端ベルトを得た。膜厚を測定すると、上端から30mmを除いて、PI樹脂は75μm、PFA層は30μmであった。この無端ベルトを320mmの長さに切断して、無端定着ベルトとした。PI樹脂とPFA層の密着性は強固であった。
(実施例9)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンとを等モル反応させて、PI前駆体の溶液を用意した。濃度は20質量%、粘度は約10Pa・sに調整した。その溶液に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比23%で混合し、次いで対向衝突型分散機により2時間分散し、塗液4とし、液温を20℃とした。
一方、外径366mm、長さ500mmのアルミニウム製円筒を用意し、その表面には実施例6と同じく粗面化処理とシリコーン系離型剤の処理をして、芯体とした。環状体はアルミニウム製で、外径400mm、最小内径367.2mm、高さ30mmのものを作製した。その内壁は傾斜面で、鉛直線との傾斜角は5°とした。また、最小内径部の真円度は15μmであった。
環状体(20℃)の側面には図6に示すように、3本のアーム22を等間隔に取り付けた。さらに、環状体の底部と塗布槽の底部とを支持体21で連結し、環状体が2mm以上、持ち上がらないようにした。
次いで、芯体(20℃)を1m/minの速度で上昇させて塗布を行ったところ、濡れ膜厚が約600μmのPI前駆体皮膜が形成された。次いで、実施例1と同様にして乾燥と加熱を行った。ただし、乾燥時は熱風が上方から約5m/sの速度で吹き降りて芯体に当たり、加熱時は熱風が側面から約2m/sの速度で芯体に当たっていた。
室温に冷えてからPI樹脂皮膜を取り外すことにより、PI樹脂製の無端ベルトを得ることができた。この無端ベルトの膜厚は75μmであり、また、体積抵抗を測定すると、約109Ωcmであり、電子写真用転写ベルトとして使用することができた。
ここで、上記無端ベルトを切り開いて展開し、体積抵抗率を細かく測定した結果を図16に示す。図の横軸は無端ベルトの周方向の位置、縦軸は無端ベルトの軸方向の位置を示し、数字は任意座標である。また、図中の数値は体積抵抗率の指数を示す(図15も同様)。この結果によれば、体積抵抗率は109.1〜109.4Ωcmの範囲であった。なお、体積抵抗率は、三菱油化(株)製ハイレスターIPのHRプローブ)を用いて測定し、JIS K6991に従って、電極に100Vを印加し、30秒後の電流値から求めた。
(実施例10)
実施例9において、図14に示すように、芯体1の加熱(反応)の際に、内径466mm(芯体との隙間50mm)、高さ550mm、厚さ0.5mmの覆い60をかぶせて、熱風が芯体に当たらないようにした。他は同様にして無端ベルトを作製し、実施例9と同様に展開して体積抵抗率を細かく測定した結果を図15に示す。その結果、体積抵抗率は109.2〜109.3Ωcmの範囲であり、むらは実施例9のものより、さらに小さくすることができた。この体積抵抗率の範囲は、電子写真用転写ベルトとして使用する場合、実施例9のものより高画質を要求されるカラープリンターにも対応できる精度である。
なお、塗膜および皮膜の膜厚は、以下のようにして測定した。すなわち、円筒芯体を水平にし、6rpmで回転させながら、レーザ変位センサ(キーエンス製、商品名;LK−035)と渦電流式変位センサ(キーエンス製、商品名;EX−022)を備えた装置にて芯体からのそれぞれの距離を測定し、その差から膜厚を計測した。
また、レーザ変位センサのレーザ波長は670nmで、レーザスポット径が楕円(短径30μm、長径850μm)のものを使用した。
本発明の塗布方法を説明するための概略構成図である。 本発明の他の塗布方法を説明するための概略構成図である。 最小内径部分とそれ以外の構成部分に分けた構造の環状体の断面図である。 浸漬塗布方法を説明するための断面図である。 本発明の塗布方法を説明するための概略断面図である。 本発明の塗布方法を説明するための詳細断面図である。 本発明の塗布方法の他の実施態様である。 本発明の間隙調節部材を説明するための概略図である。 塗布後3分間で芯体を静置したときの皮膜の軸方向の平均膜厚分布を説明するための図である。 乾燥中6rpmで回転させたときの周方向平均膜厚分布を説明するための図である。 塗布後6分間で芯体を静置したときの皮膜の軸方向の平均膜厚分布を説明するための図である。 乾燥中1rpmで回転させたときの周方向平均膜厚分布を説明するための図である。 乾燥中25rpmで回転させたときの周方向平均膜厚分布を説明するための図である。 間接乾燥の方法の例を概略的に説明する説明図である。 実施例10の無端ベルトの体積抵抗率の結果を示す図である。 実施例9の無端ベルトの体積抵抗の結果を示す図である。
符号の説明
1…円筒芯体、2…塗液、3…塗布槽、4…塗膜、5…環状体、6…環状体の孔、7…環状塗布槽、8…シール材、9…間隙調節部材、10…フッソ樹脂分散液、11…フッソ樹脂被膜、12…被覆処理、13…塗布槽、51…支持棒、52…最小内径構成部分、53…最小内径構成部分以外の部分、21…支持体、22…アーム、54…鉛直線、55…孔の内壁の傾斜角、60…覆い

Claims (11)

  1. 円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、前記孔に前記円筒芯体を通して前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させて、前記円筒芯体表面に塗液を塗布して無端ベルトを製造する方法であって、
    少なくとも、前記円筒芯体を塗布している間の該円筒芯体と前記環状体との温度を略同一とすることを特徴とする無端ベルトの製造方法。
  2. 前記円筒芯体を塗布している間の該円筒芯体と前記環状体との温度差の大きさが5℃以内であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトの製造方法。
  3. 少なくとも、前記円筒芯体を塗布している間の塗布液と前記円筒芯体との温度差の大きさが5℃以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の無端ベルトの製造方法。
  4. 円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、前記孔に前記円筒芯体を通して前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させて、前記円筒芯体表面に塗液を塗布して無端ベルトを製造する方法であって、
    前記円筒芯体に塗液を塗布した後から5分以内に前記円筒芯体を水平にしてその軸心を中心に回転させることを特徴とする無端ベルトの製造方法。
  5. 前記回転させる際の回転速度が2〜20rpmであることを特徴とする請求項4に記載の無端ベルトの製造方法。
  6. 円筒芯体の外径よりも大きな円形の孔を有する環状体を塗液上に自由移動可能状態で設置し、前記孔に前記円筒芯体を通して前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させて、前記円筒芯体表面に塗液を塗布して無端ベルトを製造する方法であって、
    前記円筒芯体を前記塗液から相対的に垂直方向に上昇させる際、前記環状体を、その垂直方向への移動を規制した状態で設置することを特徴とする無端ベルトの製造方法。
  7. 前記環状体の孔の内壁が傾斜した面であり、その傾斜角が鉛直線に対して1〜10°であることを特徴とする請求項6に記載の無端ベルトの製造方法。
  8. 前記環状体の孔の真円度が20μm以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の無端ベルトの製造方法。
  9. 前記円筒芯体の相対的上昇方向先端部に、その外径が前記円筒芯体の外径よりも大きく、かつ前記環状体の孔の最小径未満となる間隔調節部材を設け、前記間隔調節部材により前記芯体の上昇時に前記芯体と前記環状体との間隙を均一に合わせることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の無端ベルトの製造方法。
  10. 前記円筒芯体表面に塗液を塗布して塗膜を形成した後、該塗膜に送風処理を施して乾燥皮膜を形成し、次に、該乾燥皮膜に間接的に送風する間接送風処理を施して樹脂を反応させて皮膜を形成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の無端ベルトの製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに1項に記載の無端ベルトの製造方法によって製造されることを特徴とする無端ベルト。
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