JP2005264212A - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量%で、C:0.020〜0.050%、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.01%以下およびNb:0.01〜0.3%を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、0.2≦(Nb/93)/(C/12)≦0.7 (式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%))なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有し、引張強度TS、全伸びElおよび平均r値の積(TS×El×平均r値)で表される強度−延性−深絞り性バランスの値が24000MPa・%以上であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
複合組織鋼板のr値を改善する試みとして、例えば、特許文献1あるいは特許文献2の技術がある。
質量%で、0.020%C−0.5%Si−2.0%Mn−0.035%P−0.005%S−0.03%Al−0.002%Nを基本成分とし、これに原子比でNb/C=0〜1.2となるようNbを添加した種々の鋼素材を、1250℃に加熱してこの温度で均熱保持した後、仕上圧延出側温度(仕上圧延終了温度ともいう)が880℃となるように熱間圧延を行って、板厚を4mmとした。さらに、仕上圧延終了後、コイル巻取相当処理として650℃で3時間の保温後、炉冷する処理を施した。次いで圧下率70%の冷間圧延を施して板厚1.2mmとし、引き続きこれらの冷延板を700℃まで平均昇温速度10℃/sで昇温し、その後850℃まで平均昇温速度3℃/sで加熱し、焼鈍温度850℃で120秒間加熱保持した後、該焼鈍温度から500℃までの温度域を冷却速度15℃/sとなるようにして室温まで冷却する連続焼鈍を施した。
平均r値={rL+(2×rD)+rC}/4
C:0.020〜0.050%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.1%、
N:0.01%以下および
Nb:0.01〜0.3%
を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、
0.2≦(Nb/93)/(C/12)≦0.7 (式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有し、引張強度TS、全伸びElおよび平均r値の積(TS×El×平均r値)で表される強度−延性−深絞り性バランスの値が24000MPa・%以上であることを特徴とする高強度鋼板。
(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2 (式中のTi、SおよびNは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満たし、かつ、NbおよびTiの含有量とC含有量が、
0.2≦{(Nb/93)+(Ti/48)}/(C/12)≦0.7 (式中のNb、TiおよびCは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満たすことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高強度鋼板。
該熱間圧延工程は、仕上圧延出側温度:800℃以上で仕上圧延を施した後、巻取温度:400〜720℃で巻き取る工程を包含し、
該冷間圧延工程は、圧下率40%以上で冷間圧延を施す工程を包含し、
該焼鈍工程は、700〜800℃の温度域を平均昇温速度:0.5〜5℃/sとして800〜950℃の焼鈍温度に加熱した後、該焼鈍温度から少なくとも500℃までの温度域を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する工程を包含することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
本発明では、Nb含有量とC含有量が、0.2≦(Nb/93)/(C/12)≦0.7を満たすように設定することで、敢えてNbCとして析出固定されないCを存在させている。従来このようなCの存在が{111}再結晶集合組織の発達を阻害するとされてきたが、本発明では、全C含有量をNbCとして析出固定せずに高r値化を達成している。これは、固溶Cの存在による{111}再結晶集合組織形成に対する負の要因よりも、Nb添加および熱間圧延時の仕上圧延出側温度を適正に制御することで、熱延板組織を微細化し、加えてマトリックス中に微細なNbCを析出させることで、冷間圧延時に粒界近傍に歪を蓄積させて、粒界からの{111}再結晶粒の発生を促進するという正の要因の方が大きいためと考えられる。
特にマトリックス中にNbCを析出させることの効果は、従来の極低炭素鋼程度のC含有量では有効ではなく、本発明のC含有量の適正範囲(0.020〜0.050質量%)において初めてその効果を発揮するものと推測され、このC含有量の適正範囲を見出したことが本発明の技術思想の基盤となっている。
まず、本発明の鋼板の成分組成を限定した理由について説明する。なお、鋼板の成分組成における元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。
Cは、後述のNbとともに本発明における重要な元素である。Cは、高強度化に有効であり、フェライト相を主相としマルテンサイト相を含む第2相を有する複合組織の形成を促進して、TS≧500MPaとするため、本発明では複合組織形成および強度確保の観点から、Cを0.020%以上含有する必要がある。一方、0.050%を超えるCの含有は、良好なr値が得られなくなることから、C含有量の上限を0.050%とし、好ましくは0.035%、より好ましくは0.03%とする。
Siは、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC含有量を上昇させてフェライト相とマルテンサイト相の複合組織を形成させやすくする他、固溶強化の効果がある。上記効果を得るためには、Siは0.01%以上含有することが必要であり、好ましくは0.05%以上とする。一方、Siが1.0%を超えて含有すると、熱間圧延時に赤スケールと称される表面欠陥が発生するため、鋼板とした時の表面外観を悪くする。
Mnは、高強度化に有効であるとともに、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を低くする作用があり、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト相の形成を促す。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止するのに有効な元素でもある。このような観点から、Mnは1.0%以上含有する必要があり、好ましくは1.2%以上とする。一方、3.0%を超える過度のMnを含有することは、r値および溶接性を劣化させるので、Mn含有量の上限は3.0%とする。
Pは、固溶強化の効果がある元素である。しかしながら、P含有量が0.005%未満では、その効果が現れないだけでなく、製鋼工程において脱燐コストの上昇を招く。したがって、Pは0.005%以上含有するものとし、好ましくは0.01%以上含有する。一方、0.1%を超える過剰なPの含有は、Pが粒界に偏析し、耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。従って、P含有量の上限は0.1%とした。
Sは、不純物であり、熱間割れの原因になる他、鋼中で介在物として存在し鋼板の諸特性を劣化させるので、できるだけ低減する必要がある。具体的には、S含有量は、0.01%までは許容できるため、0.01%以下とする。
Alは、鋼の脱酸元素として有用である他、不純物として存在する固溶Nを固定して耐常温時効性を向上させる作用があり、かかる作用を発揮させるためには、Al含有量は0.005%以上とする必要がある。一方、0.1%を超えるAlの含有は、高合金コストを招き、さらに表面欠陥を誘発するので、Al含有量の上限を0.1%とする。
Nは耐常温時効性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが好ましい元素である。N含有量が多くなると耐常温時効性が劣化し、固溶Nを固定するために多量のAlやTi添加が必要となるため、できるだけ低減することが好ましいが、0.01%までは許容できるため、N含有量の上限を0.01%とする。
Nbは、本発明において最も重要な元素であり、熱延板組織の微細化および熱延板中にNbCとしてCを析出固定する作用を有し、高r値化に寄与する元素である。このような観点から、Nbは0.01%以上含有する必要がある。一方、本発明では、焼鈍後の冷却過程でマルテンサイト相を形成させるための固溶Cを必要とするが、0.3%を超える過剰のNb含有は、この形成を妨げることになるので、Nb含有量の上限を0.3%とする。
なお、本発明では、上記した組成に加えてさらに下記に示すMoおよびCrの1種または2種を添加してもよい。
MoおよびCrは、Mnと同様、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を遅くする作用をもち、焼鈍工程における冷却時にマルテンサイト相の形成を促す元素であり、強度レベル向上に効果がある。また、NbほどではないがCを析出固定する作用を有し、高r値化に寄与する元素でもある。これらの効果を得るためには、MoおよびCrは0.05%以上含有することが好ましい。しかしながら、0.5%を超えて過剰にMo,Crを添加しても、これらの効果が飽和するだけでなく、特に高価なMoの過剰添加はコストの上昇を招くことから、MoおよびCrの含有量の上限は0.5%とすることが好ましい。
本発明の製造方法に用いられる鋼スラブの組成は、上述した鋼板の組成と同様であるので、鋼スラブ組成の限定理由の記載は省略する。
スラブ加熱温度は、析出物を粗大化させることにより、{111}再結晶集合組織を発達させて深絞り性を改善するため、低い方が望ましい。しかし、加熱温度が1000℃未満では、圧延荷重が増大し、熱間圧延時におけるトラブル発生の危険性が増大するので、スラブ加熱温度は1000℃以上にすることが好ましい。なお、酸化重量の増加に伴うスケールロスの増大などから、スラブ加熱温度の上限は1300℃とすることが好適である。
NbCとして析出固定されるC量が鋼中の全C量に占める割合(以下、単に「析出固定されるC量の割合」という。)とは、熱延板の析出物を化学分析(抽出分析)して得られるNb量(析出Nb量)から次式にて算出される値である。
[C]fix=100×12×([Nb]/93)/[C]total
なお、式中、[C]fixは析出固定されるC量の割合(%)、[C]totalは鋼中の全C含有量(質量%)、および[Nb]は析出Nb量(質量%)である。
従来軟鋼板においては、熱延板の結晶粒径を微細化するほど、r値を高める効果があることが知られている。本発明においては、特に小傾角粒界も含めて粒径を測定した場合、その平均結晶粒径が8μm以下で高r値化に効果が現れる。なお、結晶粒径の測定方法としては、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)について光学顕微鏡を用いて微視組織を撮像し、JIS G O552に準じた切断法により公称粒径dnとして求めればよく、この他、EBSP(Electron Back Scatter Diffraction Pattern)等の装置を用いて求めてもよい。
次いで、該熱延板に酸洗後冷間圧延を施し冷延板とする。ここで熱延板はスケールを除去するために酸洗を行う。酸洗は通常の条件にて行えばよい。冷間圧延条件は、所望の寸法形状の冷延板とすることができればよく、特に限定されないが、冷間圧延時の圧下率は少なくとも40%以上とすることが好ましく、より望ましくは50%以上とする。高r値化には高冷延圧下率が一般に有効であり、圧下率が40%未満では、{111}再結晶集合組織が発達せず、優れた深絞り性を得ることが困難となる。一方、この発明では冷間圧下率を90%までの範囲で高くするほどr値が上昇するが、90%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、冷間圧延時のロールへの負荷も高まるため、上限を90%とすることが好ましい。
次に、上記冷延板に焼鈍を施す。該焼鈍は上記冷延板に700〜800℃の温度域の平均昇温速度を0.5〜5℃/sとして800〜950℃の温度域の焼鈍温度まで加熱し、次いで焼鈍温度から少なくとも500℃までの温度域を平均冷却速度:5℃/s以上として冷却し、さらに、必要に応じて、200〜400℃の温度で60秒間以上保持する。
また、上記保持処理は、連続焼鈍ラインで焼鈍する場合、連続焼鈍炉の過時効帯を使ったいわゆる過時効処理とすればよい。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これら鋼スラブを1250℃に加熱し粗圧延してシートバーとし、次いで、表2に示す条件の仕上圧延を施す熱間圧延工程により熱延板とした。これらの熱延板を酸洗後圧下率70%の冷間圧延を施す冷間圧延工程により冷延板とした。引き続き、これら冷延板に連続焼鈍ラインにて、表2に示す条件で連続焼鈍を行った。ここで、表2中、No.12の鋼種Fは、焼鈍の冷却を350℃まで行い、過時効帯にて350〜300℃の温度域で100秒間保持する保持処理(過時効処理)を施している。次いで、得られたこれらの冷延焼鈍板に伸び率0.5%の調質圧延を施し、各種特性を評価した。
調査方法は下記の通りである。
各冷延焼鈍板から試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)について、光学顕微鏡或いは走査型電子顕微鏡を用いて微視組織を撮像し、画像解析装置で主相であるフェライト相の面積率と第2相の種類および面積率を求めた。
得られた各冷延焼鈍板から圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、引張強度(TS)および全伸び(El)を求めた。
得られた各冷延焼鈍板の圧延方向(L方向)、圧延方向に対し45°方向(D方向)および圧延方向に対し90°方向(C方向)からJlS5号引張試験片を採取した。これらの試験片に10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を測定し、これらの測定値を用い、JIS Z 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を算出し、これをr値とした。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.020〜0.050%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.1%、
N:0.01%以下および
Nb:0.01〜0.3%
を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、
0.2≦(Nb/93)/(C/12)≦0.7 (式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有し、引張強度TS、全伸びElおよび平均r値の積(TS×El×平均r値)で表される強度−延性−深絞り性バランスの値が24000MPa・%以上であることを特徴とする高強度鋼板。 - 上記組成に加えて、さらにMo:0.5質量%以下およびCr:0.5質量%以下の中から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
- 上記組成に加えて、さらにTi:0.1質量%以下を含有し、かつ、鋼中のTiとSおよびNの含有量が、
(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2 (式中のTi、SおよびNは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満たし、かつ、NbおよびTiの含有量とC含有量が、
0.2≦{(Nb/93)+(Ti/48)}/(C/12)≦0.7 (式中のNb、TiおよびCは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板。 - 熱間圧延工程、冷間圧延工程および焼鈍工程を施すことにより、請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼板を製造する方法であって、
該熱間圧延工程は、仕上圧延出側温度:800℃以上で仕上圧延を施した後、巻取温度:400〜720℃で巻き取る工程を包含し、
該冷間圧延工程は、圧下率40%以上で冷間圧延を施す工程を包含し、
該焼鈍工程は、700〜800℃の温度域の平均昇温速度:0.5〜5℃/sとして800〜950℃の焼鈍温度に加熱した後、該焼鈍温度から少なくとも500℃までの温度域を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する工程を包含することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。 - 前記焼鈍工程は、前記冷却後、さらに200〜400℃の温度域で60秒間以上保持する保持処理工程を包含するものである請求項4に記載の高強度鋼板の製造方法。
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