前述のように、リライタブルカードの消去を行う場合などに、使用する度ごとに発熱体の通電をオンにすると、カードを挿入してから消去温度に達するまでに15秒程度はかかり、非常に能率が悪いという問題がある。そのような問題をなくするため、前述の特許文献1に示されているように、使用しないときは予備加熱をしておいて、使用時に消去温度まで上昇させる方法や、消去ヘッドの加熱体に常に電流を流し続けてオン状態を維持することにより、使用時に直ちに消去作業を行うことができるようにする方法も用いられている。しかし、予備加熱をし続けたり、常に発熱体を正規温度に維持し続けたりすると、電力の消費が激しいと共に、消去ヘッドの温度が上昇して触れた場合の火傷や、火災などの安全管理上の問題や消去ヘッドの消耗が激しいという問題がある。
一方、発熱体自体はスイッチをオンにすれば、2秒程度で温度上昇し、前述の発熱体の温度を直接測定してその温度を検出することにより、基板温度の上昇を待つ必要がないので、フィードバックが早く、少ない待ち時間で動作を始めることができる。しかし、このような方法で行う場合、長時間放置した後に消去作業を行う最初の1〜2枚で完全に消去されない場合が発生することがあり、長時間中止した後の作業の開始時に消去の不安定性が発生することを見出した。
さらに、連続して消去作業を行う場合や、オーバーコートなどの熱転写を行う場合などは、連続動作をさせる必要があり、オーバーヒート(過熱)しないようにある程度温度を放熱する必要がある反面、前述のクイック動作という観点からはできるだけ熱容量を小さくする必要もある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、使用時に発熱体をオンにして使用しないときは発熱体をオフにする(オンデマンド)動作に適したクイック動作をしながら、連続動作に対しても過熱しないで安定に動作し得る消去ヘッドや転写装置用の加熱ヘッドを提供することにある。
本発明の他の目的は、オンデマンド(随時加熱)動作をしながら、非常に待ち時間が少なく、かつ、完全に消去をすることができる記録媒体の記録消去装置および消去方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、動作中や待機中に拘わらず、発熱体の温度が所定の温度より一定温度以上高くなった場合には、発熱体への入力をオフにしたり極端に入力を落とすことにより、発熱体および消去ヘッドを保護すると共に、火災などの危険性を防止する安全手段が設けられた記録消去装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、連続動作でヘッド基板の温度が上昇しても、加熱の過不足が生じないで記録媒体の記録消去を行うことができる記録媒体の記録消去装置および消去方法を提供することにある。
本発明者は、発熱用抵抗体の温度を検出して所定の温度に達したら記録媒体を搬送して記録の消去を行う場合に、消去作業の最初の1〜2枚で消去不充分のものが発生することがあり、その原因について鋭意検討を重ねて調べた結果、発熱用抵抗体の熱容量が小さいため、発熱用抵抗体の温度が上昇しても記録媒体と接触すると発熱用抵抗体の温度が急低下することにあり、ヘッド基板の全体でなくても、ヘッド基板表面の温度が所定の温度に達していれば発熱用抵抗体の温度の急低下を防ぐことができ、長時間放置後の最初の記録媒体から完全に消去することができることを見出した。そして、ヘッド基板と放熱板との間に熱抵抗層を挟むことによりヘッド基板からの熱の逃げを抑制して短時間でヘッド基板表面の温度が上昇し長時間連続動作をさせても、熱抵抗層を介して放熱板に放熱し、安定した温度を維持できることを見出した。
すなわち、このヘッド基板のある程度の温度上昇は、ヘッド基板裏面まで所定の温度に上昇させる必要はなく、ヘッド基板表面での温度が所定の温度に達すれば、記録媒体を挿入しても発熱用抵抗体の温度が急低下することなく、充分に消去することができ、オンデマンドによる動作でも、待ち時間は2秒程度で消去をすることができることを見出した。
本発明による加熱ヘッドは、ヘッド基板と、該ヘッド基板の一面で、該ヘッド基板の長手方向に沿って少なくとも1本形成される帯状の発熱用抵抗体と、前記ヘッド基板の一面に設けられる温度測定用抵抗体と、前記ヘッド基板の前記一面と対向する他面側で該ヘッド基板を保持する放熱板と、該放熱板と前記ヘッド基板との間に設けられる熱抵抗層とを有している。
前記発熱用抵抗体は、温度上昇と共に抵抗が増大する正の1000〜3500ppm/℃の温度係数を有し、該発熱用抵抗体の温度を測定し得るように前記発熱用抵抗体と直列に該発熱用抵抗体より温度係数の小さい抵抗体が接続されることにより、発熱用抵抗体の温度を制御することができると共に、連続使用か間欠使用かなどの使用状態に拘わらず、発熱用抵抗体の温度を正確に管理することができる。
前記温度測定用抵抗体は、前記ヘッド基板の一面に正または負の1000〜3500ppm/℃の温度係数を有する材料で膜状に形成され、前記温度測定用抵抗体と直列に該温度測定用抵抗体より温度係数の小さい抵抗体が接続されることにより、ヘッド基板の温度変化による温度測定用抵抗体の抵抗変化により、ヘッド基板表面の温度を正確に検出することができる。
本発明による記録媒体の記録消去装置は、ヘッド基板の一面に設けられる帯状の発熱用抵抗体、前記ヘッド基板の一面に設けられる温度測定用抵抗体、および前記ヘッド基板の前記一面と対向する他面側で該ヘッド基板を保持する放熱板を有する加熱ヘッドと、前記温度測定用抵抗体の温度を検出する測定用温度検出手段と、記録媒体を挿入口から前記発熱用抵抗体上を通過させて排出口へ搬送する搬送手段と、記録媒体が記録媒体待機場所にきたら前記発熱用抵抗体および温度測定用抵抗体への通電をオンにし、前記記録媒体が前記発熱用抵抗体上を通過し終るか、または前記記録媒体の搬送開始から一定時間後に前記通電をオフにする抵抗体制御手段と、前記測定用温度検出手段により前記温度測定用抵抗体の温度が所定の温度に達したら、前記搬送手段を駆動して前記記録媒体の搬送を始め、前記記録媒体が排出されるか、搬送開始から一定時間の経過後に前記搬送手段を停止させる搬送制御手段とを有している。
なお、記録媒体待機場所とは、温度測定用抵抗体の温度が所定の温度に達すまで記録媒体を待機させる場所で、挿入口でそのまま待機させることもできるし、消去装置内の消去ヘッドに近い場所で待機させることもできるし、消去ヘッドと接触した状態で待機させることもできるが、いずれでも構わない。また、記録媒体待機場所にきたことの検出は、センサにより検出したり、挿入口でセンサにより検出してから一定時間後という時間設定で検知することができ、発熱抵抗体上を通過し終ったことや排出されたことの検出も、発熱抵抗体近傍や排出口にセンサを設けるか、搬送開始から一定時間後の時間設定により検出することができる。
前記発熱用抵抗体の温度を検出する発熱用温度検出手段をさらに有することにより、連続運転などにより発熱用抵抗体の温度が温度測定用抵抗体の温度と相対的に近くなっても、正確な温度で消去することができる。すなわち、動作初期で基板温度が低いときは発熱用抵抗体の温度が上昇してその温度がヘッド基板に伝わり温度測定用抵抗体に伝導するため、温度測定用抵抗体の温度が所定の温度に上昇すれば、発熱用抵抗体の温度も所定の温度(温度勾配があるため、発熱用抵抗体の所定温度が熱勾配分、温度測定用抵抗体の所定温度より高く設定されている)に達するが、連続動作によりヘッド基板の温度が所定温度に近づくと、発熱体用抵抗体の所定温度に到達する時間が遅くなる場合があり得る。しかし、発熱用抵抗体の温度も検出することにより、記録媒体のスタートを発熱用抵抗体の所定温度によっても管理することができる。
前記発熱用温度検出手段により検出される前記発熱用抵抗体の温度が所定の温度より高くなり過ぎないように、前記発熱用抵抗体への入力を制御する入力制御手段が設けられることにより、使用状況に拘わらず、発熱用抵抗体の温度を非常に安定に維持することができる。
前記発熱用温度検出手段により検出される前記発熱用抵抗体の温度が前記所定の温度より予め設定される一定温度高い温度になった場合に前記発熱用抵抗体への入力をオフまたは低下させる安全手段が設けられていることにより、カードが挿入されない状態で空焚きをしたり、発熱抵抗体の抵抗値が不適当であったり、他の異常が発生したりした場合など、正常動作をしない場合でも、オーバーヒートによる消去ヘッドの破損や火災などの事故を防止することができ、安全対策上好ましい。
本発明による記録媒体の記録消去方法は、ヘッド基板の一面に発熱用抵抗体を設け、該発熱用抵抗体の発熱により記録媒体の記録を消去する方法であって、前記ヘッド基板の一面に前記発熱用抵抗体とは別に温度測定用抵抗体を設け、該温度測定用抵抗体の温度を検出し、該検出された温度が所定の温度に達したら前記記録媒体を前記発熱用抵抗体上に送って前記記録媒体の記録を消去することを特徴とする。
前記所定の温度を、消去速度、消去頻度、周囲温度または記録媒体の種類に応じて、前記記録媒体の消去可能温度範囲の中で加熱する温度を定めて設定することにより、消去の際の種々の条件が変っても確実に消去することができる。一般的には、記録媒体の消去温度範囲で中間部の温度で加熱するように設定することにより、少々温度が上下変動しても確実に消去することができるし、記録媒体の消去可能温度範囲のほぼ下限に近い温度で加熱し得る温度に設定することにより、連続動作や使用頻度の多い場合にはヘッド基板に蓄熱効果があるため、消費電力の抑制という観点から好ましい。すなわち、記録媒体の種類や使用目的などにより、適した温度に設定することができる。なお、温度測定用抵抗体(ヘッド基板表面)と発熱用抵抗体の温度とには温度差があるが、その温度差は通常使用ではほぼ一定であり、その温度差を考慮して温度測定用抵抗体の所定温度が設定される。
前記記録媒体が消去装置の記録媒体待機場所に挿入されたら前記発熱用抵抗体および温度測定用抵抗体の通電スイッチをオンにし、前記温度測定用抵抗体の温度が所定の温度に達したら前記記録媒体を移動させる搬送手段を駆動して該記録媒体を前記発熱用抵抗体上に送り、該記録媒体が前記発熱用抵抗体上を通過し終るか、または搬送開始から一定時間の経過後に前記発熱用抵抗体および温度測定用抵抗体への通電をオフにし、前記記録媒体が前記消去装置の排出口に排出されるか、搬送開始から一定時間の経過後に前記搬送手段の駆動を停止させることにより、電力の無駄がなく、非常に簡潔に、かつ、正確な消去作業をすることができる。
前記発熱用抵抗体の温度を検出し、該発熱用抵抗体の温度が所定の温度に到達し、かつ、前記温度測定用抵抗体の温度が所定の温度に到達したときに前記搬送手段を駆動させることにより、連続動作などによりヘッド基板の温度と発熱用抵抗体の温度関係が大きく変化しても、消去漏れが生じたりすることなく、非常に正確に消去することができる。
本発明の加熱ヘッドによれば、ヘッド基板表面に発熱用抵抗体と温度測定用抵抗体とが設けられているため、発熱用抵抗体の温度のみならず、ヘッド基板表面の温度を検知することができる。すなわち、温度測定用抵抗体は、ヘッド基板表面に、たとえばペーストなどにより薄い膜で設けられているため、ヘッド基板表面の温度とほぼ等しくなり、温度測定用抵抗体自身で発熱しない程度の少ない電流を流すことにより、ヘッド基板表面の温度を検出することができる。その結果、発熱用抵抗体の温度も検出することができるため、発熱用抵抗体とヘッド基板表面の両方の温度を検出することができ、両者の関係により温度制御をすることができる。
さらに、本発明の加熱ヘッドによれば、ヘッド基板と放熱板との間に熱抵抗層が設けられているため、ヘッド基板の温度をある程度小さい熱容量で早く温度を上げることができながら、長時間動作により温度が上昇する場合には、熱抵抗層を経て放熱板に熱が逃げ、長時間連続動作をしてもオーバーヒートすることがない。すなわち、短時間でヘッド基板表面の温度が所定の温度に到達しながら、長時間連続動作をしても、安定にその温度を維持することができる。なお、ヘッド基板、熱抵抗層、および放熱板の熱伝導率の関係は、たとえば放熱板が金属などの80W/m・K程度以上の熱伝導率のものが用いられ、熱抵抗層は0.3W/m・K程度以下のものが用いられ、ヘッド基板はその中間の熱伝導率のものが用いられる。
熱抵抗層は、加熱ヘッドの使用目的により、たとえば連続使用する場合には比較的大きい熱伝導率になるように設定され、殆ど間欠的に使用しながら短時間で動作させる場合には、熱伝導率の小さいものが選定される。熱抵抗を最も大きくする場合には、ヘッド基板の下に空隙を形成することもでき、空隙部も熱抵抗層に含まれる。また、たとえば消去ヘッドと印字ヘッドとを並べた配置するような場合、消去を終了して引き続き記録する場合には、できるだけ早く温度を下げることが好ましく、熱抵抗の小さいものが用いられる。
本発明の記録媒体の記録消去方法および装置によれば、ヘッド基板表面に設けられる温度測定用抵抗体の温度、すなわちヘッド基板表面の温度を検出して所定の温度に達してから、記録媒体を消去ヘッドと接触させているため、発熱用抵抗体と記録媒体とが接触しても、発熱用抵抗体のみならずヘッド基板表面によっても温度が維持されることになり、すなわち熱容量が大きくなり、発熱用抵抗体の温度が急激に低下することなく、完全な消去をすることができる。しかも、ヘッド基板裏面の温度を検出する場合のように、ヘッド基板全体の温度が所定温度に達するまで待つ訳ではないので、非常に短時間で消去作業を始めることができる。その結果、普段は抵抗体の通電をオフにしておき、消去作業をする場合のみに、抵抗体の通電をオンにして作業をすることにより、無駄な電力の損失や消去ヘッドの消耗、劣化を防止し、安全管理を確実にしながら、オンにしてから短時間で作業をすることができ、オンデマンドの動作を非常に効率的に行うことができる。
さらに、ヘッド基板の表面温度を検出して消去作業を始めているため、雰囲気温度が低くても高くても非常に正確に消去作業をすることができる。また、消去速度、消去頻度、周囲温度条件、記録媒体の種類などにより発熱用抵抗体の温度とヘッド基板表面の温度との関係が変る場合には、搬送開始の所定温度を変えることにより、正確な温度設定に修正することができる。
つぎに、図面を参照しながら本発明の加熱ヘッド、記録媒体の記録消去装置およびその消去方法について説明をする。本発明による加熱ヘッドは、その一実施形態の平面説明図および側面説明図((a)のB視およびC視)が図1に示されるように、平面形状がほぼ長方形状のヘッド基板1の一面(表面)に、ヘッド基板1の長手方向に沿って、発熱用抵抗体2が少なくとも1本形成され、さらにヘッド基板1の表面に温度測定用抵抗体3が設けられている。このヘッド基板1の一面と対向する他面(裏面)側に、ヘッド基板1を保持する放熱板5が設けられ、その放熱板5とヘッド基板1との間に熱抵抗層4が設けられている。
ヘッド基板1は、たとえば長さ約50mm、幅約5mm、厚さ約0.6mmの略矩形状板からなり、その材質としてはある程度熱伝導性のあるもの、すなわち熱伝導率が0.5〜30W/K・m程度のもので、使用時の発熱温度条件において耐熱性を有し、発熱抵抗体を設ける面が絶縁性を有するもの、たとえばアルミナ(熱伝導率:21W/K・m)などのセラミックス、石英ガラス(熱伝導率:1.4W/K・m)、ガラス(熱伝導率:0.8W/K・m)などを用いることができる。これは熱伝導率が低過ぎると連続動作をした場合に過熱(オーバーヒート)する危険性があり、熱伝導率が大きすぎると発熱抵抗体の熱量が逃げやすいからである。この観点から、樹脂系材料、表面に絶縁膜が設けられたステンレスなどからなる金属板、ガラス系材料なども使用することができる。なお、本実施形態では、ヘッド基板1として、アルミナ基板を用い、その上面には図示しないがガラス層(熱伝導率:0.8W/K・m)が0.08mm程度の厚さに設けられている。
発熱用抵抗体2は、たとえばAg+Pd+ガラスなどの固形絶縁粉末をペースト状にして塗布して、焼成することにより形成されている。これにさらにRuO2などを加えたものを使用することもできる。焼成により形成されるAg-Pd合金からなる場合、シート抵抗として100mΩ/Sq〜200mΩ/Sqが得られ(固形絶縁粉末の量によっても異なる)、両者の比率により抵抗値や温度係数を変えることができる。また、導体(電極)として使用する場合、Agが多い程抵抗を低くすることができる。大きさは、たとえば幅約2mm、厚さ約10μmの直線状で、ヘッド基板1の長手方向の長さ方向における両端部に設けられる一対の電極2a、2bに重なるように印刷形成され、その長さは約45mmで、抵抗値が約8Ω、抵抗温度係数を約1500ppm/℃(温度が100℃変化すると抵抗値が15%変化する)に形成されている。しかし、発熱用抵抗体2の発熱特性は、これに限定されず、自由に設定することができるが、発熱用抵抗体2の抵抗温度係数は正に高い方が好ましく、とくに1000〜3500ppm/℃の材料を用いることが、後述する発熱用抵抗体2の温度を検出して制御するのに好ましい。
抵抗温度係数が正に高いということは、温度が上昇すると抵抗値の増加が大きいことであるから、発熱させた状態における抵抗値測定により基準抵抗値からのずれにより実際の発熱温度の検出を容易に精度よく行え、印加電圧を調整し、または印加パルスのデューティを調整することにより所望の発熱温度からのずれを修正しやすくなる。また、抵抗温度係数が正であることにより、温度が上昇し過ぎた場合に抵抗値が増大して電流値が下がり、抵抗による発熱量が下がるため、より早く温度が飽和状態となり、高温時の温度安定性に優れているからであり、熱暴走などによる過熱を防止できるからである。なお、発熱用抵抗体2の幅も前述の例に限定されず、用途に応じて設定され、複数本並列に並べてもよい。
また、発熱用抵抗体2の両端部には、たとえばパラジウムの比率を小さくした銀・パラジウム合金やAg-Pt合金などの良導電体からなる電極2a、2bが印刷形成されている。この電極2a、2bは、熱抵抗層4上の中継導電部2c、2dを経て後述する配線基板6の電極端子2g、2hに接続配線2e、2fを介して接続され、さらに配線基板6内の配線を経て配線基板6上の外部接続端子2i、2jに接続されている。この外部端子2i、2jに電源が接続されて発熱用抵抗体2に通電される。
温度測定用抵抗体3は、発熱用抵抗体2と同じ材料で形成されてもよいが、好ましくはできるだけ温度係数の絶対値(%)が大きい方が好ましい。この温度測定用抵抗体3は、発熱させるものではなく、ヘッド基板1の温度を検出するもので、たとえば0.5mm幅、33mm程度の長さで、12Ω程度に形成され、抵抗体3自身は発熱しないよう印加電圧が低く抑えられて5V程度が印加される。すなわち、この温度測定用抵抗体3はヘッド基板1上に薄い層で設けられているため、両者の温度は殆ど同じで、温度測定用抵抗体3の温度を測定することにより、ヘッド基板1表面の温度を推測することができる。温度検出手段については後述するが、この温度測定用抵抗体3の両端の電圧変化を検出することにより温度測定用抵抗体3の温度を検出するため、温度係数が大きい方が測定誤差を小さくすることができる。なお、この場合は、温度係数は正でも負でもよい。
温度測定用抵抗体3は、発熱用抵抗体2と同じ材料であれば、印刷などにより形成する場合、発熱用抵抗体2と同時に形成することができるため製造上の観点からは好ましい。しかし、測定温度の精度を必要とする場合には、AgとPdの混合比率を変えたものや、全く別の材料で温度係数の大きいものを用いることもできる。
なお、図示されていないが、発熱用抵抗体2や温度測定用抵抗体3の上には、磨耗および異物付着によるショートの防止として、たとえばガラスなどからなる保護層を設けてもよい。本実施形態では、図示しないがガラス層(熱伝導率:1W/K・m)が0.01mm厚程度設けられている。
ヘッド基板1の裏面側には、熱抵抗層4を介して放熱板5が設けられている。熱抵抗層4は、ヘッド基板1よりも熱伝導率の低い層を設けることにより、発熱用抵抗体2で発生する熱を余り逃がさないようにして、発熱用抵抗体2に通電してから直ちに消去温度に上がりやすいようにしてある。すなわち、前述のように、ヘッド基板1の温度が低過ぎると、たとえ発熱用抵抗体2の温度が所定の温度に達していても、完全には消去できない場合が生じるため、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、この熱抵抗層4を設け、その熱伝導を制御することにより、発熱用抵抗体2の温度とヘッド基板1表面の温度を所定の温度関係に維持できることを見出した。この熱抵抗層4は、ヘッド基板1より熱伝導率の小さいもの、すなわち0.3W/m・K程度以下の熱伝導率のものが用いられ、たとえば0.5mm厚のガラスエポキシ樹脂(熱伝導率0.2W/m・K)板で形成することができる。この熱抵抗層4は、ヘッド基板1の熱伝導率などにも影響されるが、前述のように、発熱用抵抗体2の温度とヘッド基板1表面の温度ができるだけ短い時間で一定の温度関係になり、かつ、抵抗体の通電がオフにされたら、できるだけ速やかに冷却されるような材料および厚さで形成される。
放熱板5は、たとえばアルミニウム板(熱伝導率:221W/m・K)、鉄板(熱伝導率:83W/m・K)などの熱伝導率の大きい材料が用いられる。しかし、このヘッド基板1の材料は、アルミニウムのような金属板には限らず、ヘッド基板1をしっかりと保持しながら、連続して使用されても、発熱用抵抗体2の温度が上昇し過ぎないで、常に安定した温度を維持させ得るものであればよい。この観点から、放熱板5は熱伝導率が80W/m・K程度以上のものが好ましい。前述のヘッド基板1に対応する放熱板5は、たとえば長さが50mm程度で、幅が7mm程度、厚さが7mm程度に形成されている。
放熱板5の側面には、図1(b)および(c)に示されるように、プリント基板などからなる配線基板6が設けられており、回路配線上に樹脂コートにより絶縁膜が設けられているが、発熱用抵抗体2用の電極端子2g、2h、さらに配線基板6内の配線を経て配線基板6上の外部端子2i、2jの部分は露出され、前述のように、発熱用抵抗体2の電極2a、2bと外部接続端子2i、2jとが接続され、図示しない外部電源が接続されることにより発熱用抵抗体2に通電されるようになっている。温度測定用抵抗体3用も同様に、電極端子3g、3h、さらに配線基板6内の配線を経て配線基板6上の外部端子3i、3jの部分は露出され、温度測定用抵抗体3の電極3a、3bと接続して設けられる熱抵抗層4上の中継導電部3c、3dと電極端子3g、3hとが接続配線3e、3fで接続されている。そして、外部端子3i、3jに図示しない外部電源が接続されて温度測定用抵抗体3に通電されるようになっている。なお、6aはサーミスタ端子で、過熱防止二重安全用にヘッド基板裏面にサーミスタが設けられる場合に用いられる。
この加熱ヘッドを消去ヘッドとして用いて、たとえば記録媒体の記録を消去するには、図2に一例の一部拡大説明図が示されるように、消去ヘッド10の発熱用抵抗体2を所定の温度に上昇させ、発熱用抵抗体2側とプラテンローラ10aとを圧接するように対向させて、プラテンローラ10aを回転させながらその間に記録媒体である、たとえばリライタブルなカードRCを通過させることにより、カードRCの画像記録部の温度が上昇して消色し、記録を消去することができる。
本発明の加熱ヘッドによれば、発熱用抵抗体2および温度測定用抵抗体3が設けられるヘッド基板1にある程度の熱伝導率の材料を用い、その裏側にヘッド基板よりも熱伝導率が1/100程度に落ちる熱抵抗層4を介して熱伝導率がヘッド基板の10倍程度の非常に良好な放熱板が設けられる構造になっているため、発熱用抵抗体2およびヘッド基板1表面の温度が抵抗体への通電開始後速やかに温度上昇し、所定の温度に上昇させることができる。しかも、熱抵抗層を介して非常に熱伝導の良好な放熱板が設けられているため、連続使用により温度が上昇しても、連続使用による長時間の経過では、熱抵抗層を経ても熱伝導はある程度行われ、薄い熱抵抗層を通過して放熱板により放熱される。その結果、短時間で所定の温度に上昇し、連続動作をしても過熱することがなく、どのような使用条件においても非常に安定した温度の加熱ヘッドが得られ、間欠的に行う記録媒体の記録消去装置や、アンダーコート、オーバーコートなどの熱転写装置などの加熱ヘッドとして利用することができる。
つぎに、本発明による記録媒体の記録を消去する消去装置およびその消去方法について説明をする。本発明による記録媒体の記録消去方法は、図3に一例の装置の概略ブロック図が示されるように、図1に示される構造の消去ヘッド10を用い、温度測定用抵抗体の温度、すなわちヘッド基板表面の温度を検出し、その温度が所定の温度に達したら可逆性記録媒体であるカードRCを発熱用抵抗体上に送って記録媒体の記録を消去することを特徴としている。
さらに具体的には、図4にフローチャートが示されるように、カードRCがカード待機場所、たとえば消去装置の挿入口12に挿入されたら抵抗体制御手段15を駆動して発熱用抵抗体および温度測定用抵抗体の通電スイッチ(たとえば24V)をオンにし、測定用温度検出手段16により温度測定用抵抗体が所定の温度(たとえば130℃)に達したら、搬送制御手段18により搬送手段13(13a、13b、13c)を駆動してカードRCを移動させる。そして、カードRCを消去ヘッド10上に送り、カードRCが消去ヘッド10上を通過し終ったら発熱用抵抗体および温度測定用抵抗体への通電をオフにする。そして、カードRCが消去装置の排出口14に排出されたら、図示しない検知センサにより、または搬送開始からの時間制御により検知して搬送制御手段18により搬送手段13の駆動を停止する。この抵抗体制御手段15と搬送制御手段18のオンオフのタイミングは図6に示されるようになる。図6では、2枚のカードを連続的に行った場合の例が示されている。
この搬送手段13の搬送速度は、目的により種々の早さに設定することができ、たとえば30mm/秒程度で搬送することができるが、これより早い場合も遅い場合もある。また、搬送手段の制御は、カードの位置による制御でなくても、一定時間で制御することもできる。すなわち、この搬送速度を認識しておけば、たとえば測定用温度検出手段16からの搬送手段駆動信号による駆動開始から2.5秒後(75mm移動)に抵抗体への通電をオフにし、3秒後(90mm移動)に搬送手段を停止する、などの時間制御により搬送手段を駆動することもできる。この時間は一例で、装置の大きさ、カード待機場所などにより、時間を設定することができる。
図4に示される例は、カードの待機場所がカード挿入口の例であったが、カード待機場所は、たとえば消去ヘッドの近くとか、消去ヘッドに接触する位置など、消去装置内の種々の場所に設定することができる。この場合には、カード挿入口にカードが挿入されたら、自動的に、または手動的にカードをカード待機場所に送ってから、前述の抵抗体への通電が制御される。その一例のフローチャートが図5に示されている。すなわち、たとえばカードがカード挿入口に挿入されたら、それを検知して搬送手段13を駆動し、カード待機場所まで搬送する。そして、カード待機場所でカードの到着をセンサにより、または時間制御により検知したら、搬送手段を停止させると共に、抵抗体制御手段により発熱用抵抗体および温度測定用抵抗体に通電を開始する。その後の動作は、前述の図4に示されるフローと同じである。
図3に示される概略ブロック図は、図4に示される一連の工程を行うように構成されている。すなわち、挿入口12は、カードRCを挿入し得るように形成されてカード待機場所になると共に、カードRCの挿入を検出する図示しない検知センサが設けられている。そして、検知センサにより得られるカード挿入の信号は抵抗体制御手段15に送られるようになっている。また、挿入されたカードRCは、たとえばローラ13a、13b、13cによりカードRCをくわえながら搬送する搬送手段13により消去ヘッド10を経て排出口14に送られるようになっている。この搬送用のローラ13a、13b、13cの回転は、搬送制御手段18により制御され、所定の場合に回転してカードRCが搬送されるようになっている。なお、図3に示される例では、挿入口12と排出口14とが別の位置に形成されているが、途中でカードRCの進行を逆転させて、挿入口12と排出口14とを共通化することもできる。また、前述のように、カード待機場所を挿入口12とは別に設定することもできる。
抵抗体制御手段15は、図7および図8に示されるように、消去ヘッド10の温度測定用抵抗体3および発熱用抵抗体2に、直流またはパルスで電流を流し得るように電源32、22、その電源32、22のスイッチ手段SW、および分圧抵抗31、21をそれぞれ有している。この抵抗体制御手段15には、それぞれの抵抗体3、2の温度を検出し得るように測定用温度検出手段16および発熱用温度検出手段17が接続され、さらに、発熱用抵抗体2の温度を一定の温度範囲に制御する温度の入力制御手段23および安全手段24が設けられている。さらに、抵抗体制御手段15には、図示しないカード検知センサが設けられる場合もあり、その場合はカードRCが消去ヘッド10の部分を通過したか否かを検出し、通過した場合には発熱用抵抗体2および温度検出用抵抗体3の通電を停止させることができる。このような検知センサがない場合でも、前述のように、搬送の開始から一定時間でオフにする時間制御をすることができる。
温度測定用抵抗体3の温度を検出する測定用温度検出手段16は、図7に温度検出用抵抗体3部分の構成ブロック図の一例が示されるように、温度検出用抵抗体3の両端に分圧抵抗31を介して直流またはパルスの電源32が接続されている。温度検出用抵抗体3は、前述のように、できるだけ温度係数の大きい材料(たとえば1000〜3500ppm/℃)が用いられる。また、温度測定用抵抗体3は、その抵抗体3が設けられているヘッド基板表面の温度を検出するのが目的であるため、温度測定用抵抗体3自身が発熱して温度上昇することは好ましくない。そのため、温度測定用抵抗体3の抵抗値は小さくして、分圧抵抗31の抵抗値を大きくし、また、分圧抵抗31は温度係数の小さいものが望ましい。分圧抵抗31は、温度の変化するヘッド基板と離れた場所に設けられるため、殆ど温度変化はないが、環境温度の変化の影響を受けなくするためである。具体的には、温度測定用抵抗体3の抵抗値が12Ωで、分圧抵抗31の抵抗値は150Ω程度のものが用いられ、電源に5Vの直流電源を用いることができる。
測定用温度検出手段16は、このような構成で、温度測定用抵抗体3の両端電圧を測定し(V検出)、その電圧の変化を求めることにより、温度の変化を計算してその時点での温度検出用抵抗体3の温度を求める構成になっている。すなわち、温度検出用抵抗体3は、温度により抵抗値が一定の割合で変化する温度係数を有しており、その温度係数は予め測定することにより(材料により定まるが、成分により異なるので測定により正確に求める)分っている。そのため、前述のように、温度測定用抵抗体3と直列に分圧抵抗31を接続し、その両端に電源32が接続されて、一定の電圧が印加されることにより、温度測定用抵抗体3の温度が変化すると、その抵抗値が変化して電流が変化する。分圧抵抗31の抵抗値は変化しないため、温度測定用抵抗体3の両端電圧は、その抵抗体3の抵抗変化に応じて変化する。その電圧変化により、温度測定用抵抗体3の抵抗値がわかり、温度係数から変化前の温度に対する温度の変化量を知ることができ、その時点での温度測定用抵抗体3の温度を知ることができる。
なお、温度検出用抵抗体3の両端により電圧変化を測定している(V検出)が、これは温度変化により両端電圧の変化割合が大きい方が精度よく検出できるためで、分圧抵抗31の両端電圧を測定しても温度変化を検出することはできる。
発熱用抵抗体2の温度を検出する発熱用温度検出手段17も、図8にその一例の構成図が示されるように、同様の構成になっている。すなわち、発熱用抵抗体2も分圧抵抗21と直列に接続され、その直列接続の両端に直流またはパルスの電源22が接続されて、その分圧抵抗21の両端の電圧を検出(V検出)し得るように構成されている。この場合、発熱用抵抗体2は、それ自身で発熱させることが目的であるため、発熱用抵抗体2の抵抗が分圧抵抗21より遥かに大きい抵抗となるように形成され、たとえば発熱用抵抗体2の抵抗が8Ωで、分圧抵抗21が0.22Ω(電流が多くても電力を消費しないように小さく設定される)になるように形成されると共に、印加する電圧も24V程度と高い電圧が印加されるようになっている。そのため、抵抗の小さい側である分圧抵抗21により電圧検出(V検出)が行われているが、発熱用抵抗体2の両端の電圧を検出することもできる。
発熱用抵抗体2の場合、連続使用などにより温度が上昇し過ぎる場合には、その検出温度によって入力制御手段23により電源22の電圧を下げたり、デューティ駆動の場合にはそのデューティを下げるなどして入力を落すことにより、発熱用抵抗体2の温度を所定の温度範囲に制御することができる。また、連続動作などにより、ヘッド基板表面と発熱用抵抗体2との温度関係が変って、温度測定用抵抗体3の検出温度だけでは完全消去などを行えない場合には、両方の温度が所定の温度範囲に入った場合に搬送手段を駆動し得るようにする場合には、この発熱用抵抗体2の検出温度の情報は、搬送制御手段18にも送られる。具体的な温度検出は、温度測定用抵抗体2の温度測定と同様に行うことができる。
さらに、図8に示される例では、発熱用温度検出手段17により検出される温度が、たとえば消去温度とする130℃よりもさらに一定の温度、たとえば30℃程度を超えた温度を示す場合に、直ちに電源22のスイッチSWをオフにするか、または入力制御手段23に入力を極端に下げる指示を出す安全手段24が設けられている。このような安全手段24が設けられていることにより、たとえばカードが挿入されないで空焚きされて温度が異常に上昇する場合には、時間制御のたとえば2.5秒が経過していなくても直ちに電源22をオフにするか、入力を極端に下げることができ、消去ヘッドのオーバーヒートによる破損を防止したり火災の発生などを防止することができる。
すなわち、カードの搬送に異常が生じたり、発熱体に異常が生じたりした場合に、時間制御による待ち時間なく、直ちに入力を制御することができ、安全を確保することができる。当然のことながら、カードが挿入されず、温度が所定温度(たとえば前述の例では130℃)より高くなっても、さらに一定温度(前述の例では30℃)高い温度(たとえば160℃)に達しなければ、通常の入力制御手段23により制御することができる。この一定の温度は、消去ヘッドの温度が装置などにより定まる許容温度(仕様書上の保証温度より若干低い温度)になるよう(許容温度から所定温度を引いた温度)に設定することができる。
なお、図8に示される例では、安全手段24を入力制御手段23と別個に設けた例が示されているが、入力制御手段23の中にこの安全手段24が設けられる構成でもよい。この場合、発熱用温度検出手段17からの温度が所定温度より一定温度高い温度の場合には、通常の入力制御よりも大きく入力を下げるか0にすることにより安全手段とすることができる。
搬送制御手段18は、搬送手段13のオンオフを制御するもので、前述の温度測定用抵抗体の測定用温度検出手段16から、温度測定用抵抗体の温度が所定の温度に達したという情報、または測定用および発熱用の温度検出手段16と17から、温度測定用抵抗体および発熱用抵抗体の温度がそれぞれ所望の温度に達したという情報、に基づいて、搬送手段を駆動させ、カードRCが排出口14に達したという情報に基づいて、または搬送開始から一定時間の経過後に搬送手段13を停止させるように構成されている。
つぎに、この消去装置の動作について説明をする。まず、カードRCが挿入口12に挿入されると、カードRCの検知情報が抵抗体制御手段15に送られ、発熱用抵抗体2および温度測定用抵抗体3に通電が開始される。通電開始後における温度測定用抵抗体3の温度および発熱用抵抗体2の温度は、それぞれ測定用および発熱用の温度検出手段16と17により検出される。そして、たとえば測定用温度検出手段16により温度測定用抵抗体2の温度が所定の温度に達した場合には、その情報が搬送制御手段18に送られ、搬送手段13(13a、13b、13c)を駆動する。その結果、挿入口12に挿入されたカードRCがローラ13a、13bにより搬送されて消去ヘッド10とプラテンローラ10aとの間に送られる。消去用ヘッド10の発熱用抵抗体の温度は所定の温度に達しているため、消去ヘッド10上を通過したカードRCの画像は消去温度になり消色される。この消色されたカードRCが消去ヘッド10を通過し終ると、センサまたは時間制御によりその情報が抵抗体制御手段15に送られて抵抗体2、3への通電が停止される。その後、カードRCが排出口14に達すると、センサまたは時間制御によりその情報が搬送制御手段18に送られて搬送手段13が停止される。
これにより1枚のカードの消去作業が終了し、つぎのカードを消去する場合には、同様に繰り返すことにより行うことができる。この一連の動作を2枚のカードで連続して行った場合における抵抗体および搬送手段のオンオフの関係は図6に示されるようになる。
すなわち、本発明では、温度測定用抵抗体の温度(ヘッド基板表面の温度)が所定の温度に達した場合に搬送手段13を駆動して、カードRCを消去ヘッド10に送り込むことに特徴がある。これは、本来カードが接触する発熱用抵抗体の温度が所望の温度に達していれば消去することができる筈であるが、前述のように、消去作業を始める最初の数枚に消去ムラが生じることがあり、本発明者が鋭意検討を重ねて調べた結果、カードは一般的に5cm以上×8cm以上で、厚さも種々のものがあり、発熱用抵抗体は小さく熱を奪われることにより温度低下が生じることにあることを見出し、発熱用抵抗体が設けられるヘッド基板表面の温度が所定の温度に達すれば、ある程度の熱容量を確保することができ、カードと接触しても、必要な温度をキープできることを見出したものである。
この場合、たとえば通電から各部の時間に対する温度変化の例が図9に示されるように、発熱用抵抗体の温度変化Dと、ヘッド基板表面の温度変化Cはほぼ平行関係にあり、発熱用抵抗体の温度の所定温度を高く設定しておけば少々熱を奪われても消去に支障が無いように思える。しかし、初期(t=0)の発熱用抵抗体の温度とヘッド基板表面の温度が異なると、時間に対する温度変化も変る。そのため、連続動作などにより基板温度が上昇していると、カードと接触しても温度の低下は小さいため、所定温度を高く設定していると温度が高すぎて完全な消去を行えないという問題が発生する。また、発熱用抵抗体近傍の熱容量を大きくしたり、ヘッド基板裏面の温度が所定温度に達してから消去作業を行うようにしたりすると、通電を開始してから消去作業を行うまでの時間が従来の消去ヘッドのように15秒程度と長くなり、必要なときのみ通電を開始して不要な場合にはオフにするというオンデマンドの動作をするのに適しない。
しかし、前述の本発明者の検討により、ヘッド基板表面の温度が所定の温度に達すれば、カードと接触してもある程度の熱容量が確保され、発熱用抵抗体の温度が急激に低下することが無く、完全な消去作業を行うことができる。そのため、たとえば図9に示される例で、発熱用抵抗体(D)の所定温度150℃、ヘッド基板表面(C)の所定温度120℃を得るのに、2.5秒程度で上昇させることができながら、安定した消去を行うことができる。これは、消去ヘッドにおいて、図1に示されるように、熱抵抗層4が放熱板5との間に介在されていることにも大きく依存しているが、ヘッド基板表面の温度により制御するという新しい発想により達成できたものである。なお、図9は、発熱用抵抗体の幅が2.5mmで抵抗値が7.77Ω、カードの送り速度が30mm/sで、カードを消去ヘッドに接触させた状態での通電開始からの時間に対する発熱用抵抗体(D)、ヘッド基板表面(C)、カード(B)および放熱板(A)の温度変化を示す図で、カードの温度(B)は、発熱抵抗体で加熱されて4.5mm出てきた位置(0.15秒後の位置)で、そ表面を赤外線温度計で測定した温度変化である。また、Eはカードを挿入しない空炊きの状態のヘッド基板表面の温度変化を、Fは空炊き状態の発熱用抵抗体の温度変化を示している。
この初期温度の違いによる所定の温度に達する時間の変化は、たとえば図6に2個のカードを連続して消去作業した場合に、1個目のカードで、抵抗体の通電が開始されてからカードが挿入口から移動するまでの時間t1に対して、引き続き行う2個目のカードでは、時間t2がt1よりも短くなっていることからも窺える。これは、1個目のカードの消去作業でヘッド基板の温度がある程度上昇しており、2個目のカードの挿入により通電が開始された場合に、短い時間でヘッド基板表面の温度が所定の温度に達し、短時間で消去作業を行えることを示している。このように、長時間の放置後に動作を始めても2.5秒程度で所定の温度に到達して1工程を5秒程度で消去作業を行え、連続して行う場合には、さらに短時間で行うことができ、しかも、長時間連続動作させてもオーバーヒート(過熱)することがない。これは、消去ヘッドのヘッド基板が所望の熱抵抗層を介して熱伝導率の大きい放熱板に保持されているため、ある程度の熱伝導阻止により短時間で所定の温度に達しながら、長時間動作に対しては放熱板に熱が逃げるためと考えられる。
上述の例では、測定用温度検出手段16の情報のみで搬送手段13を駆動したが、これは、通常の動作開始では、発熱用抵抗体の温度が上昇してその温度によりヘッド基板の温度が上昇し、温度測定用抵抗体の温度が上昇するため、温度測定用抵抗体の温度が120℃程度に上昇すれば、発熱用抵抗体の温度も所定の150℃程度に上昇しているからである。そのため、オンデマンドにより間欠的に動作させる場合には、温度測定用抵抗体のみの温度をモニターして所定の温度に上昇したら、搬送手段をオンにして問題はない。しかし、連続動作などにより、たとえばヘッド基板の温度が相当高くなっているような場合には、ヘッド基板表面の所定温度120℃は直ちに達するにも拘わらず、発熱用抵抗体の所定温度150℃が遅れる場合がある。このような場合には、発熱用抵抗体の温度情報も搬送制御手段に送って、両方の温度が所定の温度に達してから搬送手段を駆動させるのが確実である。