つぎに、図面を参照しながら本発明の加熱ヘッド、ならびにその加熱ヘッドを用いた記録媒体の記録消去装置およびその消去方法について説明をする。本発明による加熱ヘッドは、その一実施形態の平面説明図およびそのB視側面説明図、C−C断面説明図がそれぞれ図1に示されるように、平面形状がほぼ長方形状のヘッド基板1の一面(表面)に、ヘッド基板1の長手方向に沿って、主発熱用抵抗体2が少なくとも1本形成され、さらにヘッド基板1の表面に温度測定用抵抗体3と補助発熱用抵抗体7がそれぞれ主発熱用抵抗体2の近傍に設けられている。このヘッド基板1の一面と対向する他面(裏面)側に、ヘッド基板1を保持する放熱板5が設けられ、その放熱板5とヘッド基板1との間に熱絶縁層4が設けられている。
ヘッド基板1は、たとえば長さ約50mm、幅約5mm、厚さ約0.6mmの略矩形状板からなり(2インチ用の例で、4インチ用とか8インチ用など種々の大きさに形成でき、8インチ用程度の長いものは幅も10mm程度になる)、その材質としてはある程度熱伝導性のあるもの、すなわち熱伝導率が0.5〜30W/K・m程度のもので、使用時の発熱温度条件において耐熱性を有し、発熱抵抗体を設ける面が絶縁性を有するもの、たとえばアルミナ(熱伝導率:21W/K・m)などのセラミックス、石英ガラス(熱伝導率:1.4W/K・m)、ガラス(熱伝導率:0.8W/K・m)などを用いることができる。これは熱伝導率が低過ぎると連続動作をした場合に過熱(オーバーヒート)する危険性があり、熱伝導率が大きすぎると発熱抵抗体の熱量が逃げやすいからである。この観点から、樹脂系材料、表面に絶縁膜が設けられたステンレスなどからなる金属板、ガラス系材料なども使用することができる。なお、本実施形態では、ヘッド基板1として、アルミナ基板を用い、その上面には図示しないがガラス層(熱伝導率:0.8W/K・m)が0.08mm程度の厚さに設けられている。
主発熱用抵抗体2は、たとえばAg+Pd+ガラスなどの固形絶縁粉末をペースト状にして塗布して、焼成することにより形成されている。これにさらにRuO2などを加えたものを使用することもできる。焼成により形成されるAg-Pd合金からなる場合、シート抵抗として100mΩ/Sq〜500mΩ/Sqが得られ(固形絶縁粉末の量によっても異なる)、両者の比率により抵抗値や温度係数を変えることができる。また、導体(電極)として使用する場合、Agが多い程抵抗を低くすることができる。大きさは、たとえば幅約2.5mm、厚さ約10μmの直線状で、ヘッド基板1の長手方向の長さ方向における両端部に設けられる一対の電極(接合部8の下側に隠れていて図示されていない)に重なるように印刷形成され、その長さは約45mmで、抵抗値が約8Ω、抵抗温度係数を約1500ppm/℃(温度が100℃変化すると抵抗値が15%変化する)に形成されている。しかし、主発熱用抵抗体2の発熱特性は、これに限定されず、自由に設定することができるが、主発熱用抵抗体2の抵抗温度係数は正に高い方が好ましく、とくに1000〜3500ppm/℃の材料を用いることが、後述する主発熱用抵抗体2の温度を検出して制御するのに好ましい。
抵抗温度係数が正に高いということは、温度が上昇すると抵抗値の増加が大きいことであるから、発熱させた状態における抵抗値測定により基準抵抗値からのずれにより実際の発熱温度の検出を容易に精度よく行え、印加電圧を調整し、または印加パルスのデューティを調整することにより所望の発熱温度からのずれを修正しやすくなる。また、抵抗温度係数が正であることにより、温度が上昇し過ぎた場合に抵抗値が増大して電流値が下がり、抵抗による発熱量が下がるため、より早く温度が飽和状態となり、高温時の温度安定性に優れているからであり、熱暴走などによる過熱を防止できるからである。なお、主発熱用抵抗体2の幅も前述の例に限定されず、用途に応じて設定され、複数本並列に並べてもよい。
また、主発熱用抵抗体2の両端部には、たとえばパラジウムの比率を小さくした銀・パラジウム合金やAg-Pt合金などの良導電体からなる図示しない電極が印刷形成されている。この電極は、同様に図示されない放熱板などの側面に設けられる配線基板に接続され、配線基板に設けられる外部接続端子を介して電源が接続されて主発熱用抵抗体2に通電される構造になっている。
補助発熱用抵抗体7は、主発熱用抵抗体2と同じ材料で、主発熱用抵抗体2と平行で、ほぼ0.3〜0.7mm程度の間隔を空けて、主発熱用抵抗体2と同様に45mm程度の長さに形成されるが、この補助発熱用抵抗体7は、その幅が0.5mm程度と主発熱用抵抗体2の1/5程度の幅で形成されている。そのため、抵抗は主発熱用抵抗体2の5倍程度となり、同じ電圧(たとえば24V)を印加すると消費電力は20%程度となる。すなわち、主発熱用抵抗体2に対して20%程度の加熱に寄与する。しかし、主発熱用抵抗体2による加熱に対して、20%に限らず、抵抗体幅を変えれば自由に所望の割合を得ることができ、どの程度の割合で補助発熱用抵抗体7を加熱するかは自由に設定することができる。図1に示される例では、補助発熱用抵抗体7が1本の例で示されているが、1本に限らず、主発熱用抵抗体2の両側に設けられたり、さらに横に設けられたりすることにより複数本設けられてもよい。さらに、後述するように補助発熱用抵抗体7を分割する場合、電極を設けることによる分割だけでなく、補助発熱用抵抗体自身が分割して形成されてもよい。
温度測定用抵抗体3は、主発熱用抵抗体2と同じ材料で形成されてもよいが、好ましくはできるだけ温度係数の絶対値(%)が大きい方が好ましい。この温度測定用抵抗体3は、発熱させるものではなく、ヘッド基板1の温度を検出するもので、たとえば0.5mm幅、45mm程度の長さで、12Ω程度に形成され、抵抗体3自身は発熱しないよう印加電圧が低く抑えられて5V程度が印加される。すなわち、この温度測定用抵抗体3はヘッド基板1上に薄い層で設けられているため、両者の温度は殆ど同じで、温度測定用抵抗体3の温度を測定することにより、ヘッド基板1表面の温度を推測することができる。温度検出手段については後述するが、この温度測定用抵抗体3の両端の電圧変化を検出することにより温度測定用抵抗体3の温度を検出するため、温度係数が大きい方が測定誤差を小さくすることができる。なお、この場合は、温度係数は正でも負でもよい。
温度測定用抵抗体3は、主発熱用抵抗体2と同じ材料であれば、印刷などにより形成する場合、主発熱用抵抗体2と同時に形成することができるため製造上の観点からは好ましい。しかし、測定温度の精度を必要とする場合には、AgとPdの混合比率を変えたものや、全く別の材料で温度係数の大きいものを用いることもできる。
なお、この主発熱用抵抗体2、補助発熱用抵抗体7および温度測定用抵抗体3は、一般的にヘッド基板1上に直接設けられないで、図2(a)〜(b)にこの抵抗体部分の誇張断面説明図が示されるように、ガラス層1aが2〜3層程度スクリーン印刷などにより設けられ、その上に前述の抵抗体材料がスクリーン印刷などにより設けられ、図示されていないが、その表面にさらに磨耗および異物付着によるショートの防止として、たとえばガラスなどからなる保護層が設けられる。このガラス層1aの厚さtは100μm程度あり、図2(a)に示されるように、断面形状が台形状(完全あな台形状に限らず、山状、楕円弧状のものでもよい)になるように形成されたり、図2(b)に示されるように、断面形状が段差形状などに形成されたりすることにより、幅方向で厚さを異ならせることができる。そうすることにより、台形の上面や段差の上段などの厚さの厚い部分に主発熱用抵抗体2が設けられ、斜面部分に補助発熱用抵抗体7および温度測定用抵抗体3が設けられる構造にすることができ、記録媒体などとの接触が主発熱用抵抗体2部分のみとなり、記録媒体の挿入がスムースになると共に、温度測定用抵抗体3などが記録媒体による影響を受けなくすることができる。
なお、図2(a)において、ガラス層1aの厚さtが100μm程度、各抵抗体の厚さが10〜20μm程度、図示しないオーバーコートの厚さが10〜20μm程度で、主発熱用抵抗体2の幅w1が2.5mm程度、補助発熱用抵抗体7および温度測定用抵抗体3の幅w2が0.5mm程度、その間隔dが0.3〜0.7μm程度、ヘッド基板1の幅w3が5〜10mm程度に形成されている。なお、ガラス層の熱伝導率は1W/K・mである。
ヘッド基板1の裏面側には、熱絶縁層4を介して放熱板5が設けられている。熱絶縁層4は、ヘッド基板1よりも熱伝導率の低い層を設けることにより、主発熱用抵抗体2で発生する熱を余り逃がさないようにして、主発熱用抵抗体2に通電してから直ちに消去温度に上がりやすいようにしてある。すなわち、前述のように、ヘッド基板1の温度が低過ぎると、たとえ主発熱用抵抗体2の温度が所定の温度に達していても、完全には消去できない場合が生じるため、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、この熱絶縁層4を設け、その熱伝導を制御することにより、主発熱用抵抗体2の温度とヘッド基板1表面の温度を所定の温度関係に維持できることを見出した。この熱絶縁層4は、ヘッド基板1より熱伝導率の小さいもの、すなわち0.3W/m・K程度以下の熱伝導率のものが用いられ、たとえば0.5mm厚のガラスエポキシ樹脂(熱伝導率0.2W/m・K)板で形成することができる。この熱絶縁層4は、ヘッド基板1の熱伝導率などにも影響されるが、前述のように、主発熱用抵抗体2の温度とヘッド基板1表面の温度ができるだけ短い時間で一定の温度関係になり、かつ、抵抗体の通電がオフにされたら、できるだけ速やかに冷却されるような材料および厚さで形成される。
放熱板5は、たとえばアルミニウム板(熱伝導率:221W/m・K)、鉄板(熱伝導率:83W/m・K)などの熱伝導率の大きい材料が用いられる。しかし、このヘッド基板1の材料は、アルミニウムのような金属板には限らず、ヘッド基板1をしっかりと保持しながら、連続して使用されても、主発熱用抵抗体2の温度が上昇し過ぎないで、常に安定した温度を維持させ得るものであればよい。この観点から、放熱板5は熱伝導率が80W/m・K程度以上のものが好ましい。前述のヘッド基板1に対応する放熱板5は、たとえば長さが50mm程度で、幅が7mm程度、厚さが7mm程度に形成されている。
放熱板5の側面には、図示しないプリント基板などからなる配線基板が設けられており、回路配線上に樹脂コートにより絶縁膜が設けられており、主発熱用抵抗体2用の電極端子、補助発熱用抵抗体7の電極端子、および温度測定用発熱体3の電極端子が接合部8からコネクタ9を介して、それぞれ図示しない配線基板に設けられる外部電極端子にそれぞれ接続され、それぞれ外部電源と接続されるようになっている。なお、図示しないサーミスタが、過熱防止二重安全用にヘッド基板5の裏面に設けられる場合もある。
前述の図1に示される例は、補助発熱用抵抗体7および温度測定用抵抗体3のそれぞれの両端に電極が形成されることにより、長さ全体の平均の温度を測定し、長さ全体での加熱補助に用いる例であったが、図3に抵抗体部分の上面図が示されるように、補助発熱用抵抗体7および温度測定用発熱体3をそれぞれ2分割、またはそれ以上の多分割に分割することにより、主発熱用抵抗体2の長手方向に沿ったそれぞれの部分の温度を検出し、その温度に応じて低い部分のみの補助発熱用抵抗体を駆動して、全体の温度の均一化を測ることもできる。なお、分割するといっても、温度測定用抵抗体3や補助発熱用抵抗体7は長手方向に沿って連続的に形成しておいて、電極のみを分割する場所に形成すればよい。
図3(a)は、温度測定用抵抗体3および補助発熱用抵抗体7の両端にそれぞれ電極3a、3b、7a、7bを設ける他に、それぞれの中間点に電極3c、7cを設け、半分づつで温度を別個に測定し得ると共に、発熱し得るようになっている。すなわち、たとえば温度測定用抵抗体3の両端電極3a、3b間で通電して温度を測定すれば(温度の測定方法は後述する)、長さ方向全体の平均温度を知ることができ、電極3a、3c間で通電すれば図3(a)において左半分の平均の温度を知ることができ、電極3b、3c間で通電して温度を測定すれば、右半分の平均の温度を知ることができる。補助発熱用抵抗体7についても、電極7a、7b、7cを任意に選択して駆動すれば、所望の場所の補助発熱用抵抗体7を動作させて温度を上げることができる。
図3(b)は、温度測定用抵抗体3および補助発熱用抵抗体7を共に3分割した場合の例で、温度測定用抵抗体3の3等分した2箇所に電極3d、3eが設けられ(電極はヘッド基板1の端部接合部8に導出されている)、補助発熱用抵抗体7にも同様に、両端電極7a、7bの他に3等分した2箇所に電極7d、7eが形成されている。そして、これらの電極を組み合せて使用することにより、所望の場所の温度を測定したり、温度の補正をすることができる。たとえば図3(b)において、電極3aと3dを用いることにより、左1/3の領域の平均温度を、電極3aと3eとを用いることにより、左2/3の領域の温度を、電極3dと3eとを用いることにより、真中の1/3の領域の温度を、電極3bと3eとを用いることにより、右1/3の領域の温度を、それぞれ測定することができる。補助発熱用抵抗体7についても、電極7a、7b、7d、7eの組合せを選択することにより、所望の領域のみを補助的に加熱することができる。
3分割以上に分割する場合でも、その分割点に電極を形成しておけば、自由に所望の領域のみの温度を測定し、または、発熱させることができる。なお、温度測定用抵抗体3は殆ど温度を上昇させないように高抵抗で行っているので、電極を温度測定用抵抗体3の中間点に形成しても問題は何ら生じないが、補助発熱用抵抗体7の場合は、中間点に電極を形成すると中間の電極形成部の温度が下がる。しかし、補助発熱用抵抗体7は、あくまでも補助の発熱用であり、温度を上げる発熱の90%程度は主発熱用抵抗体2に依存しているため、補助発熱用抵抗体7の長手方向に沿って温度に不均一な部分が生じてもそれほど影響はしない。その意味からも主発熱用抵抗体2の中間部に電極を形成すると、主発熱用抵抗体2の長手方向に沿って温度ムラができるため、均一加熱をするためには電極を形成することができないが、このような補助発熱用抵抗体7を設けることにより、温度ムラを殆ど生じることなく、逆に温度ムラを補正することができる。
この加熱ヘッドを消去ヘッドとして用いて、たとえば記録媒体の記録を消去するには、図4に一例の一部拡大説明図が示されるように、消去ヘッド10の主発熱用抵抗体2を所定の温度に上昇させ、主発熱用抵抗体2側とプラテンローラ10aとを圧接するように対向させて、プラテンローラ10aを回転させながらその間に記録媒体である、たとえばリライタブルなカードRCを通過させることにより、カードRCの画像記録部の温度が上昇して消色し、記録を消去することができる。この際、前述のように、抵抗体が設けられる下側のガラス層(図4では図示せず)が台形状に形成されていることにより、カードRCの挿入をスムースにすることができる。
本発明の加熱ヘッドによれば、主発熱用抵抗体2の他に補助発熱用抵抗体7が設けられているため、たとえば加熱のスタート時に両方を動作させて急速に温度を上昇させたり、使用中に温度が下がってきたら補助発熱用抵抗体を動作させて温度を補正したりすることができる。また、前述の図3に示されるように、温度測定用抵抗体3と共に補助発熱用抵抗体7を長手方向に分割して電極が形成されることにより、部分的に温度測定をして温度分布のムラを補正することもできる。その結果、熱転写用などで、幅が広いA4サイズ(8インチサイズ)用の加熱ヘッドなどの長いもので、温度分布のムラが生じやすいものでも、全長の温度分布が一定になるように、簡単に温度を補正することができる。
しかも、主発熱用抵抗体2の加熱を一定に保持しながら、温度測定用抵抗体3による温度測定に応じて、補助発熱用抵抗体7により温度の補正をすることができるため、記録媒体などの加熱する媒体と接触する主発熱用抵抗体2への入力を変える必要がなく、記録媒体などの媒体への温度を一定に維持しやすい。
また、ヘッド基板1にある程度良好な熱伝導率の材料を用い、その裏側にヘッド基板よりも熱伝導率が1/100程度に落ちる熱絶縁層4を介して熱伝導率がヘッド基板の10倍程度の非常に良好な放熱板が設けられる構造になっているため、主発熱用抵抗体2およびヘッド基板1表面の温度が抵抗体への通電開始後速やかに温度上昇し、所定の温度に上昇させることができる。しかも、熱絶縁層を介して非常に熱伝導の良好な放熱板が設けられているため、連続使用により温度が上昇しても、連続使用による長時間の経過では、熱絶縁層を経ても熱伝導はある程度行われ、薄い熱絶縁層を通過して放熱板により放熱される。その結果、短時間で所定の温度に上昇し、連続動作をしても過熱することがなく、どのような使用条件においても非常に安定した温度の加熱ヘッドが得られ、間欠的に行う記録媒体の記録消去装置や、アンダーコート、オーバーコートなどの熱転写装置などの加熱ヘッドとして利用することができる。
つぎに、本発明の加熱ヘッドを用いた記録媒体の記録を消去する消去装置およびその消去方法について説明をする。本発明による加熱ヘッドを用いた記録媒体の記録消去方法は、図5に一例の装置の概略ブロック図が示されるように、図1に示される構造の消去ヘッド10を用い、温度測定用抵抗体の温度、すなわちヘッド基板表面の温度を検出し、その温度が所定の温度に達したら可逆性記録媒体であるカードRCを主発熱用抵抗体上に送って記録媒体の記録を消去すると共に、補助発熱用抵抗体7が設けられていることを特徴としている。これにより、所定の温度に達するまでの加熱の際に、補助発熱用抵抗体を動作させることにより、非常に短時間で所定の温度まで上昇させることができ、オンデマンドの動作に対しても、クイック動作をさせることができる。さらに、所定の温度に達したら補助発熱用抵抗体をオフにする動作をさせたり、温度が下がった場合にのみ補助発熱用抵抗体7を動作させることができ、温度を所望の温度に維持しやすくなる。
具体的には、図6にフローチャートが示されるように、カードRCがカード待機場所、たとえば消去装置の挿入口12に挿入されたら全ての抵抗体制御手段15a〜15cを駆動して主発熱用抵抗体、温度測定用抵抗体および補助発熱用抵抗体の通電スイッチをオンにし、測定用温度検出手段16により温度測定用抵抗体が所定の温度(たとえば130℃)に達したら、搬送制御手段18により搬送手段13(13a、13b、13c)を駆動してカードRCを移動させる。それと同時に補助発熱用抵抗体7の通電をオフにする。そして、カードRCを消去ヘッド10上に送り、カードRCが消去ヘッド10上を通過し終ったら発熱用抵抗体および温度測定用抵抗体への通電をオフにする。その間に温度測定用抵抗体の温度が予め設定した温度より低下した場合には、随時補助発熱用抵抗体への通電をオンにして温度を回復させる。温度測定用抵抗体の温度が予め設定した温度に達したら、補助発熱用抵抗体への通電をオフにし、これを繰り返す。
そして、カードRCが消去装置の排出口14に排出されたら、図示しない検知センサにより、または搬送開始からの時間制御により検知して搬送制御手段18により搬送手段13の駆動を停止する。この抵抗体制御手段15a、15bと搬送制御手段18のオンオフのタイミングは図7に示されるようになる。図7では、2枚のカードを連続的に行った場合の例が示されている。
この搬送手段13の搬送速度は、目的により種々の早さに設定することができ、たとえば30mm/秒程度で搬送することができるが、これより早い場合も遅い場合もある。また、搬送手段の制御は、カードの位置による制御でなくても、一定時間で制御することもできる。すなわち、この搬送速度を認識しておけば、たとえば測定用温度検出手段16からの搬送手段駆動信号による駆動開始から2.5秒後(75mm移動)に抵抗体への通電をオフにし、3秒後(90mm移動)に搬送手段を停止する、などの時間制御により搬送手段を駆動することもできる。この時間は一例で、搬送速度、装置の大きさ、カード待機場所などにより、時間を設定することができる。
図6に示される例は、カードの待機場所がカード挿入口の例であったが、カード待機場所は、たとえば消去ヘッドの近くとか、消去ヘッドに接触する位置など、消去装置内の種々の場所に設定することができる。この場合には、カード挿入口にカードが挿入されたら、自動的に、または手動的にカードをカード待機場所に送ってから、前述の抵抗体への通電が制御される。
図5に示される概略ブロック図は、図6に示される一連の工程を行うように構成されている。すなわち、挿入口12は、カードRCを挿入し得るように形成されてカード待機場所になると共に、カードRCの挿入を検出する図示しない検知センサが設けられている。そして、検知センサにより得られるカード挿入の信号は主発熱用抵抗体2、温度測定用抵抗体3および補助発熱用抵抗体7のそれぞれの抵抗体制御手段15a、15b、15cに送られるようになっている。また、挿入されたカードRCは、たとえばローラ13a、13b、13cによりカードRCをくわえながら搬送する搬送手段13により消去ヘッド10を経て排出口14に送られるようになっている。この搬送用のローラ13a、13b、13cの回転は、搬送制御手段18により制御され、所定の場合に回転してカードRCが搬送されるようになっている。なお、図5に示される例では、挿入口12と排出口14とが別の位置に形成されているが、途中でカードRCの進行を逆転させて、挿入口12と排出口14とを共通化することもできる。また、前述のように、カード待機場所を挿入口12とは別に設定することもできる。
主発熱用抵抗体2を制御する抵抗体制御手段15aは、図9に示されるように、直流またはパルスで消去ヘッド10の主発熱用抵抗体2に電流を流し得るように電源22、スイッチ手段SW、分圧抵抗21、メイン用入力制御手段23および安全手段24を、温度測定用抵抗体3の抵抗体制御手段15bは、図8に示されるように、温度測定用抵抗体3に直流またはパルスもしくは交流で電流を流し得るように電源32、スイッチ手段SW、および分圧抵抗31を、補助発熱用抵抗体7の抵抗体制御手段15cは、図10に示されるように、補助発熱用抵抗体7に直流またはパルスもしくは交流で電流を流し得る電源72、補助用入力制御手段73を、それぞれ有している。温度測定用抵抗体3および主発熱用抵抗体2の抵抗体制御手段15b、15aには、それぞれの抵抗体3、2の温度を検出し得るように測定用温度検出手段16および主発熱用温度検出手段17が接続され、さらに、主発熱用抵抗体2の温度を一定の温度範囲に制御する温度のメイン用入力制御手段23および安全手段24が前述の主発熱用抵抗体の抵抗体制御手段15aに設けられている。
さらに、抵抗体制御手段15a〜15cのいずれかには、図示しないカード検知センサが設けられる場合もあり、その場合はカードRCが消去ヘッド10の部分を通過したか否かを検出し、通過した場合には主発熱用抵抗体2および温度検出用抵抗体3の通電を停止させることができる。このような検知センサがない場合でも、前述のように、搬送の開始から一定時間でオフにする時間制御をすることができる。
温度測定用抵抗体3の温度を検出する測定用温度検出手段16は、図8に温度検出用抵抗体3部分の構成ブロック図の一例が示されるように、温度検出用抵抗体3の両端に分圧抵抗31を介して直流またはパルスの電源32が接続されている。温度検出用抵抗体3は、前述のように、できるだけ温度係数の大きい材料(たとえば1000〜3500ppm/℃)が用いられる。また、温度測定用抵抗体3は、その抵抗体3が設けられているヘッド基板表面の温度を検出するのが目的であるため、温度測定用抵抗体3自身が発熱して温度上昇することは好ましくない。そのため、温度測定用抵抗体3の抵抗値は小さくして、分圧抵抗31の抵抗値を大きくし、また、分圧抵抗31は温度係数の小さいものが望ましい。分圧抵抗31は、温度の変化するヘッド基板と離れた場所に設けられるため、殆ど温度変化はないが、環境温度の変化の影響を受けなくするためである。具体的には、温度測定用抵抗体3の抵抗値が12Ωで、分圧抵抗31の抵抗値は150Ω程度のものが用いられ、電源に5Vの直流電源を用いることができる。
測定用温度検出手段16は、このような構成で、温度測定用抵抗体3の両端電圧を測定し(V検出)、その電圧の変化を求めることにより、温度の変化を計算してその時点での温度検出用抵抗体3の温度を求める構成になっている。すなわち、温度検出用抵抗体3は、温度により抵抗値が一定の割合で変化する温度係数を有しており、その温度係数は予め測定することにより(材料により定まるが、成分により異なるので測定により正確に求める)分っている。そのため、前述のように、温度測定用抵抗体3と直列に分圧抵抗31を接続し、その両端に電源32が接続されて、一定の電圧が印加されることにより、温度測定用抵抗体3の温度が変化すると、その抵抗値が変化して電流が変化する。分圧抵抗31の抵抗値は変化しないため、温度測定用抵抗体3の両端電圧は、その抵抗体3の抵抗変化に応じて変化する。その電圧変化により、温度測定用抵抗体3の抵抗値がわかり、温度係数から変化前の温度に対する温度の変化量を知ることができ、その時点での温度測定用抵抗体3の温度を知ることができる。
なお、温度検出用抵抗体3の両端により電圧変化を測定している(V検出)が、これは温度変化により両端電圧の変化割合が大きい方が精度よく検出できるためで、分圧抵抗31の両端電圧を測定しても温度変化を検出することはできる。
主発熱用抵抗体2の温度を検出する主発熱用温度検出手段17も、図9にその一例の構成図が示されるように、同様の構成になっている。すなわち、主発熱用抵抗体2も分圧抵抗21と直列に接続され、その直列接続の両端に直流またはパルスの電源22が接続されて、その分圧抵抗21の両端の電圧を検出(V検出)し得るように構成されている。この場合、主発熱用抵抗体2は、それ自身で発熱させることが目的であるため、主発熱用抵抗体2の抵抗が分圧抵抗21より遥かに大きい抵抗となるように形成され、たとえば主発熱用抵抗体2の抵抗が8Ωで、分圧抵抗21が0.22Ω(電流が多くても電力を消費しないように小さく設定される)になるように形成されると共に、印加する電圧も24V程度と高い電圧が印加されるようになっている。そのため、抵抗の小さい側である分圧抵抗21により電圧検出(V検出)が行われているが、主発熱用抵抗体2の両端の電圧を検出することもできる。
主発熱用抵抗体2の場合、連続使用などにより温度が上昇し過ぎる場合には、その検出温度によってメイン用入力制御手段23により電源22の電圧を下げたり、デューティ駆動の場合にはそのデューティを下げるなどして入力を落すことにより、主発熱用抵抗体2の温度を所定の温度範囲に制御することができる。また、連続動作などにより、ヘッド基板表面と主発熱用抵抗体2との温度関係が変って、温度測定用抵抗体3の検出温度だけでは完全消去などを行えない場合には、両方の温度が所定の温度範囲に入った場合に搬送手段を駆動し得るようにする場合には、この主発熱用抵抗体2の検出温度の情報は、搬送制御手段18にも送られる。具体的な温度検出は、温度測定用抵抗体2の温度測定と同様に行うことができる。
さらに、図9に示される例では、主発熱用温度検出手段17により検出される温度が、たとえば消去温度とする130℃よりもさらに一定の温度、たとえば30℃程度を超えた温度を示す場合に、直ちに電源22のスイッチSWをオフにするか、またはメイン用入力制御手段23に入力を極端に下げる指示を出す安全手段24が設けられている。このような安全手段24が設けられていることにより、たとえばカードが挿入されないで空焚きされて温度が異常に上昇する場合には、時間制御のたとえば2.5秒が経過していなくても直ちに電源22をオフにするか、入力を極端に下げることができ、消去ヘッドのオーバーヒートによる破損を防止したり火災の発生などを防止することができる。
すなわち、カードの搬送に異常が生じたり、発熱体に異常が生じたりした場合に、時間制御による待ち時間なく、直ちに入力を制御することができ、安全を確保することができる。当然のことながら、カードが挿入されず、温度が所定温度(たとえば前述の例では130℃)より高くなっても、さらに一定温度(前述の例では30℃)高い温度(たとえば160℃)に達しなければ、通常のメイン用入力制御手段23により制御することができる。この一定の温度は、消去ヘッドの温度が装置などにより定まる許容温度(仕様書上の保証温度より若干低い温度)になるよう(許容温度から所定温度を引いた温度)に設定することができる。
なお、図9に示される例では、安全手段24をメイン用入力制御手段23と別個に設けた例が示されているが、メイン用入力制御手段23の中にこの安全手段24が設けられる構成でもよい。この場合、主発熱用温度検出手段17からの温度が所定温度より一定温度高い温度の場合には、通常の入力制御よりも大きく入力を下げるか0にすることにより安全手段とすることができる。
補助発熱用抵抗体7の抵抗体制御手段15cは、図10に示されるように、直流またはパルスもしくは交流を供給する電源72と、補助用入力制御手段73とが接続されたものからなり、補助発熱用抵抗体7にその電極を介して接続されている。この補助用入力制御手段73には、前述の測定用温度検出手段16が接続され、入力の増減、オンオフの制御をし得るようになっている。たとえば記録媒体の消去作業などを行う際に、補助発熱用抵抗体をスタート時に動作させる場合、主発熱用抵抗体3と共に所定の入力を印加して、温度測定用抵抗体の温度が所定の温度に達したらオフまたは入力を大幅に低減させるように制御したり、オフにした後温度測定用抵抗体の温度が所定の温度より低下したら、再度補助発熱用抵抗体に入力して温度を上昇させることにより温度を所望の温度に維持したりするなど、温度に応じてその入力の増減、オンオフを制御することができる。この温度による補助発熱用抵抗帯の制御は、図6に示されるフローチャートのようにマイコンでこの制御を繰り返すことにより、主発熱用抵抗体への入力は変えることなく、所望の温度に維持することができる。
この場合、主発熱用抵抗体2への入力を本来所定の温度に加熱するのに必要な入力の90%程度とし、補助用発熱抵抗体7への入力を20%程度と設定しておけば、所定の温度に達するまでの時間を短くすることができると共に、温度制御を行いやすいが、主発熱用抵抗体と補助発熱用抵抗体への入力の割合はこの例に限定されない。また、前述のように、補助発熱用抵抗体が温度測定用抵抗体と共に多分割されている場合には、分割された各部ごとに、または所定のブロックごとなど、必要な単位で制御し得るように構成されている。
前述のように、補助発熱用抵抗体によりスタート時の入力を大きくしたり、温度変化に対する補正を行うことにより、主発熱用抵抗体では電流が多いため、変化させる場合の駆動を行い難いのに対して、補助発熱用抵抗体の場合はその電流が主発熱用抵抗体の1/5程度と小さいため、制御を行いやすいという利点があると共に、記録媒体などに接する主発熱用抵抗体2の電流は変化させないため、記録媒体などへの急激な温度変化を生じさせることなく温度を均一に制御しやすいという利点がある。
また、予め設定する温度は、補助発熱用抵抗体7への入力をオフまたは低減する設定温度としては、搬送手段を駆動する所定の温度でもよいし、別の温度に設定することができるし、温度が下がって再度入力を印加する場合の設定温度としては、入力をオフにする場合の設定温度と同じにしてもよいし、それより低い温度に設定することもできる。
搬送制御手段18は、搬送手段13のオンオフを制御するもので、前述の温度測定用抵抗体の測定用温度検出手段16から、温度測定用抵抗体の温度が所定の温度に達したという情報、または測定用および主発熱用の温度検出手段16と17から、温度測定用抵抗体および主発熱用抵抗体の温度がそれぞれ所望の温度に達したという情報、に基づいて、搬送手段を駆動させ、カードRCが排出口14に達したという情報に基づいて、または搬送開始から一定時間の経過後に搬送手段13を停止させるように構成されている。
つぎに、この消去装置の動作について説明をする。まず、カードRCが挿入口12に挿入されると、カードRCの検知情報が抵抗体制御手段15a〜15cに送られ、主発熱用抵抗体2、補助発熱用抵抗体7および温度測定用抵抗体3に通電が開始される。通電開始後における温度測定用抵抗体3の温度および主発熱用抵抗体2の温度は、それぞれ測定用および主発熱用の温度検出手段16と17により検出される。そして、たとえば測定用温度検出手段16により温度測定用抵抗体3の温度が所定の温度に達した場合には、その情報が搬送制御手段18に送られ、搬送手段13(13a、13b、13c)を駆動する。その結果、挿入口12に挿入されたカードRCがローラ13a、13bにより搬送されて消去ヘッド10とプラテンローラ10aとの間に送られる。この搬送手段13が駆動される際に、補助発熱用抵抗体7への入力をオフまたは低減させることができる。
消去用ヘッド10の主発熱用抵抗体の温度は所定の温度に達しているため、消去ヘッド10上を通過したカードRCの画像は消去温度になり消色される。この消色されたカードRCが消去ヘッド10を通過し終ると、センサまたは時間制御によりその情報が抵抗体制御手段15に送られて抵抗体2、3への通電が停止される。その後、カードRCが排出口14に達すると、センサまたは時間制御によりその情報が搬送制御手段18に送られて搬送手段13が停止される。
これにより1枚のカードの消去作業が終了し、つぎのカードを消去する場合には、同様に繰り返すことにより行うことができる。この一連の動作を2枚のカードで連続して行った場合における抵抗体および搬送手段のオンオフの関係は図7に示されるようになる。
本発明では、温度測定用抵抗体の温度(ヘッド基板表面の温度)が所定の温度に達した場合に搬送手段13を駆動して、カードRCを消去ヘッド10に送り込むと共に、主発熱用抵抗体2の他に補助発熱用抵抗体7を設けて、その補助発熱用抵抗体7により主発熱用抵抗体2の温度を制御することに特徴がある。すなわち、使用状態により主発熱用抵抗体2の温度が変化し、その温度を測定して入力を調整することにより一定の温度に制御することは可能であるが、主発熱用抵抗体2のみで入力を制御すると、入力の変化により極端に温度が変りやすく、主発熱用抵抗体2の時間的な温度ムラが生じやすい。しかし、たとえば90%程度の入力一定で主発熱用抵抗体の入力を一定にさせておくことにより、時間的変化は非常に安定し、しかも温度が異常に変化した場合には、補助発熱用抵抗体7により入力を大幅に変化させることができ、温度の異常を補正することができる。
その結果、記録媒体などと接触する主発熱用抵抗体の温度を極端に変化させることなく、主発熱用抵抗体の温度をほぼ一定に制御することができ、非常に安定した消去を行うことができる。
さらに、温度測定用抵抗体および補助発熱用抵抗体を長手方向に分割して、部分的な温度測定および加熱を行えるようにすることにより、主発熱用抵抗体の長さが長くなって長手方向で抵抗値が一定でなかったり、装置のレイアウト上の問題などで、長手方向で温度が一定しない場合でも、温度分布に応じてその温度を一定にすることができる。
上述の例では、測定用温度検出手段16の情報のみで搬送手段13を駆動したが、これは、通常の動作開始では、主発熱用抵抗体の温度が上昇してその温度によりヘッド基板の温度が上昇し、温度測定用抵抗体の温度が上昇するため、温度測定用抵抗体の温度が120℃程度に上昇すれば、主発熱用抵抗体の温度も所定の150℃程度に上昇しているからである。そのため、オンデマンドにより間欠的に動作させる場合には、温度測定用抵抗体のみの温度をモニターして所定の温度に上昇したら、搬送手段をオンにして問題はない。しかし、連続動作などにより、たとえばヘッド基板の温度が相当高くなっているような場合には、ヘッド基板表面の所定温度120℃は直ちに達するにも拘わらず、主発熱用抵抗体の所定温度150℃が遅れる場合がある。このような場合には、主発熱用抵抗体の温度情報も搬送制御手段に送って、両方の温度が所定の温度に達してから搬送手段を駆動させるのが確実である。