JP2005261428A - 紫外線によるエチレンガスの改質方法並びにその方法を実施するためのエチレンガスの改質装置及びその装置を用いた生鮮農産物の鮮度保持装置 - Google Patents

紫外線によるエチレンガスの改質方法並びにその方法を実施するためのエチレンガスの改質装置及びその装置を用いた生鮮農産物の鮮度保持装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 水滴を付着させた保水体に紫外線を照射して水滴中にOHラジカルを生成させ、そのOHラジカルによってエチレンガスをエタンと水に改質させる方法を提供する。
【解決手段】 表面に水を粒状に保持可能な保水面に形成した通気性保水体2aに、水を粒状に付着するように供給し、該保水面を水滴で濡れた状態に保たせる。
そして、その保水面に付着させた水に対して10mm以内の至近距離から波長が254nmの紫外線Sを紫外線発光管3の近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御しつつ照射してその照射紫外線のエネルギーで水滴M中にOHラジカルRを生成させる。
さらに、そのOHラジカルを含む水を保持している保水面に対してエチレンガスを含む気体を通風させて、そのOHラジカルRの作用によって接触したエチレンガスEをエタンeと水wに改質する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、紫外線を用いて水中にOHラジカルを生成し、そのOHラジカルでエチレンガスをエタンと水に改質する方法と、その方法を実施するためのエチレンガスの改質装置と、そのエチレンガスの改質装置を用いて生鮮農産物から庫内へ放出される鮮度保持に有害なエチレンガスを無害なエタンと水に改質して生鮮農産物の鮮度を長期間保持できるようにするための鮮度保持装置に関する。
生鮮農産物は容器に入れておくと自らから発生するエチレンガスにより鮮度が低下したり、腐敗が促進されたりする。
これを防ぐために、活性炭などのガス吸着材を庫内に入れてエチレンガスを吸着除去しようとすることが行われている。
しかし活性炭などのガス吸着材は、使用し続けると吸着性能の低下が起こり、適宜新しいものと交換しなければならず、この管理も大変わずらわしいことであった。
そこで、そのようなエチレンガスの対策とは別に、電極へ高電圧の印加によりプラズマ放電でエチレンガスを分解させ、さらに同時に発生したオゾンの殺菌力で生鮮農産物に付着している各種細菌類を死滅させることによって腐敗の原因を解消させて鮮度を保持しようとする方法(特許文献1参照)が提案されている。
その方法による生鮮農産物の鮮度保持装置は、オゾンを発生させることと高電圧電流を使用するため大掛かりな装置と多くの電力消費が必要となり、装置の維持管理費が高くなる。さらに、高電圧の電流の印加によりプラズマ発光、発熱が起こり、冷却すべき冷凍庫や冷蔵庫内の温度が逆に上昇するという難点もあった。
さらに、発生させたオゾンは、腐敗菌を殺菌する効能がある反面、食品の脱色変化を起して食品の見栄えを悪くし、さらに多量に発生させると人体へ悪影響を及ぼす。このため、このようなオゾンによる装置をそのまま家庭用の生鮮農産物の保存庫などにして利用することは好ましいものではなかった。
また、プラズマ放電でエチレンガスを分解させると、その分解反応により水素ガスが発生し、庫内に貯まった水素がプラズマで引火して爆発するおそれがあった。
またそれらの方法とは別に、冷蔵庫内に紫外線を照射して腐敗菌類を殺菌し腐敗を防いで生鮮食品の鮮度を保持させようとすることが行われている。この場合には、紫外線殺菌はできても農産物にとって有害なエチレンガスによる鮮度の低下を防ぐことはできなかった。
特開2000−139198
本発明は、従来のかかるプラズマ放電などによるエチレンガス対策の難点を解消するためになされたもので、電力消費の少ない紫外線を照射させることによって水滴中にOHラジカルを生成させ、そのOHラジカルによって効果的にエチレンガスをエタンと水に改質する方法及びその装置を提供し、さらにその装置を用いて農産物から庫内へ放出される鮮度保持にとって有害なエチレンガスを無害なエタンと水に改質して生鮮農産物の鮮度を長期間保持することができる電力消費が少なくコンパクトで安全な鮮度保持装置を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明の紫外線によるエチレンガスの改質方法は、表面に水を粒状に保持可能な保水面に形成した保水体に水を供給し、該保水面を水滴で濡れた状態に保持する保水工程と、該保水面に付着させた前記水滴に対し、10mm以内の至近距離から波長が254nmの紫外線を、近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御しつつ照射して、該照射紫外線のエネルギーで前記水滴にOHラジカルを生成させる照射工程と、 該OHラジカルを含む前記水滴を保持している前記保水面に対してエチレンガスを含む気体を通風させて前記OHラジカルに該エチレンガスを接触させる反応工程とで構成する。
そして、上記各工程によりOHラジカルにエチレンガスを接触反応させてエタンと水に改質できるようにしたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、前記保水体として表裏貫通した微細孔を多数有する通気性保水体を用い、上記方法の反応工程において、該保水体の表裏いずれかの一方側から他方側へエチレンガスを含む気体を通過させることによりOHラジカルとエチレンガスが通風接触できるようにしたことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、用いる前記通気性保水体を、無機繊維材から成る編物、織布及び不織布又は貫通した微細孔を形成したセラミック材の群のうち少なくともいずれか一つを含む素材で構成したものである。
請求項4に記載の発明は、上記請求項1に記載のエチレンガスの改質方法を実施するためのエチレンガスの改質装置であって、(a)撥水性を有する素材で表面に水を粒状に保持可能な保水面に形成した保水体と、(b)該保水面に向けて10mm以内の至近距離に設けられた254nmの波長の紫外線を発生させる紫外線発生手段と、(c)前記紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御する温度制御手段と、(d)前記保水面に対して水を粒状に付着させる水付着手段と、(e)前記保水面に付着した水滴に対してエチレンガスを含む気体を接触通過させるための通気手段とで構成したものである。
請求項5に記載の発明は、上記請求項2又は3に記載のエチレンガスの改質方法を実施するためのエチレンガスの改質装置であって、(a)撥水性を有する素材で表面に水を粒状に保持可能な保水面に形成し、且つ表裏貫通する多数の微細孔を形成した通気性の保水体と、(b)該保水面に向けて10mm以内の至近距離に設けられた254nmの波長の紫外線を発生させる紫外線発生手段と、(c)前記紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御する温度制御手段と、(d)前記保水面に対して水を粒状に付着させる水付着手段と、(e)前記保水面に付着した水滴に対して該保水体の表裏いずれかの一方側から他方側へ前記微細孔を通してエチレンガスを含む気体を接触通過させるための通気手段とで構成したものである。
請求項6に記載の発明は、上記請求項4及び5に記載した構成のエチレンガスの改質装置を用いた生鮮農産物の鮮度保持装置であって、生鮮農産物収納用の庫内に請求項4又は5に記載のエチレンガスの改質装置を設置したものである。
そして、前記エチレンガスの改質装置の通気手段により該庫内の気体を循環させて、前記保水面に付着している紫外線照射で生成されたOHラジカルに対して該庫内に収納した農産物から発生したエチレンガスを接触反応させて、無害なエタンと水に改質させることにより庫内気体中の有害なエチレンガスを減少させて生鮮農産物の鮮度を長期間保持できるようにしたことを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、上記請求項4及び5に記載のエチレンガスの改質装置を用いた生鮮農産物の鮮度保持装置であって、間隔置きに排気口を配設した誘導ダクトを庫内側壁寄り底部に沿って設置し、該誘導ダクトの中間部位に該誘導ダクトに連通させて直立メインダクトを起立させ、該直立メインダクトの上方部位には吸気口を設けるとともに該メインダクトの中間高さ部位には請求項4又は5に記載のエチレンガスの改質装置を内蔵して構成したものである。
そして、前記エチレンガスの改質装置の通気手段により前記庫内の気体を前記ダクトを通して循環させ、前記保水面に付着している紫外線照射で生成されたOHラジカルに対して該庫内に収納した農産物から発生したエチレンガスを接触反応させて、無害なエタンと水に改質させることにより庫内気体中の有害なエチレンガスを減少させて生鮮農産物の鮮度を長期間保持できるようにしたことを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、上記請求項7に記載した構成の生鮮農産物の鮮度保持装置において、エチレンガスの改質装置の通気手段がメインダクト内の吸気口に連設した送風機であり、前記エチレンガスの改質装置の位置よりも上方のメインダクト内の中間高さ部位にエチレンガス濾過パネルを備えて構成したものである。
請求項9に記載の発明は、上記請求項7又は8に記載した構成の生鮮農産物の鮮度保持装置において、庫内に冷却機を備え、エチレンガスの改質装置の位置よりも上方のメインダクト内の中間高さ部位に電熱ヒータを備え、庫内に臨ませて設けた湿度センサで庫内の湿度を感知し、変化する感知デ−タを基に庫内の湿度を設定範囲に維持できるように電熱ヒータの稼動を制御できるようにしたことを特徴とするものである。
一般に単に水に対して紫外線を照射してもOHラジカルが簡単に生成されることはないが、本発明では撥水性表面の保水体に撥水された水を霧粒状に高密度に付着させ、その水滴群に対して10mm以内の至近距離から波長が254nmの紫外線を照射し、その際に紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御することによって、該水滴中に閉じ込められた紫外線エネルギーでOHラジカルを多量に生成させることが可能となった。
そして、その水滴中で生成されたOHラジカルにエチレンガスを含む気体を通風接触させることによって、そのOHラジカルの作用でそのOHラジカルに接触したエチレンガスをエタンと水に改質させることができるようになる。
また、紫外線を発生させる紫外線発光管と保水体(例えば撥水性表面加工の無機繊維材から成る編物、織布及び不織布など)の組み合わせは、コンパクト化が可能であり、それらは小さい容器に納めることができ、その容器に納めたエチレンガスの改質装置は総体でも小型軽量化することが可能となる。
したがって、そのようにコンパクト化したエチレンガスの改質装置は、ダクトを用いた業務用の大型の生鮮農産物用保存庫はもとより、小型家庭用の既存の各種生鮮農産物の保存庫内にも容易に組み込むことができ、その改質装置を庫内に設けた生鮮農産物の鮮度保持装置は、収納した生鮮農産物から放出される有害なエチレンガスをOHラジカルの作用で無害なエタンと水に高効率に改質し、生鮮農産物の鮮度を長期間保持することが可能になる。
なお、本発明では、生成されたOHラジカルが、空気分子に付着し、空気中に漂う菌をその強い酸化作用で殺菌することもできる。その際、従来のオゾン殺菌ではそのオゾンが残留して害を及ぼすのに対して、本発明では生成されるOHラジカルは瞬間的に消滅するので、他への悪影響が起こらず安全である。
本発明のうち、まずエチレンガスの改質方法を実施するための形態ついて説明する。
その方法は、保水体に2aの撥水(疎水)性を有する表面に水滴M(粒)を付着させる(図1参照)。
そして、その保水体2の表面に、水が常時又は適宜に供給されて、常にその表面が水滴Mで濡れた状態(水滴M同士が接触せずに、保水面の全面に密に存在する状態)に保たれるようにする(保水工程)。
その水滴Mに対して、図5に示すように、10mm以内の至近距離で波長が254nmの紫外線Sを照射し、その際に、図1に示すように電熱ヒータ29などで紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御することによって水滴M中に多量のOHラジカルRを生成させる(照射工程)。
そして、その水滴M中に発生したOHラジカルRにエチレンガスEを含む気体を通風接触させる(反応工程)。この時に、そのOHラジカルの作用によって気体中のエチレンガスEがエタンeと水wに改質する。
その紫外線の照射によりOHラジカルが生成されてエチレンが改質される原理を以下説明する。
まず、水滴Mに紫外線を照射すると、図5のように、紫外線が水分子をOHラジカルとHラジカルに分離する。
この時、「O」と「OH」の解離エネルギーは4.8eVであり、この解離エネルギーを持つ紫外線の波長はλ=259nmである。
そして、水(H2O)から分離され生成されたOHラジカルはエチレンガス(C24)に接触して結合する。
そのOHラジカルとエチレンガスC24の反応で、エタン(C23)と水(H2O)が生成される。
この反応を次の化1の化学式で示す。
Figure 2005261428
以上のようにエチレンを改質するが、その際に生成されるOHラジカルの寿命は1/106秒と極めて瞬間的である。しかし、本発明では紫外線を照射し続けるので多量に生成され続け、OHラジカルが常に水滴中に存在する状態となる。
そして、その際に温度制御手段で紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御することによって、効果的にUV強度(μw/cm2)が得られるようになる。
紫外線のUV強度(μw/cm2)を測定すると、温度特性を示す次の表1に示されるようであり、その表1に示す温度での実験結果では、生鮮農産物の鮮度保持には適40°C〜50°C状態において最強となる特性を有することがわかるが、実用上は、約10°C以下ではUV強度が1250μw/cm2から急低下してOHラジカルが生成しにくくなるので本発明には適さず、また約40°C以上とすると庫内の温度上がってしまい、その上がった温度を低温に戻すための強力な冷却が必要となるため生鮮農産物の鮮度保持には適さなくなる。
Figure 2005261428
次に、水を粒状に保持可能な保水面に形成した保水体について説明する。
その保水体2の表面は水を水滴にさせるために撥水(疎水)性が必要であり、撥水性能を得られる素材としてはグラスウールなどがある。
上記保水工程によりその保水体の撥水性表面に付着した霧状の水滴は、図12に示すように、表面表力で球状乃至半球状となり、その形が崩れることなく保持される。
本発明では保水工程において、保水面に密に水を粒状に付着するように適度に水を供給するものであるが、水の供給を誤り水過多としてしまうと保水面に付着した水滴の隣同士が結合して大粒となりさらには水が面状化してしまい粒形が崩れるので好ましくない。
また、供給する水が少な過ぎると、乾いた状態となりOHラジカルを多量に得ることができなきなるので好ましくない。
このように、保水面を水滴で濡れた状態、即ち水滴M同士が接触せずに、保水面の全面に密に存在する状態に保持する方法は、随時霧吹きで霧滴を作って保水面に付着させる方法や保水面に結露水を発生させて水滴を得られるようにする方法などが可能である。
また、水を保水面に粒状(表面表力で球状乃至半球状となった状態)に付着させるのは、水滴間に通気性が得られる点、即ちOHラジカルとエチレンガスとの接触面積を増やし反応を促進させる効果が得られる点で優れている方法である。
特に、表裏通風可能な風通気性保水体を用いる場合には、その表裏の通風性を確保するためにも保水面に付着した水の粒子間に隙間が形成させることが必要である。
また、水滴が球状の場合は表面積が大きいので照射された紫外線を全方向から受け入れて水に対する紫外線の照射効率を高め、より多くのOHラジカルを生成させることができるようになる。
即ち、水は保水面に付着して表面張力によりレンズのようなほぼ球状曲面体(図12の(イ)が半球形、(ロ)が球形に近い半球状(ハ)が球状の曲面状を示す)の水滴となり、その水滴へ向う紫外線が入射する際に球状曲面で屈折して焦点側へ折り曲げられ中心部へ向って進行する。即ち照射された紫外線のエネルギーのレンズ焦点への集中が起こる。その紫外線エネルギーの集中によって水滴内部でOHラジカルが効果的に生成されるものとなる。
また、本発明で、波長が254nmの紫外線を照射するのは、その波長の紫外線の作用により多量のOHラジカルが生成されるからである。
さらに、水滴に対して10mm以内の至近距離で照射するのは、紫外線は空気中の水蒸気があると短距離でも急激に弱められ、その距離が10mm以上になると紫外線の減衰が激しくなり、水滴にOHラジカルを生成させるのができなくなるからである。
そして、10mm以下に可能な限り接近させた方が良いが、実際上の距離は、保水面に水滴が付着でき且つ通風可能となる距離であるので、限度はある。そしてその至近限度は、使用する素材などで異なる。
また、保水体の形状は各種可能であるが、表裏に通過可能な微細孔を多数有する通気性保水体2に水滴を付着させる形態がある(図2の模式図を参照)。
この形態では、水滴の付着している保水体2の表面から裏面へ微細孔を介してエチレンガスを含む空気などの気体を通風させて水にエチレンガスを接触させることができるので、OHラジカルとエチレンガスとを接触させるには好適な方法である。
次に、上記方法を実施するためのエチレンガスの改質装置について説明する。
その装置の一例は、図2に示すように、円筒容器1の内部にグラスウールで囲った円筒形の通気性保水体2を収納し、容器1内に通気性保水体2外の外空間Aと通気性保水体2内の内空間Bを形成する。
そして、その通気性保水2の中に紫外線発光管3を、保水2の内面に対して5mmの至近距離に設置する。
その紫外線発光管3は、254nmの波長の紫外線を発生させるのものを使用する。
さらに、紫外線照射近傍の温度を適温に制御する温度制御手段を備える。
その温度制御手段としては、取り込む通風気体の温度を予めコントロールしたり、紫外線発光管3自体の自家熱を上げることによって紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に保てるようにすることも可能であるが、より積極的には例えば、紫外線照射と通気性保水2間に、制御部28に接続した温度センサ30を配設し、そのセンサ30で感知した数値に基づいて設定した温度範囲になるように制御部28に接続した電熱ヒータ29を制御し、その熱電源に接続した制御部28の温度コントロールで紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に保てるようにすることができる。
そして、前記円筒容器1の周囲の側面に通気孔4を設けて外空間Aに外から空気を充分に取り入れられるようにし、また、内空間Bに面した円筒容器1の底部には通気孔5を設けて内空間Bから入った空気が出せるようにする。
さらに、前記内空間Bの通気孔5に接続する排気管9に排気ポンプ7を設けて、保水体2の微細孔にエチレンガスを含む気体が強制的に接触通過できるようにする。
そして、前記円筒容器1と通気性保水体2の外空間Aに通気孔6から加湿器8で霧滴を入れると、前記通気性保水体2の表面に細かい水滴(霧滴)が付着し、その霧滴は前記保水体2の撥水性表面に付着し表面表力で、図12に示すように、少なくとも紫外線が照射される表面部分は球面状に保持される。
前記紫外線発光管3はコード11を介して電源10に繋ぎ、その電源10に約4.5Vの電圧を印加できるようにする。
この筒型の保水体2の形態では、中央に設けられた紫外線発生管3から管状の保水体2の内面に対して10mm以内の至近等距離に装着することができる。
用いる加湿器8は、加熱式や超音波式の加湿器が使用できる。冷蔵庫に用いる場合には庫内の温度上昇を避けるため超音波式の加湿器の方が好ましい。
そして、加湿器8から発生した水滴Mを保水体2内面に付着させ、その面に照射した紫外線で水滴中にOHラジカルを生成し、排気ポンプ7でそのOHラジカルにエチレンガスを含む気体を強制的に通風接触させて反応を促し、気体に含まれるエチレンガスをエタンと水に改質させる。
この装置に使用する通気性保水体2aは、無機繊維材から成る編物、織布及び不織布などの繊維性のものや貫通した微細孔を形成したセラミック材などの素材が紫外線による風化作用に耐えられるので好適である。
上記エチレンガスの改質装置の形態は単体型であるが、業務用の大型保存庫に使用する場合などでは能力を高めるには装置単体を複数組み込むことで対応できる。
その複数型の場合の形態を次に説明する。
この形態の装置は、図3に示すように、円筒容器12の中に台板15を設け、その台板15上に円筒形の保水体2を直立させる。
その保水体2の中央に5mmの至近距離で254nmの波長の紫外線を発生させる紫外線発生管3を設ける。
そして、紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に保つために、複数の紫外線発光管3出力を上げて自体の自家熱を上げることで温度制御する。
前記紫外線発光管3はコード11を介して電源10に繋ぐ。その電源10は紫外線発生管31本当たり約5Vの電圧で必要な紫外線量を得ることができる。
その台板15の保水体2の管内に、台板15の背後に設けた送風機16(通気手段)の吸引で円筒容器12の一方から他方へ空気が抜けるように通気孔13を貫設する。
また、前記保水体2に対して水滴Mを付着させるための噴霧器14を設ける。
上記エチレンガスの改質装置を設けた生鮮農産物の鮮度保持装置については各種形態が可能であり、以下それらの装置について説明する。
そのうちの一つの形態は、図4に示すように、上記複数型のエチレンガスの改質装置を庫17の内壁面に設置したものである。
そして、その庫17内で保存されている生鮮農産物から放出されるエチレンガスEが空気とともに循環し、その際にそのエチレンガスの改質装置の紫外線で生成された多量のOHラジカルに接触した空気に含まれたエチレンガスがエタンeと水wに改質される。
その改質された無害な気体は前記エチレンガスの改質装置内に備わる送風機16の稼動によって庫17内の生鮮農産物の隙間空間を循環し、生鮮農産物の周囲にエチレンガスが増えることはなくなる。
次にその形態とは別の形態の装置について説明する。
この装置は、図9に示すように、庫17内に間隔置きに排気口18を配設した誘導ダクト19を庫17内側壁17a寄り底部に沿って設置し、該誘導ダクト19の中間部位に連通状に直立メインダクト20を起立させ、該直立メインダクト20の上方部位に吸気口21を設けるとともに該メインダクト20の中間高さ部位には上記エチレンガスの改質装置22を内蔵したものである。
この装置では、空気循環の悪い庫内の隅部分にも、その誘導ダクト19によってエチレンガスが除かれた空気が庫内に満遍なく行き渡るようになる。
また別の形態の装置は、上記形態の装置(図9に示す)に対してさらに、図10に示すように、エチレンガスの改質装置22の通気手段をメインダクト20内の吸気口21に連設した送風機16とし、前記エチレンガスの改質装置22の位置よりも上方のメインダクト20内の上部にエチレンガス濾過パネル23を備えたものである。
前記エチレンガス濾過パネル23は、ガス吸着性の素材を含むパネルが使用され、例えば通気性の繊維状物に活性炭を主とした吸着性の高い粒子を混合させた物などが使用可能である。
その前記エチレンガス濾過パネル23の取付け場所は、エチレンガスの改質装置よりも上流に配置したほうが好ましく、噴霧した湿気で起こる目詰まりを避けられるので長持ちする利点がある。
そして、そのエチレンガス濾過パネル23のエチレンガスが吸着されるので、庫内のガス濃度をより低下させることができる。
さらに別の形態の装置は、上記形態の装置に対してさらに、図10(図中、配線及び回路等は省略)に示すように、庫17内に冷却機24を備え、エチレンガスの改質装置22の位置よりも上方のメインダクト20内の中間高さ部位に電熱ヒータ25を備える。そして、庫17内に臨ませて設けた湿度センサ26で庫17内の湿度を感知し、変化する感知デ−タを基に電熱ヒータ25を湿度が設定範囲になるよう制御稼動させて庫17内の湿度を最適な範囲に維持できるようにしたものである。
この装置では、庫内に結露が発生して発生する水滴により、生鮮農産物が鮮度低下を来たすのを防ぐとともにその水で農産物に腐敗が発生するのを防止することができる。
さらに、壁面や床面に水滴が付着してカビが発生するのを防ぎ庫内がカビで汚染されるのを防止できる。
鮮度を保持するための庫内の湿度の設定範囲は、加湿器27で80%から90%程度にすることが好ましく、湿度センサ26で感知した数値が95%以上となったら電熱ヒータ25を稼動し80%以下になったら電熱ヒータ25の稼動停止するように設定することによって、庫内を定湿度に保持でき、100%の湿度にならないので庫内に結露が発生しなくなる。
なお、この場合、電熱ヒータ25のみの制御では温度が高くなるので冷却機24で温度を2°C程度に低温で一定に保ち生鮮農産物の鮮度が保持されるようにする。
なお、この形態ではその電熱ヒータ25の稼動によって暖められた空気が、その下方に備わるエチレンガスの改質装置22に吸入されるので、紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に保つのに利用できる利点がある。
(実験例1)
紫外線を照射しない場合と、保水体がない場合で紫外線を照射した場合と、保水体に紫外線を照射した場合とのエチレンガスの減少状態の比較をし、保水体の存在の効果を確認する実験をした。
その結果を図6に示す。
図中の黒丸は紫外線を照射しない(OFF)場合の値を示す。
白三角は紫外線を照射し、保水体(無機繊維材)がない(G OFF)場合の値を示す。
黒四角は紫外線を照射し、保水体(無機繊維材)を装着した(G ON)場合の値を示す。
この実験条件は次の通りである。
容器の容積 72リットル
紫外線管 1本
温度 20〜21度
湿度 90〜96%
電圧 4.5V
電流 0.2A
電力 0.9W
この実験結果から、開始時のエチレン(C24)が100ppmであり100分経過時点で比較すると、紫外線を照射しない(OFF)場合にはエチレン濃度の値が40ppmであり20ppmの減少なのに対して、保水体(無機繊維材)に紫外線を照射する場合には値が40ppmであり60ppm減少した。
このことにより、保水体に紫外線を照射した場合が有効であることが確認された。
(実験例2)
菊の切花を容器に入れて置いた時、本発明の装置を稼動した場合と、停止した場合とのエチレンの濃度増加の比較を測定する実験をした。
その結果を表したものが図7である。
この表の、「ON」は稼動した場合で、「OFF」は停止した場合である。
この実験条件は次の通りである。
容器の容積 72リットル
紫外線管 4本
温度 OFF 19.98度 ON 20.28度
湿度 90〜95%
電圧 6.5V
電流 0.58A
菊 各10本
この実験では、その結果をまとめた図7に示されているように、40時間で、(C24)が「ON」では15ppmに対して、「OFF」では30ppmであり、エチレンの増加量が抑えられていることがわかる。
そして、45時間後には、「ON」では花葉ともに青々と元気であったが、「OFF」では菊の花弁の萎れが大きく、また葉は元気なく萎れ両者には顕著な差が現れた。
このことから本発明の装置では、エチレンの増加が抑えられ、生鮮農産物の鮮度保持に有効であることが確認された。
(実験例3)
エチレン(C24)の純ガスに紫外線を照射した場合でのエチレン濃度の時間変化の比較を測定する実験をした。
その結果を表したものが図8である。
この図の「ON」は装置を稼動した場合で、「OFF」は稼動を停止した場合である。
この実験条件は次の通りである。
容器の容積 72リットル
紫外線管 4本
温度 17〜19度
湿度 95〜100%
電圧 14V
電流 0.86A
この実験では、その結果をまとめた図8に示されているように、エチレンの濃度が開始時410ppmであったが、50分後で、「ON」では320ppmにまで減少した。しかし、「OFF」では370ppm減少が小さかった。
このことは、紫外線の照射でエチレンが減少していることを示している。
(実験例4)
箱の中に箱の中にエチレンガスの改質装置を入れ、その装置の紫外線を照射して、カビの発生がどのように影響があるかを調べる実験をした。
この実験では、50cm四方の箱の中にカビの胞子を入れ、シャ−レを置き、その箱の空気を循環させて、カビの発生経過状況を調べた。
その結果が図11のグラフ図である。
そのグラフ図に示したように、紫外線を照射しない場合ではカビの発生率が減少はするがなくなることはなく、紫外線を照射した場合では、4回目でカビの発生率が「0」になった。
この実験から、紫外線による直接的な殺菌効果もないとは言えないが、生成されたOHラジカルの紫外線より格段に強力な酸化力によってカビの発生率が減少したものと考えられる。
この実験ではカビを用いたが、カビ以外の腐敗菌などの微生物にもOHラジカルの強力な酸化力による殺菌力が生じ、その殺菌効果で生鮮農産物の腐敗化を防止し、大きな鮮度保持効果が期待できる。
本発明の紫外線によるエチレンガスの改質方法は、エチレンガスの改質に最適であるが、その他の各種有機ガスの改質にも利用できる可能性がある。
本発明の方法に用いる装置要部を示す模式的縦断側面図である。 本発明のエチレンガスの改質装置の要部を示す斜視図である。 別形態のエチレンガスの改質装置の斜視図である。 生鮮農産物の鮮度保持装置の模式的斜視図である。 本発明のOHラジカル生成過程の説明図である。 エチレンガスの減少状態を観察する比較実験の結果を示すグラフ図である。 エチレンガスの増加状態を観察する比較実験の結果を示すグラフ図である。 装置を稼動した場合と停止した場合のエチレンガスの減少状態を観察する比較実験の結果を示すグラフ図である。 生鮮農産物の鮮度保持装置の模式的斜視図である。 別形態の生鮮農産物の鮮度保持装置の模式的斜視図である。 カビの生存状態の比較実験の結果を示すグラフ図である。 水滴の形状と紫外線の集中状態を示す模式的縦断側面図である。
符号の説明
1 円筒容器
2 保水体
2a 通気性保水体
3 紫外線発光管
4 通気孔
5 通気孔
9 排気管
7 排気ポンプ
8 加湿器
11 コード
10 電源
12 円筒容器
13 通気孔
14 噴霧器
15 台板
16 送風機
17 庫
17a 庫内側壁
18 排気口
19 誘導ダクト
20 メインダクト
21 吸気口
22 エチレンガスの改質装置
23 エチレンガス濾過パネル
24 冷却機
25 電熱ヒータ
26 湿度センサ
27 加湿器
28 温度制御部
29 電熱ヒータ
30 温度センサ
A 保水体外の外空間
B 保水体内の内空間
M 水滴
E エチレンガス
e エタン
w 水
R OHラジカル
S 紫外線







Claims (9)

  1. 表面に水を粒状に保持可能な保水面に形成した保水体に水を供給し、該保水面を水滴で濡れた状態に保持する保水工程と、
    該保水面に付着させた前記水滴に対し、10mm以内の至近距離から波長が254nmの紫外線を、近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御しつつ照射して、該照射紫外線のエネルギーで前記水滴にOHラジカルを生成させる照射工程と、
    該OHラジカルを含む前記水滴を保持している前記保水面に対してエチレンガスを含む気体を通風させて前記OHラジカルに該エチレンガスを接触させる反応工程と、
    から成り、
    上記各工程により前記OHラジカルに前記エチレンガスを接触反応させてエタンと水に改質できるようにしたことを特徴とする紫外線によるエチレンガスの改質方法。
  2. 保水体が表裏貫通した微細孔を多数有する通気性保水体であり、反応工程において、該保水体の表裏いずれかの一方側から他方側へエチレンガスを含む気体を通過させることによりOHラジカルとエチレンガスが通風接触できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の紫外線によるエチレンガスの改質方法。
  3. 通気性保水体が、無機繊維材から成る編物、織布及び不織布又は貫通した微細孔を形成したセラミック材の群のうち少なくともいずれか一つを含む素材から成る請求項2に記載のエチレンガスの改質方法。
  4. 請求項1に記載のエチレンガスの改質方法を実施するためのエチレンガスの改質装置であって、
    (a)撥水性を有する素材で表面に水を粒状に保持可能な保水面に形成した保水体と、
    (b)該保水面に向けて10mm以内の至近距離に設けられた254nmの波長の紫外線を発生させる紫外線発生手段と、
    (c)前記紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御する温度制御手段と、
    (d)前記保水面に対して水を粒状に付着させる水付着手段と、
    (e)前記保水面に付着した水滴に対してエチレンガスを含む気体を接触通過させるための通気手段と、
    から成るエチレンガスの改質装置。
  5. 請求項2又は3に記載のエチレンガスの改質方法を実施するためのエチレンガスの改質装置であって、
    (a)撥水性を有する素材で表面に水を粒状に保持可能な保水面に形成し、且つ表裏貫通する多数の微細孔を形成した通気性の保水体と、
    (b)該保水面に向けて10mm以内の至近距離に設けられた254nmの波長の紫外線を発生させる紫外線発生手段と、
    (c)前記紫外線照射近傍を10°C〜40°Cの温度域に制御する温度制御手段と、
    (d)前記保水面に対して水を粒状に付着させる水付着手段と、
    (e)前記保水面に付着した水滴に対して該保水体の表裏いずれかの一方側から他方側へ前記微細孔を通してエチレンガスを含む気体を接触通過させるための通気手段と、
    から成るエチレンガスの改質装置。
  6. 請求項4又は5に記載のエチレンガスの改質装置を用いた生鮮農産物の鮮度保持装置であって、
    生鮮農産物収納用の庫内に請求項4又は5に記載のエチレンガスの改質装置を設置して成り、
    前記エチレンガスの改質装置の通気手段により該庫内の気体を循環させて、前記保水面に付着している紫外線照射で生成されたOHラジカルに対して該庫内に収納した農産物から発生したエチレンガスを接触反応させて、無害なエタンと水に改質させることにより庫内気体中の有害なエチレンガスを減少させて生鮮農産物の鮮度を長期間保持できるようにしたことを特徴とする生鮮農産物の鮮度保持装置。
  7. 請求項4又は5に記載のエチレンガスの改質装置を用いた生鮮農産物の鮮度保持装置であって、
    間隔置きに排気口を配設した誘導ダクトを庫内側壁寄り底部に沿って設置し、該誘導ダクトの中間部位に該誘導ダクトに連通させて直立メインダクトを起立させ、該直立メインダクトの上方部位には吸気口を設けるとともに該メインダクトの中間高さ部位には請求項4又は5に記載のエチレンガスの改質装置を内蔵して成り、
    前記エチレンガスの改質装置の通気手段により前記庫内の気体を前記ダクトを通して循環させ、前記保水面に付着している紫外線照射で生成されたOHラジカルに対して該庫内に収納した農産物から発生したエチレンガスを接触反応させて、無害なエタンと水に改質させることにより庫内気体中の有害なエチレンガスを減少させて生鮮農産物の鮮度を長期間保持できるようにしたことを特徴とする生鮮農産物の鮮度保持装置。
  8. エチレンガスの改質装置の通気手段がメインダクト内の吸気口に連設した送風機であり、前記エチレンガスの改質装置の位置よりも上方のメインダクト内の中間高さ部位にエチレンガス濾過パネルを備えて成る請求項7に記載の生鮮農産物の鮮度保持装置
  9. 庫内に冷却機を備え、エチレンガスの改質装置の位置よりも上方のメインダクト内の中間高さ部位に電熱ヒータを備え、庫内に臨ませて設けた湿度センサで庫内の湿度を感知し、変化する感知デ−タを基に庫内の湿度を設定範囲に維持できるように電熱ヒータの稼動を制御できるようにした請求項7又は8に記載の生鮮農産物の鮮度保持装置。











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