JP2005258641A - 線条構造物の配線設計支援方法、その装置及びそのプログラム - Google Patents

線条構造物の配線設計支援方法、その装置及びそのプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】多段階の変形形状を経て最終形状に至る様子を正確に把握できる、より現実に即した線条構造物の配線設計支援方法、その装置及びそのプログラムを提供する。
【解決手段】初期形状1aに対応する有限要素モデル上の第1制御点1a4の強制変位先を、拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状が、第1予測形状1dとして計算され、更に、この第1予測形状1dに対応する有限要素モデル上の第2制御点1d8の強制変位先を、拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状が、第2予測形状1zとして計算される。そして、これら第1予測形状1d及び第2予測形状1z、並びに、初期形状1aが出力される。
【選択図】図9

Description

本発明は、ワイヤーハーネス等の線条構造物の配線設計を支援する方法、その装置及びそのプログラムに関する。
車両等においては、複数の電装品が搭載されており、これらは、複数の電線や通信線等の線条材がインシュロック等の結束部材やテープ等の外装部材によって束ねられた上記線条構造物としての、いわゆる、ワイヤーハーネスで接続されている。図1に示すように、ワイヤーハーネス1は、各端部に電装品等と接続されるコネクタ2a、2b、2c、2dが取り付けられている。また、その中間部には各種クリップ3a、3b、3c、3dが取り付けられ、更に、分岐点4を有している。なお、各端部から分岐点4までを構成するワイヤーハーネス1の各枝線は、基本的に、それぞれ構成線条材の数や種類が異なるので、各枝線の太さ、長さ、弾性、密度等も様々である。
従来、このようなワイヤーハーネスを車両等に配線するための設計は、CAD(Computer Aided Design)やCAE(Computer Aided Engineering)とよばれる汎用解析ソフトを用いて計算するか、或いは、設計者の経験や勘によって行われることが多かった。ところが、ワイヤーハーネス等の線条構造物は、多種多様であり、単に、上記汎用解析ソフトを用いたり、設計者の経験等に頼るだけでは、それらの各部における曲げやねじりに対する剛性まで正確に予想して設計することは非常に困難なことであった。
そこで、本出願人は、下記特許文献1、特許文献2等にて、有限要素法を利用することにより、ワイヤーハーネス等の線条構造物の物理的特性、すなわち、材質や各部における曲げやねじりに対する剛性等も考慮して線条構造物の予測形状を計算したり、初期形状から予測形状まで徐々に変形していく様子を表示したりすることにより、最適な配線設計を支援する方法を提案した。
ここで、本明細書中で引用する文献を以下に示す。
特願2003−308509 特願2003−308510 B.ナス著「マトリックス有限要素法」ブレイン図書出版株式会社出版、1978年8月10日、p.7−15 安田仁彦著「モード解析と動的設計」株式会社コロナ社発行、1993年11月10日、p.54−56
ところで、例えば、図1に示すような初期形状のワイヤーハーネス1を実際に車体に配線するときには、まず、コネクタ2aを車体側の所定部位に固定し、次にコネクタ2b、その次にコネクタ2c、更にその次にコネクタ2dを固定するというふうに、順次、ワイヤーハーネス1の各コネクタを、車体側の所定部位に強制変位させていくというような作業手順が採られる。
そうすると、これにともないワイヤーハーネス1の形状も、初期形状からコネクタ2aが取り付けられる迄、この状態からコネクタ2bが取り付けられる迄、更にコネクタ2cが取り付けられる迄というふうに、多段階に変形していくことになる。
上記特許文献1、特許文献2の方法は、線条構造物の物理的特性、すなわち、材質や各部における曲げやねじりに対する剛性等も考慮して線条構造物の予測形状を正確に計算したり、その変形の様子を正確に表示できるという点で非常に秀れたものであるが、上述のような多段階の変形を想定して形状予測する点までは、言及していない。実際の作業では、ほとんどの場合、ワイヤーハーネスは初期形状から多段階の変形形状を経て最終形状に至るので、この点も想定してより正確に形状予測できる配線設計手法が待望されている。
よって本発明は、上述した現状に鑑み、多段階の変形形状を経て最終形状に至る様子を正確に把握できる、より現実に即した線条構造物の配線設計支援方法、その装置及びそのプログラムを提供することを課題としている。
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の線条構造物の配線設計支援方法は、有限要素法を利用して線条構造物の予測形状を計算して最適な配線設計を支援する方法であって、前記線条構造物の初期形状を出力する初期形状出力工程と、対象となる前記線条構造物を直線性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体として、この線条構造物の有限要素モデルを作成する有限要素モデル作成工程と、前記有限要素モデルに与えられた前記線条構造物の物理特性及び拘束条件に応じた、このモデルの物理的に釣り合った状態である予測形状を計算する予測形状計算工程と、前記予測形状計算工程における計算結果を出力する結果出力工程と、を含み、前記予測形状計算工程は、前記初期形状に対応する前記有限要素モデル上の第1制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第1予測形状として計算する第1予測形状計算工程と、前記第1予測形状に対応する前記有限要素モデル上の前記第1制御点とは異なる第2制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第2予測形状として計算する第2予測形状計算工程と、を含む、ことを特徴とする。
また、上記課題を解決するためになされた請求項2記載の線条構造物の配線設計支援方法は、請求項1記載の配線設計支援方法において、前記第2予測形状計算工程では、前記第1制御点は強制変位先に完全拘束又は回転拘束されるものとして、前記第2予測形状を計算する、ことを特徴とする。
また、上記課題を解決するためになされた請求項3記載の線条構造物の配線設計支援方法は、請求項1又は請求項2記載の配線設計支援方法において、前記予測形状計算工程は、前記第2予測形状に対応する前記有限要素モデル上の前記第1制御点及び前記第2制御点のいずれとも異なる第3制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第3予測形状として計算する第3予測形状計算工程と、を含む、ことを特徴とする。
また、上記課題を解決するためになされた請求項4記載の線条構造物の配線設計支援方法は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の配線設計支援方法において、前記各制御点を、所定量づつ徐々にそれぞれの強制変位先に変位させる、ことを特徴とする。
また、上記課題を解決するためになされた請求項5記載の線条構造物の配線設計支援装置は、有限要素法を利用して線条構造物の予測形状を計算して最適な配線設計を支援する装置であって、前記線条構造物の初期形状を出力する初期形状出力手段と、対象となる前記線条構造物を直線性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体として、この線条構造物の有限要素モデルを作成する有限要素モデル作成手段と、前記有限要素モデルに与えられた前記線条構造物の物理特性及び拘束条件に応じた、このモデルの物理的に釣り合った状態である予測形状を計算する予測形状計算手段と、前記予測形状計算手段における計算結果を出力する結果出力手段と、を含み、前記予測形状計算手段は、前記初期形状に対応する前記有限要素モデル上の第1制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第1予測形状として計算する第1予測形状計算手段と、前記第1予測形状に対応する前記有限要素モデル上の前記第1制御点とは異なる第2制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第2予測形状として計算する第2予測形状計算手段と、を含む、ことを特徴とする。
また、上記課題を解決するためになされた請求項6記載の線条構造物の配線設計支援プログラムは、有限要素法を利用して線条構造物の予測形状を計算して最適な配線設計を支援するために、コンピュータを、前記線条構造物の初期形状を出力する初期形状出力手段、対象となる前記線条構造物を直線性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体として、この線条構造物の有限要素モデルを作成する有限要素モデル作成手段、前記有限要素モデルに与えられた前記線条構造物の物理特性及び拘束条件に応じた、このモデルの物理的に釣り合った状態である予測形状を計算する予測形状計算手段、前記予測形状計算手段における計算結果を出力する結果出力手段、前記予測形状計算手段に含まれる、前記初期形状に対応する前記有限要素モデル上の第1制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第1予測形状として計算する第1予測形状計算手段、前記予測形状計算手段に含まれる、前記第1予測形状に対応する前記有限要素モデル上の前記第1制御点とは異なる第2制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第2予測形状として計算する第2予測形状計算手段、として機能させる、ことを特徴とする。
請求項1、請求項5及び請求項6記載の発明によれば、対象となる線条構造物を直線性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体として、この線条構造物の有限要素モデルが作成され、この有限要素モデルに与えられた物理特性及び拘束条件に応じた予測形状が計算され、その計算結果が出力される。特に、初期形状に対応する有限要素モデル上の第1制御点の強制変位先を、拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状が、第1予測形状として計算され、更に、この第1予測形状に対応する有限要素モデル上の第1制御点とは異なる第2制御点の強制変位先を、拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状が、第2予測形状として計算される。そして、これら第1予測形状及び第2予測形状、並びに、初期形状が出力される。
また、請求項2記載の発明によれば、第1制御点は強制変位先に完全拘束又は回転拘束されるものとして第2予測形状が計算される。
また、請求項3記載の発明によれば、第1制御点及び第2制御点のいずれとも異なる第3制御点の強制変位先も想定して多段階形状予測が行われる。
また、請求項4記載の発明によれば、各制御点を所定量づつ徐々にそれぞれの強制変位先に変位させるようにしているので、多段階に変形していく様子をより詳細に把握できる。
請求項1、請求項5及び請求項6記載の発明によれば、対象となる線条構造物を直線性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体として、この線条構造物の有限要素モデルが作成され、この有限要素モデルに与えられた物理特性及び拘束条件に応じた予測形状が計算され、その計算結果が出力される。特に、初期形状に対応する有限要素モデル上の第1制御点の強制変位先を、拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状が、第1予測形状として計算され、更に、この第1予測形状に対応する有限要素モデル上の第1制御点とは異なる第2制御点の強制変位先を、拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状が、第2予測形状として計算される。そして、これら第1予測形状及び第2予測形状、並びに、初期形状が出力される。したがって、多段階の変形形状を経て最終形状に至る様子を把握でき、より現実に即した線条構造物の配線設計が可能になる。
また、請求項2記載の発明によれば、第1制御点は強制変位先に完全拘束又は回転拘束されるものとして第2予測形状が計算される。したがって、実際的に多用される完全拘束型支持部材や回転拘束型支持部材を想定した多段階形状予測ができ、更に現実に即した線条構造物の配線設計が可能になる。
また、請求項3記載の発明によれば、第1制御点及び第2制御点のいずれとも異なる第3制御点の強制変位先も想定して多段階形状予測が行われる。したがって、更に現実に即した線条構造物の配線設計が可能になる。
また、請求項4記載の発明によれば、各制御点を所定量づつ徐々にそれぞれの強制変位先に変位させるようにしているので、多段階に変形していく様子をより詳細に把握できる。したがって、作業手順の検討等も可能になり、より一層現実に即した線条構造物の配線設計が可能になる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、図1及び図2を用いて、対象となる線条構造物としてのワイヤーハーネスの例及び代表的な支持部材について説明する。図1は、対象となるワイヤーハーネスの例を概略的に示す図である。図2は、ワイヤーハーネスに取り付けられる代表的な支持部材と拘束自由度との関係を示す図である。
ワイヤーハーネス1は、例えば、上述のように両端部に図示しない電装品と接続されるコネクタ2a、2b、2c、2dが取り付けられ、その中間部には各種クリップ3a、3b、3c、3dが取り付けられ、更に、分岐点4を有している。ワイヤーハーネス1の各枝線は、基本的に、それぞれ構成線条材の数や種類が異なるので、各枝線の太さ、長さ、弾性、密度等も異なる。
上記各コネクタ2a、2b、2c、2dは、電装品側の相手方コネクタの固定位置及びその装着方向に応じて所定の位置に着脱可能に固定され、ワイヤーハーネスの端部を完全拘束する。また、上記各クリップ3a、3b、3c、3dは、ワイヤーハーネスの所定部位を、車両のボディやステー等の所定位置に完全拘束又は回転拘束される。
ここで、クリップについて説明を加える。クリップには、基本的に、長穴クリップ及び丸穴クリップがある。丸穴クリップは、回転クリップともよばれ、ワイヤーハーネスを保持する台座部とステー等に設けられた丸穴形状の取付穴に挿入される支持脚とから構成される。丸穴クリップは、Z軸(取付部位に鉛直方向)廻りに回転可能である。
一方、長穴クリップは、固定クリップともよばれ、ワイヤーハーネスを保持する台座部とステー等に設けられた長穴形状の取付穴に挿入される支持脚とから構成される。この支持脚の断面形状は、取付穴と略同様の長穴形状をしている。長穴クリップは、Z軸廻りに回転不可能である。
更に、長穴クリップ及び丸穴クリップには、X軸(ワイヤーハーネスの長手方向)廻りに回転可能な、コルゲート長穴クリップ及びコルゲート丸穴クリップがある。このような各クリップの各軸方向及び各軸廻りの拘束自由度は図2に示す通りである。
図2において、X軸、Y軸及びZ軸は、ワイヤーハーネス上の各節点(又はノードともよぶ)における右手ローカル座標系での直行する3軸に対応する。例えば、Z軸をクリップ軸と一致するようにしているが、これらの決定方法は、使用する関数によって適宜変更可能である。なお、図中、参考のために、分岐点の拘束自由度についても示している。また、ここでは図示しないが、上記拘束点以外に任意に設定されたワイヤーハーネス上の節点は、基本的に、完全自由である。このような拘束自由度が、後述するように、予測経路の計算のために、各節点にそれぞれ、設定される。
次に、図3〜図5を参照しながら、本発明において前提となる仮定条件、利用される理論及び基本式の概略について説明する。図3(A)は、ワイヤーハーネスの外観を示す図であり、図3(B)は、図3(A)のワイヤーハーネスを離散化した様子を示す図であり、図3(C)は、図3(A)のワイヤーハーネスを梁要素と節点とで表した図である。図4は、梁要素と節点とで表したワイヤーハーネスにおける自由度を説明するための図である。図5(A)は、ワイヤーハーネスを3つの梁要素で表した図であり、図5(B)は、図5(A)の3つの梁要素を結合した状態を示す図である。
まず、本発明では、ワイヤーハーネスの設計に有限要素法を利用するに際し、以下のような仮定をする。
(1).ワイヤーハーネスを弾性体と仮定する。
(2).ワイヤーハーネスを梁要素が結合されたものと仮定する。
(3).各梁要素に直線性が保たれるものと仮定する。
なお、梁要素と仮定することは、ワイヤーハーネスを一様断面、すなわち、均質な断面であると仮定することも意味する。また、断面を円形と仮定しているが必ずしもその必要はない。但し、以降の説明では、ワイヤーハーネスを円形断面と想定して説明していく。
このような仮定をすることにより、従来なされていなかった、ワイヤーハーネスへの有限要素法の適用が可能になる。
まず、ワイヤーハーネスを離散化する。すなわち、図3(A)に示すように、複数の電線11がテープ12等の外装部材によって束ねられたワイヤーハーネス1は連続体とみなすことができる。次に、図3(B)に示すように、このようなワイヤーハーネス1を、いくつかの梁要素C1、C2、C3、…に分割(離散化)する。すなわち、ワイヤーハーネスは1本のロープのようなものなので、有限個の梁要素をつなげたものとみなすことができる。
したがって、図3(C)に示すように、ワイヤーハーネスは、複数の梁要素C1、C2、C3、…を複数のノードN1、N2、N3、…で結合したものとして表すことができる。梁要素に必要な特性値は以下の通りである。
長さl(図3(B)参照)
断面積A(図3(B)参照)
断面2次モーメントI
断面2次極モーメントJ(ねじり抵抗係数ともよばれている)
縦弾性係数E
横弾性係数G
なお、上記特性値に直接表されていないが、それらを求めるために密度ρやポアソン比μ等も用いられる。
なお、本明細書中、長さl、断面積A等のような、線条構造物等の外形を直接的に決定する物理特性に関するパラメータを外形パラメータとよび、それ以外の断面2次モーメントI、断面2次極モーメントJ、縦弾性係数E及び横弾性係数G、密度ρ、ポアソン比μ等のような物理特性に関するパラメータを非外形パラメータとよぶものとする。
そして、図4に示すように、各梁要素C(C1、C2、C3、…)はそれぞれ、2つの節点α及び節点βを有する。3次元空間においては、節点αは、3つの並進成分と3つの回転成分を持つため、合計6つの自由度を持つ。また、節点βも同様である。したがって、梁要素Cは12自由度を持つことになる。
なお、図中、
xi:i番要素のxi軸方向の節点力
yi:i番要素のyi軸方向の節点力
zi:i番要素のzi軸方向の節点力
xi:i番要素のxi軸周りの端モーメント(右ネジ方向を正とする)
yi:i番要素のyi軸周りの端モーメント(右ネジ方向を正とする)
zi:i番要素のzi軸周りの端モーメント(右ネジ方向を正とする)
xi:i番要素のxi軸方向の変位
yi:i番要素のyi軸方向の変位
zi:i番要素のzi軸方向の変位
θxi:i番要素のxi軸周りの角変位(右ネジ方向を正とする)
θyi:i番要素のyi軸周りの角変位(右ネジ方向を正とする)
θzi:i番要素のzi軸周りの角変位(右ネジ方向を正とする)
αは左側の節点、βは右側の節点
を示す。
ところで、ワイヤーハーネス等のような大変形をともなう構造力学では一般に有限要素法の平衡方程式は次式の形となる。
([K]+[KG]){x}={F}…(1)
ここで、[K]:全体剛性マトリックス、[KG]:全体幾何剛性マトリックス、{x}:
変位ベクトル、{F}:荷重ベクトル(力ベクトルともよぶ)
但し、式(1)は代数的には非線形連立方程式となっているため、実際の数値解析においてはそのままで解くことはできない。そのため、荷重値を細分化して逐次加算していく増分方法を採ることになる(強制変位の場合も同様)。よって、式(1)の平衡方程式も下記の増分形式で表現することになる。
([K]+[KG]){Δx}={ΔF}−{R}…(1)′
ここで、{ΔF}:荷重増分の値、{Δx}:増分ステップにおける増分変位、{R}:荷重ベクトルの補正ベクトル
そして、各増分区間では平衡方程式は線形方程式とみなして計算し、その際、生じる不平衡力(式(1)′中のベクトル{R})を次ステップに進む前に反復法により許容範囲まで減少させることになる。これら一連のアルゴリズムとしては、例えば、ニュートン・ラプソン法や弧長法といった公知の方法を利用する。
なお、形状予測のように強制変位を指定する場合には、平衡方程式左辺のうち、第2項の全体幾何剛性マトリックス[KG]を省く場合が良性となることも多く、本ケースでも省
いている。
また、左辺第1項の全体剛性マトリックス[K]は各増分ステップで時々刻々と座標値を変更させながら書き替えられる各要素の剛性マトリックスを全体座標系に変換して集計されたものである。この基本となる要素剛性マトリックスの具体的な表現内容が下記の式(2)である。
Figure 2005258641
ここで、適合条件と釣り合い条件について説明する。ここでは、簡単のために、図5(A)に示すように、ワイヤーハーネスを3つの梁要素C1、C2、C3で表すものとする。この場合、梁要素C1の節点1β及び梁要素C2の節点2αの変位は等しくなり、これら両節点に加わる力も釣り合うことになる。同様に、梁要素C2の節点2β及び梁要素C3の節点3αの変位も等しくなり、これら両節点に加わる力も釣り合うことになる。したがって、これら変位の連続性と力の釣り合いの条件を満たすことで、梁要素C1及びC2、梁要素C2及びC3を、図5(B)に示すように、結合することができる。
なお、図中、
xi:i番要素のxi軸方向の節点力
yi:i番要素のyi軸方向の節点力
zi:i番要素のzi軸方向の節点力
xi:i番要素のxi軸周りの端モーメント
yi:i番要素のyi軸周りの端モーメント
zi:i番要素のzi軸周りの端モーメント
xi:i番要素のxi軸方向の変位
yi:i番要素のyi軸方向の変位
zi:i番要素のzi軸方向の変位
θxi:i番要素のxi軸周りの角変位
θyi:i番要素のyi軸周りの角変位
θzi:i番要素のzi軸周りの角変位
を示し、
i=1α、1β、2α、2β、3α、3βである。
そして、図5(B)に示した梁要素C1、C2、C3における上記変位の連続性と力の釣り合いを上記式(2)と同様の形式で示すと、以下の式(3)のようになる。
Figure 2005258641
ここで、式(3)中の12行12列のマトリクスM1、M2及びM3は、上記式(2)で示したものと同様である。但し、マトリクスM1、M2及びM3が重なっている部分M12及びM23は、各マトリクスの各構成要素が足し合わされたものとなる。
なお、4つ以上の梁要素についても、同様に扱うことができる。このようにして、任意の数の梁要素に分割されるワイヤーハーネスの数式モデルを作成することができる。
ちなみに、上記式(3)を簡単に表すと、
[K]{x}={F}…(4)
となる。
したがって、上記(3)や式(4)に基づき、変位ベクトル{x}の各要素を求めることにより、経路、すなわち、ワイヤーハーネスの予測形状を計算することができる。また、各節点における力ベクトル{F}を求めることにより、すなわち、歪み、応力、反力、モーメント等を計算することができる。なお、上記のような一般的なマトリックス有限要素法は、例えば、上記非特許文献1中でも紹介されている。
次に、本発明における形状予測に必要なポアソン比、縦弾性係数及び横弾性係数の求め方の一例について以下に示す。図6(A)は、断面2次モーメント及び縦弾性係数を測定する様子を示す図であり、図6(B)は、断面2次極モーメント及び横弾性係数を測定する様子を示す図である。
まず、長さl、断面積A及び密度ρは、対象となるワイヤーハーネスを作成し、ノギス、メジャー、重量計等を用いて計測した後、簡単な算出により求めることができる。
また、縦弾性係数Eは、図6(A)に示す測定方法を行う場合、次式(5)で表すことができる。
E=FL3/3XI…(5)
また、断面2次モーメントIは、上記のようにワイヤーハーネスを円形断面と仮定したので、次式(6)で表すことができる。
I=πD4/64…(6)
したがって、
E=64FL3/3XπD4…(7)
となる。
この測定では、
E=(F/X)×(64L3/3πD4
として、Fとxとの関係を測定することにより、縦弾性係数Eを求めることができる。
一方、横弾性係数Gは、図6(B)に示す測定方法を行う場合、次式(8)で表すことができる。
G=(TL/θJ)×2…(8)
断面2次極モーメントJは、ワイヤーハーネスが円形断面と仮定したので、次式(9)で表すことができる。
J=πD4/32…(9)
また、ねじる力は、
T=FS…(10)
となる。
よって、
G=(32FSL/θπD4)×2=(F/θ)(32SL/πD4)×2…(11)
したがって、Fとθの関係を測定することにより、横弾性係数Gを求めることができる。
なお、横弾性係数Gと縦弾性係数Eとは、次式(12)のような関係がある。
G=E/2(1+μ)…(12)
ここで、μ:ポアソン比
を示す。
なお、上記測定方法は一例であり、上記測定例以外の方法によって、横弾性係数G及び縦弾性係数E各値を取得するようにしてもよい。
次に、上記理論、基本式及び測定値を利用して後述する処理手順にしたがってワイヤーハーネスの予測形状を計算及び出力して設計支援する、本発明に係るハードウエア構成について説明する。図7は、本発明の全実施形態に係るハードウエア構成を示すブロック構成図である。
図7に示すように、本発明では、マイクロコンピュータ21、入力装置22、表示装置23、印字装置24、記憶装置25、通信インターフェース26及びリードライト装置27を含んで構成される、例えば、パーソナルコンピュータが用いられる。いうまでもなく、パーソナルコンピュータ以外のディスクトップコンピュータやスーパーコンピュータを用いてもよい。マイクロコンピュータ21は、CPU21a(中央演算装置)、ブートプログラム等を記憶するROM21b、各種処理結果を一時的に記憶するRAM21cを含む。入力装置22は上記各値等を入力するキーボード、マウス等であり、表示装置23は処理結果を表示するLCDやCRT等であり、印字装置24は処理結果を印字するプリンタである。
また、記憶装置25は、インストールされた本発明に係る配線設計支援プログラム29a、このプログラム29aによる処理結果等を記憶するハードディスクドライブであり、通信インターフェース26は外部装置との間で、例えば、インターネットやLAN回線等を用いてデータ通信を行うためのモデムボード等である。リードライト装置27は、CDやDVD等の記録媒体29に格納される本発明に係る配線設計支援プログラム29aを読み込んだり、この配線設計支援プログラム29aによる計算結果を記録媒体29に書き込む装置である。これらの各構成要素は、内部バス28を介して接続されている。
マイクロコンピュータ21は、リードライト装置27にて読み込まれた配線設計支援プログラム29aを記憶装置25にインストールする。また、電源が投入されると、マイクロコンピュータ21は、ROM21bに記憶されるブートプログラムにしたがって起動され、インストールされている配線設計支援プログラム29aを立ちあげる。そして、マイクロコンピュータ21は、配線設計支援プログラム29aにしたがって、多段階変形を考慮した形状予測に係る処理をしたり、処理結果を表示装置23や印字装置24から出力させたり、処理結果を記憶装置25や記録媒体29に保存させたりする。配線設計支援プログラム29aは、上記基本構成を有する他のパーソナルコンピュータ等にもインストール可能であり、インストール後は、そのコンピュータを配線設計支援装置として機能させる。なお、配線設計支援プログラム29aは、記録媒体29のみならず、インターネットやLAN等の通信回線を経由して提供されたものであってもよい。
続いて、図8及び図9を用いて、本発明の一実施形態に係る処理手順について説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る処理手順を示すフローチャートである。図9(A)〜図9(D)はそれぞれ、図8の各処理過程においてワイヤーハーネスが変形する状態を示す図である。
まず、図8に示すステップS1においては、上述した手法を用いて、設計対象となるワイヤーハーネスに対応する有限要素モデルが作成される。次に、ステップS2においては、この有限要素モデルに対して、初期形状に対応する拘束条件、外形パラメータ、非外形パラメータ等が設定される。次に、ステップS3において、このような設定値に応じた、有限要素モデルの物理的に釣り合った状態である予測形状、すなわち、図9(A)に示すような初期形状1aが計算される。そして、ステップS4において、表示装置23等にて初期形状1aが出力される。なお、ステップS1は、請求項中の有限要素モデル作成工程及び有限要素モデル作成手段に対応する。ステップS4は、請求項中の初期形状出力工程及び初期形状出力手段に対応する。
補足すると、ステップS2で設定される拘束条件としては、各節点1a0〜1a8に対して、初期形状に対応する、図2で示したような拘束種類(完全拘束、回転拘束、完全自由等)や座標等が設定される。各節点1a0〜1a8としては、コネクタやクリップ等の支持部材が取り付けられる部位等が割り当てられる。なお、拘束種類の設定には、図2で示したように、コネクタ、固定クリップ等の支持部材名を利用してもよい。ここで設定される各値は、上記式(3)中の変位ベクトル{x}中の各要素に係わる。
特に、節点1a4及び節点1a8はそれぞれ、所定変位先に強制変位される第1制御点及び第2制御点として設定される(但し、初期形状の計算においては他の節点と同様に扱われる)。第1制御点及び第2制御点は、例えば、コネクタ等の支持部材が取り付けられるワイヤーハーネス上の部位であり、組付け時に強制変位されて車体側の所定部位に固定される。詳しくは、第1番目に強制変位される制御点を第1制御点とよび、第2番目に強制変位される制御点を第2制御点とよぶ。なお、以降の説明では、節点1a4及び節点1a8をそれぞれ、第1制御点1a4及び第2制御点1a8とよぶこともある。
ここでは、対象となるワイヤーハーネスが真っ直ぐに伸ばされた状態に対応するように初期形状1aが設定されているが、初期形状としては別の形状になるように拘束条件を設定してもよい。例えば、ワイヤーハーネスメーカからカーメーカへワイヤーハーネスを納入する際には、コンテナに梱包して納入されるが、コンテナから取り出したワイヤーハーネスを車両に配策する場合、コンテナの中でどのように折り曲げられていたか、或いは、ねじ曲げられたか等により初期形状が変わってくる。折り曲げやねじ曲げ等を反映させた初期形状を計算させるためには、上記拘束条件によりこれを設定可能である。このような折り曲げられた初期形状を出発点として後段の予測形状に反映させることにより、より現実に即した形状の初期形状1aを計算することが可能になる。
なお、初期形状を計算するためには、必ずしも有限要素法を利用する必要はなく、例えば、ワイヤーハーネスの材料特性に依存する最小曲げ半径やワイヤーハーネスを組み付ける際に作業者が通常の力で曲げることができる曲げ半径等を用いてもよい。いずれにしても、対象となるワイヤーハーネスの組み付け前の形状が反映された初期形状を出力することが好ましい。上記形状計算処理はマイクロコンピュータ21にて行われ、各値の設定には入力装置22が用いられ、予測形状の出力には表示装置23及び/又は印字装置24が用いられる。なお、以降の処理においても、形状計算処理はマイクロコンピュータ21にて行われ、各値の設定には入力装置22が用いられ、計算結果の出力には表示装置23及び印字装置24が用いられる。
また、ステップS2で設定される外形パラメータとしては上記長さl及び断面積Aが設定され、非外形パラメータとしては、断面2次モーメントI、断面2次極モーメントJ、ポアソン比μ、密度ρ、縦弾性係数E及び横弾性係数Gが設定される。これらは、上記のようにして予め計測或いは求められている値が利用される。ここで設定される値は、上記式(3)中の剛性マトリクス[K]中の各要素に係わる。外形パラメータ及び非外形パラメータは、請求項中の物理特性に対応する。なお、図示しないが、この計算に係る各種制御値等も設定される。
このようにして初期形状1aが出力されると、次に、ステップS5において、上記第1制御点1a4が所定量だけ強制変位される。この所定量は、例えば、図2(B)に示すように、初期形状1a上の第1制御点1a4が変位先1d4に至るまでの通過経路を複数分割することにより、求めることが可能である。初期形状1a上の第1制御点1a4を一気に変位先1d4に強制変位させてもよいが、所定量毎変位させていくことにより、ワイヤーハーネスが変位する様子を把握しやすくなる。
ここで、第1制御点1a4の拘束条件としては次の変位先の座標及び拘束種類(完全拘束、回転拘束等)が設定される。詳しくは、第1制御点1a4を変位先1d4以外(途中点)に設定するときには、拘束種類を完全拘束とし、第1制御点1a4を変位先1d4に設定するときには、第1制御点1a4に取り付けられる支持部材に対応させて完全拘束又は回転拘束とすることが好ましい。変位先1d4において、第1制御点1a4に取り付けられる支持部材に対応させて拘束種類を設定することにより、より現実に即した線条構造物の配線設計が可能になる。また、節点1a0は例えば完全拘束とし、第2制御点1a8を含む他の節点は例えば完全自由として設定される。外形パラメータ及び非外形パラメータとしては上記ステップS2で設定された値のままとする。
続いて、ステップS6及びステップS7に進んで、上記ステップS3及びステップS4と同様、設定値に応じた予測形状の計算及び計算された予測形状の出力が行われ、ステップS8において、第1制御点1a4の全変位が完了したか否かが判定される。ステップS8において、第1制御点1a4の全変位がまだ完了していない、すなわち、第1制御点1a4がまだ変位先1d4に到達していない、と判定されたときには(ステップS8のN)、上記ステップS5に戻って、第1制御点1a4の拘束条件として、次の変位先の座標及び拘束種類が設定される。他の設定値は上述した通りである。なお、ステップS6は、請求項中の予測形状計算工程及び予測形状計算手段、並びに、第1予測形状計算工程及び第1予測形状計算手段に対応する。
このようなステップS5〜ステップS7の処理が、ステップS8において、第1制御点1a4の全変位が完了した、すなわち、第1制御点1a4が変位先1d4に到達した、と判定されるまで(ステップS8のY)、繰り返される。この繰り返しにより、図9(B)に示すように、初期形状1aが途中形状1b、1cを経て、第1予測形状1dに変位されるまでの様子が、表示装置23等にて出力される。したがって、配線設計のみならず、作業手順の検討等にも有効となる。図中、第1予測形状1d上の節点1d1、1d2、1d3、1d4、1d5、1d6、1d7及び1d8はそれぞれ、初期形状1a上の節点1a1、1a2、1a3、1a4、1a5、1a6、1a7及び1a8に対応する。なお、表示装置23上に表示するときには、各節点に取り付けられたコネクタ等も同時に表示することが好ましい。
このようにして第1予測形状1dが出力されると、今度は、ステップS9において、第1予測形状1d上の第2制御点1d8(初期形状1a上の第2制御点1a8が変位したもの)が所定量だけ強制変位される。この所定量も、例えば、図9(C)に示すように、第1予測形状1d上の第2制御点1d8が変位先1z8に至るまでの通過経路を複数分割することにより、求めることが可能である。ここでも、第2制御点1d8を一気に変位先1z8に強制変位させてもよいが、所定量毎変位させていくことにより、ワイヤーハーネスが変位する様子を把握しやすくなる。
ここで、第2制御点1d8の拘束条件としては次の変位先の座標及び拘束種類(完全拘束、回転拘束等)が設定される。詳しくは、第2制御点1d8を変位先1z8以外(途中点)に設定するときには、拘束種類を完全拘束とし、第2制御点1d8を変位先1z8に設定するときには、第2制御点1d8に取り付けられる支持部材に対応させて完全拘束又は回転拘束とすることが好ましい。これよって、より現実に即した線条構造物の配線設計が可能になる。
また、節点1a0は例えば完全拘束とし、第1制御点1a4及び第2制御点1d8以外の節点は例えば完全自由として設定される。第1制御点1a4については、上述したように、第1制御点1a4に取り付けられる支持部材に対応した拘束種類(完全拘束、回転拘束等)が設定され、その座標は変位先1d4に対応する値が設定される。外形パラメータ及び非外形パラメータとしては上記ステップS2で設定された値のままとする。
続いて、ステップS10及びステップS11に進んで、上記ステップS3及びステップS4、ステップS6及びステップS7と同様、設定値に応じた予測形状の計算及び計算された予測形状の出力が行われ、ステップS12において、第2制御点1d8の全変位が完了したか否かが判定される。ステップS12において、第2制御点1d8の全変位がまだ完了していない、すなわち、第2制御点1d8がまだ変位先1z8に到達していない、と判定されたときには(ステップS12のN)、上記ステップS9に戻って、第2制御点1d8の拘束条件として、次の変位先の座標及び拘束種類が設定される。他の設定値は上述した通りである。なお、ステップS10は、請求項中の予測形状計算工程及び予測形状計算手段、並びに、第2予測形状計算工程及び第2予測形状計算手段に対応する。
このようなステップS9〜ステップS11の処理が、ステップS12において、第2制御点1d8の全変位が完了した、すなわち、第2制御点1d8が変位先1z8に到達した、と判定されるまで(ステップS12のY)、繰り返される。この繰り返しにより、図9(C)に示すように、第1予測形状1dが途中形状1e、1fを経て、第2予測形状1zに変位されるまでの様子が、表示装置23等にて出力される。したがって、配線設計のみならず、作業手順の検討等にも有効となる。
そして、ステップS12において、第2制御点1d8が変位先1z8に到達したと判定されると(ステップS12のY)、ステップS13に進んで、図9(D)に示すように、第2予測形状1zが最終予測形状として、表示装置23等にて出力される。図中、最終予測形状1z上の節点1z1、1z2、1z3、1z4、1z5、1z6、1z7及び1z8はそれぞれ、初期形状1a上の節点1a1、1a2、1a3、1a4、1a5、1a6、1a7及び1a8に対応する。なお、表示装置23上に表示するときには、各節点に取り付けられたコネクタ等も同時に表示することが好ましい。なお、ここでは、第2予測形状1zを最終予測形状としたが、この後に他の節点1z2等を強制変位させたりする場合には、途中形状と考えてもよい。なお、ステップS13、並びに、上記ステップS7及びステップS11は共に、請求項中の結果出力工程及び結果出力手段に対応する。
このように、本発明の実施形態によれば、実際的に行われる作業を想定し、初期形状が多段階の変形形状を経て最終形状に至る様子を正確に把握でき、より現実に即したワイヤーハーネス等の線条構造物の配線設計が可能になる。
なお、上述の図8及び図9で例示した実施形態以外にも以下の変形例等が考えられる。図10(A)及び図10(B)は、本発明の変形例を説明するための図である。例えば、図10(A)に示すように、初期形状1a上の第1制御点及び第2制御点の位置関係を、上記実施形態と逆にしてもよい。すなわち、上記実施形態では、ワイヤーハーネスの中間部をまず強制変位させ、続いてその端部を強制変位させたときの変形の様子を計算したが、この変形例では、ワイヤーハーネスの端部の第1制御点1a8をまず強制変位させ、続いてその中間部の第2制御点1a4を強制変位させたときの変形の様子を計算するようにする。
すなわち、図10(A)に示すように、端部の第1制御点1a8が、1b8、1c8、1z8と強制変位され、続いて、中間部の第2制御点1d4(1a4が変位したもの)が、1e4、1f4、1z4と強制変位されるときに、初期形状1aが、途中形状1b、1c、1d、1e、1fを経て、最終予測形状1zに変位されるまでの様子を、表示装置23等にて出力するようにする。図中、最終予測形状1z上の節点1z1、1z2、1z3、1z4、1z5、1z6、1z7及び1z8はそれぞれ、初期形状1a上の節点1a1、1a2、1a3、1a4、1a5、1a6、1a7及び1a8に対応する。他の設定値や処理手順は、図8で示した実施形態に準ずるものとする。これにより、種々の作業を想定した線条構造物の配線設計が可能になる。
また、他の変形例(請求項3に対応する)として、図10(B)に示すように、初期形状1a上に、3つ以上の制御点、例えば、第1制御点1a3、第2制御点1a6、及び第3制御点1a9を設定するようにしてもよい。そして、図10(B)に示すように、第1制御点1a3が、1b3、1z3と強制変位され、続いて、第2制御点1c6(1a6が変位したもの)が、1d6、1z6と強制変位され、更に続いて、第3制御点1e9(1a9が変位したもの)が、1f9、1z9と強制変位されるときに、初期形状1aが、途中形状1b、1c、1d、1e、1fを経て、最終予測形状1zに変位されるまでの様子を、表示装置23等にて出力するようにする。図中、最終予測形状1z上の節点1z1、1z2、1z3、1z4、1z5、1z6、1z7、1z8及び1z9はそれぞれ、初期形状1a上の節点1a1、1a2、1a3、1a4、1a5、1a6、1a7、1a8及び1a9に対応する。他の設定値や処理手順は、図8で示した実施形態に準ずるものとする。これにより、更に現実に即した線条構造物の配線設計が可能になる。
なお、図9及び図10を用いて説明した実施形態ではいずれも、図中、上から下方向に重力がかかることを想定している(例えば、車両のドアにワイヤーハーネスを配線する場合等)。このため、重力に対応する設定値も有限要素モデルに適用されたうえで、形状計算されている。勿論、重力がかかないような状況を想定する場合には(例えば、フラットな床にワイヤーハーネスを配線する場合等)、重力に対応する設定値は不要となり、その予測形状は図9及び図10に示した形状とは若干異なったものとなる。本発明は、これらいずれにも適用可能である。
また、上記実施形態では強制変位による形状予測の計算例を示したが、所定節点に力を加えながら変形させていくときの形状予測にも適用可能である。また、線条構造物として車両内に配線されるワイヤーハーネスを例示して説明したが、本発明は、このようなワイヤーハーネスのみならず、ワイヤーハーネスよりもシンプルな構造の車両外に配線されるホースやチューブ、或いは、一般電線や1本の電線等にも同様に適用可能であることはいうまでもない。すなわち、本発明の線条構造物とは、これらホース、チューブ、一般電線、1本の電線等も含むものである。また、本発明は、枝線を有するワイヤーハーネス等にも適用可能である。また、本発明は、円形断面のみならず、矩形断面、円環断面、楕円断面、H字断面等の線条構造物に対しても、同様に適用可能である。すなわち、本発明が適用される線条構造物は、円形断面に限定されない。
対象となるワイヤーハーネスの例を概略的に示す図である。 ワイヤーハーネスに取り付けられる代表的な支持部材と拘束自由度との関係を示す図である。 図3(A)は、ワイヤーハーネスの外観を示す図であり、図3(B)は、図3(A)のワイヤーハーネスを離散化した様子を示す図であり、図3(C)は、図3(A)のワイヤーハーネスを梁要素と節点とで表した図である。 梁要素と節点とで表したワイヤーハーネスにおける自由度を説明するための図である。 図5(A)は、ワイヤーハーネスを3つの梁要素で表した図であり、図5(B)は、図5(A)の3つの梁要素を結合した状態を示す図である。 図6(A)は、断面2次モーメント及び縦弾性係数を測定する様子を示す図であり、図6(B)は、断面2次極モーメント及び横弾性係数を測定する様子を示す図である。 全実施形態に係るハードウエア構成の一例を示すブロック構成図である。 本発明の一実施形態に係る処理手順を示すフローチャートである。 図9(A)〜図9(D)はそれぞれ、図8の各処理過程においてワイヤーハーネスが変形する状態を示す図である。 図10(A)及び図10(B)は、本発明の変形例を説明するための図である。
符号の説明
1 ワイヤーハーネス(線条構造物)
2a、2b、2c、2d コネクタ
3a、3b、3c、3d クリップ
4 分岐点
21 マイクロコンピュータ
22 入力装置
23 表示装置
24 印字装置
25 記憶装置
26 通信インターフェース
27 リードライト装置
28 内部バス
C1〜C7 梁要素
N1〜N8 節点(ノード)

Claims (6)

  1. 有限要素法を利用して線条構造物の予測形状を計算して最適な配線設計を支援する方法であって、
    前記線条構造物の初期形状を出力する初期形状出力工程と、
    対象となる前記線条構造物を直線性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体として、この線条構造物の有限要素モデルを作成する有限要素モデル作成工程と、
    前記有限要素モデルに与えられた前記線条構造物の物理特性及び拘束条件に応じた、このモデルの物理的に釣り合った状態である予測形状を計算する予測形状計算工程と、
    前記予測形状計算工程における計算結果を出力する結果出力工程と、を含み、
    前記予測形状計算工程は、
    前記初期形状に対応する前記有限要素モデル上の第1制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第1予測形状として計算する第1予測形状計算工程と、
    前記第1予測形状に対応する前記有限要素モデル上の前記第1制御点とは異なる第2制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第2予測形状として計算する第2予測形状計算工程と、を含む、
    ことを特徴とする線条構造物の配線設計支援方法。
  2. 請求項1記載の配線設計支援方法において、
    前記第2予測形状計算工程では、
    前記第1制御点は強制変位先に完全拘束又は回転拘束されるものとして、前記第2予測形状を計算する、
    ことを特徴とする線条構造物の配線設計支援方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載の配線設計支援方法において、
    前記予測形状計算工程は、
    前記第2予測形状に対応する前記有限要素モデル上の前記第1制御点及び前記第2制御点のいずれとも異なる第3制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第3予測形状として計算する第3予測形状計算工程と、を含む、
    ことを特徴とする線条構造物の配線設計支援方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の配線設計支援方法において、
    前記各制御点を、所定量づつ徐々にそれぞれの強制変位先に変位させる、
    ことを特徴とする線条構造物の配線設計支援方法。
  5. 有限要素法を利用して線条構造物の予測形状を計算して最適な配線設計を支援する装置であって、
    前記線条構造物の初期形状を出力する初期形状出力手段と、
    対象となる前記線条構造物を直線性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体として、この線条構造物の有限要素モデルを作成する有限要素モデル作成手段と、
    前記有限要素モデルに与えられた前記線条構造物の物理特性及び拘束条件に応じた、このモデルの物理的に釣り合った状態である予測形状を計算する予測形状計算手段と、
    前記予測形状計算手段における計算結果を出力する結果出力手段と、を含み、
    前記予測形状計算手段は、
    前記初期形状に対応する前記有限要素モデル上の第1制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第1予測形状として計算する第1予測形状計算手段と、
    前記第1予測形状に対応する前記有限要素モデル上の前記第1制御点とは異なる第2制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第2予測形状として計算する第2予測形状計算手段と、を含む、
    ことを特徴とする線条構造物の配線設計支援装置。
  6. 有限要素法を利用して線条構造物の予測形状を計算して最適な配線設計を支援するために、コンピュータを、
    前記線条構造物の初期形状を出力する初期形状出力手段、
    対象となる前記線条構造物を直線性が保たれた複数の梁要素が結合された弾性体として、この線条構造物の有限要素モデルを作成する有限要素モデル作成手段、
    前記有限要素モデルに与えられた前記線条構造物の物理特性及び拘束条件に応じた、このモデルの物理的に釣り合った状態である予測形状を計算する予測形状計算手段、
    前記予測形状計算手段における計算結果を出力する結果出力手段、
    前記予測形状計算手段に含まれる、前記初期形状に対応する前記有限要素モデル上の第1制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第1予測形状として計算する第1予測形状計算手段、
    前記予測形状計算手段に含まれる、前記第1予測形状に対応する前記有限要素モデル上の前記第1制御点とは異なる第2制御点の強制変位先を、前記拘束条件のひとつとして与えたときの予測形状を、第2予測形状として計算する第2予測形状計算手段、として機能させる、
    ことを特徴とする線条構造物の配線設計支援プログラム。
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