JP2005256091A - 耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 Alを添加した高耐食性めっき鋼板において、冷却速度が小さい場合でも耐アブレージョン性が優れためっき鋼材を提供することを目的としてなされたものである。
【解決手段】 Al4質量%以上からなり、かつ、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物をAl相の中に含有するめっき層を表面に形成させることにより、耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、めっき鋼板に係わり、更に詳しくは優れた耐アブレージョン性を有し、種々の用途、例えば家電用や自動車用、建材用鋼板として適用できるめっき鋼板に関するものである。
耐食性の良好なめっき鋼材として最も使用されるものに亜鉛系めっき鋼板がある。これらのめっき鋼板は自動車、家電、建材分野など種々の製造業において使用されている。
特にAlを添加しためっきは耐食性が高いため近年使用量が増加している。
こうした亜鉛系めっき鋼板の耐食性を向上させることを目的として本発明者らは、特許第3179446号において溶融Zn−Al−Mg−Siめっき鋼板を提案した。
また、表面の平滑性を向上させることを目的として本発明者らは、特開2003−293108号において高融点の金属間化合物を添加しためっき鋼板、特開2003−328100号においてAl系金属間化合物を添加しためっき鋼板を提案した。
特許第3179446号公報 特開2003−293108号公報 特開2003−328100号公報
しかしながら、上記及びその他これまで開示されためっき鋼板では、耐アブレージョン性が十分に確保されていない。
Zn−Alの二元系合金は6質量%Al−94質量%Znに共晶点を持ち、それよりAl濃度が高い場合、初晶としてAl相が晶出する。
また、Zn−Mg−Alの三元系合金は3質量%Mg−4質量%Al−93質量%Znに3元共晶点を持ち、それよりAl濃度が高い場合、初晶としてAl相が晶出する。
溶融めっき時のめっき凝固速度が十分に確保されている場合、Al相が大きく成長しないうちにめっきが凝固するため耐アブレージョン性は問題とならないが、めっき凝固速度が小さい場合、Al相が不均一に成長することによって、耐アブレージョン性が劣化するという問題点を有している。めっき鋼板の表面は、高融点の金属間化合物やAl系金属間化合物の添加により、平滑性を向上させることは可能であるが、Al相を均一に晶出させ、耐アブレージョン性を向上させることは不十分であった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、4質量%を超えるような高Al濃度の場合でも耐アブレージョン性が優れためっき鋼板を提供することを目的としている。
本発明者らは、耐アブレージョン性が優れためっき鋼板の開発について鋭意研究を重ねた結果、Al4質量%以上からなり、かつ、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物をAl相の中に含有するめっき層を表面に有することにより耐アブレージョン性が向上するという新たな知見を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の趣旨とするところは、以下のとおりである。
(1)Al4質量%以上からなり、かつ、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物をAl相の中に含有するめっき層を表面に有することを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
(2)Al:4〜10質量%、Mg:1〜5質量%、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を含有し残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を表面に有することを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
(3)Al:4〜22質量%、Mg:1〜5質量%、Si:0.5質量%以下、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を含有し残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を表面に有することを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
(4)前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の金属間化合物の結晶系が、立方晶、正方晶、斜方晶、単斜晶、六方晶のいずれかであることを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の金属間化合物の含有量が、1質量%以下であることを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
(6)ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を結晶核とし、Al相のデンドライトの一次アームが[110]方向に成長していることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載された耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
(7)ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物をめっき層中に含有させ、Al相の核生成サイトとして利用することを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板の製造方法。
本発明により、Al4質量%以上からなるめっき鋼板において、耐アブレージョン性が優れた高耐食性めっき鋼材を製造することが可能となり、工業上極めて優れた効果を奏することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の溶融めっき鋼材は、Al4質量%以上からなり、かつ、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を含有するめっき層を表面に有することを特徴とするめっき鋼材である。
本発明において、溶融めっきとは溶融Zn浴にAlを添加し、さらに必要に応じてSi、Mgの一種または二種を添加したもの、または、溶融Al浴に、Siを添加し、さらに必要に応じてZn、Mgの一種または二種を添加したものにブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を添加したものである。
本発明において、Alの含有量を4質量%以上に限定した理由は、4質量%未満のAl量では耐食性を向上させる効果が十分でないためである。また、4質量%未満では初晶としてAl相が晶出しないため、耐アブレージョン性が低下するという問題は起こらない。
本発明において、Al相とはめっき層中に明瞭な境界をもって島状またはデンドライト状に見える相であり、これは例えばAl−Znの二元系平衡状態図における高温での「Al相」(Znを固溶するAl固溶体)に相当するものである。この高温でのAl相はめっき浴のAl濃度応じて固溶するZn量が相違する。この高温でのAl相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl相の形骸を留めたものであると見てよい。この高温でのAl相(Al初晶と呼ばれる)に由来し且つ形状的にはAl相の形骸を留めている相を本明細書ではAl相と呼ぶ。
Al相は、Al−Znの二元系、Al−Siの二元系、Al−Zn−Siの三元系、Al−Zn−Mgの三元系、Al−Si−Mgの三元系、Al−Zn−Mg−Siの四元系において、めっき浴の合金濃度応じて固溶する元素量が相違し、常温での相形態も相違してくるが、いずれの場合においてもAl初晶に由来する形骸を留めており、顕微鏡観察において明瞭に区別できるため、本明細書ではこれらをAl相と呼ぶ。
Al含有量の上限は特に限定しないが、耐食性向上を目的としてMgを添加しためっき鋼板では、Alの含有量が22質量%を超えると耐食性を向上させる効果が飽和するため22質量%以下とすることが望ましい。ただしZn−Al−Mg系めっき層においてAlの含有量が10質量%を超えるとめっき密着性の低下が著しいため、Siを添加していないめっき中のAlの含有量は4〜10質量%に限定する。
従って、本発明の亜鉛系めっき層のめっき密着性を確保するためにはめっき中にSiを添加することが望ましい。Siの含有量を0.5質量%以下(0質量%を除く)に限定した理由は、Siは密着性を向上させる効果があるが、0.5質量%を超えると密着性を向上させる効果が飽和するためである。望ましくは0.00001〜0.5質量%である。さらに望ましくは0.0001〜0.5質量%である。Siの添加はAlの含有量が10質量%を超えるめっき層には必須であるが、Alの含有量が10%以下のめっき層においてもめっき密着性向上に効果が大きいため、加工が厳しい部材に使用する等、高いめっき密着性を必要とする場合にはSiを添加する必要がある。また、Si添加によりめっき層の凝固組織中に〔Mg2Si相〕が晶出する。この〔Mg2Si相〕は加工部耐食性向上に効果があるため、Si、の添加量を多くし、めっき層の凝固組織中に〔Mg2Si相〕が混在した金属組織を作製することが望ましい。
Mgの含有量を1〜5質量%に限定した理由は、1質量%未満では耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、5質量%を超えるとめっき層が脆くなって密着性が低下するためである。〔Mg2Si相〕はMgの添加量が多いほど晶出しやすいため、加工部耐食性向上を目的とした場合、Mgの含有量を2〜5質量%とすることが望ましい。
本発明においてアブレージョンとは、めっき同士、又はめっきと金型が摺動することによりできる疵を指す。このアブレージョンは黒く変色し、外観品位を低下させるため、商品価値を落とすこととなる。
耐アブレージョン性を向上させるためには、めっき中にブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を添加することが有効である。
ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を添加することにより耐アブレージョン性が向上する理由は、この格子面がAlの{110}面と整合性が良いためであると考えられる。Alは結晶構造がFCCであるため、{110}面が最も成長し易い。このAlの{110}面と整合性が良い格子面をもつ金属間化合物を添加することにより、この成長し易いAlの{110}面の核生成サイトとして働き、凝固開始時にAl相のデンドライトが[110]方向に多数成長すると考えられる。この結果、Al相の結晶が微細で均一となり耐アブレージョン性が向上すると考えられる。
ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔を2.57Å以上3.15Å以下に限定した理由は、2.57Å未満、又は3.15Åを超えるとAlの{110}面と整合性が悪くなり、耐アブレージョン性が低下するためであり、他方の面間隔を3.64Å以上4.46Å以下に限定した理由は、3.64Å未満、又は4.46Åを超えるとAlの{110}面と整合性が悪くなり、耐アブレージョン性が低下するためである。
また、Alの結晶系は立方晶であるため、金属間化合物の結晶系は、軸角に直角を持つ立方晶、正方晶、斜方晶、単斜晶、六方晶のいずれかであることが望ましい。
金属間化合物は少量の添加で効果を発揮し、添加量が多くなるとめっき後の外観が粗雑になる等の外観不良が発生するため、上限は1質量%が望ましい。
本発明者等が多数のめっき中のAl相を調査した結果、大部分のAl相のデンドライトの中心から大きさ数μmの金属間化合物が観察された。さらにEBSP法を用いて金属間化合物とAl相の結晶方位を同定したところ、金属間化合物の格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面とAl相の{110}面が平行であり、Al相のデンドライトが[110]方向に成長していることが確認された。
Al相中に存在する金属間化合物の一例として、Al−Zn−Mg−Si系めっき中のAl相中に存在するTiAl3を図1に示す。図1の上段の図は、本発明におけるめっき鋼材のめっき層の顕微鏡写真(倍率3000倍)であり、該写真中の各組織の分布状態を図示したものが下段の図である。この図からも解るように、本発明におけるめっき鋼材のめっき層の顕微鏡写真によって明確にAl相を特定することができる。
また、図1の金属間化合物とAl相の電子線回折結果を図2の極点図に示す。極点図より、図1に示したAl相のデンドライトは{110}面が[110]方向に成長していることが解る。また、図2の極点図の位置が良く一致することからAl相の{110}面は、TiAl3の{110}面、{102}面と同じ方位であることが解る。
EBSP法によりAl相とTiAl3の結晶方位を決定した結果、図1のAl相の{110}面は、TiAl3の{110}面、{102}面全てと平行であることが明らかになった。これは、TiAl3の{110}面、{102}面をAl相の核生成サイトとしてAl相のデンドライトが成長した結果であると考えられる。
このようにEBSP法を使用することにより、金属間化合物の特定の格子面とAl相の格子面との整合性を解析することが可能となる。
本発明において金属間化合物の大きさは特に限定しないが、発明者らが観察したものは、大きさ10μm以下であった。また、Al相中の金属間化合物の存在割合も特に限定しないが、過半数を超えるAl相に存在することが望ましい。
金属間化合物の添加方法については特に限定するところはなく、金属間化合物の微粉末を浴中に混濁させる方法や、金属間化合物を浴に溶解させる方法等が適用できる。
本発明の下地鋼板としては、熱延鋼板、冷延鋼板共に使用でき、鋼種もAlキルド鋼、Ti、Nb等を添加した極低炭素鋼板、およびこれらにP、Si、Mn等の強化元素を添加した高強度鋼、ステンレス鋼等種々のものが適用できる。本発明品の製造方法については、特に限定することなく鋼板の連続めっき、どぶづけめっき法など種々の方法が適用できる。下層としてNiプレめっきを施す場合も通常行われているプレめっき方法を適用すれば良い。
めっきの付着量については特に制約は設けないが、耐食性の観点から10g/m2以上、加工性の観点から350g/m2以下で有ることが望ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
まず、厚さ1mmの冷延鋼板を準備し、これに各種金属間化合物を添加した450℃のZn−Mg−Al−Siめっき浴で3秒溶融めっきを行い、N2ワイピングでめっき付着量を片面140g/m2に調整し、冷却速度10℃/s以下で冷却した。得られためっき鋼板のめっき組成と添加した金属間化合物を表1に示す。金属間化合物はEDXを使用して元素と組成を分析した。また、表1に各金属間化合物のAlの{110}面と近い面の面指数とその面を構成する格子方向の方向指数、及び面間隔を示す。
Al系金属間化合物の中にはめっき浴中に溶解し、再晶出した際にAlの一部がSiに置換されたと考えられるものも存在したが、結晶方位と面間隔に大きな変化が見られなかったため、実施例ではSiに置換されていないAl系金属間化合物として表記した。
Al相と金属間化合物の結晶方位は、研磨しためっき面からEBSP法を用いて決定し、Al相の{110}面と金属間化合物の各格子面の整合性を調査した。結果を表1に示す。Al相の{110}面と金属間化合物の各格子面が平行であったものを○、Al相の{110}面と金属間化合物の各格子面に関連性が見られなかったものを×とした。
耐アブレージョン性は、作製しためっき鋼板に、SKD11製の金型を介して100g/cm2の荷重で360回/分の楕円振動を30分間加えて摺動部にアブレージョンを発生させた。サンプルは、50℃、95%R.H.の環境に240時間放置後、表面を目視にて観察し、以下の評価で◎および○を合格とした。
◎:黒化なし
○:摺動部の20%未満の面積が黒化
△:摺動部の20%以上50%未満の面積が黒化
×:摺動部の50%以上の面積が黒化
結果を表1に示す。番号5、11は金属間化合物のAlの{110}面と近い面を構成する格子面の格子方向の面間隔が、本発明の範囲外であるため耐アブレージョン性が不合格となった。
これら以外の本発明品は、耐アブレージョン性が優れためっき鋼板であった。
Figure 2005256091
まず、厚さ1mmの冷延鋼板を準備し、これに400〜700℃で浴中の添加元素量を変化させためっき浴で3秒溶融めっきを行い、N2ワイピングでめっき付着量を140g/m2に調整し、冷却速度10℃/s以下で冷却した。得られためっき鋼板のめっき組成を表2と表3に示す。Al相中の金属間化合物はEDXを使用して元素と組成を分析した。また、表2、3に各金属間化合物のAlの{110}面と近い面の面指数とその面を構成する格子方向の方向指数、及び面間隔を示す。
Al系金属間化合物の中にはめっき浴中に溶解し、再晶出した際にAlの一部がSiに置換されたと考えられるものも存在したが、結晶方位と面間隔に大きな変化が見られなかったため、実施例ではSiに置換されていないAl系金属間化合物として表記した。
Al相と金属間化合物の結晶方位は、研磨しためっき面からEBSP法を用いて決定し、Al相の{110}面と金属間化合物の各格子面の整合性を調査した。結果を表2、3に示す。Al相の{110}面と金属間化合物の各格子面が平行であったものを○、Al相の{110}面と金属間化合物の各格子面に関連性が見られなかったものを×とした。
耐アブレージョン性は、作製しためっき鋼板に、SKD11製の金型を介して100g/cm2の荷重で360回/分の楕円振動を30分間加えて摺動部にアブレージョンを発生させた。サンプルは、50℃、95%R.H.の環境に240時間放置後、表面を目視にて観察し、以下の評価で◎および○を合格とした。
◎:黒化なし
○:摺動部の20%未満の面積が黒化
△:摺動部の20%以上50%未満の面積が黒化
×:摺動部の50%以上の面積が黒化
耐食性は、JIS Z−2371に準ずる塩水噴霧試験を1000時間行い、以下の評価で○を合格とした。
○:赤錆発生無し
△:赤錆発生20%以下
×:赤錆発生20%以上
結果を表2、3に示す。番号1はめっき層のAl濃度が本発明の範囲外であるため耐食性が不合格となった。番号2、8、14、20、26、32は金属間化合物を添加していないため耐アブレージョン性が不合格となった。これら以外の本発明品は、耐アブレージョン性が優れためっき鋼板であった。
Figure 2005256091
Figure 2005256091
以上述べてきたように、本発明により、Al4質量%以上からなるめっき鋼板において、耐アブレージョン性が優れた高耐食性めっき鋼材を製造することが可能となった。これまでアブレージョンによる外観低下のために使用できなかったプレス品に高耐食性鋼板の使用が広がることによって、これらプレス品の耐久性向上に大いに貢献可能となる。
Al相中に存在する金属間化合物の一例を示す図で、(a)はめっき鋼板のめっき層の顕微鏡写真(3000倍)で、(b)は写真中の各組織の分布状態を示した図である。 図1のAl相と金属間化合物の極点図で、(a)はAl相の(110)極点図、(b)は金属間化合物の(110)極点図、(c)は金属間化合物の(102)極点図である。

Claims (7)

  1. Al4質量%以上からなり、かつ、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物をAl相の中に含有するめっき層を表面に有することを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
  2. Al:4〜10質量%、Mg:1〜5質量%、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を含有し残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を表面に有することを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
  3. Al:4〜22質量%、Mg:1〜5質量%、Si:0.5質量%以下、ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を含有し残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を表面に有することを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の金属間化合物の結晶系が、立方晶、正方晶、斜方晶、単斜晶、六方晶のいずれかであることを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の金属間化合物の含有量が、1質量%以下であることを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
  6. ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物を結晶核とし、Al相のデンドライトの一次アームが[110]方向に成長していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板。
  7. ブラベー格子の格子面を構成する格子方向の一方の面間隔が2.57Å以上3.15Å以下、他方の面間隔が3.64Å以上4.46Å以下である格子面を持つ金属間化合物をめっき層中に含有させ、Al相の核生成サイトとして利用することを特徴とする耐アブレージョン性に優れる高耐食性溶融めっき鋼板の製造方法。
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